IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

花粉症が辛い季節となりましたね。

僕も目のかゆみと鼻、くしゃみと大変です。特にくしゃみがもう、ヒビの入ったアバラに響いてなかなか完治しません。


というわけで、今回は前編です。




閑話 織斑一夏、白騎士になる。 前編

「神様仏様デウス様!! どうか俺を鍛えてください!!」

 

『開幕土下座とは……とうとうそこまで来たか一夏』

 

始まって早々。というより、一行目から土下座をする織斑一夏の姿があった。された側のデウス(犬)も意味不明である。

 

場所は一夏とデウスが生活するIS学園の学生寮1025号室。(デウスはとうとう真季奈の部屋から追い出された)

 

週末の休みに真季奈に誕生日プレゼントを買ってもらう、と約束したその日の晩である。

 

それが何故、織斑一夏はデウスに土下座までして鍛えてくれということになっているのだろうか?

 

 

話を少し戻そう。

 

 

それも、織斑一夏がIS学園に入学したての四月頃まで。

 

 

 

 

「わたしにISの操縦を教えて欲しい?」

 

「あぁ。志波さんの『天蓋王』の戦い方は俺の『白式』の参考になると思うんだ」

 

「悔しいですが、わたくしもそう思いますわ」

 

ISアリーナにて、それぞれの専用機を纏った織斑一夏、志波真季奈、セシリア・オルコットがISの訓練の為に集まっていた。あ、あと箒は練習用のIS、『打鉄』を借りられなかったので今日は剣道場にて部活中です。

 

「いいですよ。時給750円で」

 

「金取るの?! しかもやたらリアルな金額!」

 

「だいたい学生バイトの値段ですわね……」

 

手のひらを上に向けて差し出し、ほれほれと一夏に金銭を要求する真季奈。カツアゲ? いいえ、真っ当な労働の対価です。

 

真季奈と一夏の間に無償の友情などありえません。

 

『なぁ真季奈。僕も金銭のやりとりはほどほどにしたほうがいいと思うぞ?』

 

「おぉ! デウス!!」

 

真季奈が造った人工知能搭載型AI、デウスが『天蓋王』の中から真季奈に言う。それを聞いた一夏は喜ぶが、

 

『現物支給にすれば禍根も残らん。食事時にデザートでも献上させたらどうだ?』

 

「いいですね。それ採用」

 

「君ら揃って鬼ですね!!」

 

 

 

復讐番外編 : 織斑一夏から毎日デザートを奢らせる。

 

結果    : 訓練でアレコレ聞いてくるので鬱陶しいです。

 

備考    : 好きにボコできますが、毎日デザートは太る……かな?

 

 

 

 

凰鈴音と織斑一夏のクラス対抗戦、並びに無人IS襲来事件の後。

 

「おらおら! あと三十週残ってるぞー! 気合入れろーーッ!!」

 

「ひぃーーっ、ひぃーーーっ!!! なん、でっ! IS着たまま走んなきゃなんないんだよーーーッ!!!」

 

「うわぁ……アリーナの外周五十週って……」

 

「鈴さん、あんまり見ていますと巻き込まれますわよ?」

 

「うぅ、あの時のことを思い出すと未だに吐き気が……」

 

鈴が一夏たちとのIS訓練に加わり、その目で見た光景はまさに理不尽。なんと、ISの機械補助なしで体力づくりを行う織斑一夏の姿がそこにあったという。

 

真季奈は野次を飛ばして叱咤激励。一夏は手足の筋肉をきしませながらフラフラと走り、セシリアと鈴は呆れ、箒はかつて自分も参加した訓練を思い出し顔を青くする。

 

「でもなんであんなことしてんの? 意味ないでしょあれ?」

 

鈴が率直な意見を言う。それは正しかった。

 

ISは動力であるISコアによって起動する。すると、操縦者に様々な恩恵をもたらすのだ。

 

一つは操縦法のレクチャー。これはISを初めて纏った者でもある程度の操作ができるレベルの情報が脳に直接叩き込まれる。

 

次に機械補助による重い装備を扱うことのできるパワー。

 

つまり、ISを纏った状態で機械補助を切ってのランニングなど、ただ体を酷使するだけでなんの意味もないのだった。

 

「単純に体力作りの為らしいですわ」

 

「………は?」

 

「真季奈に聞いたんだがな。訓練するための体力がなければ学生時代を病院のベッドの中で過ごすことになるらしい………」

 

「………何させる気なのよあの子」

 

え? 訓練と言うなの拷問じゃない?

 

………などと、例え思っても口に出さないのが彼女らの優しである。

 

 

 

復讐番外編 : 鉄下駄走破訓練(下駄でなくISですが)

 

結果    : 無様なアヘ顔が撮れました。ついでに織斑一夏に体力もつきました。

 

備考    : コラ画像つくったら飛ぶように売れました。この学園のお姉様方マジパネっす。

 

 

 

 

シャルロットやラウラがIS訓練に本格的に合流した頃。

 

「ほらッ! そこで避ける! は!? なんで出来ないんだこのグズがッ!! 出来なきゃ死ね!! 死なないのなら惨たらしく死ね!!」

 

「ひぃっ! ふぅっ! はーーーーーっ!!!」

 

「逃げて一夏ーーーーっ!」

 

「捕まったら死ぬぞーーーッ!!」

 

「真季奈さん! どうか許してーーーッ!!」

 

「なにこれ!? なんなのこれーーーーッ!!!」 

 

「あばばばばばばば!! ああ姐さーーーーーん!!」

 

まさに地獄。いや、地獄というのも生ぬるい。一方的な苦痛、。圧倒的な恐怖。

 

ISアリーナに数十と浮かぶ真季奈の残像。それらに滅多斬りにされる織斑一夏。避けたと思えば死角から斬り上げられ、弾かれた体は別の真季奈に叩き斬られる。空中での連続斬り。何度も何度も上と下を行ったり来たり。

 

