織斑一夏に激怒したデウス。最近織斑一夏が気になる志波真季奈。
どうなるでしょうか?
それではどうぞ。
注:ギャグ回です。ギャグキャラ補正がかかっているので注意を。
織斑千冬はIS学園の廊下で悩んでいた。
今日、志波真季奈が通う病院の担当医から呼び出しを貰い、それに答えて足を運んできたのだが……。
「真季奈……お前は……ん?」
離せよ! 離せって! うるさい、黙って着いてこい。
なにか廊下が騒がしかった。その騒ぎの元が近づいてくる。
「なにをやっとるんだお前ら?」
そいつ等は自分の弟と弟分のような機械人間、デウスだった。
デウスが織斑一夏の首根っこを掴んで廊下を引きずりながら歩いている。
『あぁ千冬、ちょうどいい。アリーナを使いたいんだが今どこか空いていないか?』
「アリーナ? 何をするんだ?」
千冬姉ぇ! デウスに離せって言ってくれ!
『この馬鹿がちょっとオイたをしたんでな。徹底的にボコりたいんだ』
ボコるって何!? 何すんのお前!!
「穏やかじゃないな。何をしたんだこの馬鹿は?」
バカって言った! しかも何かしたの前提なの!?
『女。泣かした。無自覚で』
「おk。把握。第一アリーナを使え。この後予定があるから三十分間だけだ。それで、どれくらい痛めつけるつもりだ?」
千冬姉ぇ!?
『すまんな。とりあえず全身打撲で全治一週間くらいにする。あぁ、もちろん真季奈にバレないようにボディー多めで』
お前それイジメっ子の発想ですよ!? 二人して俺を痛めつける算段を話すの止めてくれませんかねぇ!!
「なんだつまらん。どうせなら腕の一本や二本くらい折ってしまえばいいだろ」
あんた何言ってんの!? それでも姉か!
『……そんなことをしたら真季奈にまた大嫌いって言われちゃうじゃん……』
「……あぁそれは嫌だなぁ……」
つまり。
「「お前が悪い」」
俺が何をしたぁあああああああああああ!!!
というわけで第一アリーナ。
『さて、始めるか』
「もうどうにでもなれってんだチクショウ!!」
アリーナのフィールド内に二人は立っていた。デウスは『テンガイオウ』を展開していたその姿は一対の翼、胸に鳥の意匠、全身の色がが黄金、オレンジ、青といったエルドラ5のそれだった。織斑一夏も『白式』を展開している。
「……なんでエルドラ5なんだ?」
自分が子供の頃から見ているヒーロー番組の主役ロボットが目の前にいた。どうやら機体の外観設定をいじっているらしかった。前々から似ているとは思っていたがまさかそのまんまにしてくるとは……。
というか、エナジーウイングとか因果王砲とかはどこに行ったんだ?
『ちょっとバイトでな。それに、お前にはこれで十分だ』
「んだと!?」
二人はフィールドの中央で一メートルほどの距離をとって向かい合っている。織斑千冬は観客席に座って事の成り行きを見学していた。手を出すつもりも、口を挟むつもりもないらしい。
『さて、始める前にひとつ聞いておくことがある。お前、今日の鈴とのデート。用事ができたのなら何故ちゃんと断らなかった?』
「? なんだよデートって?」
『……まずは一発目だな』
ドウッ! と各部のスラスターを吹かせて『テンガイオウ』が一夏に迫る。握り締めた右拳を織斑一夏の顔面に叩き込んだ。
「ぶほっ!?」
それはまさに奇襲だった。会話の途中でなんの身構えもないまま一夏はそれをくらった。ISの持つ『絶対防御』の機能のおかげで致命傷にはならなかったが、ある程度の痛みと衝撃があった。
「な、なにす」
『お前は自分に好意を向けてくれている女性の気持ちについて、深く考えたことはあるか?』
髪の毛を引っ掴んで顔をあげさせる。デウスの冷たい緑色のデュアルアイの相貌が織斑一夏を見下ろしていた。
『お前とウォーターワールドに行くと言ってた時の鈴やセシリアの顔を思い出してみろ』
ふ、二人の顏……?
