ナルトはアカデミーを卒業した。
その後、前世の時と同じように木の葉丸との邂逅を果たした。
今生において、火影を目指していないナルトだったが、肉親が火影であるために、寂しさを感じている木の葉丸に、ボルトの姿を重ねたナルトは、少しアドバイスを送る事にした。
「木の葉丸...お前は勘違いしてるってばよ。」
「勘違いって...なんだコレ。」
「ある人が言ってた...『火影になった人間が認められるんじゃない。皆に認められた人間が火影になるんだ』ってな...」
「.........。」
「今のお前を、里の皆が見た時、皆はお前を認めてくれると思うか?」
「それは...」
「だったら...どうしたら良いか...わかるな?」
「でも...じじいに滅茶苦茶怒られるぞコレ。」
ナルトの説得に、しかし木の葉丸はなかなか一歩を踏み出す事ができない。
木の葉丸の様子を見たナルトは、木の葉丸の頭に手を置くと...
「良いじゃねえか。怒るってのは相手の事をそれだけ思ってるからだってばよ。心配すんな...俺も一緒に謝ってやるから。自慢じゃねえが、俺ってばよくイタズラをして怒られ慣れてるからな。」
「あ...うん!」
そう言って笑ったナルトに、木の葉丸は笑顔で頷いた。
そして、木の葉丸を連れてヒルゼンの元に向かったナルトは、一緒に謝る。
水晶玉でナルトを監視出来なくなってしまったヒルゼンは、当初こそ怒りに震えていたが、素直に謝りに来た木の葉丸の成長...それを促したのがナルトだと理解すると、複雑そうな顔をしつつ、許すのだった。
こうして、前世とは違った形で木の葉丸に慕われる様になるナルト...
そしてとうとう、班分けの日がやってくる。
「第七班、うずまきナルト、春野サクラ、うちはサスケ。」
(...今更だけど、この班分けには意味があったんだな...俺たちの班は人柱力の俺と、うちはの生き残りであるサスケ...監視対象を集めたって事か...カカシ先生は担当上忍ってだけじゃなくて、俺たちの監視役も兼ねてるんだな...サクラちゃんには悪いけど...多分サクラちゃんは余りなんだろうなぁ...)
ナルトがそんな事を考えている間に、各班の担当上忍が自分の担当の班を迎えに来て、次々と退出していった。
ヒナタも紅と共に出ていく。
出ていく際にナルトと視線を交わすヒナタ。
(ヒナタは強いってばよ。自信を持って行け。)
ナルトは視線に思いを乗せて一つ頷くのだった。
それからしばらく経つが、一向に第七班の担当上忍は現れなかった。
「ねぇ...なんで私たちの担当はいつまで経っても来ないわけ?」
サクラがしびれを切らせて、怒鳴り出した。
(う~む...今更だけど、遅刻魔のカカシ先生が良く六代目に選ばれたってばよ。重要な会談で遅刻なんてしたらどうするつもりだったんだろ?)
サクラの怒りのボルテージとは対照的に、ナルトもサスケも落ち着いていた。
「ねぇ、ナルト...あんた最近おかしくない?」
ナルトもサスケも冷静なため、サクラのテンションは急激に下がっていった。
そして、落ちついたサクラは、ナルトを見るとせっかくだからと、ここ最近感じていた違和感を聞くことにした。
「ん?おかしいって...なんの事だってばよ?」
「いや、最近妙に落ち着いてる感じがするし、イタズラもしなくなったし、サスケ君につっかかってもいかなくなったし、何よりも...私に言い寄って来なくなったじゃない。」
サスケもこの話には興味があり、気にしないフリをしながら、聞き耳を立てる。
(う~む...この頃のサクラちゃんは俺の事を嫌ってたし、俺の事...関心がないと思ってたんだけど...意外と見てたんだな...)
ナルトは、どう説明するか少し考える...
そして...
「そうだな...きっと...俺にとって何よりも大事だと...そう思える物を見つけたからだってばよ。」
結局、曖昧に...しかし、今の自分の心境を話すのだった。
「それって...どう言うこと?」
サクラには理解出来なかった。
サスケも理解は出来なかったが、ナルトが本当の事を言っている事だけは感じられた。
ナルトが何かを口にしようとすると、扉が開き、
「やあ、待たせたかな?」
カカシが軽い調子で入ってきた。
カカシは、三人を見回すと、
「うーん...お前たちの第一印象は...ま、普通だ。」
(前の第一印象は『嫌い』だったってばよ...)
『お前がガキみてぇなイタズラ仕掛けたからだろ?』
(そう言えば、そんなこともあったな...ハハハハハ...)
