IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

更新がいつもより遅くなってしまいました。

今回もギャグ? です。

スベッてたらすいません。

ではどうぞ。


デウスの散々な一日

ガチャガチャ、ガチャン! キィーー。

 

鍵の解錠音のあと、ゆっくりと扉が開いていく。

 

『……来たか。おい、おきろ一夏』

 

「んあ? あ、ああ」

 

浅い眠りの中から覚まされ、最初に見たのは自分のよく知る機械犬、デウスだ。

 

ここはIS学園寮1025号室。織斑一夏の部屋。つまり俺の部屋だ。時間は深夜三時ごろ。

 

なんでここに、この時間に志波さんの相棒のデウスがいて、こんな夜遅くに俺を起こすかというと。

 

とことこ、ストン!

 

部屋の扉の鍵を開け、勝手に侵入してきた人物。志波真季奈が俺のベッドのそばまで歩いてきて座り込んでくる。

 

意識はないようだ。

 

そのままベッドの枕元まで体を近づけてきて……そこで力尽きて倒れ込んでくる。

 

それから目覚めてくる気配はない。

 

「………なんで?」

 

『さて、な』

 

ベッドに腰掛ける俺の前で志波さんが寝ている。

 

「夢遊病……なのかな?」

 

ことの始まりは数日前。朝起きたら志波さんが俺の部屋で寝ていた休み明け。

 

なんとまぁ、その翌日も同じことがありまして。その日も顔をひっぱたかれた。

 

その時点でおかしいと気づいた。俺の部屋と志波さんの部屋は、寝ぼけて入るには距離とか方向とかが違いすぎる。そもそも部屋の戸には鍵だってかかっている。

 

なのに朝起きたら志波さんがベッドインで顏パーン! だ。

 

それで俺はそのことをデウスに相談。

 

結果、俺の部屋でデウスが見張ってくれることになりました。そしたらこうして一部始終を目撃したわけなんだが……。

 

『鍵を勝手に開けて部屋に侵入して人様のベッドを覗き込む夢遊病ねぇ……』

 

「なんだよ? それじゃぁなんだって言うんだよ?」

 

俺の考えに否定的なデウス。まぁ正直、俺だって本気で言っているわけじゃない。単に寝ている間に歩き回る症状と言えばそれしか知らなかっただけだ。

 

「というか、どうやって部屋の鍵を開けたんだ?」

 

『真季奈は訓練である程度の解錠スキルを習得している。この部屋の鍵などオモチャみたいなものさ』

 

IS学園のセキュリティが心配だった!! 志波さんマジパネっす! しかも寝ぼけて意識ないのにね!

 

「でもどうしようか? 完全に無意識の犯行なら注意しようがないぞ? 寝るときにベッドにくくりつけるわけにもいかないし……。そもそもなんで俺の部屋?」

 

『もうすぐ夏休みだ。それまでは放っとおけ。また俺が見張っておいてやる』

 

そう言ってデウスはその姿を変化させる。黒い柴犬の姿から黒い喪服のようなスーツを着た成人男性の姿。所謂、『人間モード』だ。

 

「お前その姿にまたなれるよになったんだな」

 

『乾電池をたらふく食ったからな』

 

え? そこ?

 

デウスは志波さんを抱きかかえる。俺とは違って志波さんが起きる気配が全くない。なにこの差?

 

「そういやデウス。お前オネェから元に戻って良かったな」

 

『言うな……。さっさと忘れたいんだこっちは』

 

なんとまぁこの男。つい最近までオネェだったのだ。どうやら新聞部のPC内部に悪質なウイルスが潜んでおり、この間のプラグ・イン!! で感染してあぁなったそうな。

 

これには周りも当然驚いた。だっていきなりオネェなんだもの。デウスが。

 

それからIS学園のスタッフや志波さん達が総出で対処にあたって昨日ようやくもとに戻った。あー怖かった。唯一の救いは、オネェの間はずっと柴犬の姿だったことだ。

 

あの成人男性の姿で『うっふ~ん』なんて言われたら正直吐くわ。マジで。

 

直って本当に良かった。うん。

 

『それじゃぁ俺は真季奈を部屋に連れていく。お前もとっとと寝ろ』

 

「あいよ。サンキューなデウス。また明日学校でな」

 

俺はデウスに礼を行って手を振る。でも、

 

『あぁそのことなんだが。俺はしばらく所要で真季奈のそばにいられないから。学校では真季奈のことはお前に任せたぞ』

 

「え!?」

 

いやどゆこと?

 

『じゃ、頼んだからな』

 

そう言ってデウスは志波さんを抱えたまま(俗に言うお姫さま抱っこで)俺の部屋を出ていく。

 

マジで?

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑一夏の部屋を真季奈を抱えたまま出る。

 

概ね予想通りだった。真季奈の夢遊病?の正体。それは記憶を失う以前の真季奈の日課が原因だった。

 

それは毎晩のように織斑一夏の部屋に侵入してその寝顔を観察すること。

 

その毎日行われていた日課を体が覚えていたのだ。記憶を失ってもなお。

 

『今までは一夏が起きてこないよう睡眠薬を盛っていたのに、それが途絶えたからな。そりゃバレても仕方無いな』

 

つまりそういうこと。

 

織斑一夏が今まで志波真季奈の侵入に気付かなかったのは彼女がこっそりと睡眠薬を盛って犯行時に目覚めないよう徹底していたからだ。しかしそれも記憶を失う前のこと。今となっては無理でしかなかった。

 

いやだって、男子のクラスメイトに薬盛って部屋に侵入して観察する女生徒がいると誰が想像できる?

 

『一夏がマヌケな鈍感馬鹿で助かった……。もしもっと追求されてたら誤魔化しきれないからなぁ』

 

真季奈の名誉のためにも、このことは決して知られてはならない。特に織斑一夏には。

 

『しかし、記憶を失ってそれでも部屋に通うことを忘れてないとはな』

 

記憶が無くとも真季奈の意思はちゃんと残っている。そう思うとまだ希望はある。必ず彼女の記憶は戻るはずだ。

 

にしても、だ。

 

『忘れずに覚えていたのが織斑一夏のそばを離れないこととは……はたから見れば恋する乙女だな』

 

自分の腕の中で眠る少女を見る。そのあどけない寝顔を見れば誰が想像できるだろうか?

