IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

最近、勤務時間が16時間ですが休日になんとか書いています。

今回は文化祭のシメとなっています。

ほぼ会話文、もしくはギャグです。

それではどうぞ。


女三人、おめでたに死す!!

さて、記憶も戻ってヒャッハーな気分の真季奈ちゃんです。まぁ、戻ったと言うよりも『統合』されたというべきなんでしょうが。

 

はい、『統合』です。なので、夏休みの間の記憶もバッチシありますよ?

 

ですので、

 

 

………織斑一夏ぶち殺してぇぇぇぇッ!!!

 

 

あの野郎、人の記憶がないのをいいことにベタベタベタベタしやがってぇぇ!! え? むしろわたしから近づいていった? ははは、何をおっしゃるやら? それになんですか真季奈(白)って? このわたし、志波真季奈は元から清廉潔白にして青天白日。慈愛あふれる清らかな存在じゃないですか。全く何を言っているのやら………。

 

『それはギャグで言っているのか?』

 

「黙れよこのクソ犬が」

 

『……どの口が清らかと?』

 

うちの駄犬こと機械犬のデウスがなにかほざいていますが無視しましょう。

 

今わたし達は一年一組の教室にて文化祭の打ち上げを行なっております。え? アリーナでの事件? もう片付きましたが何か?

 

『お前ほんとに自分本位に進める奴だな。まぁらしくなったというべきだが』

 

うっさいわ。しかしそう言われては癪でもあります。ですので簡単に事後処理の説明を。

 

まずアリーナへの襲撃犯。捕まえましたよ。今は政府機関への護送の準備のために学園内で拘留中とか。

 

デウスが殲滅してきた無人機。こちらは織斑先生と山田先生が後日現場を検証しに行くそうです。デウス曰く、人形しかいない簡単な解体作業だったらしいです。

 

あとうちのクソ親父。逃げられました。IS学園の警備は無能ですね。

 

駄兎。アリーナで戦闘中に確認したのでチクッときました。今頃追いかけっこの真っ最中でしょうが、まぁ逃げられるでしょうね。だから、個人的に手を打っておきました。

 

で、話を戻しますが打ち上げです。盛大にいきますよ? なにせ、

 

 

「「「マッキー、文化祭優勝おめでとーーーー!!!!!」」」

 

 

 

イエーーーイ!! と手にしたコップを掲げて祝杯を上げます。

 

えぇ、優勝しましたとも、文化祭。このわたしのマッキー商会が!!!

 

「いや、志波さん? あなた、一体どんな悪どい手を使ったんでせうか?」

 

「ほほう? それを聞きたいですか織斑一夏? というか、悪どいのは確定ですかそうですか」

 

「絶対マトモな手じゃないですもんね!」

 

失礼な。まぁ……その通りですが。

 

『あ、おかわりくれる?』

 

「えぇどうぞ……って!? デウス! 何飲んでいるんですか?」

 

『ジュース』

 

そこには、腰に手(前足?)を当てて紙コップのジュースをぐびぐびと飲んでいる機械犬の姿があった。

 

「と、とうとう有機物を取り込む術まで獲得しましたか……」

 

『うーむ、これが美味いという感覚か』

 

「味覚まであると?」

 

もうやだこいつ。

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室。

 

「……どういうことよ? なんで観劇の投票数が全部マッキー商会に流れているの?!!」

 

「かいちょー!  わかったよー」

 

「本当!? 何があったの本音ちゃん!」

 

「うん、文化祭中に文化祭実行委員会へ抗議文が届いていたみたいー」 

 

「抗議文!?」

 

とまぁ、てんやわんやの生徒会メンバー。現在、生徒会室にて書類の山との格闘、及び、今回の事件の後始末などと大忙しの中。そこに加えてのまさかの『マッキー商会』文化祭投票数一位の知らせが文化祭実行委員から届いた。その知らせに混乱しながらも渋々発表したのが一時間前。そして、事実確認のために調査を始めたのがついさっきだ。

 

そこへのほほんさんが持ってきたのが一枚の書類。というよりも手紙?

