逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

83 / 102
忍連合誕生

光の里に綱手が訪問してから、一週間が経過した。

 

今日この日、五影がこの場に集い、会談を開くこととなっている。

 

最初に現れたのは風影。彼は里を訪れると、ナルトへの挨拶もそこそこに、我愛羅とテマリの元へと向かった。

 

そう...この世界の今の風影とは、カンクロウその人である。

 

彼は、里を抜けた我愛羅とテマリの事で後ろ指を差されていたが、それでもめげずに努力を重ねていた。

 

そんなカンクロウの姿勢に人々も評価を改め、風影となった今ではカンクロウに絶大な信頼を寄せている。

 

次に訪れたのは、水影。水影はヤグラの後を継いだメイが未だ健在である。

 

メイは、ナルトへ丁寧に挨拶をすると、綱手の元へと向かった。同じくノ一の影として話がしたかったのかも知れない。

 

次に土影のオオノキが現れ、最後に雷影のエーが訪れる。雷影の隣にはビーの姿もあった。

 

彼らは、ナルトに含むものが満載だと言わんばかりに不機嫌そうな態度で形式上の挨拶のみを交わした。ビーもまた雷影に合わせてか何も口にはしなかった。

 

場所を移して会議室。

 

「さて...まずは俺の呼び掛けに応じてくれて感謝するってばよ。本来ならここでうちの幹部たち...人柱力を全員紹介したい所なんだが....生憎何人かは任務で外に出払っていてな...勘弁して欲しいってばよ...」

 

ナルトの言葉に

 

「ふん...そんな言葉はいらん。ワシもそう暇では無いのでな。用件を手短に言え。」

 

エーが言うと、オオノキもそれに続く。

 

「ワシも出来れば、主の顔など見たくも無かったのじゃぜ。なにせ、うちの里から人柱力を奪われたのじゃからの。それでも現状を打破するにはこの会談は必要じゃ...仕方なく来てやったんじゃぜ...」

 

嫌味を隠そうともせずに、告げるオオノキ。

 

「土影、雷影...いい加減にしないか。ここは嫌味を言う為の場所では無い。」

 

たまらず綱手が窘める。

 

「ふん...木の葉の綱手姫か...お主も大変だのぉ...木の葉は最も衰退が激しい...藁にもすがると言った所か?自分たちで追い出した人柱力が長を務める里に尻尾をふるとはの。」

 

オオノキの辛辣な言葉は止まらない。

 

「お二人とも、その辺で止めたらどうですか?雷影殿も言ったように、我々とてそう暇では無いのです。まずはナルト殿の話を聞こうじゃないですか。」

 

メイは、綱手を助ける...というよりも話を先に進めるために言った。

 

「ふん...」

「そうじゃな...」

 

エーとオオノキは、揃って口を噤む。

 

その間、カンクロウは黙りを決め込んでいた。

 

まだ影になって、間もないカンクロウに老獪な他の影たちを制止するだけの発言力が無いことは、自覚していたからだ。

 

全ての影たちがナルトを見る。

 

ナルトは、エーやオオノキの嫌味に気分を害した様子もなかった。

 

「さて。んじゃ、雷影殿の要望でもあるし、今回の会談の目的を伝えるってばよ?」

 

そう言ってナルトは一同を見渡す。

 

皆がナルトの言葉の続きを待つ。

 

「うちの里と同盟を結ぶ気は無いか?」

 

「なんじゃと?」

 

ナルトの言葉を信じられないように、聞き返したのはオオノキ。

 

「主は、ふざけておるのか?ワシらの里から人柱力を奪っておいて、何を戯言を...」

 

「そうだな。うちの里からも一人奪われておる。だと言うのに協力を求めるなど...厚かましいにも程があると思わんか?」

 

エーもまた、オオノキに続いた。

 

「あら...頭の固い年寄りはダメね...うちは願ったり叶ったりね。もちろんタダでは無いんでしょうが...条件次第では、同盟を組むのもやぶさかでは無いわ。何しろうちはどこかの里に仕事を取られて四苦八苦してますし。」

 