「そ、そりゃぁちょっと赤らんでいて挙動不審だったけど……風邪でも引いてたのか? それで無理して約束守ってくれてたとか……?」
『ちっ、二発目ぇ!!』
ドガァ!! 掴んでいた髪を離して腹を蹴り飛ばす。その衝撃で織斑一夏の体は宙を舞い、二回、三回と回りながら落ちていった。
「げほっ! がはっ! はぁっはぁーーー!! な、何するんだよ!?」
『お前は鈴と! 何年の付き合いだ!? 今まであいつの何を見てきた!! ただ横でニコニコしているだけの上辺の付き合いでしかなかったのかお前らは!?』
上辺!? ふざけるな!!
「お前に俺達の何がわかるんだ!! 俺達はいつだって一緒に遊んで、助け合って! 俺と鈴と弾が集まりゃなんだって……」
『…まだそんなことを言うのか! お前は!? だからお前は……』
『テンガイオウ』の胸の鳥がクチバシを開く。そこに集まるは粒子の塊。右腕に装備されていた『因果王砲』。それは誰知らず内に胸部へとその砲口を移されていた。(でないとエルドラショーで両腕使った必殺技撃てないし)
胸の前で球状に形成されたエネルギーの塊を両手で挟み込むようにして構える。
『阿呆なのだ!!』
容赦なく撃った。
「ぎゃあああああああああ!」
爆発。放たれた光弾は寸分たりとも狂うことなく織斑一夏へと叩き込まれた。
『なんでそこで五反田弾が出てくる!? 俺は貴様と鈴、男と女の話をしていたはずだ!!』
「げほっぐぇ! お、男と女? なんだよそれ! それじゃまるで」
『その『まるで』の話をしていると何度言えばわかる!』
ドガ! バキ! げし! 殴る、蹴る、踏み付ける。徹底的に痛めつける。そこに躊躇などない。
『貴様のその無自覚さが女を泣かせる!』
女を、泣かせる……? 誰のことだ?
「え? えと、誰の……?」
心底わからないという顔をする唐変木男。実に腹が立った。
『鈴とセシリアのことだ! それが巡り巡って真季奈も泣かせることになる。だから、』
織斑一夏の首を掴み上げる。自分の目の前へと持ち上げて睨みつけた。
『その捻じ曲がった性根、叩き直してくれるわ! このクソガキが!!』
「うわっ!?」
一喝し、投げ捨てる。織斑一夏は地面に叩きつけられ地を転がる。
「好き勝手言いやがって!! だったら俺だって!!」
織斑一夏は間近に迫るデウスの顔を睨みつけながら『雪片弍型』を握る手に力を入れる。ISのシールド・バリアーを相手のエネルギーを消滅させて無効化させる『白式』の能力。すなわち『零落白夜』を備えた剣。
「うおぉおおおおおおおおおおお!!」
雪片を振りかぶり、デウスへと向かっていく。その振りは見るに耐えない乱雑なもの。姉の織斑千冬や篠ノ之箒のような洗練されたものには程遠く、チャンバラ以下の代物だった。それがただ立っているだけのデウス、『テンガイオウ』をめった打ちにしていく。
それだけだった。
『ガキがっ! そうやって駄々をこねてオモチャを振り回す甘ったれが!! お前は千冬にモノを考える頭も養ってもらっていないのか!?』
ボキャっ!
