IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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今回、ちょっとギャグが少ないです。

後半、ネタがわかる人にはこの作品のラストが予想できちゃうかもしれません、

それではどうぞ。


アンケートと竜となるもの

皆様こんにちは、こんばんわ。志波真季奈です。

 

今わたしは放課後の部活棟を歩いております。ある部活へとお願いしたいことがあるからです。

 

その部活とは、新聞部です。

 

「すいませーん。薫子先輩はいらっしゃいますかー?」

 

「おんよぅ? いるよ真季奈ちゃん。どったのー?」

 

新聞部の部室に入り、声をかける。それに応えたのは目当ての人物、黛薫子。彼女は窓際の席、『部長席』と書かれた席に座っていた。

 

「あなたがそこに座っていても大丈夫なのですか? 『副』部長さん」

 

「うん。どのみちこの席はいずれ私のものだからねー」

 

にこやかに笑って言う薫子の姿に真季奈は全てを悟った。

 

「(あぁ、……もう根回しは済んでるんだ……)」

 

例え前年度に副部長だったとはいえ、次の部長に繰り上がり昇格ということはまずない。能力的にも部員たちの長としての素質がなければ何時までもサポート役である二番手、副部長だろう。

 

なのにこの言いよう。それは次の部長の座は自分だと決まっていることを見せつけていた。

 

「貴方のそういうところは尊敬します『先輩』」

 

「ふふふー♪ 真季奈ちゃんもワンマン経営やってないで、上手く部下を扱う方法を学べばいいさ。一夏くんも手に入ったんだし」

 

「アレはまるで役に立ちませんので。せいぜい客寄せパンダくらいの価値しかありあせん」

 

「マッキー商会の稼ぎ頭なのに?」

 

「それを差し引いても使い道というものがまるで皆無です」

 

先日の文化祭で優勝したマッキー商会。その時の報酬で『織斑一夏』の所有権を正式に学園側から得ていたのだが、ぶっちゃけ、なんの役にも経っていなかった。

 

まず『商品』の肖像権を勝ち取った。これはいい。が、堂々と公認で作ったグッズにはなんの魅力もなかった。影でこっそりと盗撮したり、盗んだりした品物を扱うあの背徳感がなんともいえな……いや、よそう、うん。

 

とにかく、IS学園の生徒には『公式』写真集よりも『盗撮』写真集の方が人気があったのだ。意外なことに。なので、むしろあの男を手元に置いておくことはマイナスだったりする。若干売れ行きも落ちた。

 

なら雑用をさせるか? いいやダメだ。会計をさせようにも帳簿には『見せられないよ!』な取引が多すぎるし、あの正義感ぶった織斑一夏がどんな行動をとるか考えただけで恐ろしい。最悪、自分の手が後ろに回る羽目になりかねない。

 

なら荷物運び? いやいや、織斑一夏の盗撮写真や盗品がまぎれた商品を織斑一夏に運ばせるとかなんの冗談だ。その時点で商品価値が落ちるというものだろう。

 

つまり、あの男にはマッキー商会の運営には関わらせるわけにはいかないのだ。

 

それでは何をさせるべきなのか?

 

結論としては、志波真季奈のペット兼サンドバックという扱いになった。

 

要するに、いつもどおりなのである。

 

学園中の女子一同の声:「「「実にもったいない。でも羨ましい」」」

 

「まぁ、そんな話はさておき。今日は実はあなたにお願いがあって訪ねてきたのです」

 

「うん、そうだろうね。それでどうしたの? タレコミ? 口止め? 買収? それとも捏造記事でどっかを貶めるの? あ、ひょっとしてこの間の八百長記事のことで脅しに来た?」

 

とんでもない部活だった。

 

「いえ、今日()違います」

 

いつもはそうなの?

