IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

今回、ギャグは多くありません。シリアスに入っていきます。

臨海学校でのトラウマ、シリアス回を三話の予定でお送りします。

これはまだ一話目ですので、皆さん、気をしっかり持ってください!

それではどうぞ。


竜虎、胎動する 前編

「私だって最初はこんな会社に入るなんて思ってもみなかったのよ? でも当時は就職難で……ISが普及して女尊男卑の社会が出来始めていたってそれは逆に言えばそれだけ女性に対して高い能力が期待され初めてたわけで、それだけ採用試験も厳しくて厳しくてて……気が付けばもう後がないってくらい追い込まれてて。そんなとき見つけたのが今の会社なのよ! 雇用条件は女性優遇! 学歴は大卒ならOK! ちょっと素行不良でも全科一犯までなら問題なし!! むしろちょっと悪いことにも挑戦してみよう! って!!」

 

『おい待てこら』

 

「でも、だからってガチで犯罪会社だと思っても見なかったのよ!!!!」

 

『あー』

 

「業務は他社の製品の盗品のデッドコピー作るための産業スパイが主だし、直接代表候補生に会って詐欺まがいの契約を結ばせたりっ、ていうか詐欺なんだけどね!?」

 

『お、おぉふ』

 

なんというか、怒涛の告発だった。

 

ベンチで項垂れていた巻紙礼子ことオータムなる女性の、その弱った心に漬け込み酒に酔わせて洗いざらい情報を聞き出そうとした機械仕掛けの黒柴犬ことデウスにとっては目論見通りの展開ではあったのだが……なんというか、その意外だった。

 

『……『亡国機業』って文字通りブラック企業だったんだなぁ』

 

聞けばまぁ出るわ出るわ。

 

入社して即の説明会で不景気による初任給の5%カットとか、残業代の出ないサービス残業なんてのはザラ。有給休暇は入院したときにとっておけ。というか体調管理は当たり前。あれ? おかしいな? だったらいつ使うの? という矛盾。

 

週休二日は甘えです。日曜日は自宅待機日だ馬鹿野郎。遊びたければ定時までに最低三日分働いてから帰りな。だけど余裕ができたら同僚のフォローもしろよ? と結局付き合い残業。

 

そこまでならどこにでもある唯のブラック企業。だがしかし、この話の会社は一味違う。

 

「仕事(産業スパイ)をミスったら会社に斬られるのよ!(文字通り)」

 

『アメリカと中国でかー』

 

そういやぁ口封じで●されてましたね。

 

………今思うとやることが大げさじゃないか? 確かに『亡国機業』は犯罪会社だ。不祥事がバレればもみ消しにかかるだろう。でも、だからって口封じに身内の殺人に至るほどに?

 

どこか現場と上(上司)の考えがおかしい……いや、これはもうトップが……、

 

「それに最近入った後輩がもう生意気で生意気で……ことあるごとに人のことを馬鹿にするわ見下すわ……なのに私よりも仕事できるものだからこっちも強く言えなくて~~!! 今日も一緒に来てるのに勝手にどこかに遊びに行くし!」

 

『まぁまぁ、もう一杯もう一杯』

 

「あと、本格的におかしくなったのはモンド・グロッソでの仕事以来かなー? あれで社長の奥さんがなんか死んじゃって、それからいっそう過激になったっていうか」

 

『………そうか』

 

元々、『亡国機業』は古くからある犯罪組織だ。その実態が掴めていなかったから今まで更識やいかなる国家も壊滅にまでこぎ着けなかったが、その最たる理由が『犯罪組織として、しょうもないレベル』だったからだ。やることは悪どいがたいして害にならない。ならほっといても問題なくね? ぐらいの認識だった。

 

それが、ある時期を境に凶悪化した。本当の意味での犯罪組織に。

 

軍事施設への強襲。要人の誘拐、暗殺。ISという『兵器』の違法所持に強奪。そして生産まで。

 

何故か?

 

『(やはり……貴様か? 何を企んでいる、志波蒔春)』

 

ちなみに、ベンチで座る女性ガチ泣き。それに酌する犬の図である。

 

そろそろ周りの来客たちもおかしいと思い始める。最悪、警備員を呼ばれかねない。こうして馬鹿をやっていられるのも後わずかだろう。

 

『ほらほら、もっと飲んで飲んで………そして』

 

 

『目を見て』

 

 

そのとき、デウスの目が赤と青の光を交互に発するのをオータムは見た。

 

みょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょんみょん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだか、向こうが騒がしいですね?」

 

「? そうだな、なにかイベントでもやってたっけ?」

 

とまぁ、怪しげな光景が拝見できちゃうベンチからちょっと離れた場所に、二人の男女の姿があった。

 

志波真季奈と織斑一夏である。それぞれメイド服と執事服を着ております。織斑一夏がメイド服を着ていないとはどういうことかですって? 

 

土下座して靴を舐めたら許してくれました。

 

……誰が誰のをとか考えちゃいけない。いけないよ?

