IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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はい、それでは後編と行きましょう。

織斑一夏、志波真季奈の戦い。一体どちらが勝つでしょうか?


今回、戦闘シーンが大の苦手なぷらもんが頑張りました。わかりにくいところがあれば広い心でお許しください。

それではどうぞ。


閑話 織斑一夏、白騎士になる。 後編

とうとうこの日が来た。

 

織斑一夏が志波真季奈に宣誓した決闘の日。

 

織斑一夏の欲望と志波真季奈の貞操がかかっている日。

 

そう、IS同士の、ガチンコバトルの日である!!!

 

 

 

 

 

「え~おせんにキャラメル~、アイスキャンディはいらんかね~~? 安いよ安いよ~?」

 

「「「ぶれないね貴方!!!」」」

 

自分の決闘の開催日に、アリーナの観客席で売り子をやっているのは志波真季奈だ。

 

「いつも思うんだけどさ、これってどこから入荷してんのよアンタ?」

 

「企業秘密ですよ鈴」

 

「うわぁ……怪しい。じゃぁアイス一本ちょうだい」

 

「ちなみに、当たり棒がでたらマッキー商会の引換券が貰えますよ?」

 

「ゴメン。やっぱり三本頂戴」

 

「毎度~♪」

 

必要以上の本数をまんまと買わされた凰鈴音。お腹を壊さないかが心配であった。

 

アリーナの観客席は満員御礼。試合チケットを売りさばいていた新聞部は前回の失敗を反省し、今回は誰ひとり捕まることなく儲けを出したらしい。それを聞いては真季奈も黙ってはいられない。

 

「そう! 目指すは売上黒字二百パーセント!!」

 

「いや、アンタは試合に勝つことを目標にしなさいよ」

 

「え? だって、別にわたしが勝ってもなんのメリットもないじゃないですか」

 

なんですと?

 

「え? あれ? ………えーーっと、あ。そういやそうね」

 

「でしょう?」

 

ビックリするぐらいそのとおりであった。

 

実はこの私闘。

 

織斑一夏が勝てば真季奈を好きにチョメチョメできる。

 

真季奈が勝てば一夏を好きに痛めつけられる。

 

なのだが、それはつまり。

 

「わたしにとっては何時もどおりなんですよねー」

 

「酷い現実を見た」

 

真季奈にとって、織斑一夏は既に備品扱いである。なので重要なことは負けないこと。そしてそれはありえない。

 

「そもそも織斑一夏ごときがわたしに適うはずないじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『来たぞ一夏。ISアリーナだ』

 

「あぁ。まさか会場に来るのにスネークをするとは思わなかったぜ」

 

ここは一夏と真季奈の対決するアリーナの外。その入口の前にダンボールが二つ転がっていた。

 

もちろん、ダンボール in 一夏&デウスである。

 

一夏が真季奈に一方的に迫った(という女子たちの認識)ことにより、IS学園の男子に対する警戒網は危険域に入っていた。それもう、サーチ・アンド・デストロイ状態である。

 

「よし、行こうぜデウス! これに勝てば俺たちも家に帰れる!!」

 

『あぁ! もう野宿する必要もない! 路地裏でゴミ箱を漁ることもないんだ!!』

 

「………え? そんなことをしてたの?」

 

『………一昨日の晩飯がそれだ』

 

「うっ、急に腹の具合が……」

 

『しまった!?』

 

「……何してるんだ、お前ら」

 

デウスの恐ろしい言葉にダンボールの一つが転げ始める。そこへ現れるひとつの影。

 

織斑千冬であった。

 

「最近姿を見ないと思ったら……元気だったか?」

 

「ち、千冬姉ぇ!」

 

約一週間ぶりに再開した姉の優しい言葉。それに涙を流して喜ぶ弟・一夏。思わずダンボールを脱いで姿を現す。その姿は、着ていたIS学園の制服は少し汚れていた。

 

『意外だな。てっきりお前は真季奈の側で一夏を迎え撃つ準備をしていると思っていたが』

 

「ふ、これが最後かもしれないんだ………弟の勇姿をこの目に焼き付けたいのさ」

 

「え?」

 

最後?

 

「一夏、骨は拾ってやるからな?」

 

「なにそれどゆこと!?」

 

「墓にはお前の大事にしていたエロ本を入れてやるから安心しろ」

 

「何一つ安心できねぇよ!! 追い打ちじゃねぇか!!」

 

「葬式ではお前の書いたポエムを朗読してやるからな?」

 

「それ公開処刑だわ!! 葬式で二回目の処刑とか勘弁してくれませんかねぇ!?」

 

『落ち着けお前ら』

 

突如始まった姉弟漫才。にツッコミを入れるデウス。そして思う。千冬の様子がおかしいことに。どこか、そう。一夏の敗北の先に悲惨な末路があることを確信しているような……。

 

『おい、真季奈に何かあったのか?』

 

「え? なにそれ?」

 

「専用機を大幅に改造した。戦闘力だけなら以前のざっと四割増しだ」

 

『「うそん!?」』

 

