今回も二巻と三巻の中間の話です。
どうも、篠ノ之 箒です。
なんということだ。学年別トーナメントが中止になってしまった。原因はやはり第二アリーナの倒壊らしい。
こ、こんなはずでは……。このトーナメントに優勝して一夏とこ、交際する約束だったというのに!!
「捕らぬ狸の皮算用って言葉知ってます?」
「やかましいわこの元凶!!」
第二アリーナを破壊し尽くした三人の問題児の一人、志波真季奈が私のモノローグに勝手にツッコミを入れてくる。どうやった?
私は今回の件で自室謹慎中の真季奈に今日の授業内容の連絡に来ている。それだけで用事は済んだのだが、何故かそのままズルズルと真季奈の部屋でくつろいでしまった。アニメの鑑賞会に引きずり込まれたともいう……。
「大体なんで中止なんだ! アリーナは他にもあるだろう!!」
「アリーナが少なくなったことでトーナメントのスケジュールが長くなっちゃうことと、見学に来る各国のIS技術者のスケジュールが合わなくなったそうですよ? それと、アリーナの再建計画に生徒会が忙殺されてトーナメントの運営が手に負えないとか」
「やっぱりお前が原因か!?」
「てへ☆」
イッラ~~~~~~~~~!!! ぶん殴ってやりたいわこのアマぁ!!
「でもあれですね。優勝者は織斑一夏と交際できるっていうデマ、発端は箒ちゃんだったんですね」
うっ!? そうだ。誰が広めたのか、私と一夏の約束が全生徒共通の景品になっていたのだ。今にして思えば自分が優勝できなければかなり不味い状況だった。もしも真季奈が優勝していたりすれば……。
「あ、言っときますけど。わたしは織斑一夏との交際なんて興味ないですよ?」
「そ、そうなのか!」
「奴隷にしていいなら喜んでいただきますが」
本っっ当に危なかった!!!! 中止になってよかったなぁああああああ!!!
「さすが真季奈組の姐さん……、発想が恐ろしいな」
「それやめてくれません!?」
ふん。い・や・だ!!
コンコン!
む、部屋の戸をノックする者がいるな。
「どうぞー」
『失礼しまーす』
真季奈の許可が入ったことで複数の返事と一緒に部屋に入ってきたのは四人。同じ一年一組の一夏、セシリア、シャルロット、ラウラだ。
「おや、美女を侍らせての登場とは、いい御身分ですねホストムラ一夏」
「謹慎中に遊び呆けてる奴にだけは言われたくないわ!!」
「それでお前達。何をしにきたんだ?」
この二人の漫才は放っておくと長くなるので早々に話題を代えさせてもらう。
「あぁ、そうだった。俺たちこの間の志波さんのISについて聞きたいことがあったんだった」
「わたしの『天蓋王』が何か?」
何かって、まぁあのことしかないだろうな。
「『単一能力』だよ。ビームを吸収してたみたいだったけど」
「……なんで他国の代表候補生の前で手の内を明かさなくちゃならないんです?」
まったくもってそのとおりだな。セシリア、ラウラ、シャルロットは将来的に争う可能性のあるIS操縦者だ。そんな相手に手札を晒す通りもないだろう。
「そうなんですが、やはり気になってしまいまして……」
「僕も」「私もです。姐さん」
厚かましいなこの三人!? なんで教えてもらえると思ってるんだ! 普通に考えて無理だろう!?
「いいですよ」
「いいのかよ!?」
くっ、またツッコんでしまった……。
「条件がありますが」
な、何を?
どうも~。リラックス中の志波真季奈で~す。
こ、これはヤバイですねぇ~。
「あっ、ふ、あんっ、あ、あ、あぁあああ、気持ちいぃいいいいい」
「そんな声をあげるな馬鹿者!!」
しょうがないじゃないですか箒ちゃん。これでも我慢してるんですよ?
今わたしはベッドにうつ伏せになって織斑一夏のマッサージを受けています。上手いとは聞いていましたがこれは予想以上です。
「織斑一夏、次は腰の方を。お尻触ったら殺しますよ?」
「ぎょ、御意…」
「大丈夫ですわ真季奈さん。その時はわたくしが地獄に送って差し上げますから」
「そうだね。僕も手伝うよ」
「姐さんに不埒な真似ができると思うなよ?」
「お前らもう完璧だな」
はははっ、織斑一夏は完全に包囲された!! わたしをマッサージしているところをオルコットさんに『ブルー・ティアーズ』を突きつけられ、シャルロットさんに『シールド・ピアス』を押し付けられて、ラウラちゃんにナイフを首筋に構えられています。
でも不思議ですね。まさか箒ちゃんが参戦してこないとは。とうとうツッコミキャラとして突き進む覚悟ができたんでしょうか?
