ベルの兄は異世界人   作:ごーたろんす

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これでクノッソスは終わらせる!

なんかもっと綺麗にまとめたかったです。

こんなの認めないって人はごめんなさいっ!!


クノッソスの最期。そしてユウ・クラネルの最期!?

フィンは攻撃をしながらバルカの行動を冷静に観察する。動きが非常に遅いが浮き出ている血管からドス黒い液体が撒き散らされる。それも全て避ける。バルカの手だった部分が触手に変わり、攻撃が苛烈さを増していく。

 

「フィン団長。アスフィ団長。私の詠唱時間を稼いでください。範囲完全治癒魔法を展開します。その範囲ならどんな傷、カースも即座に治ります。」

 

そのアミッドの言葉を聞いて驚愕とともに勝てるヴィジョンが浮かび上がってくる。

 

「万能者!アミッドの護衛を頼む!僕はあいつの攻撃を抑える!」

 

フィンは槍を構え触手を弾いていく。アスフィの魔道具を投げ、ユウに教わった技術を使いうまく捌いていく。

 

「癒しの滴、光の涙、永久の聖域。薬奏をここに。三百と六十と五の調べ。癒しの暦は万物を救う。そして至れ、破邪となれ。傷の埋葬、病の葬斂。呪いは彼方に、光の枢機へ。」

 

アミッドが高速詠唱を開始すると共にバルカの攻勢が激しさを増していく。バルカもアミッドが危険であることに本能で気づいたのだろう。

フィンとアスフィは全力でその攻撃を捌いていく。尚もアミッドの詠唱は止まらない。

 

「聖想の名をもって———私が癒す。ディア・フラーテル」

 

聖女から完全治癒魔法が放たれ、半径5メートルほどの魔法陣が形成される。

それは奇跡とも言える聖域だ。フィンは攻撃し、避けずに返り血を腕に当ててみる。そこが燃えるように痛むが即座に光を放ち、治癒する。その光景を見たアスフィとフィンは即座に防戦から攻勢に移る。フィンの攻撃も苛烈さを増す。

アスフィはユウとベルと鍛錬をした時にサポート力を徹底的に鍛えた。その成果がここに実る。

 

フィンが攻撃し、離脱する際にバーストオイルを投げサポートし、フィンが攻撃する際もバルカの意識をこちらに引きつける。

フィンはいつも以上にやりやすい事に驚きつつ笑みを浮かべ攻撃をより苛烈に、より速くする。

アスフィも自分が出来ることを瞬時に把握する。その中で武器となる部分を選択し、思考を加速させる。

レベル6との共闘。アスフィは笑みを浮かべる。ユウとベルと共に鍛錬していなければついていけなかったでしょうね。感謝しますよ。愛しの弟と最愛の人。

 

アスフィが埒外とも言えるレベル6上位のフィンとの共闘についていけるのには訳がある。まずユウ、ベル、ベートとの鍛錬だ。あの馬鹿3人は移動術の極致とも言える縮地を基本として使うのだ。戦闘速度が尋常ではない。ユウ、ベートにいたっては瞬間速度だけならオラリオ最強のオッタルすら凌駕する。ベルですら魔力を纏っている状態ならレベル6に遜色ない速度を誇る。

アスフィはその戦闘に身体がついていかない。そして考えは徹底したサポートに行き着いた。そこでベートを相手にサポート力を磨き上げてきたのだ。

そして何より恋する乙女は強い。ユウがアスフィに残れと言ったのはアスフィなら戦闘についていけるという信頼、信用に他ならない。好きな人に頼られる。そこで結果を残さねば好きな人は悲しむかもしれない。そんなことはアスフィには認められない。

 

一方アミッドは目の前で起こっている高速戦闘及びたった2人で化け物を抑えるどころか押している戦況に驚愕する。これがレベル6とヘルメスファミリアが誇る団長、万能者ですか。いくら私の治癒があるとはいえここまでとは。そんなことを思いながらバルカを見る。

そしてふと気づく。あの武器はカース付きの武器だった。そしてカースの化け物が生まれた。ならばあの化け物は自分の治癒魔法でカースのみを解呪すれば?