その事実に男二人は驚愕した。だって、タダでさえ倒すべき目標が果てしないのにそのさらに上とか、なにそれこわいよぼくわかんない状態である。

 

「……一夏、逃げるなら今だぞ? 私もこんな形で肉親を失うのは避けたい……ISを使って逃げれば五時間は時間を稼げるはずだ」

 

『……逃げたことを察知して、そこから探索・追跡・捕獲・処刑、か。妥当な時間だな』

 

「どのみち逃げれねぇのかよ!! だったらこの場で戦って死ぬわい!」

 

逃げて死ぬより戦って死ぬ。織斑一夏、男を見せる時が来たようである。

 

「そもそも死なねぇよ! 勝つし!!」

 

 

「………………………………………………………………え? 本気か?」

 

 

「なにその顔!? 鳩が豆鉄砲とかいうレベルじゃないよ!?」

 

一夏の勝利宣言に千冬が目を見開いて静かに驚愕する。この弟、真季奈に勝つと言いよったわ。

 

「勝算があるのか?」

 

『ホンのわずかな、雲を掴むようなかすかなものだがな』

 

それで十分。いや、勝算があるだけで驚き。

 

ビギナーがプロに挑む。これはそういった類の戦いだ。

 

投げたヘロヘロの球を剛速球でホームランにされる。

 

ぎこちなく上げた(ブロ)(ック)をあざ笑うようにダンクを決められる。

 

必死に守ったゴールをご丁寧にオーバーヘッドでシュートを決められる。

 

それほどの実力差。

 

こちらは必死なのに、向こうはお遊び感覚で立ちふさがる。片手で捻ろうというのだ。

 

「デウス……おまえ……何をした?」

 

『それは見てのお楽しみってことで』

 

三人はISアリーナへと向かう。

 

一人は弟を想って不安げに。一人は不敵に微笑み。

 

そして、一人は。織斑一夏は勝つために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ISアリーナ内のフィールド。観客が見守る円形の闘技場に立つ二人の姿。

 

ISスーツを着た志波真季奈と織斑一夏である。二人はある程度の距離を開けて向かい立つ。

 

「よくもノコノコと顔を出せましたね! この変態が!!」

 

「その罵倒がむしろ心地いいぜ真季奈!」

 

「この空気でもまだそんなことが言えますか!!」

 

 

「引っ込めーっ! この変態!!」「ロリコンーー!!」「そんなに飢えてたのかーッ!!」「胸か!? やっぱりオパーイなのか!!」「一夏のドMーーッ!!」「女の敵!!」「私達も押し倒す気なのかーーッ!?」「こてんぱんにされろ!!」「姐さん! 殺っちゃってください!!」「織斑一夏にむごたらしい末路を!!」「気を付けて! そいつは殴られると変態します!!」「変態だけに!!」

 

 

観客席からの満員の罵詈雑言。数百人の女子たちの思いは一つになっていた。

 

変態織斑一夏に制裁を! と。

 

「ふっ、こんなもの、俺にとっては唯の心地よいメロディーだぜ」

 

「くっ、ここまでの変態だったとは……真季奈ちゃんショック!」

 

その変態の原因は貴方なんですがねぇ真季奈ちゃん。

 

「だったらこの手で引導を渡してやります!! 『(アマツ)』!!」

 

「その時は激しくしてもらうぜ!! こい『白式』!!」

 

もはや言葉は不要。そう言うかのように二人は互いのISを呼ぶ。呼び出された二機はそれぞれの操縦者に装着され戦闘態勢に入った。

 

対峙する白と黒。

 

仕掛けたのは、真季奈からだった。

 

 

 

 

 

 

『とうとう始まるなぁ』

 

「意外と呑気だなお前」

 

フィールドを見下ろせる管制室にて。デウス(成人男性)と千冬が陣取り戦闘の様子を見守る。

 

そこへ。

 

「あ、いた!」

 

「デウスくん!! 覚悟しなさい!!」

 

「織斑先生!! デウスを捕まえて!!」

 

真季奈サイドのサポータが乱入する。更識姉妹とシャルロット・デュノアである。

 

更に。

 

「む、デウスじゃないか」

 

「アンタ、生きてたのね」

 

「姿を見るのはずいぶんと久しぶりですわ」

 

「てっきり姐さんと一夏の試合が終わるまで姿を隠していると思っていたぞ」

 

箒、鈴、セシリア、ラウラも順に入ってくる。

 

『なんだお前らぞろぞろと。観客席から見てたんじゃなかったのか?』

 

増えた観戦者の数に目を見張るデウス。それと同時に迫り来る攻撃に対処していた。

 

更識楯無の鉄扇による攻撃である。それを、

 

『デコピン』

 

「きゃん!?」

 

「「「うわぁ雑ッ!」」」

 

指一つでダウンさせていた。

 

『悪いが今日は遊んでやらん』

 

「遊び気分ですって!? そうやって私を弄ぶ気なの!? 嬉しいこのサディスト!!」

 

『誰かそこのM女を縛り上げておけ』

 

「な、何よ!? 亀甲縛りじゃなと許さないんだからね!!」

 

「お姉ちゃん、ちょっと黙ろうか?」

 

顔に青筋を立てた笑顔の簪が姉である楯無の肩を掴んで言う。力を入れすぎてバキバキと音を立てているが気にしてはいけない。

 

「うぅむ、会長の好意でこの管制室に入れてもらったが、正直観客席でも良かった気がする」

 

「広いのはいいけど空気はカオスだわ」

 

箒と鈴が今見た光景に言葉を吐く。どこから取り出したか分からないロープで生徒会長を縛り上げるシャルの手馴れた仕草や姉の尻を叩いて説教を延々と垂れる簪。それを恍惚の表情で受け止める生徒会長。あんたら、この一週間でどんな関係になったの?

