IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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どうもお久しぶりです。

最近ISのイの字も出てきませんが、一応これはインフェニット・ストラトスの二次創作のはずです。

だけど今回もギャグばかりだよ?

でもそれだけじゃないかも。

それではどうぞ。


科学者は変態と邂逅する

 

「さて、職員室に行きましょうか織斑くん」

 

「え? 何故に?」

 

頭の中身が残念な織斑くんのためにもう一度。

 

「職員室に行きましょうか、バカ斑アホ夏くん」

 

「質問に対して罵声をありがとうございます!!」

 

のっけから可哀想な人ですね。

 

それではご説明を。

 

先程のSHRで一年一組の文化祭の出し物はメイド喫茶に決まりました。その報告を担任教師に報告をして申請書を貰わなくてはなりません。申請書には必要な機材や扱う食材、そららの発注数等を明記し文化祭の一週間前までに提出しなければなりません。

 

ですので喫茶店をやるからにはお客様に提供するメニューを早く決めなければなりません。織斑くんを餌にするのは必然としてそこから如何に金品を巻き上げゲフンゲフン! 確実に黒字になるよう料金を回収しなくてはなりません。なにより、目標は優勝ですので赤字回避で無難にお茶を濁すという戦略は論外です。

 

「織斑くん。明日までに調理班と会計班を招集。円滑にテーブルを回せるようメニューを組んでください。それとラウラちゃんとシャルロットさんは裁縫班を連れてメイド服を受け取り、接客班への寸法調整を。……あぁ、接客班は好きに決めてくださいな。ただし、調理班との重複はシフトが被るといけませんのでやめてくださいね。ただし、調理も接客もできるという方にはその限りではありませんよ? ………え? オルコットさん? 論外です。 接客意外しないでください。できなければ外行ってプラカード持って客引きしててください」

 

「「「了解です姐さん!!」」」

 

「あ、はい。すいません、ホント俺とクラス代表変わってくれません? それとそろそろセシリアを許してやってください! もう涙目なんで!!」

 

なんと情けない。この程度の役割分担をしきれなくて何が『長』か。

 

しかし、確かに織斑くんでは全てを任せるには役不足感があります。でしたら………、

 

「オルコットさん」

 

「は、はい!」

 

教室の隅ですすり泣いていた彼女を呼びます。例え泣いていても呼ばれれば即返答。うん、良い心がけです。

 

「貴方には喫茶店の経営に関してを仕切ってもらいます。メイドの礼儀作法やテーブル、食器などの調度品選びを貴方に一任しますので予算内で組んでください。もちろん会計班と要相談してくださいね? 出来ますか?」

 

「もちろんですわ!!」

 

うん、いい返事。流石はオルコット家の当主。こと経営に関しては彼女のような人材はうってつけでしょう。

 

「……あの、俺の仕事は?」

 

「わたしの肩でも揉んでなさい」

 

「へい、姐さん」

 

仕事の大まかな割り振りは出来ました。それでは職員室に行きましょうか。

 

「あの、真季奈? ここに私という担任がいるんだから申請書なら私に頼めばすぐに用意するぞ?」

 

「………………はんっ」

 

「鼻で笑われた!?」

 

「織斑先生に? 大丈夫なんですか?」

 

「何が!? ちょっと職員室に行って申請書を渡すだけだろう!?」

 

「………それすらも怪しんですけどねぇ」

 

「真季奈ーーーーーーーーーーーーー!!(泣)」

 

まったくやかましい。さっさと職員室行って山田先生を探しましょうか。

 

 

 

 

 

それからが酷かった。

 

千冬姉ぇを伴って職員室に行った俺達なんだけど、その千冬姉ぇがびっくりするくらいダメダメだった。使えなかったともいう。

 

ゴミの山と化した机。書類の山脈との格闘。見つからない申請書類。捜索時間三十分。それでも見つからず漂う残念臭。

 

うん、山田先生に頼ったさ。そしたら五分で用意してくれた。千冬姉ぇ涙目、山田先生苦笑い。

 

この姉、どうしてこうなった。初めの頃の鬼軍曹のようだったあんたに戻ってくれよ千冬姉ぇぇ。

 

「貴方も大変ですねぇ織斑くん」

 

「どう考えても元凶は志波さんですけどね!」

 

男を翻弄する女性を小悪魔女子というが志波さんは悪魔どころか魔王な気がする。攻略するにはまだまだ俺のレベルじゃ足らない。装備も貧弱だ。

 

「志波さん、俺ちょっとレベル上げにダンジョン行ってくるよ!」

 

「それなら生徒指導室という隠しダンジョンがオススメですよ? 裏ボスもいますし」

 

「ゴメンやっぱ無理」

 

すいません。そのダンジョンはすでに攻略に失敗してます。懐かしいなぁ、あの時出されたカツ丼の旨そうな臭いが忘れられない。あれ? なんだか涙がでてきた。

 

というかそもそも俺がダンジョン送りになったのも志波さんにハメられたからだけどね!

 

「それとも、他のダンジョンを攻略しますか?」

 

「俺をどんな魔窟に放り込むつもりだ!?」

 

このIS学園なら何があってもおかしくない! 秘密の地下施設とか拷問部屋とか牢屋とかありそうで恐い!!

 

「それじゃぁ、宿直室なんてどうです?」

 

「え?」

 

シュクチョクシツ? ホワイ? 何故? そこってうちの恐姉の住処じゃん! やっぱり魔窟か!!