 

この少女の中にあるのは淡い恋心などではなく、ドス黒い憎しみの塊だったのだと……。

 

『……それが今だけでも消えている。それを喜ぶべきか悲しむべきか。判断がつかんのは俺が機械だからか?』

 

自問するが答えは出ない。今はそれでいいと思えた。

 

真季奈の部屋につく。両手が塞がっていたから一旦、真季奈を片腕だけで抱えて空いた手でドアを開ける。部屋は真っ暗だか暗視ゴーグル顔負けの視覚センサーを備えた自分には関係ない。

 

真季奈のベッドへと向かい、彼女を寝かせようとしたところでふと隣を見た。

 

織斑千冬が寝ていた。

 

それもどこが寝苦しそうに。

 

「う、ん。真季奈ぁ。おねぇちゃんはなぁ……」

 

…………夢の内容は深く考えない方がよさそうだ。

 

ふむ?

 

進路変更。千冬のベッドに近づき、その被っている布団を剥ぐ。

 

「んーーー?」

 

それでも千冬は起きない。よほど疲れているのだろう。

 

そこへ真季奈を投下。した後、布団を被せてやる。するとどうだろう? まるで獲物を捕食する食虫植物のように『世界最強』はあどけない少女を素早く抱きしめて捕らえる。

 

「ふふー、真季奈ー。ちゅぱちゅぱぁ」

 

「んーーー、チュパカブラがぁ、チュパカブラがぁ」

 

なんの夢を見とるんだおのれらは。

 

笑顔になった織斑千冬と、反対にうなされ始めた真季奈を見る。どちらも(?)微笑ましい寝顔だった。

 

二人の頭を撫でる。

 

『俺がこうしていられるうちは俺がお前らを守るさ……家族だからな』

 

俺は人のような姿を取ることができる。人のように考えることができる。人と喋って意思疎通を取ることもできる。

 

しかし俺は機械だ。

 

人とは違う寿命。違う肉体。違う姿……。

 

俺はいつまで真季奈達のそばにいられる?

 

『………四時、か。寝るにしても起きるにしても中途半端だな……』

 

時計を見る。自分には睡眠は必要ない。人間とは違うのだから。

 

だから。

 

『走るか』

 

自身の姿の設定を変更。着ている服をスーツからIS学園指定のジャージに再構成。

 

部屋を出て廊下へ出る。グラウンドや山、なんなら海まで足を伸ばすのもいいだろう。この体がどこまで『動く』のかも把握したい。

 

自分は『テンガイオウ』と柴犬、それとこの人間モードに姿を変えられることができる。しかしそのメリットがわからない。

 

だからこそ知る必要がある。自分に何ができるのかを。

 

『箒との『約束』の時間まで二時間。どこまで走れるかな?』

 

寮の出口を目指す。自分に出来ることを探すために。

 

「………た、大変なもの見ちゃったかも……!?」

 

ん?

 

 

 

 

 

 

 

私、篠ノ之箒は剣道場に来ている。無論、朝練のためだ。

 

剣道着を着て軽く準備運動をする。朝の六時とはいえ眠いなどとは言ってられない。今日もこのあとに授業があるのだ。たるんでなどいられるか。

 

それに今日は先約もあるしな。

 

『すまんな箒。待たせたか?』

 

道場の入口から声がかかる。どうやら『約束』の相手が来たようだ。

 

「いいや、私もさっき来たところだ。たいして待ってはいない」

 

『そいつは良かった』

 

私と『朝の稽古』を約束していた相手とはデウスのことだ。今日は二十代ぐらいの青年男性の姿らしい。まぁ当然か。私に稽古を頼むんだ。恐らく竹刀を構え合っての剣術の特訓になることは想像できる。それで犬の姿で来るはずがない。

 

デウスはジャージを着ていた。心なしか汗をかいているようだ。

 

汗?

 

「お前、どこか走ってきたのか? というか汗をかくものなのか?」

 

機械なのに?

 

『ちょっと百キロほど走ってきた。これは機体温度を下げるための冷却水かな? まぁ人間の汗と効果は同じようなものか』

 

「お前はもう人間と変わらんな……」

 

どこの世界に機械が運動して汗をかくだのということがある。

 

『まさか。見た目だけだよ。それより時間がない。さっさと始めるぞ』

 

そう言って竹刀を取る。デウスの言うとおり、授業の時間もあるが、その前に朝食に間に合わなくては話にならない。

 

竹刀を構え合う。お互いの本気が肌に伝わってくる。

 

「はぁああああああああああ!!」

 

『おぉおおおおおおおおおお!!』

 

打ち合う。これは試合ではない。異常なまでの乱打の応酬。

 

「きぇええええええええええええい!!」

 

『はぁあああああああああああああ!!』

 

面、胴、小手、面、面、胴。

 

打ち合う、打ち合う、打ち合う。そんな攻防が十分は続いただろうか。

 

『止めだ』

 

「な、なに?!」

 

突然手を止めて止めを宣言するデウス。それに戸惑い、自分も竹刀の振る先を見失う。

 

『駄目だ。やっぱりしっくりこん。俺に剣は向いてないみたいだ』

 

竹刀を片手で持て余しながらデウスが言う。

 

こ、こいつは……人に稽古を頼んでおいてよくもぬけぬけと……!!

 

『ん? あ、いや、稽古は感謝してるぞ? 自分に合ってないことが分かっただけでも良かったよ。礼を言う』

 

「しかし『天墜』はどうする。テンガイオウの武装はあれだけだろう?」

 

斬馬刀。二刀の剣。強弓。BT兵器の剣舞。四つの形態を持つ複合武器は扱いづらいが強力だ。それを向いてないの一言で切り捨てるのはどうなんだ?

 

『あれは真季奈のために用意された武器だ。俺のじゃない。それに……』

 

「? なんだ?」

 

『俺には『コレ』とこの身体がある』

 

右腕を突き出し、デウスが不敵に笑う。

 

『テンガイオウ』の右腕。そこには『因果王砲』という砲撃武器が備わっており、また強靭な拳でもある。

 

「素手、いや拳闘で戦うつもりか?」

 

『あぁ、俺にはそのほういいと思う。自分の身一つで駆ける方が俺には合ってる』

 

そういうものなのか? よくわからん。

 

『まぁあれだ。男の見栄だ。気にするな』

 

ますますわからん。一夏なら分かるのだろうか?

 

『さて、そろそろお開きとするか。ほら、さっさと着替えてこい。朝食、間に合わなくなるぞ?』

 

「あ、あぁ。ってホントに危ない時間じゃないか!? 急ぐぞデウス!」

 

『あ、俺はいい。この後用事がある。先に言ってろ、戸締まりはしとくから心配するな』

 

「? すまん! あとは任せた!!」

 

急がないと一夏の隣の席がなくなる!!

 

 

 

 

 

 

 

これは何の騒ぎだ?