 

「そんなことよりも織斑くん!」

 

「は、はいなんでしょう志波さん!!」

 

ビシィッ! と真季奈が一夏を指さして言う。それに戸惑う一夏の顔は罰を待つ問題児のようだ。……例え罰を受けるいわれも何もなかったとしても。

 

しかし、そんな一夏の予想を裏切ることが起こった。

 

「今は文化祭を楽しもうじゃないですか!」

 

だきっ! という効果音を幻視する程、真季奈が勢い良く自分の体を絡めるようにして一夏の腕に抱きついた。なにごと?

 

「し、志波さん!? どうしたの!?」

 

「ふふっ、なんでもないですよー?」

 

いや、明らかにおかしい。絶対何かあるだろう、いや、起こす気だろう!!?

 

これまでの経験か、腕に美少女が巻きついているというご褒美にも似た状況で、織斑一夏が感じたのは喜びよりも警戒だった。なにせ日頃から真季奈には散々な目に合っているのだ。何か無いほうがおかしい。それこそ、裏があるんじゃないのかと疑ってしまうのが自然だ。

 

が、しかし。

 

「あ! 織斑くん!! 射的やってますよ射的!! ちょっとやっていきません!?」

 

「あ、あぁ。今行くからそんなに引っ張らないで、志波さん!」

 

自分を祭りへと誘う想い人の顔からは満面の笑顔と無邪気な少女の姿しか伺えなかった。傍から見れば、仲良く腕を組んで歩く二人の姿は、さながら勤め先の屋敷から飛び出してきた使用人カップルのようだろう。

 

だからこそ、織斑一夏には不可解である。

 

射的の出店を覗いてみる。店のカウンターにはコルク銃がずらっと並べられており、その奥には様々な景品が置かれていた。しかし、アレである。

 

「び、ビミョー」

 

「そこがいいんじゃないですか!」

 

「失礼な客だなおい!!」

 

客の反応にツッコム店主。まぁ、一夏たちの反応も仕方ない。古今東西、テキ屋の用意する景品というものは、コストのかからないパチモンで溢れかえっているものである。酷いときなどは一回五百円という値段設定にもかかわらず、置かれている景品が原価百円以下のお菓子、という例もあったりする(実話)。

 

なので、欲しいものが何一つなくとも楽しむことこそが大事なのだ。

 

それが祭りというものである。

 

ちなみにこの射的屋は外部の一般からの参加である。IS学園は国際規約によりあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないとはいえ外部との物資の流通は当然ある。衣・食・住はもちろん、IS用の機材などの搬入はもちろんそれを納品する企業などのパイプは確かに、そして根強く繋がっているのだ。

 

故にこうしたイベントがあれば出資者からの視察や来賓参加。企業の売り込みに近隣自治体との協力などは当然あるのだ。

 

この店もそんなひとつだ。他にも様々なで店が並んでいる。IS学園の生徒によるものよりも外部の店の方が多いくらいだ。

 

「おっちゃん、なに? この景品」

 

「いいもんあんだろう?」

 

「……どこにだよ」

 

この射的屋の景品。一回五百円でコルク銃を五発撃てるようだ。

 

まず比較的取りやすそうな小さな物。ここにはお菓子やらアクセサリー(玩具)が多い。が、どう見ても安物で割に合わない。欲しいとも思えん。

 

次にちょっと手こずりそうな大きさの物。……ちょっと? と首を捻りたくなるぐらい難易度が上がっている。置かれているのが時計やらマグカップやらの日用品からプラモデルやモデルガンなど。取れれば元はとれると思うけど、棚から撃ち落としたら壊れるんじゃね? ということで狙いにくい。

 

最後に大物。P●4。おいこら!

 

「あれ絶対取れないだろ! コルクなんて跳ね返ってくるわ!!」

 

「あたぼうよ! 残ったら持って帰って俺が遊ぶんだよ!」

 

とんでもない理由だった! 最初から取らせるつもりはないらしい。

 

「こうでもしないとカミさんにゲーム買うのなんて許してもらえねぇんだよ!」

 

「完全に尻に敷かれてんじゃねぇか!!」

 

「ううううるせいやい!!」

 

売上が赤字になることでさらに奥さんが怒り狂うと思うのだが……。そしたらせっかく持って帰ったPS●も売り飛ばされるんじゃね?

 

「織斑くん、わたしアレが欲しいです」

 

「え? どれ?」

 

「お? お嬢ちゃんお目が高いね~」

 

俺と店主のおっちゃんとの不毛な会話をよそに、志波さんは景品の中から獲物を吟味していたようだ。

 

その景品とは……。

 

 

 

 

「ニャン!」

 

志波さんのネコ耳メイドだと~~ッ!?

 

何度か挑戦して射的で志波さんご所望の景品を献上した俺。(五千円が飛んでいきました)

 

そうして降臨したのはネコ耳カチューシャを装備した俺の女神でした。

 

「どうですか織斑くん? 似合いますか?」

 

「……うん、に、似合ってるよ……なぁ? おっちゃん」

 

「あぁ……俺、来年からもっと仕入れようかな……ネコ耳」

 

あれ? 頭がボーっとしてうまく働かないなぁ? なんだか素晴らしいものを見ていた気がする……。

 

「もう織斑くん、ちゃんとわたしを見てくださいよ? ほら、ニャン! ニャ~ン?」

 

グハァッ!? はい死んだ! 俺死んだ!! 