気が付けば、

 

「あれ? なんだ、気絶してるじゃないですか。今日は終わりですね」

 

「「「一夏―ーーーーーーッ!!!!」」」

 

空中で白目をむいて気絶した織斑一夏。器用なことに、『白式』は仰向けに倒れた彼をそのままの姿勢で宙に漂わせている。

 

「鈴ーーーッ! へい、パースッ!」

 

「投げんなーーーー!! うおぉおおおおおおおお!!! キャーーーッチ!!!」

 

真季奈が一夏の髪をむんず、と掴むとそのまま鈴へと向けて無造作に投げる。あ、髪の毛がごっそり抜けた。

 

空中をきりもみしながら落下していく一夏。ISを展開してそれを必死で受け止めた鈴は見事としか言いようがなかった。

 

 

復讐番外編 : 頭髪投げ。

 

結果    : 織斑一夏に十円ハゲができました。

 

備考    : 後頭部なので気づくのに時間が掛かりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

で、現在。

 

場所と時間は織斑一夏の部屋と夜へと戻る。

 

「正直、俺。五体満足なのが奇跡に思えるっす」

 

『止めたほうがよかったな、うん』

 

頭髪は一部死んだけどね。

 

今日までのIS訓練を振り返り、涙を流す織斑一夏。デウスはというと、自分の主である真季奈の過激な訓練はこの男にあっていたのかと考え、そして首を振った。

 

『お前、それでも専用機持ちの間じゃぁ一番弱いしなぁ』

 

「ぐふっ!」 

 

現実は非常である。

 

一年生の専用機持ちの間でリーグ戦形式で訓練試合を行えば、一番の黒星を取るのは織斑一夏である。次点で篠ノ之箒、セシリアオルコットと続くが、一夏ほどではない。

 

理由は幾つかある。

 

まずは訓練時間。一夏はこの学園に入ってからISに乗ったのだ。その何倍もの時間を訓練に費やした他の代表候補生に付け焼刃程度の技術で追いつけるものではない。

 

そして機体性能。『白式』は確かに高性能な機体である。他の第三世代でも頭ひとつ抜けているだろう。しかし、燃費が悪すぎるし武装もひとつだけ。弱点が多過ぎる機体なのだ。対応策も練りやすい。

 

ならばなぜ、一夏よりも訓練時間の短い箒が一夏よりも白星を上げるのか? 

 

それこそ、機体性能の差である。

 

『紅椿』。世界唯一の第四世代型ISにして最強の機体。『白式』も雪片弍型という第四世代相当の武装を持っているが、それだけでは優位にはなれない。それに操縦者の篠ノ之箒も剣道の全国制覇者であり、篠ノ之流剣術を習得した武芸者の端くれ。素人に毛が生えた程度の一夏に遅れを取る理由などなかった。

 

 

つまり、織斑一夏は弱いのである。

 

 

「生徒会長の楯無先輩が教えてくれたときは天国だったなぁ……教え方も丁寧で安全で命の危険もなくて分かりやすくて………」

 

『真季奈の教え方は基本、死にたくなければ覚えろ。余計なことは考えるな。命が惜しければ死ね、だからなぁ』

 

織斑一夏は真季奈以外にもISの訓練を受けている。

 

例えば姉の織斑千冬だったりクラスメイトのシャルロット・デュノアだったり、生徒会長であり先輩の更識楯無である。

 

彼女たちの教え方にはある共通点がある。それは、実践よりも先に技術の習得である。

 

織斑千冬は雪片の扱い方と瞬時加速を教え。シャルロットは銃の扱い方を。更識楯無は(サー)()()(・ロ)()()を。

 

しかし真季奈は違った。彼女は付け焼刃の技術よりも実戦を叩き込んだ。

 

曰く、一の恐怖は百の経験にも勝る。ということらしい。

 

『まぁ、確かにお前についた教師はみんな優秀だったし、教えたことも的確だった。だがな……それは他の専用機持ちは全員通った道だぞ?』

 

「ですよねー」

 

そういうことである。

 

特別コーチ、個人レッスン。なのに勝てない。だって、まずは追いつくことから始めなくてはならないのだから。

 

だけど、もうそんな現状から抜け出したい! 自分だって勝ちたいからだ!!

 

なぜならば。

 

「お願いだデウス! 俺は強くなりたい!! 真季奈を守れるくらいに強く!! もう置いて行かれないように!!」

 

文化祭で見せられた真季奈の圧倒的な力。たった一人で二十機の無人ISと織斑マドカが駆る『サイレント・ゼフィルス』を降した戦闘力。あれを見れば、自分がいかにちっぽけなのかが分かる。否応に。

 

それでは駄目だ。

 

俺は、好きな女の子に守られるだけの男になんてなりたくない!!

 

だから!

 

「頼むデウス! 俺を強くしてくれ!!」

 

『よく言った一夏ーーーーッ!!』

 

かーらーのっ! デウスのスクリューアッパー!! 

 

「ふでぶっ!? ありがとうございます!!」

 

顎へと、下から上へと突き上げられた拳は容赦なく一夏を襲い、彼を宙へと飛ばす。え? 何故って? 気合注入です。

 

『望み通り貴様を鍛えてやる! しかし、条件がある!!』

 

「じょ、条件!?」

 

床に叩きつけられても即復活する一夏。随分タフになったものである。

 

それで、その条件とは?

 

『真季奈と戦えぇい!!!』

 

「な、なんだってーーーーッ!?」

 

Why!? 何故!!!?