九喇嘛のツッコミを笑って誤魔化すナルトだった。
場所を移して、自己紹介を行うことになった。
カカシは名前以外の情報は出さなかったが...
「じゃ、今度はお前らだ。まずはお前。」
そう言ってナルトを見るカカシ。
「名前は、うずまきナルト。好きなものは、俺を認めてくれる人と、一楽のラーメン。嫌いなものは、俺と...俺の大事な人たちに危害を加える奴ら。将来の夢は...家族を持って、その家族を幸せにする事だってばよ。」
「は?あんたの夢って火影になることじゃ無かったの?いっつもバカみたいに言ってたじゃない。」
ナルトの言葉に、サクラが疑問を口にする。
「ようやく、身の程を弁えたってことだろ?それにしても...随分とちっぽけな夢だな。まだ火影になると言ってた時の方がマシだったぜ?」
サスケは、ナルトの現状を少なからず知っている為、その夢に少しだけ共感していた。しかし、何故かとてつもない不快感を感じたサスケは、憎まれ口を叩く。
「そうか?例えちっぽけな夢でも...俺にとっては大事な事だってばよ...そう...とても大切な事だ。」
「.........。」
カカシは、ナルトの言葉を聞きながら、強烈な違和感を感じていた。
ナルトの言葉には、大切な人を失った経験のある人間特有の重味を感じた。
だが、ナルトには大切な人間はいない。生まれてすぐに、両親を失い、里の大人からは白い目を向けられて育ったナルト。
ごく限られた大人は、ナルトを等身大で見ていたが、それもナルトにここまで思わせる人物とは言えない。
唯一、海野イルカがそれに該当するかも知れないが、イルカは健在である。
(少し、探りを入れた方が良いかな、こりゃ。)
ナルトに対し、情報を集める事を決めたカカシは、続いてサクラに自己紹介を要求する。
サクラの自己紹介は、とても忍と言えるようなものではなかった...
呆れの混じった瞳をサクラに向けるカカシ。
(うーん...サクラちゃんは、ちょっと気楽過ぎるってばよ。少し怖い思いをさせておかないと、この先、危険かも知れないな...)
サクラの様子に、今後を心配したナルトは、サバイバル演習の時に、少し痛い目を見てもらおうと決めた。
そして、最後にサスケの番となる。
「名はうちはサスケ。嫌いな物はたくさんあるが、好きなものは無い。それから...夢なんて言葉で終わらせる気は無いが...野望はある。一族の復興と...ある男を必ず...殺すことだ。」
「今のお前には無理だってばよ。」
サスケの言葉を聞いたナルトは、サスケの言葉を真っ向から否定した。
「なんだと!?俺にアイツが殺せねぇってのか?」
サスケにとって、一族の仇を取ることは何よりも優先することだった。
それを否定されたサスケは、例え実力的にとるに足らないと思っているナルトの言葉とはいえ、無視することは出来なかった。
ナルトの胸ぐらを掴み、殺意の混じった目を向けるサスケ。
「そっちじゃ無ぇってばよ。」
だが、ナルトはまるで動じる事はなく、冷静に告げた。
「まあ、その男を殺すのも今は無理なんだろうけどな...だから大人しく下忍になったんだろうし...けど...俺が無理だと言ったのはもう一つの方だってばよ。」
「なに?」
「お前...俺の夢を聞いた時、笑ったろ?」
「それがどうした...くだらねぇ夢じゃねぇか。」
「家族を幸せにしたい。その夢を笑うヤツが、どうやって一族を復興するつもりだってばよ...」
「そ、それは...」
ナルトの言葉に思わず詰まるサスケ。
「はっきり言ってやろうか?今のお前は復讐しか頭に無い。一族の復興なんて、今のお前は考えちゃいないんだってばよ。」
ナルトは断言した。
「違う。」
「違わねぇ。」
激昂しナルトを睨むサスケ。
しかし、ナルトは意に返さずあくまでも冷静にその瞳を受け流した。
サクラはいつもと逆の構図をハラハラしながら、見守る。
二人の対峙を見ながらカカシは一つため息を付くと、
「ま、落ち着きなってサスケ。ナルトも『今の』お前にはって、言ってただろ?」
そう言ってサスケを宥めた。
「くっ...」
サスケは、イラつきながらもナルトの胸ぐらから手を離す。
「さて、それじゃ自己紹介も終わった事だし、早速任務を行うぞ?」
サスケが落ち着くと、カカシは『サバイバル演習』についての説明をするのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
-
希望する
-
希望しない