 

放けた俺を下から覗き込むようにかがんで見上げる志波さん。そして両手は丸く握って、顔の前で開いたファイティングポーズのような姿勢。またの名を、『にゃんこの構え』。

 

その体勢で再度、

 

「ほら、遊ぼうにゃ~~ん?」

 

う、ふぉおおおおおおおおお!!!! エンジェルスまぁあああああああああいるっ!!!

 

志波さんの後ろにピンクのハートとかお花畑が見えた俺の目はおかしくなんてなっていないはず!! だって天使だもん! ネコ耳メイドだけどラブリーエンジェルだもの!!

 

「すいません! この子持って帰っていいですか!? テイクアウトで猫じゃらしで首輪ででででびゃあああああああああ!!」

 

「落ち着け坊主!! 気持ちはわかる! だけど我慢しろぉおおおお!!」

 

「ならその鼻血はなんだおっちゃん!!?」

 

「くそぅぉおお!! 俺だってあと十年、いや二十年若けりゃぁああああ!!!」

 

互いに肩を掴んで揺らしまくる俺と射的屋のおっちゃん。はっきりと、いや敢えて言う!!

 

この子は俺のもんじゃァああ!!! 誰にも渡すもんかぁいい(巻き舌)!!!

 

と、そこへ。

 

「見つけたぞ一夏ぁ!!」

 

「おや? 貴方は?」 

 

「あれ? 弾じゃねぇか……何してんだお前?」

 

俺の言葉通り、そこに現れたのは俺の友達の五反田弾だった。長髪の赤髪にバンダナを巻いているのがこいつのトレードマークで妹の蘭もそうだ。仲いいな。

 

「何してるんだじゃねえよ! お前待ち合わせ場所にもこないで姐さんとイチャイチャしやがって! 俺がどんだけ肩身の狭い思いをしたと思っているんだよ!?」

 

ふむ? ほぼ女子校のIS学園の前で男が一人待ちぼうけ。あ、俺なら衆人環視の目に心折れるわ。

 

「……あー、わりぃ。正直ガチで忘れてた」

 

「マジで酷いなオィ!!?」

 

「や、だって志波さん見てみ? お前のことなんて頭から吹っ飛ぶわ」

 

「はぁ? 何言って……Fooooo!!!!!」

 

「いや、なんなんですか貴方達は?」

 

俺に促されて志波さんをチラッと見た弾はその直後に絶叫を上げて膝をついた。あ、そのまま地に伏しちまった。そこまでかおい?

 

「……ちくしょう……ちくしょう……なんで一夏ばっかりこんないい思いすんだよぉ。俺だって、俺だってこんな可愛いい子と一緒に文化祭まわりてぇよぉ……こんな青春送りてぇよぉ」

 

うわぁ……。

 

土下座のような格好でガチ泣きしながら呪詛を吐く親友の姿に、織斑一夏は少々ひいた。

 

「もう、織斑くんが悪いんですよ!」

 

「え! 俺ですか!?」

 

志波さんにビシッ! と指をさされる俺。なんかしましたか俺!!?

 

「いいですか織斑くん。この世は需要と供給によって成り立ってます」

 

「え? 社会の問題?」

 

「可哀想に、ごたんだんさん。この天然女供給機に搾取され続けたのですね……」

 

「うぅ……あ、姐さん……俺、五反田弾です」

 

ちなみにこの二人、夏休みの間に知り合って姐さんと舎弟の関係になってます。そのへんの事情はまた今度どこかで。

 

「まったく、織斑くんが周りの男の子(需要)のことを考えもせずに無作為に女の子とのフラグ(供給)を奪うからこんな犠牲者が出るんですよ?」

 

「? なんのことだ?」

 

「………ごたんだんさんは織斑くんの友達には勿体ないですねぇ」

 

「あ、姐さん……俺、俺ぇ」

 

泣き崩れる弾によしよしと頭を撫でてやる志波さん。う、羨ましくなんてないんだからね!

 

「仕方がありません。わたしが一肌脱ぐことにしましょう……ごたんだんさんは誰か気になる人はいないんですか?」

 

「いや、弾にはそういう人は……」

 

「さっき受付でメガネかけたオッパイの大きい上級生を見ました」

 

「おいこらテメ」

 

「織斑くんは黙って」

 

「はい」

 

志波さんの一言で黙る俺。え? 情けないって? 逆らえるわけないだろ?

 

「ふむ、その条件に合う女性は……もしかしてこの方ですか?」

 

「あ、はい! この人です姐さん!」

 

弾から聞いた特徴を元に、自分の携帯電話を操作して人物を特定する志波さん。……こえぇよ!! どうなってんのその携帯!? まさか全校生徒の個人情報が入っているのではなかろうか?