試してみる価値はありそうですね。

アミッドは決断し、下がって来たフィンに己の考えを伝える。

 

「フィン団長。バルカはカース武器を自分に刺してあの化け物に変貌しました。ならばそのカースだけを解呪すれば?」

 

「それには一考の余地があるね。僕らは攻撃を捌いてアミッドに向かわないようにすれば良い。万能者。やるよ!」

 

「ユウとの鍛錬がどれほどのものだったかバルカもそうですがあなた達にもお見せしますよっ!」

 

「それは心強い。ベートもユウ君との鍛錬で戦闘だけなら僕を超えたからね。アミッド。全面的に君に任せる。ユウ君に頼りにされている力を見せてくれ。」

 

3人が3人、己のすべき事を考え、最高の結果を残すべく動き出す。

 

アミッドは今展開している魔法陣を一度消し、詠唱に入る。

その詠唱の間フィンとアスフィは全ての攻撃を捌いていく。そして遂にアミッドの詠唱が完了する。

 

「ディア・フラーテル」

 

バルカの足元に魔法陣が形成される。

直後バルカは苦しみ始める。人もモンスターも治癒してしまう神聖な光を浴びて悶え苦しむバルカ。その姿を見てフィンとアスフィは正解だったと確信する。

 

アミッドのディア・フラーテルは完全治癒魔法である。だがこの魔法は「回復」「解毒」「解呪」の3つが合わさった魔法だ。体力の消耗、傷があるならば回復させる。毒に侵されているのならば解毒する。呪われているのならば解呪する。全てを任意で使える魔法だ。先程までの魔法陣はその全てを使い展開していた。

だが今回はバルカに対し、解呪だけを選択し、その力を強める。アミッドの推測通りバルカは呪われている状態で宝玉を使った。その呪いが解呪されてしまえばもう動けない。

 

「ヒーラーでありながらモンスターを倒すか…君は。本当に頼りになる。」

 

「勇者。ここで我々が傍観する意味はありません。戦場の聖女を護衛しつついつでもトドメをさせるように警戒しますよ。」

 

アスフィの言葉でフィンも臨戦態勢に入る。

 

「消えなさい。その禍々しき呪いの力よ。私は聖女としてそんな力を認める事は出来ない。」

 

アミッドは魔力をさらに高める。

 

「そうなってしまった貴方を私はもう癒せない。謝るのは傲慢でしょう。嘆くのは冒涜でしょう。救う事を諦めた私は偽善者でしょう。ですが私は私の尊敬する冒険者に頼られました。ならばその信頼に応えましょう。その「呪い」だけは殺しきります。」

 

純白の魔法陣が発光を強める。そこに注がれている魔力はリヴェリアの大火力の魔法クラスだ。

 

呪いに滅びを。魂に救済を。呪縛からの解放を。光の衝撃波でアミッドの髪が揺れる。なんと神々しい風景だろうか。化け物にまで成り果てたバルカの存在理由までもが浄化されていく。

 

 

 

 

ふざけるな。この身に巣食っている呪いを失うわけにはいかないと言うようにバルカは抵抗し始める。太い血管からアミッドに向け、血の雨どころか執念、怨霊とも呼べる瘴気を撒き散らし始める。

防ぎきれないとフィン、アスフィはアミッドの後ろに退避する。アミッドはその瘴気に呑み込まれる。

 

「「アミッド(戦場の聖女)!!」」

 

アミッドは悲しそうな目でバルカを見る。

 

「すみません。貴方の執念はこの身には届きません。私の尊敬する冒険者がこの法衣にも解呪薬をかけていたのです。はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アミッドは吠える。これで貴方を呪いから解放しますというように…

白い光が柱となってドス黒いバルカを浄化し、バルカは漆黒の汚れが無くなった。

その瞬間を待っていたと言わんばかりにフィンはバルカに疾走する。槍を刺突する。が、目前で止まる。

 

「もう事切れている…」

 

「戦場の聖女の浄化が終わった時点で事切れたのでしょう。しかし瘴気に呑み込まれた時は流石に焦りましたよ。」

 

「ユウさんがこの戦場に赴く前に法衣にも解呪薬染み込ませとけば怪我してもポーションで治せるんじゃね?とかけられまして…。出ていた素肌の部分だけでしたら普通に解呪できますので正直助かりました。」

 

