逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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クーデター

「木の葉の里でクーデターだって!?」

 

それは、何度目になるかの光の里の拡張計画を話し合っていた時の事だった。

 

任務で外に出ていた、再不斬と白がもたらした情報に驚くナルト。

 

以前から綱手が予測していた事ではあったが、実際にこうして起こってしまうと、やはりその驚きは大きいものがあった。

 

「はい。数日前、木の葉にて里人の一斉蜂起によるクーデターが起きました。」

 

「ばあちゃんや、エロ仙人たちは無事なのか?」

 

「綱手様は、既にこの情報を入手していたようで、クーデターが起こる直前に、自分の賛同者や支援者を連れて脱出したそうです。更に、このクーデターに加担せず綱手様に付く者を募って、この里に向けて移動中のようです。その数は木の葉の、実に10分の1程とか...」

 

「...そうか...」

 

「ここに来るまで、忍の足なら一週間ほどで到着しますが、一般人もいますからね。一月はかかると思います...それでどうしますか?」

 

「ん?」

 

「うちの里として、彼らを受け入れるかどうかって事です。」

 

白の問いに対して、

 

「もちろん、そのつもりだ。その為に、土地を大きくしてたんだしな...まあ、例の面接は受けて貰うつもりだけどな。」

 

ナルトは頷いた。

 

「わかりました。数が多いのでここで一人一人面接はできませんから、外に受け付け場所を設置しましょう。」

 

「ああ、それなら、複数設置してくれ。ナルトの影分身を使えば、一度に何人も出来るしな。」

 

シカマルが、白の提案に自分の案を付け足す。

 

「老紫...悪いけど、フウと一緒にばあちゃんの所に行って護衛を頼みたい。」

 

「承知した。」

「了解ッス!」

 

ナルトの指示で二人が出ていく。

 

「ああ、それからナルト君...クーデターを仕掛けた首謀者ですが...志村ダンゾウと言うそうです。」

 

ガタッ...

 

白からもたらされた新たな情報に、ナルトは思わず立ち上がっていた。

 

その表情には、驚愕が見て取れた。

 

「確かなのか?」

 

「自分の目で確かめた訳ではありませんから、そこはなんとも...」

 

「...わかった。二人とも任務ご苦労様。今日は休んでくれってばよ。今回の会議はここまでだ。これから忙しくなると思うけど、皆頼むってばよ。」

 

ナルトは再不斬たちを労うと、会議を終わらせる。

 

「シカマルは、悪いけど一緒に来てくれ。」

 

「ん?どこへだ?」

 

「多分、この里で最もダンゾウについて詳しいヤツの所だってばよ。」

 

「わかった。」

 

ナルトの言葉で行き先を理解したシカマルは頷くと、ナルトと共に会議室を出た。

 

 

「邪魔するってばよ。」

 

ナルトが向かったのは、うちはイタチの所だった。

 

ダンゾウと繋がりを持っていたイタチなら、何か知っている可能性があると考えたのだ。

 

「!?」

 

中に入ったナルトは、思わず息を呑む。そこにはイタチの他、サスケとサクラもいたのだ。

 

イタチの診察を綱手から引き継いだサクラは、定期的にイタチの元を訪れていた。

当然、護衛役のサスケも一緒だ。

 

「どうかしたのか?ナルト...」

 

イタチがナルトに声を掛ける。

 

サスケにとって、ダンゾウは両親や一族の真の敵であり、兄に残酷な運命を背負わせた張本人でもある。

 

サスケがいる前で、ダンゾウが生存していることを説明するべきかどうか...迷うナルトだったが、どうせいずれは、サスケに伝わるだろうと考え、ならばここで話してしまうことにした。

 

「実は...」

 

ナルトはイタチに話し始める。木の葉の状況...そしてダンゾウのこと。

 

「綱手様は大丈夫なの?ナルト。」

 

サクラは、綱手のことを心配していた。

 

「ああ...それは大丈夫だってばよ。今はもう木の葉を出てこっちに向かってるそうだ。」

 

「そんなことよりも、ダンゾウってヤツが生きてるのは本当か...」

 

当然、サスケはダンゾウの情報に食いついた。

 

「わからねぇ。確かに俺はダンゾウを殺したハズだ。ダンゾウのチャクラを感知した上で屋敷ごと、吹き飛ばしたからな。例え、飛雷神の術が使えたとしても、あの状況で飛べたとは考えられない。だからここに来たんだってばよ。イタチ...お前、なにか知らないか?」

 

ナルトからあらましを聞いたイタチは考え込んだ...そして、少しの間を開けた後、おもむろに口を開く。

 

