今回はシリアス多めとなっていきます。ギャグを期待しておられた方々(い、いるのかな?)申し訳ございません。
それではどうぞ。
多くの島や環礁からなるハワイ諸島。そのうちの一つであるここハワイ島の海岸。
今ここではアメリカ・イスラエル共同で開発中の新型IS『銀の福音』《シルバリオ・ゴスペル》の可動実験が行われていた。
スタッフは海辺に機材を設置した観測班と、沖で機材を積み込んだ船舶での実行班に分かれてる。
その船舶に乗り込んだスタッフの中に彼女もいた。
「マカダミアナッツうめーーーー!!!」
『『『仕事しろよ!!!』』』
アメリカ代表候補生であり『シルバリオン』の操縦者、レベッカ・パープルトンである。
「いやいや! だって夏だぜ? 海だぜ? ハワイだぜ? だったら遊ぶでしょ!?」
「アンタ何しにきた!!?」
「え? 『シルバリオン』の後輩の見学」
「わかってるなら真面目になさい!!」
「へいへいわかりましたよ先輩」
レベッカに先輩と呼ばれた女性。彼女の名はナターシャ・ファイルス。これからテストの行われる『銀の福音』《シルバリオ・ゴスペル》のテストパイロットである。
「アナタ日本で散々遊んできたんでしょう!? それにIS学園の施設まで壊して! ウチにまで請求書きたじゃない!!」
「えー? あれって日本が全額出したんじゃねぇの?」
「馬鹿言わないで! そんなことしたらウチの国の面目丸つぶれでしょうが!! しっかり中国と三等分にして日本のIS学園に支払ったわよ!!」
「わーお太っ腹ぁ」
「この不良娘~~!!」
「ほらほら、早く実験始めないと時間なくなるぜ?」
どの口が言うのか!!
「こ、の! わかってるわよこの馬鹿!!」
『銀の福音』を展開。全身が銀色に輝く『全身装甲』《フルスキン》で頭部から一対の巨大な翼が生えている。これは大型スラスターと広域射撃武器を融合させた『福音』のメイン武装だ。
この機体は広域殲滅を目的とした特殊射撃型として開発された。そのため、アメリカでも特に殲滅戦に特化したレベッカの『シルバリオン』の戦闘データ、主に火器管制システムを採用している。そして、共同開発を行なっているイスラエルからは『シルバリオン』の欠点だった機動力を提供されてる。これにより、最高速度時速2450キロを超える超音速飛行が可能となった。
これにより、『福音』は攻撃と機動に特化した機体となった。筈である。
『福音』が飛び立つ。海上での射撃テストだ。
「『銀の鐘』《シルバー・ベル》ねぇ。ウチの子のアーマーパックの代わりらしいけどどうなんだ?」
『福音』の頭部から生えたウィングスラスターには36の砲口がある。大型スラスターと広域射撃武器を融合させた新型システムで高密度に圧縮されたエネルギー弾を全方位へ射出することができる。
沖で停泊していた船舶からダミーバルーンが射出される。空気の入ったゴム風船だが、基部に無線で操作できるスラスターが付いているので回避も行える。これが的だ。
数は100。
『銀の鐘』の砲口は36。なのに、三倍近い数の的が瞬く間に撃ち落とされてく。またもバルーンが射出される。今度は回避する物に混じって『福音』に向かって来るものもある。それらも躱しつつ撃ち落としていく。
「連射性と速射性がダンチだなぁ それによく動く」
イスラエルの提供した常時瞬時加速と同程度の急加速が行える高出力の多方向推進装置《マルチスラスター》の恩恵だ。
「アタシの『シルバリオン』にもアレがあれば真季奈ともっと遊べるんだけどなぁ」
『『『それだけはもうやめてくれ!!!』』』
レベッカの周りにいた開発スタッフの必死の叫びである。
『シルバリオン』の欠点は機動性だ。志波真季奈の『天蓋王』のそれより遥かに劣る。彼女との模擬戦で互角に渡り合っているように見えるのも火力に任せた弾幕の壁で接近されないようにしているだけ。つまり攻めているのではなく守りの姿勢。もしも自分から仕掛けれるようになれれば………。
(いや、それには接近戦用の装備も必要か……)
それはあまり面白くない。やはり自分は撃って撃って撃ちまくる方が性にあっている。
トリガーハッピーここに極まれり。
「ん?」
突然『福音』の動きが止まった。それによって接近してきていたバルーンが衝突する。明らかなミスだ。それでも彼女は動こうとしない。
様子がおかしい。
「どうした先輩? おーい? 聞こえてますかー?」
無線機で『福音』の操縦者であるナターシャと連絡を取る。しかし返事がない。回線はクリアの筈だ。
いまだに『福音』は空中で静止している。明らかに変だ。
「しゃーねぇ。ちょっと確認してくるか」
ナターシャに直接話をしようと自分もISを展開しようとする。異変はその時起こった。
「………La♪」
え?