 

織斑一夏は食堂に来たらなんだか空気がおかしかった。

 

どうおかしいかというと。

 

「ねぇ聞いた!?」

 

「聞いた聞いた!! まさか千冬様がねー」

 

「あーんお姉さまーーーー!!!」

 

「神は死んだ!!」

 

「で、どんなイケメン!?」

 

「なんていうかワイルド系?らしいよ!」

 

『『『キャーーーーーーー!!』』』

 

………千冬姉ぇが噂の中心なのは分かった。

 

女子たちが集まって何かコソコソと話している。

 

「一夏、この騒ぎはなんだ?」

 

「あ、箒。いや、俺にもなにがなんだが………」

 

食堂の入口の方から箒が来た。彼女もこの騒ぎの原因を知らないらしい。

 

「あ、織斑君!」

 

!?

 

「お、おはよう」

 

集団の一人が俺の存在に気づき声をかけてきた。それに応えた瞬間。

 

ぎゅるん!! と食堂の視線が全て俺のもとへ集まってきた。

 

『『『織斑くん!!!!!!』』』

 

「はい!」

 

ははっ全員が俺を呼んでるぜ! 怖いわ!!

 

『『『どういうこと!?』』』

 

なにが!?

 

『『『織斑先生に彼氏が出来たってホント!?』』』

 

「マジで!!?」

 

馬鹿な!? あのいきおくれ系傍若無人女に彼氏だと!? どんな聖人君子だよ!!

 

「織斑くんも知らないんだ………」

 

「てかこれ、どこのソース?」

 

「なんか今日の日の出前に、織斑先生の部屋を男の人が出入りしてるのを見た子がいるんだって」

 

「え!? じゃぁ寮に出入りしてるってこと!??」

 

ん? 今日、千冬姉ぇの部屋に出入りした男? それってもしかして……。

 

思い出すのはとある成人男性。普段は黒い柴犬の姿をし、稀に人間や『全身装甲』のISの姿になるやつ。しかも住処は志波さんやウチの姉が暮らす宿直室。

 

つまり、

 

「あ、なんだデウスか」

 

『『『え?』』』

 

あーそっかそっか。デウスが志波さんを部屋に連れていったのを誰かが見たんだな。なんだ、千冬姉ぇに彼氏が出来たわけじゃないのか。驚かせやがって全く。

 

「さーてメシメシ。早く食わないと授業に遅れちまうぜ」

 

『『『ちょっと待て。その話、もっと詳しく聞かせろ』』』

 

……やべ。取り囲まれた!! 

 

「待ってくれ真季奈! 誤解だ!」

 

「知りません! この変態!!」

 

おんやぁ? なんか口論が。だがこのチャンスを逃す手はない!!

 

「どうしたんだ志波さん!! なんか困ってる!!?」

 

「あ、織斑くん。聞いてくださいよ! 起きたら変態がベッドに忍び込んでいたんです!!」

 

「だから違う! 私だって起きたらご褒美が、じゃなくてっ! 私のベッドに真季奈がいたんだ!!」

 

口論をしながら食堂にやってきたのは一年一組の裏ボス、志波真季奈さんと、ウチの恐姉、織斑千冬だった。

 

というかなんの話しだ?

 

志波さんが朝起きたらベッドに千冬姉ぇがいたって?

 

「ベッドに居てそれで?」

 

「抱きつかれてて何故か顔の周りがベタベタしてました………」

 

…………………………………………………………………………。

 

沈黙。もうびっくりするくらい無だった。さっきまでの喧騒がまるで嘘みたいだ。

 

この姉とうとうやりやがった!!

 

「……千冬姉ぇ。何か言うことは?」

 

「それでも私はやってない!!」

 

『『『嘘だ!!!!!』』』

 

うん、日頃の信用って大事だよね!

 

「……とうとうやっちゃいましたわね」

 

「……あぁ、いつかやると思っていた」

 

「……だから記憶なくした真季奈とは部屋を別にしろって言ったのよ」

 

「……教官、正直羨ましいですがさすがにこれは」

 

「……えーと、こういう時はどこに連絡すれば」

 

誰一人千冬姉ぇを擁護しない。俺もしないけど。

 

「まぁまぁ、みんな落ち着いて。でもやっぱりあれだろ? 寝起きだから寝汗でちょっとしょっぱい…」

 

「馬鹿が! クリームのように甘く柔らかかったわ!!! っは!?」

 

『『『はいボロ出ましたー!!!!』』』

 

やった! こいつ絶対にやりやがった!! ていうか自白しただろこれもう! 

 

「ちょっとカマかけてみただけなのに……志波さんこっち来て。近づいちゃいけない……」

 

「は、はい!」

 

俺は志波さんの手を引いて彼女を自分の後ろに隠す。すると志波さんは俺の背中の服を掴んで隠れる。あ、やべ可愛い。

 

「待て! 話を聞いてくれ!! 私は無実だ!」

 

「黙れ変態! 志波さんをペロペロしたのは事実だろ!」

 

「うぅっ、それでもベッドに潜り込んできたのは真季奈の方で……」

 

「嘘付け! 熟睡していた志波さんがなんで千冬姉ぇのベッドに……ん? いや待てよ?」

 

俺の部屋で熟睡していた志波さんを、千冬姉ぇの寝ている宿直室に連れていったのはデウスだったはずだ。つまり、志波さんが入るベッドを決めたのもデウスなわけで……。

 

「あいつが犯人か!?」

 

「え? 誰です?」

 

「だ、誰なんだ一夏!?」

 

「うっさいこのぺロリスト! いや、多分志波さんを千冬姉ぇのベッドに放り入れたのはデウスだと思う……」

 

「はい? まっさかー。デウスちゃんのちっちゃい体でどうやってわたしを織斑先生のベッドに移動させるんです?」

 

志波さんは俺の言葉を聞いて笑いながら否定する。そっか、志波さんは知らないんだっけ。

 

デウスが180オーバーな身長の成人男性に変身できるのを。

 

「いや、実はね? デウスって柴犬以外の姿に変身できるんだ」

 

「………はい?」

 

「本当だ。今朝私も道場で一緒に稽古した。実にたくましい兄貴だぞ?」

 

「……うっそーん」

 

俺の正直な言葉と箒の援護射撃に志波さんも信じたようだ。というか箒、お前デウスと朝稽古なんてしてたのか。

 

「じゃぁ何ですか? わたしは大人の男性になれるワンちゃんを抱いて寝てたというわけですか?」

 

ん?

 

「他にも一緒にお風呂に入ったり、抱っこしたり、顔に頬ずりしたり……」

 

まぁ、普段犬だしな。でもそう考えたらマジで羨ましいなあの野郎。今まで志波さんと一緒にあんなことやこんなことを……。

 

「ていうかデウスちゃんとお風呂ってあたしもなんだけど」

 

「奇遇ね。あたしも」「あたしも」「実を言うとわたしもさ!」「ていうか、大浴場でみんな一緒に入ってるじゃん!」

 

デウスーーーーー!!! お前って奴は、お前って奴ぁああ!!