 

「じゃあちょっと待ってくださいね。今から連絡とってみますんで」

 

「あざっーーーーーーーっす!!!」

 

「あの、志波さん? 大丈夫なのかその人? 急にこんな話ふられちゃ迷惑なんじゃ?」

 

「大丈夫です。この人、知り合いなんですよ。ほら」

 

そう言って志波さんは件の女性が映った携帯の画面を俺に見せてくれる。

 

その人とは。

 

「虚さん?」

 

のほほんさんの姉、布仏虚さんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『こんにちは真季奈です。布仏さん、今忙しいですか?』

 

「忙しいですけど……大丈夫ですよ。えぇ大丈夫ですとも……お嬢様が帰ってこなくとも……」

 

私、布仏虚はIS学園三年生。生徒会に所属しており会計職についております。今日は文化祭。私は文化祭ゲート前の受付で外部からの来場者の身元チェックや端末を通しての行事の運行状況の確認、その他にも来賓への接待の準備に危険物が置かれていないかの見回り状況の報告を纏めて……頭が痛くなってきたわ。

 

そもそも何故私がこんなことを? どう考えても一人でこなせる仕事の分量じゃないでしょう? そもそも文化祭実行委員はどうしたの? サボってるなら後でオシオキしないといけないわね……ふふ、フフフフフ……。

 

あと、うちのお嬢様と妹はどこ行った? 仕事しろ生徒会メンバー。

 

『会長ならさっきうちのクラスでメイドしてましたよ?』

 

「!? ありがとうございます!!」

 

急な志波真季奈の電話になんだろう? と思いましたが、これは朗報です。さっそく刺客を送って仕事をしないで遊びほうけてる生徒会長に裁きの鉄槌をっ!

 

『ところで本題なんですが……先日のメールの件、検討してくれましたか?』

 

姐さん?! ちょっと志波さん!?

 

「『あの件』は……承服しかねます」

 

? 何故か彼女とは別の声が聞こえてきたような? 気のせいかしら?

 

『ちなみに何故です?』

 

「私が更識に仕える布仏の人間だからです」

 

そう、私は代々更識家に仕えてきた家の人間。更識家十七代当主、更識『楯無』に忠誠を誓う者。

 

その私があんなお嬢様への裏切りとも言える『案件』を飲むなど………。

 

『話は変わりますが。虚さん、彼氏欲しくないです?』

 

「は!?」

 

なぜそこで彼氏!? 彼女は何を言って……?

 

『実は貴方のことが好き好き大好きだという男性がいまして』

 

「       」

 

ちょ、姐さーーーーーン!!! 話盛りすぎっすよぉおおおおおおおおおおお!!?

 

『どうです? 会うだけでもいいんで一度お話でも。いわゆるナンパですよお見合いですよ合コンですよ』

 

「え、いや、あの? え?」

 

真季奈さんの後ろから絶叫が聞こえた気がしたがどうでもいい。次々と畳み掛けてくる彼女の言葉に目がくらむ。

 

ナンパ!? お見合い!? 合コン!!?

 

わ、私の人生でそんな言葉初めて!!

 

思えばお嬢様のお世話に捧げた私の青春! 学校が終われば即帰宅! 更識家を支えるためのお稽古の数々!!

 

殿方との出会いなんて、ある! 訳が! ない!!! ましては今いるのはIS学園! 男子はただ一人!! しかも好みじゃない!!

 

「あ、あの真季奈さん!? 詳しいお話を!」

 

『交換条件です。先程の件を飲んでください。そうしたらその男性の連絡先を教えましょう』

 

「なぁっ!? い、え、それ、は……」

 

この外道!! 人の足元を見くさかりやがって~~~~~~~~!!!

 

『キャラ変わってますよ? それに織斑くんは好みじゃなかったんですね』

 

「電話越しに人の心を読まないでください!!」

 

こ、この子は……!? とうとう読心術まで!? しかも電話越しにって神がかってない? どうなってるの!?

 

『はっはっは。気にしたら負けですよ?』

 

「ここで負けると疑心暗鬼にとりつかれます!!」

 

『もう、しょうがないですねぇ? そんなにあの会長への忠義だてが気になるんでしたら、一つ心が軽くなるお言葉を送って差し上げましょう』

 

「な、何を言われても私は!」

 

『貴方のその生き方の先に待っているのは、織斑先生と同じ『行き遅れ』の人生ですよ?』

 

!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園を卒業して何回目かのクリスマス。今年も一人、自室でコタツに入ってケーキを食べる。

 

当主としての貫禄と実力をメキメキと積み重ねてきたお嬢様、いいえ、楯無様はもう私のサポートもそれ程必要としていない。彼女には私の代わりに支えてくれる殿方が、パートナーがいる。

 

今日も、今頃は二人で聖夜を過ごしているだろう。

 

「あ、そうだ。本音……」

 

私の妹。更識家の次女、簪様の付き人をしている布仏本音。あの子も一人で今夜を過ごしているのだろうか? 今からでも一緒に……。

 

電話をかける。番号はもちろん妹のもの。なんコールかした後、繋がった。

 

「あ、本音? 今どこ? ねぇ、よかったらこれから一緒に……」

 

『あれー? おねーちゃん? どうしたの? 今日わたしIS学園の同窓会だよー?』

 

「え? そ、そうなの?」

 

そんなの聞いていない。いえ、そういえばあの子、今日はずいぶん前から今日に有給を申請していたような……仕事に忙殺されて忘れていた。

 

『まぁ皆、彼氏のいない寂しい夜だけどさぁ。それでも昔の友達と愚痴を言い合ったりするのも悪くないもんだよー。あ、簪様もいるよー? お姉ちゃんも今から来るー?』

 

「あ、ううん。私、あなたの学年で知っている人少ないし、遠慮しておくわ。楽しんできて」

 

『りょうかーい!』

 

プッ! と電話の通話が切れる。

 

楽しそうだ。実に楽しそうだった。大勢で賑わって、友達に囲まれて。

 

私は一人。もうすぐ三十路にもなる。出会いもなかった。お見合いも、条件が合わなくて何度も断ったり断られた。学生時代に恋愛の一つでもしておけばよかった。あ、相手いなかった、か。

 

「あー………寂しいなー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

『耳が痛いです』

 

な、何今の? 何が見えたの!? え? まさか私の未来!? 嘘でしょ?!