「がはっ」
自分の身体を削っていく雪片の殴打を無視してデウスは右の拳を織斑一夏の腹部に叩き込む。渾身のボディブローは彼の体をくの字に折って沈めた。
そんな無様な織斑一夏を心底見下しながら見下ろしてデウスは言う。
『……そうか『甘ったれ』か。お前、今まで千冬に養われて、守られて、そんな環境に依存して自分で考えることを放棄していたな? だから自分や千冬のことに関してだけ目ざとく、周りには必要以上の関心を寄せなかったんだろ? お前、本当は千冬以外に腹を割って話せる友達なんていないんじゃないか?』
「ふ、ふざけるな! 俺には大事な友達がいっぱいいる!! そんなことお前に言われてたまるかよ!」
『だがお前は、肉親である千冬がIS学園で働いていることも知らず、姉が優勝までした大会のISという装備のことを何一つ知ろうとせず、鈴やセシリア、箒達のわかりやすい想いにも素知らぬ顔で過ごす。お前、何を見て生きているんだ?』
「そ、それは」
確かに自分は何も知らない、知ろうとしなかった。織斑一夏はそう思った。IS学園になし崩し的に入学し、そこで姉が教員をしていることも、ISの世界についての基礎知識も知らなかったことに気づいた。鈴たちが自分のことをどう思っているか問うことには本当に心当たりがないのだけれど、それはやはり自分が彼女たちのことを何も見ようとしていなかったのかもしれない。何故なら自分は……。
『お前の世界は千冬との織斑家の中だけで完結している。それはシスコンなんて話じゃない。お前、本当は他人と関わるのが怖いんじゃないか? ……お前を捨てた顔も知らない両親のように、いつか自分から離れて行くんじゃないかと思って』
「!? う、うわぁあああああああああああああああああああ!!!!!」
両親。その言葉ではじけた。まるでその言葉を全て叩き出して消してしまうかのように我武者羅に拳を振る。ガン! ガン! ガン! 何度も殴打される拳をデウスはただ黙って受ける。受け続けた。
「黙れ! 黙れよ!! 俺は親のことなんざ知らない、知らないんだよ!! あぁそうさ怖いさ! 仲良くなった友達がいなくなることが怖くないわけないだろ!? 俺をひとりぼっちにしないでくれよ!!」
そうだ、本当は気づいていたんだ。小学校の授業参観。友達がそわそわしている様子や、親が来た瞬間のあの気恥ずかしいような嬉しいような感覚。あれがずっと羨ましかった。千冬姉ぇが親代わりで来てくれたこともあったけど、忙しい、用事があるとかいう理由で来れない日も多かった。そういう日は決まって惨めな思いをした。
箒が転校したこともそうだ。篠ノ之家の人達と家族ぐるみで仲良くなって、道場に通うようになって、親父さんやおばさんが本当の親みたいに思えてきて嬉しかった。なのに、ISが、『白騎士事件』が全部ぶち壊した。箒は転校して、篠ノ之家の人達は一家離散。俺はまた『両親』を失って友達もいなくなった。
だから鈴が転校してきて、仲良くなってもいつも一歩引いていたんだと思う。だってまた離れて行くんじゃないかと怖かったから。ISについて何も知らなかったのも、それは知りたくなかっただけ。俺から『家族』をいつも奪うから。篠ノ之家の皆、大会に出ていつも家にいない姉。ISなんてくそくらえって心のどこかで思っていたんだと思う。
そして俺は誘拐されて助けられた後に今度は鈴が俺の前から居なくなった。もう嫌だった。みんな、みんな俺の前からいなくなる? なんで? 俺が『世界最強』の弟だから? その足を引っ張る邪魔者だから? だから両親も捨てたのか? 他のいなくなった人たちもそうだったのか?
嫌だ。いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!!
俺を一人にしないでくれ! 傍にいてくれよ!! 寂しいのは嫌だよ!!
そして出会ったんだ。自分を見てくれる人を。いつも俺のことを叱責し、殴打し、尻にしく存在。『彼女』の存在が俺を肯定してくれる、離さないでくれる。
だから。
「それでも俺は志波さんが好きになったんだ! 志波さんがいれば、傍にいてくれれば俺は安心できるんだ! 俺は、俺は一人ぼっちじゃなくなるんだ!!!」
『それが本心か、この甘えん坊』
バキィイイイイ!!!! 織斑一夏の顔面に渾身の右ストレートが炸裂した。織斑一夏の殴打などものともせず放たれたその一撃は彼をまたも殴り飛ばした。
「げほっ、がはっ」
『なるほど、お前に必要なものがなんなのか分かった』
「え?」
パアアア、と『テンガイオウ』の周りに緑色の粒子が集まりその身を包んでいく。光が消えた頃にはその場にいたのは人間の姿をしたデウスがいた。
『お前に必要なのは、ゲンコツを入れてやれる誰か、だ。教師としてでも、姉としてもでもなくな』
「それって……」
目の前にいるのは見慣れたアニキの姿。自分よりも背が高く、年上に見える男。デウスが拳を握り締めて近づいてくる。
『歯を食いしばれ』
……は、い?
