シカマルが、ナルトの補佐役に就任して3ヶ月が経過した。
その間に、白とシカマルで五影を呼ぶにあたっての計画を練り、いよいよその日を迎える事となる。
まずはシカマルとの約束通り、他の影たちに先んじて火影である綱手が到着した。
シカマルがナルトの補佐になって最初の任務が、光の里の使者として、木の葉に返答をすることだった。
自身がナルトの補佐になったことも含めて、シカマルから報告を受けた綱手は、すぐにスケジュールの調整に入った。
そして自来也と、護衛としてゲンマの小隊を伴って光の里を訪れた綱手。
ちなみに、シズネは木の葉にて留守を預かっている為、メンバーにはいない。
「よぉ...ナルト。随分とでかくなったな。」
綱手がナルトを見ると、開口一番親しげに話しかける。
「おい...綱っ...五代目...一応ここには公式な会談として訪れたのだ。態度を改めてほしいのぉ...ナルト殿...今回はこちらの要望を受けて頂き誠にありがとうございます。」
綱手の態度を窘めつつ、補佐役の自来也が丁寧に挨拶をする。
「アッハッハッハッハー...なんだよエロ仙人...その話し方...気持ち悪いってばよ...」
そんな自来也の話し方がツボにハマったのか、笑い転げるナルト。
「だからエロ仙人じゃねぇってぇのぉ」
自来也は、すかさず反論する。その顔はどこか楽しそうだった。
「イーヒッヒッヒッ...グハッ」
尚も笑い転げるナルトに、白が氷遁で作ったハンマーをシカマルに渡す。
シカマルは無言でそのハンマーをナルトの脳天に叩きつけた。
悶絶するナルト。
「すみません火影様、自来也様。うちのバカ長が失礼を...」
シカマルが低姿勢で謝罪した。
「いやいや、うちの綱手も誉められた態度では無かったからのぉ。お互い様だ。しかし...お前さんも就任そうそう苦労しとるのぉ...」
自来也は、シカマルの苦労に同情していた。
奔放な綱手は、里の上役と良く揉めるため、必然と自来也が間に入り、場の緩衝役を務めることになった。
気苦労の多い自来也は、同じく奔放なナルトに手を焼かされていそうなシカマルに共感したのだった。
「たくっ良いじゃねえか。今は他の影たちはいねぇし、俺とばあちゃんの仲なら問題ねぇってばよ...」
頭を擦りながら、ナルトはぶつぶつと文句を言う。
「そうだぞ、自来也。堅苦しい挨拶をすれば良いと言うわけでもなかろう。」
綱手も、ナルトに賛成のようだ。
「「「はぁ...」」」
そんな二人に補佐役のものたちは大きくため息を付いた。
因みに、ゲンマの小隊は綱手が思いの外ナルトと親しげなことに唖然として見ていた。
「さて。冗談はさておき...ナルト殿。此度は木の葉との会談を受け入れて頂き、感謝している。」
綱手が真面目の顔で言った。
「いや...火影殿。こちらも木の葉との話し合いはしたいと思ってたんだってばよ。それに個人的に火影殿に頼みたい事もあったしな。」
ナルトもそれに応じる。
「おまえら...出来るなら最初からやれってぇの...」
自来也がツッコミを入れるが、二人ともスルーするのだった。
そして場所を会議室に移し、ナルトと綱手の会談は始まった。
それはナルトと綱手の他は、シカマルと白、自来也のみが参加してのものとなった。
ゲンマたちも、綱手の護衛のため中に入ることを主張したが、綱手が頑として受け入れず、仕方なく外で待機している。
「さて...まどろっこしいのは面倒だから単刀直入に言わせて貰う。ナルト。光の里と木の葉とで同盟を結んで貰いたい。」
「おう。良いってばよ。」
綱手は、あっさりと本題に入る。
ここに来たのは、光の里との同盟を結ぶため。
木の葉の衰退の原因は、人柱力の喪失。
そこから唯一、人柱力の残っている雲隠れの里に強引に仕事を奪われることになっていた。
しかし、人柱力という強力な力を持つ雲隠れに戦争をふっかける訳にもいかず、ズルズルとここまで来てしまった。
木の葉が生き残るには、もはや恥を忍んででも自分たちが追い出したナルトに助けを求める以外には無かった。
事ここに至って、ようやく上役たちもその事を認め、今回の会談に漕ぎ着けたのだ。
しかし...
流石の綱手も、ナルトがこうもあっさりと承諾するとは考えておらず、ポカーンとした顔をした。
「ナルト...いくらなんでも考え無さすぎだ...もう少し悩むとか、持ち帰って相談するとかあるだろう...」
呆れながら言う綱手に対し、ナルトは笑いながら、
「いや、今回の会談の目的はこっちでも予想してたんだってばよ。既に話し合いは済んでるんだ。もちろん、条件は付けさせて貰うけどな。」
あっさりと承諾した理由を話した。
「ふむ...条件付きか。まあ当然だのぉ。と言うか、何も無しで受け入れる方が疑われるか...」
自来也も頷いた。
そして、光の里から出された条件...
