ナルトを中心にして作られた忍連合が、今、ナルトを救う為にナルトに対する。
今まで、人間には見向きもしなかった魔獣と化したナルトだったが、流石に自分に向かってくるものたちには反応した。
「グルルルルル...」
無造作に振るわれた腕...たったそれだけの動作で、巨大な衝撃波が起こる...
「くっ!なんて威力だ...」
ナルトの力に戦慄を覚えるサスケ。
「あのナルトは、十尾としての能力...その全てを破壊に特化させているんだ。まともに当たればあっという間に戦闘不能だぞ。」
イタチはそんな弟にアドバイスする。
その時、ナルトの姿が消えた...
そう思った時には、既にサスケの前に現れていた。
(速い!)
ナルトの攻撃を自身の持つ刀で受けようとするサスケだったが、
「受けるな...かわせ!」
イタチの咄嗟の言葉で後ろに飛びかわす。
先程までサスケがいた場所には、大きなクレーターが生まれていた。
イタチの言葉を受けずに、あのまま受けていたら、刀ごと砕かれていただろう。
思わずゾッとするサスケ。
尚もサスケを攻撃しようとするナルトだったが、その間を砂が遮る。
「尾獣だけが俺たちの力ではない。ナルト...今度は我らが相手だ。」
颯爽と立つ我愛羅たち人柱力。
我愛羅たちのお陰でひとごこち付いたサスケだったが、その顔は悔しさに歪んでいた。
先程の攻防でわかってしまったのだ。
今の自分ではナルトの足止めすら、ままならないと...
「畜生...なんでだ...なんで俺は、これほどまでに弱い...」
「サスケ...お前はナルトを助けたいのだろ?もう諦めるのか?」
サスケの独り言を聞いたイタチが問いかける。
「ああ...助けたいさ...でも現実に俺には何も出来ない...アイツが苦しんでいるってのに...俺は何もしてやれない...」
自分の不甲斐なさに、拳を握りしめるサスケ。
あまりにも強く握りしめた為、その手からは血が滲み出ていた...
「サスケ...今のお前の力を飛躍的に上げる方法が一つだけある。」
「え?」
イタチの言葉を思わず聞き返すサスケ。
「俺の...目を...お前にやる。」
「な!?」
イタチの提案に、思わず固まるサスケ。
「俺達うちは一族の写輪眼には通常のものよりも遥かに強力な上のステージがある。それが万華鏡写輪眼。シスイの別天神や、ダンゾウのイザナギ...俺の瞳術...月読や天照は、この万華鏡写輪眼によるものだが、この万華鏡写輪眼の開眼には、一つ大きな要因がいる...それは自分の大切な人の命をその手にかけること...」
「そんな...」
「お前の場合はサクラになるのだろうが...ナルトを止める為とは言え、それはナルト自身が望んでいないハズだ。だから裏道を使う。」
「裏道...」
「そう...既に万華鏡に開眼している俺の眼をお前に移植する。」
「でも、そんな事したら兄さんが...」
「ふっ...どの道この戦いが終わればまた封印しなければならない...今までと変わらないさ...」
「だったら、俺の眼を兄さんに...」
「それは何かの時の為に取っておけ...言ったろ?俺にはもう必要の無いものだ...」
「くっ...」
「さあ、サスケ...どうする?お前の決断は...」
イタチの問いかけにサスケは追い詰められる。
ナルトは助けたい...今の自分では力不足なのも理解している...
だが、だからと言って兄の眼を奪うのは...
「サスケ...時間が無いぞ?」
「グォォォォォォォ!」
イタチの言葉を肯定するかのように、ナルトの雄叫びが木霊する。
いつの間にかエーたち援軍の影たちが戦いに参加していたが、足止めが精一杯の状況だった。
サスケは決断する...
「わかった...兄さんの力...貰い受ける...」
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ズドォォォォォォォォォォォォォォン!
「くっ...足止めもキツくなってきたぞ。」
「なんじゃ雷影...弱音を吐くとはらしくない。」
憎まれ口を叩き合うオオノキとエー。
そこに、ナルトが攻撃を行う...
「「ちぃっ!」」
避ける二人だったが、それを見越したかの様に、避けた場所目掛けて別のチャクラ腕が二人に迫っていた。
「「しまった!」」
致命的な失敗に、死を覚悟する二人。
しかし、いつまで経っても攻撃は来ない...
見ると、そこにチャクラで出来た巨大な鎧武者が立ちふさがり、手にした刀でナルトの攻撃を防いでいた。
「これはスサノオか!」
その術を知っていたオオノキが叫ぶ。
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少し前の事...
イタチの目を貰う覚悟を決めたサスケは、サクラの元を訪れていた。
サクラに事情を説明したサスケ...