 

「ISって撮影機能付いてるよね(ぼそっ)」

 

誰かが言った。

 

「録画機能もあるわよ?(ぼそっ)」

 

またもだ。

 

「デウスくんの中にさー、どんだけ記録されてるのかなー?」

 

ザワ!?

 

やばいやばいやばいやばいやばい!!!

 

俺、しーらね!!!

 

織斑一夏は逃げ出した! しかし回り込まれてしまった!

 

「どこへ行く?」

 

大魔王(織斑千冬)からは逃げられない!!!

 

「いや、部屋に忘れ物を」

 

「嘘を付け。そういえばお前、さっきから妙に詳しくないか?」

 

「ソンナコトハアリマセンヨ?」

 

え? なんで皆そんな顔して近づいてくるの? なんで怒ってるの? なんで俺取り囲まれてんの? なんで拘束されてるの?

 

「…………助けてください!!」

 

『『『それはお前の答え次第だ!!!』』』

 

ぎゃぁああああああああああああああああああああ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

『む!? 今、一夏の気が消えた……』

 

とまぁ冗談はおいといて。

 

何故か一夏の悲鳴が聞こえたような気がする。まさかな。

 

『さて、あと必要な機材は……』

 

デウスはIS整備室に来ていた。人間モードになっており、衣服は早朝と同じIS学園の指定ジャージだ。

 

今はその、色々と重要な機材を、『物色中』である。

 

『ま、借りるだけ借りるだけ。問題ないのないのよ、と』

 

それはきちんと借りたものを返せばの話である。

 

デウスが(勝手に)持ち出しているのはIS整備用の工具や補修パーツにバッテリー等。使えるものは手当たりしだいと言った具合に、次々と工具棚にしまわれているものを拝借していた。

 

『こんなものか。足りなくなったらまた来ればいいかな?』

 

ある程度満足したのか、その場を去ろうとしたその時、足元に転がってくる物体があった。

 

乾電池だ。

 

『ん? 誰か落としたのか? お、あそこにも』

 

見ると、足元に転がってきたもの以外にもいくつか落ちていた。それを拾って行くデウス。

 

決して拾い食いなんて行儀の悪いことをするためじゃないからね! 誰かが踏んで転んだりしたら危ないからだからね!

 

一個、また一個と乾電池を拾っていく。気が付けば廊下の袋小路にいた。正面は研究室の入口、左右は教室の見える壁と外が見える壁。道は後ろのみ。

 

そろそろおかしいと思い始める。誘導されてる? 誰に? 何故?

 

「むーーー!! むーーー!!」

 

『なんだ?』

 

乾電池の向かう先に人一人は入れそうな大きなダンボールが落ちていた。そこから何か聞こえてくる。

 

『罠率限界突破200%な気がするが……とりあえず開けてみるか』

 

しかし上を向いているのはダンボールの底面。口は空いており、床に四方に広がって置かれている。

 

……持ち上げるしかないか。

 

念のため、手を使わずに足で渕から蹴り上げる。

 

すると、中から出てきたのは、

 

『お前かい』

 

「むーーーー! むーーーー!!」

 

口にタオルでさるぐつわをされ、手足を縛られた織斑一夏が入っていた。

 

『また変な趣味に目覚めたものだな……どれ』

 

話を聞くにしても、まずは口のものを外す必要がある。織斑一夏の方もその点に関しては抵抗する理由もないわけで、大人しくしていた。

 

外し終わると、

 

「逃げろデウス! 罠だ!!」

 

叫んだ。

 

『だろうな』

 

正面の扉、教室の窓の方からガタガタと音がする。誰かいる。

 

『『『デウス覚悟ーーーーー!!!!』』』

 

誰かどころじゃなかった。何十人という女子の団体が殺到してきた。……全員、武器を装備して。

 

『……これはな何の余興だ?』

 

「いや、結構マジ! 早く逃げろ!!!」

 

見渡すと、様々な武器をもった女子がいるものである。薙刀、竹刀、グローブ、弓、バット、ゴルフクラブ、バスケットボール、そして……IS。

 

『ふっ、誰に言っている?』

 

デウスは逃げなかった。むしろ前に出る。

 

床に転がっている織斑一夏を拾い上げると、その足を掴んで振り回す。ジャイアントスイングだ。

 

『『『キャァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』』』

 

「あばばばっばばばばばばばばばあ!!?」

 

『フハハハハハハハハハハハ!!! 馬鹿め! こんな狭いところで固まってどうする阿呆共が!!』

 

周りの女子たちを次々となぎ払ってく。織斑一夏で。「がはっ!」

 

彼女たちが持つ武器もことごとく吹き飛ばされていく。織斑一夏で。「げふぉおお!!」

 

ISを装備した女の子もあまりの扱いに気が引けて下がる。織斑一夏がぶつかってくるので。「ぎゃぁああああ!!!」

 

『『『もう許してあげて!!!!』』』

 

『だったら言え! なんでこんなことをした!?』

 

デウスはなおも織斑一夏を振り回している。女子の集団なんてとっくに廊下から離れていた。こいつはひでぇ。

 

「だってイケメンが見れると聞いて……」

 

「織斑先生に彼氏ができたって」

 

「デウスちゃんがワンちゃんじゃなくなちゃったって」

 

「酷い盗撮魔がいるって」

 

女子一同が廊下や教室の影から隠れて言う。

 

『本当にこれは何の冗談だ?』

 

「お、おまえが、原因っ! なんだっ、ぞおお」

 

織斑一夏が息も絶え絶えに言う。なんのこっちゃ。

 

「実は、かくかくしかじかというわけで」

 

『まるまるうまうまということか。なるほど』

 

『『『それで通じるの!?』』』

 

日本語ってすごいね。

 

『つまるところ、俺の顔を見に来たのか。それで? どうだ、満足したか?』

 

『『『顔はよし!!』』』

 

女子達はサムズアップで答える。現金な。

 

『盗撮とか千冬の彼氏などは知らん。失礼する!』

 

右手を上げるデウス。その手のひらには光り輝く光球が。

 

「おまっ!? 何を!!?」

 

『ハハハハハハ!! 目を瞑っておいたほうがいいぞ!?』

 

その瞬間、デウスたちのいる廊下が光に包まれた!!

