ギャグです。
一応前話と同じ日の話ですので内容が繋がっています。
それではどうぞ。
前回、ひょんなことがきっかけでそのドS女王としての片鱗を見せた志波真季奈。
そしてそんな彼女を連れ去ったエルドラ仮面ことデウス。
彼は織斑千冬と飲みに行ったのではないのか?
ナターシャ・ファイルスとデートに行っていたのではないのか?
これはその時記されなかった彼の物語である。
IS学園からのモノレールに乗ってから駅を降りて少し歩いた商店街。その地下にあるバー。夕方四時から朝方八時まで店を開けているここ『バー・クレッシェンド』は織斑千冬の行きつけの店である。
この店に、織斑千冬とデウスは飲みに来ていた。
『いやまぁ確かに飲みに行こうとは言ったけどさぁ……なんでこんな早く?』
「うるさい。……もたもたしてるとあの小娘がついてくるじゃないか」
現在の時刻は夕方五時。営業時間から一時間経っているとはいえ酒盛りに集うにはいささか早すぎる時間である。
それもというのも原因は、まぁ、なんと言おうものか……デウスである。
この織斑一夏とはまた違った、自覚ある系女たらしの機械人間デウスが最近引っ掛けた女ナターシャ・ファイルス。彼女があの『説教』からデウスにくっついて離れないのだ。しかも明日にはデートの約束まで確約させ、しまいにはこの飲みにも付いてこようとする始末。
(あんなぽっと出に横からかっさらわれてたまるものかッッ!!)
なので半ば強制的にデウスを連れ出した。ナターシャを振りほどいて、彼女の勤務時間が終えるよりも早く移動し自分や山田真耶などIS学園の同僚でも親しいごく一部にしか教えていない自分の行きつけのこの店に駆け込んできたのだ。これならこの国に来たばかりのナターシャでは乗り込んでくることもできまい。
「ふふふ……残念だったな小娘が」
『……おいマスター。この女はいつもこんな感じで飲みに来るのか?』
「いえ、けしてそのようなことは……」
この店のマスター、初老で口元に髭を蓄え白髪にオールバックという容姿で女性客にも人気あり、所謂『オヤジ萌』のハートを鷲掴みにしてる人物だ。
そんなダンディな彼も戸惑う程に、今晩の織斑千冬は必死な様子だった。余裕がないともいう。
「ふん、いいから飲むぞ。ちなみにここのオススメはマスター特製のカクテルで……」
ちょっと待て。そういえばこの男、何を飲むんだ?
言いかけて思った。そういえばこの男、機械だったではないか。酒など飲める訳がない!!!
あれ? どうしよう?
『マスター。アルミホイルとハイオクをくれ。ロックで』
「いやいやいやいやいやいやいや!!! ちょ、まてお前!?」
何頼んでんの!?
「……どうぞ」
「あるんかい!!!!」
マスターがすっ、と差し出したのはグラスに注がれたオレンジっぽい色をしてツンとした臭いを放つ液体。そしてアルミホイルを切り出したものをのせた皿。
「……マスター?」
「どんなお客様のご要望にもお答えするのが私のモットーですので」
『いい男だねぇ、マスターは』
いやおかしいだろ!? え? 私だけかそう思っているのは!?