 

「……………ばーか」

 

「あ、あの志波さん? どうしたのむくれて」

 

志波さんが頬を若干膨らませて俯いている、様な気がする。志波さんの身長は俺よりも低いからちょうど見下ろせば彼女のつむじが見えるわけで。当然顔は見えない。

 

「ひょとして、なんか拗ねてる?」

 

「鈍感。ニブチン。甲斐性なし。短小。包茎。短足。足臭い。不細工。臭い」

 

「やめて! 心にグサッとくるから呪詛吐くのやめてください!!」

 

それってただの誹謗中傷だよね!? 皆がそう思ってるわけじゃいよな!?

 

男が女の子に言われるとトラウマものの単語が多々あったのが気になるけど全力で忘れよう。

 

「職員室の前で堂々と不純異性交遊のお誘いはいけないぞ?」

 

「は、はいっ!?」

 

「ちっ」

 

何かいきなり沸いた。

 

背後からの声に振り向くと、そこには一人の女生徒がいた。それは何度か見た顔だった。

 

「………なんだ、生徒会長か」

 

「はぁ、空気読んでくださいよ残念会長」

 

「おねえちゃんそんな挨拶されたの初めて!?」

 

『驚愕』の文字と書かれた扇子を手にして鳴きそうな(誤字ではない)顔で言うIS学園生徒会長更識楯無は言った。

 

「何のようですか? 変態生徒代表」

 

「織斑一夏くん、貴方まで!?」

 

「残念変態さんのイカれ具合は全校生徒に知れ渡っていますからね」

 

「真季奈ちゃん! もう原型残ってないわよその呼び名!」

 

この人は皆ご存知、IS学園の生徒会長、更識楯無さん。この人と直接会うのはこれが初めてだけど、何度かその姿は見ている。クラス対抗戦で志波さんと一緒に俺を公開処刑にしたり先週の始業式で俺を文化祭の景品にしたり……あれ? この人俺の敵じゃね?

 

「今日はね、織斑一夏くんに用事があって来たのよ」

 

「お断りさせていただきます」

 

「はやっ!? え、 なんで!?」

 

コンマ一秒の早業で頭を下げて断りを入れた。何故かって? 嫌な予感しかしないからだよ!! こちとら毎日志波さんの折檻を受けて過ごしているんだ! めんどくさそうな事への危機察知能力はもはや達人クラスだぜ!

 

「それで何の用なんです? 聞いてあげます。……織斑くんが」

 

あ。おのれ志波さん、俺をめんどくさいことに突き落とそうとしてるな?

 

「あ、うん。彼をコーチしてあげようと思って」

 

「間に合ってます。コーチならもういっぱいいますし、何より志波さんがいますから」

 

そう、『白式』と近い仕様の志波さんが俺のコーチにはピッタリなんだ。怖いけど。酷いけど。鬼のようなシゴキだけど。……でも問題が。

 

「それは真季奈ちゃんが記憶をなくす前の話よね?」

 

「う」

 

そうなのである。記憶をなくしてからの志波さんのIS操縦技術は驚くことに俺以下の有様なのだ。これではコーチとはいえない。

 

「それに私、生徒会長ですから更にお得よ?」

 

「へ?」

 

どゆこと?

 

「あれ、知らない? このIS学園において生徒会長っていうのは」

 

そこまで言って、

 

「会長覚悟ーーーーーーーーーーー!!」

 

またなんか来た。

 

廊下の向こうから竹刀片手に走り込んでくる女子生徒が。うん、こっちを狙ってるね。

 

「甘い!」

 

先輩は自分に向かって降りおろされた竹刀を片手で持った扇子で受け流し、手刀を入れる。

 

「ば、馬鹿な」

 

その一言だけ残して竹刀先輩は沈んだ。次の瞬間、今度は廊下の窓ガラスが割れた。なんなのもう!?

 

「もらったぁあああああああああああ!!」

 

窓から矢が飛んでくる。窓の外に袴姿で弓を構えた生徒がいて、他にも掃除用具入れの中からボクシンググローブを付けた三人目の刺客が現れた。

 

その全てが先輩を襲う。しかし、その攻撃を彼女はすべて躱す。矢は紙一重で避け、放たれるパンチは何度打たれようとかすりもしない。

 

「教えてあげる。IS学園において生徒会長とは……」

 

先輩が刺客をいなしながら何かを言おうとしていた。けど、

 

「……うっとうしい」

 

「「「ひぃっ!?」」」

 

静かに怒気をはらんだ志波さんのその一言にその場の全員が動きを止めた。

 

「し、志波真季奈!? どうしてここに!?」

 

「あわわわわわ!!」

 

志波さんを見た瞬間固まる二人の刺客。もう一人も窓の向こうで震えていた。気の毒に。

 

「ボクシング部部長、部費を使って部員らと校外の男子と合コン」

 

「え」

 

「剣道部のあなたは確か部長である先輩を蹴落としたがってましたね?」

 

「いやちょ、」

 

「弓道部の彼女は……あぁ。部室の拡張をしたがってましたね。主に『グッズ』の置き場に困って」

 

「(絶句)」

 

志波さんが三人の刺客達の動機というか罪状をすらすらと述べていく。あんたら何やってんの!? あとグッズってなんの!?

 

「それで? いつまでわたしの前で醜態を晒すのですか?」

 

「「「い、いやぁああああああああああああああああああ!!」」」

 

顔を恐怖に染めて引き攣らせながら逃げ出す三人。あ、一人コケた。よっぽど怖かったんだろうなぁ。

 

「で? 生徒会長というのは?」

 

「さ、最強であれ……」

 

「え? 志波さん生徒会長だったの?」

 

「違いますよ失礼な」

 

「真季奈ちゃんは『最凶』の方だから!! あと失礼って何よ!?」

 

まぁ確かに嫌だよなー。この学園の生徒の長って。でも志波さんがその座に収まってても違和感がないのが不思議だ。

 

「椅子にふんぞり返ってワイン片手に高笑いしてそう」

 

「学校でお酒なんて飲むわけないでしょ?」

 

「学校じゃなくてもダメだからね未成年!!」

 

あ、駄目だ空気がカオスになってきた。

 

しょうがないから先輩について行ってあげた。涙目で喜んでいたけど問題ない。ちゃんと先輩の顔を立てられるんだぜ俺?