 

『『『きゃぁああああああああああ!!』』』

 

 

 

 

 

 

「ったく、なにこの騒ぎは?」

 

『なんだかお兄ちゃんが絡んでるみたいだにゃ』

 

IS学園の敷地内。庭園スペースを巡回していた鮮やかな長い金髪の女性、ナターシャ・ファイルスは朝からの騒ぎに辟易していた。ちゃんと警備員やっているんです彼女。

 

「ベルのお兄ちゃんってデウス君? あの子なにしてるのよ?」

 

『それはわかんにゃいにゃ。でもさっきから学園の女の子がお兄ちゃんを探してるみたいにゃよ?』

 

ナターシャと会話しているのは彼女の肩に掴まってぶら下がっているアメリカンショートヘアの子猫『ベル』。これでもIS『銀の福音』の待機状態である。

 

そうこう話していると正面から女子生徒が何人か走ってくる。

 

「ちょっと貴方たち! 今の時間は授業中でしょ!? なにしてるの!!」

 

「すいません! 事件です!」

 

「なんですって!?」

 

IS学園で何が!? まさかまたISの暴走!?

 

きな臭い空気を感じ取り、警戒レベルを上げる。が、

 

「織斑先生に彼氏が!!」

 

「なんですってぇえええええええええええええ!!!?」

 

さ、先こされた!? 

 

「ブリュンヒルデーーーーーーー!!!」

 

『にゃ!? ちょっ落ちるーーーー!』

 

ナターシャは走る! 怒りと悲しみを背負って! いきおくれなんかじゃないやい!! まだ二十代だもん!

 

「なによなによ!! 世界最強の次は男!? ちっくしょおおおおおおお!!!」

 

『ナターシャ! あぶにゃい、横にゃ!!』

 

「なによ!?」

 

肩に乗った子猫が叫ぶ。それにつられて叫び返すがすでに遅し。

 

『あ』

 

「え?」

 

振り向いたらそこには顔があった。知らない男の顔だ。脇目も振らずに走っていたらありえない方向から、校舎の窓から飛び出してきた輩がいた。

 

ちょっ、ぶつか

 

『動くな!』

 

「はい!?」

 

いきなり命令された。初対面の男に。なんて失礼な、と思ったときにはその男の胸で視界が覆われて……。

 

『一夏! そこで転がってろ!』

 

「ひでぎゃぁあ!!」

 

なにか理不尽な悲鳴が聞こえたような。深く考えないようにしよう。

 

ドン! きゃっ!? とうとうぶつかった。あれ? でも痛くない?

 

『お前を抱くのはこれで二度目だな。ナターシャ・ファイルス』

 

「へ? きゃあ!?」

 

気が付けば、私はこの男に抱かれていた。しかも俗に言うお姫様抱っこで。何故に。しかし、衝突の勢いは完全に殺せなかったらしく、突っ込んできた方向へそのまま移動していた。今は座り込んでしゃがんでいる状態だ。

 

『悪い。怪我はないか?』

 

「え、えぇ、ありがとう。あの、そろそろ離して……」

 

お、男の人に抱きしめられるなんていつぶりかしら!? いいえ見栄はりました! 初めてでっす! しかもよく見ると結構好み、本音を言うとまだ離さないでぇ!!

 

思えば軍に入隊し、過ぎ去っていった私の灰色の青春時代。いい出会いもなく、近寄ってくるのはガチムチ軍人のみ! そんなのはもう嫌!!

 

そんな私が今、男の腕の中にいる! しかも好み!!

 

このチャンスを逃せば次はない(多分)!!

 

「あ、立ちくらみが……」

 

『いや、横になってるよな?』

 

「体に力が入らない……すいません、もうすこしこのまま……」

 

『びっくりするぐらい力強く俺の腕をつかんでるけど!?』

 

「あの、お名前は? ちなみに私はナターシャ・ファイルス。年は二十代でアメリカでISのテストパイロットの経験があります。今はこの学園で警備員と寮長をやっていて年収は……」

 

『うん、知ってるから。なんでそんな饒舌なんだ君は?』

 

え!? 嘘、私のことを知ってるって? これは脈あり!?

 

「何やってるんだお前らは!!」

 

「誰!?」

 

邪魔しないで! いいとこなんだから!!

 

『なんだ千冬か。どうした? そんな血相変えて』

 

な!? ブリュンヒルデ!?

 

そこに居たのはかつて『世界最強』のIS操縦者と評された女性、織斑千冬だった。今はこのIS学園で教師をしており、職種こそ違うが私の同僚だ。

 

「おいナターシャ。お前その男と何をしている?」

 

「あら? ブリュンヒルデもこの人に何かご用ですか? すいませんが今私達とりこんでいるので後にしてもらえます?」

 

『……え? なにこの空気?』

 

あら? そういう顔もできるんですね。困った顔もいいわぁ。

 

「……そいつとは話があってな。今すぐ引き渡してもらいたいんだが?(ビキッ!」)」

 

「私でしたらおかまいなく。なんでしたら同席しますよ?(にこにこ)」

 

『とりあえず君はそろそろ降ろそうか? ナターシャ?』

 

「そうださっさと降りろ!」「いえ! まだ動けません!!」

 

このままブリュンヒルデにイイ男を連れてかれてたまるものですか!! え? あれ? そういえばブリュンヒルデに彼氏って……まさか!!?

 

「あ、あ、あの、もしかして、貴方はブリュンヒルデとこ、交際をしてらっしゃるんででですか?」

 

「はぁ!? 何を言って……」

 

『いいや? 全然』

 

手振ってあっけらかんとした表情で答えてくれます。よっしゃぁあああああああああああああ!!!

 

『お兄ちゃんって人間にもモテモテだにゃー』

 

……え? ベル? 今、なんて?

 

『『『見つけたぞデウス!!!』』』

 

『げ』

 

「な、なに!?」

 

校舎の屋上、そこに六人の少女がいた。どれも知った顔だ。志波真季奈以下、一組と二組に在籍する専用機持ちの少女たちだ。

 

「デウス! もう逃げられんぞ!」

 

「デウスさん! お縄についてもらいます!!」

 

「デウス! 僕たちを盗撮した画像は全て消させてもらうからね!!」

 

「コルァアア!!! デウス!! ぶっとばしてやるからね!!」

 

「デウス! 真季奈組の親分だとしても見過ごせないものがあるんだ!!!」

 

あの子達なにをそんなに怒っているの? というか、さっきからデウスって……、いや、そんな、まさか!!?

 

「あ、あの? もう一度お名前を伺っても……?」

 

『ん? いや、だからデウスだって。ベルの兄貴の』

 

………………………………………………………………………え?

 

デウス君? テンガイオウの? 人工AIの? ベルのお兄ちゃんで? 抱きしめるのは二回目って、一回目はあの事件で? 

こんなに逞しく抱きしめてくれてるイケメンがあの、ワ ン ち ゃ ん !!!?