 

で、その抗議文の内容とは。

 

 

『文化祭実行委員の皆様へ。今回、「模擬店で生徒、来場者からの投票で一位となった部活またはクラスは織斑一夏を独占できる」という企画が持ち上がりましたが、これって生徒会の参加はアリなんでしょうか? 生徒会とは学校運営でのボランティア活動もしくは部活動の予算管理などを行う組織でありそもそも委員会活動に分類されます。なので今回の部活およびクラスを対象としたイベントでは参加権はないのでは? というか主催者側ですし。文化祭運営資金の一部で豪遊した実行委員会の皆様、どうかご一考ください。よーく、よーく考えてくださいね? 貴方たちの進学のためにも、ね?  謎の美少女Mより』

 

 

「これ抗議文じゃなくて脅迫文よねえ!? ていうか何やってるの実行委員!!」

 

「これが原因で各委員会の模擬店や出し物の投票は軒並み無効。結果、マッキー商会と提携していたところの投票は全部そっちに流れたみたいです」

 

つ、ま、り。

 

「この謎の美少女Mって……」

 

「おそらくMAKINAちゃんだと……」

 

「Oh……」

 

珍しくシリアス顔で報告するのほほんさんこと布仏本音の姿に顔をひきつらせる生徒会長こと更識楯無。

 

「(やられた! 道理で生徒会が有利な観劇の協力にノリノリだったのね! 最初っからウチの票を掻っ攫うつもりで!!)」

 

外部からの襲撃があったとはいえ、蓋を開けてみれば総勢二十機以上のISによる大乱闘だ。客入り数は半端なものでなく学園の生徒からその家族、外部の出資者などその数は数千人をゆうに超えていた。それを全て……?

 

まさか最初から全部仕組まれていたんじゃ………? いや、それはありえない。真季奈ちゃんは本気で戦っていた。なら脚本を書いたのは誰だった? 

 

……デウスくん? そういえば、彼はどこに行っていた?

 

そこで、あることに気づいた。

 

「あれ? 本音ちゃん、虚ちゃんは?」

 

「あれ? そーいえば……?」

 

こういう時に頼りになるのが会計であり自分の公私とものパートナーである布仏虚だ。その彼女がこの一大事に今この場所にいない。なぜ?

 

「およ? ねー会長。これ、生徒会の判子押してありません?」

 

「え、嘘!?」

 

のほほさんが気づいたのは抗議文が書かれた用紙の隅っこに、生徒会が所有する『閲覧済み』の判子を押したあとが。つまり、この用紙は一度生徒会を経由して文化祭実行委員へと渡ったということだ。

 

無論、会長である自分は全く知らない……。

 

ならこれに判を押したのは!

 

「虚ちゃんに電話!」

 

「はい!!」

 

すぐさまに携帯電話を取り出してコールする本音ちゃん。その様子を見守っていたのは数秒。すぐに繋がった。

 

「会長!」

 

「貸して! もしもし虚ちゃん!? 今どこにいるの?」

 

『おや? 意外と時間が掛かりましたね、お嬢様。いえ、会長』

 

電話の向こうから嫌に余裕のある声が聞こえてきた。おいてめ。

 

「う、虚ちゃん……貴方まさか、真季奈ちゃんと……?」

 

あ、虚さーーん! パフェ買ってきましたよー!

 

『あ、ありがとー、弾くーん。ふ、えぇそうですよ? それが何か?』

 

「なに今の声!? 男? 男なの!?」

 

『彼氏です』

 

「かっ!?」

 

何言ってるの!? どうしちゃったのよ虚ちゃん!! まさか、男欲しさに私を売ったの!?

 

『ふふふ、貴方はよき上司であり友人ですが……仕事をしない貴方が悪いのですよ』

 

「!? 虚ちゃん……謀ったわね……虚ちゃーーーーん!!!」

 

「……わたしのお姉ちゃんマジパネっす」

 

 

 

 

 

 

 

「なんか今、絶叫が聞こえてきませんでした?」

 

「うん。なんか某大佐が謀殺された時みたいなのが聞こえたような……?」

 

どうも、織斑一夏です。なんだか廊下が騒がしいような? ま、いっか。

 

忘れよう。うん。

 

「だいぶ食材も片付いてきましたね」

 