 

ちなみに、宿直室には志波さんも住んでいることに後から気づいた。

 

「志波さんの貴重なデレ期がぁあああああああああああああああああ!!!」

 

後でめちゃくちゃ後悔した。ちくせう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑くんに恥をかかせられた志波真季奈です。腹いせに今度ちょっときつい御仕置きをしようかと思います。

 

でも今は傷心のわたしは明日への英気を養うために友人との一時を過ごそうと思います。

 

そんなわけで更識簪ちゃんと一緒に篠ノ之箒ちゃんの部屋に突撃、今日の晩ご飯! です。

 

「いやどういうわけだ!?」

 

「すいませんね箒ちゃん。これには深い訳があるのですよ」

 

「うん。ごめんね」

 

箒ちゃんのベッドでゴロゴロしながら謝罪します。あ、カッシーはちゃんと部屋の備え付けの椅子に座ってますよ?

 

「全然謝っているように見えないが……何があったんだ?」

 

「えぇ実は……」

 

それは遡ること三十分前……。

 

 

「というわけで。カッシー、ガイナー」

 

「うん。マッキー、ライダー」

 

カッシーこと更識簪ちゃんと遊ぶことにしまた。廊下で待ち合わせをし、二人で決めた挨拶をします。

 

わたしは腕を組んで仁王立ち、カッシーは両腕を斜め水平に上げての挨拶。うん、さすがポーズが堂に行っています。腰のひねりが決めてですね。流石は同好の士です。

 

「今日カッシーのお姉さんに会いましたよ」

 

「え? マッキー大丈夫だった? あの変態、今日は更衣室でずっと正座してて気味悪かったんだよ?」

 

「あんなのが実の姉だなんて気の毒ですねぇ」

 

まぁ、更衣室で正座しているよう命令したのはわたしですが。そういえば良しと言いに行くのを忘れてましたね。なのにさっきわたしと織斑くんの前に現れたとは……御仕置きが必要ですね。

 

「嫌なことは忘れて、今日は朝までオールでDVDの鑑賞会としようじゃありませんか」

 

「うん。じゃぁ私の部屋からDVD取ってくるね」

 

「一緒に行きましょうよ。今日は何を見ます? アニメ? 特撮? 映画?」

 

「昨日アマ●ンで予約してたエルドラ5のボックスが届いたんだ」

 

「おー。いいですねぇ」

 

他愛もない会話をしながらカッシーの部屋まで一緒に向かいます。カッシー、簪ちゃんとは同じアニメ、特撮好きという趣味の下仲良くさせてもらっています。記憶を失う前の『志波真季奈』もそうだったとか。そのおかげか、きっかけはケータイの着信履歴が一番多かったのが彼女だったのでコンタクトをとったのが大きかったです。わたしが記憶喪失で学園内で右も左もわからない時に色々と教えてもらいました。

 

ほんと、『色々』と。

 

「じゃぁ、取ってくるね」

 

「はいさー」

 

カッシーの部屋の前。ドアを開けて中に入る彼女と見送るわたし。

 

「………あ」

 

「「……………………………」」

 

頭にパンツを被った変質者がいました。あぁ、これが変態か。

 

失礼。あまりの光景に言葉が足りませんでした。

 

カッシーがドアを開け、中に入るとすでに誰かがおりました。同室の子かと思ったのですが違います。その子はまだ部活中の筈ですので。では誰か?

 

「……ナニシテルの? お姉ちゃん?」

 

はい。カッシーの姉、更識楯無さんが彼女の洋服タンスを漁りつつ、その下着の一つを頭に被っていました。あぁ変態だ。

 

「違うの簪ちゃん!!!」

 

「何が違うの?」

 

「……………………………………これは新しいファッションなのよ!!」

 

「法廷で会おうね」

 

カッシーはパタン、と静かにドアを閉めます。

 

「ゴメン。今日はマッキーのおすすめを観よう」

 

「………心中察します。ドンマイ」

 

不憫です。なんで神様はあんな変態をカッシーの『姉』にしたんでしょう?

 

そういうわけで今度はわたしの部屋、宿直室に向かいます。

 

「それじゃぁ今日はロボアニメでも見ましょうか」

 

「うんいいね」

 

で、わたしは自分の部屋のドアを開けるのですが……。

 

「……………グフフ、ま~きな~~~……っは!?」

 

変態がいました。デジャブ。

 

わたしのベッドでゴロゴロと寝転がっている女性、我らが担任織斑千冬。彼女はわたし愛用の枕に頬ずりしながらわたしのベッドを蹂躙していました。

 

「「……………………………………………………………………………………」」

 

「真季奈これはっ」

 

さよなら。

 

バン!! と大きな音を立ててドアを閉めました。

 

「もう勘弁してください」

 

「マッキー、ドンマイ」

 

ウチの姉も残念な人だと再認識しました。やめてくださいよもぉ。

 

変態共のせいでわたし達の部屋に帰れなくなっちゃいました。

 

 

「ということがあったのですよ」

 

「正直同情するが、それでなんで私の部屋なんだ?」

 

「同じ妹キャラじゃないですか!!」

 

「キャラ言うな! そんなことまで面倒見れんわ!!」

 

「酷い! わたしとは遊びだったんですね!? いいです! わたしにはカッシーという愛人がいますから!!」

 

「それだと私も浮気されてるだろうが!!!」

 

「え? 私、愛人だったの?」

 

「そこに反応するな!」

 

うーん、箒ちゃん大忙しですねぇ。実にボケ慨があります。

 

