逆行したナルトの物語 完結   作:アーク1

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開戦

「.........来たか...」

 

木の葉からの宣戦布告から数週間後...

ダンゾウの率いる兵団が、光の里に集結していた。

 

「あれは!?...ちっ...やっぱ...生きてたってばよ...」

 

その兵団を見たナルトは、苦々しい表情をして呟いた。

 

敵の戦力...その大部分を占めるのは、白ゼツの兵団...

 

ならば、当然...

 

(やっと、借りを返す時が来た...)

 

ダンゾウの隣に、ゼツの姿を捉える。

 

ナルトたちによる暁殲滅の折り、黒ゼツはダメージを負いながらも、逃走に成功していた。

 

そして、身体を回復した後、潜伏していたダンゾウに接触し、協力関係を持ちかけていたのだ。

 

ゼツが用いる戦力である白ゼツ兵団。彼らの戦力は、ダンゾウにとっても喉から手が出るほどに欲しいものだった。

 

しかし、暁の元メンバーである以上、完全に信用はしておらず、せいぜい利用してやるという体ではあるが...それはお互い様でもある。

 

ゼツの目的は、あくまで母であるカグヤの復活。

 

正面からではナルトたちには敵わない。ならば、ダンゾウによる戦争を利用するつもりなのだ。

 

さらに、もう一人...そこに協力者が加わる。

 

「それに、あれは穢土転生で甦ったやつらだのぉ...」

 

敵の兵団...その一部には穢土転生によって甦ったと思われる忍が混ざっていた。

 

それを復活させた人物は...

 

(やられっぱなしは、私の性に合わないのよねぇ...ナルト君。)

 

そう、大蛇丸であった。自らが計画し、実行した木の葉崩し...ナルトにその計画を狂わされ、それは失敗に終わった...

 

その時に、ナルトに釘を刺されてはいたが、それを大人しく遵守するようなタイプの人間ではない。

 

今の大蛇丸の興味は、自分を打ち負かしたナルトに注がれており、元々協力関係のあったダンゾウの蜂起に合わせ、今回の戦いに参加したのだった。

 

そして、大蛇丸によって甦った者たちの中には、うちはマダラの姿もあった。

 

さらには、歴代の影たちの姿もある。

 

「大蛇丸め...またも死者を冒涜するとは...」

 

ヒルゼンは、彼らの姿に大蛇丸を睨む。

 

そして...恐らくはナルトに対する効果を期待してか、ミナトとクシナ...ナルトの両親の姿も見られた。

 

(.........別れは、あの時に済ませた。父ちゃん、母ちゃん...悪いけど、すぐに送り返させて貰うってばよ...)

 

「ナルト君...私も一緒に...」

 

ナルトの心境を理解したヒナタは、ナルトの手を握りながら言った。

 

「ああ...頼むな。ヒナタ...」

 

ヒナタの言葉を受けて、自分でも気付かない内に強張っていた表情を緩ませ、ナルトは微笑みながら答えた。

 

そして、暁の元メンバーたち。

 

彼らは、暁壊滅の折り、穢土転生に利用されないようにと、ナルトが球道玉を使い、その遺体を完全に消滅させていたのだが、大蛇丸は暁にいた時代に、既に彼らの遺伝子サンプルを入手していた為、この戦いに利用されたのだった。

 

その他にも、過去の強者たち...

 

ゼツと、白ゼツ兵団、大蛇丸とカブトによる穢土転生による忍たち...

ダンゾウの戦力は強大なものとなっていた。

 

そして、この里を包囲している戦力は、その中でも一部だった...

 

残りは...

 

『こちら、雲隠れの雷影じゃ...現在、謎の集団の襲撃を受けておる...スマンが、そちらへの援軍の到着は遅れる。』

 

『岩隠れのオオノキじゃぜ...こっちも同じくじゃ...』

 

『霧隠れの水影よ...私たちのところにも、気味の悪い連中が来てるわ...』

 

『砂隠れの方も同じくじゃん...』

 

同盟国から通信が入って来る。

 

木の葉の亡命者たちを受け入れた時、その中に、未来で科学忍具の創造と言う大発明をした天才科学者のカタスケがいたことに気付いたナルトは、彼を重用した。

 

豊富な資金を提供し、通信機の開発を優先するように指示する。

 

カタスケは、この短期間に実用に耐える通信機の開発に成功したのだ。

 

そして、ほんの数機ではあるがそれは製作され、同盟国の長に配られる事になった。

 

最初は同盟に懐疑的な雰囲気を持っていた、エーやオオノキだったが、この数年...拍子抜けな程に平和な世の中...そして、光の里で見る人々の笑顔...彼らは元々故郷を同じくする者ではない。

 

それでも手を取り合い、助け合う姿に、もはや裏切り、裏切られる事が当たり前だった自分たちの時代とは違うのだと、理解した。

 

その結果、現在は積極的に忍連合に協力している。

 

そんな中での、木の葉からの光の里への宣戦布告...

 

当然、各同盟国も光の里に援軍を送るべく、出兵していた。

 

そして、それはダンゾウにも予測出来ていたこと...

