IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

今回更新が大幅に遅れました。申し訳ありません。

さて、前回で予告したとおり、ウォーターワールドでのお話です。

ある作品のキャラが多数出てきております。というかパロってます。

それではどうぞ。


ウォーターワールドで君も俺と握手!!

八月、夏真っ盛り。IS学園は夏休みである。

 

しかし、デウスはIS学園にいた。

 

『真季奈が家に入れてくれないからさ!』

 

自分で言ってて悲しくない?

 

『ほっとけ』

 

夏休みの間、志波真季奈は織斑家で生活している。織斑千冬も一緒で、一夏はまだIS学園で補習中だ。休み前のテストの結果が思わしくなかったようである。

 

ならデウスはどこで生活しているのか?

 

織斑家である。

 

家に入れてくれないんじゃないのかって?

 

……察してください。

 

『それにしても、なんで俺がこんな使いっぱしりみたいなことを……』

 

それもこれも織斑一夏のせいである。

 

 

「デウスちゃん、これ織斑くんに届けてきて」

 

真季奈からそう言われて渡されたのは小さな弁当箱。

 

『………なんで?』

 

織斑家の玄関で渡されたのは真季奈の手作り弁当だった。(ちなみに千冬は同じものを貰ってヒャッハーしていた)

 

「やっ、だってそのぅ、お、織斑くんだって寮のご飯ばっかじゃ飽きちゃうと思うし……」

 

顔を赤らめながら服の裾を掴んでもじもじしている真季奈。それを見て俺は、

 

『よし! コンビニで弁当買うわ!』

 

全力で邪魔したくなった!!

 

「やめてよ馬鹿ぁ!!」

 

えー?

 

「もう! なんでデウスちゃんはいつも意地悪ばっかり言うの!? いいじゃない学園に行くんだからお弁当届けてくれたって!!」

 

『自分で届ければいいだろう!? 何が悲しくて男に手作り弁当届けにゃならんのだ俺が!!』

 

俺のもっともだと思う発言に真季奈は、

 

「え、だって、は、恥ずかしいじゃないですか……」

 

またも赤らめた顔をにやけさせながら言いやがった!!

 

織斑一夏ぶち飛ばしてぇええええええ!!! 殴っていいよなアイツ!?

 

というか真季奈さん!? お前いつの間にアイツにそんなフラグ立てやがったの!? 知らん間に好感度メーター振り切ってるじゃないっすかぁ!!

 

「とにかく届けてよね! でないとデウスちゃんもご飯抜きなんだから!」

 

『……ちくしょう!』

 

その気になれば自分の飯なんて勝手に食える。でも真季奈から渡されたいんだい! だから、だから!

 

『届ければいいんだろォオオおおおおおおおおお!!!!』

 

デウス、男泣きである。

 

 

というわけでデウスは柴犬モードでIS学園の学生寮を歩いている。真季奈の手作り弁当は首からヒモでぶら下げている。

 

『一夏どこやーい。いないんなら出てこなくていいぞーコノヤロー』

 

やさぐれてるけどね。

 

「あれ? どうしたんだデウス。学園になんか用事か?」

 

織斑一夏が現れた!

 

①たたかう ②弁当を渡す ③にげる

 

→①たたかう ピッ!

 

『オラァッ!!!』

 

デウスの渾身の飛び蹴り! 織斑一夏は顔面に999のダメージ!!!

 

「ぎゃぁああああああああ!! って、なにすんねん!?」

 

『ちぃ、まだ生きているか!』

 

「なんなのお前!? 俺が何をした!?」

 

『うるせぇ!! 妬ましいんだよ!!!』

 

「何が!? いでででででで!!」

 

ガジガジガジと頭に噛み付くデウス。織斑一夏、困惑しっぱなしである。だよね。

 

『けっ、真季奈から弁当の差し入れだ! ありがたく食らいやがれドM野郎!』

 

首から下げた弁当をポーンと投げる。中身が溢れたら真季奈に殺されるので不本意ながらも丁寧に。

 

「おぉ! 志波さんの手作り弁当!? おいこら誰がドMじゃボケ!」

 

『お前意外に誰がいる!! せいぜい夜道に気をつけるんだな! あばよ!』

 

「上等だ! いつでもやってやんよ!」

 

弁当渡せばもう用はねぇ!! じゃぁな!!

 

 

 

という訳で、渋々ながらも無事にミッション終了。

 

デウスはIS学園の寮から帰ろうと歩いていた。

 

そこへ、

 

「あれ? デウスじゃない。珍しいわね」

 

『なんだ鈴か』

 

凰鈴音と寮の廊下で出くわした。夏休みだというのに国へ帰国しなかったようだ。

 

『……お前は暇そうだなー』

 

「うううっさい!!! あたしだってやることいっぱいあるんだからね!」

 

『例えば?』

 

「え、えっと? 例えば~、ISのテストしたり、一夏と訓練したり、ティナと宿題したり……」

 

デウスと同じ目線(柴犬の姿なので頭の位置が足元なのだ)に合わせてしゃがみこんで、自分の指を折ながら数えるようにして言う鈴。要するに、

 

『やっぱり暇してるじゃないか』

 

IS=織斑一夏とイチャつきたいだけじゃねぇか!!

 

ん? いや待てよ?

 

『おい鈴。お前一夏のこと好きだよな?』

 

「ぶーーーー!!? な、なななにを藪からスティックに!?」

 

『まぁまぁ。で? どうなんだ? 好きなんだろ? LOVEしちゃってるんだろ? ん?』

 

前足を鈴の肩に乗せて追求する。オヤジかおのれは。

 

「べべ別に一夏は単に幼馴染なだけだしぃ! まぁ? 一夏がどうしてもって言うんなら付き合ってあげてもいいんだけどなー! まぁでもあいつが」

 

『ここにデートにもってこいの遊園地のチケットがあるんだけどなー』

 

「大好きです。LOVEしちゃってます親分」

 

変り身はやっ!

