IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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みなさんは海ではどうやって遊びますか? 僕は泳いだ後に屋台で焼きそばやかき氷を食べるのが好きです。

真季菜たちはどうするでしょうね?

ではどうぞ。




海での遊び方は人それぞれ

あれ? ここは? 

 

確かわたしは……、

 

「真季奈ー! ひっさしぶりー!!」

 

ん? あの人は? 厚手のジャケットにタンクトップ、カーゴパンツを履いた女らしさのかけらもないあの女性は……。

 

……!!? ママ!!

 

そうだ、ここはドイツの第二回モンド・グロッソ会場。織斑先生の応援と試合見学が条件でパパとママとの面会が許されたんだった。

 

「ママ! ママ! ママぁーーーー!!!」

 

どれだけぶりでしょう。感極まって涙目になりながら駆け寄って抱きつきます。

 

ママ、会いたかった!!

 

「おいおい真季奈ぁ? 泣き虫は治らないなぁ。でも、ママも会いたかったぞ~」

 

「うるさいです! ママだってまたそんな女らしさのない格好! いつかパパに逃げられますよ!」

 

「ダイジョ~ブ! あいつママにベタ惚れだから!」

 

そうですけどね! 平日も休日もいつも一緒でいつ働いてるんだって思うほどですものね! あれ本当にいつ働いてたんだっけ?

 

「どうだ? ちゃんと飯は食ってるか? 毎日楽しいか? 面白いことあったか? 友達できたか?」

 

「ご飯はマズイです! ストレスで毎日イライラします! 訓練と研究ばかりです! 同じ年頃の人と会ってません!」

 

「ハハっ! 最低だな! もう暴れまくって周りの奴ら困らせてやれ!」

 

「はい! ISに乗ったら思う存分暴れてやります!!」

 

さすがママです! 大好き!

 

「そういえばパパは?」

 

「あぁ、用事でちょっと遅れるって」

 

「用事?」

 

なんでしょう?

 

「それよりも真季奈。ママの観客席、隣の席に座ってるの誰だと思う~?」

 

「はぁ? わかるわけないじゃないですか?」

 

「ちょっとは考えろよ~。つまんないな~。まぁいいや。実はな、織斑先生の弟だってさ」

 

先生の? 確か織斑一夏と言いましたか。

 

「友達いないんだったらママが引き合わせてやろうか~?」

 

「止めてください! 恥しい!!」

 

「お? ならいっそ彼氏になんてどうだ? 結構ツラは良さげだったぜ?」

 

「余計なお世話です!」

 

「ハハッ、まぁそんなことしたらパパも泣くかもな! 真季奈に彼氏なんて~って」

 

「もう!」

 

あぁ……久しぶりだなぁ。ママだ。わたしのママ。ガサツで、男まさりな美人のママ。

 

会いたかった……!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……波さんっ、志波さんってば! 起きろ~!」

 

「んぁ?」

 

あれ? 夢? なんでしょう、とても懐かしい夢を見ていたような気がします。起きたことが残念なほどに。

 

「やっと起きたね、志波さん。ほら、マイク。志波さんの順番だよ?」

 

おはようございます? バス in 真季奈ちゃんです。今わたし達IS学園一年生は臨海学校に向けてバス移動中です。朝早くの移動だったので寝てました。

 

「寝起きで織斑一夏の顔とかないわー…」

 

「いきなりそれ!?」

 

「……気持ち悪い。エチケット袋あります?」

 

「バスに酔ったんだよね!? そうだと言って!!」

 

「うるさい」

 

「すいません」

 

なんとまぁ、わたしの隣の席が織斑一夏でして。ないですね。ないわー。テンション落ちるわー。窓際なのが唯一の救いですが。いや待てよ?

 

「窓際の逃げ場のない席に追い込まれてるなんて……貞操の危険を感じますね。寝てる間にわたしの胸や恥部をまさぐってなんていないでしょうね? この変態」

 

「してないよ!? 冗談でも止めてください! 身の危険を感じるのは俺の方なんで!!」

 

まぁバスという閉鎖空間では逃げ場はないですからね。最前席で睨みを聞かせてる貴方の姉とかどこからともなく殺気を放ってる女子四人とか。あ、ちなみに鈴は二組なのでいませんよ?