 

「今月の学園新聞にマッキー商会の広告ページを載せたいんです。内容はアンケートで賞品は金券一万円分」

 

「おや、真季奈ちゃんにしてはまともだね。商品も大人しめだし。まぁ、学生からすれば一万円は嬉しいけど」

 

「お願いできます? アンケート内容はこちらです」

 

真季奈は持っていた荷物から折りたたまれたA4用紙を取り出すとそれを開いて見せ、そこに書かれている詳しい広告の詳細を伝えた。

 

「んー……、うん。いいよ、問題なし。というか問題がなさすぎてホントに怖いくらい。大丈夫? 保健室行く?」

 

「一度先輩とはわたしの評価について後でじっくりと話し合うとして。そのアンケートの集計と結果のまとめを生徒会の、それも生徒会長にお願いしたいのですが。お願いできますか?」

 

「え? ………いいの? あ、裏工作とか仕込むの? それか生徒会の弱みを握るとか」

 

「いえ、それはまた別の機会に。今回は公正に行きたいので生徒会にお願いするだけですよ。わたしが全部やってたら、それこそそうやって無い裏を疑われますからね」

 

これは本心だ。

 

真季奈はこのアンケートに裏も工作もペテンも落とし穴も儲けるつもりもない。ただこのIS学園全体の考えをアンケートで知りたいだけ。

 

それにこう見えて、真季奈は生徒会長である更識楯無を高く評価している。短い期間とはいえ、同じ織斑千冬にIS操縦を師事した仲ではあるし、戦闘以外で政治、人心掌握等の技能も素晴らしいものを持っている。何よりも、この学園の実質的な長なのだ、彼女は。学園の生徒の『声』を正しく評価し、まとめあげれるのは彼女を置いて他にない。

 

………普段はドMのシスコンだけどね。しかも原因は真季奈自身だ。

 

「でも、生徒会に頼むなら私じゃなくて直接向こうに頼まないと駄目だよ? 流石にね。それも主催者が」

 

「……そうですか。では今から交渉に行ってきます。確実に首を縦に振らせてきますので準備を進めておいてください」

 

「ぶ、物理的に振らしちゃダメだからね? あ、ちなみに報酬なんだけど」

 

「指定の口座にいつもの倍で」

 

「毎度アリー♪」

 

この様子なら問題ないでしょう。お金…報酬が絡めばきっちりと仕事をお願いできる相手です。

 

ということで、向かうのは生徒会室です。まだそんなに遅い時間じゃない。生徒会の仕事をしていることでしょう。……きっと、多分、もしかすると………うん。

 

さぁ行きましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこの学園は?」

 

この学園に編入してきて、初めに思ったことがそれだった。

 

私、織斑マドカはまともに学校に通ったことがない。そのへんの事情は置いといて、とりあえずそういうことなので私が学生をやると聞かされたときの気持ちをどう表現すればいいのだか……。

 

上司に尋ねたら。

 

「あら、いいんじゃない? 何事も経験よ経験」

 

実に能天気な言葉を送ってきた。なんの経験だ?

 

同僚には、

 

「……いいから通っとけ。IS学園の学歴とか欲しくても取れないのが普通なんだ。というか、私が行きたいわ」

 

切実な答えだった。いや、確かにその通りだが、お前が学生服着るところを想像したくない。

 

上司と一緒にいた見知らぬあの男は。

 

『あ、学費は給料から引いとくから』

 

実に現実的な答えだった。え? なんで私の給料をお前が管理しているんだ? ……え? 新しい雇用主? マジっすか主任……?

 

そういうことで、何がなんだかわからないまま私はこうしてIS学園の生徒になった。なんだこれ。

 

しかし、嬉しい誤算もあった。織斑一夏、志波真季奈だ。あの二人に復讐するチャンスがすぐ近くに転がっていると思うと……くくくっ。

 

しかも同じクラスだ。そうだ、教室での自己紹介の時に宣戦布告をしてやろう。楽しみだ、今に見てろよ!

 

 

 

 

………ダメでしたー。

 

 

ナニアレ? 魔物? いや、魔王? 

 

初日から、私は志波真季奈に敗北した。なんなんだあの女は? 視線は凍てつく氷河のごとく冷たく、鋭く。冷酷で残忍でな脅しをかけてくる心(注:彼女の主観です)

 

なぜこの学園はあんな女を放置しておくんだ!? いっそ停学、いや退学にするべきだろう!!