 

「というかあんた、今それどこから出した?」

 

『気にするな。で、このチケットなんだが。バイト先での貰い物なんだが、行きたいか? 一夏と』

 

「もちろんです! と言いたいところだけど、タダじゃないのよね?」

 

疑わしそうな目でデウスを見る鈴。うまい話には裏がある。そんなことは代表候補生をやっているうちに嫌というほど覚えた。

 

『なーに。ある意味ではタダ同然だぞ? これで一夏を落とせ。確実にな。これが交換条件だ』

 

「な、なんですってーーー!? え? マジで?」

 

うん、いいリアクションをありがとう。

 

『最近、真季奈の様子がおかしいのはお前『達』も知っているな?』

 

「う、うん」

 

そう、真季奈の一夏に対する様子がおかしくなったのは夏休みに入る前の終業式からだ。何があったのか走らんがあの日から真季奈の一夏に対する接し方はガラリと変わった。

 

真季奈の方からよく話しかけるようになったし、笑顔で笑うようにもなった。さらに恐ろしいことに、買い物に誘うのだ。真季奈が。一夏を。

 

あぁ殴りてぇ。

 

「……正直あたしも焦ってるし箒たちも結構やばい。セシリアなんか予定を切り上げて帰ってくるって言ってる」

 

セシリアみたいな本国に用事のあって帰国している奴は気が気じゃないんだろうなぁ。そういう意味では鈴の居残りはある意味正しいのかもしれない。

 

『そこでだ。一夏とのセッティングは俺の方から用意してやる。後は自分で努力して勝ち取れ』

 

「その話乗った! さすがデウス!」

 

『だがチャンスは一度しかやらんぞ?』

 

「上等よ!」

 

ここ一番の笑顔でガッツポーズを掲げる鈴。うん、その顔が見たかった。

 

『では、成功を祈る』

 

「へい親分!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、やってきたわよウォーターワールド!!

 

なのに、

 

 

一夏が来ない!!!!

 

 

「何やってんのよあの馬鹿は!?」

 

入口で待つこと三十分。待ち合わせの時間はとうに過ぎた。どうなってんのよ!?

 

「え? あたしちゃんとデウスからもらったチケット、一夏に渡したわよね? 一夏も来るって言ってたよね? なんで来ないのよーーー!!」

 

そう、確かに鈴は織斑一夏にここ、ウォーターワールドの無料ペアチケットを半ば強引に渡していた。織斑一夏も戸惑いこそすれど特に断る理由もなく受け取っていたのだが、現に待ち合わせ場所に来てなかった。

 

何故だろう? まさかドタキャンされた? あたしは何か一夏の気に障るようなことをしてしまったのだろうか? それともまさか事故にでもあっているんではないだろうか? 

 

不安なことばかり思い浮かぶ。ただここで一夏を待ってるだけ。それだけのことでこれほど心をかき乱される。自分にとって織斑一夏とはそれほどの存在なのだ。

 

好きなのだから。

 

そうして、偶に口元を緩ませながら、または不満を募らせながらと百面相を見せながら待ち続けると、

 

「ん?」

 

「あら?」

 

見知った顔が現れた。というかいた。

 

自分の世界に浸りすぎていて周りが見えていなかったようだ。自分が立っている場所より少し離れた場所に立っている知人、セシリア・オルコットがいた。

 

「これはどうも鈴さん」

 

「う、うん。こちらこそセシリア」

 

……セシリアも誰か友達と待ち合わせかな? ふ、ふふん! あたしは一夏とだけどね! なかなか来ないけど……。

 

「もう、一夏さん遅いですわ……」

 

え?

 

「せ、せせセシリア、今なんて……?」

 

セシリアの呟きを確認する前に、自分の持つ携帯電話が鳴り響いた。番号はもちろん織斑一夏だった。

 

「ちょっと! あんた何やってんのよ!! とっくに約束の時間は過ぎてるわよ!! 今どこ!」

 

一夏が無事だっとことに安堵しつつも不満をぶつける。こっちは待たされているんだ。当然の権利である。

 

「今学校。わるい鈴、行けなくなった」

 

「は!? なぁっ」

 

一夏の言葉が理解できない。いいや、出来たからこそ頭が真っ白になった。コイツハナニヲイッテイル?

 

「山田先生から臨海学校の時に取り損ねた白式のデータを企業の人たちととってくれって言われてさ」

 

「なによそれ!!」

 

聞いてないわよ!

 

「いや、本当は昨日言おうと思ったんだぞ? なのにお前、電話に出ないし、部屋に行っても寝てるし」

 

「うっ」

 

そういえば昨日は今日の為の英気を養うために余計な誘いがこないよう携帯電話をの電源を切って、緊急事態以外起こさないでってティナにお願いしてたんだった。

 

って、これが緊急事態でしょうがぁあああああああああああ!!

