IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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どうも、今回は長くなっております。

これでも要所要所で削りました。

最後までお付き合いください。では。




デートは戦場である

さて、おはようございます。志波真季奈です。

 

今日は日曜日、織斑一夏とのデート《決戦》の日です。

 

服装は昨日鈴と買ってきたもの着ています。当たり前ですね。そのために買ったんですから。

 

とりあえず、白のワンピースの上からデニムのジャケット、黒のソックスにブーツを履いてみました。変じゃないですよね? よくわからないので適当です。

 

ちなみにデウスは今日は待機状態でお休みです。ちゃちゃを入れられたくないので。

 

今から学園の正門を出て織斑一夏との待ち合わせ場所へ向かうところです。織斑一夏は休日とのことで昨日から自宅に帰っているそうな。ここ二日間は盗聴器を使っていないので何をしているのかは把握していないので気になりますね。

 

それでは出陣です。まずはモノレールに乗りましょう。

 

 

 

「行ったわね」

 

「行ったな」

 

「えぇ、行きましたわね」

 

正門から出た真季奈の後方。100メートル位離れた場所に彼女を監視する影が三つあった。

 

篠ノ之 箒、セシリア・オルコット、凰鈴音の三人である。

 

「それにしても本当ですの? あの真季奈さんが殿方とデートだなんて?」

 

「間違いないわよ! 昨日たしかにそう言ってたし!」

 

「にわかに信じがたいが、問題は相手が誰かだな…」

 

そう、それこそが彼女たちが真季奈の後を、デートを尾行しようと思い立った訳である。

 

志波真季奈、というよりIS学園の女生徒にとって、日頃知り合う機会のある男子は織斑一夏ただ一人である。それは不味い。非常にまずい。

 

彼女らにとって織斑一夏は共通の想い人である。その彼に理由はどうあれ女の影があるのだ。黙っていられるはずがなかった。

 

むろん志波真季奈の過去の知り合いが相手かもしれない。それでも可能性があるのなら調べるしかなかった。

 

「ちなみに一夏の方へは裏はとったの?」

 

「あぁ。メールで今日の予定を聞いてみた。用事があるとだけ返ってきた。………一時間もかけてな」

 

『…………一時間もっ!?』

 

彼女たちの中では既にそれはクロのようなものだった。……単にメールに気づくのが遅れただけ、という発想はないらしい。

 

「急いで後を追うぞ! この方向なら市外へ出るモノレールだろう」

 

『了解!!』

 

彼女たちの長い戦いも始まった。

 

 

 

 

どうも。織斑一夏です。

 

俺は志波さんとの待ち合わせ場所のモノレールの駅に来ています。もうすぐ彼女がホームから出てくるのでその迎えです。

 

え? デートなんだからその待ち合わせはないだろうって? うっさい、こっちはデートなんて初めてなんだ。志波さんもそれでいいって言ってたし。

 

もう電車が駅に着いた頃だ。そろそろ志波さんがホームにやってくるはず。改札口の前で待ってればいいよな?

 

「にしてもなんで志波さんは俺とデートなんて…。やっぱり弾の言うとおりなんかの罠なんじゃ!?」

 

そう考えれば辻褄がつくんだ! いつも俺を嫌っているとしか思えない行動ばかりの志波さんがなんで俺をデートに誘うんだよ!? そりゃ勉強教えてくれたり、危ないときは助けてくれたりしたけど、圧倒的に受けてるダメージのほうが大きい!! そりゃ彼女、柔らかかったしいい匂いしてたし黙ってりゃ可愛いけど!! 

 

て、なに考えてんだ俺はぁああああああああああああああ!??

 

そ、そうだ! 志波さんはいつも部屋じゃズボラなんだ! 基本ジャージだし、もしくはパジャマに着替える前までは制服を着っぱなしだったり!! だから今日だってきっと!!

 

「なに改札口の前で気持ち悪い奇行に走っているんですか? そういうことは動物園の自分の檻の中でやってください」

 

「俺は見世物じゃねええええええ、て、ええええええ!!? し、志波さんいつからそこに!!?」

 

「いや、もう待ち合わせ時間ですので。ほんと何してたんです? 大丈夫ですか頭」

 

そんな可哀想な人を見る目で見ないでぇえ!!

 

て、あれ? 志波さん?

 

「はい?」

 

な、なんで……、

 

「なんで今日に限って可愛いんだよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「失礼な! てい!」

 

パァン!! 強烈な平手打ち!!