ゴチィイイイイイイイイイイン!! 脳天をかち割らんばかりの拳骨!!
「いってぇええええええええええええええ!!?」
『まず一つ。もっと他人の気持ちを察せられる男になれ』
ゴチィイイイイイイイイイイン!!
「あべし!」
『二つ。周りの女をちゃんと異性として見てやれ』
ゴチィイイイイイイイイイイン!!
「ひでぶ!」
『三つ。惚れさせた責任はちゃんと取れ!!!』
「わ、わかりました………」
殴られた頭を抑えてうずくまる。それはまるで悪さをした子供が親に叱りつけられているよう。織斑一夏の人生では初めてのこと。
『わかったらさっさと謝ってこい! この馬鹿もんがぁああああああああああああ!!!』
「は、はいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
脱兎のごとく駆け出す鈍感野郎。きっちり謝ってくるまで帰ってくることは許さん。
『さて、と。あのガキ、ちゃんとわかってるんだろうな?』
「さぁな。あれでは叱られたからとりあえず慌てて謝りに行っただけだからな。精々、しどろもどろになりながら情けない弁明をするのがオチだろう」
観客席にいた織斑千冬が後ろにいた。事が終わったので話でもしにきたのだろう。
『すまんな。お前の弟、胸くそが悪かったから私的に殴らせてもらったぞ?』
「構わんさ。あいつの女関係の問題は私も疲れた。お前が処理してくれるのなら願ったり叶ったりだ。それに、私ではああもはっきりと叱れなかった。ありがとう」
『しかし、俺も口下手な方だからあんな言い方しか出来なかったが、アイツは鈴達の恋心に気づくんだろうな? これで分からなければもう脳に問題があるとしか思えんぞ? 俺も野暮なこと言いたかないし、出来ることなら当事者の間でケリを付けて欲しいしな』
「………多分、きっと、恐らく、大丈夫だと思う……。やっぱり育てかた間違えたかなぁあああああ」
『……お前はしっかりやってるさ。ちゃんと一夏のことを弟として見れているよ』
「だが、私は親にはなってやれなかった。先生……篠ノ之の親父さん、柳韻(りゅういん)さんもやはり他所の子として接していてきつく叱ることもできなかった。やはりどこかであの馬鹿を甘やかしていたんだろうなぁ、私達は」
はぁーー、とその顔を手でおおって溜息をつく織斑千冬という一人の姉。口から吐くそれは後悔からのものか、それとも今まで背負っていた家族への責任の重さゆえか。どちらにせよ、十代の年端のいかぬ幼少期より弟を守り育て上げた『姉』の肩の荷は少しは軽くなったかもしれない。
『お前もいい加減、肩肘を張って生きるのも疲れるだろう? たまには休みを取れ。酒の一杯くらいなら付き合うぞ?』
「なんだ? いっちょ前に女を誘うのか? この二歳児が。まぁ、お前がそこまで言うなら付きやってやらんことも「デウスさ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!」」
ドドドドドド!!!! なんか観客席の方から走ってきた! 誰だ!?
『な、ナターシャ!?』
「デウスさ~~~ん♥」
抱きっ! と効果音がつきそうな勢いで飛びかかってきた女。ナターシャ・ファイルスが現れた。腰まで届く長い金髪、歳相応「あぁ!?」の魅力を醸し出す女性だ。(すいませんでした)
「さっきのデウスさん、男らしくて格好よかったです。あぁぁ今度は私も叱って~~」
『いや、あの、な? 抱きつくなって。それに頬ずりするなよ。ね?』
なんかもうアレだった。二十代の大人の女性がもう恥ずかしいくらいにデレッデレだった。デウスの首根っこにしがみつき、顔をその胸板にこすりつけていた。うん、色々と台無しだった。それをデウスは引き剥がそうと彼女の肩に手を置くが、およそ人間とは思えない万力のような力でしがみついてくる。何アナタほんとに人間?