 

「というわけで、今日はセシリアと楽しんできてくれ」

 

「……何が、というわけ、なのよ?」

 

「え? そこにセシリアいないか? 代わりにチケット渡したんだけど」

 

…………………………………………………。

 

こいつ殺してぇ……。

 

「っと、じゃぁ俺、山田先生に呼ばれてるから」

 

ブツッっとケータイが切れる。実にあっさりとしたものだった。

 

「あ、あの、鈴さん?」

 

「セシリア。一夏なら来ないわ」

 

「………一度そこでゆっくりと話し合いましょうか」

 

それだけで何かを察したのか、セシリアは落ち着いた声で優しくそう提案してくれた。

 

違う。何かを、なんて分かりきっていた。

 

あたしは携帯電話を握りながら泣き顔を晒していたのだから。

 

 

 

 

 

 

「つまり、今日のデートの発案者はデウスさん、と?」

 

「……うん。チケットくれるから一夏と行ってこいって」

 

ウォーターワールド内のカフェテリアで顔を突き合わせているわたくしことセシリア・オルコットと鈴さん。

 

聞くところによりますと、今日の一夏さんからのお誘いは彼にとってはデートでもなんでもなかったようだ。

 

「わたくしは鈴さんの為の穴埋めですか……」

 

「あたしなんて放置よ放置……」

 

わたくしは昨日、一夏さんに『ここに行かないか?』と誘われてチケットを頂き、デートのつもりで馳せ参じたわけなんですが、

 

「おかしいと思いましたわ。あの一夏さんが女性をデートに誘うなんて……」

 

「嘘付け。ものすっごい気合入った服着てんじゃん」

 

「それは鈴さんだって!」

 

今日のためにメイドのチェルシーとともに新品の服を厳選してきたのだ。想いを寄せる殿方とのデートにくたびれた古着を着る女性などいませんわ! 多分。

 

「どうする? 帰る? あたしとデートしてく?」

 

なんという二択。前者はともかく後者はありえないと思うが、どうやら彼女は本気で落ち込んでいるようだ。

 

「帰りましょうか。泳ぐ気分でもありませんし。どうせなら二人で買い物でもしましょう」

 

「そう、ね。どこか行こっか」

 

恋敵とはいえ鈴さんは大切な友人。落ち込んでいるときは元気にしてあげたい。自分だって傷ついているのだ。一緒に気分を盛り上げようとしてもいいはずだ。

 

二人でそう決めて立ち上がろうとしたところに、ちょうど良く館内放送が響きわたった。

 

『では! 本日のメインイベント! 水上ペアタッグ障害物レースは午後一時より開始いたします! 参加希望の方は十二時までに受付ください!!』

 

なんだ、ずいぶんと気合の入ったイベントね。そう思うだけで特に興味のなかった二人だったが、次の放送で飛びついた。

 

『なお、優勝商品は沖縄五泊六日の旅をペアでご招待!!』

 

「「これだ!!」」

 

ペアで沖縄旅行……ペア……わたくしと一夏さんで。これは……いける!!

 

帰る? それは勝利を勝ち取ってからですわ!!!

 

「鈴さん!」

 

「セシリア!」

 

「「目指せ優勝!!」」

 

ここに最強タッグが生まれた。

 

かもしれない。

 

 

 

 

会場となる巨大なプール。そこには二十人ばかりの女性の参加者が集まっていた。男? 参加お断りです。

 

「さぁ! 始めるわよ! 人呼んで、大女道! 女体! 激烈!! 超流、突破ぁあああああああ!!!」

 

「いえ、第一回ウォーターワールド水上ペアタック障害物レースです」

 

巨大なプールの中央で、かな~り奇抜で限界ギリギリな水着を着た女性がマイクに向かって声を張り上げる。それにすかさずツッコミを入れる司会のお姉さん。

 

「罪。罪。美しさは罪! わたしがこのミズーギ王国の女王、キャサリン・ナカタよ!」

 

「いいえ、ウォーターワールドのオーナー、中田さんです。それではルールを説明します。皆さんは水上に設置された障害物をプールに落ちることなく進んでもらいます。そして、ゴールのあのゴンドラにたどり着けたペアが優勝です!! ちなみに妨害はありです!!」

 

そう言う司会のお姉さんの指さすところ、件のゴンドラを見る。そこにはワイヤーで宙吊りとなった巨大なゴンドラが宙に浮いていた。どうやって行けと?

 

プールに設置された障害物を見てみよう。丸太を立たせて作られたもはや点でしかない足場の道、回る巨大ローラー、腕力が見せ所な雲梯(うんてい)、上面がガラス張りされた這って進む隙間道。申し訳程度に浮かんでる浮島。

 

「「「勝たせるつもりねぇ!!!!」」」

 

参加者一同の声である。

 

「さぁ挑戦者たち!! 見事優勝して沖縄五泊六日の旅を勝ち取りなさい!」

 

「無茶言うな、という声はスルーさせていただきます。それではスタートです!」

 

ワァッと声を上げて走り出す参加者たち。その中に、鈴とセシリアもいた。

 

「行きますわよ鈴さん!」

 

「足引っ張らないでよセシリア!」

 

走り出す二人。自分たち以外は皆敵なのだ。先頭に飛び出す。そこへ。

 

「行かせないわよ!」

 

他の参加者からの妨害が入る。丸太コースで相打ち覚悟で水中に落としに来た。

 

「って、なんの!!」

 

「きゃ!?」

 

躱して逆に落とす鈴。どうやらこのレース、妨害組と攻略組に分かれ始めているようだ。参加者を落とすことに専念するものや、脇目を振らずに走るものがいる。

 

「この程度、訓練に比べたらどうってことないわよ!」

 

普段マヌケを晒すことの多いIS学園の代表候補生たちだが、そこは腐っても国の代表候補。ISという軍事兵器を預かるものとしてきちんと軍からの訓練を受けている。その苛烈さに比べればこんなレースなど単なるレクリエーションに過ぎない。

 

「このぉ!」

 

「甘いですわ!」

 

足払いをかけに来た相手を躱し、腕をつかみに来た相手は逆に手を取って投げる。セシリアも善戦していた。しかしそれが却ってあだとなる。二人は目立ちすぎた。他の参加者は鈴とセシリアに集中して向かい始めた。

 