 

「ありがとうございます!!!」

 

 

 

 

 

 

まったく、なんて男なんでしょうね織斑一夏は。人がせっかく頑張っておめかしをしているというのに珍獣を見るような目は。これは今日一日で何回殴ってやればいいんでしょうね?

 

「まぁ、デート相手の服装を褒めることができたことに免じて許してあげましょう」

 

「ありがとうございます!! 申し訳ありませんでした!!」

 

「……恥ずかしいから止めてください。周囲の目もあるんですよ?」

 

「……すいません。じゃ、じゃぁ行こうか」

 

「はい。ちゃんとエスコートしてくださいね」

 

む、さりげなく手を出してきましたよこの男。これは握れということでしょうか。なんという天然ジゴロ。そのうち背中から刺されますね。

 

とりあえず握っておいてあげましょう。もちろん目一杯力を込めて! わたしの握力を舐めないでくださいね!

 

「ぐぐぐぅ!? し、志波さん!?」

 

「なにか?」

 

「ナンデモナイデス!」

 

フフフ…、さぁどう料理してやろうか?

 

 

 

 

 

二人の後方100メートル。ビルの隙間の路地に隠れる影三つ。

 

『(一夏ぁあああああああああああああああああ(さん)!!!!)』

 

訂正。ドス黒いオーラを発生させる修羅が三つ。

 

「ねぇ、やっぱり真季奈の相手は一夏だったわけ!?」

 

「見ればわかるだろう!」

 

「そんな~、真季奈さんだけは大丈夫だと思ったのに~」

 

『ていうか手握ってるし!!』

 

箒、セシリア、鈴の三人は恨みのこもった視線を二人の背中へと向けていた。それはもう視線で蚊を落とせるほどに。

 

「ていうかあれ! 昨日あたしが真季奈に選んであげた服じゃない!」

 

「なんだと!? 敵に塩を送ったというのか!?」

 

「なんていうことを鈴さん!! 真季奈さんはタダでさえ元がいいのに、これじゃぁますます勝ち目がなくなるじゃないですか!!」

 

三人がここまで焦る理由。それは織斑一夏の志波真季奈への想いだ。本人は気づいてないが、少なくとも友達以上の感情は確実に抱いている。間違いない。普段の二人のやり取りを見てればありえないと思うが、だからこそ一夏が真季奈の側を離れようとしないのは彼が彼女に恐怖以上の感情を持っているのではないか?

 

鈍感ココに極まれり。

 

『こうなったら!!』

 

「何をしているか馬鹿者共が」

 

いざ実力行使か! とISを起動しようとした頃で三人の後ろからかかる声。

 

「お、織斑先生!?」

 

織斑千冬だった。

 

「ここは学園外で今日は休日だ。先生はなくてもいい。というかなんだお前ら? こんなところでこそこそと。しかもISまで使おうとしおって」

 

「す、すいません」

 

「で、でも千冬さん、あれ!」

 

「あぁん?」

 

鈴が指差す方向。そこには彼女の弟と自分が後見人となった少女が手を繋いで歩いている姿が。

 

「なぁっ!? どういうことだこれは!!?」

 

織斑千冬も慌てて隠れる。そこは奇しくも自分の生徒が隠れている場所である。……ストーカー、一名追加。

 

 

 

「ここはなんです?」

 

「ゲームセンター。志波さんはこういうとこ来たことない?」

 

ないですね。と、目の前の建物を見る。そこはでかでかときらびやかな装飾の施されたGAMEの文字の看板。けたたましい騒音。有り得ないほどの人口密集率。これが所謂ゲーセン、というものですか。

 

「織斑一夏は良くここに来るのですか?」

 

「あぁ。よく中学のころは鈴と弾、あ、中学の頃の友達な? と一緒に遊びにきてたんだ」

 

知ってます。

 

「そうですか。やっぱりこういうところは楽しいんですか?」

 

「あぁ!」

 

億面もなく言いますね? ならば楽しませてもらいましょうか?

 

「これはなんです?」

 

「射撃ゲーム。このオモチャの銃で画面の中のモンスターを倒していくんだ」

 

「ふむ」

 

一回百円。意外と安いものなんですね。どれ。やってみますか。

 

「やるの? ははっ、結構難しいんだぜ? そうだ、一緒にプレイできるか、ら………?」

 

パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!パン!

 

PERFECT!!!!