 

織斑一夏もだ! あの男はなんであぁも平然と毎日を送っているんだ!? 今日だって………、

 

 

朝、食堂にて。

 

「ほらー。ご飯が食べたいですかー? だったらもっと大きく口を開けたらどうですぅ?」

 

「はい! ありがとうございます姐さん!!」

 

床に四つん這いになって顔を上に向けながら大きく口を開けて、志波真季奈の持つ朝食を手掴みで食べさせて、いや、餌付けさせられている織斑一夏の姿があった。

 

「なんなんだよぉ」

 

 

授業中。教室で。

 

「じゃぁ織斑くん、教科書の続きを読んでください」

 

「山田先生! 教科書が開けません!」

 

「真季奈さんー? 織斑くんを椅子にするのは休み時間だけにしてくださーい」

 

「わかりました。足踏みマットでいいです?」

 

「大して変わらないのでダメです」

 

自分の椅子のかわりに、四つん這いになった織斑一夏の背中に座って授業を受ける志波真季奈の姿があった。

 

山田先生……注意するところはそこじゃないと思います。

 

 

放課後。学生寮にて。

 

「昇! 竜! 拳!!」

 

「ぐはぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「「「なんで!?」」」

 

「タイミングよかったので」

 

自室に戻ろうと学生寮の廊下を歩いていると、織斑一夏が志波真季奈にアッパーで吹き飛ばされていた。タイミングってなんの!?

 

「なんで、誰もおかしいと思わないんだよぉぉ」

 

一部始終を見ていた自分がこう思うことは絶対におかしくない! 

 

「そうだ! 間違っているのは私じゃない! この学園の方だ!!」

 

『(こいつは反逆のマドカでも始める気なんだろうか?)』

 

学生寮の廊下にて、志波真季奈と織斑一夏との一部始終を見ていた織斑マドカ、をさらに見ていた黒い柴犬の機械犬ことデウス。今日は彼も仕事が終わって自室で寝るところです。

 

「……なんで学園に犬がいるんだ?」

 

『(……あ、目があった)』

 

廊下の真ん中に珍しく四足で立っていたデウス。マドカの視線に完全にロックオンされていた。

 

「………おいでおいでー、怖くないよー」

 

『(俺がデウスだと気づいていない? あ、この姿で会ったことなかったな)』

 

廊下にしゃがんで、マドカが見知らぬ柴犬(デウス)においでおいでと手招きをする。すると、黒い柴犬はとことこと自分のところまで歩いてきた。

 

「おー賢い子だなー。お前迷子か? ……首輪がついている、飼い主とはぐれたのかー? こんなところまで入ってきたらダメだぞー?」

 

などと言いながらも黒い柴犬の頭を撫でるマドカ。顔は笑顔で緩みまくっており骨抜きである。

 

「お前はいいなー、悩みとかなさそうで。私はなぁ、この学園でやっていけるかが不安で仕方ないよぉ。憎い相手は異常を通り越して不気味だし、それを周りは見てみぬふりしてるし……おかしいよなぁ?」

 

『クゥン……(慣れって怖いんだよ。お前が入ってくるのが遅すぎたかもなぁ)』

 

例えるなら朱に染まった水のようなもの。後からでいくら色を継ぎ足そうと元の真水には戻れないように、真季奈色に染まったこの学園は新参者のマドカの手には余る状態だった。

 

「アンタ、犬相手に何やってんのよ?」

 

「……なんだ、酢豚か」

 

「凰鈴音よ! なんでそっちで覚えてるのよ! だれだ教えたの!!」

 

お風呂上がりでパジャマ姿の凰鈴音がそこにいた。

 

「織斑一夏だ」

 

「よし殺す!!」

 

ざまぁ!! 最近、こうして織斑一夏に濡れ衣を着せるのが慣れてきたマドカ。本人的には罪悪感なんて感じないし、むしろ訳も分からず殴られるのがいい気味だと思うのだが……何故か殴られる瞬間に見せる笑顔が不気味だった。そして志波真季奈がこちらを見て笑顔でサムズアップしてみせるのが恐ろしい。もしや見抜かれているのか?

 

「はぁ……この学園の風紀委員は何をやっているんだ? 風紀乱れすぎだろう……」

 

『ワフゥン(あ、それなんだが……)』

 

「ないわよ、風紀委員」

 

「はぁ!?」

 

マドカちゃんびっくり。え? 普通あるでしょう?

 

「ないって、何故だ!?」

 

「なんでもありのこの学園よ? そもそも制服改造自由なんて校則があるのよ? そんなもの、風紀なんて言葉が廃れて当たり前でしょう?」

 

「いや、学園の自治はどうなる!? 不埒な輩は取り締まる必要があるだろう!!」

 

「大抵は生徒が自粛するし、織斑先生っていう最強の鬼がいるのよ? そんな輩殆どいないわよ」

 

えぇー? それは自由すぎるだろう? 