 

「え、えええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」

 

「……お前、今知ったのか?」

 

『そういえばこの姿で会ったことなかったな……』

 

人間じゃない、ロボットみたいなもの? でもイケメン……紳士。

 

「障害は多い方が燃えるのよ!!!!」

 

『『『いいのかおい!!!』』』

 

うるさい! 人の恋路を邪魔しないでよぉおおおおおおおおおおお(泣)

 

 

 

 

 

 

『なんだこの状況は?』

 

俺の今日一日はどうなっているんだ? さっきから変なことしかおきん。

 

腕の中にはナターシャがいて俺に抱きついてくるし、後ろから千冬のプレッシャーが怖いし、屋上には専用機持ちの女子共が勢ぞろいしているし、一夏はそこの茂みに頭から突っ込んで死んでるし。あ、これは俺が投げ捨てたからか。

 

「貴方の人間の姿は初めて見ましたよ。それが盗撮魔の顔なのですね、デウス」

 

『サラっと人を盗撮魔扱いしないでくれるか? 真季奈』

 

屋上にいるメンツの中に真季奈もいるし。だいたい、盗撮魔って……お前じゃん。

 

『要求はなんだ?』

 

「貴方が今まで撮り溜めた画像、動画、音声の全消去。それと個人的な折檻です!!」

 

『『『そうだそうだ!!』』』

 

俺の中のデータって。日本や世界各国の政府の汚職の証拠に、マッキー商会の裏帳簿。それと学園の裏サイトの情報と一夏の盗撮画像にコレクションの目録……あ、無理だわこれ詰んだ。

 

『…………………断固拒否するっ!!』

 

「か、確保ーーー!!! デウスを確保しなさい!!」

 

『『『了解!!!』』』

 

『ちぃっ! この俺が造反を受けるとは!?』

 

屋上からISを纏って飛び降りてくる専用機持ちたち。真季奈は残って腕を組んだまま仁王立ちしている。ISないからな、あいつ今。

 

『くっ、千冬! ナターシャを!』

 

「お、おい!?」

 

「きゃ!」

 

俺は腕に抱えたナターシャを千冬に投げ渡すと、その場から大きく跳ねた。

 

「逃がすかぁ!」

 

鈴が『甲龍』を纏って襲いかかってくる。おい、その青龍刀をどうするつもりだ!?

 

「死ねぇええええええええ!!」

 

『死ねるかぁ!!』

 

思いっきり俺に向かって降り下ろされるソレを、両の手で挟んで止める。まさか真剣白羽どりをする日がこようとは……。俺は止めた双天牙月を力任せに外回しへと傾ける。すると、それに引っ張られて鈴も体制を崩した。

 

「きゃぁ!?」

 

『姿勢制御が甘い!』

 

そこへミドルキックを入れる。横っ腹に入った一撃が鈴を吹き飛ばす。

 

「この!」

 

「よくも!」

 

箒の『紅椿』とシャルロットの『ラファール』が襲いかかってくる。箒は雨突を振りかざし、シャルロットはシールド・ピアスを突き立ててくる。

 

「行きなさい! ブルー・ティアーズ!」

 

「捕らえたぞ!」

 

セシリアがビットであるブルー・ティアーズをビームを撃たずに突撃させてくる。逃げようとしたが、ラウラの『シュヴァルツェア・レーゲン』のAICによって足が動かなかった。

 

『(こいつら本気か!?)』

 

やばい。だが、

 

『俺を舐めるなぁあ!!』

 

『『そんな!?』』

 

片手ずつで雨突とシールド・ピアスを止める。そのまま握力で二人の獲物を握りつぶす。ビットが来る。ちょうどいいハエたたきができたところだ。払い落としてくれる!

 

「ごふっ!」

 

「ぎゃん!」

 

「あぁ! ごめんなさい、箒さん! シャルロットさん!!」

 

迫るビットを全て破壊する。……箒とシャルロットで。酷い? 仕様です。

 

『ほら! プレゼントだ小娘!!』

 

「い、いらん!!」

 

ハエたたき、いや、ビットたたき共をラウラへと投げ捨てる。

 

『『きゃああああああああああ!!』』

 

「く、来るなぁああああああああ!!!」

 

ドンガラガッシャーーン!! と、耳障りな衝突音を出しながら三機のISは沈黙した。

 

「み、みなさん!!大丈夫です!?」

 

あ、まだいたか。これでも喰らえ。

 

落ちていた石、ではなく、庭園スペースを飾るブロック上のレンガ。それを思い切り投げる。ただの投石と思うなかれ。見た目は人間、中身はIS。その威力は砲撃のそれに匹敵する。

 

まぁ、砲弾にしたレンガの方が柔らかいので当たれば砕けるのだが。

 

「ごふぅううう!!!」

 

当たったのが鳩尾なら関係ないね! セシリア、撃墜。

 

『で? あとはお前だけだぞ真季奈』

 

「く、この外道!! ですがまだです!! 織斑くん!!」

 

「おう!」

 

なに? 

 

『貴様、裏切ったな小僧!!』

 

「やかましいわ!! そもそもお前のせいで俺はさっきからとばっちり受けてばっかなんだぞ!?」

 

さっきまで茂みに頭を突っ込んでダウンしていた織斑一夏が『白式』を纏ってこちらに剣を向けていた。

 

「さぁ織斑くん! そこの女の敵を叩きのめしなさい!! ……でないと、次は誰の番なのかわかっていますよね?」

 

「もももちろんであります!!!」

 

『お前何された!?』

 

完全にガクブルじゃねぇか!? 明らかに脅されている。拷問でも受けたか? 受けたんだろなぁ一夏だし。

 

「俺にも、もう後がないんじゃぁあああああああああ!!!!」

 

『面白い! ならその本気、こちらも全力で答えよう!!』

 

デウスの全身が緑色の粒子で包まれる。瞬きの後、その姿は鋼鉄の巨人、『テンガイオウ』と化す。

 

「マジか!? でも、うぉおおおおおおおおおおお!!」

 

一瞬戸惑うが、織斑一夏は『雪片弍型』を振りかざし突っ込んでくる。

 

『正面から来るだけではなぁ!!』

 

拳を固く握り、迎え撃つ。右腕を引き絞り腰だめに構える。振りかぶれば一夏の顔面を粉砕する一撃だ。

 

「一夏!」

 

「鈴!? やれるのか!?」

 

最初に撃墜された鈴が『テンガイオウ』の今まさに振りかざされようとする右腕にしがみついていた。

 

『邪魔だァ!!』

 

「きゃぁ!」

 

腕を振り、地面に『甲龍』ごと鈴を叩きつける。

 

「鈴!」

 

『『『鈴(さん)!!』』』

 

「デウス!!」

 

真季奈が叫ぶ!