 

「それでなんでしたっけ?」

 

「だからマイク。カラオケ、志波さんの番なんだけど」

 

おや、いつの間に。寝てたんでまるで気づきませんでした。ふむ。

 

どうやら現地につく間の時間つぶしにバスの中でカラオケ大会を開いていたそうですね。それでわたしの順番が来たと。

 

ふむ。

 

「それではわたしは歌のかわりに皆さんに一つ面白い小話を披露しましょう」

 

「へ?」

 

わたしはマイクを持って立ち上がります。そして網棚の自分のカバンからあるモノを取り出します。

 

「志波さん。なんだいそれ?」

 

わたしが取り出したのは古いノートです。正確にいえば、『ある人物』が幼い頃より書き綴った記録なのですが。

 

「それではお聞きください。織斑一夏黒歴史特集ー!」

 

『『『!!?』』』

 

「え!? ちょっどゆこと!!?」

 

これぞ織斑一夏コレクションNo.108! 織斑一夏の痛々しい厨二設定資料集! もちろん織斑一夏の自宅から拝借しました(テヘ)。

 

それではまずは小学生編から。

 

「俺の剣は世界を切り裂くぜ! るろうにイチ心!」

 

『『『明治剣客ロマンだと!?』』』

 

「わーーーーーーー!!!」

 

「オラワクワクするぞ! スーパーイチカ人!!」

 

『『『むしろハラハラする!』』』

 

「わーーわーーわーー!!」

 

「見た目は子供! 頭脳も子供! 名探偵イチカン!」

 

『『『それただの子供ですよね!?』』』

 

「そのノートどこで手に入れたあぁああああああああああ!!?」

 

はっはっは。アニメや漫画に影響されやすい子供だったんですねぇ。だがまだこれからが本番よ!

 

中学生編!

 

「『俺は勇者オリムラーン。世界を守るべく女神に選ばれた伝説の戦士。必殺技は世界を七度滅ぼせる大魔法デス・ザ・ゴッド! くっ、駄目だ! 俺の中に封じられた魔の力が暴走を』」

 

「いやぁあああああ!! 止めて! それ以上はダメェエエエエエ!!!」

 

『『『イタタタタタタ』』』

 

おやおやぁ? 自分で作った設定でしょう? もっとクラスの皆さんに聞いてもらいましょうそうしましょう。

 

「『俺の心は硝子のハート。もろく繊細なヒビ割れた欠片は触れただけで傷つけてしまう。だから俺に近づかないくれ。誰も傷つけたくないんだロンリィハート…』」

 

『『『ポwwwエwwwム』』』

 

「楽しいか!? 俺を辱めて楽しいかぁああ!!!」

 

えぇとっても!! というかこのポエム。最後の言葉が意味わかりませんね。寂しい心ってなんなんです?

 

「聞かないで! ほっといてくれよぉお若気の至りなんだよぉおお」

 

うわぁガチ泣きですよ。凄く興奮しますね、この無様な顔。いいわぁ。

 

「さて、それでは続きまして」

 

『『『まだやるの!?』』』

 

? 当然ですよ? だってノートにはまだまだ笑える設定集がたくさんありますので。

 

それでは次は織斑一夏の隠された力が目覚めたところから………あ、とうとう膝を抱えて丸くなった。まぁそれでも容赦しませんが。

 

 

 

復讐15 : 織斑一夏黒歴史ノート発表会

 

結果   : ww織ww斑ww一ww夏wwのww泣wwきww顔ww

 

備考   : 泣きすぎてウザかったのでわたしの膝を貸してやりました。ホントにウザイ。

 

 

 

 

 

「あー楽しかった」

 

「よかったですねぇ!」

 

この鬼! 悪魔! ドS女王!! なんであんなもの持ってるんだよぉ!! あれ俺の家にあったはずだぞ!?

 

「ヒント。あなたの家の鍵」

 

「それもう答えですよね!?」

 

「ヒント。織斑先生」

 

「アンタもグルか千冬姉ぇ!!!」

 

「織斑先生だ」

 

スパァン!!!

 

グハァッ! ここで出席簿とか理不尽すぎる!!

 

「ほら、宿に着いたんですから早く降りる準備しなさいな。クラス代表なんですから降りてクラスの皆を整列させる仕事があるでしょう?」

 

「もう無理ポ……」

 

「情けない。仕方ありませんね……、全員起立!!」

 

ザッ!