 

実はこれが志波真季奈の奇行を罰してこなかった最大の理由だったりする。あと、織斑千冬の心労の。生徒会は好き勝手振舞うし、新聞部や整備科の施設の私物化など問題しか起きていない状況ではあるがなんとまぁ、なんとかなっていた。

 

「いいや! それでもダメだろう!?」

 

「でも、無いものはないわけだし」

 

「無ければ作ればいい!!」

 

『(お)』

 

「決めたぞ! この学園の風紀委員に、私はなる!!」

 

そして志波真季奈を正面から堂々と取り締まってやる!!

 

さっそく申請だ! 生徒会室に行こう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「織斑くん。ちょっとお願いがるんだけど」

 

「え? ……君は、更識…簪さんだっけ?」

 

第4アリーナ。今日の訓練を終えて学生寮に戻ろうか、というところで織斑一夏に話しかけた少女がいた。

 

その名は更識簪。この学園の生徒会長、更識楯無の実妹である。姉と同じ水色の髪。大きなメガネをかけている。

 

その彼女と織斑一夏との接点は、ない。正直、真季奈と彼女が一緒に遊んでいるのをたまに見ているだけだ。

 

「どうしたの? 俺に用って?」

 

「これから私の姉に会って欲しい。時間はある?」

 

「楯無さんに?」

 

彼女の姉、更識楯無さんいは文化祭前に世話になった。ISの操縦訓練を見てもらったのだ。後、俺の部屋に押しかけて来たこともある。……時々、何やら部屋の済でゴソゴソとしていたのはなんだったのかわからないが……。

 

※真季奈が記憶喪失中に彼女の仕掛けた盗聴器の類を解除していました。記憶の戻った真季奈に再び設置されていますが。

 

「いいけど、なんでまた?」

 

「姉の助けになって欲しい。私には……無理だから」

 

なんだって? 持つの妹である簪さんにもどうにもできないことなのか? 一体、会長に何が!?

 

そうして、二人は生徒会室へと向かった。

 

 

 

「仕事したくないー」

 

「「「うわぁ」」」

 

生徒会室につくと、そこには机に項垂れて仕事をボイコットすると公言する生徒会長の姿があった。おいこら。

 

あと、何故か真季奈と、マドカもいた。何用です?

 

「あの、会長? お願いしたい仕事があるんですが……」

 

「真季奈ちゃんがネコ耳メイド姿でご奉仕してくれたらするー。文化祭でやってたんでしょう?」

 

「会長。風紀委員を新設したいんですが」

 

「マドカちゃんがスクール水着でお願い♥って上目遣いで言ってくれたらオッケーするー」

 

「仕事しろお姉ちゃん」

 

「簪ちゃんがベッドで添い寝してくれたらちょっとだけ頑張るー」

 

「「「いい加減にしろ!!」」」

 

「やだー。はーたーらーきーたーくーなーいー」

 

なにこの駄々っ子。普通にめんどくさいんですけど。

 

「あの、簪さん? なにこれどゆこと?」

 

「……最近、嫌なことがあったみたいで。仕事して欲しかったら我侭を聞けってうるさいの。あーめんどくさ」

 

「あ、あの、カッシー? だ、大丈夫ですか?」

 

「うん、マッキー。大丈夫だよ? ダイジョウブー」

 

あ、やばい。目が虚ろだ。真季奈が引くほどに。何があったんだ一体? ……あ。

 

織斑一夏には一つ心当たりがあった。文化祭、真季奈と虚さんの間で交わされた密約。あの後文化祭が終わった頃に聞こえてきた絶叫。

 

「あの、虚さん。何か心当たりがあるんじゃないですか? あと真季奈も!」

 

「「いえ、全然」」

 

露骨に目を背ける真季奈と会計の布仏虚さん。何か知ってんだろおい。

 

「簪さーん! この二人今すぐ取調室連行ー!! すぐ連れてってー!!」

 

「この学校にそんなとこないよ。それに……そっち方面はもう諦めてる」

 

「流れに任せて生きるだけが人生じゃないよ!? もっと逆らおうよ! 激流を登りきって竜になれよ!!」

 

「! 滝登り……出世……下克上? そうか……くっくっくっく」

 

あれ? どうしたの簪さん? なんだか一転して怪しい笑みを浮かべてますよ? なんかミスったか俺?