「一つだけ、その状況を覆す事の出来る術がある。名を『イザナギ』と言う...聞いたことはあるか?」

 

「...それは、どんな術なんだ?」

 

「写輪眼の瞳術の中でも、究極に位置する術だ。自分に幻術を掛け、現実と夢を繋げ、あったことを無かったことにし、無かったことをあった事にする事が出来る。」

 

「なっ!?」

 

「そんなの反則技じゃない。」

 

「そんな術が...」

 

イザナギの効果に驚くサスケたち。

 

「???つまり...どう言う事だってばよ?」

 

ナルトは理解する事が出来なかったようだ。

 

「ハァ...お前に分かりやすく言えば、今回のダンゾウの件を例にするなら、ヤツはイザナギって術を使い、お前の攻撃で死んだと言う現実を、無かったことにしたって事だ。」

 

シカマルが、面倒そうに説明した。

 

「な!?そんなの反則だってばよ。」

 

「だから、皆驚いたんでしょ...」

 

サクラがツッコミを入れた。

 

「もちろんリスクはある。術の発動に大きくチャクラを消費する上、書き換えられる時間も個人差がある...そしてそれは僅かな時間だ。更に使用限界まで使ってしまったその写輪眼は、二度と光を見ることは出来ない...」

 

イタチは、イザナギのリスクを説明した。

 

「けど、兄さん...ダンゾウってヤツはうちはの人間じゃないだろ?そのイザナギが写輪眼を使って行われる術である以上、ダンゾウにはイザナギは使えないんじゃないか?」

 

サスケが疑問を口にする。

 

「いや...ダンゾウは入手経路こそ不明だが写輪眼を持っている...右目と右腕に...特にその右腕には実に10個もの写輪眼を宿している。」

 

「な!?」

 

驚き固まるサスケ...

 

「うちはシン...」

 

その時ナルトが呟いた。

 

「ん?何か知っているのかナルト。」

 

「以前、ある事件で敵対した相手なんだが、そいつは、身体の至る所に写輪眼が埋め込まれていた...なんでも大蛇丸の実験体の一人で、大蛇丸を裏切って逃走していたらしいんだが...ダンゾウの右腕はそいつから切り取ったものらしい...」

 

「うわぁ...」

 

全身に目があると言う人物を想像し、気持ち悪そうにするサクラを尻目に話は続く。

 

「だが、そのイザナギってのの効果がどんだけ凄くても、それが術である以上...チャクラを練り、印を結ばなけりゃ発動出来ないんじゃねえか?ナルトの話だと、そんな暇も無く消し飛ばされたように思うんだが...」

 

シカマルの疑問...

 

「確かにその通りだ。しかし、あのダンゾウという男を甘く見ない事だ。ヤツは恐ろしく狡猾で冷徹だ。何かをするにしても必ず保険を掛ける...そういう男だ。」

 

「つまり、ヒナタの誘拐に失敗した時から、俺が報復に来るのをダンゾウは予測していた...何らかの方法で俺のチャクラを感知してそのイザナギを発動して生き延びた...ってことなのか?」

 

「確証は無いがな...ヤツならあり得る...という事だ。ついでに言えば、その後姿を消していたのは、機会を窺っていたのだと思う。自分の戦力を増やし、木の葉を自分のものにするために...」

 

「そのダンゾウってヤツ...物凄く陰険なヤツね。」

 

サクラの感想に対し、

 

「勘違いして貰いたくないが、ダンゾウは何も私利私欲で木の葉を欲している訳ではない。あの男の行動は全て...徹頭徹尾『木の葉のため』という言葉に集約される。」

 

イタチは、ダンゾウをそう称した。さらに続くイタチの言葉...

 

「ダンゾウが木の葉を手に入れようとするのも、木の葉のために、自身が火影となり木の葉を繁栄させたいと考えているからだ。現在の火影である綱手様が木の葉を繁栄させていたなら、ダンゾウは大人しくしていただろう。」

 

「.........だが、そうはならなかった。ナルトが抜けた事で木の葉が衰退していった...だからヤツはクーデターを起こしたんだな?」

 

シカマルが念を押すように聞いた。

 

「そういう事だ...木の葉の栄光のためならダンゾウはなんだってやる...ナルト...決して油断するなよ?」

 

「ああ...」

 

イタチの言葉に、ナルトは神妙に頷くのだった。

 

 

それから、一月後...綱手が率いた木の葉の難民たちが光の里にやってきた。

 

「すまんな。ナルト...やはりこういう事になった。悪いが今日から世話になる。」

 

綱手が連れてきた人々の中には、自来也やシズネのような側近たちの他にも、イルカやカカシと言ったナルトのかつての恩師たち...そしてネジたちや、ナルトの同期のものたち...その家族...一般人ではナルトが懇意にしていた一楽を営むテウチ一家もいた。

 

そして...