 

『わたしが言うのもなんですが、大丈夫ですか?』

 

「余計なお世話です! そんなことよりも真季奈さん! 早くその殿方の連絡先を!!」

 

『……いいんですか? こちらの条件を飲んでくれるんですね? それは変態会長に対する背信、と受取りますよ?』

 

いけしゃあしゃあと抜かしてくれやがりますわねこの性悪女!!

 

「三十路手前で一人ぼっちのクリスマスは嫌なんです!!」

 

『クリスマ? まぁそのへんはよく分かりませんが……交渉成立ということで。ちなみにその男性の特徴ですが』

 

「どんな方です?」

 

そういえば相手のビジュアル、人間性を聞いていなかった。そんな大事な情報を交渉の最後まで明かさないなんて……。

 

志波真季奈、恐ろしい子!!

 

『まず名前は……これはお互いで自己紹介してください。そのほうが面白そうなんで。ビジュアルは二枚目にあとちょっと、な三枚目。彼女いない歴=年齢の童貞。恋と性欲に恋するもやしです。なのでモテる為には努力は惜しみませんが、三枚目キャラなのが原因か成果が全くと言っていいほど上がらない残念な人ですね。あと、好みのタイプが年上の女性ですね。日ごろ不憫な目に合う境遇のせいか、母性あふれる女性に甘えたい、みたいな性癖の持ち主です。はは、気持ち悪い。マザコンですかね?』

 

姐さぁああああああああああああああああん!!!俺のことそんな目で見てたんですか!? 

 

止めて志波さん! 弾のライフはとっくにゼロよ!?

 

「なんですか今の絶叫? それより、良くそんな男性を紹介しようと思いましたね?」

 

『だって、虚さん。どっちかというとちょっと抜けているくらいがタイプでしょう?』

 

「う」

 

……はい、そうです。実を言うとそうなのよね。そう育てられたせいか、誰かにリードされるよりも面倒を見てあげるほうがしっくりというか……。

 

『いたいけな生徒に手を出す女教師? なキャラですもんね。見た目的に』

 

「そんな身も蓋もないこと言わないで!」

 

『でも相性はいいと思いますよ? お互い初めての交際ですし、なにより好みがピッタリです。貴方は情けない男が好き。彼は年上の甘えさせてくれる女性が好き。ね?』

 

「いや、ね? と言われましても……」

 

そんなパズルじゃないんだから……相性の凸と凹が噛み合ったからって上手くいくとはいかないんじゃ?

 

『それじゃぁ『彼』との待ち合わせ場所を教えますのでそこに向かってください』

 

「え? あの、相手の顔は!?」

 

『教えません。虚さんの顔を『彼』が知っているので問題ないです。それに』

 

「……それに?」

 

『そのほうがドキドキするでしょう?』

 

「!?」

 

『それでは。あ、『例の件』忘れないでくださいね?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうわけです。ごたんだんさんはここに向かってください。彼女の顔はわかりますね?」

 

そう言って志波さんは文化祭のパンフレットを取り出すと、学園の敷地内の見取り図のページを開いて弾に見せて合流地点を説明し始めた。

 

「し、志波さん……あの説明で虚さん来るの? なんだか無理な気が……」

 

俺が志波さんのあんまりな電話の内容に尋ねる。だってアレ、弾の評価だだ下がりな気が……?

 

「大丈夫ですよ。織斑くんは婚期に焦る女の必死さを理解していませんねぇ」

 

「いや、でも」

 

「織斑先生とナターシャさん」

 

「生意気言ってすいませんでした」

 

あ、うん。なんか納得した。最近デウスがやつれてきてたし。大丈夫かなアイツ?

 

「マザコン……情けない男……三枚目……はは、俺って一体……」

 

あ、弾がヤバイ。地面に体育座りで項垂れて指でのの字を書き続けている。末期か。

 

「しっかりしろよ弾……まぁほら、フられたっていつものことじゃん?」

 

「ぎゃん!」(グサッ!

 

「そうですよ。駄目でもともと。貴方の性癖がちょっと晒されただけじゃないですか」

 

「ぎゃぎゃん!」(グサグサ!!