 

『よいか一夏よ! 真季奈を守るために強くなる、それ即ち真季奈を超えるということ!! ならば真季奈に勝って見せなくてば意味がない!!』

 

「まっままま真季奈に勝つぅッ!? 俺が!!?」

 

無茶苦茶である。だが、そのとおりでもある。どこの世界に、自分よりも弱い相手に守られる者がいようものか。

 

『これから俺が貴様を鍛えてやるが、その集大成として真季奈に試合を挑め! いや、今から宣戦布告をするのだ!! 俺と戦えと真季奈に言ってこい!』

 

「え、いや、そんな急に!!」

 

『ええぃ黙れ黙れ!! 想いを遂げたくば行動あるのみ!! さっさと行って漢をあげんかこの馬鹿弟子があああッ!!』

 

「!? お、おおおおおおお!!! 分かったぜ師匠ぉおおおおお!!! 織斑一夏、漢になってきまああああっす!!」

 

深夜のテンションって怖いですね。

 

若干おかしくなっているのは深夜の恋バナ、男子高校生の修学旅行での夜のノリか。まさに今、女子の部屋に突撃しよーぜ! という空気がここにあった。

 

『あ、真季奈は今頃。時間的には風呂上がりだと思うぞ?』

 

「風呂だな! よーーしッ!」

 

あ。

 

 

 

 

 

 

 

 

大浴場。本日は女生徒の開放日。いわゆる女湯状態である。

 

「あー眼福、眼福。やっぱビィッグオパーイがお湯に浮かんでいるところは見ごたえありますねー」

 

「なんでそれアタシの前で言った!? ねぇ! なんで言った!!?」

 

真季奈と鈴が連れ立って入口から出てくる。共にパジャマを着ての湯上り状態である。その後ろには話で出てきたオパーイの持ち主、セシリアとシャルロットがいた。箒? 今日も部屋でシャワーです。

 

「真季奈さんは、その、なんと言いますか………」

 

「うん、女の子同士とは思えない視線を飛ばしてくるよね」

 

すいません。この子、乙女ゲーよりもギャルゲー。ギャルゲーよりもエロゲーはという残念な子なので。

 

「さて、それじゃぁこれからどうしますか? 宿題をするというのなら付き合いますが?」

 

「じゃぁお願いしようかしらねー? ちょーっち難しいのが出たのよ、今日は」

 

「あ、じゃぁ僕も……」

 

「失礼ながらわたくしも……」

 

クラスは違えど悩みは同じ。わからない問題はみんなで考えよういろんな意味で。と今晩はみんな仲良く勉強会となりそうで……、

 

「真季奈!!」

 

「おや? 織斑一夏ではありませんか」

 

ならなかった。

 

現れたのは織斑一夏。走ってきたのか体は汗だくで息も荒い。こんな時間にこんな場所でわたしに何の用だ?

 

そう思っていたら。

 

「頼む真季奈! 俺を漢にしてくれ!!」

 

「なぁっ!? 男にしてくれですって(性的な意味で)!?」

 

「「「一夏(さん)!?」」」

 

違うよ?

 

「(お、お風呂上がりの女の子の前でそんなことを言うとは)……わ、わたし(の身体)が狙いなんですか?」

 

「あぁ! 真季奈(の実力)を掴みたい! この手で必ずたどり着いてみせる!!」

 

「「「(ま、真季奈の身体をその手でどうするつもりなのーーーーッ!?)」」」

 

勘違いは止まらない。

 

「そ、そんなこと、誰が許すもんですか!!」

 

「あぁ、もちろんそんな勝手なことは言わないさ……だから、俺とISで勝負だ! 俺が勝ったら、真季奈のこと(を守るの)は好きにさせてもらう!!」

 

「ななななみゃぁーーーーーーーーーーーーーッ!???」

 

「「「(………………………………帰って寝よ。そして全て忘れよう……)」」」

 

なぜ誰もおかしいと思わないのか? それは彼女が、()()()()が居なかったせいである。このボケ担当キャラどもめ。

 

一夏は意気揚々と自分が放った言葉の意味を深く考えず、真季奈は顔を真っ赤にさせて口をぱくぱくと開き、他の者は意気消沈して部屋時に帰っていく。

 

「い、いいでしょう! 勝負は週末の土曜日!! 首を洗って断頭台で待っていろこの色ボケがぁ!!」

 

「ぐっ、短い……あぁっ! いいぜッ、それで勝負だ真季奈!!」

 

こうして、織斑一夏と志波真季奈の貞操をかけた決闘が決まった。 

 

織斑一夏の思惑とは別のところで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

織斑一夏が志波真季奈に決闘を申し込んだ! その知らせはまたたく間に学園に広がった!

 

悪い意味で!!

 

 

学生寮にて。

 

「えぇ!? 織斑くんがマッキーの処女をかけてIS勝負を挑んだ!?」

 

 

新聞部にて。

 

「んん!? 一夏くんと真季奈さんがISで勝負? 勝ったほうが倒した相手を好きにしていいですって!!?」

 

 

生徒会室にて。

 

「なんですって!? 『織斑一夏VS志波真季奈。情け無用の貞操ガチンコバトル!! ポロリもあるよ!』の観客席が五千円!? 今すぐ買いに行くわよ!!」

 

 

教員室にて。

 

「生徒指導室に強制連行じゃぁぁ!! 織斑一夏ーーーーーッ!!!」

 

 

最終的には、織斑一夏が志波真季奈に酷いセクハラをした、と学園中で囁かれるようになったという……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なにしとんじゃおどれはああああああああああああッ!!!!』

 

「俺が聞きたいわちくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

デウス(犬)と織斑一夏。男二人、揃っての絶叫である。ホント、どうしてこうなったのやら。

 

ここはIS学園のある人工島の端。人目のつかない工場区。彼らはここへ授業を抜け出して逃げてきたのだ。

 

だって、学園内は例の噂で持ち切りで、今にも『織斑一夏Kill you イェイ!』という空気で満ち溢れていたからである。

 

『俺はお前に言ったのは真季奈に勝負を挑んで来い、だよなぁ?! それがなんでハレンチバトルになってんだゴラァ!!』

 

「俺だって知らねぇよ!!」

 

問題はそれである。

 

既に学園内ではそのことから、『女の敵、織斑一夏許すまじ!』という絶対不文律が出来上がっていた。

 

つまり、教室に行ったら殺される。というか、学園にいたら闇討ちされるレベルであった。

 

『こ、こうなったらなにがなんでも勝つしかない! そんで、勝者の特権で全部ひっくり返せ!』

 

「ぐ、具体的には?」

 

それしかない。勝っても強姦宣言男。負けたら公然猥褻変態野郎。汚名を注ぐには全てをひっくり返す一手が必要だった。

 

それは?