 

「速やかに荷物を持って降車! 出席番号順に二列になって整列!」

 

『『『ハイ! 姐さん!!』』』

 

「今すぐ代表変わってくれません!?」

 

完全にクラスを統率してるんですけど! 俺いらないじゃん!!

 

「わたしを楽させようという気概はないんですか。甲斐性のない男ですね」

 

「うぐっ」

 

……返す言葉もございません。

 

「さっさと降りんかお前ら」

 

千冬姉ぇに言われてバスから降りる。志波さんも一緒だ。というか俺がいつまでも座っていたから降りられなかったらしい。

 

四台のバスから一年生が全員すでに降りていた。一年一組の列に俺たちも並ぶ。

 

「それでは、ここが三日間お世話になる花月荘だ。従業員の皆様の仕事を増やさぬようお行儀良くしろよこの豚共が!」

 

『『『よろしくお願いします!』』』

 

うん、引き締まったいい返事だ。花月荘の従業員のみなさんも引きつった笑顔が新鮮だ。慣れって怖いですね。

 

「はいこちらこそ。今年の一年生の皆さんも元気があってよろしいですね」

 

着物姿の女将さんが丁寧におじぎをした。『も』ってなんだ。毎年こうなのか? もういやこの学園。

 

「あら……こちらが噂の? …………お気の毒に」

 

ふと俺と目があった女将が千冬姉ぇにそう尋ねる。ちょっとその噂詳しく聞かせてもらいましょうか! お気の毒って何さ!?

 

「女の集団で愚弟の存在がご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします。浴場分けも、なんでしたら屋外でドラム缶にでもつっこんでやってください」

 

「おいこらそこの実姉」

 

「いえいえ。ドラム缶を用意するほうが面倒ですので」

 

面倒じゃなかったらいいんですか!? 

 

「それじゃぁみなさん、お部屋の方にどうぞ。海に行かれる方は別館の方で着替えられるようになっていますからそちらをご利用なさってください。場所が分からなければいつでも従業員に聞いてくださいまし。それと、当宿では覗きなどの対策は万全ですのでご安心ください」

 

最後の一言は余計だと思うんですけどぉおおおおおおおおお!?

 

信用ないの俺!? それともその噂のせい!? どうなってんの!?

 

『はーーーーい!』

 

君たちさっきから返事だけは気持ちいいくらい元気だね! 俺はもう泣きそうだよ!

 

傷心の俺をよそに一同は旅館に入っていく。俺も目頭が熱くなるのを我慢しながら後に続く。

 

ちなみに初日は終日自由時間。食事は旅館の食堂で各自に取るよう言われている。ようするにこれが最初で最後の安息日というわけだ。明日から怖いな。うん。

 

「ね、ね、ねー。おりむー」

 

ん? この独特の間延びした声はのほほんさん?

 

「おりむーの部屋ってどこ~? 一覧に書いてなかったー。遊びに行くから教えてー」

 

その言葉で周りの女子が一斉に聞き耳を立てたのが分かった。でも残念だったな!

 

「……床」

 

「え?」

 

「床だってさ。俺も千冬姉ぇに聞いたらそう言われた」

 

そう言って持っていた荷物。以前、寮生活の初日にて支給された例の寝袋をのほほんさんに見せる。当然周りの女子もドン引きだ。

 

「……なんか最近、織斑先生おりむーに厳しくない?」

 

のほほんさんが核心を突いてくる。それなんだよなぁ。

 

「自分が志波さんと一緒に買い物に行けなかった腹いせ」

 

『うわぁ』

 

俺もそんな気持ちです。誰か助けて!

 

「それはいけませんねえ」

 

志波さん!? いつの間にか背後に立たれていた。いつからそこに?

 

「なんにせよ、床で寝るのはいけません。普通に旅館の方々に迷惑です」

 

スルーですか。しかも気にするところはそこですか。

 

「しかたありません、わたしが一肌脱ぎましょう」

 

た、頼もしすぎる! 姐さんお願いします!

 

「む、あれに見えるは織斑先生。では…………ちふゆおねぇ~ちゃ~ん!」

 

『『『!?!?!???!!!?』』』

 

え? 誰あれ!!? 新キャラ!?

 

とんでもないぶりっ子だった!

