時間は再び巻き戻る。
サスケがイタチの目を移植する為に、サクラたちの元に戻って来た時の事...
「サクラ...ヒナタの事は私に任せて、サスケ達の事を頼む。移植が終わったら、お前はそのままサスケたちのサポートに回れ。」
イタチから説明を聞いた綱手は、ヒナタの治療をし続けているサクラに命令する。
「ですが師匠!」
サクラはイタチの提案にも驚いたが、それよりも自分がこの場を離れる事に抵抗があった。
綱手と自分の二人がかりの治療でさえ、ヒナタは一向に回復する兆しが見えないのだ。
自分が離れてしまえば、一気に傷口が広がり、もう助からないのではないか...そんな不安があった。
サクラは、ヒナタがナルトを救い出せるこの世界で、唯一の存在だと考えている。
何しろ、ナルトがああなったのはヒナタが傷つけられたからなのだから。
「この傷は普通ではない。二人だろうが三人だろうが、回復役を増やした所で状況は変わらないだろう...」
「...............。」
サクラが何を躊躇しているか、正確に把握している綱手はサクラを諭す為に、敢えて厳しい現状を伝えた。
「その通りじゃ...」
と、その時ふいに別の声がかかる。
「誰だ!」
サスケがその人物を警戒する。
「ワシは大筒木ハゴロモ...お主達に分かりやすく言えば六道仙人と申す。」
「なに!六道仙人だと!!!」
あまりにもビックネームな為、疑わしい視線を向けるサスケ。
「まあ、ワシの事は良い。今はナルトじゃ...サクラとやら...ここはワシに任せて、うちはの兄弟の手助けをしてやってくれ。」
しかし、そんなサスケには目もくれず、サクラに指示をするハゴロモ。
サクラも、やはり突然の六道仙人の登場に戸惑い綱手の顔を見る。
しかし、綱手は何も言うこと無く、ただ頷いた。
「!?」
それは、綱手がこの人物を六道仙人と認めていると言うこと...
何故、疑いすらしないのか...しかし、この師匠の事...意味の無いことはしないだろう...と考えたサクラは、綱手に頷き返すと、目の移植手術を始めた。
「やれやれ...もう少し早く出てきて頂けると助かったんだがね...」
綱手は、ナルトの記憶を見た時に六道仙人も見ている。
そして、この人物から感じる巨大な存在感。
だから確信していた。この人物が六道仙人なのだと。
世界を創造したと言われる人物...彼ならヒナタを助けられると考えた。
とは言え、もう少し早く登場してくれたなら、そもそもこんな事にはならなかったと、皮肉も交えて口にした。
「すまんな...ワシがこの世に出てくるには条件があるのでな...そんな事よりも、今はヒナタをどうにかせねばな...」
「治せるのか?」
「ワシには無理じゃな...」
「貴方でもか!?」
綱手は、六道仙人ですら治せないと言う事に絶望を覚える。
「うむ...あの魂喰いの一撃によってヒナタの魂は傷を負ってしまった...魂の傷は肉体にも影響を与え、いくら回復しようが魂の傷が癒えぬ限り、すぐに肉体の傷も開いてしまう。」
「つまり、魂そのものを癒す必要があるの...ということか?」
ハゴロモの説明を、瞬時に理解する綱手。
「そうじゃ...しかし、魂と言うものは他人がどうにか出来る物では無いのじゃ。」
「だが、貴方なら出来るのでは無いのか?世界を創造したと言われる力を持つ貴方なら...」
綱手の言葉に、しかし、ハゴロモは首を振る。
「言ったであろう?魂を他人にどうにかする事は出来ぬと...ワシに出来るとすれば、魂の欠損部に、ワシが新たに創造した魂を融合させ補うと言う事じゃが...果たして、それは『日向ヒナタ』と言えるかの?」
「それは...」
「魂とは、己を己たらしめる根元の物...別の魂と融合してしまえば、それは別人になってしまうじゃろう...」
確かに、六道仙人の言う通りだろう...仮に自分の魂に新たに創造された...それこそ赤ん坊のように無垢な魂が融合したら...それはもう自分ではない...別の人間だ...