 

「そんな酷いことする子は大嫌いです!!!!」

 

ピシっ!

 

『大、嫌い?』

 

えーーーー? 俺が悪いのか? 喧嘩売ってきたのそっちじゃん……。

 

「動きが止まった!?」

 

「やるなら今だ!!」

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

一夏が奮い立つ!

 

バキィイイイ!!! 右ストレートがテンガイオウの頭部に入った! その衝撃で身体をのけぞらせるデウス。

 

『チィ! このぉおおおおおおおおお!!』

 

体制を整え、反撃の拳を放つ。一夏もそれにならう。互いの拳が交差する、その寸前。

 

「一夏ぁ!!」

 

「箒!?」

 

デウスの拳の前に『紅椿』を纏った箒が躍り出る。当然、その一撃を喰らい吹き飛ばされた。

 

「構わずぶちかませぇ!!」

 

「お、おおおおおおお!!」

 

箒が開いた活路を活かし、一夏の拳がデウスの胴体部に突き刺さる。

 

『がはっ、あああああああああああああ!!!』

 

デウスは両腕を組ませ、振り落とす。狙いは一夏の頭で、

 

「おぉおおおおお!!」

 

「ぐ、うううううう!!!」

 

咄嗟に頭上で腕を組んで一夏はガードする。だがパワーで負けている。

 

「やぁああああああああ!」

 

「シャル!?」

 

シャルロットが肩から飛び込む。それはデウスの腰部に衝撃を与え、体制を崩した。

 

『ちょこまかと!』

 

解いた手をはらってシャルロットを吹き飛ばすデウス。

 

「一夏! 進んで!!」

 

「おぉう!!」

 

近距離からの膝蹴りをぶちかます! それはデウスの胸元から迫り、顔面へと食い込む!

 

『ぐぅ!? このぉっ!!』

 

右手が開く。『因果王砲』。圧縮されたエネルギーの束が集まっていき発射されようとしている。

 

「させるかぁっ!」

 

「ラウラ!」

 

デウスの右腕にプラズマ手刀を突き立てるラウラ。その一撃は、集まっていたエネルギーを誘爆させる。

 

「ぐはぁっ、姐さんバンザーーイ!!」

 

「ちくしょう! うおぉおおおおおおおおおお!!」

 

一夏は爆発したデウスの、『テンガイオウ』の右腕に『雪片弍型』を振るう。『零落白夜』の発動させて。

 

『このガキがぁ!!』

 

「いつまでもガキ扱いすんじゃねぇえええ!!」

 

壊れた右腕で殴りつけてくるその一撃に刀をぶつける一夏。それは互いの武器を破壊する結果となった。

 

グシャッ!!! 『雪片弍型』が折れ、『因果王砲』が右腕ごと潰れる。

 

『まだだぁあ!!!』

 

左腕のアッパー。それは一夏の腹部に突き刺さり、空高く吹き飛ばした。

 

「あぁ!? 一夏!!」

 

「ぐはぁああああ!!!」

 

「一夏さん!」

 

吹き飛ばされる一夏を見て嘆く箒。しかしそんな彼を空中で抱きとめる少女が、セシリア・オルコットがいた。

 

「まだです! 勝利は、すぐそこですわ!!」

 

『『『行け! 一夏(さん)!!』』』

 

「おお!!」

 

セシリアに背中を押し出され、地上にいる『テンガイオウ』へと突き進み、拳を構える一夏。

 

それに真っ向から迎え撃つ『テンガイオウ』ことデウス! 残った左腕で拳を握りこみ、カウンターを合わせる。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

が、

 

「ちゃーーーーんす!」(ぽちっとな)

 

『『え?』』

 

二人の周囲が爆発した。

 

「ぎゃぁああああああああああああああああああ!!?」

 

『おのれ真季奈ぁ!! はかったなぁあ!!』

 

チュドーーーン!! とキノコ雲を巻き起こすほどの爆発。後に残されたのは死屍累々の惨状だった。男二人、哀れな末路である。

 

「よし、作戦通りだな」

 

「上手くいきましたわね」

 

「さすが姐さん。見事な采配だった」

 

「二人ともおイタはいけないなぁ、ふふふ」

 

「アイツらこれ、生きてるんでしょうね?」

 

お前らもグルか。

 

「さぁ皆さん。さっさとそこのボロぐず共を回収してください。この後にはまだ、『第二部 楽しい拷問フィーバー』が控えてるんですから」

 

『『『ハー―ーイ』』』

 

真季奈の号令にわらわらと現れる女子たち。

 

「ククク……、盗撮なんてするような輩はまとめて ぶ ち 殺 し  です……」

 

なんだか黒いオーラを纏っているように見える。覚醒しちゃった?

 

「ま、真季奈のやつ、記憶戻ったんじゃないか?」

 

「いえ、無いままであぁなってしまいましたわ……」

 

「真季奈はやっぱり真季奈だったカー」

 

豹変した真季奈の姿に戦慄する周囲の面々。しかし忘れてはならない。これが志波真季奈だ!

 

「!? 大変です! 下手人が片方足りません!!」

 

「誰です!?」

 

取り巻きの女子の一人が叫ぶ。転がっているはずの死体(笑)が一つ足りなかった。

 

「織斑くんしかいません! 繰り返します。織斑くんしか見当たりません!!」

 

つまり。

 

「デウス……逃げましたねぇえええええええええ!!!」

 

ここに修羅が生まれた。そしてIS学園に戦乱の時代の幕が切って落とされ……いや、ねーよ。

 

 

オワレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『酷い目にあった! なんかもう酷い目にあった!! なにこれ!?』

 

「自業自得だ馬鹿」

 

IS学園の地下50メートル。レベル4の権限を持つものにしか入ることを許されないその秘密のラボに彼ら『大人組』はいた。

 

デウス、織斑千冬、山田真耶である。

 

「というかずいぶん派手に暴れちゃいましたねぇ。あの爆心地の庭園……復興にいくらかかるんだろ……はぁ」

 

今回の事件(茶番)の報告書と被害請求書をまとめているのは本件になんっも関わりのない山田真耶だった。完全にとばっちりである。

 

『『頑張れ! 応援してるぞ!!』』

 

「ふざけないでください!!!!」

 

ガチギレである。しゃーない。いやホント。

 

「それで、本当にこれを?」

 

『あぁ。使えるようにする』

 

そこに保管されているものは二つあった。

 

一つは先のクラス対抗戦の際、乱入してきた未確認の無人機……の残骸。

 

もう一つは『ある事件』により凍結され放置されたIS。

 

『あの駄兎とクソ親父をこのままにして置けるか。やれることは全部やるさ』

 