「水影...貴様!」

 

同盟に賛成したメイをエーが睨む。

 

「うちも、同盟に賛成させてもらおう。」

 

綱手が後に続く。すでに同盟の約束を取り付けていることは、秘密にして。

 

「我が砂隠れも同じく、同盟に賛同するジャン。」

 

カンクロウも続いた。

 

「主ら...」

 

五影のうち...三人が光の里との同盟に賛同した。

オオノキの顔には焦りが見える。

 

もともと、五大国のうち人柱力を擁する雲隠れのある雷の国以外は、現在経済的に劣勢を強いられている。

 

その理由は、人柱力の巨大な力を背景に雷の国が強引に仕事を受注しているからなのだが、今回、光の里と同盟を取り付けた場合、雷の国は今までのように強引に仕事を取る事は出来ない。

 

となれば、雷の国の仕事が正規の量に戻り、残りを他の国で取り合いになる。しかしその場合、今度は光の里の力を背景に他の三国が強引に仕事を分け合うことになりかねない...

 

土の国だけが衰退することになるだろう...

 

オオノキは一つ息を吐く...そして...

 

「この手は出来れば使いたく無かったのじゃが...」

 

いかにも残念そうに言ったオオノキは、エーに目配らせをする。エーはそれに頷くと、

 

「さて、小僧...突然だがこの里はうちと岩隠れの里の精鋭に包囲されておる。」

 

「なっ...どういう事ですか!雷影殿...土影殿...」

 

「いくらなんでも国際条約に反するジャン...」

 

メイとカンクロウが慌てて声を荒げる。

 

「国際条約と言うがな若造...もともとこの里は他里の忍を奪って立ち上げられたものじゃぜ...力を背景に里の立ち上げを飲まざるを得なかったが...」

 

オオノキがカンクロウに言う...

 

「驕ったな小僧...お前たち人柱力...いや尾獣の力は破壊に特化したもの...だからこそワシらはその力を恐れていた。しかし、それはその力がワシらの里に向けられてこそ...」

 

エーがオオノキの言葉引き継ぎ、ナルトに向けて言い放つ。

 

「ワシと雷影は此度の会談の話が来たとき...内々に密約を交わした...会談の内容次第ではワシらの力で里を制圧すると言うものじゃぜ...雲隠れに借りを作るのは癪だが、仕方あるまい。」

 

「この里の中では尾獣化も出来まい?自分の里を破壊することになるからの。」

 

「さて、ナルト...それに他の影たちも...里の長として、賢明な判断をする事じゃぜ...」

 

他の影たちにしても、ここで殺される訳にはいかない。

 

タダでさえ、現在の里は雲隠れを除き不安定なのだ...ここで里のトップが急にいなくなってしまっては、里の混乱は避けられない...どころか崩壊しかねない。それだけは避けなければならない影たちは動くことが出来なかった。

 

「主には死んでもらう...残った人柱力はワシの里と雲隠れで分け合うことになるが...この際仕方あるまいて...」

 

オオノキが言ったところで、会談室に静寂が包まれる。

 

この間、ナルトは一言も発していなかった。

いや...ナルトだけではない。この里に刃を向けられているのだ。本来なら光の里のものたちが抗議を口にしても言いはず...

 

しかし、この部屋にいる誰も抗議の声を挙げることは無かった。

 

その時、ナルトが口を開いた。

 

「うちには優秀な相談役が二人いてな...その二人が俺を補佐してくれて随分と助かってるんだってばよ。」

 

突然、この状況と関係の無いことを話し始めたナルト。

 

「何を言っておる?」

 

エーが苛立ちを込めてナルトに言った。

 

「二人とも、とんでもなく頭が良くてな...正直、俺には考えも付かないような計画を立ててくれるんだってばよ。」

 

「だからどうしたと言うんじゃぜ...」

 

「計画には当然、失敗したときや状況によって、幾つかの変更案も用意してくれるんだってばよ。で、今回の同盟の件は、最初からいた補佐役の計画を、もう一人が修正して考えてな...考えられる限りの対処法も検討してもらった...つまり...」

 