 

「それで試合の様子は」

 

『今、一夏が殴り飛ばされたところだ』

 

「「「早いよ!!」」」

 

 

 

 

 

「オラァッ!!!」

 

「ぐふぅっ!?」

 

真季奈の加速の入った拳が一夏の顔面に突き刺さる。

 

後に彼女は語る。

 

:一目見たときから殴りつけたかったです。えぇとても。

 

殴り飛ばされ、地面を転がる一夏。が、彼の頭はハッキリと次の手を考えていた。

 

「(……くそっ、気が抜けてた! 思わず貰っちまった!!)」

 

なんとこの男。真季奈の拳が迫ってきた瞬間に考えていたことは「よける」ではなく「殴られたい!」であった。流石は筋金入りである。

 

しかし、だからこそというべきか。

 

開幕早々に殴られたというのに思考は次の手を考えていた。地面を転がりながらその動きに合わせて全身のスラスターで姿勢制御をし、勢いのまま空中に飛び上がる。

 

「上手く逃げましたね……だけど、お前がわたしを見下ろすなぁッ!! 行けよビットォッ!!」

 

真季奈の両肩、左右で浮遊する大剣が五本ずつ、計十本に分割して空を翔け一夏を追う。

 

「囲みに来た!? なら、正面突破ぁ!!」

 

「!? チィッ! 賢しくなった!」

 

前後左右上下斜角と十方向から迫るビット。それを突破するために一夏がとったのは、真季奈へ向かって突き進むことだった。

 

真季奈のビットは実体剣。セシリアやマドカのビットとは違いビームは撃ってこない。ならば、ビットとの距離を一定のまま詰められなければ攻撃を受けることはない。そして、全方位に敵がいるのなら一方向に狙いを絞らせればいい。

 

それが、高速で飛行するビットとの追いかけっこになったとしても。

 

真季奈が飛ぶ。向かうは迫り来る織斑一夏。一直線上にいる二人の間には長剣タイプのソードビットが一本。

 

ISアリーナのフィールドはIS戦を行うにはハッキリ言って狭い。直線距離にして数秒で端から端えと飛んでいくのだ。故に、空中戦闘では速度は制限し、軌道で躱すのだ。つまり、向かい合っての飛行など一瞬で距離がなくなる。

 

ぶつかる! 観客の誰もがそう思ったとき、一夏は雪片弍型を振り、真季奈は自身が追い、追従していたビットの柄を掴んで振るう!

 

「「おおおおおおおおおおオオオォォッ!!!」」

 

武器は一本の刀。それ同士がぶつかり合い、鍔迫り合いがおきる。スラスターが勢い良く噴射し合い、二機の衝突を拮抗させる。

 

それは、二人の初めての戦いの再現。あの時は、真季奈が雪片を受け流して凌いだ。

 

しかし今は状況が違う。真季奈の、織斑一夏を挟んだ向こう側からは真季奈が放った残り九本のビットが迫る。足を止めたことにより彼の戦術は早くも破綻していた。

 

「蜂の巣になれ!!!」

 

「い や だ ねっ!」

 

一夏は足を使った。右足をスラスターの噴射で勢いよく蹴り上げる。弾いたのは自分の手。雪片と真季奈のビットを持つ手を狙ったのだ。互いの獲物が宙を舞う。

 

「なっ!?」

 

真季奈が驚く。それは以前の織斑一夏ならしなかった戦い方。剣を振る、攻撃が来たら飛んで逃げる。いくら教えても進歩がない。そんな男だった。

 

蹴り上げた足の勢いのまま空中で一回転しその場から上へ逃れるように飛び、ビットから逃れる。目標を失ったビット達は行き場をさまよい、主人の周りで旋回を始めた。

 

ビットが指示を待つ。それは、真季奈の思考が止まっているという証し。

 

「織斑一夏が、戦っている……?」

 

真季奈が凍る。戦闘中だというのに。いや、そもそも自分はなにをやっていた?

 

織斑一夏を見ればどうだ? 今蹴り上げた雪片を掴んで構えているではないか。そんな器用な男だったか?