「ちゃんと私の分も残しておけよ?」
「ひぃ!?」
あ、ちゃんと参加するんですね。なかなかハイブリットなキャラに成長して嬉しいです。
でもこれほんと、
「いいわぁ~~~~、気持ちいぃ~~~、アンッ!!」
『ジャキン!!』
「もう勘弁してくれませんか志波の姐さん!?」
「駄目です。まだ足が残ってます」
「俺の寿命がもう残りわずかです姐さん!!」
「まだだ! まだ終わらんよ!」
「バジーナ!?」
ちっ、情けない。まぁいいでしょう。そのみっともない顔はしっかりと録画……あ、できないんだった。『天蓋王』は使用禁止でしたか。ちくせう。
「それで、なんでしたっけ?」
「お前のISの話だろ?」
あぁそうでした。
「わたしのIS『天蓋王』の『天下騒乱』。これは『天蓋王』の両手にフィールドを発生させて、それに触れた相手のISのシールド・エネルギー、並びにそれを用いたビーム兵器のエネルギーを自機のS.Eに吸収する能力です」
『なにそれチート!?』
失礼な。ちゃんと弱点もあるんですよ?
「真季奈、それは具体的にどうすれば効果があるんだ?」
「そうですね。一番手っ取り早いのは相手に直接触れること。それができなければビーム系統の攻撃を受け止めることですね」
「……あの、ビームを受け止めるってかなり難しいんじゃ?」
「難しいですよ? しかもビーム兵器を搭載しているISはまだ数が少ないですしね。ですので相手に直接触れるのが基本ですね」
ビームは速いんですよ? 光より早いとは言いませんが、それでも拳銃よりは早いんです。それをハイパーセンサーのサポートがあるからって受け止めるのは結構勇気がいります。それに相手に直接触れるって、玄人同士の戦闘でそんなチャンス、つくるほうが難しいですよ。
「……よくそんなことができるな」
「やらないと勝てないからですよ。『エナジーウイング』には仕様制限がありますからね。相手からエネルギーを奪わない限り自滅するだけです」
まぁ、できるようになるまで死にものぐるいでしたけどね。今なら生身で拳銃の弾を回避するくらいはできると思います。多分ですが。
「そんな凄い能力を隠していたなんて……」
「いえ? もう二回ほど使っていますよ?」
「え!? いつ!」
織斑一夏が驚いていますが、主にあなたの目の前で使っていますよ?
「クラス代表戦の時に『白式』の『雪片二型』を掴んだとき。それとクラス対抗戦で未確認のISのビーム攻撃から鈴と織斑一夏を庇った時です」
「あの時か!?」
少しは気づいてくださいよ。無理か、馬鹿だし。
「今思ったんだけどさ。一夏の『白式』ってS.Eを消費して『零落白夜』を発動させるんだよね。それって『天蓋王』の『天下騒乱』からしたら格好の餌なんじゃ?」
「………げ!?」
今気づいたんですか? やっぱり馬鹿だー。
『雪片弍型』の『零落白夜』はS.Eを消費して発動する。なら、発動の最中にこちらもS.E吸収能力の『天下騒乱』を発動すれば……。S.Eが恐ろしい勢いで無くなっていくでしょうね。現にそれでクラス代表戦は勝ちましたし。
「それじゃぁ、俺が志波さんに勝とうと思ったらさ……」
『天蓋王よりも速い動きをして捕まらないで』
『必ず雪片二型の一撃を入れること』
『もちろんカウンターで捕まってもダメ』
「できるかぁああああああああああ!!!!」
む、最初から諦めるのは感心しませんね。できないなら、できるようになるまで鍛え上げるのみです。
「特訓、ですね☆」
「いぃやぁああああああああああああああああああ!!!」
だからって、簡単にはさせませんがね。
復讐13 : わたしの体をマッサージ
結果 : 織斑一夏、四面楚歌で生き地獄
備考 : 体の疲れが取れました!