『銀の鐘』の砲口がこちらに向けて放たれた。
場所は変わって日本。花月荘という旅館に臨海学校で来ているIS学園の面々が宿泊している一室。
カチャカチャ、ジャキン!
「あの、真季奈さん? 何をやっているんです? それにラウラさんも」
「見てわかりませんか?」
「わかるから聞いているんです……」
「見てのとおり、銃の点検だが?」
(だからなんで朝からそんなことをやっているんです!!!)
志波真季奈達の泊まっている部屋。そこでは朝早くから彼女とラウラ・ボーデヴィッヒがこっそり持ち寄った銃火器の整備点検を行なっていた。数は三丁。どれも自動式拳銃だ。
「流石ですね姐さん。こんな時でも武器の携行を忘れないとは」
「いえいえ、二丁も所持しているラウラちゃんには敵いませんよ。あ、そこのナイフ見せてもらってもいいですか?」
「? どうぞ。どうするんです?」
「投げやすそうだなと思いまして。これ、貸してくれません? それと銃も。一つでいいんで」
「構いませんが……」
『『『(何に使うつもりだ!!?)』』』
部屋の他の面々は戦慄しっぱなしだ。
箒、セシリア、シャルロットの三人は正直ドン引きである。軍人であるラウラはまだいいが、真季奈の様子は明らかにおかしい。
「どうしたんだ真季奈。今日は何かあるのか?」
「まぁ、はい。実は昨日の晩、織斑一夏が……」
やはり一夏か!? え? なに? 今日死ぬのアイツ?
「なかなか耳寄りな情報をくれたもので」
「ひっ!?」
そう言った真季奈の顔はとても恐ろしかった。
誰かを殺してしまいそうなほどに。
さて、皆さんおはようございます。志波真季奈です。
今日は合宿二日目。朝から晩までみっちりとISの装備のデータ取りの実習を行います。特に専用機持ちは大変です。実習ではなく本当に契約してる企業から試験用の装備や武装等のデータ取りを行わないといけませんので。
まぁ、『展開装甲』という特殊な機構を持った『天蓋王』にはあまり関係ありませんが。あるとすれば武装ですね。そろそろ『天墜』以外の武器も使いたいですし。
ちなみにわたし達が今いるのはIS用試験用のビーチです。何を血迷ったか、海のすぐそばにIS学園のアリーナのようなドームが作られています。しかも一般の人が入れないように入口は海底トンネルから関係者確認を行なってから入ります。
こんなものがあるから花月荘という旅館のある海で臨海学校を行なっているのか。それともドームを作ってから旅館を建てたのか。どちらにせよ、客層はかなり特殊な人種ばかりだろう花月荘。
初日が海で遊び放題だったので忘れがちですが、今回の合宿はこの試験データ取りが目的です。なので皆しっかりとISスーツを着ています。このまま海に入って泳いでも問題ありませんね(笑)
「さて、それでは各班ごとに割り当てられた装備の試験を始めろ。専用機持ちは専用パーツのテストだ。各班、迅速に行え!!」
『『『はい!!』』』
織斑先生の指示にその場にいた全員が答えます。うん、全員が。この場には一年生全員が集合しています。なのでもう一種の合唱ですね。あぁ鼓膜に響く……。
「……篠ノ之。ちょっと来い」
「? なんでしょうか織斑先生」
打鉄用の装備を運んでいた箒ちゃんが織斑先生に呼ばれて困惑しています。それでもちゃんと指示通りにしていますが。
「こちらとしても急な話なんだが……お前には今日から専用機が」
「ちーちゃ~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!」
出たな変態駄兎!!
織斑先生の声を遮るようにして現れたのは変態駄兎こと篠ノ之 束。箒ちゃんの実姉にしてISの開発者。
ずどどど……、という効果音が聞こえてきそうな勢いで土煙を上げながら近づいてきます。速い。恐らくなにか装備している。小型化したIS用装備か?
……まだだ、まだ早い。
「……束」
織斑先生の前まで来た。十分射程範囲だ。
殺れる!