真季奈が残っていた料理の食材を見回していう。この打ち上げ、残飯処理も兼ねていて捨てるくらいなら料理して食っちゃえという根性の下行なっているのだ。

 

「後は……果物とか牛乳に調味料だね」

 

シャルが補足する。とすると、『アレ』でも作るか。

 

「アレ、ですね?」

 

「うん。フルーツジュースを作ろう」

 

真季奈が俺の考えを読んだのか、ミキサーをずいっと持ち出してそう言った。流石姐さん、察しが良すぎます。

 

「と、その前に機械の点検をしなくてはいけませんね。汚れも気になりますし」

 

「? そうだね。えーと、中に水入れて濯いでっと」

 

俺は真季奈から渡されたミキサーの調理する材料を入れるガラス容器の部分を取り外すと、その中に水を入れて軽くシェイクした。そして水をあけてもう一度ミキサーの基部へとセットし直した。

 

「それじゃぁ今度は、ちゃんと刃が回るか確認を。手を入れて回してみてください」

 

「あぁ、うん。ちゃんと回るよ」

 

俺は素手でガラス容器の中の刃の部分をクルクルと回す。どうやらちゃんと、モーターの入った基部の部分と連結しているようだ。うん、良好リョウコウー。

 

「はい、そこでスイッチオン!!!」

 

「よっしゃぁ! ……ってあっぶねぇえええええええええええええ!!!」

 

「チッ」

 

「舌打ちとな!?」

 

危うく右手をミキサーしてしまうところでした。しゃ、洒落にならん!!

 

「あのね真季奈さん!? 今俺の右手がズタズタになるところだったんですけど!?」

 

「なんですか。右手の一本や二本くらい」

 

「右手は一本しかねぇよ!!」

 

「はいはい、織斑一夏の大事な恋人ですもんね」

 

「どどどどどういう意味でっしゃろか!?」

 

「触らないで! 妊娠する!!」

 

「そこまで染み込んじゃねぇよ!!」

 

ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ。

 

「あぁ!! クラスの女子が離れていく?! ちゃうよ!? 今のは忘れてください! お願いします!!」

 

「では右手ミキサーで手を打ちましょう」

 

「しねぇよ!! よしんばそれで解決しても俺の右手使い物にならなくなっちゃうよ!!」

 

「ソロプレイもできないですしねぇ」

 

ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ!!

 

「だからそれ止めてくれませんかねぇ!!?」

 

「いいでしょう。その時はわたしが責任を持ちましょう」

 

「「「えぇ!?」」」

 

「右手が使えない織斑一夏の代わりに……わたしが」

 

「まま真季奈さん!?」

 

ぐいっと俺の胸元まで近づいてくる真季奈。あ、いい匂い。

 

「左手ミキサーのスイッチを押してあげましょう!!」

 

「両手潰す気かい!!」

 

「さあ! さあさあさあ!!!」

 

俺の手を取ってミキサーに突っ込まないでぇ!!

 

「いや! 止めて、許してえええええええええええ!!!」

 

その後、デウスの拳骨というストップが入って真季奈から救われました。デウス……!(トクン!)

 

 

 

「はい、それでは。真季奈ちゃんの美味しいフルーツジュース講座。はっじまっるよー」

 

「「「清々しいまでに棒読みですね姐さん!!!」」」

 

さっきまでのおふざけは完全になかったことにするんですね! 

 

「黙れ穀潰し!」

 

パァン!! 特に理由のない平手!

 

「ありがとうございます!!」

 

教室の黒板の前。ミキサーと食材の置かれた長机を前にして並んだ真季奈と織斑一夏は今日もどつき漫才(?)を繰り広げております。

 

「と言っても簡単です。材料、牛乳、水、ハチミツ等を適量入れ、スイッチオン! これで完成です」

 

「うん、本当に簡単だね」

 

「では、オルコットさんに殺ってもらいまSHOW」

 

「はい!」

 

「「「なんだと!!?」」」 

 

その時、クラスに衝撃が走った。

 

「馬鹿な! 止めろ真季奈!!」「死人が出るぞ!!」「メディック、メディーーーーーーック!!」「総員退避! 繰り返す! 総員退避! これは訓練ではない!!」「ゲルが! ゲルがーー!!」

 

「皆さん失礼ですわ!!」

 