「ユウはまた適当な思いつきで貴重な物を…はぁ。ですが無事で良かったです。ユウの適当な思いつきもたまには役に立ちますね。前なんて鍋にエリクサーを入れたら鍋の痛みとか治るんじゃね?とか言って実行していましたからね。流石にゲンコツしましたよ…。」

 

ユウの話を聞いてアミッドとフィンは想像が容易いのか苦笑いしている。

 

「さてここもひと段落したけど悠長にはしてられない。恐らくイケロス、タナトスのところにユウ君の部隊が向かっている筈だ。僕らも合流しよう。」

 

アミッドとアスフィも頷き、3人の団長は行動に移る。

 

 

 

タナトスは祭壇の前に座りながら考えていた。今回の一件はロキファミリアにやられたというよりたった1人の冒険者の手によってズタボロにされた。

 

「雷帝か。さすが帝王を名乗るだけはあるなぁ。彼1人にこっちはズタボロにされちゃったかぁ。イケロスですら話をしたくないって言うくらいだし。」

 

「こっちは神様だし?たしかに10年20年なんてあっという間なんだけどさー。もう一回やれって言われると面倒なんだよねぇ。時間はあっという間でも手間とか考えるとねぇ。ここまでやるのは本当に面倒なんだ…」

 

静かな広間でまるで独白のように言葉を紡ぐタナトス。冒険者達が来るであろう通路と反対の方向に進む。そこには自らのファミリアのエンブレムが飾ってある広間があり、その下に目的の人物がいた。

 

「エインちゃん。」

 

レヴィス達にエインと呼ばれる謎の人物。タナトスが声をかけるとフードに仮面を被ったその人物はタナトスの方を向く。

 

「ロキファミリアと雷帝にやられちゃったよ。俺の眷属達は完敗。もう後がない。だから穢れた精霊を出してよ。」

 

「断ル。」

 

思ってもいない台詞がエインから飛び出す。

 

「断る……?」

 

「精霊達ニハ役割ガアル。配置カラ動カス訳ニハイカナイ。」

 

タナトスは思考が停止する。何を言っているかわからない。

 

「貴様達ハ「エニュオ」ノ道化ニスギナイ。エニュオカラノ言伝ダ。「協力に感謝する。だがここまでだ。」」

 

「何を言って…「オラリオ崩壊の計画は私が受け継ごう。冥府に至る道は私が開いてやる。だからーー」

 

「贄となれ。死の神」

 

「全テハエニュオノ神意ノママニ。」

 

そう言い残し仮面の人物は暗闇に消えていく。タナトスは動けず、言葉も発せなかった。一切の音がしない広間でカチリと時計の針が動く音がした。

 

「ーーーはは。ははは。あーっはははははははははははははははははははははは!!!!」

 

壊れたように、感情を全て笑いに変えたかのごとくタナトスは笑う。

 

「やめてよ!やめてよね!!それってさぁ!なんでもわかってるつもりでいる神々がどうしても許せない恥辱ってやつじゃん!!ーーー度し難い「利用」ってやつ。」

 

狂ったように笑いながら1人タナトスは喋る。自分の思考を落ち着ける為に。

 

「この死神を嵌めるなんてね。エニュオのクソ野郎め。」

 

タナトスは神意に燃え盛る目をしている。そこに声がかかる。

 

「よう。自分がタナトスやな?この子は雷帝のユウたん。短い間やろーけどよろしゅうな。」

 

「ほーん。これが死神タナトスかー。男前じゃん。雷帝のユウ・クラネルです。あんた達を捕縛という名の助けに来ました。」

 

タナトスはユウの言葉に唖然とする。

 

「は??助ける??」

 

 

ーロキとユウサイドー

 

「そや。アンタも多分さっき大声で叫んどったし気づいたんやろーけど利用されとるで?うちらはそこまで読んでた。あいつらはオラリオ崩壊の計画の為にうちらをクノッソスに誘き寄せて神殺して光の柱ドカーン作戦やったわけや。せやからアンタを殺させるわけにはいかんから助けたる。」

 

タナトスは呆然とする。さっきまで、相手に話されるまで気づかなかったことをロキ達は読み切っていたのだ。これでは勝てない。負けるのも無理が無いと思う。

 

「くくく。あーっはっは!!そうさ。その通りだ。ロキ。さっき言われたよ。贄となれ死神ってね。利用されるのはいいよ。俺も利用してきたし。でもねロキ。俺にも死神の意地ってもんがあるんだ。とてもエニュオのクソ野郎を許すことはできないよ。投降するよ。そして時間がいくらかかろうとエニュオのクソ野郎の顔面をぶん殴る。」

 

「おう。そーか。ほな協力せぇ。ギルドに引き渡す前にエニュオぶん殴らせたるから地上いくで。」

 

ユウは何かおかしいことに気づく。この違和感はなんだ?