 

『勝って真季奈に告れ! 女達全員の前で!!』

 

「できるかぁ!!!」

 

『できなきゃ俺達は死ぬんだよ!!』

 

「それも嫌だ!」

 

『だったらやれよおおおおおッ!!!』

 

「ちっくしょおおおお!!! やったらああああああ!!!! デウス、特訓するぞぉッ(泣)!!!」

 

こうして、織斑一夏とデウスの引くに引けない修行が始まった。

 

後ろ向きだなぁおい。

 

 

 

 

 

 

 

さて、女性陣はというと?

 

「どうするんだ真季奈?」

 

真季奈の部屋にてクラスの面々、代表候補生たちが集う。

 

「決まっています。最高の力と技で迎え撃ち、叩き潰します」

 

「「「うわぁ」」」

 

目を血走らせ、狂気のままに突き動く真季奈の姿。周りの者たちはみなドン引きしていた。

 

「そ、それで今は何をなさっているんですの?」

 

真季奈は一心不乱にパソコンのディスプレイに目を向け、キーボードを叩く。そこに映っているものとは。

 

「わたしの『暮桜 天』の強化改修プランを」

 

「まだいじるの!?」

 

「それじゃぁ一夏はオーバーキルだよ!?」

 

なんと、志波真季奈が行なっているのは彼女の専用機、『暮桜 天』の改造計画だった。

 

「先日、わたしはデウスに負けて知りました。この子にはまだ改善の余地はいくらでもあると」

 

「何するの?」

 

更識簪である。今回は学園全体を巻き込んだ事件であり、生徒会を代表して彼女が訪れていた。

 

「『暮桜 天』の武装はソードビットである十拳剣とエネルギー発射砲である両手の因果王砲。それに背中の翼、ナノマシン散布と全方位への加速を可能とした禍ノ生太刀」

 

「十分すぎると思うんだけど……?」

 

近・中・遠距離攻撃が可能な武装である大剣にしてソードビットにビーム兵器。異常なまでの加速性能を誇るウイング。極めつけは、『単一能力』である天下騒乱。ふざけたことに、相手ISからのエネルギー吸収能力を持っている。それだけでも反則なのに、まだあった。ナノマシン散布能力による敵機の支配だ。

 

「改めて考えると……これってもう軍用ISのスペックだよね?」

 

「競技用とかのくくりから完全にレッドカードをくらいますわ」

 

「なのにまだ強化するの?」

 

シャルが、セシリアが、簪が整理した性能を見直して、その場の全員が確信した。

 

「「「(一夏、死んだ!)」」」

 

でも声には出さない。だって、止まるような相手ではないからだ。真季奈は。

 

「くくくっ、面制圧用にビームガトリングと、曲射が可能なビーム・ボウを組み込んで、光学迷彩とビーム歪曲システム、遠隔センサーに装甲も弄るか………あ、あと仕込みナイフとかワイヤーも欲しいですねぇ」

 

「思ったより大改造だぞこれ!?」

 

「流石は姐さん! 獅子は兎を狩るのにも全力を出すということなのですね!」

 

箒とラウラがその仕様書の内容に驚愕する。箒は恐怖を、ラウラは尊敬の意を込めて。

 

しかし、

 

「アンタ、そんなに詰め込んで扱いきれるの?」

 

「えぇ、理論上は可能です。が、ちょっと訓練は必要ですけどね」

 

「マジか」

 

鈴はその規格外の武装量とスペックに扱いきれるのかと真季奈へ注意したつもりだったが、いらぬ心配だったようだ。

 

そもそも、真季奈が扱う武装はどれも複合武器と呼ばれる、一つの武器に複数の兵装を組み込んだものだ。これらは様々な武器の長所を取り入れて使用できるという利点があるが、同時にそれらを扱うには長期間の訓練と、どれだけ訓練してもそれらの専門分野では敵わない、という欠点がある。ようするに、使いこなすのに非常に苦労する武装とも言える。

 

だが真季奈は『天蓋王』に乗っていた際、天墜という複合武器の大剣を使いこなしていた経験があった。だから、今回も大丈夫だと言うのだろう。

 

「訓練は必要、と言ったでしょう? カッシー、シャルロットさんには是非とも協力して欲しいのですが」

 

「いいよ」

 

「えぇ~?」

 

即答するカッシーこと簪と、渋るシャルロット。ちなみに、拒否権はない。

 

「あと、機体製作と訓練に生徒会長の協力も欲しいところなんですが……」

 

「マッキー」

 

「はい?」

 

生徒会長にして簪の姉、更識楯無にも協力を。真季奈がそう提案したとたん、簪の目が死んだ。

 

「お姉ちゃんを頼るなら、その前に覚悟しなくちゃいけないことがあるの……」

 

「な、何がです?」

 

簪の虚ろな目。それに気圧される真季奈の珍しい姿に周りも息を呑む。

 

「第4アリーナまっぷたつ事件」

 

「………………ななななんのことでせうかッ!?」

 

その瞬間。専用機持ち達全員が動いた。

 

総員、下手人を逮捕せよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で。

 

「ふふふ、でかしたわ簪ちゃん!! さぁ! 詳しい話を聞かせてもらおうじゃない真季奈ちゃん!!」

 

「黙秘権を行使します」

 

「ダメ!!」

 

ロープでぐるぐるに簀巻きにされ、生徒会室に転がされた真季奈が楯無の説明を求める要求に否と答える。

 

だって、第4アリーナを壊したのはデウスと真季奈だからだ。責任? 取りたくないに決まっているじゃないですか。

 