「「「失礼なのはお前の料理の腕だ!!!」」」

 

「酷いですわーーー!!!」

 

おぉ、オルコットさん涙目ですね。仕方ありません。

 

「そこまでです皆さん!」

 

「「「マッキー!?」」」

 

バン! と長机を叩いてクラスの全員を黙らせます。わたしの許しなく騒ぐとは何事ですか。

 

「いいですか? 確かにオルコットさんの料理の腕は最悪です。いえ、災厄です! ですが、そんな彼女も日々進歩しようと努力しているのです! ならばそれに応えてあげるのがクラスメイトとして、いいえ友達なのではないでしょうか! 違いますか皆さん!!」

 

「ま、真季奈……」

 

「志波さん……」

 

「「「マッキー」」」

 

「そ、そうだよ……俺、間違ってたよ真季奈」

 

「ありがとう、ありがとうございますわ! 真季奈さん!」

 

皆が涙を流してわたしの言葉を聞いてくれています。おぉ級友よ……チョロイデスネ。

 

「では、味見(毒味)は織斑一夏に一任するということで」

 

「「「異議なし!!!」」」

 

「おぉぉい!!」

 

「一夏さん! わたくし頑張りますわーー!!」

 

 

で、

 

「…………………………………………………………………………ぐはっ」

 

チーーーーーーーーン。

 

「一夏さん!? 一夏さん! イヤァアアアアアアアア!!!」

 

「織斑一夏死す!」

 

「「「………うわぁ」」」

 

織斑一夏、教室の中心で息絶える。

 

死因、ポイズンジュース。

 

ふっつーの食材しか使ってないのに何故?

 

「オルコットさん。コレ、ナニを入れたんですか?」

 

恐る恐る聞いてみます。オルコットさんが作り上げたフルーツミックスジュース。見ればなにやら色が変です。異臭がします。目が痛いです。鳥肌が立ちます。

 

ナニコレ?

 

「え? 何って……バナナとリンゴとハチミツと牛乳と……」

 

「ふむふむ」

 

「隠し味にお醤油と納豆と煮干と鮭の皮を」

 

「ダウトー」

 

道理で生臭いと思いましたよ!!!

 

「だって、日本の方は好きでしょう!?」

 

「朝食に並べば美味しいですよ!!」

 

断じてシェイクして飲むものじゃありません!!! どこからそんな食材持ってきたんですか! 置いてなかったはずですよ!

 

「テヘ☆」

 

「歯ぁ食いしばれ!!!」

 

わたしの情けを返せ!! 一発殴ったろか!!

 

『まぁ待て真季奈』

 

「デウス?」

 

わたしを止めたのはデウスでした。黒い柴犬姿でわたしとオルコットさんの間に立って(二本足で)前足を突き出しています。

 

『セシリア。お前には今度、俺が料理を教えてやる』

 

「………それしかありませんね」

 

「いえ、あの」

 

犬に料理を教わる姿を想像したのか、オルコットさんは若干遠慮がちに言います。が、情けも容赦も与えてあげるほど、貴方の料理の腕に余裕はありません。いや、ガチで。

 

それに、デウスは何気に料理できますよ? 柴犬姿で台所に立つ姿はシュールですが……。

 

『拒否権はない。それと真季奈。客だ』

 

「あぁ、やっときましたか」

 

「や、やっほー……」

 

「ね、姉さん!?」

 

一年一組の教室の前に、『天災』の駄兎、篠ノ之束が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、自首する気になったのか束?」

 

「姉さん、自首してください」

 

「とりあえず土下座。その後屋上からひも無しバンジーでも殺りましょうか」

 

「ちーちゃんに箒ちゃん酷い! あとマッキー!? 死ねと!?」

 

『止めろ真季奈。そう殺気立つな』

 

うわぁ……なにこれ?

 

教室の真ん中で椅子に縛られて座る束さん。それを取り囲む真季奈に箒。あと、束さん来訪を聞いて駆けつけてきた千冬姉ぇ。その三人に睨みを聞かされて身を竦ませる束さんを庇うように間に立つ黒柴犬デウス。

 

空気……重っ!!