 

おや? もう終わってしまいましたか。なに変な顔で固まっているんですか? 意外と簡単でしたね織斑一夏。

 

「ほかのゲームはないんですか?」

 

「あ、あぁ」

 

その後、カートゲーム、クレーンゲーム、レトロゲーム、エアホッケー、スロットと、様々なゲームの筐体に挑戦しましたがどれもわたしの完勝でした。何故か織斑一夏が落ち込んでいましたがそのほうがわたし的には眼福です。

 

「ん? これはなんですか織斑一夏?」

 

「…え? あ、うん。これはパンチングマシーンっていって、手にグローブをはめて的を思いっきり殴るんだ。で、その威力を数値化して競うんだよ」

 

「ほほう、やってみせてください織斑一夏」

 

「おう、いいぜ。…………………おりゃぁ!!」

 

ドン!!

 

125点!!!

 

「よっし!!」

 

嬉しそうですね。織斑一夏。そこそこ高い数値なんでしょうか?

 

「なら、わたしもやって見ましょうか」

 

……………………『え?』。『馬鹿やめろ!!』

 

店の中からの姿なき言葉。その中で織斑千冬の焦る声があった。

 

「すぅーーーーー、先生直伝! 『弟殺し』ぃ!!!!」

 

ドゴォオン!!!!

 

『何ぃイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!?』

 

あれ? 壊れちゃいましたよ? どうなってるんですか? 思いっきり殴るんじゃないのですか織斑一夏?

 

「し、志波さん逃げるぞ!!!」

 

え? はい? いいんですかこれ?

 

 

後日、弁償金がIS学園から送付されました。

 

 

 

「はぁ、はぁ、志波さん、なに? 弟殺しって?」

 

「昔、織斑先生に教わったんですよ。先生はわたしのISの『先生』でしたので」

 

「そうなの!? てかその不吉な技名なに!? 誰のこと!?」

 

誰でしょうねぇ?

 

「次はここですか?」

 

ここも知っています。

 

「うん。映画館。ちなみに観たいモノとかはある? なかったら俺のおすすめを見ようかな、って」

 

ふむ、でしたら。……あ、あれは!?

 

「織斑一夏! あれです! あれを見ましょう!!」

 

「え? あれって…」

 

『ヒーロー戦隊! サムラインジャー!!』

 

まさかの戦隊ヒーロー!?

 

「違う! こっち!」

 

『同時上映 勇者合体! サンラインガー!』

 

合体ロボアニメ!?

 

「これは是非とも見なくては!!」

 

「志波さん、アニメ好きなんだ?」

 

「はい! 特にロボットものは最高です!! 90年代の作品は特にセル画の書き込みがもうスタッフ殺しと言われる程ですがその価値のある作画! 予算を限界まで使い込む枚数! 今ではやれデジタル処理だの3Dグラフィックだのと言われてますが、やはりロボットアニメはセル画です! 断言できます! そしてこの映画はその昔ながらの作風を復活させようと全カットをセル画による書き下ろしなのです! これを見ない奴はにわか以下の存在です!! 

 

「そ、そうなんだ」

 

「そうなんです! さぁ今すぐチケットを買いに行きますよ! さぁ! さぁ! さぁ!」

 

善は急げです。織斑一夏の腕をとって売り場へと急行します! え? 店員さん? カップル割? なんでもいいのですぐに売ってください! さぁ!

 

ふふふ、初めてこのデートが楽しくなってきましたよ。

 

おや? あそこに見えるは更識簪さんではありませんか。一年四組のクラス代表でわたしと同じ日本代表候補生の。

 

「更識簪。ここで何をしてるんですか?」

 

「あ、志波さん? わたしは、その、映画を見に」

 

「あ、そうですね。映画館ですから当たり前ですか。ちなみに何を見に……?」

 

ん? そのチケットは? わたしと同じものでは?

 

「……………………メールアドレス交換しましょう、今すぐに」

 

「うん。今度わたしの部屋にも遊びに来る?」

 

是非とも!

 

 

 

「完全に一夏さんを放置していますわね」

 

「あの子は昔からアニメが好きだったからな」

 

「そうなんです? なんか意外」

 

「で、どうします? 映画となると二時間は出てきませんが?」

 

『一緒に入るに決まってるだろう!!』

 

その日、子供映画に並ぶ大きなお友達の姿が多数目撃されたそうな。

 

 

 

 

 

あーーーーー面白かった!