「おーっと! すごいすごい! 次々と他の参加者を蹴散らしていくこの二人ぃ! 彼女達は高校生ということらしいですが、何か特別な練習でもしているのでしょうか!?」

 

軍の訓練とはさすがに言えません。

 

「「こっから先へは行かせないよ!」」

 

次に現れたのは肌を健康的な小麦色に焼いた女性達。その体は鍛え上げられていた。割れた腹筋、カモシカのようなしなやかな足、そしてなによりも豊満なオパーイ。そのバディを見せつけるかのように、ハイレグの布地の面積が少ないきわどい水着を着ていた。

 

「ふん、いくら一般人が束になってこようが……」

 

「敵機の殲滅を優先する……テキキノセンメツヲユウセンスル」

 

「鈴さん!?」

 

どうやら目の前のビィッグオパーイに当てられてπ教団幹部の血が騒ぎ出したようだ。ここは彼女にとって既に戦場である。実は隣に立つセシリアもやばかった。

 

「さぁこの二人をどうする!? ビビアンとメリアン姉妹はオリンピックで活躍したメダリスト! 格闘技のプロです!」

 

「えぇ!?」

 

「なんでそんなのがいるのよ!」

 

現役を引退した選手の再就職先です。

 

どうやら優勝商品を渡さないようウォーターワールド側の用意した選手のようだ。

 

「行かせてもらいますわ!」

 

「セシリア! 足止めは任せなさい!」

 

「「させない!」」

 

セシリアと姉妹の片割れのメリアンが先に進む。そして互いを妨害する鈴とビビアン。このレースは先にどちらかがゴールにたどり着いたら勝利であるが、あのゴンドラに一人で渡れるすべも無く最終的にペアでの協力が必要だ。

 

「じゃぁ、ちゃっちゃと片付けさせてもらうわよ!」

 

「ふん、できる? お嬢ちゃん」

 

鈴の先制。ビビアンに近づき拳を繰り出す。しかし僅かにしかない浮島の足場なため思うように力が入らなかった。

 

「ふん!」

 

「か、硬い!?」

 

放った拳はビビアンの鍛えられた腹筋によって止められた。まるで分厚いタイヤを殴ったような感触。これではダメージは期待できないだろう。

 

「でも、今ので分かったわ!」

 

「何がだ!」

 

またも仕掛ける鈴。今度は拳を握らず開いて突き出す。

 

「こんな攻撃、もう一度弾いてやる!」

 

「その防御力の高さが仇となったわね!」

 

鈴はビビアンに攻撃を加えなかった。否、女にとって最大の攻撃を与えた!!

 

「巨乳ブラ、捕ったどーーーーーーー!!」

 

「きゃぁああああああああ!!」

 

またも腹筋に力を入れるビビアンをあざ笑うかのように、腹筋に伸びた腕をわずかに上方へずらしてそこにあるものを奪う。そう、ビビアンの豊満な胸を覆う水着のブラを!!

 

両手で胸を隠して動けなくなるビビアン。その水着を観客席へと放り投げる鈴。鬼だ。

 

「ふっ、これぞオパーイ撲滅殺法ブラ外し。我らが教祖様から賜った必殺拳よ」

 

「ぐっ、お、恐るべし。なんという流派だ」

 

いや、ただのヒンヌーの暴徒の集まりです。

 

「さーてセシリアに追いつかなくちゃ」

 

そのセシリア達はというと、

 

「くっ、思うように進めませんわ……」

 

「せ、せまい」

 

障害物の一つ、『狭き門』(ということにしておこう)で詰まっていた。これ、人がどうにか潜れそうな高さの棒で蓋をしたコースで、床と天井、そのわずかな隙間を這って進まなくてはならない、というものだ。

 

「なによあんなの!」

 

鈴もその『狭き門』へと飛び込む。するとどうだろう? 自分よりも遥かに早く攻略にかかっていたセシリアやメリアンにどんどん追いすがっていくではないか。

 

「あ、あれ!」

 

「あの子早い!?」

 

「そっか、抵抗がないから!!」

 

それを見ていた観客たちが驚きを込めて叫ぶ。

 

抵抗? 何それ? どこの部分?

 

「うっさいわねバカぁっ!!」

 

豊満なビィッグオパーイを兼ね備えた二人にどんどん追いつく鈴(ペターン)。実に早い。かなり狭いはずの『狭き門』も彼女にはなんの問題もないようだ(笑)

 

あっさりと二人を追い抜き、ひと足早く『狭き門』をクリアーする鈴。次点でセシリアが抜け出す。

 

「「ふふふ……」」

 

「ひぃっ!?」

 

出口でメリアンを待ち構え、出てきたところを捕まえる!

 

「「落ちろーーーーー!!」」

 

「いやぁああああああああああ!!」

 

ドポーン! と激しく水柱を上げながらメリアンが水中に没す。これで他の参加者は全て蹴落とした。

 

「後はあのゴンドラにどう飛び移るか、ですわね」

 

「うーん。あっ! そうだ! セシリア、中腰になってこっちむいて! バレーの構えみたいな感じで!」

 

「? こうですの?」

 

言われるまま、セシリアは鈴が言うとおり腰を落として両腕を前に揃えて出して彼女に向き合う。すると、

 

「うおりゃぁあああああああああああああ!!」

 

「えぇ!?」

 

鈴が走り出す。助走を付けた勢いのままセシリアに向かって。そして飛び、セシリアの手、顏を踏んで一気にジャンプする。

 

「ぶっ!」

 

「あの技は!?」

 

司会のお姉さんが叫ぶ。

 

「女体、天空翔!!」

 

キャリン・ナカタが驚愕の声を上げる。そんな技あるの?