「やぁやぁ! 会いたかったよ! ちーちゃ『パァン!』ん! さぁハグハグ『パァン!』しよう! 愛を確かめ『パァン!』……さっきからウルサイナァ」
「ちぃっ!」
持ってきていた銃で三発撃った。が、どれも躱された。この女、人間の身体能力を超えている。まさかの織斑先生と同類とは。
「真季奈! いきなり何をするんだ!?」
「黙って箒ちゃん。この女は国際指名手配の犯罪者ですよ? 発見次第拘束するのがわたし達専用機持ちの仕事でもあります。ラウラちゃん」
「はい姐さん。篠ノ之束、貴方には逮捕状が出ています。大人しく投降してください」
銃を構えてラウラちゃんが駄兎をわたしと囲むようにして狙います。逃げ場をなくさないと。
昨日の晩、織斑一夏からこの駄兎と接触したと聞いたときは驚くと同時に歓喜しましたよ。このクソアマに首輪をつけて鎖で繋いでやるのがわたしのささやかな夢ですからね。
そのことをラウラちゃんにも教えて協力してもらいました。もちろん、
「束。大人しく捕まれ。悪いようにはしてやる」
「ひどっ! 普通悪いようにはしないものじゃないのちーちゃん!?」
織斑先生にもです。
「皆なにしてんだよ!? 相手は束さんだぞ!」
うるさいですよ織斑一夏?
わたし達を遠巻きに見ていた生徒たちの中から出てきた男子。織斑一夏が鬱陶しくも叫びます。関係ないんだからすっこんでろ。
「この女だからですよ。織斑一夏はこいつが犯罪者だということをまず知りなさい」
「なんだよそれ!」
ちっ、無知な馬鹿だとは思っていましたがここまでとは。どうやらこの男はこの駄兎が何をしたのかをまるで理解していないようだ。
ISという世界最強のパワードスーツの開発。それによって女尊男毘の社会や経済の混乱。それらはまだいい。それよりも問題なのは。
この女は逃げたのだ。世界を変えたことへの責任から。
おかげで世界は未だに混乱を続けている。発展か、停滞か。開発者であり、唯一の第一人者の逃走はISの研究にブレーキをかけた。そのせいで今や各国でもISの開発は何をすれば正しいのか手探りで行われている。おそらくこの女がしかるべき指導を続けていればISの開発はもう十年先は進んでいたはずだ。犯罪も増えた。失業者もだ。理由はどれもISのせいで職を失った男性によるものばかりだ。
自由奔放。ワガママ。自分勝手。例え出したらきりがないこの女の性格だが、一つだけはっきりしている。様はやりたいことしかやらない女だ。心底憎らしい。
この女のせいでわたしは!!
『真季奈。俺に殺らせろ』
駄目です。言ったでしょう? デウスは待機していてください。
柴犬の姿でわたしの横で待機しているデウスが唸りをあげて言います。頼もしいことですね。でもダメです。
……この女は腐ってもISの開発者。なら、ISに対しての対抗策がないわけがありません。最悪、デウスをその場で分解することも考えられます。
だから駄目です。ここは旧来の武器でいきます。
わたしはラウラちゃんに借りたナイフを構えます。弾丸が避けられるのなら接近戦です。しかし、油断はできません。相手は織斑先生と同等。ならば相打ち覚悟で臨まなければ!
「た、大変です! おおお織斑先生!!」
……なんですか山田先生。空気読んでくださいよ。
クラスの副担任、ロリっぱいの山田先生がドタバタと騒ぎながら走ってきました。もう色々とぶち壊しですね。
でもいつもと比べて随分と慌てていますね。よっぽどのトラブルですか? 後にして欲しいのですが……。
「どうした?」
「こ、こここれを!!」
山田先生が持っていた小型端末を突きつけるようにして織斑先生に見せます。あ、なんか先生の顔がどんどん曇ってきてますよ? 嫌な予感がします。
「特命任務レベル4、現時刻より対策をはじめられたし………こんな時にっ」
「は、ハワイ沖で試験稼働していた」
「機密事項をべらべらと喋るな!」
「っす、すいません!」
ハワイ? 試験稼働? ……まさか?
『アタシの『シルバリオン』の量産型が出来るって言うんだ。立ち会わない訳にいかねぇよ』
脳裏に浮かんだのは別れた友の言葉。
もしかしたらっ!
「大変そうだねぇ? ねぇちーちゃん。一時休戦にしないかい?」
「なんだと?」
この状況でなにを!?