「……おいこら小娘。今『私達』が話していたんだが?」(ビキッ!!)
「あらブリュンヒルデ? いたんですか? すいません『私達』の今後の事で重要なお話がありましたので」(ニコニコ)
あれ~~~~~~~~~? なにこの空気!? これ一夏の仕事だよね? こんな桃色空気と修羅場な場面になぜ俺が!?
『あの、ナターシャ? お前まさかアレ本気だったのか? 俺は機械なんだぞ?』
「そ、そうだぞ小娘! いくら彼氏いない歴=年齢だからって焦りすぎだろう!?」
「うるさいですねブリュンヒルデ! それは貴方もでしょう!?」
「ぐはぁあああああああああああ!!!」
グッサーーーーーー!!! 痛恨の一撃! 織斑千冬は打ちひしがれた! 急所をくらった! 精神的ダメージが末期だった! 心の傷を抉られた! うんつまりヤバイ!
『お、お前らそんなに気にすることなのか?』
「「当たり前だ(です)!!」」
『お、おぉふ。そ、そうか。もったいないな、お前ら美人なのに』
「「はうっ!!」」
彼氏のできたことがない女二人が身悶えた! デウスは天然ジゴロだった! おいこら。
「~~~~~~で、デウスさん!! 明日デートしましょう!」
『え? あ、うん』
「デウス!!! 私と飲みに行く約束だろう!!」
『ひぃっ!? いや、それは今晩行こう、な? ナターシャは明日って言ってるし』
「あら? なんでしたら私もご同席しますよブリュンヒルデ?」
「~~~来るな!」
あれ? どうしてこうなった? 一夏に説教していた内容がもろに俺に返ってきているぞ? 俺はあいつほど鈍感じゃないが……。
「デウスさん。惚れさせた責任、とってくださるんですよね?」
「デウス? 貴様こんな色ボケ娘に付いていくわけないよな?」
『は、ははははは、もうどうにでもなれーーーーー!!!』
あれ? 観客席の方に生体反応? 他に誰かいるのか? だが、今はそれどころじゃねぇええええええええええええええええ!!!
「ど、どうしよう……どうしよう!!」
それでも俺は志波さんが好きになったんだ! 志波さんがいれば、傍にいてくれれば俺は安心できるんだ! 俺は、俺は一人ぼっちじゃなくなるんだ!!!
織斑君が、織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が織斑君が!!
わたしのこと好きって!!
志波真季奈はIS学園に来ていたのだ。デウスに朝言われた自分で弁当を届けろという言葉。それはもう無理だが空になった弁当箱を受け取るくらいはやってみよう。そして美味しかったのか感想を聞いて、好きな食べ物を教えてもらってまた次のお弁当の参考に……。そう思って頑張って来たのだ。
そしたら織斑くんとうちの駄犬が喧嘩していた。というか叱っていた。内容は良く聞こえていた。デウスの声が大きかったからだ。
どうやら織斑くんのことが好きな女の子はいっぱいいるらしい。まさか鈴ちゃん達がそうだったとは………。わたしもうかうかしてられません!!
「あ、明日買い物に行こう! 可愛いお洋服買って織斑くんに………っ!!」
『わたし』をもっと見てもらおう!
だって、織斑くんが好きなのは『わたし』じゃなくて『志波真季奈』かもしれないのだから。
という訳で、わたしこと志波真季奈は街まで買い物に来ていました。
ですが……。
「おい聞こえるか警官ども! 人質を開放したかったら大人しく金と車を用意しろ!! もちろん追跡車や発振器なんか付けるんじゃねぇぞ!!!」
「そうだそうだ!! この人質が見えねぇのか!!」
「へへ、奴ら大騒ぎしてますぜ兄貴!」
「真季奈!」
「姐さん!!」
わたしはジャンバーにジーンズ、覆面をかぶって銃で武装した三人の男たちに喫茶店で銃を突きつけられています。後ろではメイド服を着たボーデヴィッヒさん。執事服を着たデュノアさんがわたしを心配して見ています。
ど う し て こ う な っ た !!!