 

「届けぇええええええええ!!!」

 

跳躍。それは高い場所にセチされたゴンドラに届くほどの高さを生み出した。

 

そして着地。

 

「よっしゃぁああああああああああああ!!! 優っ勝ぉおおおおおお!!!」

 

勝どきを上げる鈴。あがる歓声。今まさに会場はわいていた。………一人を除いて。

 

「よくやったわ挑戦者! あなたたちにはこのミズーギ王国の名誉市民としての称号を与えるわ!」

 

「いいえ、沖縄旅行五泊六日の旅ですオーナー」

 

相も変わらずぶっとんだことを言うキャサリン・ナカタことオーナー中田。そしてツッコミを入れる司会のお姉さん。大丈夫かここの経営。

 

「やったわよセシリア!」

 

「……鈴さん」

 

ゴンドラの上から鈴がセシリアに話しかけるが彼女の雰囲気は暗い。せっかくの勝利だというのにどうしたんだろうと思うと、

 

「よくも、よくもわたくしの顔を踏みつけましたわねーーーー!!」

 

憤怒の表情で『ブルー・ティアーズ』を展開させるセシリア。

 

「な、何よ! やるっていうなら相手になってやるわよ!」

 

こちらも『甲龍』を展開させる。

 

「な、なんとISだーーー! 二人はIS学園の生徒なんでしょうか!? というかお願いだからやめてーーーー!!!」

 

「「喰らえやコンチクショー!!!」」

 

ブルー・ティアーズを、衝撃砲を構える二人に絶叫を上げる司会のお姉さん。今にも大惨事かというこの状況。そこへ、

 

 

『止めんかこの阿呆共がぁああああああああああああああ!!!』

 

 

何か降ってきた。

 

「「きゃぁあああああああああああああ!!」」

 

プールの水を観客席まで吹き飛ばすほどの衝撃、それだけの質量を持った『物体』が空から降ってきた。それは今まさにISで暴れようとしていた二人の間に割って入るもので、見事その戦闘を未然に防いでいた。

 

「な、なに!?」

 

「あれは!!」

 

そこに居たのは鋼鉄の巨人。全身を機械の鎧で覆ったメカメカしいその姿。手足は箱のように四角く、角張った装甲にヘルメットのような頭部と額の角。

 

「テ、テンガイオ」

 

「「「エルドラ5だぁあああああああああああああああ!!!!」」」

 

「えぇええ!?」

 

セシリアの言葉をかき消すよう上がる観客席からの歓声。その殆どがチビッ子たちとお父さんだ。

 

「あ、あれはまさか!?」

 

「知っているのですか鈴さん!?」

 

背中に広がる一対の翼、胸には鳥の頭の意匠を備えたスーパーロボット。その名は!

 

「エルドラ5(ファイブ)!!」

 

「……なんですのそれ?」

 

ひと目で断言する鈴とそれでもわからないセシリア。これぞ文化のいや、国の壁か。

 

『このウォーターワールドで悪事を働く悪党め! この勇者の力、とくと受けよ!!』

 

ジャキーン! とポーズを決めて叫ぶエルドラ5。

 

「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 

観客もノリノリである。

 

『はぁ!!!』

 

エルドラ5が天高く飛ぶ。

 

「あの技は!?」(本日二度目)

 

『フリーフォール・グラッチェ!!!』

 

空中からプールへと急降下を果たしたエルドラ5がISを纏った二人をまとめて吹き飛ばす。

 

「きゃぁああああああああああ!!!」

 

「自由落下ありがとーーーーーー!!!!」

 

セシリア、鈴。まとめてプールからさようならである。

 

『悪は去った! みんな、三時からのエルドラヒーローショーもよろしく! とうっ!』

 

観客席を見渡すようにしてから叫ぶエルドラ5はそのまま流れるようにカッコイイポーズを見せて飛び去っていった。

 

「「「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」

 

さよならエルドラ5! ありがとう正義の勇者エルドラ5! ヒーローショーでみんなと握手だエルドラ5!

 

「な、なんだったんですの?」

 

「さ、さぁ?」

 

吹き飛ばされ、会場の外の木々に引っかかっているセシリアと鈴だった。

 

ドンマイ!

 

 

 

 

『で? 何やってんだお前ら?』

 

「「それはこっちのセリフよ(ですわ)!!」」

 

デウスの手によって回収された鈴とセシリアの二人は、そのまま着替えて近くのベンチで缶ジュースを飲んでいた。(デウスの奢りである)

 

一夏はどうした? という質問はもうした。しかし返事はない。虚ろな顔で押し黙っているままだ。

 

ふむ、

 

『俺はここでバイトしてるの。見たろ? エルドラ5だ』

 

今はバイト用の姿、人間モードのデウスが言う。Tシャツに作業ズボンとラフな格好で、これを人間でないと言われて信じるものがいるだろうか?

 

「あぁ、だからここのチケット」

 

「あの、エルドラ5ってなんですの?」

 

納得する鈴と、そもそもエルドラ5を知らないセシリア。

 

「教えてあげるわセシリア。エルドラ5っていうのは日本で放送されてる特撮ヒーローのことよ」

 

「と、特撮ヒーロー?」

 

そう、エルドラ5。それは日本の特撮を代表する伝説のヒーロー。五人の若者達が悪のザウルス帝国と戦い、巨大なスーパーロボット、エルドラ5に乗り込んで戦う映像作品である。

 

その歴史、実に四十年に及ぶ!

 

「四十年も!?」

 

「しかも凄いのは、今でも当時のキャストが現役のヒーローでいることよ」

 

「今何歳ですの!? 四十年も現役!?」

 

「ちなみに今放送されてるのは『エルドラ5 マックスシルバー40!』よ」

 

「それ絶対に色のことじゃないですわよね!? 年齢がシルバーなんですよね!?」

 

『最高年齢六十八歳だ。凄いだろ? うん』

 

凄すぎますわ!!