「助けてやるって言ってるんだよ?」
「それでレベッカ。一体なにがあったんですか?」
花月荘に戻ったわたし達は旅館の大きな宴会場で作戦準備中です。様々な機械、主にパソコンや大型の空中投影ディスプレイなどを設置中です。もう後十分程したら終わるでしょう。
わたし達、というのはわたしを含めた一年生の専用機持ち全てです。わたし、オルコットさん、ラウラちゃん、鈴、シャルロットさん、織斑一夏。それと何故か箒ちゃんです。四組の代表候補生、更識簪ちゃんはいません。まぁ彼女の専用機はまだ完成していませんししょうがないですね。
なので彼女は他のクラスの生徒と同様、旅館の自室に缶詰状態です。この作戦が終わるまで会うことはないでしょう。
しかも何を血迷ったのか、変態駄兎を作戦のオブザーバーに迎えるそうです。確かにISを知り尽くした第一人者です。確実な対策を思いつくかもしれません。だけど納得できようがありません。いつでも後ろから射殺できるようにしておきましょう。
……話がそれました。
という訳でまだ十分の猶予があります。ですのでダメ元で詳しい事情を知ってそうなレベッカに連絡を取ろうと思いまして。一分待って出なかったら諦めようと思っていたんですが、まさかのワンコールで出ましたよ。
あ。ちなみにこの通信。完全にわたし個人の秘匿回線なので誰にも気づかれる心配はありません。機密事項なんてダダ漏れですよ? ぷぷっ。
『……話が早くて助かる。時間がないから結果だけ先に言う。うちで試験中だった新型のISが暴走した。何故かは不明だが今日本に向かっている』
「すごい状況ですね。詳しい経緯をお願いします。五分で」
『あぁ。それがよ……』
空中で静止していた『福音』が突然こちらに向けて『銀の鐘』の火を吹いた。
「おいおい! 何してんだ先輩!?」
レベッカは瞬時に自分のIS、『シルバリオン』を展開し飛び立つ。
『銀の鐘』の射線上に自ら飛び込むことで自分の周りにいたスタッフを守ったのだ。
直撃。絶対防御が発動しS.Eが大幅に削られる。それでもまだ十分に飛ぶことができた。
「どうした先輩! いい加減返事をしろ」
やはり返事がない。というよりもこちらを見ていなかった。『福音』を纏ったナターシャは急に頭を抱えて苦しみ出した……ように見えた。少なくともレベッカには。
「お、おい!? 先輩!! ……クソっ! 今すぐISを解除しろ!! 早く!!!」
「LaLaLa………」
聞いちゃいねぇ! いっそ撃ち落として強制解除させるか!?
その方法が一番魅力的に思えた。どんな精密機械もバッテリーが切れれば止まる。世界最強兵器であるISも同様だ。絶対防御が発動するような攻撃を何発も入れてやればS.EがゼロになりISは解除される。
真季奈も言ってたしな。壊れた機械は斜め45°の角度で殴るべし! ってよぉ!!!
『シルバリオン』の全身の火器が放たれる。両手合わせた十指のビーム、背中、胸、足のアーマーパックからミサイルの雨を。
ドドドドドドド!!!!
耳をつんざくような轟音が鳴り響く。不意打ちのように撃ち込まれた攻撃は当たっているはずだ。それでも撃てるものは全て撃ち尽くさないといけない。
なぜならば。
「ちぃっ! こいつどうやって!?」
『福音』は体を膝を抱えて丸めると周囲に球形のエネルギーの壁を構築し攻撃を防いでいた。本来『福音』にはそんな装備はない。しかし、ISは絶対防御がすぐに発動できるよう常にシールド・バリアを全方位に僅かながら張っている。それを目視できるレベルで展開続けているとしたら?
そんな防御をいつまでも続けてられるはずがねぇ! このまま撃ってればS.Eも尽きるはず!