『それで? 君は何を飲む?』
「え? あ、じゃぁ黒ビールで」
「かしこまりました」
そう言ってマスターはジョッキに注いだビールを差し出す。サービスでチーズもついてきた。
『それじゃぁ、一夏の馬鹿さ加減に乾杯』
「それはどうかと思うが……とりあえず乾杯」
キン、とお互いの酒(?)が入った容器を当てあって乾杯する。
全ては織斑一夏の女性癖の悪さに………乾杯。
そして一時間後。
「だからぁ、一夏は根は悪い奴じゃないんだぞぉ? 悪いのは女を見る目が全くないのと鈍感なところでぇ。それさえなかったら男気もあるしそこそこ見どころぉもぉ」
『うんうん、そうだな。あいつが立派に育ったのもお前が頑張ったからだよ』
更に二時間後。
「でもぉあいつが女にだらしなく、なったのもぉ~~~。元はといえば私がちゃんと見てやれてなかったからで~~~~。やっぱりそこは私が悪いってことだろぉぉぉ?」
『そんなことないぞ? お前だって本当なら大人に育てられる側だったんだ。あいつの不自然なところは気付かなかった周りの奴ら全員が悪い……おい、聞いてるか?』
そして更に三時間後。
「ひっく、ひく、わらしだってがんびゃったんもん……、なのにまわりのババァろもにかげぐひたたかれるしぃぴーてーえーからもわるくいわれるしぃ」
『……あー駄目だこりゃ。完全に悪い酔い方しちまってら……マスターお勘定』
「よっぽど溜め込んでたんでしょうねぇ。色々と。お帰りはは大丈夫ですか? タクシーでも……」
『あーいや、それだと途中でタクシーの運ちゃんに『とても迷惑』なことになっちまいそうだしなぁ。まぁ歩いて帰れない距離でもないし、おぶっていくよ』
吐く。確実に。車の振動はかなり危険なことになりそうだ。というか動かすのもヤバイ。
「ですか。それではお気を付けて」
『あぁ、それと悪かったな。グラス一つダメにしちまって』
酒を注ぐグラスにガソリン、液体燃料をいれたのだ。洗ったところでもう他の客に出せるはずがない。廃棄するしかない。
「いいえ。デウスさんの専用とさせてもらいますよ。またのご来店を」
『うわぁこの商売上手。わかった、今度はもっと大勢でくるよ』
あの勇者バカのじいさん達でも連れてこよう。売上は確実に上がるだろう。うん。
背中に千冬を背負って店を出る。時刻を確認すれば、もう夜中の十二時前。随分な時間まで飲んでいたものだ。
「あー……歩きだと日付変わっちまうなぁ。電車はもうすぐ終電だし、やっぱりタクシーか? でもなぁ。ISの無断展開は御法度だし飛んでいくのもなぁ」
割と本気で悩んでいたデウス。このままだと二人揃って朝帰りである。それはマズイ。なんとなくマズイ。
とりあえず織斑家に向けて歩を向ける。夜風に当たれば案外酔いは冷めるかもしれないし、なにより女を背負って突っ立ってるのも周囲の目が痛い。
『あれ? マスターのとこで落ち着くまで転がしとけばよかったんじゃ?』
そう思うのも後の祭りというもの。もうすでにそこそこの距離を歩いていたし、なによりも店にとっては迷惑以外の何物でもないだろう。
「う、ん」
『お? 起きたか。大丈夫か~~? 千冬~~?』
背中の泥酔した輩が目を覚ましたようだ。とりあえず状態を確認する。歩けそうなら下ろすし、体調が落ち着いてきたならすぐにでもタクシーを呼んで……。
「うぷ」
『え』
「………きもちわるい………」
手を抑えて言う。誰が? 無論背中の、
ヤ バ イ
『ちょ、ちょちょちょっと待て! 袋、袋! ってないか、なら便所かどっかの排水溝……』
決壊寸前のダム。一瞬そんな光景が脳裏を過ぎる。
「う、おぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろおぼろ」
『ぎゃ、ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
約六時間かけて織斑千冬の体内で消化されたモノがデウスの首筋から背中へと大量にぶちまけられた。
あーあ。
「う、ん、……こ……こは?」
目が覚めるとそこは知らない部屋だった。織斑千冬はベッドで寝ていて、白いバスローブのようなものを着ていた。下着は……上だけなかった。
「!? な、なぁっ!? え? え? えぇぇぇえ??? なんだこれは?! どこなんだここは!!」
慌てて自分自身をチェックする。身体を触り、着ている服をめくり、いつもと『異常』がないのかを確認する。
まぁ、何もなかったわけだが……。
「ちっ」
生まれて二十数年、今日も彼女は生まれたままの健康体でした(泣)
「しかし、なんだこの状況は……?」
ひとしきり騒げば余裕もできる。周りを改めて見ると今いる部屋はそこそこ広い作りをしていた。しかし部屋の真ん中にほとんどのスペースを埋めるような大きな円形のベッドが置かれており部屋を圧迫していた。壁にはガラス張りのシャワールームが付いている。
なぜ自分がこんな場所にいるのか? それを落ち着いて思い出すことにしよう。
「確か昨日は小娘からデウスの奴を引きはがしてバーい駆け込んで……それから……?」
おかしい。そこから記憶が全くない。
もしや自分は酔いつぶれたのか?