 

「ま、真季奈!? どうした!?」

 

うん、本当にそう思うよね!

 

「あのね、おね~ちゃん。一夏君の~、お部屋が無いのはさすがに可哀想だと思うんだ~。だからお部屋用意してあげて!」

 

す、凄い! 千冬姉ぇに抱きついて頭スリスリだと!? 千冬姉ぇそこ変われ!!

 

「だ、だが」

 

「ね? おねがぁい。ちふゆおね~ちゃん?」

 

『う、上目遣いキターー!!』

 

「し、しかたないなぁまったく。今回だけだぞ?」

 

落ちたーーーー!! デレデレやがな! ニヤケ顔ハンパねぇ!!

 

「わーい! 真季奈、おねぇちゃんだーい好き!!」

 

「ふぁう!! わ、私も大好きだーー!!」

 

ガシッ! 二人の熱い抱擁! というか千冬姉ぇが志波さんに甘えてる!?

 

なんだこれ。は、恥ずかしい! あれ俺の実姉なんすけど! あ、こらクラスの女子共、露骨に目を背けるな、無言で立ち去るな!! お願い一人にしないでぇ!!

 

「というわけだ。着いてこい織斑」(キリッ!

 

「もう遅ぇよ! このバカ姉!!」

 

「それではわたしもこれで」( ̄Д ̄)ノ

 

「びっくりするくらい素に戻りますね志波さん!!」

 

ホント怖いわこの子!!

 

 

 

 

 

 

さて、荷物を部屋に置いて水着に着替えてきました。例の織斑一夏が選んだグリーンのフリルの付いたワンピースです。わたしと同部屋なのは箒ちゃん、ラウラちゃん、オルコットさん、シャルロットさんとまぁ一組の代表候補生ばかりですね。部屋に着いたときは誰もいませんでした。海に行くの早いですね皆さん。

 

好都合です。

 

さて、織斑一夏の鞄に仕掛けた発信機の位置は……あれ? ここって教員達の部屋じゃ? ということは織斑先生と同室ですか。忍び込むのは難しいですね。監視カメラだけでも付けらないでしょうか?

 

「どうしましょうか? ねぇデウス? ………デウス?」

 

返事がありません。あれ? そういえば最後に見たのは何時でしたっけ? というか………『天蓋王』がない!?

 

「ささ探さないと! どこかで落とした!? わけないですよね……ということはまさか……」

 

慌てて自分のリュックを引っかき回していて気づきました。そういえばわたしのISは勝手にその辺をうろつく機能が付いていやがったことを。

 

そのときちょうどリュックの底から紙切れが出てきました。身に覚えがありません。ワープロ印刷の文字が綴られてます。手紙のようですね。

 

 

『真季奈へ。バスが着いたら勝手に海で遊ばせてもらうので。いつまでも宿で引きこもるような真似はしないこと。  デウスより』

 

 

あのクソ犬がぁああああああああ!!!

 

ふん捕まえて望みどうり海に沈めたらぁあああああああ!!!!

 

では行きますか!! 犬狩りじゃぁ!!

 

「お? なんだ真季奈か。お前も今から海に行くのか?」

 

旅館から出たら水着姿の織斑先生と遭遇しました。ほう、黒のビキニですか。エロイですね。

 

「はい。織斑先生もですか? その水着、素敵ですね! では!!」

 

「お、おい? そんなに慌ててどうしたんだ一体!?」

 

「ウチの駄犬が逃走しました!」

 

「はぁ!? どこに行った?」

 

「海です!」

 

「よし急ぐぞ!」

 

思わぬ援軍がつきました! いざ行かん、海へ!

 

 

 

で、海に来たのですが、なにコレ?

 

 

「一夏がかわいいって……かわいいって……」(顔を真っ赤にしてフリーズ中)

 

「鈴さん! 許しませんわよ~!!」(手ブラで砂浜を走り回ってる)

 

「うっさいわねセシリア! いいじゃない減るもんじゃないし!」(オルコットさんに追われている)

 

「一夏! ビーチバレーしようよ!」(織斑一夏の腕をとって引き回している)

 

「志波さーん! どこー!? ヘールプミー!!」(こいつが一番意味がわからん)

 

 

マジカオス。わたしがいなくてもこんなにも狂うんですねこの人たち。

 

それよりもデウスはどこだ!?