事の始まりはわたしが休憩がてらに入った喫茶店。お店の名前は@クルーズ。何故かクラスメイトの二人がバイトをしていましたが今日のわたしはお客さま。とても丁寧な対応を受けさせていただきました。
なのに、なんで逃走中の強盗犯が立て篭りに来るんですか!? しかもわたしが人質ってどういうことですか!
「あ、あのー? わたしなんて人質にしてもなんの役にも立ちませんよー? だから離してください……」
恐る恐る強盗犯のリーダーっぽい人に提案してみます。
「駄目だ! お前は逃走用の車が来るまでの間、俺たちのそばにいろ! 可愛いからな!!」
「そうっす! こんなカワイイ子を侍らせれるなんてなかなかないっす!!」
「お、俺、メイド喫茶でご主人様って言われてみたかったんだよなぁ」
………わたしよりも可愛い子はいっぱいいるでしょう!! そこの銀髪のメイドとか金髪の執事とか!!! それにわたしはこの店の店員でもありません!!
(そこの二人、なんとかしなさい!!)
(はい、任せてください姐さん)
(こんな奴ら、一分で制圧できるよ!)
ISの代表候補生である二人にアイコンタクトで話しかけます。凄いなわたし。ここは軍隊仕込みの制圧術を持つ二人に任せたほうが無難です。だって、
「あー、犯人一味に次ぐ。君たちは既に包囲されている。大人しく投降しなさい。繰り返す……」
警察の古臭い対応を聞けばわかります。こいつらアテになりません!!!
(助けてー! ヘルプミーーー!!!)
涙目になって心の中で叫びます! おーりむーらくーーーん!!!
(どうするラウラ? 相手の装備はショットガン、サブマシンガン、ハンドガン、他にも予備で何か持っている可能性もあるけど……)
(私が近づいて奴等の注意を引きつける。お前はそのスキをついて制圧しろ)
(わかった。サポートすればいいんだね)
ラウラとシャルロットが小声で打ち合わせをする。自分達の受けた対人制圧用訓練を思い出せばこの程度の状況どうってことはない。特に相手の三人はどう見ても素人だ。
(よし、行くぞ!)
(うん、ってちょっと待って!?)
(どうし、!?)
「きゃっ! や、止めてください!!」
「へへへ、お、お嬢ちゃーん? 綺麗な肌してるね~~?」
(あ、姐さん!?)
真季奈が手下その二に絡まれていた。しかも変態チックに。腕をとられ、その肌や首筋などを舐めまわすように見られていた。鼻息も荒く、はっきり言って気持ち悪かった。
(コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!)
(ら、ラウラ落ち着いて! こっちの存在が気づかれちゃ元も子もないよ!?)
(何を言う! ここで黙っていることなど『マッキー愛好会』の名がすたる!!)
(なにソレ!?)
なんという驚愕の事実。ラウラはマッキー愛好会のメンバーだったぁ。(棒)
「お、お嬢ちゃん。ちょっと服脱いでみてよ? ね? 上着だけ、一枚だけでいいからさぁ」
「ひ、ひぃいい!? いやぁあああああああああああああああああああ!!!」
ドン! あまりの気持ち悪さに銃を突きつけられていることも忘れて手下その二を突き飛ばす。それによって相手は床に尻餅を付いた。
「い、いてぇ!」
「てめぇ! 何しやがる!!」
「きゃぁ!」
バキィ!! 真季奈のしたことに腹を立てたリーダー格の男が真季奈の『頭』を殴り飛ばした。
もう一度言います。頭を。
ドサ、と真季奈の体が床に横たわる。
「真季奈!」
「姐さん!?」
たまらず飛び出す二人。真季奈は倒れたまま動かなかったのだ。
「なんだテメェらは!?」
「「くっ」」
犯人たちに二人は見つかってしまった。これでは奇襲は出来ない。
「………………痛い」
「真季奈! 大丈、夫?」
真季奈を起こす。シャルロットはそこで……。、
「………………いてぇ」
「あ、姐さん?」
ラウラも。
「いてぇじゃねえか、クソ野郎」
気づいた。
「おいテメェら! 何してやが……る?」
リーダー格の男が近づいてくるが、途中で立ち止まった。床に転がっていた人質の少女がゆっくりと立ち上がったのだ。
「お、おいテメェ……一体なにを?」
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク! ブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブルブル!!