 

その援軍を止めるために、白ゼツ兵団の一部、そして穢土転生の兵の一部を足止めの為に、各里に派遣していたのだ。

 

『わかった。その白ゼツの兵団は、こっちの忍に化ける能力を持ってる...十分に注意してくれ...それから、穢土転生の兵はチャクラ切れを起こさない上に、身体を傷付けても、直ぐに再生しちまうんだってばよ。術者がこっちにいる以上、そっちでは倒すんじゃなく、動きを封じる事を優先して戦ってくれ。』

 

ナルトは、自分の知る情報を各里長に伝える。

 

『わかった。ナルトよ...死ぬなよ。お主が死ねば同盟に大きな影響があるんじゃぜ?』

 

『わかってるってばよ。そっちも気をつけてな。』

 

オオノキから最後にそう締めくくりの言葉を残し、彼らの通信は終えた。

 

「にしても、敵さんの戦力に木の葉の忍がほとんどいないのが気になるな...まあ、知り合いとの戦闘にならずに済むのはありがたいって言えばありがたいんだが...」

 

シカマルはダンゾウの戦力を測っていた。

その中に、木の葉の忍はほとんどいなかった。

 

「木の葉に残ったのは、あの不況の折りに仕事にあぶれた...こう言ってはなんだが、あまり有能では無い忍がほとんどだ...そもそも有能な忍なら、ダンゾウが率いる木の葉に先が無いと考えるだろうからな。そんな連中を戦場に連れてきても、戦力にならない所か味方の足を引っ張る事にもなりかねん...ダンゾウは恐らくそう考えたのだろう。」

 

シカクが、シカマルの疑問に対して推測した答えを出した。

 

「確かに、伏兵が紛れてるような感じは無いってばよ。」

 

仙人モードで辺りを感知していたナルトだったが、特に伏兵のチャクラを感知することは出来なかった。

 

「だとすると...木の葉の連中は、里で留守番か?」

 

自分達の未来を左右する戦に参加すらしないとは...呆れるシカマル。

 

「まあ、そう言うな...彼らとて上から命令を受けているのだろう。」

 

シカクは、一応木の葉の人間としてフォローを入れた。

たとえ、袂を分かったとは言え、かつては同じ木の葉の仲間だ。

 

あまり、悪し様に言われるのを良しとは思えなかったようだ。

 

その後...

 

互いの代表者が前に出る。

 

「うずまきナルト...以下人柱力たちに告げる。大人しく、こちらに捕まるならば、光の里への攻撃を取り止めようではないか...」

 

ダンゾウは、静かに告げた。

 

「それに素直に従うと思うのか?」

 

ナルトの返答を受けたダンゾウはニヤリと笑う。

 

「いや?言ってみただけだ。お前たちを降し、世界に我々の力を知らしめる。そして木の葉こそが世界を統べるものとなるのだ。」

 

「そうはさせねぇ...今世界は、ようやく仲間と手を取り合い、協力出来る世界になりつつあるんだ...それを邪魔はさせねぇってばよ...」

 

お互いの主張をしつつ、互いの陣地に戻る。

 

「戦闘は避けられないって事で良いんだよな?」

 

「ああ...」

 

ナルトはシカマルに頷くと、自身の仲間たちを見る。

 

そして、ナルトは口を開いた。

 

「皆...聞いてくれ...ダンゾウの目的は俺たち人柱力...その中にいる尾獣だ...」

 

「どうやってコントロールするつもりなのか...その手段はわからない...ただ、本当ならこの戦いに、皆は巻き込まれただけだ。」

 

「皆が、この戦いに参加する必要は無いのかもしれない...それでも...」

 

「どうか、皆の力を貸して欲しい。人柱力も...里も...生まれも関係無い...。どんな人間とだって、手を取り合い...支え合って生きていけるって所を、世界に見せてやりたいんだってばよ。だから...」

 

「それ以上は、必要無えのぉ...」

 

ナルトの演説...最後に頭を下げて協力を願うハズだったナルトを、自来也の言葉が止める。

 

「そうだ。俺たちは巻き込まれたんじゃない。自分の意思でここにいるんだ。」

 

誰かが声を挙げた。

 

「ナルト様は、俺たちに居場所をくれた。だったら今度は俺たちが、助ける番だ。」

 

光の里の人々が次々に賛同する。

 

「フフッ...我々とて、木の葉から脱出して、住む場所を提供して貰ったのだ。借りは返さねばな...」

 

綱手は、元木の葉の忍たちに向かって言った。

 

その場に集った者たち全てが、ナルトに協力することを誇りに感じていた。

 

「たく...バカ正直に敵の狙いを話す必要なんて無いってのに...」

 

シカマルは、ナルトの演説に苦笑いを浮かべた。

 

「だが、そんなバカだからこそ...皆ナルトを慕っているのだろう?お前も含めてな...」

 

シカクがシカマルに言う。

 

「.........。」

 

図星を指されたのか、無言になるシカマル。

 

「ありがとう...皆...最後に...俺から皆に伝える言葉は一つだ。」

 

仲間たちの言葉を受けたナルトは、感謝しながらも締めくくり言葉を口にする。

 

かつて...五影たちから送られた言葉...今は自分が彼らに送るべきだろう...

 

ナルトは大きく息を吸う。

そして...

 

「勝つぞ!!!!」

 

大声で叫んだ。

 

「「「「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」

 

その言葉に応える様に、歓声が上がった。

 

戦いが始まる...

今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。

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