ひ、酷い目にあった……。
志波さんのマッサージは弾のやつなら、『なにそのパラダイス!? 今すぐ俺と代われ!』なんて言うんだろうけど、俺にとっては正に地獄だった。志波さんの身体を揉むたびにセシリア達の銃の引き金が緩くなるんだから。
正直いつ撃たれても不思議でなかった気がする……。生きてて良かったー(泣)
しかもその後は、志波さんのお気入りのロボットアニメを延々と見せられ続けたし。勇者シリーズが熱いらしい。居眠りしてちゃんと見てなかったら頭に何度もチョップ食らった。何故か千冬姉ぇそっくりの痛みだったのが驚きだ。
今は夜の十時過ぎ。ようやく解放されて自分の部屋に戻るところだ。
『織斑一夏。ちょっといいか?』
ん?
「あれ? どうしたんだデウス……って!? お前一人で来たのか! 志波さんは!?」
後ろから声をかけられ、振り返ったそこには志波さんのIS『天蓋王』の管理人工AI、『デウス』が待機状態の柴犬の姿でいた。一匹(体?)で。
『お前と個人的に話したいことがあってな。真季奈には内緒で来た。今『天蓋王』は使用禁止だからな。別に構わんだろう』
「いやいやいやいや!! あるだろ問題!?」
ISが所有者の許可なく傍から離れちゃまずいだろ!?
『ここだと誰かに聞かれるかもしれん。場所を移させてもらうぞ?』
「あ、あぁ。いいけど……」
やだこの犬イケメン!?
俺はデウスに連れられて(犬に先導されるってどうなんだ?)寮の共用娯楽スペースに連れてこられた。鬼教官(千冬姉ぇ)の監視の目を盗んでこの時間に自分の部屋から出て遊びに来る猛者はそうそういない、筈だ。
『もし誰か来たら俺のセンサーで分かるから問題ない』
「……はぁ」
そう言われれば頷くしかない。俺は部屋の椅子に座って、デウスはその前の床にゴロンと横になる。うん、犬だ。
『さて、お前に話というのはだな。真季奈のことだ』
「志波さんの?」
『お前、真季奈のことが好きなのか?』
「えぇえ!?」
なんの話!? あ、志波さんの話か、じゃなくて!
「いいい、いや、その、俺は……」
『そうか、大体分かった』
「何が!? ねぇ何が分かったんだ!?」
この犬侮れねぇ!! 本当に機械か!?
というか、やっぱり俺って志波さんのこと……?
『織斑一夏。お前は自分が誘拐されたモンド・グロッソでの事件をどれぐらい知っている?』
「……随分と話が飛ぶな。それ前にデートしたときに志波さんにも聞かれた。その時にお前は聞いてなかったのか?」
『あの時は意識を切っていた。まぁ寝ていたと言ってもいい。それに、人のデートを盗み見るような趣味もないしな』
お前ほんと男前だな!
『だが、その時にお前が真季奈を泣かしたことは聞いているぞ?』
「うっ、それはその……すいません」
犬に頭下げてるんですけど俺。いろんな意味で情けないなぁ。
『お前はあの時、真季奈が泣いていた理由が分かるか?』
「志波さんが泣いていた理由……」
そんなことを聞いてるんじゃない!!
あの日、彼女が泣きながら叫んでいた言葉が聞こえた気がした。忘れることなんて出来る訳がない。ずっと知りたかったんだ。俺の何がいけなかったのか……。なんで、志波さんを悲しませてしまったんだろうかと。
『お前はあの誘拐事件で、織斑千冬が大会優勝を逃したことで真季奈が気にしていたと思っていてそう言ったんだろうが、そうじゃない』
「じゃぁ……なんだよ?」
『お前は知らないだろうが、あの日お前の誘拐の際に巻き込まれた民間人がいた』
「え?」
初耳だ。そんなこと、政府の人間も、ましてや千冬姉ぇにだって教えられてない。
『それが誰で、どうなったか知りたくはないか?』
ドクン!
自分の胸が高鳴ったのがはっきりと感じられた。なんだ? 自分でも、『コレ』は聞かなくちゃならないことだと分かる。なのに、絶対に聞いてはいけないことなんだと体の底から、本能が訴えかけてくる様な気がする。
それを聞かされたら何かが狂ってしまうような。
『その民間人というのは真季奈の両親だ』
……ヤメロ。
『二人は訓練で隔離させられていた真季奈と数年ぶりに会うために会場に来ていた。そこで』
……マッテクレ。
『お前の誘拐に巻き込まれて』
「デウスっ!」
『殺された』
デウスへの制止も間に合わなかった。いや、間に合ったとしても言うのを止めなかったと思う。
そして、デウスの言った言葉の内容がゆっくりと俺の頭の中に吸い込まれてその意味を理解してゆく。
つまり、志波さんの両親は、俺のせいで、死んだ。殺された?