「な、なんだ!? どうしたんだお前ら!?」
銀髪のメイドと金髪の執事は震えていた。それも尋常ではないほどに。
「お、おわりだぁ……もうおしまいだぁ……」
「御慈悲を、御慈悲をぉ」
大丈夫かこいつら?
「おい、そこの豚ァ」
「あぁっ!?」
「オ シ オ キ の時 間 だ」
パーーーーーーン! と、いつの間にかシャルロットの腰のベルトを抜き取っていた真季奈が『ソレ』を鳴らす。
それはまさに女王の鞭だった。
「? どうしたんだ? 急に静かになったぞ?」
@クルーズの外を包囲していた警官達が店内の様子が変わったことに気づいた。先程まで騒がしかった店内が静かになり、犯人の無茶な要求を告げる声も止まったのだ。
「どうします警部? 突入しますか?」
「いや、待て。もう少し様子を見よう」
「しかし!」
警官の一人が指揮官の警部に突入を進言する。状況が変わり、確かに突入するチャンスかもしれないが、中の様子が分からなければ迂闊なことはできない。人質たちの安否も気になる。ここはもっと慎重に、冷静に事に当たらなければ……。
と、指揮官の警部は考えていた。
しかしこの男、実はマニュアルどおりの対応しかできない単なる臆病者だった。
『ふっ、お困りのようだな? 警官隊の諸君?』
「だ、誰だ君は!?」
背後からの声。それは……、
『私か? 私の名は………』
振り返った先、そこに居たのは百八十オーバーの身長の大柄な男? ジーンズを履き、黒いジャケットを着た男。そして……。
『私は正義の使者! 勇者、エルドラ仮面だ!!!』
エルドラ5のお面を付けた怪しい男がいた!!!!
「ふ、不審者だーーーーーー!!! 怪しい奴が出たぞぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
『不審者? 違う! 私は勇者、エルドラ仮面だ!! とうっ!』
飛んだ!? 不審者が飛んだぞ?! いやぁああああああああ!!!
『ハーーーハッハーーーー!!! さぁ今助けるぞ! 人質たちぃいいいいいいいいいいいいいい!!!』
「「「止めろーーーーーーーー!!」」」
警官隊の必死の静止を振り切り、不審者(エルドラ仮面)は@クルーズへと飛び込んでいった。うん、人質がやばいね!
ガシャーーン!! とショーウィンドウを突き破って店内に突入するデウじゃない不審者。
『大丈夫か!? 助けに来た……ぞ?』
そこで彼が見た光景とは!?
「いやぁああああああ!!! やめてぇええええ女王様ぁああああああああ!!!!」
「ぎゃぁ! きゃん!」
「痛い痛い痛い!! あっでもなんかいい! もっと、もっとおおおおおおお!!!」
「あーはっははーーー!!! この豚共がぁ! そんなに欲しいか!? えぇ? このおねだりさんぅぅ?」
パァン! パァン! パァン! とベルトをしならせ犯人達に叩きつける少女、志波真季奈の姿があった。ちなみに犯人たちはパンツ一丁でみんな自分達のベルトや衣服で四肢を縛られ四つん這いで床に転がされていた。
なにこれ酷い。
『これはどういう状況だ?』
流石のエルドラ仮面も状況の把握が困難だった。人質を助けに来たら犯人が被害者だった。メイド喫茶がSMクラブだった。どゆこと?
「あ、あの姐さん……もうそれくらいに」
豚共、もとい犯人たちを踏み付ける真季奈にラウラが待ったをかけて近づく。しかし、
パァン!! 目にもとまらぬ平手打ち! それがラウラの頬を強く叩いた!