それをデウスにお持ち帰りされた?
………………………………………………………え?
シャーーーーー、という音がする。水の流れる音。シャワーの音だ。つまり、誰かが使っている。誰がって?
キュッ、と蛇口を締める音が聞こえた。ガラス張りのドアに影が近づいてくる。中にいる者が出てくるようだ。
ドアノブが回った。
「ま、ままままま待て、待て待て、まってぇえ!! まだこ、心の準備がぁああああああ!!!」
シーツで身体を隠し片手を突き出して必死に叫ぶ。しかしそれでもドアは無情にも開かれた。
が、そこから出てきたのは首にタオルをかけた黒い毛並みの柴犬だった。もちろん二足歩行で。
「犬かよ!? 私のドキドキを返せ!!」
『なんだやっと起きたか……お前も早く入ってこい』
柴犬ことデウスがこちらを軽く一瞥したうえで言う。
え!? わわわたしも風呂に入れって……まさかこれから!?
「いや、そ、その! ………せ、せめて人間の姿で……初めてでじゅ、獣姦は……」
『………アホなこと言ってないでさっさとその吐瀉物まみれの臭い身体を洗って来い』
は?
そういえば………ちょっと臭う。
『お前な、酔いつぶれた後の記憶はあるのか? ん?』
「…………ありません」
『ほ~~う?』
あ、ヤバイ。なんだか嫌な予感がする。目の前の柴犬が静かに怒っている気配がする。なんというか、ゆっくりと毛筋がざわめいているような。
『昨日散々、それはもうさんっざん俺に愚痴という愚痴を六時間にわたってこぼし続けて?』
「ぐぅっ!」
ワンhit!
『酔いつぶれて動けなくなったから終電を逃して、それを俺が背負って延々と帰り道を歩いて?』
「はうっ!!」
ツーhit!!
『しかも俺の背中に思いっきり胃の中のモンをぶちまけやがったことは覚えていないんですかねぇ~~~?』
「すんませんでしたーーーーーーーーーー!!!!」
クリティカルhit!!! 千冬は土下座して謝罪した!! うん、ちゃんと謝ろうね! いやホント。
『ったく。幸い、近くに公園があって軽く汚物を洗い流せたから良かったものの、その後に服を洗ってクリーニングしてくれる宿を探すのには苦労したんだぞ? 時間も遅かったから空いてる店が『こんな』店しかなかったし……』
「あーそういう……」
『………俺が『そういうこと』目当てでお前を連れ込んだとでも思ったのかお前は』
「べ、べべべ別にぃ!!? そ、そんなわけないぞ! うん!!」
しかし逆に『このテ』の店だったからこそ、こんな吐瀉物まみれの男女を夜遅くの時間に宿に泊め、しかも衣服のクリーニングのサービス(という名の有料)まであったのだ。そういう点では結果オーライである。
『とにかく、さっさと風呂に入ってこい。俺はフロントに連絡して服を持ってきてもらうから。着替えたらもう帰るぞ』
「あ、あぁ、わかった。というか、今何時なんだ?」
この部屋、完全防音なうえに窓は陽の光を全く入ってこないような作りになっている。よって今が朝なのか夜なのかも分からない。
『もう朝六時だよ。一晩たっぷりと『休憩』しやがって。お前、真季奈に昨日帰れなかった言い訳ちゃんと考えておけよ? 頼むから』
「重ね重ね申し訳ございませんでした……」