 

「それにお前んちのお母さん…蓮さんだって見た目若いんだから甘えたって全然おかしく……あ、だからマザコンか」

 

「さっきから俺のこと殺したいんか!?」

 

「「はは、まっさかー?」」

 

「お前ら仲いいなチクショー!!」

 

「あ? 『お前』ぇ?」

 

「すんませんでしたーーーーーーーーーー!!!」

 

五反田弾、渾身の土下座だった。うん、今のはしょうがない。だって志波さん、目が怖かった。マジで。まるでゴミを見るような……いや、今からどうこの家畜を料理してやろうか? みたいな目だった。

 

だがな弾。志波さんにそんな目で見つめられるなんて……、

 

「なんて羨ましい」

 

「一夏……お前っ!?」

 

「まぁそれはさておき。さっさと行きなさいな。女を待たせるのは男の恥ですよ?」

 

「りょ、了解です!」

 

そう言って弾は、志波さんに渡されたパンフレットを手に走り出していった。あいつの恋が実ることを祈ろう……。

 

「さて、やっと邪魔者も消えたことですし。文化祭を楽しみましょうか織斑くん!」

 

「そんなこったろうと思ったよ! さすが姐さんマジ外道!!」

 

どうせアレでしょう!? 虚さんとの謎の取引が本当の目的で、弾のあれこれは全部ついでだったんでしょう!? というか、弾のことが邪魔だったんですねそうなんですね!

 

あれ? でも弾が邪魔者ってことは、ひょっとして?

 

「ねぇ志波さん? ひょっとして俺と一緒に文化祭まわるのをそれなりに楽しんでくれているのか? 本当に?」

 

「……ばーか」

 

志波さんのデレ期キターーーー!!! 

 

おかしいと思ったんだ! さっきから志波さん、俺に対してSじゃなかったし! 可愛いかったし!! なにより、俺にとってご褒美ばっかりだったし!!

 

「ほら、織斑くん? 行きましょう!」

 

 

そうして志波さんは俺の手を取ってまた学園内を回り始めた。色んな出店やクラスや部活の出し物。箒たちの部活ので店とかにも顔を出して冷やかしたりもした。その過程でまた色々なゴタゴタもあったけど。

 

今は何故か俺達はIS競技用のアリーナ、その更衣室にいる。志波さんに引っ張り回された結果だ。

 

外の喧騒が嘘のように静かだ。アリーナの中の更衣室。その中までは分厚い壁に遮られて外部の音は届かないのだろう。

 

「(み、密室で志波さんと二人っきりか……)」

 

自分たち以外いない更衣室。ロッカーが立ち並ぶその空間で俺たちはいた。今はロッカーとロッカーの間に置かれているベンチのような長椅子に並んで座っている。

 

「ねぇ織斑くん。今日のわたしはどうでした?」

 

「ど、どうって?」

 

隣に座る志波さんが伏見がちにして言う。どうって? なんて聞き返したが俺にはなんとなくわかっていた。さっきまでの志波さんの態度のことだろう。

 

「織斑くんが殴られるのが大好きなドMなのは教えてもらって分かっています。やっぱり今日みたいな『わたし』は物足りませんか?」

 

「ちょっと待とうか。誰に聞いたって?」

 

誰だよおい!? そんなデマを流したのは!! 俺はドMなんかじゃないぞ!? ちょっと志波さんに蔑まされるのが興奮するだけだ!

 

「……なにか今釈然としないものを感じましたが、デウスですよ。あと織斑先生」

 

「よし殴ろう」

 

「返り討ちですね」

 

だからこっそり後ろから……あ、無理だ。あの二人なら背中に目がついているみたいに前を向いたまま反撃するなんて簡単にする。絶対にする。しかもその後に待っているのは千冬姉ぇの鉄拳制裁とデウスのIS特訓という名のイジメのような訓練。

 

あ、ホントだ返り討ちだ。やめとこ。

 

「じゃぁ織斑くんはドSの『わたし』じゃなくてもいいんですか? 『わたし』、本当は殴ったりするのなんて得意じゃないんです。そんな『わたし』じゃ物足りませんよ?」

 

「えっと、それは」

 

そこで言いよどんで、気づいた。

 

志波さんの肩がかすかに震えているのを。怖いんだ。自分が拒絶されるかもしれないことを。彼女は俺たちの知る志波真季奈とは『別人』だから。

 

今思えば、俺達はちゃんと彼女のことを見てきたのだろうか? 

 

ひょっとすると、俺達は『彼女』を見ているつもりで実はその影、入学式のあの日から見知った志波真季奈を見ていたのではないだろうか?

 

それは頭のすこぶる良い『彼女』には簡単に察することができて、常人よりも遥かに器用な『彼女』は皆の望む通りの『志波真季奈』を演じていたんじゃないのか?

 

いや、皆のじゃない。俺の……? 俺のせいなのか?

 

俺が『今』目の前にいる志波さんに甘えてばかりでいたから? 

 

夏休みの間、突然同居することになって浮かれて。記憶を失う前の志波さんのように理不尽な態度を取るようになって、その姿に安心して、しただけで。その時にちゃんと志波さんにそんなことをする訳を聞かなかったからか? 

 

だから彼女は今、俺の隣で肩を震わせているのか?

 

「志波さん、いや志波真季奈さん」

 

「は、はい」

 

俺は志波さんの両肩を掴んで、彼女と相対できるよう身体をこちらに向けるように回す。志波さんと俺の目が真正面から向き合う。

 

「俺ははっきり言って物事をきっぱりと決められない優柔不断な男だ。だけど、女の子の気持ちをないがしろにするようなつもりはない!」

 

「うーわー。どの口が言うんだか」

 

「でも、それでも君が自分のことで不安になるっていうのなら俺が君を支える、ずっとそばにいるから! だから……」

 

「だから?」

 

志波さんの顔が赤い。多分俺も。だって耳がこんなにも熱くなっているから。

 

「だから、俺を信じて一緒にいてくれないか? ま、まきゃな!!」

 

「……………ぷっ!」

 

噛んだぁああああああああああああああああああああああ!!!!