理解出来てもなかなか受け入れられない、いや、信じたくない話だった。それならなんで志波さんは俺と……?
目の焦点があわない、動悸も早くなってきた。気分が悪い、それでも。
「なんで、志波さんは……俺なんかの傍にいるんだ? 志波さんにとっては仇も同然じゃないか!?」
そうだ。俺が志波さんの両親を殺したわけじゃなくとも、殺された原因は俺なんだ。なら、俺は志波さんに憎まれて当然なんだ。千冬姉ぇが俺の誘拐が原因で大会二連覇を逃したことで俺が憎まれたように。
『最初の頃は憎んでいたさ。だが、真季奈は優しい子だ。どうしようもない程の。そのせいで、お前と接するうちにどこかでほだされていったんだろうな。復讐心が。レベッカ・パープルトンと劉蓮花も言ってたよ、昔に比べて丸くなったと。そういうことなんだと思う』
「じゃぁ、初めて会った時から俺に対して態度がおかしかったのはそういうことなのか?」
『それもあるが、昔はもっとひどかったぞ? 何度お前を『天蓋王』を纏って殺しに行こうとしたことか』
「そんな、それでも……、俺が許される理由にならないじゃないか!!?」
俺のせいで志波さんの家族は死んだんだろ!? 俺なら千冬姉ぇが誰かのせいで死んだらそいつを絶対に許さない! はっきりそう言える! なのに、なんで……。
『許してなんかいないさ。言っただろ? 真季奈は優しい子なんだよ。本当にどうしようもない程に。それに淋しがりやで泣き虫なんだ。だからこそ脆い。俺はそれが怖いんだ。いつか、真季奈の心がポッキリ折れてしまいそうで』
それは、わかる気がする。
志波さんは怖い。だけどいつも面倒見が良くて、面倒ぐさぐり屋だけど最後には誰かの相談に乗ってくれる。鈴と喧嘩した時だって、友達になりたいって自分から仲直りするために頑張っていた。泣いた顔も見た。……あんな顔はもう見たくない。
『まぁそれだけじゃないんだがな』
(昔、織斑千冬が言っていた言葉。私の弟は妙に女を刺激する。油断していると惚れてしまうぞ? というものだ。打たれ弱い真季奈では意外と不味いかもしれん。もしくはもう手遅れになっているかも……それだけは阻止せねば!)
「俺、今度こそ志波さんに謝らないと」
『殴られるぞ?』
中身のない謝罪なんていらない、か。確かにそうだ、俺には何も無かった。何も知らずにのうのうと生きてた馬鹿だ。
「それでも、俺は志波さんに何かしたい。償いなんて偉そうなことは言わない。殴られて蹴らて憎まれたって、傍にいて力になりたいんだ」
『ふ、それだと今と変わらんじゃないか』
「あぁ、そうさ。俺はこれからも志波さんの傍にいる! そして強くなるんだ。今度は俺が志波さんを守れるように!」
『なら約束しろ。俺たちが真季奈を守るんだと』
「あぁ、男同士の約束だ!!」
俺とデウスは手(前足?)を取り合って誓い合った。(傍から見たらお手してるだけにも見えなくはないが)
志波真季奈という女の子を守ると。
『ちなみに、これからも真季奈の嫌がらせには文句を言わずに付き合えよ?』
「あれやっぱり嫌がらせだったんかい!!?」
一方。
「あれ? デウスがいない!? デウス!? デウスーっ!! ハーーーウス!!!」
某、謹慎中の生徒の寮部屋。
「ねぇ! あたしの出番は!?」
『二組の連絡係だからないでーす』
「ちくしょう!!!」
『天蓋王』の『単一能力』の説明です。
つまるところ、ドラ●ンボー●の人造人間19号のエネルギー吸収能力ですハイ。
僕の戦闘シーンの描写が未熟なので、下手な伏線が分かりづらかったことと思います。
もう一話オリジナルを書いてから三巻にはいろうと思っています。
それでは。