 

「そうだよ。お姉ちゃんが仕事をしてくれないのなら……私が会長になればいい!!」

 

「ちょっ、え!? か、簪ちゃん!?」

 

これにはさすがの楯無さんもびっくりして跳ね起きた。

 

更識簪、覚醒!!!

 

「お姉ちゃんっさとそこどいて! その仕事片付けれない!!」

 

「その妹キャラはダメよ簪ちゃん!! ヤンデレルートはダメ!!」

 

「デレはない!!」

 

「酷い!!」

 

…………あ、うん。ひょっとして解決した?

 

急に始まった椅子の奪い合い(会長職という意味で)。それによって会長も慌てて抵抗し始めた。姉妹仲いいっすねー(棒)。

 

「そういうことなら簪ちゃん、いえ会長。この書類を受理して欲しいのですが」

 

「うん、わかった」

 

「ちょっと待って! 私がやるから!!」

 

「あ、新会長。風紀委員を作りたいんですが。私が委員長で」

 

「許可。さっそく校則の見直しから始めようか。あと仕事しない生徒会への罰とか考えよう」

 

「どんどん肩身が狭くなる!? ちょ、待ってゴメンナサイ!! 仕事するから待ってーーー!!!」

 

こうして、生徒会に新?メンバーが加わり仕事も円滑に進むようになった。

 

俺はそれを見届けると静かに生徒会室をクールに去った。

 

決して、もう関わりたくないから逃げ帰ってわけじゃないからね!?

 

終わり!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の地下。秘密の研究室。

 

すっかりここの常連になったデウス、山田真耶、織斑千冬は……正座していた。

 

『なんでこんなことに』

 

「黙れバカ犬。飼い主に黙ってこんなところでコソコソと何をしているんですか?」

 

はい、バレました。真季奈に。

 

「あの、真季奈ちゃん……足が痺れて痛い……」

 

「あ、山田先生はもう椅子に座っていただいて結構ですよ? お疲れ様です」

 

「わーい」

 

「『差別だ!!』」

 

早速足を崩して椅子に座って楽になる山田真耶。それには未だに正座で苦しむ二人も不満を言う。特にデウスなんて犬の姿で正座しているんです。凄い辛い。骨格的な意味で。

 

「で、ここでなんの研究をしているんです? わたしが調べたところ、先日の戦闘跡で回収したものを運び込んだり……『暮桜』の改修もここでやっていたみたいですが。あとジャバちゃん。あの子は一体何なんです?」

 

「……デウス」

 

『ま、そのうち話すつもりだったし。それが早まっただけと思えばいい、か』

 

デウスはそう言って立ち上がると、手元のコンソールのいくつかを使ってスクリーンに資料を映し出した。

 

『まず、お前のIS『暮桜 天』。これは俺が単体として活動するために作ったモノであり、『天蓋王』の本来の力を呼び起こすための機体だ』

 

「? 言っている意味が分かりませんが?」

 

デウスのことならまだ理解できる。

 

デウスのコアは『天蓋王』のモノだ。ただ、『デウス EX』に進化してからというものコアの、いや、ISとしての在り方そのものが変質していた。もはや、人間が纏うことなど不可能だろう。だからこそ、わたしの専用機を別に用意し、その戦闘データも自分の中の『天蓋王』ごと移植したがあの『暮桜 天』なのだろう。

 

しかし、『暮桜』である。この機体は昔、日本政府の馬鹿どもがわたしに無断で「ALICE」の二号機のテスト機として実験し、崩壊させた機体だ。それを動かせるようにした方法も『天蓋王』の中身を移植とはこれいかに? まさか、ISコアネットワークを使えばコア同士で中身の入れ替えができるということなのだろうか? 『単一能力』まで? なにそれやだ怖い。下手をすると、見た目『甲龍』なのに『零落白夜』を使い出すとかできるんだろうか?

 

そして、『天蓋王』の何を呼び起こすというのか?

 

自分の左手の薬指にはまっているソレを見る。金色のリングに緑色の宝石が嵌められた指輪。『暮桜 天』の待機状態。

 

このISがなんだというのだ?