「きゃふ! !?!!?!?!?」
叩かれた衝撃で尻餅をつくラウラ。その顔には驚愕が張り付けられていた。
「いけませんよぉ? ラウラちゃん? 誰に、何を言っているんです?」
「あ、あ、あの……」
ガッ! ラウラの肩を、顎を掴んで真季奈は顔を近づけ言う。
「わたしのやることに絶対服従です、よ? ね、メ・イ・ド・ちゃ・ん?」
「は、はぃぃぃ、ご主人様ぁぁぁ」
ズギューーーン!!! ラウラは堕ちた!! 駄目だこいつら!
「た、助けてデウス! 真季奈が変なんだ!」
『デウスではない! 私はエルドラ仮面だ! 何があったんだシャルロット?』
エルドラ仮面の正体を一瞬で見破ったシャルロット。(驚愕!) 彼女に彼は尋ねる。
「それが、真季奈が犯人に頭を殴られて……そしたらなんだかドSの精神が降臨してオーバードライブマキシマムしちゃって大フィーバーなんだよ!!!」
『落ち着け! 後半ほとんど意味わからんぞ!?』
なんだかわからんが、どうやら真季奈の記憶の一部が蘇ったようだ。しかも厄介なことにドS女王の面が大きく出ているようだ。あの状態で武装した三人組を無力化して調教したと言うのだろうか? え? なにそれすごい。
「ほら! ほら! ほらぁ!!! ねぇどう!? 痛い? 痛いよねぇ? それとも気持ちいいの? この気持ち悪い変態共!」
パァン! パァン! パァン! ゲシっ! グリグリグリ! ベルトで叩いて足で踏みつける。
「あぁ! ヒン! やめてぇええ!!」
「ゴメンナサイ! 自首します! 自首しますから許してぇええええええええ!!!」
「あぁいい!! もっと! もっと罵ってください女王様ぁああああああ!!」
あ、マズイ! このままではマズイ! なんというかこの作品のモラルが不味くなるような気がする! メタい? 気にするな!
『真季奈を止めるしかない! うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
「あぁ!?」
『エルドラ・チョップ!』
ベシッ! チョップが真季奈の即頭部を襲う!
「あいた! きゅうぅううううううううううん」
「やった!」
ドS女王は気絶した! @クルーズに平和が落とずれた!
「「「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」」
店内の人質たちが歓喜の声を上げる。(豚にされてた犯人たちも)
ありがとうエルドラ仮面! さようならエルドラ仮面! 警察に捕まるなよ不審者エルドラ仮面!!
『よいしょと、真季奈は貰って行くぞ? ではさらばだ諸君! とうっ!!』
エルドラ仮面は横たわった志波真季奈を抱えて@クルーズを飛び出した。ザ・逃亡である。またの名をトンズラ。
だって、もう誰が犯人かわかんないもん!
こうして、@クルーズで起こった強盗犯の逃走劇は幕を閉じた。
うわ酷い。
「というか、デウスはなんであんなお面付けていたんだろ?」
「あぁぁご主人様ぁぁ」
オワレ。
「もう! デートの途中だったのにぃ!!! デウスさーん!!」
『ナターシャ、不憫にゃ!』
残念。オワレ。
「? あれ? わたし何を? 犯人は? 何かあったんですか?」
『あ、真季奈(白)なのね………』
お疲れ様。オワレ。
「というか! 私の! 飲みに行く! 約束は!!」
はっはっは終わったじゃないですかぁ。覚えてないんです?
「描写すらなかったぞ!?」
うん。オワレ
はい。どうでしょう?
今回デウスが指摘しましたが、織斑一夏は家族愛を知らずに育った子供だと思います。だから他人からの愛情も分からない。それで恋心もわからない。そんな人間になっちゃったのかなと思います。
大人の女性陣については、ね?
@クルーズでの事件についてはゴメンナサイ。メイドと執事のカッコイイ立ち回りが見たかった方々本当にごめんなさい。
だって真季奈ですもの。
エルドラ仮面……一体何ウスなんだ?
それでは次回もまた読んでもらえると嬉しいです。