「遊ぶな!!」

 

いやん、怒られた。

 

さて、皆さんで遊びましょう。今夜は寝かせねぇよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー退屈だー」

 

私は篠ノ之束。天才である。人呼んで天災の束。その名の通り、世界に災害を巻き起こす異常者である。

 

その私が、世界で最高の頭脳を持った女が、暇していた。

 

「ねぇー、くーちゃん? 何かすることなーい?」

 

「研究の方はすることはないんですか?」

 

「もうノルマは終わったー。だから休むー」

 

そう、ノルマは達成している。仕事というのは計画的に進めれば効率よく進む。私たちの目的は世界の変革、『不思議の国』の建国だけど、その準備も計画通りに進んでいる。むしろ予定よりも進みすぎているくらいだ。

 

なので、今日明日くらいダラけても問題ない。つまり二日間の休みができたというわけだ。まぁ別にここは会社でもなんでもないので納期もなければ早く仕事をしろという上司もいないので勝手気ままに作業を進めても問題ないわけなのだが。そこは雰囲気の問題である。

 

「だったらご自由に休んでいてください。あ、そこどいてください。掃除の邪魔です」

 

「ぶー。くーちゃん最近容赦なくない?」

 

「束様がだらしないんです」

 

くーちゃんことクロエ・クロニクル。彼女はそう言って手にした掃除機を使って部屋の掃除を行っている。束の研究所兼秘密の隠れ家の衛生管理は彼女の仕事だ。それも、住人である篠ノ之束と志波蒔春の二人は揃って研究者で、熱中すると完全に周りが見えなくなるタイプだったからだ。放っておけば三日は風呂に入らないとか当たり前である。当然、部屋も汚れる。ならば自分が掃除するしかないという結論だ。要するに、苦労人である。

 

「いーもん。テレビでも見てるもーん」

 

そうふて腐れて束はテレビをつける。どうせつまらないニュースしかやってないだろうと見てみるが、

 

『先日、ブリュンヒルデこと織斑千冬さんの熱愛発覚というニュースで世間を賑わせましたが………』

 

ん? ちーちゃん?

 

ちょうど『親友』のことが報道されていた。

 

「え? ちーちゃん、とうとう彼氏できたの?」

 

『その結果、どうやらIS学園で軽い暴動が起きたようです』

 

「なんで!?」

 

天災の頭脳を持ってしてもニュースキャスターの言葉が理解できなかった。どうして恋愛ニュースで暴動事件に繋がるの? と。

 

『こちらが現場の光景です。……あー酷いですね。見てくださいこの光景』

 

つられて画面を見る。そこには報道陣に追われる取材対象の友人と黒い柴犬の姿があった。しばらくすると金髪の女性が出てきてISを纏って攻撃を始めたり、おじいさんがチェーンソーを振り回しながら大立ち回りをしていた。

 

「なにこれ、面白い」

 

実に馬鹿げた光景だ。いつの間に世界はこんな姿を見せるようになったんだろう?

 

『次のニュースです。IS学園で文化祭の準備が始まったようです』

 

「あー、もうそんな時期かー」

 

懐かしいと思った。学園が出来たばかりの頃は自分も来賓として参加したものだ。

 

『今年は世界で唯一の男性IS操縦者である織斑一夏くんの存在が気になるところですね』

 

そうですねーと適当に相槌をうつ。この手の報道は嫌というほど見た。とりあえず『織斑一夏』の情報を出しとけば視聴率が取れるからだ。

 

つまらな…

 

『先ほど入ってきた情報によりますと、どうやら彼は女装しての接客や演劇の主役兼カモ。さらにこの文化祭の景品とのことです。いやぁ人権ってなんなんでしょうねぇ』

 

「おいこら待て」

 

何から何までおかしかった。一体何時からIS学園はこんな魔窟と化したのか。一応造った者の一人として心配になってきた。

 

「たまには街へでも行ってみようかなー?」

 

そう思い、時間があるので行動した。

 

そしたら、

 

「な、なんでマッキーが!?」

 

彼女が街にいた。

 

 

 

 

 

変態による、変態たちの一日が終わりその翌日。わたしは一人で街に買い物に来ました。織斑くんも誘ったのですがどうも都合が悪かったようです。また何か厄介ごとでもあったんですかね?

 

他の方々も部活に文化祭の準備など立て込んでいるみたいなので。

 

「ぼっちじゃないですよ?」

 

聞いてません。

 

「さて、大体のものは見繕いましたし、このまま帰ってもいいですけどねー」

 

買ったのは織斑くん用のものばかり。帰ったらこれで遊ぶんだー。

 

でも一つ気になることが。

 

………つけられてる?

 

ふむ、周りにはそれらしい人はいません。しかしこの背中に突き刺さる視線は一体?

 

わたしがいるのはショッピングモールの本屋さんです。最初は店員さんや他のお客さんに見られてるのかなと思いましたがちょっと違うようです。

 

さっとこの場の人数を数えます。そうするとおかしな点が。数が合いません。自分に向けられている視線とこの場にいる人間が見ている視線の向き。気配の数が合わせたら一人分人数が足りません。

 

どうやら姿を隠している人がいるようです。それもかなり高等な方法で。

 

「ふむ、これは……機械的なジャミング? 光学迷彩ですかね?」

 

わずかにイオン臭がします。これはその特徴です。ならば。

 

「熱源探知しちゃえばいいか」

 

とりあえず鞄の中になんか入っていたかな? 探知機作っちゃお。

 

 

 

 

 

「あれ? マッキー、トイレ入っちゃった」

 

どうしよう? つい後をつけちゃったけど、別に用事があるわけでもなし……。

 

「ううん。ホントは何か面白いものが見えると期待してたんだよ。でも、そう上手くいくわけないか……」

 

志波真季奈あるところに騒ぎあり。多分そういうことなんだと思う。最初はいっくんが中心かと思ったけど、やっぱり違う。

 

彼女を見てれば何かがわかるかもしれないと思ったけど……。

 

「直接会わなきゃダメかなー」

 

「なら存分に話そうじゃありませんか」

 

「それが出来たら苦労は……って、え!?」

 

な、まさか!?