 

これは唯のショーだ。自分が織斑一夏を一方的に痛めつけるための。

 

なのに。

 

「どうやら、お遊びが過ぎたようですねッ!」

 

自分が翻弄された。たかだか織斑一夏程度の相手に。

 

 

ふざけるな。

 

 

「ウイング、全ッ開ッ!!」

 

背の翼、禍ノ生太刀を広げて真季奈が飛ぶ。六枚の光翼はサクラ色の粒子を振りまき空間に力場を形成する。

 

「戻れ、ビット」

 

真季奈の指示で元の大剣、十拳剣へと戻るビット達。十拳剣Rは右肩にマウントし、十拳剣Bを手に取り、飛ぶ。

 

「織斑一夏ーーーッ!!」

 

「真季奈ッ!」

 

両手持ちで振るわれる大剣。真季奈の下から上へと振り上げながらの斬撃、それを一夏は旋回して躱そうとする。真季奈の右サイドに回り込もうとスライド移動し、雪片を振るおうと……、

 

「うっ!?」

 

ガギンッ!! と一夏を止めたものがあった。

 

翼。『白式』の二つのウイングの内、左側のモノが何かに掴まれていた。

 

真季奈の十拳剣Rだ。彼女の右肩位置にマウントされていたそれが、刀身を二つに割ってクローのような形状になって『白式』の翼を捕らえていたのだ。

 

「変形した!?」

 

「つーかまーえたーーッ!!」

 

今度は手に持つ十拳剣Bの刀身が変形する。刀身のビットが全て射出され、残った基部からガトリングの銃口が覗く。

 

「ゼロ距離斉射で痛みに悶えろォッ!!!」

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッ!!!!!

 

「ぐぅううっ!!!」

 

容赦の無い集中砲火を浴びる一夏。腹部から胸にかけて撃ち込まれるビームの弾丸の嵐はシールド・バリアーによって防がれて痛みこそないが、その分エネルギーの消費も激しい。

 

それは絶対に避けなくてはならない状況だった。

 

理由は二つ。

 

一つは『白式』の特性。唯一の武装、雪片弍型が自身のシールド・エネルギーを消費して一撃必殺の攻撃を行う武器である以上自身のエネルギーを無闇に減らすわけにはいかない。

 

もう一つは、『暮桜 天マキナ』が敵機のエネルギーを奪う機体だということだ。

 

つまり。

 

「いただきまぁす」

 

「クソっ!」

 

掴まれた翼から、クロー状に変形した十拳剣Rを伝って機体エネルギーが真季奈へと流れていく。『単一能力』、天下騒乱が発動したのだ。

 

「(マズイッ!? このままじゃっ!)ええいっ! ままよ!!」

 

みるみる減っていく機体のエネルギー残量を見て一夏は賭けに出た。『単一能力』、零落白夜の発動。これにより雪片が金色に発光し、刀身が展開して青いビームの刃が出現する。

 

「でぇいっ!」

 

「!? はっ!」

 

振るわれた雪片は真季奈へと向かう。しかしそれは、後方に下がるという動作一つで躱された。

 

それはいい。距離をとったことで真季奈はウイングを掴んでいたクローを離した。これでエネルギーの流出は止まった。が、

 

「エネルギーがッ! もう雪片は使えて十秒がいいとこかッ!?」

 

すぐに零落白夜を解除し、雪片のビームを治める。これ以上のエネルギーの消費は抑えなければ戦闘続行すら出来るか怪しい。

 

「はははっ! なかなか思い切りがいいじゃないですか!! ですが! 逃がしませんよ!!」

 

現在の互いの位置取りは、真季奈がフィールドの上空、一夏が中空といったところ。そこへ真季奈からのビームガトリングの雨が降り注ぐ。

 

「くそ、範囲が広すぎるだろう!!」

 

先程は至近距離からの射撃だったから一点にビームが集中していた。しかし、今度は上空から薙ぎ払うかのように左右へとビームの塊が降り注ぐ。一夏はそれを、空を飛び回って躱し続けるが、

 

「がっ!?」

 

ビットが来る。

 

回避した先に待ち構えるかのようにしてソードビットが機体をかすっていく。数は三本。

 

「? 後の二機は?!」

 

真季奈が放ったビットの数は五本。それが先程から三本しか確認できていない。

 

残りの二本はどこへ?

 

そう思ったとき、背部のウイング二つに衝撃が走った。

 

ザンッ! という何かが突き刺さる音。見やると、『白式』の白い翼に細長い穴が空き内部の機械が覗いていた。

 

「ま、まさか!?」

 

ミラージュ・ビット。光学迷彩によってその姿を完全に消していた刀身は一夏の認識の外から彼を襲った。

 

「足を止めましたね!?」

 

「しまっ……!?」

 

禍ノ生太刀からアンカーの付いたワイヤーが二本射出される。それは『白式』に突き刺さったミラージュ・ビットへと向かい巻き付くようにして絡みついた。

 

「さぁ! めりぃごおらんどッ!!」

 

「うあっ、」

 

加速。『暮桜 天マキナ』の推力を最大にフィールド内の内壁を沿うようにして飛ぶ。グルグルと回り続けるその様は見ている観客からすればなんと恐ろしいものか。

 

加速! 加速!! 加速!!!