「あのね? これで二度目よ? 二度目なのよ!? たった半年足らずの間にアリーナが壊れるなんて前代未聞よ?! 前回はそれなりに時間もかかってたし目撃者も大勢いたけど、今回のはほとんど一瞬じゃないの!? 一晩の間に何があったのよ!! というか、こっちはそのおかげで色んなところからせっつかれて寝不足なのよ(泣)!」

 

「乙!」

 

「きぃいいいいいいいいいいいいいいい!! この悪魔! どこまで私を悦ばせ、苦しめたら気がすむのよ~~~~!!!」

 

「……お姉ちゃん?」

 

「なんでもないわ!」

 

一瞬見せた姉の本音を見逃さなかった簪。しかし楯無はしらを切った。

 

「冤罪でーす。これは不当な逮捕デース。弁護士を呼べー。わたしは何もしていないデース」

 

「うわぁ、わざとらしいッ!」」

 

唇を尖らせて、床をゴロゴロと転がりながらも余裕の姿勢を崩さない真季奈の姿。にだんだんと腹が立ってくるところである。いや、ホント。しかし生徒会側には確かな証拠があるのだ。

 

第4アリーナが両断されてまっぷたつになった晩。その日のアリーナに設置された監視カメラの映像には、確かにアリーナに入っていく志波真季奈、デウス、織斑千冬の姿が映っていた。そのすぐ後だ。あの黄金の光の柱が夜天を明るく輝かせたのは。

 

あれは何? なんだった?

 

自分が知らない脅威を見逃す訳にはいかない。私にはこの学園の生徒全てを守る義務があるのだ。何故なら私は、この学園の生徒の長なのだから。

 

 

そして何より、私はこの学園のお姉ちゃんだから! 

 

 

「全くしょうがないですね。ようは壊れたアリーナを再建すればいいんでしょ?! 金ですか! わたしのお金が欲しんですか!? この権力者が!!」

 

「人聞きの悪いこと言わないでくれる!?」

 

真季奈はアリーナを直せばいいんでしょう!? と言うが、それだけで言いはずがない。こう何度も不祥事を起こしては他国やらスポンサーに示しがつかないし信用にも関わってくる。

 

というか、既にやばい。うん百億円というアリーナを何度も破壊しているのだ。そろそろ出資者が切れる。別の意味でもキレる。はっきり言ってマズイ。

 

あぁ、胃が痛い。この痛みだけは流石に快感にならないしできないなぁ。

 

「こっちはうまい言い訳と資金繰りで大変なのにこの元凶はぁぁ」

 

「お姉ちゃん……立派に働いている姿は見れて私嬉しい」

 

「ありがとう簪ちゃん! 大好き!! でも今は手伝ってお願いだから!!」

 

「………仕方ありませんねぇ。カッシー、縄解いてください」

 

「え? うん」

 

「ちょっ?!」

 

真季奈がため息をついて簪に縄を解くように言う。簪はそれを快く承諾するが、楯無はそうはいかない。逃げられてはたまったものじゃないのだ。

 

「逃げませんよ。まったく、これは最後の手段にとっておきたかったのですが……」

 

そう言って、真季奈は携帯電話を取り出すと、

 

「……………………………………………………あ、Hello president?」

 

「「!!???」」

 

どこにかけているかは秘密です。

 

 

中略。

 

 

「はい、おっけーです。軍資金げと!」

 

そこで電話は切れた。

 

「まま真季奈ちゃん!? あ、あな、あなな貴方いまっ!?」

 

「企業秘密です」

 

「「怖いから!」」

 

真季奈の電話相手。それは触れたくない。触れたくないが、そういう訳にもいかなかったので楯無は真季奈から詳しい話を聞き、胃痛薬と頭痛薬の量を増やすことになった。

 

「ほら。問題は解決したんだからわたしのお願いも聞いてくださいよ」

 

「い、いけしゃあしゃあとこの子は~~~!! 何よ! お姉ちゃんに言ってみなさいよ!!」

 

涙目である。可哀想に。

 

「わたしのISの改修プランを組んだのでその組立を手伝ってもらいたのですが」

 

「……え? アマツをまだ強くするの? 真季奈ちゃん何気に一人で一国を滅ぼせるよね? もうよしましょう? お願いだから」

 

「その後はカッシーとシャルロットさん、楯無さんを交えて四人で実践訓練をしたいので明日中には完成させしょうね」

 

「あ、もう決定なのね。私の意思とかガン無視って……どこまで私のツボを心得ているよ!!」

 

「うん、お姉ちゃん? ちょっと落ち着こうか」

 

ときたま暴走する姉をその度に抑えるストッパー役が板についてきた妹の簪。姉へのコンプレックス? ありませんが何か? といった風である。むしろ、姉が更識の当主だとか、一人で自分の専用機を組み上げたとか、そんな武勇伝が聞こえてくれば悔しい、というよりも「あぁ、お姉ちゃん凄い人。よかったぁ」と逆に胸をなでおろすほどだ。

 

「それって一夏君をボコボコにするためよね?」

 

「はい。それと、今回織斑一夏のサポーターに回った憎らしい飼い犬もです」

 

飼い犬に手を噛まれるとはまさにこのことである。デウス、お前も真季奈から殲滅対象に入っているよ! 逃げて!!

 

「でうすくん? ありーなをまぷたつにした?」

 

「はい。そうです! 全部デウスが悪いんです!!」

 

「「サラっと擦り付けたよこの子!?」」

 

目からハイライトが消え、声に抑揚がなくなった更識楯無。そこにつけこみ、真季奈が一気に畳み掛ける! 主に、デウスに全部の罪状を押し付けるために!!

 

「さぁ! 打倒織斑一夏とデウス! 皆さん気合を入れていきましょう!!」

 

「分かったわ真季奈ちゃん! デウスくんにこの胃の痛み、思い知らせてやるんだから!!」

 

「協力するけど、生徒会の仕事も手伝ってねマッキー」

 

「はは、は」

 

ここに、志波真季奈、更識楯無、更識簪、シャルロット・デュノアによる打倒織斑一夏&デウスチームが結成された。

 

逃げて。一夏とデウス逃げて!