というわけで、『大人の休憩所』から出た二人。はたから見れば完全に朝帰りの図である。
「なぁ、そもそもなんで家に帰らずに『こんな店』に泊まったんだ? 私が言うのもなんだが、歩いて帰れない距離ではなかったろ?」
いくら体が吐瀉物まみれとは家いえ、臭いとか服や体についたモノとかの気持ち悪さとか、そういったものを百歩譲って、更に強引に目を瞑ったりしちゃったりすればまぁこれといって問題ない。
そうせず外泊してまで真季奈の待つ家に帰らなかった理由。それは。
『お前なぁ。ただでさえ最近真季奈の中で下降気味の俺たちの株をこれ以上落とすわけにいかんだろう? あんな泥酔してみっともなくなった姿で帰ったら、今度こそ『大嫌い』じゃすまんわ』
「あぅ」
そうである。最近、真季奈の自分たちを見る目が冷たいのだった。確かにこんな醜態を晒せば確実に終わる。何がって言うと何もかも、だ。
「わ、私たちが何をしたっていうんだ……」
『黙れぺロリスト』
「うるさい盗撮魔」
『「………………………」』
お互いの言葉にちょっと傷つく。二人並んで肩を落としていた。なら言わなきゃいいのに。
「帰るか」
『あぁ』
二人、駅に向かって歩き出す。もう始発はとっくに動いている時間のはずだ。
「そういえばデウス。昨日、真季奈のことで病院に行ったんだがな……」
『なに?』
「実は真季奈は……」
「と、とんでもないもの見ちゃった!!!」
「と、特ダネよ!!」
そんな二人を一部始終見ていた者たちがいた。パパラッチ大好きなある姉妹で、それぞれが今回の件を自分たちの発行する出版物に面白可笑しく記事にしちゃったりするのだが、それはまた別のお話。
さて、時刻はお昼。
デウスは一度帰宅した後、もう一度街へとくり出していた。
約束があったのだ。
そう、ナターシャ・ファイルスとのデートである。
待ち合わせの場所、駅の前の銅像の前で待つ。(ハ○公じゃないよ!)
すると、
「お、お待たせしました!」
『いや、待ってないよ』
可愛く着飾ったナターシャが走ってきた。薄手のワンピースにカーディガンである。気合入ってるなー。
まぁ自分はジーンズにに長袖のジャケットだけなので文句を言える立場ではないが……(注 今は真夏です。暑くないのお前!?
『ロボだから暑くなどない!』
「? どうかしました?」
『いや、なんでもないよ。さて、それじゃぁ行こうか』
「~~~~~はい!!」
『どうした?』
ちょっとテンション高めである。これは……浮かれてる?
「私、こうやって男の人と待ち合わせしたり一緒に遊びにって初めてで、夢だったんです!!」
『そ、そうか。ならきちんとエスコートしないとな。ほら、行くぞ』
すっ、と手を差し出すデウス。
「はい! よろしくお願いしますね (ポッ)」
その手を取る、を通り越して腕に抱きついて組んで歩き出す。デウスもそれには驚いたがそのまま好きにさせておいた。つまり、仲良く腕を組んでのデートである。
周りの通行人の皆さんのコメント……リア充爆発しろやゴラァアアア!!
そういうわけでやってきましたウォーターワールド! え? またここか! て? すいませんねぇ。
『貰った入場券、まだ余ってるからなぁ』
それ言っちゃダメですよ! 特にデートの相手には!!