 

「そ、そのエルドラ5のショーがここで?」

 

『あぁ、俺もロボ役で出る。お前らも来るか? 入場無料だし『本物』も来るぞ?』

 

「え!? それ本当!? いくいく! 絶対に行く!!」

 

「り、鈴さん!?」

 

 

 

 

ウォーターワールド内のドーム型の施設。天井がシアターとなっておりここで映像を映したりする。今ここには百人ほどの客が入っていた。皆正面のステージを見ている。

 

「「「五体合体! エルドラ5!!」」」

 

ドォオオオオオオン!!! という爆発と共にステージに立つ三人、失礼。四人の人影があった。

 

「キャーーーーー!! エルドラ5ーーー!!」

 

「お、落ち着いて鈴さん! それにしても本当におじいさんばかり……」

 

ステージいる男性達。彼らはどれも老骨、と言っていい年齢ばかりだった。ビール腹が目立つ赤いスーツを着た者。腰の曲った長身で青いスーツを着た細身の者。体が大きく、背が一番高い黄色いスーツを着た者やその彼に背負われた寝たきりの緑のスーツを着た者。

 

皆老人だった。

 

「赤いのが自称リーダーのネロ。青いのがニヒルなホセ。黄色が冷静沈着のバリヨ。緑が天才カルロス。エルドラ5のメンバーよ!!」

 

「あの、緑のおじいさんが寝たきりなんですが?」

 

「カルロスはもう三年間寝たきりよ」

 

「はぁ!?」

 

いろんな意味で心配だった!

 

「最近起きてられなくなってきてるみたい。だから目が覚めてるときの放送は例外なく神回って言われてるわ」

 

「き、奇跡ですわ。あら? そういえば5なのに四人しかいないような?」

 

人数に疑問に思うセシリア。エルドラ「5」なのに四人しかいない(しかも一人は寝たきり)これ如何に。

 

「チームリーダーのチヅルメンバーなら死んだわ」

 

「死んだ!?」

 

何故? まさか撮影中の不幸な事故が?

 

「ううん、老衰。御歳六十五歳、大往生だったわ」

 

「あぁ………」

 

「しかも死に際に放った、『この世に悪が栄えども勇者の魂は不滅なりぃ!!』という名言は今もファンの心を掴んで離さないわ……」

 

「なんですのそれ!?」

 

「まぶたを閉じれば思い出すわ……あの天に拳を突き上げて、立ったまま逝ったチヅルメンバーの勇姿を。あの姿に感動して、全国のファンのおじいちゃんおばあちゃんが後を追うようにして死んでいったわ……」

 

「どこの世紀末覇王ですか!!!」

 

とんでもないばぁさんだった!! 

 

リーダーの死。それでも彼らエルドラチームは立ち上がる! なぜならば!!

 

「エルドラ5は戦い続けるわ! 世界と! 悪と! 痛風とリウマチと腰痛と!」

 

「半分完全に悪人関係ないですわよね!?」

 

ただの不摂生だった! しょうがないか! おじいちゃんだし!

 

そうやってセシリアと鈴が漫才を繰り広げている間にもショーは続いていく。

 

「はっはっは!!! 死ねぇいこのジジイ共! 今日が貴様らの年貢の収めどきだ!!」

 

「ぬぅ! ザウルス帝国め! 巨大ロボを引っ張り出してきたかぁ!!」

 

気が付けば随分と佳境に入っていた。

 

メンバーのネロ老が叫ぶ。ステージには巨大な悪役ロボットがいた。爬虫類のを思わせる頭部に全身が自由自在に動くチューブに覆われている。

 

なにこの技術? 完全にヒーローショーの出し物に使われる小道具の域を超えていた。

 

「くっ、おのれ悪党め! ならばこちらも!」

 

「行くぞ!」

 

「おぉ!!」

 

会場が叫ぶ。

 

『『『レッツ、Go!! エルドラドーーーーー!!!』』』

 

その瞬間、会場の証明が落とされ暗闇と化す。ドーム状の天井に3D映像が映し出される。そこには。

 

「キタキタキターーーーー!!」

 

「な、なんですの?」

 

「ふっ、よく見ておけ若いの」

 

「え、誰ですの?」

 

隣に見知らぬ中年男性がいた。テキサススタイルのポリスメンのコスプレをしていた。

 

「あれが、あれこそが! 伝説の、勇者の、魂だぁ!!!」

 

現れる四体の戦闘機。飛行メカのグランヘッダー。鳥型メカのボディガンダー。爆撃機のパワーハンダー。戦車のナイスフッターが会場内を舞う。(映像だが)

 

そしてその四体は次々と合体していき……

 

ピカァア!!! と閃光が会場を包む。

 

「五体合体! エルドラ5!!!」

 

ネロの叫びとともに、会場を包み込んでいた光が消えた頃にはステージに立つ姿が二つ。

 

ザウルス帝国のロボットと、合体したエルドラ5である!