 

「やっほー。 みんな大好き真季奈ちゃんです。貴方は誰ですか?」

 

「あ、え? うそ。どうして」

 

考え込んでいる隙を突かれたのか、気づけば志波真季奈が私の肩を掴んでいた。

 

そんな? 何故? 姿は見えないはず。ひょっとして見えてる? そんなはずは……。

 

「さっき熱源探知が可能なスマホ用のアプリを組んだんです。まぁバッテリーが恐ろしく減っちゃうのが難点ですが」

 

………その手があったか。

 

マッキーならプログラムさえ組めればなんでもできる。それを忘れていた。それに彼女はちーちゃんに育てられたのだ。尾行にだって簡単に気づかれるのは当たり前だ。

 

「……は、ハロー。天災の束さんだよー」

 

「え…………?」

 

自身を覆っていた迷彩を解く。これで真季奈の目の前に自分の姿が映っているはずだ。ほら、もう目があった。

 

う、うぅ視線が痛い。マッキーは私のこと大嫌いなんだよねぇ。何度も本気で殺されそうになったしさぁ。ちょっと実験とかデータ取りの為に利用させてもらっただけなのに酷いよ。

 

でも、できれば仲良くしたいんだよね。今後のこともあるし。

 

マッキーなら私たちが創る『不思議の国』の住人にピッタリなんだし。

 

そ、それに。

 

「束って、篠ノ之束? うそ、ホンモノ?」

 

あれ?

 

「あ、初めまして。わたしは志波真季奈といいます。うわぁ、一度お話してみたかったんですよ」

 

……………………え? え? え? 

 

「あ、あの、マッキー? どうしたの? 初めてって」

 

「あれ? ひょっとして以前会ったことがあります? すいません。わたし今、絶賛記憶喪失中なんですよ」

 

記憶、喪失? 

 

………………………。

 

………………………………………。

 

……………………………………………………。

 

え、

 

「えぇえええええええええええええええええええええええええ!!?」

 

どうしよう?

 

志波真季奈あるところ騒動ありっていうか、こんな事態は全く想定してなかったよ!?

 

 

 

 

 

 

さてどうしよう?

 

私は今、マッキーこと志波真季奈と一緒にカフェにいる。

 

どうしてこうなったんだろ?

 

カフェはショッピングモールの中にあり、私たちは丸テーブルを挟んで椅子に座っている。マッキーは笑顔だった。そんな顔見たこともないのに。私を恨んで恨んで、憎み切っていたはずなのに。

 

記憶を失ったというのは本当らしい。くーちゃん、報告を怠ったね? 後で説教しよ。

 

「束さん、何飲みます? それと食べ物は? もうお昼食べちゃいました?」

 

「あ、じゃ、じゃぁコーヒーで。それとサンドイッチかなぁ」

 

「わかりました。じゃ、わたしはカフェオレと、サンドイッチかなわたしも」

 

あ、マッキーは甘いのが好きなのかな? でも、サンドイッチ頼むのはずいぶん即決なんだなぁ。

 

「サンドイッチって楽なんですよねぇ。特に何か考え事してる時とか片手で食べられますし。サンドイッチ伯爵? でしたっけ? よくやった! て感じですよね」

 

「あ、うん! そうだよねぇ! でもそればっかり食べてると怒られちゃうんだよね。もっと栄養考えろ! って」

 

「ですよねー。しかも手作りするのなんて面倒だから」

 

「コンビニで買いこんで机の周りがラッピングだらけでゴミだらけになっちゃって」

 

「「「とうとうゴキが沸いちゃって!!!」」」

 

きゃーーーーーーー!!

 

二人して声を上げて叫ぶ。周囲の目が気になるが問題ない。マッキーと私。二人揃えばこんな店を貸し切るのなんて簡単だった。

 

他に客はいない。

 

意外と言うかやはりと言うか、マッキーと私は話が合った。主に研究者としての話題ではあるが。やはり研究の内容は違えど行動は似通ってくるらしい。驚くほど共感できる話題が多かった。

 

「しかもすぐに痛んじゃうからそのうち乾燥系の食品に移っちゃうんですよねぇ」

 

「そうそう。特に研究が大詰めになるほど外に出なくなっちゃうから余計にね」

 

あれ? そもそもなんで私はこんな『研究者あるある・食事編』みたいなことを話してるんだろう? これはこれで面白いけど目的とは違う。何かが違う。

 

「そ、そうだ! マッキーは最近何か面白いことあった? 例えばIS学園でとか」

 

それだ。『面白いこと』。私が知りたいのはこれなんだ。

 

「面白いこと、ですか? そうですねぇ? 変わり映えのない日常ばかりですが、強いて言うなら……」

 

「うんうん」

 

マッキーがカフェオレの入った容器を弄びながら宙を見て考え込む。

 

「精々、織斑くんを教室の窓から突き落としたくらいですかねぇ」

 

「はい!? どうしてそうなったの!!?」

 

こちらの常識を軽く吹き飛ばす返事が来た。

 

え? これが日常の中から強いて選んだ出来事?

 

「どうしてって、織斑くんですから」

 

「そのいっくん=窓からのダイブっていう公式の説明式が理解できないよ!」

 

なにその概念!? IS学園じゃテストでそういう問題でも出るの!? 《織斑一夏が窓のそばにいます。この後彼に行う適切な行為を考察し説明せよ。》みたいな!? 