 

何してんの!? 何噛んでんの俺!? ここ一番の見せ場だよねチクショウぉおおおおおおおおおおおおお!!!

 

ほら志波さんも笑ってるし! さっきまでとは違う意味で体震わせているし!! 顔隠して必死にこらえているけど、あれ大・爆・笑! だよ!!

 

お、終わった……。

 

俺の初恋、これでもうおしまいかも。

 

ずーん、という擬音が見えるんじゃなかというくらいに落ち込む俺とその横で体を震わせて声を出さずに爆笑している志波さん。はた目で見ればもう完全に告白失敗だ。いや。告白になっているのかなぁこれ?

 

あれ? そもそも俺、初恋だったのか!?  それでこれ、告白なの?!

 

い、勢いに飲まれすぎたぁああああああああああああああああああ!!!!

 

馬鹿か俺!? やるならもっとムードとかあるだろう!? なにこれ!? なんで更衣室!? 

 

頭を抱えて声にならない絶叫を上げる俺。そんな俺にちょいちょい、と手をふる彼女の姿が見えた。

 

「も、もう笑いすんだ? しばさ」

 

「ダメです」

 

抱きっ! と俺の胸の中に飛び込んでくる柔らかいものの感触が………これはまさか!!?

 

俺の顔のすぐ下に志波さんの顔があった。というか、俺の! 腕の中に! 志波さんの体がすっぽりと入っていた!!

 

体制的には、ベンチに座る俺に志波さんが正面から抱きついて、背中に彼女の腕を回している状態です。なにこれヘブン。あれ? 俺もしかして死ぬの? 一生分の幸運使い果たしてない?

 

「もう一回」

 

「え?」

 

「もう一回お願いします。い、一夏?」

 

「!? あ、あぁ。ま、真季奈」

 

「「…………………………………………」」

 

お互いの名前を呼び合う俺たち。それだけなのに顔が真っ赤になる。箒や鈴にシャルから呼ばれるのとは違った気恥しさがある。そうか、これが『好きな人』との……。

 

「ぶ、文化祭には恋愛成就の神様が潜んでいるというのは本当だったんですね……」

 

「あ、はは、は。だから志波さん、デート中はしおらしかったの?」

 

「まぁ願掛けみたいなものです。それに、わたしはいつだってしおらしいですよ?」

 

「嘘だー」

 

でもまぁ、いいものは見れた。ネコ耳メイドの志波さん、真季奈は正直可愛かったですハイ。

 

「でも、もうちょっと勇気が欲しいですね」

 

「うん、それじゃぁ俺からあげれるものなんて今はこんなものしかないけど」

 

「十分です」

 

そう言って俺たちは互いの顔を近づけてゆき、そして……、

 

バーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッ!!!!!

 

「真季奈ちゃーーーーーーん!!! 一夏くんは連れてきてくれたーー!?」

 

ドゴォ!! シュバ!! グハァアアアアアア!!!

 

行為の寸前! 更識生徒会長が更衣室の扉の勢い良く開けて飛び込んできた。それに焦った真季奈が咄嗟に俺へとヘッドバットを叩き込んで、その反動で後ろに飛んでご丁寧に蹴りまで入れて離れていく。そしてロッカーに叩きつけられる俺。

 

俺の幸せの時間、終了ーーーーーーーー!!!!

 

う、うぅ、本気で泣くぞオイィイイイイイイイイイイイイ!!!!?

 

「あ、あれ? もしかして私、お邪魔だった?」

 

そうですよ!!! なんですかそのあっれー? て顔は! 不信任決議起こしたろかコラぁあ!!

 

「更識生徒会長」

 

「は、はい!」

 

あ、真季奈がスッゴイ笑顔で更識さんを見てる。これは ヤ バ イ。

 

「一夏に準備をさせに来たのですよね?」

 

「そ、そうです! 衣装替えのための人員も連れてきました!!」

 

綺麗に気を付けをして答える更識さんの姿に、アレ? どっちが生徒会長だっけ? と思ったのは俺だけじゃないはず。だって後ろに控えている人達が震えているんだもの。

 

あれ? 衣装替えってなんのことだ?

 

「それじゃぁ、時間もないことですし、今すぐ始めちゃいましょう。わたし達も準備がありますから移動しますよ。さぁ早く」

 

そう言って真季奈は更識さんの腕を掴んで更衣室から出ていく。代わりに『文化祭実行委員』の腕章を付けた学生スタッフが入ってきて俺を拘束し……って、え!?