「では、もはやヒナタを助ける事は出来ないのか?」
もはや、ヒナタを救う手立ては無いのか...
綱手が悲嘆にくれる中、ハゴロモは言った。
「早とちりするでない...『ワシでは』無理と言ったのじゃ。」
「どういう事だ...何か方法があるのか!?」
ハゴロモの言葉に、詰め寄る綱手。
「なに...この者の身体にはな、二人のヒナタの魂が存在しているのだ。」
「なに!?どういう事だ...」
「お主も、ナルトの事情は知っておろう?この世界とは違う歴史でナルトに起こったこと...その世界のワシはナルトを過去に送るために九喇嘛と協力して時渡りの術を使った。しかし、もともとあの術は肉体ごと過去に送るもの...魂のみを送る為のものでは無いため、どのような副作用があるかはわからなかった。」
ハゴロモの説明は続く。
「術が発動した時、その場にいたナルトの縁者の魂...つまり『うずまきヒナタ』『うずまきヒマワリ』もまた、ナルトに引きずられるように、この世界にやってきておったのだ...」
そう...ナルトを過去に送るために開いた時空の穴...しかし、本来肉体ごと過去へ送るハズだった時空の穴は、ナルトと九喇嘛の魂を送っても閉じる事なく、その場で死んでいたヒナタとヒマワリの魂を吸い込んでいたのだ。
「ならば、何故ヒナタは記憶をもっていなかった?」
綱手は当然の疑問を口にする。ナルトは前世の記憶を有している。
この世界にまだ誕生していないヒマワリはともかく、すでにいたヒナタは何故記憶を持っていなかったのか...
「うむ。それはのぅ...ナルトの魂はこっちに来てすぐにこの世界のナルトと融合したのに対して、ヒナタは融合しておらんかったからじゃ。理由はわからぬがな...しかし、それが今回は幸いした。この世界のヒナタと、あの世界のヒナタ...同じ魂である以上、この二つが融合すればヒナタの傷ついた魂は補完され、回復するじゃろう...」
「成る程...それで二つの魂がヒナタの中にあるのか...ではすぐに融合をお願いする。」
ハゴロモの説明に納得した綱手は、ヒナタの魂の融合を願うが、
「まあ、待つのじゃ...今二人の魂は互いに向き合っておる。お互いに意識を持っておる以上、こちらが勝手に融合は出来ぬのでな。」
ハゴロモは、いまヒナタの精神世界で二人のヒナタが向き直っているのを視ていた。
「そうか...」
確かに、いくら自分自身とは言え互いに辿ってきた経緯が違うのだ...勝手に融合などされたくは無いだろう。
「ワシらは、二人のヒナタが結論を出すまで、ヒナタの身体を維持するのが役割じゃ。」
「わかった。」
ハゴロモの言葉...それは自分の得意分野であり存在意義でもある。
先ほどまでの絶望的な状況とは違い、助かる見込みが出来たのだ。
綱手は気合いを入れてヒナタの回復を再開した。
(サスケ...それにこの場に集った全ての忍たち...ヒナタが回復するまで...ナルトの事を頼んだぞ...)
綱手は、ナルトを止める為に奮闘する忍たちに祈った...
(ふ...この私が他人に祈るなんてね...長生きはするもんだ...)
思わず苦笑する綱手。
ほんの少し前...火影になる前は誰も信じていなかったのに...
ナルトに出会って自分もまた変わったのだと、実感した綱手。
「グォォォォォォォ!!!!」
気付くと、クシナの封印の鎖がナルトに巻き付いていた。
その鎖を全忍連合がチャクラを送り強化していた。
ナルトを助けようと、皆が声をかける。
皆がナルトに元に戻ることを願っている。
しかし...
バギィッ...
無情にも鎖は引きちぎられた...
皆が諦めかけたその時...ヒナタの目が動いた...
ナルトを救う、最も重要な人物が目を覚ましたのだった。
今回、逆行したナルトの物語は完結です。他にpixivに幾つか投稿してる作品があるのですが、投稿を希望させるかどうか聞かせて下さい。
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希望する
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希望しない