 

フィールド内に満ちたナノマシンのプール。そこを力場に機体を何度も何度も加速していく。もはや二つの機影が点ではなく線に見え始める速度。真季奈の後ろでワイヤーで繋がれた一夏はその加速に引っ張られ目を回す。ビーンッと張られたワイヤーがフィールド内を旋回するたびにその遠心力で暴れ、

 

「さぁ潰れてミンチになれ!!」

 

「ぶぅへっ?!」

 

振り子を払うかのようにして急停止。同時にアンカーの付いたワイヤーを切り離す。『白式』の機体制御ではどうしようもない速度まで加速した一夏は真季奈という先導から開放され、不可視のフィールドへと叩きつけられた。

 

「「「きゃぁぁ!!」」」

 

それに驚くのは観客席の女子たちも同じ。目に見えないフィールドバリアに守られているとはいえ、自分達の目の前に高速の物体が迫ってくるのだ。安全と頭で分かっていても恐怖は拭いきれない。

 

ボトッ、と地面に落ちる『白式』と一夏。機体はガシャンと音を立てて軋み、一夏も衝撃と痛みで呻く。

 

そのさまに会場の空気が凍りついた。

 

「追撃♪」

 

鬼がいる。

 

十拳剣Bのビームガトリングが火を噴く。十拳剣Rが変形、刀身が左右に割れて反転し、中心の剣が外れてアローモードとなる。その基部から銃口が覗いてビームを発射する。

 

二つのビーム兵器が、その射線が一つに重なり織斑一夏へと撃ち込まれた。

 

 

 

 

 

 

「おい! あれはもうやりすぎだろう!? 止めなくていいのか!?」

 

「……………………デウス」

 

管制室で見ていた箒達がその光景に息を呑む。千冬でさえデウスに縋るように声を震わせていた。

 

明らかなオーバーキル。死体に鞭打ち、嬲り殺し。

 

初めの頃は一夏も善戦していた。そのように見えた。

 

しかしそれはやはり間違いだった。一夏の奮闘は真季奈の逆鱗に触れ、虎の尾を踏んでしまったのだ。

 

『いいや、まだだ。一夏はまだ諦めちゃいない』

 

「そんな精神論は聞いていない!! これ以上は命にかかわると言っているんだ!」

 

デウスの言葉に箒が反論する。彼女はなまじ特訓に付き合っていたから一夏の底を知っている。だから彼女はこれ以上は無理だと判断したのだ。

 

『箒。一夏があそこに立っているのは勝つためだ。命乞いをするためじゃない』

 

「だがあれではもう!!」

 

力なく横たわり、ビーム砲の集中砲火を浴びている一夏。機体のシールド・エネルギーも残りわずか。バリアーも絶対防御も展開する分が残っているか……。

 

その事実は、織斑一夏の敗北を告げていた。戦闘の様子を見ていた者たち全員が言葉をなくして立ち尽くすほど決定的に。

 

ただ一人、デウスを除いて。

 

『さぁ、お前の愛を魅せてみろ。織斑一夏』

 

 

 

 

 

砲撃が止む。

 

それは真季奈の慈悲ではなく、ただの結果。

 

『白式』のシールド・エネルギーが危険域に達したのだ。撃つ量を調節しなくては生身へと貫通してしまうほどに。

 

「さて、そろそろ降参したらどうです? 今なら三回回ってワンと鳴いた後に土下座すれば考えてあげますよ?」

 

「……そんなご褒美を貰っちゃぁ負けを宣言する気なんて起きないぜ真季奈」

 

真季奈の甘言に否と答える一夏。

 

どこにそんな力が? と皆が思う中、彼は不敵に笑う。

 

織斑一夏がデウスに一番に鍛えられた事。それは機体の操縦法でも肉体でもない。精神力である。

 

そう、黄金の魂を。

 

雪片を杖がわりにふらふらと立つ一夏。その満身創痍の有様に、会場は勝負がついたことを悟る。

 

だが、それでも諦めない男がいる。

 

「真季奈、その機体の武装はそれで全部か?」

 

「は? 対戦相手に教えてあげるいわれはありませんが、概ね追加分は出しましたよ?」

 

これは嘘だ。まだ真季奈は全ての攻撃手段を見せてはいない。それでも、もう必要ないと思っていた。勝負はもう付いているのだから。

 

「そうかい、そいつは良かった。デウスに言われてたからな。こっちの奥の手は、最後まで出すなって言われてたからなぁッ!」

 

「なんですって?」

 

織斑一夏が叫ぶ。真季奈はまだ悪あがきが残っているのかと呆れるが、一夏は本気だ。

 

彼は呼ぶ。デウスから受け継いだ、最後の切り札を。

 

 

「来い! エクスワイバリオン!!!」

 

 

『白式』から吹き出した炎が一夏を包む。その炎の色は。

 

「黄金の炎!?」

 

真季奈が見た炎の色は黄金。通常の赤ではないその輝きは彼女の理解を超えその視界から織斑一夏の姿を隠す。

 

『クワァアアアアアアアアアア!!』

 

「なんです!?」

 