などとメタい電波を受取りながらもデウスはプールの更衣室前にて待つ。ナターシャが水着に着替えているのだ。
「お待たせしました。さ、行きましょうか」
白いビキニに着替えた彼女が来た。
『あぁ、じゃぁまずはアレに乗ろうか』
そう言ってデウスが指さすのは巨大なウォータースライダー。いきなりラスボスである。
「た、高いですねぇ」
『ISで空を飛び回ってる女が何を言う? ほら、せっかく来たんだから目指すはアトラクション全制覇だ』
「ぜ、全部ですか!?」
『うっし、行くぞー』
「え、えぇええええええええええ!?」
と、いうわけで。
ウォータースライダー。
「はーい、それではお客様ー。危ないのでしっかりと抱きついておすべりくださいねー(ちっ、リア充が!)」
『ほら、震えるなって。ちゃんと抑えておいてやるから』
デウスの腕にすっぽりと収まってナターシャ達はスライダーのスタート地点に腰掛ける。
「は、はっははい!! (や、役得役得役得!!)」
『ナターシャったら顔が真っ赤だにゃー』
「(ん? なにこの声?) はい、それじゃぁスタート!!」
どげしっ!
『あれ? 蹴った? っておぉおおおおお!!?』
「きゃぁああああああああああああああああ!!」
流れすぎるプール。
「ちょ、ちょっと流れが急すぎやしませんかー!?」
『ふははははは!! むしろ逆流してくれるわーーーーー!!!』
円形でドーナッツのようになっているプール内を流れる水流。その流れたるやまさに大荒れ洪水の如し。
それを流れとは反対に泳ぐデウス。
「おい! あのお客さんスゲェ!!」「誰かストップウォッチもってこい!!」「めちゃくちゃ早いぞあの人!?」
ちなみにナターシャは延々と流されていた。
ゴンドラで回遊。
「こ、これなら乗って流れていくだけですね」
『ふっ、それはどうかな?』
二人はプール内に作られた運河のコースを順路に沿ってゴンドラに乗って流れていく。すると、
「大蛇が出たぞーーーー!!!」「者ども出逢え出逢えーーーーー!!!」「狩りの始まりじゃぁあああ!!」
『銛を持て! ナターシャ!!』
「え、えーーーーー?」
キシャァアアアアアアアアアアアア!!!!
『いや、ここプールにゃよね?』
他にも。
「おい! さっき犬がバタフライで泳いでいたぞ!?」「いや、こっちじゃ犬が二十メートルの飛び込み台から三回転ひねりで飛び込んでたぞ!?」「なに言ってんだ! さっきエルドラ5が巨大なドラゴン型メカを真っ二つにしていたぞ!!」「あ! 猫が浮き輪で泳いでる!」「……なんだ猫か」「猫じゃなー」
ちょっとおかしな目撃情報が飛び交っていた。
余談ではあるが、今日のウォーターワールドの入場者数と売上は例年より二割向上していたそうな。珍しきことは素晴らしきことかな。
「……なんなのこの国」
『これがカルチャーギャップってやつかにゃ』
断じて違う。と思いたい。
『よし、そろそろきりあげるか。あ、ベル。これお土産な。エルドラマスクだ!』
『ぎゃえぇえええ!? お、お兄ちゃんの顔面にゃーーー!??』
自分の体ほどの大きさのお面を両手で持ち驚愕の声を上げるベルことアメリカンショートヘアの子猫。
「ベル、それはお面よ。でもこれどうしたんです?」
『ここで売ってるお土産。俺たちのヒーローさ』
サムズアップしてナターシャにこのウォーターワールドイチオシのヒーローについて語るデウス。
「はぁ」
うん、あんまり伝わらなかったようですハイ。
『さて、軽く食ってから帰るか』