 

 

 

 

 

その頃。

 

織斑一夏とデウスは。

 

「どうだデウス!! マスターレベル、スパイダー・ベイビーを習得したぞ!!」

 

『甘いぞ一夏! 見よこの俺のトリック! ダブル8の字ループ……いや、ダブル・ドラゴン・ループだぁぁぁぁ!!!』

 

『白式』と纏った織斑一夏と、『デウス EX ソーラレイカー』となったデウスが川原でハイパーヨーヨーの特訓をしていた。

 

何やってんのお前ら?

 

「何をやっているんだお前らは!!?」

 

あ、ツッコミが入りました。この鋭いキレ……篠ノ之箒か!?

 

「ツッコミで人を判別するな! お前ら私の扱いが最近悪いぞ!! 出番をもっとよこせ!!!」

 

「『作者に言ってください』」

 

すいません。

 

学園を抜け出し、モノレールに乗った先の市街にある河川敷。そこで特訓(?)をしていた織斑一夏とデウスの元に、どこから嗅ぎつけたのか篠ノ之箒が駆けつけていた。

 

「お前ら、もう何日かしたら真季奈との試合だろう? なんでそんな……ヨーヨーなんかで遊んでいるんだ?」

 

『失敬な。特訓だ、特訓』

 

「ISのマニュピレータをマニュアル操縦で自由に扱う特訓だよ」

 

「は?」

 

ISの椀部装甲。それはグローブのように手の指が機械の指先まですっぽりと入っているわけではない。筒丈の機械の中にスイッチ類がついたハンドルがあり、それを操作して機械の五指を操るのだ。

 

『なのにこいつ、今まで全部基本設定のオートマで操作してたんだ。だからそこから特訓してんの』

 

「オートマってあれか? モノを握る。掴んだまま固定する。引き金を引く。の三つしかないあれか? 嘘だろうおい」

 

「面目次第もございません」

 

ISは元は宇宙活動を想定した作業よマルチスーツだる。なので、簡単な操作性を追求したパターン化された操作方法のオートマ機能や、複雑な作業を行うため人間のそれと同じように五指を操作するマニュアル機能がある。これは設定された動作を選んでスイッチを押すだけのオートマよりも難解で、一本一本の指の動きを操作しなくてはならない。

 

「最初はヨーヨーを握りつぶしていたけど、今じゃぁストリングスプレイの技だって出せるぜ!」

 

「そんな特訓は宴会芸だろうが!!!」

 

『いや、実際に宴会芸だぞ?』

 

「「え?」」

 

一夏と箒が凍った。とんでもない発言を聞いたような気がしたのだ。

 

『そもそもこのISヨーヨーは千冬の奴が去年の忘年会で披露した芸らしくてな』

 

「うちの姉何してんの!?」

 

『バカヤロウ!! 社会人にはな、酒の場で芸の一つでも披露しなくてはならないときが来るんだよ!!』

 

「諦めろ一夏。昔、私の父も同じようなことを言っていた。引けないときに何をなせるかで本当の大人になれるのだと」

 

「それ絶対意味違うからな!?」

 

学生にはわかるまい。社会人とは、大人とは。例え新人だろうとベテランだろうと、引いてはならない場というものがあるだ。日頃お世話になっている上司たちが数人集まって、セーラー服を着てもも○ロダンスを踊りだしても(もちろん全員男)、野菜の着ぐるみを着込んで歌って踊りだしても。それをドン引きで見ながら、いつかお前らに順番が回ってくるんだぞ? と言われても!

 

『それでも、やらなきゃならないんだよぉぉぉ!!!』

 

「「なんかすいません」」

 

地に手をついて項垂れる黄金のロボットって凄いシュールだと思います。

 

「で、デウスは何をする予定なんだ?」

 

『あ、俺はかくし芸には事欠かないから。その気になったら瞬間移動だろうが召喚魔法だろうが変身魔法だろうが世界創造だろうが、いろんなことができるから』

 

「なんなのお前!?」

 

「完全にバグキャラだろう!?」

 

宴会芸では披露しないでください。酒の場でコスモ爆発とか洒落にならない。

 

『ちッ、じゃぁ異世界旅行でいいよもう』

 

「『隠し』芸ですね!!」

 

旅行の人気プランはトラブルにポイでお任せコースです。迷惑な。

 

『えぇい!! 無駄話はもういい!! 特訓の続きだ一夏!!』

 

「おぉ! ジャンケンとあっちむいてホイ! だな!!」

 

「だからさぁ!?」

 

 

とまぁ、馬鹿な騒ぎもありましたが。

 

「それで、何しにきたんだよ箒」

 

「デウスに頼まれて食料を持ってきたんだが……本当にこんなところでISの特訓をしていたとは」

 

背中にリュックサックを背負った篠ノ之箒がそう呟く。彼女が驚くのも無理はない。

 

ここはただの川である、IS訓練用のフィールドもなければ流れ弾から守ってくれるバリアーもない。

 

市民にとって、非常に危険だった。

 

『ふっふっふ、俺に抜かりはない! 着いてこい! そして見よ!!』

 

デウスに促されてその後に続く。デウスが向かったのは街の下水がまとまって川へと流れてくる下水道の出口である大きい穴。高さ二メートルほどあるそこへと入っていく。

 

すると、

 

「…………嘘だ」

 

「うん、俺もそう思った」

 

箒が見たもの。それは暗く、異臭の立ち込める下水道ではなく。ISアリーナに匹敵する巨大なドーム状の空間だった。

 

『知り合いのマッドな科学者が異世界航行装置を作ったんでな。その技術を応用してこの開けた異空間を作ってもらった』

 

「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

首と手を振ってデウスの言葉に待ったをかける箒。言われたその内容に理解が追いつかない。異世界航行装置ってなに!?