 

「あ、それいいですね。今度織斑先生を脅しもとい頼み込んで作ってもらいましょう。そしてその回答を貼り出せばさらに完璧です」

 

「いま脅すって言った!? ちーちゃんを!? しかも処刑方法を本人に見えるようにするってどんだけ鬼畜なの!?」

 

「そうです? どれにしよっかなー? て感じで選ぶ楽しみができるじゃないですか」

 

「そんな住宅探しの広告じゃないんだから無理でしょ!? え? いっくんってそんな末期なの!?」

 

「まぁそれなりに悦ぶくらいには」

 

おぅ……じーざーす………。

 

知らない間に友人の姉弟が残念なことになっていた。君たち、いいのかいそれで? 人生をどこかで間違えてないかい?

 

「ごめんマッキー。それじゃぁマッキーの言う日常っていうのを教えてもらっていいかい?」

 

「いいですよ? えーっと……まず織斑くんをビンタして挨拶。その後食堂で織斑くんを椅子にして餌を与えながら朝食を食べて、教室では休み時間ごとに土下座させて授業の復習を。昼休みは昼食の時は朝と同じで、休憩中は主にわたしの全身マッサージを。放課後はISの訓練をしてパシらせたり踏みつけたりですかねぇ?」

 

「いっくんはなんでそれで怒らないの!?」

 

とんでもない日常だった。いっくんぇぇ………。

 

「あ、あの、ねぇ? マッキーはそれ、楽しい?」

 

「そうですねぇ。織斑くんの困り顔とか見てるとドキッとしますねぇ。泣き顔なんてゾクゾクします」

 

「………駄目だ末期だ。マッキーだけに」 

 

「それに織斑くんもそれが嬉しいみたいですよ? いつも殴る度に恍惚の表情を浮かべてますし」

 

「本当に駄目だこの子ら。早く何とかしないと」

 

自分が狂人という自覚はもちろんあった。でもこれはそれ以上かもしれない。というか、

 

こんな関係を容認しているIS学園がまずヤバイ!!!!

 

『不思議の国』、絶対に創ろう!! でないといっくんの生活がピンチだ!

 

「ねえマッキー! 外行こう外! 私街とかも案内してほしいなぁ!」

 

「え? いいですけど、どうかしました? なんか急にテンションあがりましたけど?」

 

「そんなことないですよ!?」

 

「は、はぁ?」

 

強引だけどちょっと空気変えよう! でないと呑まれる!!

 

 

 

 

 

そういうわけで、マッキーに連れられてショッピングモールを出た私。ちゃんと私は顔がバレないように帽子とメガネを付けている。これで正体は隠せるかな? でも別にこれと言って目的地があるわけでないので本当にその辺をぶらぶらしているだけなんだけど……。

 

「あ、束さん。あそこが巷で有名な行けばとりあえず驚きと出会える場所、ウォーターワールドです」

 

「ほ、ほほぉう?」

 

移動中のモノレールの窓越しに見えた遊園施設を指さしてマッキーが言う。

 

「なんでもテレビ顔負けのアクションショーが見られるだけでなく、ガチで制作されたロボットが使われているそうです」

 

「ガチってどれくらい?」

 

「友人が言うには、ISと戦闘しても遜色ない戦闘力を誇るとか」

 

「それ最早兵器レベルだよね!? 遊園地の備品レベル超えてるよ?!」

 

とか。

 

「あぁ、束さん。あれが最近有名になったSM倶楽部です」

 

一軒のピンクの看板が目立つお店を紹介された。店の名前は『@クルーズアダルト』だった。

 

「なんで有名になったの!? 確実にR18の建物だよね!?」

 

「それが逃走中の強盗犯が立て籠もって、それを退治した伝説のSM女王様がいたとか」

 

「どんなレジェンド!?」

 

「他にも……」

 

「まだあるの!??」

 

「変態仮面が夜の街を飛び回るらしいですよ?」

 

「保護者の皆さーーん!! 戸締りはしっかりお願いします!!」

 

他にも。

 

「ねぇマッキー? なんか犬とか猫が多くないかい?」

 

住宅街を歩いていると、さっきから道端に野良のワンちゃんや猫ちゃんと何度もすれ違っていた。どこかに集落でもあるんだろうか?

 

「それはですねぇ。あぁ、そこの路地を覗いてみてください」

 

そう言ってマッキーは近くのビルとビルの間の路地を指さす。それを目に追い、中の様子を伺うと、

 

「……あぁやっぱり。ここにいましたか」

 

「? なんだい?」

 

そこでは、

 

 

 

「ワン! ワンワン! ワワン!!」(デウスの兄貴! 隣のネコ共が不穏な動きを見せていますぜ!)

 

十数匹の犬の群れの中、茶色い毛並みの野生味たっぷりの野良犬が勢い良く吠えていた。

 

『ワン、ワゥン?』(なに? それは確かか?)

 

それに答えるは黒い毛並みの柴犬。というかお前何してんの?

 

「ワン! ワフ!」(ヘイ! どうも玉三郎のやつぁ最近入った新入りのおかげで調子に乗っているみたいでさぁ)

 

『……ワフー、ワン、ワン?』(……ふむ、まさかな? お前はどう思うグレー?)

 

そう言って灰色の毛並みの一回り大きな犬に尋ねる。

 

「バウ! バウ、ババウ!!」(やられたらやり返す。だがこちらからは大きな動きを見せるな。あまり騒ぎを大きくすると人間共がやってくるぞ!)