着替えを済ませて外に出る二人と一匹。次に向かうは、
「どこに行くんです?」
『@クルーズって喫茶店のパフェが期間限定で美味いらしい。軽食もあるだろうからそこに行こうか』
「パフェ! いいですね!」
よし決まった! とまぁ上機嫌で向かった訳ですが………。
「テメェらおとなしくしろ!! この人質が目に入らねぇか!!?」
……………………………………………………………………。
『どうしてこうなった?』
「どうしてでしょう?」
『どうしてかにゃー?』
まぁなんと。喫茶店『@クルーズ』の店の前まで来た面々。しかしそこには篭城する逃走犯、取り囲む警察車両と警官の群れ。とても食事のできる雰囲気ではなかった。というか店に入ることすらできなかった。
その様子を遠巻きに見ているデウス達。
「どうしましょう? これって一応私も捜査に協力したほうがいいでしょうかね?」
『まぁ立場的に可能だけど……警察も意地と面子があるからなぁ。ここは大人しく見てようか』
これでも一応ナターシャはアメリカ軍所属のISテストパイロット。犯罪に対する対応マニュアルや訓練などはしっかりと受けている。警察が協力を要請すれば特に断る理由もないので喜んでデートの邪魔をしたあの逃走犯共をボコボコにしてやるところだが。
しかしそうはいかないのが難しいところ。
この国で起きた事件はこの国の警察が解決してみせる。だから他国の軍人なんてノーセンキュー! しかもIS操縦者? この女尊男卑の社会でこれ以上でかい顔すんなよ! 帰れ!
という具合なわけである。様はデウスの言うとおり、肩身の狭い社会において男共に残された意地と面子の問題である。めんどくさいね。
『そうにゃ! あちしが行って様子を見てくるにゃ!』
などと子猫が言い出す。
「………何を馬鹿なことを、て言いたいところですけど、アリかもですね」
『まぁ見た目は完全に猫だからなぁ。野良猫がたまたま犯行現場を歩いてただけにしか思えんしなぁ』
『じゃぁ行ってくるにゃ!!』
あ、おいこら!
そう制止するよりも早く飛び出すベル。そのまま『@クルーズ』のショーウィンドウまで走っていって……。
「あ、猫だ!」「キャー! かわいい!!」「駄目よ猫ちゃん! 危ないよ!!」
『あれ? シャルロットにラウラに真季奈がいるにゃ!? あ! 真季奈が人質になってるにゃ!!』
という報告を持って帰ってきた子猫。あらま。
『真季奈が人質か……さて、どうするか』
「警察に事情を話して協力を仰ぎますか?」
『いや、黙って見てろって言われるのがオチだろ』
『じゃぁどうするにゃ?』
『そうだなぁ……ん?』
「はい?」
『にゃ?』
ベルが持っていたお面。それは……。
「馬鹿なんですか!? アホなんですか!? 常識ないんですか!!!」
『とうとう言っにゃった!! ナターシャがとうとうツッコンだにゃ!!』
『えー? いい案だと思ったんだけどなぁエルドラ仮面』
結果的に。デウスたちは真季奈の救出に成功した。思いっきり力業ではあるが。
で、現在もっぱら逃走中である。何からって?
「そこの不審者ー! 止まりなさーーーい!!!」
警察からです。
いやまぁなんと。
デウスがエルドラ仮面として現場に突入してみたものの、中では人質だった真季奈によって既に制圧されていた。しかし、これがまたひどい話。真季奈が犯罪者なんじゃないかっていう状況だったのでデウスは真季奈を拐って逃げた。そうしたら警察が追ってきた。
なにこれ酷い。
つまるところ、犯人はデウスなのです。
さぁ逃げようか!!!
