最近、真季奈ちゃんの様子が変ですね。
パーティーが終わってわたし達は部屋に戻りました。
「つ、疲れたーーーーーーーー!」
織斑一夏は帰るなり自分のベッドに倒れこみます。この程度で情けない。
「甘いですよ織斑一夏。本当の歓迎会というものは、二次会、三次会、四次会と際限なく続き、最初は同じ新人たちと楽しく飲んでいたはずが気が付けば上司たちに囲まれていて下っ端は自分一人だけ。新人歓迎会とは名ばかりの上司の接待の場と化すのが本当の宴会です。そんなことで社会に出てやってけると思っているんですか?」
「いや、なにその話!?」
「あー思い出したくもない。無駄な上司の話から始まって、やれ酒を注げだの顔を覚えてもらってこいだのと会場を練り歩き、酒瓶とグラスを持ったまま終始愛想笑いの連続。ほんとあれは人生最悪の……」
「ストップストップ!! 俺が悪かったです! それ以上はまずい!!」
「そう遠慮なさらずに。たまにはわたしも愚痴をこぼさせてもらいたいのですが?」
「その話を聞く以外のことなら何でもしてやるから頼むからやめてくれ!!」
ん? 今なんでもって?
「それは本当ですか?」
「あぁ!」
……ふむ。
「いいでしょう。ではそれで手を打ちましょう。じゃぁわたしはもう寝ますね。おやすみなさい」
そういうことなら寝巻きに着替えてさっさと寝てしまいましょう。さて何をさせようか?
わたしは自分の寝床に潜り込んですぐに寝ることにしました。明日以降が楽しみです。
おや? メールが。黛先輩ですね。明日転校生の情報がタレコミで入った? 中国の代表候補生? このタイミング、彼女しか考えられませんね。
織斑一夏はやはり女たらしだ。
「い、一夏……。お前なんてことを……」
「……え? あ!? あーーーーーーー!?」
うるさいですね。眠れないじゃないですか。
さぁ翌日の水曜ですよ。
あれから一晩考えていたのですが、織斑一夏に何をさせるのかまだ思いついていません。隣の席では刑の執行をを待つ死刑囚のような生徒がいますよ? 誰でしょうかね?
「ねぇマッキー聞いた?」
「転校生の噂ですか?」
「そうそれ! 情報早いね?」
「まぁ、ちょっとしたツテができまして」
新聞部はある意味情報のハイエナです。パイプを繋げることができたのはラッキーでした。
「転校生? こんな時期に?」
乙女の会話に乱入してくるとはなんと無礼な! まぁ織斑一夏意外全員乙女だからしょうがないか。つまり織斑一夏は無礼者なのだ。
「そう、なんでも中国の代表候補生なんだって」
「ふーん」
自分で聞いといてなんですかその反応は。まったく。
「あら? わたくしの存在を今更ながら危ぶんでの転入ですか?」
いえオルコットさん、それはない。相手は単なる色ボケです。おや、そういえばあなたもそうでしたね。
「このクラスに転入してくるわけでもないのだろう? 騒ぐことでもあるまい」
あら、いつの間に? 箒ちゃんは先程まで窓際にいたではありませんか。興味ないふりして見事に食いつているではないですか。
何はともかく、わたしに迷惑をかけてくれなければどうでもいい存在ですよ。彼女は。
織斑一夏を中心にまだなにやら転校生の話題で盛り上がっているようですが、貴方たち? もうすぐ織斑先生が教室にきますよ? 授業の用意はいいんですか? わたしは知りませんよ?
「その情報、古いよ」
おやこの声は。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
腕を組み、片膝を立ててドアにもたれていたのは自信満々なその顔が気に障る少女、凰鈴音だ。
「鈴………? お前鈴か?」
見たらわかることを聞くとは残念な頭ですよ織斑一夏。
「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
なんですかそのニヤケづらは? 織斑一夏に話しかけられて嬉しいんですか? よかったですね。あなたにはそのぺド野郎がお似合いですよ貧乳。
まだ何事か会話をしていますが、馬鹿め、後ろに気づいてないな。
「おい」
「なによ!」
あ、死んだな。
ズゴン!
織斑先生の出席簿打撃が入りました。あれは痛そうだ。
「もうSHRの時間だ。二組に帰れ」
「ち、千冬さん…」
「織斑先生と呼べ。それと入口を塞ぐな。邪魔だ」
「す、すみません」
そうだ、さっさと帰れ。
織斑一夏があの中国娘のことでブツブツ言っている。色々と驚くことがあったのだろう。
それに釣られてか、箒ちゃんもオルコットさんも織斑一夏にあの中国娘との関係を詰め寄っている。学習しなさいよまったく。
「さっさと席につかんか馬鹿者共が!!」
ズバン!!
ほーら出席簿打撃がとんできた。
その後の授業も箒ちゃんとオルコットさんは明らかに心ここにあらずの様子で授業を受けていました。あの中国娘と織斑一夏のことでも考えていたんでようね。
あの中国娘のことは嫌というほど知っている。
二年前から織斑一夏に仕掛けた盗聴器越しにあの女の声を聞いていたんだ。忘れるものか。
いつも織斑一夏の側にいていつも織斑一夏と会話していつも織斑一夏のことしか考えてない女。
いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも。
織斑一夏は自分のものだといつも主張していた女。ふざけるな。
織斑一夏は、織斑一夏の声も髪も指も骨も目玉も血も皮膚も肉もその全てがわたしのものだ。私の両親が残してくれた財産だ。それを幼馴染だから? いつも一緒にいるから? 自分の好きな男だから? だから当然だと?