 

「きゃー! 見てあの人!! 格好イイー!」

 

「凄い! 乗ってる! 波に乗ってるわ!」

 

? 何事です?

 

どうやら凄いサーファーがいるようですね。女子達が海に向かて歓声を上げています。

 

「あれ? あの人なんか小さくない?」

 

「遠くにいるからじゃないの?」

 

「だってあの波すごく近いよ?」

 

なにやら様子がおかしいですね? ん? あのサーファーはまさか!?

 

『『『あれデウスじゃん!!!』』』

 

「ちょっとまてぇえええい!!」

 

なんとまぁ、ウチの犬がサーフボードに乗っかって海を泳いでいました。器用にも後ろ足の二本足で。波乗りデウスですか? ってこら。

 

『おぁ真季奈。遅かったじゃないか』

 

犬サイズの小さなボードを小脇に抱えて海から歩いてきます。犬が。二本足で。なにこれシュール。

 

「………また可笑しな進化を遂げましたねデウス」

 

わたしの前にいるのは、海パンを履いてサングラスをかけた二足歩行の柴犬です。なんだこの生き物?

 

『ははは! よせよ照れるじゃないか』

 

「褒めとらんわ! それよりもアナタ、また勝手に出歩いて! 何かあったらどうするつもりなんですか!?」

 

『俺のことなら心配いらんぞ? いざとなったら自衛できるしな』

 

「なっ!?」

 

それはつまり、『天蓋王』の武装をデウスの独断で起動できるということですか!? わたしの承認もなしに?

 

「デウス、あなた一体………」

 

「あー! いたいた志波さん、やっと見つけたー!!」

 

「お、織斑一夏!?」

 

なんですかこんなときに!

 

「助けて志波さん! もう収集がつかん!」

 

「知るか! どうせあなたが原因でしょう!」

 

スパァン!! 背中にスナップの効いた張り手!

 

「ギャァ! 素肌の背中に直はぁああ!!」

 

綺麗な紅葉ができました。

 

「まったく。そもそも海に来たらすることはひとつでしょう!」

 

「おぉそれは!」

 

「砂遊びです」

 

「なんでやねん」

 

 

 

 

 

というわけで。俺は志波さんと砂浜でサンドアートさながら、砂の城を作っている。結構大きい。志波さんの身長ぐらいはありそうだ。

 

「ふふふ、後は波を城壁の堀に引き込めば完成ですね」

 

「うん、なんでここまで完成度高いもの作っちゃったかなー俺たち」

 

見た目は日本の城。立派な城壁、天守閣、屋根の瓦の細工とよくもまぁここまで凝ったものだ。何してんだろ俺?

 

でも意外な特典が。いやね? こう砂浜に座り込んで作業してるとさ、食い込んじゃうよね? 水着が。肌に。

 

志波さんの肌が! 柔肌がぁああ!! 眼福!

 

『『『あいつ殺すか』』』

 

は!? 殺気! でも負けねぇ!

 

「にしても沢山砂使ったなー」

 

「そうですね。あ、織斑一夏。そちらのバケツに水汲んできてください」

 

「わかった」

 

志波さんに言われた通り、近くにあったバケツをとって海に向かう。……思えばこのときに気づくべきだったんだ……。

 

ズボォッッ!!

 

「うわぁああっ!?」

 

あの大量の砂をどこから集めたのかを。

 

「落とし穴!? いつの間に!」

 

身体全部が頭だけ出して地面の下に落ちた。どうやって掘ったおい!

 

「ふっふっふ、うまい具合に掛かりましたね」

 

「やはりか! 一体何を!?」

 

「埋めろ、テメェら」

 

『『『はい! 姐さん!!』』』

 

もうやだこのクラス! あぁ! 止めて! 砂かけないで! ぎゃぁあああああああ!!!

 

首だけ出して体全部埋められました。しかも海水までかけられてしっかりと踏む固められている。脱出はちょっと無理だ。もうどうにでもなれー。

 

「で、何が目的なんですか志波の姐さん……」

 

「実はもう一つやりたいことがありまして………スイカ割りとか」

 

「出せ! 今すぐここから出せぇええええええ!!」

 

「おやおやどうしました? そんなに慌てて」

 

いやもうこれ明らかですよね!? スイカ割るつもりなんてないんでしょ!