炎から飛び出したモノがいた。

 

それは黄金と赤の大幻獣。デウスの、『デウス EX』の鎧と翼から生まれた分身。

 

灼熱の赤い翼と黄金の身体を持つワイバーン。

 

大幻獣、エクスワイバリオン。

 

ソレが、空を翔る。

 

(ファ)()(ター)? そんなこけおどし!!」

 

「行くぜエクスワイバリオン!! ドッキングだ!!」

 

「え!?(ドキッ!)」

 

炎の中から一夏が飛び出す。先行するエクスワイバリオンと同じ軌道で飛行すると……。

 

 

 

 

 

「デウス! なんだあれは!? 私は聞いていないぞ!!」

 

「一夏さんの『白式』に後付装備が? それは無理だったはずでは!?」

 

箒と初めて見る装備に驚き、セシリアは『白式』の機体特製からその装備に疑問を思う。

 

『白式』は雪片弍型を使用するために機体の拡張領域の全てを使っており、他の後付装備を何一つ装備できない筈だった。だからこそ、織斑一夏はIS操縦の初心者だというのにブレード一本で戦闘しなければならないというハンデを背負っていた。

 

それが、自分たちの見たことのない装備を使おうとしている。

 

「一夏は何をするつもりなの?」

 

「ドッキング……だと?」

 

管制室から見れば、件の支援機、エクスワイバリオンがバラバラに分解し始めた。翼、ワイバーンの首の付いた胴体、二つの赤い竜の頭部を模した鎧が切り離され一夏の周りに浮遊する。

 

「な、なんで真季奈はアレを黙って見ているの?!」

 

「絶好の的ではないか!!」

 

シャルが、ラウラがドッキング中の一夏をただ見ている真季奈に疑問を覚える。

 

だが、だがしかし! 

 

「当然じゃない!!」

 

「うん、そうだよ!!」

 

それを、否と。真季奈の行動を肯定する声が二つ上がる。

 

鈴と簪だ。

 

「合体中に攻撃するなんて外道を超えた邪道よ!!」

 

「例え自分が不利になっても、合体を最後まで見ないなんて考えられない!! 真季奈じゃなくても私だってそうする!!」

 

「「「そんな理屈があるかーーーーーーッ!!!!」」」

 

日本という国で、『ヒーロー』を見続けてきた(テレビで)二人には真季奈のとった行動が完璧に理解できていた。

 

ヒーローの合体・変身シーンを邪魔しないのがお約束。それを当たり前として育った彼女たちの魂はもはや理屈では覆らない!!

 

『そうだ一夏! 今こそ燃え上がらせろ! お前の(ゴール)(ドスピ)(リッツ)を!!』

 

「デウス!?」

 

デウスの身体が変化していた。

 

黄金の、『デウス EX ソーラレイカー』に。

 

一夏の肩に真紅のドラゴンショルダーだ装着される。

 

『お前に授けた俺のキング・オブ・ハートの称号! その紋章の、『愛』の力を持って進化せよ!』

 

Xを縦に二つに割ったような二枚の真紅のウイング。それが『白式』のウイングに覆いかぶさるようにして一つになる。

 

『そして今こそ名乗りをあげろ! 白騎士の名を!』

 

右手に雪片を持ち。左手にはエクスワイバリオンの胴体が変形した巨大な槍剣、『竜槍剣エクスレイカー』を持つ。

 

最後に、全身の装甲がその色を変える。追加された赤の鎧は、『白式』の機体色になぞるかのように『白く』染め上がる。

 

現れたのは白い鎧に二刀を携えた騎士。

 

その名は、

 

(バーサル)()(ナイト)、織斑一夏!』

 

 

バーサルナイト。それは騎士を統べる国王とその騎士団長、その主神たるスペリオルドラゴンにのみ任命を許された最高にして高潔な騎士。

 

すなわち、最強の騎士の証!!

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

 

「速い!?」

 

真季奈の、『暮桜 天マキナ』のエナジーウイングに匹敵する加速。その速さを持って、一夏は真季奈の眼前に一瞬にして迫った。

 

「でえぃいやぁああああああああ!!!」

 

「なんのぉおっ!!」

 

一夏が雪片を振るう。それを真季奈は滞空していたソードビットを掴んで応戦する。刀身がぶつかり合い、火花を散らす。

 

「まだまだぁっ!!」

 

そこへ、一夏はもう一方に持った槍剣を叩きつける。

 

「くぁッ」

 

細身の刀身であるビットでは衝撃に耐えられなかったのか、真季奈は手にした武器を手放してしまう。追撃が振るわれ、それを躱すために距離をとる。牽制のために残りのビットを一夏に向かわせ、包囲する。

 

「視える、俺にもビットが!」

 

「なに!?」

 

不可視のミラージュ・ビットが叩き着られる。一夏に気取られることなく背後から狙った攻撃を躱しての斬撃。それによってまっぷたつにされたミラージュ・ビットの姿に有り得ないと真季奈は思った。

 

「(あの男に一体何が!? あの装備はなんです?!)」

 