 

「あのー、真季奈? なんで束さんがここにいるんだ?」

 

逃亡中じゃなかったっけ? と俺が恐る恐る真季奈に聞いた。なんか知ってそうだし。

 

「メールで呼び出しました」

 

「普通!?」

 

メル友か!!

 

「真季奈、お前いつ束のアドレスを知ったんだ?」

 

千冬姉ぇが真季奈に聞いた。ちょっと驚いてた。当然だ。俺も驚いた。

 

「さっき、アリーナで戦闘中に。あの無人機を通してこの駄兎の端末に潜り込めたのでそこから調べました。『今』も情報は貰ってる最中です」

 

「そ、そうか」

 

「こ、この端末はもう捨てなきゃなー。マッキーの脳って機械で出来てるんじゃないのかな? いやホント、どんな手を使ってるんだか……」

 

「失礼な。ちょっとナノマシンを脳内に入れて処理能力を上げてるだけですよ」

 

「「「なにしてるの!?」」」

 

トントン、と指で自分の頭を軽く叩く真季奈に俺達は騒然とした。よく見ると、真季奈の目がうっすらと光っている。真季奈のIS、『アマツ』の光の翼、ナノマシンの発光現象と同じ桜色が見えた。

 

「ま、マッキー!? そんなことしちゃいけない!! 脳が焼き切れちゃうよ!!」

 

「ご心配なく。対策は万全です。それに、この程度で壊れるほど、わたしの頭脳はやわではありませんので」

 

ぞっとした。真季奈の行為にではない。その落ち着き払った態度にだ。彼女は本気で言っている。ナノマシンを、機械という異物を脳内で使用するという行為を『この程度』だと。

 

「医療用ナノマシンを媒介に、『アマツ』で情報を高速処理し、わたしの思考でデータをハッキングする。慣れれば割りと簡単でしたよ?」

 

「ほ、本当に大丈夫なのか真季奈?」

 

「えぇ織斑先生。むしろ、視界が広がって世界が広く見渡せる気分です。なんなら、地球の裏側の出来事を語ってみせましょうか?」

 

真季奈の脳は現在彼女のIS、『アマツ』と直結していた。そこからISコアネットワークにすら干渉し、世界中のIS達の視覚情報すら奪うこともできる。これは『天蓋王』が持っていた能力でもあり、臨海学校で篠ノ之束が『白式』、『紅椿』に行なった行為でもある。今やっているのはナノマシンを大気中に散布し、周辺の電子機器に侵入。情報の奪取だ。それくらいならなんら問題なかった。そこからさらに手を広げれば衛生カメラにだって届く。

 

「ダメだよちーちゃん。マッキーも。人間がそんなことして副作用がないなんて、あるわけがない!!」

 

「そうなのか!?」

 

「まぁ、容量を超えちゃうと流石に脳細胞が死滅しちゃいますけどねー」

 

『…………………』

 

デウスは何も言わなかった。それは真季奈のことを全く心配していなかったからではない。たとえ真季奈がどうなろうと、どんな最後を迎えようとそれに従う。その覚悟がデウスにはあった。

 

「さて、それでは質問といきましょうか。今日貴方は何故ここに来たのですか? アリーナで暴れることが本来の目的でないことは分かっています。どうやら貴方はわたしに対してやけに献身的のようですし、素直に答えたほうがいいですよ?」

 

……真季奈は自分自身を人質にしようとしている。確かに束さんの真季奈に対する接し方は異常だ。篠ノ之束という人間をよく知る俺や千冬姉ぇ、特に妹である箒から見れば余計にそう思うだろう。

 

篠ノ之束は他人に興味などわかない。彼女の『相手』ができるのは、彼女がそういうモノと認識した相手だけだ。そこに自身の両親すら含まれることはない。故に彼女の世界は極端に狭い。妹の篠ノ之箒。親友の織斑千冬。その弟、織斑一夏。それ以外の人物など、両手で数えるほどしかいない……筈だ。

 

なのに何故? そこに志波真季奈という女性が含まれるのは何故か? 同じ『天災』と呼ばれるほどの頭脳? その奇天烈破天荒な性格? それとも他の何かがあるのか?

 

それは何?