 

「しかもこの空間、ISアリーナのフィールドバリアも備えているんだぜ? 存分に暴れられるし、外と『直接』には繋がってないから騒音とか地響きとか、そういった影響もでないし」

 

「だからなんだそのとんでも技術は!? 一体どこの天才科学者がそんな」

 

『ゴミ捨て場に住んでいる世界征服を企んでいる科学者です。野良猫をサイボーグ兵士に改造するのが得意だったなぁ』

 

「さっさと警察に通報しろーーーーーーッ!!」

 

『え? やだよ? あいつらは放っておくのが一番面白いし』

 

「お前も大概アレだよな!? 何気に非社会的存在だよな!!?」

 

『だってメイド・イン・真季奈だし俺』

 

「すごい説得力!! ちくしょう!!」

 

「箒のツッコミも大概すごいんだけどなぁ」

 

「やかましいわぁ!!!」

 

箒の腰の入ったコークスクリューが一夏の鳩尾にクリーンヒットする!!

 

「ありがとうございます!!」

 

『さーて、特訓特訓。とりあえず箒も来たし、俺と二人がかりでボコるか。一夏を』

 

「いやちょ、おま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園。IS整備場。

 

「ふっふっふ! 完成しましたよ!」

 

「本当にできちゃった……」

 

「あぁ、悪夢だわ」

 

「流石マッキー。機体もどんどん邪悪になっていくね」

 

そこにあったのは黒。

 

白い装甲だった『暮桜 天』。しかしその色は黒く染め上げられて真季奈の金色の髪によく映えていた。武装も見た目は変わらないがその仕様は大きく変更されている。

 

右肩部に非固定装備された大剣、十拳剣Rにはその分割するソードビットの連結の基部である中心部に曲射方ビームを。

 

左肩部の十拳剣Bにはビームガトリングを内蔵。

 

両手には強化した因果王砲、光雷球を。機体エネルギーを圧縮し、球状にして放出できる。

 

背中のエナジーウイング、禍ノ生太刀にはワイヤーで射出するアンカーを追加。

 

脚部にはつま先から飛び出す仕込みナイフを。

 

そして、十本のソードビットにはそれぞれ機能をもたせた。四本の長刀にはナノマシンの散布機能をそのままに。二本の刀にはセンサー機能を。残りの四本の小刀はステルス機能とビーム歪曲機能を。

 

「これぞ、『暮桜 天マキナ』!! わたしの持つ技術の全てを全乗せした機体! アハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 

「マズイ!? 真季奈が壊れた!」

 

「徹夜しすぎたんだ!」

 

「総員取り押さえてーーーー! 麻酔銃用意!!!」

 

こちらも着々と準備が進んでいた。

 

 

 

 

一夏たちの特訓開始から三日。

 

川にかかった橋。その下にあるダンボールハウスにて。

 

『一夏、今日までよくぞ耐えた!』

 

「あぁ、まさか高速後出しジャンケンとあっち向けてオラぁ! で三日も費やすとは……ていうかそれで生死をさまようとは思わなかったぜ」

 

 

高速後出しジャンケン:相手の出す手を鍛えた動体視力で判別して手を振り下ろす間に何度も手を変えるジャンケン。これに勝たないと殴られて死ぬ。

 

あっち向けてオラぁ!:ジャンケンに勝った瞬間、拳を握って相手を殴り飛ばして吹き飛ばす。デウスも本気で殴るので躱せないと死ぬ。

 

 

最初の頃は基本、骨の二、三本は折れてました。その度でデウスが回復させてたが……。それ以外は常にデウスとISで実践訓練をしていた。。

 

学校? サボリですが何か?

 

『それでは次の特訓に入る。これはお前のISの強化にもなるから心してかかれ!!』

 

「マジで?! 俺の『白式』が強化されるのか!?」

 

『白式』。織斑一夏の専用機にして、武装が雪片弍型というビームソード一本しかない高速型近接格闘機。そしてその容量の全てを『単一能力』の発動にさいているため、一つも追加装備を搭載できない欠陥器。

 

そんな操縦者泣かせの機体にとうとう強化の話が!? と一夏は両手を上げて喜んだ。

 

「と、とうとう俺の『白式』も強化が……もう文化祭も終わったのに未だに初期設定のまま……原作や他の二次創作作品だったら夏の間に進化してるってのに、ようやく!」

 

『バカヤロウ! それ以上はいけない!!』

 

 

※この作品は基本的に織斑一夏に厳しいものとなってリます。

 

 

『よし、ちょっと待っていろ。今準備するから』

 

そう言って。デウス(犬)は『デウス EX』へと変身した。

 

「あれ? それって前の姿だよな?」

 

『おう』

 

一夏の言うとおり、デウスが姿を変えたのは黄金、赤、青の三色の『ソーラレイカー』ではなく、黄金、赤の『EX』だった。

 

『まずこの肩の鎧を外すだろ?』

 

「え? それってとれんの!?」

 

赤い肩部装甲、ドラゴンショルダーを外して地面に置くデウス。

 

『次にこの翼を外して、盾を置いて』

 

「おおぅ、赤い部分がどんどん剥がれていく……」

 

赤いX状の翼、赤いドラコンの頭部を象った盾、それらを次々と外していく。残ったのは黄金のボディを持つデウスの本体だけだった。

 

「いいのか? そんな軽装で……」

 

『ソーラレイカーの鎧があるから大丈夫だよ。で、後はこのパーツを召喚してっと……』

 

「え? デウスの掌からなんか光った輪っかが……って!? なんか生えてきた!?」

 

デウスの開いた手。その上に光で出来たリング状の幾何学模様、魔方陣が現れ、そこから『ソレ』が生えるように出現した。

 

『で、コイツらを組み合わせてっと』

 

ドラゴンショルダー、翼、シールド、そして魔方陣から召喚させた『ソレ』。

 

それらを組み合わせてデウスは一夏に渡す。

 

「な、なにこれ……?」

 

『これが、お前の勝利の鍵だ!!』

 

 

そうして真季奈と一夏。双方の特訓はさらに本格化していった!