 

「タナトス様。1つ伺いたいことがあります。さっき言われたとは?」

 

「雷帝君か。いやね。エニュオの人形みたいなやつがさっきまで居たんだけどそいつに言われたのさ。利用してたぞーってね。」

 

ユウはその話を聞いて無言で考え始める。手下がいた?神殺しをするのが目的なのにタナトス様を放置した?どういうことだ?

 

考えている間にフィンさん達も合流する。

 

「おーフィンか。無事そうでなによりや。こいつがタナトスやねんけど利用されとんの知ってブチギレや。エニュオのツラ殴るまでは協力するんやて。ん?ユウたんどないしたん?」

 

ユウは未だに思考を続けている。なんだ?何を見落としている??

 

「タナトス様。イケロスのクソ野郎はこの事を知っているのでしょうか??」

 

「んにゃ。知らないと思うよ?俺もさっき言われたばかりだし。」

 

どういう事だ?神殺しがエニュオの目的では無いのか?いやでも悪寒が走ったということは間違いない。ここにいる神はロキ様、タナトス様、イケロス、ディオニュソス様だけの筈だ。イケロスとディオニュソス様はレフィーヤとフィルヴィスがついてるし…。

 

「タナトス様。もう一つ質問が。クノッソスにはイケロスとタナトス様以外に神様はおられますか?」

 

「いないよ?とりあえずイケロスのところに向かう?神を集めておけば安心でしょ?この道を真っ直ぐに行けば着くし。」

 

その案に乗り全員でイケロスとレフィーヤ達の元に向かう。向かうついでに仮面の奴がいたと言っていたので電磁波を広げてレフィーヤ達を確認する。そして驚愕してしまう。

 

「なんで。なんでなんでなんで!!ロキ様!フィンさん!!マズイ!!ディオニュソス様の電磁波がレフィーヤ達と全然違うところにいる!!!」

 

タナトスを含めた全員が驚愕してしまう。

 

「しかもディオニュソス様のところに変な電磁波がい…」

 

全ての台詞を言う前に衝撃がクノッソスを襲う。

 

「ちくしょう!!ディオニュソス様が殺された!!やられた!!マズイ!フィルヴィスの恩恵が!!悪いけど先に行く!!」

 

返事も聞かず、ユウは雷を纏って全力でフィルヴィスの元に向かう。するとフィルヴィスの首を持ち上げている仮面の人物がいた。ユウはブチギレる。背中の恩恵が熱を持つ程に発光する。

 

 

「誰の妹に触れている。」

 

雷を纏っている状態で全力の縮地をし、仮面の人物の腕を切り落とす。

 

「ナ、ナニ!?チッ雷帝カ。ココハ撤退スル。ドノ道恩恵ヲ無クシタ奴等ハ助カラマイ。」

 

仮面の人物は放っておき、フィルヴィスに駆け寄る。

 

「フィルヴィス!!大丈夫か?レフィーヤ!!フィルヴィスを背負え!!ベートさん達も着いたか。ベートさん!ガレスさん!ティオナ!ティオネ!ディオニュソス様が送還された!ディオニュソスファミリアの奴らを背負って全力で離脱しろぉぉぉ!!」

 

ユウは余裕などかなぐり捨てて叫ぶ。フィンとロキ、タナトス、アスフィ、アミッドも焦っている。

 

「フィンさんはロキ様!アスフィはタナトス!アミッドはイケロスを背負え!!俺が地上まで穴をこじ開ける!!」

 

特大の荷電粒子砲を天井にブチ込む。1発だけじゃなく2発3発と繰り返し撃ち込むと光が見える。

 

「飛べぇぇぇぇ!!全速力で地上に向かえぇぇぇ!!肉壁が来やがるぞ!!俺が抑えるから早く行けぇぇぇ!!」

 

