さて、自己紹介も終わって一限目の授業も終わった後の休み時間。
わたしの席の周りにはちょっとした人垣ができています。
なぜか?
「きゃーーーーー!! かわいいかわいい可愛すぎるううううううう!!!」
「志波さん! この子抱かせてお願い!」
「デウスちゃん~。お手! ……キャーーーーー!!! してくれた! 偉いね~賢いでちゅね~」
……とまぁ、こういう訳でして。
デウスを紹介した瞬間から教室中が大パニックと化して(主に犬好きが)そのまま膝に座らせたままでいたものだから授業中の視線とかが私に、というかデウスに集中していたものだから大変だった。
まぁ今もひどいが。
しかも授業中のよそ見を織斑先生が見逃すわけもなく、一間目からほぼ全員が出席簿アタックを食らって撃沈していた。南無。
わたし? ISを待機状態にしていただけですからお咎めなしですけどなにか?(ドヤァ
『真季奈もしたたかになったものだなぁ』
あ、こら馬鹿!
『『『喋ったぁああああああああああああああああ??!!!!!!!!!』』』
女子全員の合唱が教室にビリビリと響く。なんというハウリング。
「デウス~~~~~」
『すまんな真季奈。つい』
あざとく舌を出すな!
「この子喋る! 喋るよぉお!! さすが人工AIのワンちゃん!」
「デウス! お前が好きだ! お前が欲しい!!」
「抱きしめたいなぁ! デウスぅっ!!!」
今確信した。このクラスは魔窟だ。キャラが濃すぎるよ。
「じゃあ休憩時間だけレンタルで」
『『『あざっす! 真季奈の姉御!!』』』
『裏切ったか真季奈!?』
「うっさい。責任とれ駄犬」
わたしゃ疲れたよ。ホント。このクラスのノリはついてゆけんよ。
「ねーねーマッキー」
「なに? 布仏 本音さん、略してのほほんさん」
「そっこーで略された!? 」
「そういうこともあるもんだよ。わたしにも早速あだ名をつけてくれてるみたいだし」
生贄(デウス)が魔物共の貢物になってる間にわたしに話しかけてきたこの女の子は布仏本音さん。入学初日にしてすでに生徒会書記という肩書きを持ち、日本政府の対暗部用暗部の一族『更識』に代々仕える家系の次女。確か姉が現当主の、彼女はその妹で四組の日本代表候補生の専属メイドだったはずだ。
その彼女がなぜわたしに話しかけてきた?
「マッキーって『あの』志波真季奈さんだよね? 人工AIの権威でプログラミングとソフトウェアの若き天才っていう」
「あ、うん。多分そーなんじゃない?」
「おーすごーい」
ニコニコ笑いながら言うな。裏がありそうで怖いんだよその笑顔。
しかもほかの子達もデウスと遊びながらしっかりと聞き耳立ててるし。
引きつった顔でこっち見ないで。お願いだから。
「あー、その、さ。一応もう何年も前の話だし最近はISの訓練ばっかりだから研究とかはもうしてないから。だからもうそっち関係は過去の話ってことでお願いっていうかお願いしますハイ」
「ふーん。そうなんだー。りょうーかーい」
だから笑顔やめてー!
す、すご!? 超有名人じゃん!
えーもったいない! しかもそれで代表候補生って。
せめてデウスちゃんを量産してください! お願いします! そして巨大ロボットに搭載して!
なんかちらほらと聞こえてくるし! どんだけ広まるの早いのよ! てか最後の子! あとでじっくり話そう。わたしも勇者ロボとトランスフォーマーは大好きだ!
ちなみに。
織斑一夏は廊下にて篠ノ之 箒と談笑中。
会話の内容からすると、再開した幼馴染との近況報告のようだ。新聞の記事に剣道大会の結果が載っていのを見つけてそれが自分の幼馴染とはすごい偶然ですね。
にしても理不尽だなー、篠ノ之 箒。ツンデレか? こいつ織斑一夏に絶対気があるでしょ。
自分のことを新聞越しとはいえ知っててくれて嬉しがったり。髪型を覚えていてくれたことで喜んだと思ったら幼馴染だから、なんて理由を出されてムッとしたり。
乙女か! あー甘っ! 胸焼けするわ! ケッ!
え? なんで教室で質問攻めとかにあってるわたしが廊下の二人の会話を把握してるかって?