そう確信したときだった。『福音』がその砲口をこちらに向けた。
「!?」
砲撃。レベッカはそれを躱すため一度攻撃の手を緩める。その数瞬がいけなかった。
『福音』は身体を大きく広げてその巨大な頭部のウイングスラスターを展開して飛行を始めた。
……逃亡するつもりだ。
「やべぇ!!」
レベッカも『シルバリオン』で追う。もちろん飛行しながらミサイルも撃つ。攻撃を止めるつもりはない。しかし『福音』はその全てを『銀の鐘』で迎撃し逃げ続ける。
逃げる。逃げる。逃げる。
こちらには一切攻撃することなく常に逃げ続ける。そうして、とうとう性能の差が現れ始める。
「追いつけねぇ!!!」
引き離される! そう思った時にはもう結果はでていたのかもしれない。元々『シルバリオン』のデータを元に作られ、その欠点を補うために開発された『銀の福音』。その圧倒的な機動力の差は覆しようがなかった。
「………待てよ」
『福音』が遠ざかっていく。
「……逃げんなよ」
もはや黒点のようにしか見えない程に距離を離されていた。
「逃げんじゃねぇ! 戦えぇ!!」
逃げられた。自分との距離、飛行速度、残された稼働時間、それらをどう計算しても結果は出てしまったのだ。もう追いつけない。
『レベッカ。それ以上は領海侵犯になる。戻ってこい』
「……………………了解。『福音』はどこに向かいましたか?」
『日本だ』
日本。そう聞いたとき思い出したのは自分がキョウダイと呼ぶ友の姿。
「真季奈なら」
『天蓋王』なら恐らくあの『福音』の機動力とも互角に渡り合える。
「ワリィなキョウダイ。後は任せたぜ」
『つーわけだ。すまねぇな』
「アナタも頑張りましたよ。ところで『福音』は突然苦しみ出した素振りを見せたんですね?」
『あぁ。何か知っているのか?』
「……昔似たようなケースがありまして」
『なんだって?』
そうだ。その『福音』とかいう機体を襲った暴走。もしも人為的なものだとしたらわたしはその方法をひとつだけ知っている。
「………ALICEシステム」
『真季奈。俺の兄弟なのか?』
その可能性は高いですよデウス。
かつてわたしが開発した人工AIは三つ。その計画名が『ALICE』。一つはデウスとして完成した。二つ目は量産の為の開発中にISの『暴走』を引き起こして凍結された。
そして最後の一つは……。
「それではレベッカ。もう切りますね。」
『あぁ。あとは任せた。今度何か奢るよ』
「期待してますよ」
通信を切ります。そろそろ作戦会議の始まる時間でしょう。
「真季奈、時間だ。お前も早く来い」
「はい先生」
織斑先生が呼びに来ました。さて、行きますか。
宴会場、もとい作戦本部室に入ると既に招集メンバーは揃っていました。部屋は明かりを落として薄暗く、周りに置かれたパソコンなどのディスプレイの光が部屋を照らしています。
「あ、さっきの鬱陶しい子だ~。もう人のこといき「パァン!」なり撃っちゃダメだよ?」
「チッ、黙れ喋るな息をするな」
顔面を狙って撃ったのに首をひねるだけで躱された。周りが唖然としているが知るか。口答えする奴はまとめて黙らせてやる。織斑先生が黙認しているのが大きい。先生もいくら撃っても当たらないと考えているんだろう。
あぁ殺してぇ。
最後の『ALICS』。それを盗んで逃亡したのがこの女。篠ノ之束。
わたしの研究データを盗み、悪用し、粗悪品に改悪した女。
もしも今回の事件も『ALICE』が原因だとしたらこの女が関わっているはずだ。油断なんてできない。
違う。それだけじゃない。
この女が逃げたからわたしが縛り付けられたんだ! 国に! 軍に! 研究所に! 代わりとして! 今度は逃げ出さないように徹底的に監視して閉じ込めて!
なまじ技術者として優秀だった自分が腹立たしい。しかもIS操縦者としてもだ。織斑先生の引退した後のことを考えていた日本のIS委員会はその代わりも探していた。モンド・グロッソ優勝、IS技術での優位性、ブリュンヒルデ。ISが生まれてから日本という国が吸ってきた甘い汁はよほど失いたくないものだったらしい。
おかげでわたしはこのザマだ!!
両親は殺され研究も失い自由もなかった! 残された家族はデウスだけ! 今すぐこの女を殺させろ! 今すぐ!!
「な、なぁ真季奈。ちょっといいか?」
「……なんですか箒ちゃん? というかどうしてここに?」
クソ兎の妹、箒ちゃんです。ここには専用気持ちしか呼ばれていないはずなのに何故かここにいます。お茶汲みでもするんですかね?
「そのことなんだが、相談したいことがあって」
「? 今から任務です。それほど重大な相談なんです?」
おかしいですね? 箒ちゃんは猪突猛進なところはありますが、きちんと時と場所をわきまえられる分別のある律儀な方だったと思ったのですが……。
「実は、私も専用機を貰うことになってしまって……」
「………はぁ!?」
復讐17 : 篠ノ之束の逮捕(殺害)
結果 : 失敗
備考 : こんな装備では不十分だった。
『俺はまた、兄妹と戦うことになるのか?』
とうとう変態駄兎が登場です。
真季奈ちゃん、殺したいのに殺せない。篠ノ之束は化け物か!?
レベッカは負けました。敗因:性能差
次回も頑張って書きます。