全員が即座に行動に移す。ユウは雷を全開で纏う。殿を務めながらみんなに向かう肉壁に荷電粒子砲を放ち、消滅させていく。そして脱出間際の2階層部分に差し掛かった時だった。

 

「ォォォォォォォォォォ!!」

 

まるで罠だと言わんばかりにアウラを担いでいるティオネに食人花が遅いかかる。2人があまりにも酷い状況に硬直する中ユウの判断はそれこそ雷よりも早かった。即座に縮地でティオネの背中を蹴り上げる。そしてその反動で刀で切り刻む。その間実に1秒。

しかし反動で肉壁に向かって推進力が行ってしまってる。目を見開いているロキ様にすみませんと言う。

 

「「「「ユウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」」」」

 

ユウは肉壁に呑み込まれて行った。そして全員が地上に脱出する。肉壁はユウが開けた穴を塞ぐかの如く閉じていき、勢いを弱めやがて動かなくなった。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!お兄ちゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

レフィーヤの嘆きが辺り一面に木霊する。

 

フィンは信じられないかの様に呆然としている。

 

ベートは固まって動かない。

 

ガレスは顔を歪め何かを我慢している。

 

ティオネは何で私をと涙する。

 

ティオナはレフィーヤに寄り添い泣いている。

 

フィルヴィスはその場でうずくまり涙を流す。

 

アスフィは下を向いて何の行動も起こさない。

 

アミッドは目に涙を溜め、その場に立ち尽くす。

 

アウラ達、元ディオニュソスファミリアは自分達が足を引っ張り殺してしまったも同然な事に気づき涙を流しながら謝り続ける。

 

タナトスはただただユウの行動に心打たれて美しいと思いつつも敵対していた自分をも救い出してくれた事に心から感謝を捧げる。

 

そしてロキ。呆然とする。最後にユウはロキに向かってすみませんと言った。あれほど大好きだと言い続けた妹達ではなく自分に対してすみませんと。ロキはクノッソスに入る前に自分が言った言葉を思い出す。

 

「ユウたん。自分が危険になるくらいなら見捨ててええ。ユウたんはなんやかんや優しいから心配やわ」

 

この言葉を伝えた後、ユウは珍しく何も言わずただ困った顔をして頭を下げた。

 

「アホやなぁ。ユウたん。あれは助ける為に勝手に身体が動くかもって・・・言いたかったんか??グスッ。アホタレ。こんな事ヘスティアと何よりもベルたんに何て伝えたらええねん。」

 

ロキは神だ。下界の子供とは出会い、別れるのは仕方ない事だと割り切っている。だから子がダンジョンで死んでも、もちろん悲しいが泣いた事はない。だが、この時、この場所ではユウの為に泣いた。

 

 

「…今からロキファミリアのホームに集まる。僕らは立ち止まってはいけない。それはユウ・クラネルに対しての冒涜になる。彼程誇り高く、勇敢な男は僕は、僕は、誰も知らないっ!!だからこそ後悔する暇があるなら前に進む!!」

 

フィンは団長の仮面をつけ、全員を動かそうとするが、やはり、それでも失った者は大きい。涙を堪えることができない。そこにアイズとリヴェリアがやってくる。ユウに起こったことを伝えるとアイズはうずくまって泣き、リヴェリアですら涙を流した。

 

クノッソス作戦に参加していた全員がロキファミリアのホームに集まる。

 

「僕はこれからの事を話さなければならない。だがその前にユウ・クラネルの事だ。悪いけどラウル。ヘスティアファミリアに向かって神ヘスティアだけを連れて来てくれ。あの女神には全てを知る権利がある。」

 

「そうやな。いつまでも泣いとれん。ユウたんにまた馬鹿にされてまうわ。」

 

ロキが冗談を言うが雰囲気は暗いままだ。特にレフィーヤとフィルヴィス、そしてアスフィは本当にヤバい。自殺しかねないレベルだ。

 

「ユウたんにな?クノッソス作戦の前にディオニュソスファミリアが勝手についてくるって言うから「ユウたん。自分が危険になるくらいなら見捨ててええ。ユウたんはなんやかんや優しいから心配やわ」ってウチ言うたんよ。ほなな?あのユウたんが何も言わずに頭下げてきてん。多分あの子は厳しい言葉かけてはよ帰れって言いたかったけど着いてくるんやったら目に届く範囲なら助けようって決めてたんやろうな。」