 

「では、第一回! 一夏ワリゲーム! はっじめっるよー!」

 

『イェーーーーーーーーーーーイ!!』

 

いやぁああああああああ!!!

 

「ほれ真季奈。木刀」

 

「ありがとうございます、織斑先生」

 

「さらっと何渡してるの!? 流石にそれは洒落にならないって千冬姉ぇ!!」

 

「大丈夫ですよ?」

 

へ? どゆこと?

 

「ほら」

 

 

志波さんが手にした木刀を左右に振る。すると、

 

ブヨン! ブヨン!

 

刀身部分が柔らかくしなっていた。な、なんだ玩具か……、それなら安心か?

 

「で、誰から行きます?」

 

「私からでいいですか? 姐さん」

 

お前はラウラ! 再起動したのか!?

 

「ほほう、ラウラちゃんですか。もしも外したらどうなるか……わかりますね?」

 

「は、ははい!」

 

怖いわ!

 

「ふむ、これが日本のスイカ割りというものか……聞いていたものとずいぶんと違うんだな」

 

「そうだぞラウラ! だからやめよう! な!」

 

「私もお前も姐さんの舎弟。覚悟を決めるんだな一夏」

 

なんの覚悟だ! 

 

目隠しをして、木刀を軸にくるくると回るラウラ。準備は整ったようだ。

 

「ラウラちゃんそのまま正面です」

 

「いや違うぞラウラ! もっとも右だ!」

 

さすが軍人。身体を回転させられても足取りは乱れることなくまっすぐに歩いてくる。確実に誘導する志波さんに、必死に妨害する俺。

 

「問題ありません姐さん。一夏の声がする方に進めばいいので」

 

しまった!? 俺の方へと確かに進むラウラ。完全に目の前まで来た。振りかぶれば間違いなく当たる!!

 

「ラウラちゃん。そこです」

 

「はい。喰らえ!」

 

俺へ向かって降り下ろされる木刀(オモチャ)。だ、大丈夫だ。あれはオモチャだ。当たっても死ぬことは……ん?

 

なんか嫌な予感がする!

 

「く、ぬぅおおおおおおおおおおお!!!」

 

木刀が頭に直撃する寸前に必死に首をそらして躱す。それによって木刀はヒットすることなく砂浜に突き刺さる。

 

ズドッ!!

 

うん、突き刺さった!? 

 

『『!??!??』』

 

思わぬ感触にラウラも戸惑ったのか目隠しを外して確認し、混乱していた。俺だってびっくりさ!

 

「あ、姐さんこれは?」

 

青ざめて確認するラウラ。俺なんかに至ってはびっくりしすぎて声も出ないぜ。

 

「はい。実はこれ、力を込めて握れば握るほど刀身が固くなる素材でできていまして」

 

『『何それ!?』』

 

「IS学園科学部の発明品だそうで」

 

何作ってるんだオイ!

 

「では次の方どうぞ」

 

ヤバイ! もうあれはオモチャなんてもんじゃねぇ! 完全に凶器だ!

 

「なら私がやろう」

 

「やる気ですねぇ織斑先生」

 

「あぁ、殺る気さ」

 

殺される!? 目がマジだ!!

 

「安心しろ織斑。救急車はすぐに呼んでやる」

 

何一つ安心できねぇ!! 

 

きちんと目隠しをしてその場で回る千冬姉ぇ。でも俺には分かる。あんなことをしても無駄だと。最強のIS乗りがあの程度の回転でふらつくはずがない。確実に俺の頭は粉砕されるだろう。

 

どうする!? 説得しても聞く耳なんてもっちゃいないだろうし、逆にこっちの位置を知られてリスクが高くなるだけだ!!

 

なら残された手は一つ!

 

自力で逃げ出すしかねぇ!!!

 

「ぬぅおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「ふっ、無駄だ!」

 

な!? 走りやがった! もう時間も余裕もねぇ!! うおぉおおおおお都合良く目覚めろ俺の火事場の馬鹿力ぁあ!!!

 

砂の重みで体が動かない。踏ん張りも効かないから力もいれにくい。それでもここから逃げないと俺の命はない!

 

「遅い! 喰らえぇぇい!!」

 

「喰らってたまるかぁああああああ!!!」

 

ズボォッ! 腕が出た!? よし!