イライラする。あぁなんと胸くそが悪い。
わたしに散々苛立ちを募らせておいて中国に帰国した女、凰鈴音。
わたしはこの女が、どうしようもなく、嫌いだ。
あの後の授業は散々でした。箒ちゃんとオルコットさんは午前中すべての授業で織斑先生の出席簿を食らってました。
わたしはというと、むなくそもとい気分がすぐれなかったので保健室で休んでいました。ズル休みって最高ですね。
それでもお腹は空くわけで。時間は昼休み。保健室を抜け出して食堂にきました。
相も変わらず凄い人の数です。わたしは授業のボイコットなどなかったかのような顔で堂々と食券の列へと向かいます。なんか文句がありますか?
「あれ? 志波さん? もう具合はいいのか?」
おっと、織斑一夏に見つかりました。
「すいません。視界に大変気持ち悪いものが入りました。とても気分が悪いです……」
「それまさか俺の顔じゃないですよねぇ!?」
「そんなわけありませんよ。ようやくあなたの顔に耐性ができてきたところなんですから」
「それ実質的に俺の顔のこと我慢してるって言ってますよねぇ!?」
「こら。こんな公共の場で騒いではいけませんよ!」
「あ、あぁそうだな。ごめん」
「台無しの顔がさらに台無しになってしまってたら周りの方々の体調にまで影響が出るではないですか」
「よーしその喧嘩買った!!!!」
全く何を言っているのやら。わたしに挑もうなどと片腹痛いわこの畜生めが。
「占めて四百円となります」
「安!?」
「さぁ早くわたしに食券を買い与えなさい。Aランチの攻撃を受けてあげますよ?」
「おまえ昼飯食いたいだけだろ!!」
当たり前です。ここは食堂ですよ? ボリュームたっぷりAランチの攻撃。そんな恐ろしいものを進んでくらってやろうというのに何を言ってるのやら。
「ちょっと一夏! 何遊んでんのよ! あたしを待たせるんじゃないわよ!」
む、でたな中国娘。
「別に待ち合わせなんてしてないだろ? まぁそこをどいてくれ。普通に通行の邪魔だぞ鈴。食券買えないし」
「あ、ごめん。そっちのアンタもごめんね?」
「…いえ」
この女、昼からラーメンだと? なんだ? お国自慢か? マジ引くわー。
「伸びるぞ?」
「う、 わかってるわよ! 大体あんたを待っていたんでしょうが! なんで早く来ないのよ!」
なんという理不尽。さすがのわたしもびっくりです。他にも何事かを織斑一夏と話していますが正直耳に入れたくありません。
そうこうしているうちにいつの間にかテーブルについていました。改めて見ると、箒ちゃん、オルコットさん、中国娘にクラスの女子を合わせて十人位の人数のグループになってますね。さすが歩けば女を引きつける男です。
ちなみにわたしは織斑一夏の隣の席をいただきました。周りが牽制し合っていて硬直状態になっていたのでさらっと貰ってやりましたよ。
さて食べますか。今日のAランチはハンバーグ定食ですか。ウマウマ。おや? 織斑一夏が食べているのはとんかつ定食? ひと切れもらいましょう。代わりにハンバーグをひと欠片あげますよ。え? 本人の許可? バレなきゃいいんですよ。
皆、織斑一夏と中国娘の話で周りが見えてないですね。幼馴染のくだりのところでだいぶ落ち着いてきましたが今だに火花がちっていますよ? やだこのテーブル怖い。
あ、オルコットさんが撃沈してる。中国娘に名前知らない興味ないって言われたのがそんなにショックだったのかな? 大丈夫、そいつは唯のゴーイングマイウェイなだけだから。
「あ、あのさぁ。ISの操縦見てあげていいけど?」
中国娘が攻めにきましたね。これはほかの女子が黙っていませんよ?
「いや、いいよ。俺は志波さんに教わるから」
え?
「ちょ、なによそれ!? 誰よ志波さんって!?」
あの、何の話ですかこれは?
「いや、俺の隣に座ってるこの子。凄いんだぜ志波さんは。強いし、専用機も俺と同じ近接戦闘型だから教わることも多いし」
「ど、どうも」
「な、な、」
ちょっとやめてください。みんなが見てるよ怖いよなにこれ。特に中国娘、そんなに睨むな殴るぞ。
「そ、その子なんかよりあたしのほうが強いわよ!」
「それはない」
「ないな」
「ないですわね」
「なによそれぇ!!?」
なんとトリプルKOですね。スリーアウトチェンジでわたしの回でいいですか?
「とりあえず誰が教えるかは置いといて、放課後皆で一緒にアリーナで練習すればいいんじゃないですか?」
正直なんでもいいからゆっくりご飯を食べさせてくださいよ。
「そ、それなら別にいいけど」
よかった。ようやく気も休まります。おや?
「織斑一夏、ほっぺにご飯粒がついてますよ?」
せっかくですのでとってあげましょう。…と、でもこれどうしましょ? まぁ勿体ないですし食べちゃいますか。
「あ、ありが…と!?」
パクッ。
『あ、ああああああああああああああああああああああ!!!!』
え!? なんですか!? 何事ですか!?
『これは放課後が恐ろしくなりそうだな真季奈』
誰かこの子に恋愛漫画でも読ませてあがてください(汗
一夏の中では真季奈は 信頼≒恐怖 といった評価です。
これがどちらかに傾けば物語は一気に転がっていくんだと思います。
ところで原作読んでふと思ったんですが、クラス対抗戦は二週間後と言っていて、その一週間後に代表決定戦。その翌々日に鈴と再開してそのあと対抗戦が始まるまで数週間と書かれてるんです。一ヶ月も経ってるんですよ。
予定ではこの話の週末に対抗戦を持ってこようと思っていたんですがね(笑)