ナルトはそこで言葉を切ると、エーとオオノキを見据える。

 

「この状況は、二人が既に予想していたって事だってばよ。」

 

「「!?」」

 

冷や汗をかく二人。

 

「だからどうした。既にこの里は包囲しておる。後手に回った貴様らに出来ることなどないわい。」

 

嫌な予感を感じつつも、現在の状況から強気を崩さないエー。

 

「任務に出てる人柱力がいるって言ったよな...ソイツらは今、どこでどうしてると思うってばよ?」

 

ナルトの言葉に、ゾッとするエーとオオノキ。

 

「ま...さ...か...」

 

「今の俺たちは全員が尾獣化できる。尾獣玉も何発も撃てるってばよ。雷影殿の言う通り、俺らは破壊に特化してる...」

 

「里を人質にとった...と言うことか...」

 

「いや、先にこちらを制圧してしまえば手出し出来まいて...」

 

二人の言葉を嘲笑うように、ナルトが言う。

 

「俺たち人柱力は互いの精神世界を通して会話が出来るんだってばよ。」

 

ナルトの言葉にエーは確認の為、一緒に来ていたビーに顔を向ける。

 

ビーはナルトの言葉を肯定するように、首を縦に振った。

 

苦々しい顔をする二人。

 

「俺はもう、誰かを無条件で信じる程お人好しじゃねぇってばよ。考えてみりゃ、尾獣が憎しみの塊になったのも、俺たち人間のせいだしな。そんな人間が相手なんだ...まずは相手に話し合いに応じるだけの状況を作る。『忍が尊重するのは行動と力』だったよな?雷影殿...」

 

「むっ...」

 

確かにエーの信条はそうだ。しかしナルトにそれを言った覚えは無い。

 

なぜナルトが知っているのか...しかしそれを考える余裕はエーには無かった...

 

「さて、雷影殿、土影殿。どうするってばよ?このまま、うちに攻め込んでみるか?自分の里の消滅をかけて...」

 

「ぐっ...」

 

もはや、二人に為す術は無かった...

 

「何が望みじゃぜ。」

 

力無く頭をたれながら、オオノキがナルトの要望を聞いた。

 

「言ったろ?話し合いをするって。うちと同盟を結ぶ気はないか?」

 

「支配...ではないのか?」

 

ここまでの事をやったのだ。どれ程の事を要求されるか...皮肉を込めて口にするオオノキ。

 

「まずは座ってくれ...話はそれからだってばよ。」

 

ナルトの言葉に全員が座り直し、改めて話し合いが始まった。

 

ナルトが同盟にあたって付けた条件は大きく言えば以下の二つだ。

 

一つ、同盟国は光の里に対し出資金を支払う。

代わりに、光の里は戦力を貸し出す。

 

二つ、同盟国は互いに争いを仕掛ける事を禁じる。

この禁を破った国は、光の里と他の同盟国の戦力を以て戦う。

 

その他細かいものは、各隠れ里によって条件は異なるが、大まかにはそう言う内容だった。

 

「~~~~~~~~!」

 

その内容に唖然とするエー。

 

「これでは戦争を起こすことも出来んな...ナルト...主は一体何を望んでおる...」

 

オオノキがナルトに聞いた。

 

「ん?そんなの決まってるってばよ...」

 

『家族の幸せだ。』

 

あまりにあまりな解答に、大口を開けて呆けるエーとオオノキ。

 

家族が安全に、幸せに過ごすためには戦争はあってはならないものだ。

 

だから戦争を無くす。今のナルトにとっては世界を平和にする事は、ただの手段でしかない。

 

全てはヒナタと、生まれてくる子供たちの為...

 

既に内容を聞いていた綱手は、大いに笑った。

 

カンクロウやメイも小さく吹き出す。

 

結局、ナルトの真意を疑おうにも、エーとオオノキも同盟に参加せざるを得なかった。

 

その発表は世界を巡り、1年後、ほとんどの隠れ里がこの同盟に参加することになり、ここに巨大な忍連合が誕生したのだった。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

  • 希望する
  • 希望しない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。