 

ロキの言葉を聞いて各々が顔を上げる。

 

「ほんでな?タナトスんとこ向かう途中はユウたんと2人やったんよ。その時になんで昔のベートみたいな言葉をかけてたん?って聞いてん。ほななんて言うたと思う?」

 

ベートを見る。

 

「あーあいつの事だ。ツンデレやってみたかったとかじゃねーのか?」

 

「どアホゥ。ちゃうわ。「復讐心に駆られてる奴等にまともな事言っても意味ないから実力差を分からせたかったんですよね。そしたら諦めてくれるかなって。まぁ本心としては復讐は別にいいんですけど自分の力でどうにかなる場合だけにしてほしいですよね。そもそも死んだ奴等が復讐を望むわけがないですし。でも自分の心と折り合いをつける為に復讐するんでしょ?だったら力つけないと。力ない奴が復讐しようとして返り討ちにあって死にましたとか死んだ奴等爆笑して生き返っちゃいますよ。」やって。」

 

その言葉を聞いてディオニュソスファミリアの面々は大泣きする。

 

「てめー等が泣くんじゃねぇ。てめー等にはその権利もねぇよ。雑魚が粋がってその場の勢いや雰囲気に流されて俺の親友を殺したんだ。次泣きやがったらぶっ殺す。」

 

ベートは殺気全開で睨みつける。

 

「まぁベート落ち着きや。その通りやとは思うけどな。話の続きやけどな、ユウたんはそのあと言うたんよ。「俺は別に聖人君子でも無いですし英雄になりたい訳でもないんですよ。ただベルが英雄目指してるんでその英雄を1人でも支えれる強さが欲しいんです。なら英雄より強くなきゃいけない。って思ってオラリオに来てベートさんをはじめスッゲー大切な人達ができた。だから俺はその人達がピンチだったり困ってたら全力で助けたいんです。まぁクノッソス作戦で死人が絶対出ないようにしてやりますよ。」ってな。そんなん言うて自分死んでたら世話ないでほんま。でもな、そんだけの気持ちであの子は接してくれてこの作戦も参加してくれててん。それだけは残された、生かされたウチらは絶対に忘れたらあかん。

今は悲しむのも泣くのも神であるウチが許したる。それでもや。泣き終わったら前向け。進め。それがユウたん。ユウ・クラネルと過ごして来た者の役割や。ええな?」

 

全員が顔を上げ、頷く。

 

「失礼するっす!神ヘスティアをお連れしたっす!」

 

ここからユウについて説明するのは憂鬱だが必ずしなければならない。恨まれても仕方ないと思いながらフィンは入室を許可する。

 

ヘスティアは暗い雰囲気に気圧されたのかあたふたしている。

 

「ヘスティア。ウチはあんたに謝らなあかん。今回のクノッソス侵攻作戦でユウ・クラネルが犠牲になった。本当にすまん。」

 

ロキとフィンだけでなく全員がヘスティアに頭を下げる。

 

「え?え?どどどういうことだいっ!?ユウ君が犠牲になった!?」

 

「神ヘスティア。ロキファミリアのティオネ・ヒリュテです。ユウ・クラネルは私ともう1人を庇って犠牲になりました。本当にすみませんっ!!」

 

ティオネは誠心誠意頭を下げる。下げてどうこうなる事ではないが謝罪をするのは当たり前だ。

だがヘスティアの反応は誰もが思ってるのと違った。

 

「え?え?ロキ?これ本当?ドッキリとかじゃなくて?」

 

「ヘスティア。さすがにウチでもそんなドッキリはせん。認められへんかもしれんけどユウたんは間違いなくクノッソスにのみ込まれた。」

 

「え?ロキ?1つ質問していい?」

 

ロキは頷く。

 

「子供が死んだら恩恵無くなるんだよね?僕与えてるのユウ君入れて7人だけど減ってないよ?数が少ないから間違えようが無いし。」

 

部屋の時が止まる。

 

「「「「えええええええええええ!!」」」」




はいユウ君生きてたわ。

次は呑み込まれてからのユウ君とその後の動きを書いていこうと思います!

遅い更新でごめんなさい!!

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