 

「ワ、ワフゥ」(へ、へぇ)

 

 

注)これらの会話は全て犬語です。何を言っているのかは真季奈達にはわかりません。

 

 

「なにこれ?」

 

「最近名物になりつつある犬の集会です。野良なんでもちろん餌をあげちゃいけませんが、遠巻きに眺めている人たちとか多いんですよ」

 

「……あそこにいるの君んとこのデウスくんじゃ?」

 

紛れも無く機械犬のデウスだった。

 

「以前家から追い出したときに野生に帰ったみたいです。たまにあぁして遊びに行っているみたいですよ?」

 

「トモダチデキテヨカッタネ」

 

「あ、カチコミですよ!」

 

 

 

「ミャー、ミギャァアアアアアアアアアアアアア!!!」(よぉグレー。今日がお前さんの命日じゃぁああ!!)

 

犬の集会に大挙して押し寄せてきた猫の軍勢。その中でひときわ大きく、リアカーに乗せられやってきた老猫が大きな声で鳴いた。

 

『ワン! ワンワンワン!』(来たぞグレー! そしてお前らもか!? 恥を知れこの化け猫共!!)

 

「おいおい、テメェに言われたかねーぜ? このデクノボー」

 

「おいクロ。僕は剛くんに晩ご飯の買い物を頼まれているんだ。帰してくれ」

 

『ワン、ワン』(そうだぞクロ。ミーくんは帰してやれ)

 

「ああああああああ!!! うっせーーー!! いいから付き合えよミーくん! あと、デウスてめー! 吠えてねーで喋れよ!」

 

『ち、このサイボーグ共が!』

 

 

「ねぇ、マッキー? あそこにいる二匹の猫、二本足で立ってない?」

 

「デウスだって立てますよ?」

 

「というか、ミーくんって呼ばれた猫、メカメカしいよね!? あ! あのクロネコ毛皮にタグが付いてる!? ヌイグルミ被ってるよアレ! え? サイボーグってどゆこと!?」

 

クロちゃんとミーくんはサイボーグ手術を施された猫ちゃんです。危ないので街で見かけても近づかないでください。

 

 

 

「破壊のプリンス、クロちゃんのお通りじゃぁぁああああ!! オラ喰らえこの犬野郎!!!」

 

ドガガガガガガガガガガガ!!!

 

『当然のようにガトリングを打つなこのアホーーー!!』

 

パァアアア! とデウスの前足の一部が部分展開し、『テンガイオウ』の腕が出現する。それがクロちゃんの放ったガトリングの弾を防いだ。

 

 

「マッキー!!!? あの猫お腹からガトリング出したよ!? どうなってるの!?」

 

「すごいですねぇ」

 

「それで済む問題!?」

 

行くぞミーくん! えぇ? めんどくさいなー。ドゴォン!! 『貴様!? なんだそれは!?』

 

「おぉ凄い。周りの廃材を取り込んで巨大化しましたよミーくん」

 

「あんなモノ作れる科学者がいるだなんて……」

 

見ていたら狭い路地裏を圧迫するかのように巨大な機械の塊が出現した。というかビルの一部がなくなってるよ?

 

『ちぃ、ここじゃぁ不利か!?』 逃すなミーくん! ガッテン!

 

「あ、行っちゃった」

 

「ま、街中に……騒ぎにならなくちゃいいけど……無理だよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい! ○○地区で巨大メカが暴動を起こしているぞ! 周りの自動車を次々と取り込んで更にでかくなっているらしい!!」

 

「なんだって!? 今すぐ出動だ! 遅れるな!!」

 

「畜生! なんだってこの街にはおかしな奴らがこんなにもいるんだ!!」

 

「IS学園があるからだろ!? 誰かグレネードかっぱらってこい! 今度の文化祭で叩き込んでやる!」

 

「緊急車両が通ります! 道をあけてください!!」

 

「やるぞテメェら!! 今日こそは俺たちが街の平和を守るんだ!!」

 

「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」

 

 

 

 

ものすごい数のパトカーとかヘリが集まってきてる。なにこれ大惨事。

 

逃げるデウス。追う巨大な走るメカ。それを追う警察。あ、パトカーが食べられちゃった。

 

「どうです? なかなか面白い街でしょう?」

 

「とりあえず子供はタフに育つよ!!」

 

この街はいろんな意味で大丈夫だろうか? 私が何か事件を起こさなくてもトラブルの渦のまっただ中だよこれ。

 

並みの根性じゃ生きていけないと思うよ。うん。

 

「あの、マッキーはさ? 記憶喪失だって言うけど、実際はどれくらいまで回復してるの? その、記憶が戻っているって意味で」

 

「記憶ですか? うーん、そうですねぇー」

 

志波真季菜はなんでもないことのように軽い口調で言う。

 

「例えば、一枚の写真があるとするじゃないですか。いろんな思いでの詰まった人達が映った写真が」

 

「え? うん」

 

写真? 何の話だろう?

 

「それを砕いてパズルにしちゃったとしたら、どうします?」

 

「そりゃあ、パズルになってるんならもう一度元通りにすればいいんじゃない?」

 

「そうですね。じゃぁそのパズルの一つ一つを記憶だとしたら、どのくらい元通りに組みあがれば『元の志波真季奈』に戻るんですか?」

 

「………何を言っているんだい?」

 

おかしい。やっぱりこの子はどこか変だ。どこか………ズレている。

 

「実を言いますと、記憶なんてもうあらかた戻っているんですよ。織斑くんを殴ってるとその度に」

 

「…………………………………………………………………………」

 

「残ったピースは『志波真季奈』が映った部分だけ。後はもう綺麗にかみ合って『知識』として『わたし』の記憶になっています」

 

「君は……誰だい?」

 

「『わたし』は『わたし』ですよ。『志波真季奈』なんかじゃない。だから、返してあげない」

 

目の前の『志波真季奈』にしか見えない別人の少女はそう言った。

 

そうか、ようやく分かった。この娘は違う。これは、

 

「『君』は、マッキーに成り替わりたいんだね? 何の為に?」

 

「簡単なことですよ。『わたし』は織斑くんが大好きなんです。愛してます。ラブしてます」

 

「……はい?」

 

あれ? ちょっと変化球が飛んできたよ?