 

さて、映画を見たあとは二人でレストランに来ています。昼食をとろうかと。

 

更識簪ともアニ友になれたし、いいことづくしですね。おや? 織斑一夏はどうしたんです? 映画見てる最中から様子がおかしいですよ? そんな項垂れて。

 

「敗残兵のような悲壮感ですね。なにかありましたか?」

 

「いえ、なんでも。ナニモアリマセンデシタネ」

 

「? はぁ? それは織斑一夏がわたしの手を何度も握ろうとして失敗していたことを言ってるんですか? 自業自得では?」

 

「き、気づいていたのか!?」

 

当たり前です。わたしを誰だと思ってるんです。

 

「この童貞チキンやろう」

 

「はぅ!?」

 

まぁ、握られる前にその手の皮を抓ってやりますけどね。

 

「織斑一夏、次はわたしの行きたいところでいいですか?」

 

「あぁ、もちろんいいぜ? どこに行くんだ?」

 

今日は必ず行くと決めていたんですよ。

 

「遊園地です。観覧車に乗りたいです」

 

 

 

『遊園地だって!?』 『勝負をかける気か真季奈!?』

 

 

………………………………………………。

 

 

俺は女の子と二人っきりでデートの定番、遊園地に来ている。昼食を食べてからの移動だったから近くの遊園地につくころにはもう夕方前になっていた。

 

それじゃぁ遊ぶ時間なんてほとんど無いぞ? って志波さんに聞いたけど、それでもいいっていうから結構時間がかかったけど電車を乗り継いでやってきた。

 

移動中、志波さんは珍しくどこか上の空で、話しかけても生返事が多くて驚いたことに俺に吐いてくる毒がほとんどなかった。

 

 

というか、今日一日中、俺は彼女からの被害を受けていないんじゃないのか?

 

 

昨日から散々怯え続けた自分にとっては嬉しい誤算だった。でもそうするとわからなくなる。これでは普通のデートではないか。罠でもなんでもなく。

 

ということは志波さんは俺と本当にデートがしたかったんだろうか?

 

そう考えたら嬉しかった。 自分でもなんでかはわからないが。

 

「観覧車はあれですか。列が出来ていますね? 早く並びましょう」

 

「お、おう」

 

遊園地に入場してから観覧車を探すこと十数分。見つけたそこには少なくない人数が並んでいた。

 

「大体、十分くらいですかね?」

 

「そうだな。意外と早いし、ラッキーだったな。でも志波さん。どうして観覧車なんだ? 他にもジェットコースターとかいろいろあるぜ?」

 

「……あそこなら二人だけになれますから。『後ろ』の人たちにも会話は聞かれませんし。それに、高いとこから見る景色が好きなんですよ」

 

『二人だけ』という志波さんの言葉に一瞬ドキッとした。

 

考えてみれば、俺は彼女とは本当の意味で二人だけになったことはなかったかもしれない。いつも学園では箒やセシリア達クラスメイトがいたし、寮の部屋で一緒に住んでいたときも箒がいた。

 

「志波さん、あのさ」

 

「順番ですよ、織斑一夏」

 

前を見れば係員が観覧車に乗るよう誘導していた。お二人ですか? と聞かれたところを志波さんがハイと答えた。そのまま二人で乗り込んだ。

 

俺と志波さんは今互いが対面するようにカゴの端同士に座っている。観覧車もどんどん上昇していって今は時計の九時くらいのとこだ。おー確かに高い。普段ISで空を飛び回ってるけど、やっぱりこうして上がって見る空の景色は格別だった。

 

「織斑一夏、あなたに聞きたいことがあるんです。いいですか?」

 

「ん? いいぜ」

 

真剣な顔をした志波さんが俺をまっすぐ見つめながらそう聞いてくる。ま、まさか告白なんじゃ……、

 

 

「あなたが中学二年のとき誘拐された第二回モンド・グロッソの大会の事件。あなたは今も覚えていますか?」

 

 

…………え?

 

 

 

 

 

言った。とうとう聞いてしまった。

 

わたしはこのことを聞くためだけに今日織斑一夏と、両親の死の原因となった男とデートなんて吐き気のする行為を行なったのだ。

 

一緒にいる間、何度気が狂いそうになったか。電車に乗っている間は危なかったですね。何度殴りかかろうと思ったことか。ま、まぁ映画は心から楽しめましたが。

 

織斑一夏がわたしのパパとママのことを、自分が原因で死んだ二人のことをどう思っているかを本人の口から聞きたかった。ずっと盗聴器から聞いてきた呟きにも似た言葉じゃなく。

 

後悔しているのか? 悔やんでいる? 悼んでくれてる?

 

その答えを、わたしはずっと知りたかった。

 

「……覚えてるよ」

 

「詳しい話を聞いてもいいですか?」

 

「あぁ、正直俺自身思い出したくない苦い記憶だけど、その分はっきり覚えてる。俺のせいで千冬姉ぇが大会を棄権しちまって優勝を逃しちまったんだ。いまでも後悔してるよ。なんで俺はあの時誘拐なんてされちまったんだって」

 

………それだけ? 織斑先生のことだけ!?