そんなの、織斑一夏の服に仕掛けた盗聴器のおかげに決まってるじゃないですか。
感度良好。問題なし。え? 別の意味で問題あり? あっしにはなんの事やら。
『ところで一夏。お前の席の隣の生徒。志波真季奈といったな。彼女とはどういう関係だ? なんというか、その、恐ろしい殺気を感じたのだが』
お。わたしの話題ですか。ここは要チェックですね。
『い、いや、俺にもわからないんだ。彼女とは今日が初対面のはずだし、まだ話しかけてもいないんだぜ?』
『……本当にそうか? あの視線というか放っていた殺気というか、彼女からはお前に対してただならぬ感情が向けられているのを遠目からでも認識できたぞ? 自分でも気づかぬうちに彼女に何か無礼を働いていたんじゃないのか?』
『そう言われてもなぁ。入学式のときにうっかり足を踏んじゃった、とかしか思いつかないぞ? 教室で自分の席に座るまで全く気付かなかったくらいだし』
『なら彼女のあの態度はなんなんだ?』
『俺のことが単純に生理的に気に食わないとか? ……うわ、自分で言ってて悲しくなってきた……』
『……うん、まぁ、それが一番妥当かもな。……っておい! 本気にするな! 半泣きじゃないか!? そこまで落ち込まなくていいだろう!?』
『いや、だって、正直……結構へこむ……』
『頑張れ! 気をしっかり持て!』
うん。なんか面白くなって来てる!
復讐①: とりあえず殺気を伴ったガンを飛ばす。
結果 : 織斑一夏に精神的ダメージあり。ついでにアホな漫才も聞けた。
備考 : 録音済みなので後で編集して聴き直そう。
さて、休み時間が終わったので二時間目の授業が始まりました。
織斑一夏は授業開始のチャイムが鳴ったのに廊下で喋っていたため織斑先生に出席簿アタックを食らっていました。ザマミロ。
その織斑一夏ですが、さっそく授業についてこれてない様子です。
さっきから五冊ある教科書をなんどもめくり、周りの女の子をチラチラと見ています。助けが欲しいんでしょうね。
わたし? 当然、目があった瞬間にガン飛ばしてやりましたよ。半泣きだったのがゾクゾクしました。
でもさすがにちょっと鬱陶しくなってきましたね。この馬鹿、どうしましょうか?
ほら、先生も見てるぞ? しっかりして見せろ。
「織斑くん、何かわからないことがありますか?」
まぁ、あそこまで挙動不審の生徒がいたらそう思うよね?
さて、なんて答えるかな?
「あの、先生……」
「はい! なんでしょう!」
「ほとんど全部わかりません!!」
ズコーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
教室中がずっこけましたよ。リアクションいいですねぇこのクラス。
でもほとんど全部って。
つまり入学前に勉強を全くしてないと? あの電話帳みたいに分厚い『必読』の参考書で勉強していないことになりますね。
(あぁ、だからか)
あることに気づいたわたしは自分の鞄を漁り始めます。クラスの殆どが織斑一夏の馬鹿さ加減に呆れていたため誰もわたしに注目していませんね。
「そこの頭の悪い織斑一夏」
「え!!?」
まずは行動です。女は度胸です。敵前逃亡は重罪です。
「とりあえず参考書はここにあります。これを差し上げますのでまずは一から勉強しなさい。今日のところはわからないところは隣で教えてあげますからわたしに聞きなさい」
「え、あの……?」
む、なんですか? その間抜け面は? 殴りたくなるじゃないですか。
見ると教室中が同じ顔をしています。
おや? 織斑先生いつからそこに? 織斑一夏の説教ですか? 全然気づきませんでしたよ(笑)
「し、志波。その…いいのか? お前は……」
「大丈夫です。参考書は全て暗記していますし」
「そ、そうか」
ふむ、、今のを周りは参考書を提供することに対して織斑先生は聞いたと思っているんでしょうが、実際は違いますね。
織斑先生はわたしが織斑一夏に手助けすることに戸惑っているんですね。
わたしが弟さんを憎んでいることは先生は知っていますからねぇ。
「それに。これ以上授業を遅らせたくありませんので。……誰かさんのせいで」
「ぐふっ!」
……ククっ、小声で言ったのがちゃんと聞こえたようですねぇ。やーいやーい。
「はい、ということで山田先生は授業を進めてください。この授業に全くついていけてない男子生徒(笑)はわたしが面倒みますので。あとこれ、あなたの参考書ですよ織斑一夏」
「……ありがとうございます。何卒勉強の方もお願い致します」
ふむ、予想以上に打ちひしがれてますがちょっとは反省しているようで何よりです。別にただのバカは嫌いではないですが、怠慢な馬鹿は大嫌いですので。
「にしても、入学前に必読と書かれた参考書を勉強してこないとは何事ですか?」
「あ、その、古い電話帳と間違えて捨てちゃって……」
あぁ、だからかこのマヌケが。どおりで。
どおりで入学前だというのにやたら綺麗な状態の参考書がゴミに出されてたと思いましたよ。
安心しなさい織斑一夏。
あなたが今持っている参考書は間違いなく、わたしが! ゴミ捨て場から回収しておいた! あなたの参考書ですよ!!
ふふ、そんなもの。わたしの織斑一夏コレクションの中では最弱。
喜んで差し出してあげましょう。
フフフ、あはは、ハーーーーーハッハーーーーーーーーーーー!!!!
『たのむ、真季奈。昔のお前に戻ってくれぇ……』
真季奈ちゃんは基本イイ子なんです。
でも織斑一夏が絡むとどんどん変な子になっていったんです。
ほかのキャラがどう変化していくかが怖いですね。