最初は拒否するサクラだったが、二人が納得していることを察し、その場で移植を行った。
「サスケ...あのナルトに対抗するには、写輪眼の瞳術の中でも、攻撃に特化した『スサノオ』しか無い。」
眼を失ったイタチだったが、サスケの後を正確に追いながら術の説明を行う。
「お前は万華鏡写輪眼には慣れていない。お前は術の発動と維持...操作に専念しろ。術の制御やサポートは俺がやる。」
そう...イタチはそのためにサスケと共に戦場に向かうのだ。
眼を失ったとて、自分にはまだやれることがある。
サスケは万華鏡写輪眼を手に入れたばかり...
制御は愚か、発動も覚束ないだろう。
そのサポートの為に自分はいる。
「行くぞ兄さん...『スサノオ』」
二人をチャクラが包み込む。サスケの力とイタチの制御力...スサノオは、初めての発動でありながら、完全体だった。
そのスサノオを使い、ナルトの攻撃を止めるサスケ。
「ぐっ...」
予想以上の衝撃に、思わずうめき声をあけるサスケ。
「いかにスサノオとて、あの力にはそう何度も対抗はできん。できるだけ受け流す様に攻撃を受けろ。」
「わかった。」
イタチがサスケに指示を飛ばす。
「サスケ君...五秒で良い...ナルトの足を止めてくれないか?」
その時、下から声がかかる...それは四代目火影...ミナトだった。
ナルトが破壊の化身と化した時、一縷の望みをかけて、ミナトとクシナの制御を止めた大蛇丸。
ミナトたちは、自分達の息子が世界を破壊しようとしている姿に心を痛めていた。
しかし、ナルトを止める為に集った忍たちの戦いに勇気つけられて、自分達のなすべき事を決める。
「ミナト...例え私たちがあの子にとって親失格なのだとしても、私たちがあの子を息子として愛してる事に変わりは無いってばね。子供の過ちを正すのは、親の役目よ?」
「そうだね...クシナ...」
ミナトは、クシナの言葉に頷いた。
「クシナ...九尾のように、あのナルトを封印の鎖で縛る事はできるかい?」
「難しいってばね。九尾でさえ止めるのは命懸けだった。目の前のナルトはその九尾を遥かに超える力を持っている...私一人の力じゃ一瞬、動けなくするだけで精一杯よ...それに、封印の鎖をナルトに使うのにしても、あの速さじゃ無理...せめて少しの間ナルトを足止めしてもらえないと...」
クシナは、苦しそうに答えた。
「わかった。そっちは俺がなんとかする...クシナは術の準備を...」
ミナトはクシナから言われた条件を満たすべく、伝心の術が使える山中一族に接触し、これを他の忍たちに伝えた。
足りないチャクラは、皆で補えば良い...
あとは、ナルトの足を止めれば...
その役をミナトから託されたサスケ。
「五秒か...あのナルトを相手にするには厳しいな...」
イタチは冷静に言った。
「それでも...やるしか無いんだ...」
「グルルルルル!?」
ナルトの足を止めようと、自分から攻撃を仕掛けるサスケ。
スサノオの力は強大だが、それでもナルトの脅威にすらなり得ない...
だが、何故かその攻撃をかわすナルト。
それは、ナルトのどこかでまだサスケに対するライバル心が残っていたからかも知れない。
「グォォォォォォォ!!!!」
スサノオに対抗すべく、自らの纏うチャクラを巨大化させるナルト。
真っ向からサスケと打ち合うつもりなのだ。
「予想外だが、これならいける。五秒...死ぬ気で耐えて見せる...打ってこいナルトォ!」
気迫で耐えるサスケ。
そしてクシナの術が完成する。
巨大な鎖がナルトを縛る。
「巨大化したのは失敗だってばね。お陰で目標がわかりやすい。皆...お願い私にチャクラを...」
クシナにチャクラを集める忍たち。
ナルトは、その鎖を断ち斬ろうともがくが、流石にクシナの封印...それも忍連合が総出で強化した鎖はなかなか破れない。
「今よ、皆...ナルトに呼び掛けて...ナルトを正気に戻すってばね。」
クシナの号令で、ナルトに呼び掛ける仲間たち...
「ナルト...帰ってこい。」
「お前に復讐は似合わねぇ。」
「俺達に人としての生き方を示してくれたのはお前だろ!」
多くの仲間たちが、ナルトに呼び掛ける。
ナルトなら戻れる...そう信じて...
しかし...
ビキッ...バキッ
「ぐっ...強すぎる...皆のチャクラを集めても足りないの?」
クシナは、なんとか鎖を維持しようと踏ん張るが...
バキィン...
鎖が跡形もなく砕け散る。
「グォォォォォォォ!!!!」
サスケもチャクラを使い果たし、もはやスサノオを使う力は残っていない。
「畜生...結局俺達にはナルトを救えないのか...俺達の戦いは...無駄だったのか...」
サスケが諦めの言葉を口にした。
その時...
「そんな事無いよ...サスケ君や、皆の戦いは無駄なんかじゃない...皆が時間を稼いでくれたお陰で、私はこうしてここに立っている。後は、私が引き受けます!」
死んだハズのヒナタが、そこに立っていた。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない