「ゼツ...よくやったわ...と言いたい所だけど...このチャクラ...どうやら正規のやり方で妾が甦った訳ではないようね...」
復活してすぐ自身のチャクラがおかしな事に気付いたカグヤ。
「うん...ごめんね母さん...尾獣のチャクラは手に入れるのが難しくて...人間たちのチャクラで代用したんだ...」
「成る程...どうりでチャクラが濁ってる...薄汚い人間どものチャクラのせいなのね...やはり、チャクラは妾一人に集めるべきものだわ...」
黒ゼツの話を聞いたカグヤ...尾獣のチャクラの純粋なエネルギーに比べて、人のチャクラに濁りを感じたようだ。
改めて、チャクラは自分一人の物だと確信するカグヤ。
その時...
『こんな世界...消えちまえ...』
感情を無くしたハズのカグヤをして、ゾッとする程に暗く...怨嗟に満ちた言葉が辺りを支配した。
思わず振り返るカグヤ...
そこにいたのは、一人の青年...
白眼で探ると、ハゴロモの力の片割れを感じた。
「黒ゼツ...あの子はなに?」
「ああ、彼は九尾をその身に宿した人間さ...見ての通り、ハゴロモの力を受け継いでる。僕の計画を悉く潰されてね...さっき、意趣返しに、彼の恋人を殺したんだ...その子もハゴロモの力の半分を宿してたから、もう母さんを阻む者はいないよ?」
「...............。」
自身の足元に倒れている女性を見て、黒ゼツの説明を理解するカグヤ。
しかし、一つだけ気になる事がある...
カグヤは、ナルトを見て恐れを抱いた...
本当に、もう自分を脅かす存在はいないのか?
警戒するカグヤ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方、ナルトは虚無感に苛まれていた。
(何故だ...何故俺は大事な人を守れない...どうして繰り返しちまうんだってばよ...何度も...何度も...何度も...)
魂喰いで付けられた傷は、癒える事はなく、いずれはその魂を消滅させる。
もう、ヒナタの笑顔を見ることは永遠に出来ない...
ヒナタを黒ゼツの刀が突き刺した光景を見たナルトは、精神世界で自分を責め続けていた...
そして...
(ああ...そうか...こんなくだらない世界があるからいけないんだ。家族と幸せに暮らす...そんな当たり前の幸せすら認めてくれない世界なんていらねぇ...)
「こんな世界...消えちまえ...」
ナルトの口から無意識に溢れた言葉...
それは世界の破滅を願うものだった。
『ナルト...正気に戻れ...お前はそんな事...望んでねぇハズだろ!』
そんなナルトを九喇嘛が懸命に説得しようと試みる。
しかし...
『くっ...ナルトの憎悪が...ワシを侵食している...』
ナルトの精神世界...破滅を願うナルトの心が精神世界そのものを憎悪で埋めていく。
『ぐっ...ナ...ル...ト...』
闇が九喇嘛を覆い、やがて九喇嘛の声は聞こえなくなった。
更に、ナルトの中にいた磯撫と穆王も既に闇に取り込まれていた。
そして...
ナルトの怨嗟の言葉と同時に、ナルトを憎悪のチャクラが覆う。
その姿は前史において、憎しみに捕らわれたナルトが九尾の力を発現させた時の物に似ていた。
「ナルト!」
その様子を、他の人柱力たちが心配そうに見守る。
「グルルルルルァァァァァァァ!!!!!!」
ナルトから発せられた言葉はもはや、人の物ではなかった。
ナルトから生えた九尾が突然伸びる。
その目標は他の人柱力たち...
「ぐぁっ!!」
ナルトから生えた尾は、とてつもない速さを持って人柱力たちに迫ると、その身体を捕らえた。
「これは...力が...尾獣の力がナルトに吸いとられているのか...」
我愛羅は、自分の身体から守鶴の力が抜き取られて行くのを感じていた。
『くっ...マズイぜ...このまま全てのチャクラを奪われたら、我愛羅が死んじまう。』
守鶴は、なんとか我愛羅を死なせまいと必死に抵抗していた。
それは他の人柱力と尾獣たちにとっても同じだった。
皆がなんとか抵抗を試みていた。
しかし、ナルトから発せられる力は尋常な物ではない。
『クソ...もうダメだ...』
尾獣たちが諦めかけたその時...
「ググッ...くっ...皆...逃げ...グルァァァァァ!」
一瞬、ナルトから発せられる力が弱まる。
その隙を付いて、なんとかナルトとの接続を切り離した我愛羅たち。
九割九分、その力を取られたがなんとか、生きながらえた。
一方、人柱力たちとの接続を切り離されたナルトだったが、全ての尾獣...そのほとんどの力を吸収した事に変わりはなく、さらにはナルトと九尾の前世の力が加わったからなのか、その力は十尾を遥かに超えるものだった。
ナルトを覆うチャクラに変化が生まれる。
闇は深く、濃くなり、漆黒の色合いを強くする。
ナルトから生えた尾は十本となり、その手からは鋭い爪が延びていた。
犬歯は鋭く長くなり、その尋常ではない破壊に特化した力から、正に『破滅の魔獣』と呼ぶべき姿へ変貌していた。
その瞳が、カグヤを捉える。
「ヒッ!」
ナルトの視線に射竦められたカグヤは、思わず小さな悲鳴をあげる。
恐怖...かつてチャクラの実を食し、その身にチャクラを宿し、乱世を治めたカグヤ。
兎の女神と称され信仰の対象となり、またある時は鬼として恐れられた。
そんな自分が久しく感じることの無かった恐怖を、ただ目を合わせられただけで感じた。
目の前のモノは、ただ九頭の尾獣の力を合わせただけの存在ではない。
ましてや十尾とも違う。
得体の知れない別のモノだと強く感じた。
「グルルルルル...」
ナルトが戦闘体勢を取った。見ているのはカグヤと同化した黒ゼツ...