『飛ぶぞナターシャ!!』
「え!? 飛ぶ!!?」
『行っくニャー!!』
デウスが真季奈を、ナターシャを、ベルを抱えて思いっきりジャンプする。そのひとっ飛びはビルすらゆうに超える。
キャーーーーー!! 女性の叫びが夜空に響く。今日も今日とて長い夜になりそうだ。
『か、帰ったぞー』
「きゅーーーん」
真季奈を腕に抱えて、デウス、織斑家に帰宅。ちなみに真季奈は未だにデウスの『エルドラ・チョップ』で気絶している。
「あぁ、やっと帰ってきたか。遅かったなデウスに、真季奈!? どうしたんだ一体!!」
家の玄関をくぐるや、織斑千冬が驚愕と共に出迎えてくる。そらまぁ夜遅くに家の住人たちがへんてこな帰宅をしているのだ。驚かないほうがおかしい。一人は気絶してるし。
『疲れたぁ。もう、警察のパトカー振り切るのに町中走り回ったわぁ。真季奈がバイクで街中を爆走していた時以来だなちくしょう』
「お前何した!?」
そりゃ驚きますね。パトカーだの振り切るだの、もう発言の内容がもろ犯罪者。
『それよりも千冬。今日真季奈の記憶が少し戻ったぞ』
「なに!?」
真季奈をリビングのソファーに下ろしてからデウスは言う。それに驚く織斑千冬。無理もない。しかし、
『だけどまた忘れちまった。……いや、あれは忘れておいたほうがいいよなぁやっぱ』
「何をゴチャゴチャと言ってるんだお前は? まぁいい、それで原因は? 何を思い出した?」
『ラウラから聞いたんだが……頭部に衝撃を加えられて思い出したんだと。で、ドSの女王が降臨したらし
「は?」
『そう思うよなー』
ソファーの上で大人しく眠る真季奈を見る。このあどけない寝顔を見せる少女がドS女王で男三人を下僕化させてたなんて誰が信じようか? 少なくとも俺は嫌だ。
『真季奈のSっ気は一夏にだけ向けられてるもんだと思ったんだがなぁ。一体全体何がどうしたんだ?』
「……ストレス的な物じゃないのか? 日頃の鬱憤が爆発したとか……」
ストレス? 『この』真季奈が? いつも笑顔で人当たりのいい『この』娘が? 俺がよく知る『志波真季奈』ならまだしも少し考えにくかった。
いや、待てよ?
今回表に出てきたのはどちらかというと『昔』の志波真季奈だ。あのドSっぷりは間違いない。しかしそれを向ける相手も規模もおかしい。あんな苛烈なSは『志波真季奈』らしくない。
すると、やはり溜まっていた? 何が? いつから? どうして?
ぐるぐるとこれまでのことを思い浮かべる。真季奈と過ごした日々、『銀の福音』との戦闘後の記憶喪失になった真季奈。織斑一夏との出会い。これまでの彼女との違い。それは……!?
『あ』
「ん? どうした?」
思いついた。実にバカバカしく、とても重要なことを。
いや、でもまさか……?
「なんだ? 言えデウス」
『あー、あの、さ? 真季奈って』
「あぁ」
『記憶を失ってから一夏のこと、『思いっきり』殴ってなくね?』
「は?」
目が点になる織斑千冬。そりゃそうだ。自分だってそう言われりゃそうなる自信はある。でも、よくよく考えれば真季奈が一夏を殴ったのって、あのベッドイン、キャー事件から一回もない。その時に殴ったのだって反射的にっていうかほとんど咄嗟のことだ。自分から好きで殴ったわけじゃない。
つまり、
『殴り足りないんじゃね? 今の生活だと』
「それは、つまり、真季奈の中の記憶を失う前の『志波真季奈』が欲求不満なんだと? 一夏を殴ってないから? だからそれが爆発したと?」
うわアホらしい。でも、
『それしか考えられねぇ。あ、やべ泣きたくなってきた』
俺のご主人ってなに!? 真季奈よ、お前どんだけ織斑一夏を殴りたいの!? いじめたいの!!?