 

「『わたし』は、織斑くんといちゃいちゃしたい。触りたい。くっつきたい。デートしたい。手を繋ぎたい。キスしたい。押し倒したい。肉欲に溺れたい。孕みたい。織斑くんの子供を産みたい。育てたい。ずっと、ずっと一緒に、死ぬまでいたい」

 

「え、や、ちょ、ちょっと!」

 

「だから、『志波真季奈』になんて、過去の女になんて渡さない。『今』は、『わたし』が志波真季奈です。 記憶が戻って、それで良かったね。『元』の志波さんに戻ってくれたんだね、なんて言わせるものですかっ」

 

「そうやって、いっくんが自分じゃない誰かを見ているのを感じ続けてまで愛されたいの? それで『君』はいいの?」

 

「みんなを忘れた『志波真季奈』が、今度はみんなから忘れられればいいだけです。そうすれば『わたし』が残ります。『わたし』が愛されるんです」

 

やっぱりこの娘は………狂ってる。

 

篠ノ之束は狂人である。それは自覚している。自分は天才で。常人よりも遥かに優れたスペックを持つ肉体で生まれて。そのどちらの才能も十二分に生かしてきた。

 

そんな私だからこそ、周りの凡人達との違いに絶望し、ゆっくりと狂っていき、狂人になった。

 

なら、私と同じ境遇の志波真季奈は? 記憶を失っているとはいえ、彼女は?

 

同じだ。同じように狂っていた。それも、『愛』に。

 

この娘の境遇はどうだった? いつも一人ぼっちだ。学校に行かず、行けず。親に会わず、会えず。誰かと遊びたくて、相手がいなくて。

 

だから一人。彼女の才能がそうさせた。私がさせた。

 

故に、「ALICE」を造った。造ることができた。

 

あぁ、今理解した。

 

「ALICE」とは……!!

 

 

「束さん?」

 

「……あ、ううん。なんでもないよ。マッキー」

 

やっぱり、この娘………欲しい!!

 

「ねぇねぇマッキー? もしも、もしもの話なんだけどさ」

 

「はい? もしも、ですか?」

 

そう、あくまで今は『もしも』。

 

 

「君のお父さんが生きていて、君と新しい家族と一緒に暮らしたいってことになったら。どうする?」

 

 

どうする? 『君』は。

 

「とりあえずボコボコにしてやりますね」

 

「………え?」

 

あ、あれ?

 

「半殺し、いえ。九分九厘殺しにした上で市中引き回しの刑に処します。だって子供残してママのお葬式にも来ないでフラフラと余所の女とよろしくやっちゃうようなくそ親父でしょ? そんなのとはい、わかりましたと暮らせますか」

 

「え、え? えーーーーーーー?」

 

あー、うん。そうかも。

 

「どうしました? 『もしも』、の話でしょう?」

 

「うん、そーだよ! ごめんねぇ。変な話して」

 

今はまだ無理だね。

 

でも、いつか迎えに来るよ。

 

私のたった一人の同族。

 

「あぁ、それと貴方に会ってみたかったのは本当ですよ? なにせ『わたし』は篠ノ之束が大嫌いな『志波真季奈』ではありませんから」

 

そうかい、嬉しいねぇ。

 

じゃぁ、また会おうね?

 

 

 

 

 

 

IS学園にて。

 

「あ、織斑くん。今日はこれから暇ですか?」

 

「志波さん! うん、大丈夫だけど?」

 

帰宅したわたしは学生寮の廊下にて織斑くんと出会いました。ふむ、時間があるのならちょっと付き合ってもらいましょう。

 

「今日買物して来たんですけど、本を買ってきたんです。一緒に読みませんか?」

 

「あぁいいぜ。でも本を? 一緒にってどういう……」

 

訪ねてくる織斑くんを余所に、わたしは自分の鞄の中からその買ってきた本を取り出して見せます。

 

「はい! 『人のおちょくり方500選!』です! 一緒に読んで楽しみましょうね!」

 

「わーい! 俺の処刑法を音読してくれるんですねチクショーー!!」

 

ふふ、絶対に、離してあげませんからね?

 

 

 

「それにしても」

 

速報! IS学園新聞部。

 

本日未明、街を謎の巨大な車両が暴走。付近の車両を次々と解体し吸収していった。目撃者の証言によると、黒い犬を追っていたという。またネコの頭が付いていたり、黒い猫が笑いながらガトリングを乱射して街中に被害を出していたと情報が混乱している。事件の究明を求む。

 

被害に遭った方々の言葉。

 

「……助けて、助けてエルドラ5!!」

 

「猫がぁ……おのれ化け猫めぇええ」

 

「師匠ぉぉ、僕の車返して」

 

「ミーくん。ご飯……」

 

 

事件の解決を願うばかりである。

 

 

「どうしてこうなった?」

 

 

それはまた別のお話。

 

 

 




はい。どうでしたでしょうか?

文化祭。参加する生徒のテンションによって成功するか否かが決まるイベント。

僕の学生時代はそれはもう見事にテンションが低かったです。……お察しを。

タイトルの科学者とは篠ノ之束さんです。彼女もようやくいい感じにキャラが壊れてきましたね。かといってイイ人になった訳ではありませんのであしからず。

それとま気長記憶を取り戻したくない理由も出しました。

それは変だなー? と思う箇所がありましたら是非とも。

感想待ってます。

追記

一部修正しました。合い言葉はイエス・ショタリータ・ノータッチ!

コミックボンボン万歳。

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