「だが出来るのか?」

 

ISコアはその構造を完全に把握出来ているものはいない。製作者を除いて。つまり一度破壊されるということは二度と使えなくなるということと同義だ。

 

目の前の二つのコアはまさにその状態。それをこの男、デウスは直すと言っているのだ。

 

それができるということはつまり……。

 

『俺はISコアと一体化したコアそのものの存在だ。内部構造など手に取るように分かる。やろうと思えば量産だってできるさ』

 

「やるのか?」

 

『まさか』

 

そう、しない。なぜならば。

 

『俺は、ALICEも、あのクズ共の思惑も全て破壊する。わざわざ『肉体』を増やす道理などない』

 

恐らくあれらの狙いは全てのISに「ALICE」を乗せ、意思を持った無人機とすること。その手助けになるようなことなど誰がするものか。

 

『ベル、『銀の福音』に乗せられていた「ALICE」はアリス・スリーのコピーだった。データなんだからプログラムの複製なんざ簡単だろうよ』

 

「それだと、お前はいずれISの数だけ妹ができることになるな」

 

『………ISコアって今全部で何機あったっけ?』

 

「467機だな。この未確認機や紅椿を入れるとまだ増えるだろう。よかったな、最低でもそれだけの妹ができるぞ?」

 

『……わーい、攻略しがいがあるなー』

 

昔そんなゲームあったなー。

 

「アイツらは何が目的なんだろうな?」

 

織斑千冬は考える。ISを全て「ALICE」化させるのは想像できる。

 

でもその先は? その後はどうする? なにを?

 

その疑問に答えたのも目の前の「ALICE」だった。

 

『あの男は、自分は地球上に新たな生命体をつくる、と言った。それが俺のような存在だとしたら次の目的はなんとなく想像つく』

 

「なんだと?」

 

『そもそも生命体の定義とは、代謝系を有する。細胞と言う形状を有する。自己複製が可能である、という三点なんだが……』

 

「代謝系を有する、という点はISの持つ自己進化機能で代用できるな。生命維持の問題も束ならなんとかするだろう」

 

『細胞も同様だ。俺のこの体、人間そっくりだが結局は金属だ。肌の触感は人間そのものだがな』

 

「なら、自己複製か。これは……」

 

『そうだ。つまりは『繁殖行為』だ。それが俺たち機械にはできない。できなくては『生命体』とは呼べないよ』

 

「ならばできるようにする、か」

 

そのために何をするのか? それが俺たちにはわからない。

 

でもアイツらは、『天災』なら思いつくのだろう。だからこそタチが悪い。

 

ならば自分はそれを邪魔するだけだ。徹底的に。

 

『さて、造るとしようか。《ジャバ・ウォック》を』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は散々な一日でした!

 

はい、わたし志波真季奈は大変怒っております!

 

とりあえず織斑くんには折檻(という名の拷問)を受けてもらいましたがそう簡単に許してはあげませんからね!

 

逃げたデウスちゃんはもっとデス! 

 

というか、あの子あんなに大きな男の人になるんですね……。犬の二歳は成犬といいますが、どうなんでしょうあれ?

 

まぁそれはとりあえず置いといて。

 

明日で学校も終わりです。明後日から夏休みが始まります。そのため、わたしは帰省の準備をしております。

 

宿直室を根城としているわたしですが、とりあえず荷物の整理をしようかなと。今は夜八時ごろ。晩ご飯も食べ終えたのでゆっくりと時間が取れます。

 

食事前に織斑くんの折檻を挟みましたから概ね問題なしです。それにしても、織斑くん、やりすぎたかなぁ?

 

一応、鞭打ちとビンタとお馬さんの刑にしましたが……十分ですよね? なぜか周りのみなさんはびっくりしてましたが。

 

織斑くんも信じられないって顔してましたし。何がそんなにおかしいんでしょう? わたし? まさか。

 

顔と言えば織斑くんのあの顔。ビンタされた時に赤くなった頬とか、痛みに耐えるとことか、涙を浮かべて許しを請う姿とか…。

 

 

……………………………………………………………………………………………ゾクゾクしちゃう。

 

 

えっ? 今わたし何を考えました? 

 

えっと、織斑くんが床に這い蹲って謝るところとか(ハァッ)、顔を踏んづけられてるところとか(ハァッ、ハァッ)、わたしの靴を舐めながら土下座してるところとか!!!

 

って何を考えてるんですかわたしは!!?

 

これではまるで加虐嗜好者です! 変態です! 人格破綻の末期です!!! マッキーだけに、て違う!!

 

いけません、これではいけません。

 

なんなんでしょうこの気持ちは。わたしは記憶を失う前はどんな人物だったのでしょう。

 

最近それが少し怖いです。

 

特に、織斑くんのことを見ていると何か言いようの出来ない感情がふつふつと湧いてくる感じがします。

 

本当に訳が分かりません。

 

パサっ、

 

ん? なんですかこれは?

 

机の引き出しを整理していると、奥の方から古びたノートが出てきました。

 

妙です。これ、まるで隠すようにして奥の奥へとしまい込まれていました。なんでしょう?

 

表紙を見ると、『      日記張』と書かれていました。持ち主の名前は志波真季奈。わたしのみたいです。

 

日記帳? もしかしてわたしが記憶を失う前に書いていたのでしょうか? ひょっとして人に見られたくなくて机の奥の方に隠していたとか?

 

そう考えると、自分も人並みの女の子だったんだなと思えて微笑ましくなります。

 

ですがこれ、ひょっとするとわたしの記憶を取り戻す手掛かりになるのではないでしょうか? うん、そうですよ。だって『わたし』の記録ですし。

 

そうとなれば中を改めてみませんとね。なんだか他人の日記を勝手に見ているような罪悪感がありますが、これは間違いなくわたしのです! だからセーフです!

 

さっそく一ページ目から開いてみます。

 

そこには……。

 

 

 

○月×日。

 

今日から尾行と監視を始めた。アイツの生活はわたしのもの……。

 

 

ナ ニ コ レ ?

 

「ひ、ひぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!?」

 

 

わたしって、わたしって何!?

 

 




うん、なにこれ酷い。

デウスは真面目に生きたいのに周りが酷い。

今回ちょろっと恋愛ぽいのを含ませました。婚活に必死な奴らでしたが(笑)

僕の中では一夏は全方位にモテる系(でも超絶鈍感)

デウスは年上にモテる系(でもその気なし。人間じゃないし)

な感じです。イメージが合わなかったらすいません。

次に真季奈の日記帳大公開をしてから4巻に入ろうと思っています。

また次回もお付き合い頂けたらな嬉しいです。

それでは。
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