「こうなってくると、あの話もいよいよ馬鹿にできなくなってきたな」
『あの話って、朝に俺と話したアレか』
それは朝帰りをしたとき二人で話した事。千冬が病院の医師から聞かされた話し。
「真季奈は記憶を取り戻したくなくなっている。ずっと今のままでいたいらしい」
『なんでだろうなぁ』
医師が言うには、真季奈との診察の際、カウセリングや簡単な質疑応答の時にこんなことを聞かれたらしい。
曰く、記憶喪失の回復というものはどの程度見込めるのか。
曰く、記憶が戻ることなく生活を続けたケースはどれだけあるのか。
曰く、記憶を取り戻した際人格はどうなるのか。
つまり、記憶を取り戻した際『今』の自分がどうなるのかが不安に思っているのではないか、というのが医師の見解であり、それが真季奈が記憶の回復を拒んでいるのではないかということらしかった。
『そういう思いも相まって、『志波真季奈』のためにたまった鬱憤がドS女王として目を覚ますと? うわぁ』
「……発散方法を考えないといけない、か? しかし……」
そんな方法があるのか? 織斑千冬は疑問に思う。そんな都合のいい方法など……。
『は? んなもん簡単だろ?』
「なに?」
しかし、目の前の機械人間、デウスはこともなげに言ってのけたのだ。
『おい、おい真季奈! 起きろ!』
ぺしぺしと真季奈の顔を叩いて彼女を起こす。
「う、うーん? で、デウスちゃん? なに?」
起きた。やはり記憶を失った方の真季奈だ。
『真季奈、いいかよく聞けよ?』
「はい?」
寝惚け眼で答える真季奈。しかしデウスの次の言葉に、
『一夏はな、変態的な超弩級のドM野郎なんだ』
「は、はい!?」
完全に目を覚ました。
「補修も終わって今日からやっと自分の家で休めるぜ~~っと。おー久しぶりの我が家ー」
織斑一夏は補修を終えて帰ってきた。ただいま織斑家。welcome to me!!
「しかも志波さんもいるし、今日から毎日が楽しみすぎるぜ!」
意気揚々と玄関を開ける。
「ただいまー! ってへぶしぃ!?」
スパーーン!! 躊躇いがちな平手打ち!
「ってぇ!? なな、なに!?」
玄関をくぐっていきなり殴られた。何故? 誰に?
すると。
「お、おかえりなさっ、じゃなかった……。よ、よくもまぁそんな間抜け面晒して街中を歩いてこれましたね! こ、この露出狂のナルシストがぁ」
「いつの間に俺にそんな疑いがかけられたの!? って、え? 志波さん!? 何言ってるの?!」
志波さんがいた。志波真季奈さん。金髪で背の低い可愛らしい女の子。俺の憧れで、大好きな人。
それがいきなり罵声浴びせてきましたよォオオおおおおお!?
「う、うぅぅ、やっぱり無理ぃ。で、でも織斑君がこれで喜ぶなら頑張らなくちゃ……わ、わたしファイト!」
「聞いてます!?」
「う、うるさい! 帰ってきてそうそう近所の女性下着が気になるんですねこの変態パンツコレクター!!」
「ちゃいますがな!?」
あれ? でもなんか懐かしいこの感覚。
やばい、興奮してきた! なにこれ!?
「わたし、頑張ります!」
はい、今回は前話で書かれなかったデウスのデート回となっておりました。やはり真面目に一夏をボコッて説教した手前、今回のような醜態を晒すのもどうかなと思いこういう形にとなりました。
なので今回はギャグがかなり占めていたと思います。
真季奈の復活も徐々に近づいてきました。
ちなみに今回の没案。
「マスター、二人で頼む」
「喝っ!! 答えよ千冬! 流派東方不敗は!!」
「王者の風よ!」
「全新!!」
「系裂!!」
「「天破侠乱!!」」
「「見よ! 東方は赤く燃えている~~~!!!」」
『なにこれ』
「ふっ腕を上げたな。さすがわしの見込んだブリュンヒルデ」
「ま、マスター、マスターアジア!!」
『帰ってこい、IS作品に』
とまぁ没ですね。マスターと聞くとどうしてもこの方が出てきちゃいます。こんな方にこられちゃパワーバランスがあばばばばば。
それではまた次回。
感想待ってます。