 

「いや、五体合体って、四体しか……」

 

ステージには四人の老人はいなかった。代わりに立つエルドラ5も背中の翼がなく、額の角も小さめで顔を覆うフェイスガードもなかった。

 

二体の巨人が戦う。

 

『おおぉお!! エルドラ・フィスト!!』

 

ネロが叫ぶ。姿が見えないのでどこかでマイクで喋っているのだろう。エルドラ5(デウス)はナックルガードをはめた左腕でザウルス帝国のメカに殴りかかる。しかし、その拳は幾本ものチューブに絡め取られてしまう。

 

『なんと!?』

 

「ふん、そんな無駄な合体システムなんて!!」

 

チューブがエルドラ5を捉えたまま襲う。連続の攻撃を何度も叩きつけられ機体が損傷していく。

 

「あぁ!」

 

「エルドラ5が!?」

 

観客たちの悲鳴が会場内をこだまする。というか、みんなノリノリである。

 

「くっ、やはり完全ではないか……」

 

「そうね……」

 

「ど、どういうことですの?」

 

中年男性と鈴は何かを察していた。わからないセシリアが尋ねる。

 

「エルドラ5はその名の通り五体合体! 今の彼らにはもう一機分、パワーもエネルギーも足りないのだ!!」

 

「そ、そんな! その一機とは……」

 

「今は亡きチヅルメンバーの、ピンクアミーゴだ!!!」

 

その時、ゴゴゴゴ!! という音とともに会場の観客席の中心の床から何かがせり出してきた。

 

「こ、これは、ピンクの鳥さん!?」

 

「おぉ!! みんな、これをエルドラ5に届けるのだ!!」

 

現れたのはピンク色をした巨大メカ鳥だった。それがカートの付いた台座ごと床下からせり上がっていた。観客を巻き込んだ演出である。要するにこの男、スタッフの回し者であった。

 

「どいて!」

 

鈴が自分のIS『甲龍』を纏って飛び出す。

 

「どっせーーーーーい!!!」

 

なんと、ISのパワーアシストをフルに発揮し、観客総出で運ばないと動かないモノをたった一人でステージへと投げ飛ばした。色々と台無しではあるが、

 

「こ、これは!? 第1999話 『蘇る翼! エルドラ5』の再現か!?」

 

……結果オーライのようである。というかなんだその話数は。

 

「行けえええええ!!」

 

ピンクアミーゴはステージで戦うエルドラ5のもとへ一直線へと進んで行き、空中で変形してその背中へと合体した。

 

『揃ったァ!!!』

 

エルドラ5の背中に一対の翼が広がり、額の角が大型化、顏もフェイスガードで覆われる。そしてフルパワーの余剰熱で機体の塗装が剥げてその色を金色へと変えてゆく!! これこそがエルドラ5の真の姿である!

 

「ふ、ふん! 補給ユニットも古臭い! 進歩がない!!」

 

ザウルス帝国のメカが履き捨てるように言う。しかし、

 

『若いな、若造』

 

「な、なに!?」

 

『進歩とは』

 

『機械と、人の心の…』

 

『合体だ!!!』

 

老人たちが言う。(カルロス以外)

 

そう、それこそが、勇者の魂だ!

 

『アレをやるぞ!』

 

『アレか!』

 

エルドラ5が両手を広げる。

 

『エル・インフェルノ……』

 

左右の拳が赤熱し、真っ赤に染まる。その拳を前に突き出して組み、そのまま突っ込む!!

 

『イ・シエロ!!!!』

 

「ぐわぁああああああああああああああああああ!!!」

 

突き刺さったエルドラ5の拳はザウルス帝国のメカをまっぷたつに引き裂いた! そして爆発、炎上。ステージを巨大に火柱が立つ。明らかにスタッフが火薬の量を間違えている。

 

『アーーディオース、』

 

「「「ア、ミーーーーッゴ!!!!」」」

 

爆発を背にし、エルドラチームが、観客たちが一緒になって決めゼリフを言う。

 

「やっぱりエルドラ5最高だ!! グラッチェ!!」

 

あの中年男も涙を流しながら叫ぶ。なにせ四十年間続いている番組だ。きっと彼も子供の頃からのファンなのだろう。

 

「終わりましたけど……意外とあっさりなラストでしたわね」

 

「ショーなんてそんなもんよ。それに、おじいちゃんたちももう年だし」

 

「ですよねー」

 

こうしてエルドラショーは終わった。

 

 

 

 

 

控え室。

 

「お疲れだな若いの。よくやった!」

 

『はぁ、どうも』

 

チームリーダー(仮)のネロ老がデウスの背中を叩いて激励する。ショーが終わって皆で打ち上げの最中だった。

 

「お前さん、なかなか見どころがあるな。どうだ、ワシらの弟子にならんか? ん?」

 

『あぁいえ、そんな』

 

ホセがデウスの肩に手を乗せて言う。さり気なく手にもったビールのビンをデウスのコップにつごうとしていた。

 

「ほれ、タコスを食え。タコスは体にいい」

 

『あ、ありがとうございます』

 

バリヨがタコスを持ってデウスにしきりに進めていた。ゴメンナサイ、食べれないんです彼。

 

カルロスは、寝てますね。

 

「す、すごい! エルドラチームが勢ぞろいしている!!」

 

「さっきから鈴さんのこの興奮っぷりは一体……」

 

デウスに招待された鈴とセシリアはこの関係者以外立ち入り禁止の控え室に来ていた。そこで鈴は本物のエルドラメンバーに会えたことで感激していた。

 

本物、である。なんとここにいるメンバーは、中身が違う戦隊ヒーローショーとは違い、本当に本物の役者たちなのだ。

 

「おぉ? 嬢ちゃん、俺たちのファンなのか?」

 

「はい! 子供の頃から見てます!」

 

「嬉しいな。こんな老いぼれでも頑張れるってもんよ」

 

「あぁそうさ。俺たちはまだまだ現役だ」

 

『いや、さすがにそろそろ引退しろよじーさん。この間もぎっくり腰で唸ってたろうが』

 

「えぇぇ!?」

 

デウスの言葉に驚く鈴。しかし不思議なことでもない。実際、高齢な者たちばかりなのだ。いつポックリ逝ってもおかしくなかった。

 

「それならお前が、いや、お前たちがワシらの後を継げ」

 

『はぁ?』

 

「え、あああたし達が!?」

 

「そうじゃな。なんたってワシらの弟子だからな。エルドラ・デウスと縁の下の力任せリンの誕生だな」

 

「うむ。それでいい。勇者の魂を受け継ぐんだぞ」

 

『やめてくれよじいさん、いやほんとに』

 

なんかもうめんどくさかった! あえて伏せてたけど、こいつらもう酔ってるし! 酒飲みすぎでベロンっベロンだし!! 絡み酒うぜぇ!!