 

『………やはり、こういうことは早めに話しておくことだと思うぞ?』

 

「………成程、流石は竜神様だ。デウスくんにはわかるんだね」

 

「「「?」」」

 

なにやらデウスと束さんだけで意思疎通が成立している? なにがわかったんだデウスの奴? それとリュウジンサマってなに?

 

 

「あのね、マッキー。私、妊娠したんだ。相手はマッキーのお父さん」

 

 

「は?」

 

「なん……だ、と?」

 

「ねぇ、さーん?」

 

「あ、おめでとうございます束さん」

 

………………………………………………………………………はい?

 

『全員、固まったなー』

 

デウスが言うとおり、この教室で動いている者はデウスと束だけとなった。

 

それほどの衝撃発言。

 

それでは皆さんご一緒に。

 

「「「はぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!???????」」」

 

クラス一同によるハウリングボイス。その絶叫は空気を震わせ窓ガラスにヒビをいれた。

 

「お願いマッキー! ううん、真季奈ちゃん! 私のこと、お母さんって呼んで! 蒔春さんと結婚する!」

 

「なななんなにゃああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

ボン! と小さな破裂音の後、真季奈の頭が爆発した。

 

「「「マッキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」」」

 

ナノマシンですら処理しきれなかった受け入れがたい情報過多な事態だった。

 

「束が結婚……? なら私は……いき、遅れ……?」

 

『……確定したな』

 

「       」

 

バタン!! 織斑千冬は直立不動のまま床に倒れた。顔面を床に激しくキスさせて。

 

「「「織斑先生ィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」」」

 

ここに一人の行き遅れ女教師が生まれた。

 

「ねぇさんがけっこん? にんしん? あいてはどうきゅーせいのちちおや? なら、まきなはわたしのめいっこ?」

 

『戸籍上はお前が叔母、真季奈が姪っ子だな。義理だが』

 

「わたしおばちゃんになるの? わーい」

 

「「「帰ってこーい!!! 箒ぃイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」」」

 

モッピー知ってるよ! これって現実逃避って言うんだよね!

 

「ど、どうしたの? みんな大丈夫?」

 

「「「アンタが言うなァァァァァ!!!!」」」

 

『お前、今日はもう帰れ。流石にこれは収集つかんわ』

 

「……あーうん。でもいいの? 君は」

 

『捕らえておきたいところだが、俺は立場上、生まれてもない『命』を殺せないんだよ。だからお前に手が出せないし、傷つけることもできん。だからもう帰ってくれ、俺の理性が持っている間に』

 

「成程、そーいう……これは意図せずして私達に都合がいいねぇ」

 

『そんな打算で子供を扱おうとするなら、俺はお前を絶対に許さん。それと、あの男とその信望する『神様』とやらとは手を切れ。お前らにはアイツを御しきれんよ』

 

「ご忠告ありがと。でも、アリス・マキナはもう完成したよ。君のおかげでね」

 

『チッ』

 

その言葉を残して、篠ノ之束は姿を消した。文字通り、影も残さず忽然と。

 

『(光学迷彩か、あの銀髪の少女か……なんにせよ、発見は難しいだろうな)』

 

「なぁデウス……これ、どうするんだ?」

 

鼻、目、耳と頭部のいたるところから血を吹き出して倒れる志波真季奈。床に突っ伏して倒れる担任教師。乾いた笑みと虚ろな瞳で焦点の合わなくなった篠ノ之箒。取り乱すクラスメイト達。

 

まさにここは、阿鼻叫喚地獄。

 

『なんとかするしかないだろう? 気張れよ男の子』

 

「ですよねー。いっちょやりますか……」

 

とりあえずご主人様から助けないとな、と二人の飼い犬は行動に移した。

 

これが文化祭、最後の後片付けであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォン!!!!