ヒナタを殺された恨みを、理性を失ってもなお覚えているのかも知れない。
「ガッ!」
地面を蹴り、カグヤに迫るナルト。
「ヒィッ!」
あまりの迫力から、カグヤは迎撃を考える事すらせず、異空間に逃げ出した。
「フゥ...」
異空間に逃げ込み、安堵のタメ息を吐くカグヤ。
「母さん...何故逃げたんだい?あんなヤツ...さっさと殺しちゃえば良いじゃないか...」
黒ゼツは何もわかっていない...
その能天気な発言にカグヤは苛立ちを覚えた。
「お前は、アレがなんなのかわかっているのか?」
「ん?そうだね。アレはうずまきナルトと言って、ハゴロモの片方の力を継いだ人間で、尾獣どもを束ねる力を持っている...って所かな。でも、問題ないでしょ?例えアレが十尾に匹敵する力を持ったとしても、それを超える力を持つ母さんの敵じゃないさ。」
「違う...アレはそんな生易しいモノではない...十尾を超えるチャクラ...その全てを破壊の力にのみ費やした存在...全てを破壊する破滅の魔獣だ...」
ピシッ
カグヤが断言したその時、異空間の空に罅が生まれる。
「なにが?」
「まさか...」
突然の現象に驚く黒ゼツと、心当たりがあるのか、固まるカグヤ。
ピシッ...ピシッ
異空間に生まれた亀裂が大きくなっていく。
そして...
バリンッ
異空間に穴が空いた。そこから侵入してきたのは...
「ガァァァァァァァッ!!!!!」
ナルトだった。
「なっ...どうやってここに...ここは母さんが生み出した異空間...母さんが作った穴から侵入するならまだしも、自分で穴を開けて入ってくるなんて不可能だ。」
「だから言ったのよ...アレはそんな生易しいモノではないと...恐らく向こうとこの異空間にある次元の壁そのものを破壊したのね...」
黒ゼツの言葉に、険しい表情を浮かべて答えるカグヤ。
「グルッ!?」
カグヤ...と言うよりも黒ゼツを発見したナルトは、その目を細める。
「くっ...」
別空間へと逃げ込もうとするカグヤだったが、ナルトの身体から延びたチャクラ腕に身体を掴まれた。
ギリギリと身体を締め付けられ苦悶の表情を浮かべるカグヤ。
「母さん!」
苦しそうな母の顔を心配そうに見る黒ゼツ。
「調子に乗るな!」
掴まれた腕からなんとか手だけを相手に向けたカグヤ。
『共殺の灰骨』
カグヤの掌から棒状の骨が発射された。
この骨に当たったが最後...身体を灰にされ、消滅する。
ナルトは、自分を締め上げる為に動いていない。
これに当たれば、いかにナルトと言えども助からない...
内心ほくそ笑んで自分の勝利を確信するカグヤだったが...
「なっ!?」
確かに骨はナルトに当たった。が、その効力が発揮される前に骨は跡形もなく消滅してしまった。
「どういう事...」
呆然と呟くカグヤ...いや、本当はわかっていた。
ナルトを覆うチャクラの衣...それもまた破壊に特化しているのだと。
自分の発射した骨があのチャクラの衣に触れた瞬間に破壊されたのだ。
冷や汗をかきつつ、全身にチャクラをみなぎらせて、なんとか拘束から脱出したカグヤは、なりふり構わす逃げに徹する。
空間を渡り、距離を取るカグヤだったが、それを見たナルトは、口を開けると巨大な求道玉を作り出した。
「まさか...妾をこの空間ごと消すつもりか...」
カグヤは、ナルトの意図を察した。
別空間へ逃げなくては...
カグヤが他の異空間へ逃げようとしたその時...
求道玉が発射された...
「あ...ああ...ああああああ...」
迫る求道玉に為す術なく包まれたカグヤ...
ズドオオオオオオオオオオン...
「ここは...」
いつの間にか、黒ゼツは元の空間に戻っていた。
「母さんは!?」
母のチャクラを感じない...
どうやら、自分だけを逃がしてくれたらしい。
「仕方ない...次の母さん復活まで、また隠れて暗躍するまでだ...」
自分の寿命は永遠に等しい。器を一から用意するのは時間がかかるが、なんとかなるだろう...
また最初から計画をやり直すのは業腹だが仕方ない。
黒ゼツは、すぐに未来へと気持ちを切り替えた。
しかし...
ガッ
「ナルト!?」
いつの間に側にいたのか、ナルトが黒ゼツを掴む。
「は、放せ。僕には、使命があるんだ。こんな所で終わる訳には。」
「グルルルルル...ガァァァァァァァ!!!」
ナルトの力によるものか、黒ゼツの身体が端から消滅していく。
「ひぃ...嫌だ...死にたくない...死にたくない...」
それに気付いた黒ゼツは、初めて本当の恐怖を味わう。
死にたくないと連呼する姿は、ハゴロモの時代から暗躍してきた存在とは思えないほど哀れだった。
「母...さん...」
そして、その言葉を最後に黒ゼツはこの世から永遠に消滅したのだった。
「グルァァァァァァ...グルァァァァァァ!」
ナルトの雄叫びが辺りに木霊する。
ヒナタの仇を取って尚、ナルトが元に戻る様子は見られない。
その雄叫びは、どこか物悲しく感じられるのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
-
希望する
-
希望しない