 

『この世界に流れ着いた異邦神は、俺達だけじゃなかったということ、らしい。多分』

 

「はい?」

 

『で、俺たちが文化祭が終わってから回収したものについてだが、……これを見ろ』

 

スクリーンに映ったのは……鉱物だった。

 

『これがなんに見える?』

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………わかりません」

 

解らなかった。このわたしが。

 

『ソレ』は鉱物だった。しかし、目や口のような裂け目があり、生物にも見えた。かすかに脈動し、動いている。

 

なんだこれは?

 

「元は学園の港口の一部だ」

 

「え?」

 

これが? 

 

「港口の地面のコンクリート。コンテナにクレーン。停泊していた船。他にもたくさんあるが……みなこの『物質』に変質している」

 

「それだけじゃありません。地面は表層の部分だけでなく、海に近い下層部分まで変質していました。もしもこの変異現象が人工島であるIS学園ではなく陸地の市街で起こっていたら……」

 

「なにが起きたんですか?」

 

文化祭でのアリーナ襲撃。それと並行して港口でも無人機の侵入があった。それを撃退したのは『デウス EX』。

 

あの時に何があったのだろう? 自分に何を隠しているんだこの犬は?

 

『あの時、IS学園の方から降ってきた『光』が戦闘中の俺のいた港口に降り注いだ。そうすると、その地点を中心に辺り一帯の無人機、物質が変異し、まるで別の存在に上書きされた』

 

「上書き? 光とは?」

 

『紅椿。あれがその元凶だ』

 

アリーナで『紅椿』の発動させた『単一能力』、『絢爛舞踏』。あれは一夏たちだけでなく、俺の戦う戦場にまでエネルギーを照射させてきた。本来、そんな機能などない筈だ。だが、もしも『紅椿』の中にいるのがヤツだとしたら?

 

「では紅椿は?」

 

『当然、近いうちに凍結処分にする』

 

「だが、第4世代の機体のデータを欲しがる偉いさん達の許可がおりないのさ。だから、ダミーを作ってすり替える。それまでは要監視体制で進めるしかない」

 

「下手に強硬手段を進めると、他国から情報開示を理由にどんな要求をされるかわかりませんからね」

 

それが理由。世界初の第4世代機のIS。そんな前代未聞の技術を世界各国が欲しがらない訳がない。だから、どこの国にも所属していない篠ノ之箒を自国の代表候補生にスカウトする動きは止むことはないし、盗用しようとスパイだって送り込んでいる。それを未然に防いでいるのが更識の一族だ。正直、影でかなり苦労している生徒会長である。

 

その為、『紅椿』をこのタイミングで凍結処理の完全封印なんてことしたら、確実に他国といざこざが起きる。準備が必要なのだ、今は。

 

そして更に映し出されるのは赤いザリガニのような巨大な機体と、サソリのような騎士。そして、まるで別世界のような港口の変わり果てた姿。高く建っていたはずのクレーンは禍々しく嗤い、コンテナだったものは辺りを見回し、大地はグツグツと脈動している。こんなものは知らない。ここはどこの地獄だ?

 

『あれは……アイツらは別の世界の住人。この世界を自分たちの世界に作り替えようとする先兵だ』

 

「………だから、あんなものを造って備えていると?」

 

この研究室の外、ガラス張りの仕切りの向こうに『いる』その存在を見る。

 

色は灰色。巨大な腕を持ち、首は胴体に沈み込むように短い。大柄な体型の巨人で中身は無人。最初にこのIS学園を襲撃してきた無人機。『ゴーレム』。いや、今の名は『ジャバウォック』だったか。

 

それが今、食べている。

 

沢山の、ISコアを。

 

≪グルルルル!!!≫

 

ガツガツと貪り食うわ、その巨大な両腕。その先端が竜の頭部となって大きく口を開いて、山積みとなったISコアを食べていた。

 

「………まさかあのコアは、わたしがアリーナで倒した無人機のものですか?」

 

『あぁ。本当は俺が倒した奴等も食わせる予定だったんだが、『汚染』されちまったんで消滅させちまってな。あれだけしかないんだ』

 

「二十個のISコアで『あれだけ』?」

 

すると。

 

≪グ、グルルルルルル!!!!!!!≫

 

『ジャバウォック』が突然苦しみ始める。ISコアを全てたいらげ、両腕の竜を咆哮させる。

 

そして、『進化』が始まった。

 