 

「敵襲ーーー!!!」

 

「護送中の犯人が狙いかもしれん! 警戒をっガハッ!!?」

 

「おい、どうし……グッ!?」

 

ドサッ。そんな音を立てながら、襲撃された護送車から降りてきた警備の者たちが倒されていった。

 

ここはIS学園から少し離れた森の中を突っ切る道の真ん中。そこで襲撃されたのはIS学園の第4アリーナを襲い、その後拘束された犯人二名を乗せた護送車だった。

 

時間は深夜の丑三つ時。警戒に警戒を重ねたその護送任務は、たった二名の手によって打ち破られた。

 

『これで全部だな』

 

「そこのお嬢さんは違うのかしら?」

 

『あぁ。彼女も協力者だ』

 

「いやん。そんな、人生のベストパートナーだなんて……」

 

『……言っとらんぞ?』

 

訂正。三名である。

 

今は大人の成人男性の姿をしたデウス。『銀の福音』の操縦者、ナターシャ・ファイルス。そして、『亡国機業』の女、スコール・ミューゼルだ。

 

「貴方たち、もう大丈夫よ」

 

「す、スコール? スコールか!?」

 

「はっ、しゅっ主任!!」

 

護送車であるトラックの後ろの席。そこに放り込まれていた二人の女。オータムとエムは車のドアを開けたスコールの、上司の姿を見ると驚愕の表情を見せた。

 

オータムはスコールにへと飛びつき、エムは呆然としたまま車内から降りてくる。

 

「スコール? お前怪我してるじゃねぇか!?」

 

スコールに抱きついたオータムは、その時彼女の左腕に包帯が巻かれているのを見つけた。白い包帯にはうっすらと血が滲んでいた。

 

「あぁ、これ? いいのよこれは」

 

「……いいって」

 

「怪我するのなんて、ホント久しぶりだもの。ゆっくり、治していきたいのよ」

 

「? お前がそう言うんだったらいいけどよぉ」

 

『……………………』

 

というかお前、主任だったのか……。そう思っても口にしないデウスは空気の読める子。

 

この襲撃の目的。それは捕らえた『亡国機業』の社員二名を開放すること。その為に警備責任者だったナターシャも抱き込んで事にあたった。その方が、後で『色々』と口裏を合わせやすいからだ。スコールのことも誰にも話していない。真季奈にもだ。これは、デウスの独断である。

 

「申し訳ありません! 自分たちは任務を全うできませんでした! ……やはりこれは口封じ、でしょうか?」

 

「そ、そうなのか!? スコール!!」

 

「いいえ、いいえ違うわ。そもそも私達は任務に失敗していない、『白式』奪取の任務なんて、上は元から望んでいなかったのよ」

 

「な!?」

 

『お前達の会社は利益以外の事を目的としている。それに踊らされて終わるのもつまらんと思わんか? 社畜共』

 

「「「社畜言うな!!!」」」

 

いや、どう見ても社畜だろうよお前ら。

 

「だいたいお前は誰だ!!」

 

「デウス・マキナよ」

 

「なぁ!?」

 

こいつが!? エムは目の前の男を見る。最優先捕獲対象。コードネーム「デウス・マキナ」。人工AIを搭載した完全自立型のIS。様々な形態を持つ常識の外側に存在するありえない機械。

 

それがこんな、どこからどう見てもただの人間の男にしか見えない奴だと?

 

「ちなみに私の素敵な人よ!」

 

『いや、本気にするなよ?』

 

デウスに熱烈(?)な視線を送っていたエムに対抗意識を燃やしたのか、ナターシャがすかさずデウスの胸に飛び込んで抱きついた。それを見て焦る者が。

 

「な、ナターシャ……お前、機械野郎に走ったのか!?」

 

「そういう貴方は女に走っていたんじゃない! オータム!!」

 

「貴方たち、何があったの?」

 

「わかりません。いつの間にか意気投合しておりまして……」

 

ナターシャとオータム。共にアメリカ製のISを駆るもの同士であり、追い追われる間柄であるが共に仕事に打ち込みすぎて婚期を逃しかけている女達。だからか、戦いの中で愛を求める者同士の奇妙な友情が芽生えていた。

 

『……人間は分からんことだらけだ』

 

「あら? なら私が教えてあげましょうか? ………つきっきりで」

 

「「「ん?」」」

 

あれぇぇ? なんだか近くありません? スコールさん?