木の葉からの出資金の支払い。
医療忍者の派遣と指導。
「それから、綱手のばあちゃんに看て貰いたいやつらがいるんだ。そいつらの治療をもって同盟の条件とさせて貰いたい。」
ナルトは、そう言って口を結ぶ。
綱手は、光の里からの条件について考えた。
元々、同盟とは言え、光の里にとって落ち目の木の葉と同盟を、結ぶメリットはあまり無い。
規模こそ小さいが、この里は過剰なほどの戦力を抱え、規模が小さいからこそ、然程大きな資金を必要としていない。また滝隠れのように、幾つかの隠れ里とは既に交流をしているため、物資にも問題が無い。
つまり、木の葉がいかに光の里と同盟を結びたいと言っても、木の葉と同盟を結ぶメリットを示さなければ、断られる可能性が高かった。
その辺は、木の葉でも話し合いが済んでおり、出資金については、想定の範囲内だった。
医療忍者の派遣に関しては、持ち帰って議論する必要があるだろうが、今や木の葉には失業者が溢れている。
ナルトに対して、含むものを持っていない人物で無ければならないため、探すのには苦労するかも知れないが、これも、恐らく通るだろうと考えた。
ならば、最後の条件...
「ふむ...わかった。取り敢えず私に看て欲しいとか言う奴等の元に案内して貰おうか。」
「ん?良いのか?さっき言われた事をそのまま返すようだけど、今すぐに結論を出さなくても良いってばよ?そりゃあ、早ければこっちは助かるけど...」
ナルトが言うが、綱手は、
「必要ない。この条件は私が必ず通すさ。」
そう言って笑った。
(苦労するのはワシだというのに...)
また上役たちから文句を言われることを想像した自来也は、一つため息を吐くのだった。
綱手の了承の言葉にナルトは頷くと、綱手と自来也をある場所へと案内した。
そこにいたのは、痩せ細りボロボロとなっている長門と、それを介護する小南...
「長門、小南!」
二人に気付いた自来也は、直ぐに駆け寄った。
「先生...」
「二人とも...スマン...スマンのぉ...ワシがずっとお前たちに付いていてやれば...中途半端に教えたせいで弥彦を死なせてしまった...ワシは師として失格だ...」
二人の事をナルトの前世を見て知っていた自来也は、責任を感じていた。
暁壊滅の情報を知った時は、二人ともナルトたちに殺されているものと考えていた。
しかし二人は生きていた。自来也は喜びのあまり、泣きながら二人を抱き締めた。
「先生...俺は...」
一方、長門や小南もうしろめたさを感じていた。
かつての教え子が犯罪集団を立ち上げたのだ。
それを知った師はどんな思いだったか...
自分たちはもはや、自来也に顔向け出来ない...そう考えていた...それでも...
自分たちの生存を喜び、涙を流しながら抱き締めてくれる師の温もりに、嬉しさを感じていた。
「先生...ごめんなさい...そして...ありがとう...」
二人の口からは自然とその言葉が出るのだった。
自来也が落ち着き、綱手が長門の診察を開始した。
その結果...
「長期に渡り、限界を超えてチャクラを使いすぎていたのが原因だな...いわば栄養失調のように身体のチャクラが枯渇している。」
ペイン六道として、常に六体の死体を操り続けていた長門...世界を正すと言う目的のため、無理が祟っていたのだ。
そのせいで本来、使えば時間によって回復するチャクラを、消費量が上回った状態で身体が慣れてしまい、何もしていなくてもチャクラが身体から出ていってしまう体質となっていた。
暁壊滅後は、静かに暮らしていた為多少の改善は見られていたが、それも少しの延命に過ぎない。
「じゃあ、どうしたら良いんだってばよ?」
「点滴のようにチャクラを与え続けて、少しずつ身体を慣らしていくしかないな。一気にチャクラを与えても、結局身体が過剰分を有害と判断して抜いてしまうだろうし...」
「私が長門にチャクラを渡します。」
小南が立候補する。しかし、それに綱手は首を振る。
「言ったろ?少しずつ...しかし常にチャクラを与え続けなきゃならない...幾らお前が元暁のメンバーとは言えチャクラが持たない。」
「うーん...あ...じゃあこう言うのはどうだってばよ...」
何か方法は無いか...考えていたナルトは思い付いた方法を口にする。
「ほぉ...そんな事が出来るなら、上手く行くかも知れんな...」
ナルトの提案した方法...それは九喇嘛のチャクラの受け渡しのアレンジ版。
少量ずつ身体に行き渡らせるように調整しつつ、九喇嘛のチャクラを長門の体内に留める。
かなり難しい作業だが、今のナルトなら行える事だった。
「今後、戦闘さえ行わなければいずれ元のように生活できるようになるだろう。」
「長門...良かった。」
綱手の太鼓判に小南は、泣きながら長門に抱きつくのだった。
「サンキュー、ばあちゃん。やっぱりばあちゃんは世界一の医療忍者だってばよ。」
「当たり前だろう?」
ナルトの言葉に、笑いながら答える綱手。
「さて、ばあちゃん...あと一人...看て貰いたいヤツがいる。ただし、こいつのことは極秘で頼むってばよ。」
ナルトは次の瞬間、いつになく真剣な顔をして、綱手にそう言った。
「わかった。案内しな。」
ナルトの表情に何かを感じた綱手は、何も言わずに頷く。
そうして案内された場所で会った患者を診察し、改善方法も提示した綱手は、他の影たちが来るまでの間、のんびりと光の里で過ごすのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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