 

右腕が地面に飛び出した。そこを支点に力を込める。腕一本分の体積がなくなったことで地中の足を動かしやすくなった。

 

今なら踏ん張れる! 一気に飛び出せェエエえええええええええ!!!!!!

 

「おぉおおおおおおおおお!!!」

 

ザシャァッ! 体が地中から躍り出る。勢い良くそのまま飛んで千冬姉ぇの木刀(凶器)を躱す。よし勝った!

 

ドン! 痛て!? 何かにぶつかったぞ?

 

「………織斑一夏。いい度胸ですね?」

 

ギギギと錆び付いたオモチャの関節のように首を軋ませながら声のした方へ顔を向ける。わーお志波さんの汚物を見るような目が目の前にあるよ?

 

地中から飛び出した俺はそのまま近くにいた志波さんを押し倒してしまったみたいで。しかも体がピッタリと密着してしまっている。俺の顔が志波さんのお腹当たりに乗っかってしまい、俺の腹から下はというと志波さんの下腹部へと以下略。

 

キャーーー! 織斑君だいたーん!! とうとうマッキーに下克上か!? さすが真季奈の姐さん動じてない!? いやよく見ると顔真っ赤だよ!

 

「あああののおsのですんえねねね!!」

 

「大丈夫ですよ」(にこり)

 

あ、死んだ。

 

『『『一夏ぁ』』』

 

ヒィイイイイイ!? 今すぐ逃げないと!

 

「逃がしません」

 

ガシッ! なんと、慌てて志波さんの上から体をどかそうとした俺を彼女の両足がしっかりとホールドする。違う状況ならこんなに嬉しいことはない!

 

「織斑先生、殺っちゃってください」

 

「おうともさ」

 

その瞬間、千冬姉ぇの背後から紅蓮のオーラとか覇気とか激しい怒りによって目覚めた伝説の戦士とか、とにかくそういったものが溢れ出た気がした。うんつまりやばい。

 

「この愚弟がぁあああああああああ!! 頭を冷やしてこいやぁあああああああああ!!!!」

 

「すんませんでしたぁあああああああ!!!」

 

ゴルフのスイングのように振るわれる木刀(もはや鉄塊のような強度)。ヒットする直前に志波さんの両足から解放された俺はそのまま綺麗な放物線を描きながら海へと飛んでいった。

 

……あぁ、綺麗だな。海。

 

ドボーーーーン!

 

 

 

 

 

「まったく、なんてことしやがるんですか織斑一夏は」

 

男に押し倒されてしまいましたよ。屈辱です。織斑一夏のくせに。

 

「あらあら、災難でしたね? 志波さん」

 

山田先生。いたんですか?

 

「酷っ!? 志波さんそれはあんまりです! 私だって最初からいましたよ!?」

 

え? そう、でしたっけ?

 

「か、影が薄くなっている気がします……。このままじゃぁ私の存在意義が…」

 

大丈夫。あなたにはロリっぱい教師という強力な個性がありますから大丈夫ですよ。多分。

 

「でも面白いですねこの木刀」

 

? なにがです?

 

「この木刀で叩くときに力を込めると威力が増す。それって、言い換えれば相手のことを想っているほど効果があるってことですよね」

 

「恨みつらみですか?」

 

「そ、それもありますけど…。それでもやっぱり、相手のことをどれだけ真剣に考えているかですよ。どうでもいい人だったら適当に降っておしまいです。好きな相手だからこそ力が入っちゃうこともあるんですよ?」

 

「はぁ……そういうものですか?」

 

「ふふっ、志波さんが降っていたらどうなっていたんでしょうね?」

 

 

ならいっそ彼氏になんてどうだ?

 

 

!? なんですか今のは? 

 

昔誰かに言われたような……ありえませんね。

 

さて、お昼からはわたしも海に入りますか。

 

 

 

復讐15 : 一夏ワリゲーム

 

結果   : 割れませんでした。

 

備考   : 酷い辱めを受けました。

 

 

 

 

 

 

『海、サイコー』

 

錆びてしまえこの馬鹿犬!




海でのスイカ割り。実はやったことがありません。保育園のころ園内でビニールシートを広げてやった記憶があるだけです。

次回も海から始まります。なるだけ早い更新を心がけます。

それではまた。
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