 

『お前、どういうつもりだ?』

 

「ふふふ、なにが?」

 

『いや、何って』

 

「スコール!」

 

「デウスさん!!」

 

「「なにイチャついているんだ(ですか)!!」」

 

『しとらんよ……』

 

どうしてこうなった? とデウスは頭を抱える。これじゃぁ織斑一夏と変わらんじゃないか。いや、まぁ自分はアレほど鈍感でも馬鹿でもないが……困った。

 

『まぁいい。そんなことよりも取引だ。オータム、それにエムと言ったな。俺に従うならここから逃がしてやる。断ればもう一度ブタ箱に叩き込むが、どうする?』

 

「「選択肢ない脅迫じゃねぇか!!」」

 

もっともである。

 

「大体、テメェに従って俺らになんのメリットが」

 

『親兄弟に胸張って報告できる真っ当な社会人にしてやる』

 

「なんなりとお申し付けてくださいデウス様」

 

「オータム!?」

 

先程までの態度はどこへやら。綺麗に腰を九十度曲げての最敬礼をデウスにしてみせたオータムの姿は、正に取引先に惜しみなく敬意を払う優良社員の鏡そのものだった。

 

『うん、じゃぁオータムはスコールと一緒に行動してくれ。あとそこの嬢ちゃんは……』

 

「エムだ!! 気安く嬢ちゃんなどと呼ぶな!! わたしは成さなければならない復讐があるんだ! 貴様の指図など誰が聞くか!!」

 

『………気になっていたんだがコイツ、いくつだ? それにこの顔』

 

「十六歳よ。私達もそれ以上のことは知らないわ」

 

明らかに未成年。それに誰かさんによく似すぎた顔。……能力はいいんだろうけどさぁ? 正直扱いにく! 

 

『若者はまず学ぶことから始めさせるか………』

 

「は?」

 

「ん?」

 

「はい?」

 

『後で真耶に書類を作らせて……面倒は真季奈にでも見させるか……千冬と一夏には、まぁどうとでもなるか。あ、イギリス政府にも話通しておくか。なにか揺すれるネタはあったかな?』

 

「お、おい! お前何を言っている!?」

 

こちらを余所に、なにやらブツブツと言い出した男に恐怖を覚えつつもエムこと織斑マドカは叫ぶ。それは確かに相手に届いたが、

 

『最低限、高卒くらいにしておかんとな。お前の履歴書を埋める手伝いをしてやる』

 

「      」

 

『あ、そうだ。オータムは『アラクネ』の稼働データを定期的にナターシャに送れよ? アメリカ政府にはそれで条件だしといたからな、今のうちに連絡先交換しておけ』

 

「「あ、はい」」

 

「ふふふ、楽しくなってきたわ。何年ぶりかしらこんな気持ち。それで、まずは何をしますボス?」

 

『あぁ。まずは、『亡国機業』を獲るぞ。ついてこい』

 

「はい、次期社長」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから何日かして。

 

「て、転校生を紹介します。織斑マドカさんで、です」

 

「イギリス代表候補生の織斑マドカだ! 好きなものは姉さん! 嫌いなものは織斑一夏だ! あと、志波真季奈は必ず泣かす!!」

 

「「「んん!!???」」」

 

「ほう? いい度胸ですねぇ?」

 

学園生活、再スタート!

 

 

 




はい。お粗末様でした。

タイトルの女三人を、真季奈、千冬、箒ととるか、ナターシャ、スコール、マドカととるかですが、作者としては前者です。

束さんのマッキーへの執着、家族になりたいという気持ちは今回はっきりとしたものになりました。以前に記憶喪失中の真季奈と一緒に街を回っていたのも必死にコブツキ男の家庭に受け入れられようとする後妻の姿だった、という面もあります。

今回の被害者。

更識楯無: 弾くんを生贄に虚さんを召喚。効果、主人への背信。

真季奈 : 憎い相手がまさかの後妻。やったね兄弟が増えるよ!

箒と千冬: 身内の結婚報告ほど精神的にくるものはない。

織斑一夏: あ、いつもどおりですね。

オータム: 惚れた相手はノーマルだった。いや、機械にNTRれるってノーマル?

マドカ : まさかのピカピカの一年生。明日はどっちだ?

とまぁ、今作始まって以来の大惨事とでした。え? そうでもない?

デウスとスコールは機械と生命の中間の存在になってます。エボリュダー?

次回からまたギャグ中心でお送りします。

それではまた。
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