 

「ちょ!? なにこれ!!」

 

「頑張ってください。一夏」

 

「あ、うん。じゃなくて! 真季奈ぁぁ!!!」

 

手を伸ばすが複数人のスタッフに敵うわけもなく。俺は身ぐるみを剥がされ始め、真季奈は更識さんを伴って更衣室を出ていった。

 

でもこの後俺は、何がなんでも伸ばした手を真季奈に届かせれば、掴まなければならなかったんだと後悔した。

 

 

これが『彼女』と話した……最後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、折檻の時間です。この豚野郎」

 

「何が!?」

 

更衣室を出たわたし達は、アリーナを見渡せる展望室にてこれから始まる生徒会主催のある『イベント』の準備を始めているところです。

 

です、が。

 

「その前にすることがありますよねぇ?」

 

「な、なんでしょう!?」

 

さっき言ったばかりじゃないですか。

 

「布仏姉妹」

 

「「はい」」

 

さっと現れ、がっと確保する。その見事な手腕に変態的動きを繰り出す更識会長も両脇から腕を掴まれあっさりと捕獲された。

 

「あ、貴方たち裏切ったわね!?」

 

「「…………………………………」」

 

「何か言ってよ!?」

 

涙目で訴えるが二人は取り合わなかった。ふふふ、無駄ですよ? 二人は既にわたしが懐柔済みです。

 

「カッシー」

 

「うん、持ってきたよ。マッキー」

 

すっ、とカッシーこと更識簪ちゃんがわたしに差し出してきたもの。それは『なわとび』。しかも、紐がビニール製。

 

「簪ちゃんまで!? ていうか何!? それでどうする?!」

 

「分かってるくせに」

 

長いなわとびをプラスチックの持ち手のところで二つにおってまとめて持つ。その状態で床に向けて何度も降り下ろす。

 

パチーン! パチーン! と。

 

「さぁ、イイ声で鳴いてくださいね? この変態メス豚会長?」

 

「そ、そんなの、興奮しちゃうじゃないのーーーー!!!」

 

とりあえずお尻百叩きですかね?

 

パチーーーーーン!!

 

「キャーーーーーーーン!」

 

「……ごめんマッキー。わたしにもやらせて」

 

おや? カッシー? 目が虚ろですよ? どうかしました?

 

「わたしがお姉ちゃんを矯正しなくちゃいけないのッ!」

 

「わかりました。半分ずつ、五十回で交代しましょう」

 

「うん!」

 

にこ、と笑いあって二人で手を取り合います。あぁ、親友よ!

 

その後、きっちり二人で百回、お尻を叩いて解散としました。泣きながら恍惚の表情を見せる変態会長の姿にちょっと一夏の姿を重ねて可愛かったです。はい。

 

 

 

さて、教室に戻ってメイドの仕事をしますか。

 

そのまま解散の流れとなったので、わたしは一年一組の教室に戻りました。クラスの皆さんには織斑くん、一夏が生徒会の出し物に強制参加させられた事を伝え、その間は彼なしで店をやっていくローテーションを通達します。というか、抜けるのは『彼だけでない』ので結構痛手なんですよねぇ。わたしだけでもクラスに残って接客しなくては。

 

「姐さーん! 一番テーブルにお客様です! ご指名デース」

 

「? わたしを、ですか?」

 

配膳用の料理にトレイに載せながら準備をしているとそんな声が上がってくる。一夏を指名するシステムはありましたがまさか自分が呼ばれるとは。

 

「どんな人でした?」

 

「金髪のおじさまだった。はい、注文されたメニューのアイスコーヒー」

 

そう言ってクラスメイトの彼女はトレイにアイスコーヒーを渡してくる。それを受け取ると、わたしは廊下側の窓際にある一番テーブルへと向かった。

 

「お待たせしました。アイスコーヒーです、ご主人様」

 

テーブルに座っていたお客様、いえ、ご主人様は座っていた椅子の位置の関係で背中を向けていた。なので声をかけたが相手の顔が見えなかった。

 

それでは失礼ですね。、まわり込んで正面から相対しないと。

 

そう思い、テーブルをぐるっとまわって相手の正面に立つ。そういえば指名もされていたな、と思い出し、それなら商品を置いたら自分も席につかないといけないなと考えたところで、

 

相手の、

 

顔を、

 

見た。

 

「僕のことはご主人様じゃなくて昔みたいにパパでいいよ」

 

「!? あ、」

 

「やぁ。初めまして。新しい『志波真季奈』さん」

 

 

わたしの、『志波真季奈』の死んだはずの父親がそこに居た。

 

 

 

 




織斑一夏にいい思いなんてさせねぇよ! 残念だったな!!

というわけで、生徒会長、グッジョブです。

ご褒美は真季奈と簪ちゃんがあげてたからいいですよね?

え? ダメ?

次回、あの「劇」ですが作者の勝手で脚本を変えさせていただきます。シンデレラじゃありません。

あと、弾くん、というか中学時代織斑一夏と同級生だった男子生徒達は実際どんな感じだったのでしょうね? やっぱり女子はみんな砂糖菓子に群がるアリのごとく一夏に取られていたのでしょうか? 悲惨ですね。

なので弾には原作よりも早く虚さんとの出会いをセッティングしました。いやもう不憫で。

そして衝撃的だった真季奈ことマッキー。とりあえず一夏は校舎の屋上から突き落とそう。

文化祭と言えば出会いと告白。ということで真季奈が密かに頑張りました。でも書いてて全然嬉しくないこの展開。なんだか娘を取られる父親の気分でした。

なので絶対、次回は一夏を血祭り、じゃなくてひどい目に合わせてやります。

いいですよね?

それでは次回またあいましょう。
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