 

「姉さま!」

 

会うなりヒナタの胸に飛び込んで来たのは、ハナビだった。

 

「ハナビ...良かった...無事で...」

 

ヒナタはハナビを抱き締めると、無事を喜んだ。

 

「ナルト...すまないがハナビ共々宜しく頼む...」

 

「いえ...無事で良かったです。ヒナタも随分心配してましたから...」

 

ヒアシはナルトと挨拶を交わしていた。

 

「お前がこうして、新たな里を作ってくれていて助かった。」

 

「それにしても、良く木の葉から出られましたね。日向は木の葉のエリート一族ですし、上役達が許さなかったんじゃないですか?」

 

「ふん...クーデター等を起こすような連中に付くなどあり得ん...我々日向は綱手様に尽くすと言い切ってやったわ...もっとも...全ての日向の者たちがここに来たわけではないがな...」

 

祖先や戦友たちが眠る場所...そして、自分達が住んでいる所を捨てられなかったものたち...

そして、ナルトに憎しみを抱くものたち...

 

彼らは、木の葉に留まった。

 

ヒアシも、強制する気は無かった。それぞれがそれぞれの判断をしたのだ...

 

「.........。」

 

「まあ、残った者たちのことは、彼らが考えるべき物だ。とにかくナルトよ...これから頼んだぞ。」

 

「はい。」

 

ナルト達がそんなやり取りをしている時...

 

「おいっ!なんで俺が入れねぇんだ!」

 

受け付けの一つでトラブルがあった。

 

「お前が俺に対して、憎しみを抱いているからだってばよ。」

 

その男の面接を担当していたナルトの分身体の一体は、ナルトに対する思いを尋ねた時、男から僅かに憎しみを感じていた。

 

当然、その男を受け入れる事は出来ない。

それを伝えた時、男は激昂した。

 

「なっ!そ、そんなことは無い...行く場所を失った俺たちを受けいれてくれるんだ...感謝してるさ...」

 

「悪いが誤魔化しはきかねぇってばよ。この状態の俺は人の悪意を感じ取れるからな。」

 

「そんなの信じられるか!」

 

「別に信じる必要は無ぇってばよ。お前が信じようと信じまいと、お前を受け入れる事が出来ない事に変わりは無いからな...」

 

「ぐっ...」

 

ナルトの言葉に何も言えなくなる男...

 

改めて考えれば、その通りなのだ。こちらは受け入れて貰う側...そしてナルトへの憎悪も当たっていた...

 

男は、九尾事件の折りに両親を殺されていた。

その生まれ変わりと噂されていたナルトに憎しみを持っていたのだ。

 

男は力無く肩を下げる。

 

「わかった...俺の事は良い...けどせめて、家族だけでも受け入れてくれないか?頼む...」

 

男には嫁と娘がいた。既に二人は面接を通っている...

せめて家族だけでも安心して生活させてやりたい。その思いから、必死に頼み込んだ。その為なら、憎い相手であっても頭を下げることを辞さない。

 

「わかった。」

 

「本当か!」

 

「ただし、条件がある。」

 

「条件?」

 

「この里の中心部から一番離れた場所に住んで貰う...そして...お前もそこで一緒に生活するんだってばよ。」

 

「え?」

 

ナルトの言葉がよほど意外だったのか、男は一瞬呆けてしまう。

 

「家族が離れ離れになるのは悲しいだろ?家族のためにそこまで出来るんだ...自分の感情で馬鹿な真似はしないって信じてるってばよ。」

 

「あ...ありがとう...本当にありがとう。」

 

男からナルトへの憎しみは消えていた。

 

こうして幾つかのトラブルはあったが、木の葉からの移住者...そのほとんどを受け入れる事が出来た。

 

しかし、シカマルは難しい顔をしていた。

 

「どうしたんだ、シカマル?」

 

「いや...親父とも話してたんだが...今回木の葉は、多くの戦力を手放す事になったろ?ダンゾウもこうなることは予想出来てたハズだ...アイツの狙いが読めなくてな...」

 

「そうだな...ダンゾウの目的は木の葉の繁栄...何かを仕掛けてくるのは間違い無いだろう...」

 

シカマルとの会話で胸騒ぎを感じるナルトだった。

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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