声にこそ出さないが、真季奈に焦りが生まれていた。絶対的有利の状況でこの痛手。シールド・エネルギーが残りわずかなはずの相手の猛攻に疑問に思うがそんな暇もない。

 

「マグレは二度と続きません! ビット!!」

 

「マグレじゃねぇんだよ!!」

 

ミラージュ・ビットは残り三本ある。それを長剣ビットと織り交ぜて一夏の正面、死角、左右と狙いをつけて襲わせるが、

 

「おおおおお!!」

 

雪片を叩きつけ、槍剣で薙ぎ払い、柄を握った拳で殴ろつける。馬鹿な。

 

「そうか、わかったぞ! 俺が見なくちゃいけなかったのはビットじゃない!! それを操る真季奈自身だったんだ!!」

 

「何を!?」

 

「真季奈を、君を知って君のことを考える!! そうすれば君が俺をどう攻撃するかを予想できる!!」

 

「出来るかこの変態がぁッ!!!」

 

たまらず拳を開いて光雷球を発生させ投げつける。しかしそれも、正面でクロスさせた雪片と槍剣で防がれ、そのエネルギーを霧散させられる。

 

「効かねぇ!!」

 

「な、どういう武装ですか!?」

 

ゴッドシールド。黄金神の分身であるエクスワイバリオンと(ユナ)(イト)したからこそ使うことのできる、神にのみ許された絶対防御を超えた究極のシールド。

 

これが発動すれば、いかなる攻撃手段も突破することはできない。

 

「反撃行くぜ!」

 

「くっ!」

 

両手に持った剣で迫る一夏の猛攻。それを間にビットを挟んで防ぐ真季奈は徐々に後退を始めた。どちらも高速の追跡と回避。観客の目にはもう二機の姿を捉えることができなかった。

 

「わたしが、織斑一夏に遅れを取る?」

 

………有り得ない。

 

「わたしが、織斑一夏に苦戦している?」

 

……………有り得ない。

 

「わたしが、織斑一夏に……負ける?」

 

そんなことっ!!

 

「ありえねぇぇんだよォッ!!!」

 

真季奈の咆哮。

 

それに応えてビットが集結する。シベールソード形態。右腕に五本、左腕に四本が合体して装備されるその姿は、真季奈の両腕そのものを刀とした。そして脚部のナイフがつま先から展開する。

 

真季奈の目が赤く染まる。それは彼女の体内に機体のナノマシンが侵入したということ。脳から全身への指示を、神経を通した電気信号をナノマシンを介してその処理速度を強制的に引き上げるその技法。

 

彼女が編み出したその技の名は、

 

「いかん、逃げろ一夏!! それは……」

 

管制室の織斑千冬が思わずマイクを握って一夏に叫ぶ。なぜならば。

 

「それは私を倒した技だ!!!」

 

「ガァアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

四肢を蹴り、真季奈が跳躍する。空中に力場を形成し、それを足場にすることで。空を翔るのではなく駆けるその移動法。フィールドを跳ねるかのように各部の推力と全身のバネを用い、目に映らないほどの速度で縦横無尽に襲い来る戦い方。

 

(じゅ)(うお)(うむ)(じん)モード』。現役時代の織斑千冬を、ただ一度だけ倒した技。

 

「くぅ!?」

 

一夏の背後に衝撃が走る。次は正面。次は右腕と、全方向から同時に攻撃を食らっていると錯覚するほどの連続攻撃。(ゴッ)(ド・)(シー)(ルド)に守られているはずの装甲がどんどん削られていく。その高速を超えた超高速の肉弾戦。

 

その姿。まさしく四肢でかける黒き狼のようだった。

 

「これを止めなければ俺が負ける……いいや、止めてみせる!!」

 

武器を持った両手を広げる一夏。その間も止まらない真季奈の見えない攻撃。しかし、彼女は確かに傍にいる!!

 

「そうだ、俺には………俺には『見えて』いる!!」

 

一夏の思考がクリアになる。視界が開け、世界が停ったかのように感じる。

 

今、自分の肩に攻撃が走った。その後、『彼女』が後方へ駆けていったのを感じる……そして、ナノマシンの力場を三つほど足場にして刹那の速度で俺の正面に回り込んで飛び込んでくる。

 

「だったら、受け止めればいいよなぁ!?」

 

「ッ!?」

 

広げた両腕で『ソレ』を抱え込みようにして待ち構える。直ぐ様伝わる腹部への衝撃。直後、腕を閉じて『ソレ』を、志波真季奈を抱きしめる。

 

「な、馬鹿な!?」

 

「捕まえた!!!」

 

これは織斑一夏が、志波真季奈が相手だからこそ可能にしたこと。真季奈の腰を抱きすくめ、逃がさないように捕まえる。

 

二人の顔と顔が文字通り、目と鼻の距離という近さまで接近する。

 

「真季奈! 改めて言うぞ!! 俺は」

 

「離せへんた」

 

「お前が好きだぁっ!!」

 

「はぁっ?!」

 

「「「はぁああああああああああああああああああああああッッ!!!!??」」」

 

突然の告白。これには真季奈も、会場の全ての生徒が目を見開いて驚きの声を上げる。

 

しかしなにがおかしいだろうか?