全身が巨大化を始め、両足は鋭い爪を生やし大型化。両腕は伸びてゆき、先端の竜は巨大な頭部となる。胴体の背からは二対の巨大な翼が生え、腰からは長い尻尾が伸び始めた。

 

「これは……ここまで変化するなんて」

 

「本当に、デウスの想定通りになったな」

 

「ドラゴン? いえ、ワイバーン?」

 

真耶が、千冬が、真季奈がソレを見て各々の思ったことを口にする。

 

『これでいい。これでこそあいつらの企みを喰らい尽くせるというものだ』

 

この地下研究所を覆い尽くすほどに巨大化した灰色の竜を見てデウスが言う。この結果が想定通りだと。

 

「その企みとは、篠ノ之束の言う『不思議の国』の建国のことですか? だから、アリスに出てくるジャバウォックと名付けたと?」

 

『気に入らんか?』

 

ジャバウォック。それは「不思議の国のアリス」の続編、「鏡の国のアリス」に登場する異世界の魔物を語った詩に登場する架空の生物。

 

篠ノ之束の『夢』を喰い殺す存在として、これ以上のモノはないではないか? そう名付けた。

 

「えぇ、気に入りませんね」

 

『あ、そうですか……』

 

デウスくんショック! 割りと。

 

「こちらの用意するものまであの女と同じ舞台に上げてやる必要はありません。改名を要求します」

 

『ではなんと? 今なら自分で命名してもいいぞ?』

 

だって言い出しっぺですし。

 

「そうですね、なら……見上げるほどに巨大な…ワイバーン……」

 

あ、本当に改名されるんだ……。真剣に悩む真季奈を見て、デウスは少々へこんだ。自分、センスなかったすか?

 

「決めました」

 

『ましたか』

 

この子の名は。

 

「暴竜、カイザーワイバーン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある島。とある研究所。

 

「束様。もうそろそろお休みになってください」

 

「ん~、もうちょっと」

 

ガチャガチャと、一心不乱に作業を進める篠ノ之束。それを諌めるのはクロエ・クロニクル。もう束の体は彼女だけのものではないのだ。無理などさせられないとクロエは思っている。

 

「しかし、これほど巨大なものが本当に必要なんですか?」

 

クロエは『ソレ』を見上げていう。

 

≪ガルルルルルルルル≫

 

唸りを上げるそれは巨大な虎。鋼鉄の巨体な四肢を、牙を、今にも暴れ出したい己を押さえ込む猛獣そのものだった。

 

「蒔春さんが絶対に必要だって言うから、とりあえず作っているけど。う~ん、何に使うんだろうね? これ」

 

「束様にもわからないのですか?!」

 

「うん。これは「アリス・スリー」の中にあった「ディープストライカー」の設計プランの一つから選んで組み上げたんだけど……どこかの国でも滅ぼすのかな?」

 

いやいやいやいや!! そんな物騒なもの簡単に組み上げないでくださいよ!!

 

クロエはこのバカ夫婦、いや天才なのだが、とりあえず思考が熱中しすぎて明後日の方向に行く二人の行動に気苦労が絶えなかった。

 

こんな危険物、そんな簡単に作らないでくださいよと。

 

「それで、なんて名前でしたっけ、これ」

 

「あ、うん」

 

 

「豪虎、カイザーティーゲル、だよ」

 

 

世にも恐ろしい『肉体』が生まれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園発行の学園新聞にて、マッキー商会の広告企画にて一部抜粋。

 

 

『貴方にとって、インフィニット・ストラトスとはなんですか?』

 

 

最優秀者には金一封。お申し込みは生徒会室目安箱までお願いします。




はい、お疲れでした。

あれです。更識姉妹の力関係が原作とまるで違います。

簪ちゃんは楯無さんにコンプレックスを持っていません。理由は小話の方で。

実力は 楯無>>>>>簪 ですが、力関係は逆という矛盾。

生徒会に参加するのは織斑一夏ではなく織斑マドカのほうで。これからは風紀員として、真季奈の行為を取り締まれるよう頑張っていって欲しいです。

SDガンダム要素に関してはノーコメント。色々と予想してちょ。

真季奈が作ったアンケートは本編の誰かに当てた言葉です。真季奈も歩み寄ろうと頑張ってます。

それではまた次回。

感想待ってます。
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