 

「……それ、だけ? それだけですか? 他にもあったでしょう! もっと…、」

 

わたしのパパとママがッ、

 

「ゴメン、俺いきなり拘束されて、気がついたら真っ暗な部屋に閉じ込められていたから他のことはわからないんだ」

 

ホカノコト? わたしのママとパパのことはそんなものなの? 織斑一夏にとっては無かったことなんですか?

 

「でもそこに千冬姉ぇが大会を投げ出して助けに来てくれたんだ。申し訳ない気持ちもあったけど嬉しかったんだ」

 

……ヤメロ、

 

「志波さん、千冬姉ぇが先生だって言ってたろ? だから俺が千冬姉ぇの足を引っ張ったことを怒っているかな」

 

チガウ、ソウジャナイ。ソンナコトジャナイ。

 

「そのことには謝るよ。俺自身そう思っているから。俺はいつも千冬姉ぇの重荷になってるから。だから今度は俺が守るんだ。千冬姉ぇを」

 

「そんなことを聞いてるんじゃない!!」

 

「し、志波さん?」

 

あぁ、なんて滑稽なんでしょう、わたしは。

 

わたしの中にあった、このグチャグチャの思いは全部、この男にっとっては何もなかった。存在すらしていなかったことでした。

 

だめです。織斑先生、ごめんなさい。また泣いちゃいそうです。

 

「ど、どうしたの? 志波さん? どこか具合悪いのか?」

 

わたしが俯いて嗚咽堪えてると、織斑一夏がそんな見当はずれのことを聞いてきます。あぁ、この男は。どこまでも鈍感なんだろう。

 

「織斑一夏。わたしは、やはりあなたのことが大嫌いです」

 

だからでしょうか? わたしは泣きながらなのに、何故か笑顔でそう告げることができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたし達はIS学園に向かう帰りのモノレールに乗っています。観覧車から降りると、帰る、と言うわたしの一言でそうなりました。

 

長椅子で織斑一夏と隣同士になっています。不愉快です。

 

結局、わたしは景色を楽しむことなんてできませんでした。ずっと泣きっぱなしで、前なんて何も見えなかったんです。

 

織斑一夏はずっと慌てていましたね。情けなくて笑えてきましたよ。『どっち』がとはいいませんがね。

 

「あの、志波さん。今日は」

 

「今日はありがとうございました。織斑一夏」

 

「え、あ、うん。こちらこそ。それよりごめん」

 

「……なにがです?」

 

「いや、その、ごめん」

 

「中身のない謝罪なんていりません。……着きましたね。降りましょうか」

 

モノレールから降りると、あとはIS学園に向かうだけです。すぐに正門が見えてくるでしょう。

 

「言っときますけど、明日から彼氏面しないでくださいね? 織斑一夏」

 

「うっ、はい。分かっております」

 

「ハンカチもありがとうございます。洗わないで返しますので、せいぜいわたしの涙でも舐めながら変態行動にでも勤しんでください」

 

「しねぇよ!? どんな上級者なの俺!?」

 

「…………え?」

 

「なにその信じられないって顔!? そこまで意外ですか!!?」

 

「とんでもない。実は今日はいつホテル街に無理矢理連れ込まれるんじゃないかとハラハラドキドキしてたんですよ?」

 

「全然信用されてねぇ!!?」

 

「あなたのツッコミもだいぶ早くなってきましたね」

 

「お陰様でね!!」

 

「ではさようなら」

 

「驚くほどあっさりと別れますね!?」

 

だってもう学園に着きましたし。

 

さて、部屋に戻って明日からの授業の準備をしましょうか。わたしは織斑一夏と別れたあと、まっすぐに宿直室に向かいました。そこでは意外な人物が。

 

織斑先生です。

 

「真季奈、大丈夫か?」

 

「何がです?」

 

「強がるな。ちゃんと、見てたからな。……頑張ったな」

 

知っています。でもそんな風に言わないでくださいよ。我慢できなくなります。

 

「もう今日は散々泣いちゃったので」

 

「そうだな」

 

「でも、織斑先生」

 

「ん?」

 

 

わたしがここにいる理由がなくなっちゃいました。

 

 

 

 




織斑一夏はとんでもないものを踏み抜いていきました。

志波真季奈の地雷です。

というわけでこんな形となりました。いやぁ長かった。

初めてのデートは失敗するものですがここまで行くと関係性の復元は難しいですね。

まぁ元から酷い関係ですが。

それでは。
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