 

「はいはい!! ほらおじいちゃん達! 若い子を苛めないの! もう今日のお仕事はおしまいだから、ゆっくり休んで。もう年なんだから」

 

「なによユキコ~。年寄り扱いしおってからに」

 

そこへ思わぬ助け舟が入る。

 

「あら、貴方達は……」

 

「「ど、どうも」」

 

プールで司会をしていたお姉さん。ユキコさんがエルドラじいさん達を黙らせる。そして鈴やセシリアにも気づいた。

 

「さ、先程は申し訳ありませんでした」

 

「ごめんなさい」

 

ユキコに謝る鈴とセシリア。それを彼女は、

 

「ふふ、いいわよもう。デウス君が止めてくれたし、ショーの宣伝にもなったから。でも、あんまりオイタしちゃダメですよ?」

 

「「反省しています」」

 

「はい、よろしい。それじゃデウス君、おじいちゃん達は私が引き取るからもうあがっていいですよ。今日はお疲れ様」

 

『ありがとうございます。ほら鈴、セシリア。お前たちももう帰るぞ。いつまでも邪魔しちゃいけないからな』

 

「あ、うん。それじゃぁ、ショー楽しかったです」

 

「お体をお大事に」

 

デウスに連れられて控え室から出る。三人はそのままIS学園に向かって帰路についた。もう時刻は夕方を指していた。

 

思えばずいぶんと楽しんでいたものだ。今日あった『嫌な』ことなど忘れてしまっていたほどに。

 

『ユキコさんはな、亡くなったチヅルさんのお孫さんなんだそうだ』

 

「そうなんだ。似てると思った」

 

「それでここでお仕事を?」

 

『あぁ。ばぁさんの残したものを守っていきたいんだってさ』

 

IS学園への帰り道、デウスは二人にバイト先のことを話していた。最初は力作業でバイトをしていたが、自分が『テンガイオウ』という姿に変身できること、それがエルドラ5によく似ていることがこの配役を任せられるきっかけになったこと。自分が機械だということは説明をする必要がないと言われて話してない。勇者の魂を持つものならば細かいことは気にしないとだ。

 

『器がでかいのか大雑把なのかわからんが、ある意味じゃ尊敬できる勇者バカのじいさん達だよ』

 

「そりゃそーよ。だってあたしたちの子供の頃からいる勇者たちだもん!」

 

「ふふっ、そうですわね」

 

鈴にとっては子供の頃から好きだったヒーローだ。セシリアも知ったのは今日だがそれで十分なほどの物を見ることができた。

 

『それで? 結局お前たち、一夏はどうしたんだ? セシリアが俺のやったチケットを持っている時点で大体の察しがつくが……』

 

聞いた。それは二人には話しづらいこと。しかしデウスにとってはどうしても確認をとっておきたいことだ。

 

なぜならば、織斑一夏の人となりを知ることこそが真季奈にとって重要になるからだ。

 

「実はね………」

 

鈴とセシリアがためらいがちに話す。

 

それを聞いて、デウスは。

 

 

 

 

 

 

「あー、つっかれたぁ。でも結構充実した一日だったなぁ」

 

織斑一夏は疲れていた。

 

山田摩耶が連れてきた研究員とデータ取りをおこなって気が付けばお昼を過ぎ。その後シャルロットやラウラに誘われて模擬戦を行うこと数時間。気が付けばもう夕ご飯を食べるような時間だ。一日中体を動かしていたことになる。

 

「鈴には悪いことしたなぁ。でも代わりにセシリアと一緒に遊べたんだし、あいつも暇しなかったから大丈夫だよな?」

 

それに鈴だって何回も電話しても出ないし寝てるし、あいつにも責任あるよな。まぁ今度なにか埋め合わせに奢ってやればいいか。ただ財布が心配だなぁ。あいつ、容赦ないからなぁ。

 

「にしても志波さんの弁当、美味かったなぁ。く~っ! 早く補習終わらせて家に帰りてーー!!」

 

『今のお前をあの家に帰すわけにはいかないな』

 

「え?」

 

バキィィ!!

 

「へぶぅ!!」

 

い、てぇええええええええ! 殴られた!? なんで!? 

 

「だ、誰だ!?」

 

『俺だよ』

 

織斑一夏を殴ったデウスは、もう一度拳を握りしめる。

 

「デウス!? なにすんだ」

 

『いいから』

 

 

 

『殴らせろこのクソ野郎』

 

 

 




はい、ゴメンナサイ。

エルドラⅤではありません。あくまでもエルドラ5です(言い訳)

ガン×ソードが好きなんですよ。

エルドラショーに使われたドーム状の会場、これは東京、お台場にあるダイバーシティーで僕が見てきたDOME-Gという設備のものを参考に書かせていただきました。あれの巨大版と思いください。

天井を縦横無尽に飛び交うMSの姿に感動しつつ、それを追って首を回し続けるのがとても大変でした(笑)

さて本編での織斑一夏ですが、僕は最低の部類だと思います。

女の子との約束をなんだと思っているのやら。

なのでデウスに殴らせました。いいですよね?

そして真季奈(白)の出番が全然なかった! 

次回、一夏をボコりつつ、真季奈(白)をもっと出せればなと思っております。

それではまた。



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