 

 

 

 

一夏の方はというと。

 

『今日から箒と俺とナターシャとマドカの四人で一夏を袋叩きにしようと思います!!』

 

「それもうイジメじゃね!?」

 

「「「雑魚は黙ってろ!!!」」」

 

「発言したければ強くなれということですね!!」

 

コーチが増えていた。

 

箒からは二刀流を、ナターシャからは手数の多さを、マドカには(織斑一夏をボコるのを条件に)ビット戦を、デウスからは根性を叩き込まれていた。

 

 

 

真季奈の方は。

 

「シャルロットさん。『(ラビ)(ット)(スイ)(ッチ)』とはこんな感じですか?」

 

「あぁ、うん。大体そんな感じ………」

 

「あ、真季奈ちゃん。ナノマシンの制御なんだけど、私の機体のデータから使えそうなのは出しといたから見といて~?」

 

「マッキー。ソードビットの相互リンク機能なんだけど……多分これ、ある程度スタンドアローンにしたほうが脳への負担も軽くなると思うよ?」

 

機体と真季奈の最終調整が進んでいた。

 

シャルロットからは増えた武装を扱うための技能、『高速切替』を、楯無にはナノマシンの操作について、簪には武装の管制システム面で協力を。

 

「ふっふっふ、血祭りに上げてやる。織斑一夏ァ」

 

「「「(アカン!)」」」

 

 

 

 

そして試合前日の夜。

 

織斑一夏とデウスは最後の疲れをとるために銭湯に来ていた。

 

「あ~~ジャグジー風呂サイコー………」

 

『オッサンかお前は……まぁ、たしかにそうだな』

 

そこには、ジェット水流を身体のコリに当てて湯につかる、織斑一夏とデウス(成人)の姿があった。

 

「……なぁデウス?」

 

『なんだ?』

 

「なんで俺と真季奈を戦わせるように考えたんだ?」

 

隣の湯船に浸かるデウスに一夏はそう尋ねる。

 

考えてみれば、デウスに強くなるために鍛えて欲しいと頼みに行って、それで真季奈と戦えとは無茶がある。自分と真季奈の間にある実力の壁は果てしなく高く、天辺が霞んで見えないほどだ。少し鍛えたところで、それどころか一週間足らずでどうにかできる相手ではない。

 

なのに何故、デウスは自分と真季奈を戦わせたかったんだろう? そのことが、特訓が進むに連れて頭にちらつくようになっていた。

 

『真季奈を止める存在が必要なんだ。俺以外に、な』

 

「? それってどういう……?」

 

『一夏……お前は『白騎士事件』は知っているな? そしてその正体も』

 

「……あぁ。多分、束さんと千冬姉ぇがやったことなんだろ?」

 

『白騎士事件』。世界で初めてISが確認された事件にして、その圧倒的なまでの戦闘力を見せつけた最悪の出来事。千発以上のミサイルと軍隊の陸・海・空の兵器を尽く葬ったその騎士の正体とそのISコアは未だに謎とされているが正直、関係者にはバレバレであり、そのことは世界を巻き込んでの『暗黙の了解』というやつで落ち着いていた。

 

『あの事件で世界は変わった。そして、馬鹿な争いは単騎の戦力で未然に防ぐ、なんて馬鹿げたことがまかり通る時代になっちまった』

 

「いいこと、なんだよな……それって」

 

圧倒的戦力で国家間の抑止力となる。それは軍隊としての理想的な在り方だ。しかもISはそのサイズの小ささもあり、保有するための必要な財力も最小限に抑えることができた。だが、それが軍縮に繋がり、ISの使えない男性たちへの解雇という結果になり職にあぶれた人員を増やすという面もあった。

 

『『白騎士』は世界を変え、世界を混乱させた象徴だ。だからこそ、その力と名は十年たっても色あせない伝説なんだ』

 

「あぁ、それは分かるよ。でもそれがどういう…?」

 

『お前の『白式』が『白騎士』なんだよ一夏』

 

「え」

 

『白騎士』のISコアは、全世界への情報提供の為に公開されたあと忽然と姿を消している。その行き先が『白式』という機体のISコアだという事実を知るのはわずかだ。

 

『最初にして最強のIS、『白騎士』の力。それで真季奈を、あのじゃじゃ馬のきかん坊に並び立つ抑止力になって欲しいんだよ一夏』

 

「俺が……『白騎士』に……?」

 

これはデウスのたった一つのワガママ。真季奈の為に織斑一夏を利用する。でもそれは、織斑一夏にとって苦ではない。むしろ望むところだった。

 

なぜならそれは。『白()士』を目指すということで(好き)()()(の子)奈を守れるようになれるのだ。そこに不満などあろうものか。

 

「デウス、俺は……」

 

『おう』

 

織斑一夏は拳を握り、天井を、その向こう側にある空を見るかのようにして上を見上げる。そして言う。

 

「真季奈に勝って、俺は『白騎士』になる」

 

『期待してるぞ?』

 

 

 

決戦の日は明日!

 

 

後編に続く。




本作品の織斑一夏はびっくりするくらい弱いです。

なぜなら、原作の見せ場を全部真季奈に取られているからです。

ゴーレムⅠ、ラウラの暴走、福音、文化祭と一夏の成長に必要だった事件と経験値です。それがなければ後はもう普通の訓練しかしていません。『白式』の進化? レベルが足りませんね。


真季奈ちゃん大暴走。

『暮桜 天マキナ』。金色フレームの黒いガンダムに赤と青を全載せしました。天ギナとか天ミナとかがありなら天マキナでもいいじゃない! 他にもあるよ。なんでしょうね。

どっちか勝つかは、次回を待て!! です。

それではまた。

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