 

デウスが言ったではないか。真季奈に、告れと。それがどんな意味をもって告げられた言葉だろうと今の一夏には関係ない。

 

今、一夏を突き動かすのは黄金魂の、真季奈への『愛』の想いのみ!! すでにシールド・エネルギーの尽きた『白式』を稼働させるその力の原動力こそがそれ。操縦者の一途な思い、純粋で強靭な精神力が生み出す力が黄金魂となり神代の力を発現させているのだ。逆に言えば、真季奈への愛。その想いが折れてしまえばこの力はその瞬間に消えてしまうだろう。

 

そして、真季奈の返事はというと。

 

「ザケンなぁッ!!! お断りじゃボケぇぇっ!!!」

 

「ブボッ!?」

 

上体を思い切り反らしてからのヘッドバット!! それが真季奈の答えだった。

 

 

「こ、こ、こ、この野郎もう堪忍袋の尾が切れた!!」

 

「「「あ、まだ残ってたんだ忍耐力……」」」

 

これには観客一同も驚きである。

 

「こいつで終わらせてやる……十拳剣、モード!!」

 

「!? 大きいのが来る!?」

 

真季奈の手に持つ十拳剣が形態を変える。中心の刀身をそのままに、左右の剣が開いて三矛の剣となる。

 

その形態の名は。

 

「天剣絶刀!!!」

 

「だったらこっちも! エクスレイカー!!」

 

真季奈の持つ天剣絶刀に暗いエネルギーが流れ込む。対して、一夏のエクスレイカーには眩いばかりの黄金の輝きが。

 

魔剣と聖剣。二つが放つ輝きがアリーナを満たしてその視界を奪った。その輝きが最高潮に達したとき、それは放たれる!!

 

「邪黒覇道爆滅波!!!!」

 

「閃光剣!!!!」

 

真季奈の放った邪黒覇道爆滅波。機体のエネルギーが集められて放たれたそれは、黒い狼の形になって一夏を喰らおうと駆ける。

 

一夏はデウス直伝の閃光剣で迎え撃った。闇を祓い、魔を打つ一撃は、正しくこの場で解き放たれる!!

 

なぜならば。志波真季奈とは覇界神の系譜、その直系。暗黒の力を宿すことを余儀なくされた一族の末裔なのだから。

 

今まではデウスが共にいることで、ISの中からその黄金神の力で押さえ込まれていた暗黒の力。それが日に日に増していき、こうして解き放たれるほどとなった。

 

それを抑えるには新たな光の力が必要。しかし、あの『鳳凰』では駄目だ。あれは光にも闇にも染まる存在。気を抜けば封じるどころか増大してしまう可能性すらあった。

 

だからこそ。真季奈の為に、自分の、黄金神の力を受け継ぐ『騎士』を願った。それが、

 

 

『白騎士』織斑一夏である。

 

 

「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」

 

ドーーーンッ!! という爆発音とともに、フィールドは煙幕に包まれた。拮抗する光と闇のエネルギーは互いを喰らいあって対消滅したのだ。

 

そして、

 

 

「両者、互いにシールド・エネルギーゼロ!! この試合、ドローです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園寮内の真季奈の自室。そこで試合が終わった後の慰労会が執り行われていた。

 

「いやー、まさか一夏があそこまで善戦するとわねぇ」

 

「まったくだな」

 

「予想外だった」

 

椅子に座って飲み物を手にしながらそう話すのは鈴、箒、簪だった。

 

今日の試合。結果はドロー、引き分けだが、それは本来ありえないと思われたことだった。

 

あの織斑一夏が志波真季奈相手にである。誰もが一夏の惨敗を核心していただけに大番狂わせの結果だった。

 

余談だが、一夏の勝利に賭けていた一部の生徒はたいそう大儲けしたらしい。

 

「で、こいつなにやってんの?」

 

「言うな」

 

鈴が指さして言う。箒はそれから目をそらす。

 

それとは。

 

「あ~~~、もっと、もっと踏んでください真季奈さまーー!!」

 

「…………くっ、こんな屈辱は初めてです!!」

 

床に仰向けになって真季奈に踏まれている織斑一夏の姿がそこにあった。

 

一同ドン引きである。

 

試合の結果は引き分け。真季奈達が一方的に勘違いしていた『チョメチョメ』等の報酬はもちろん無しとなったが、ここで織斑一夏に『優しい』ことをしてあげようという真季奈の考えがまずかった。

 

「わたし相手によくやったじゃないですか。なにかご褒美をあげましょうか?」

 

などと言ってしまったのが運の尽き。一夏はとんでもない要求をよこしてきた。

 

「このストッキングを履いて俺を踏んでください!!!!」

 

「「「うわぁぁぁ……!!!」」」

 

女子一同が戦慄した。真季奈ですら唇の端を痙攣させるほどに。

 

しかし言い出したのは自分。一夏が手渡した黒いストッキングを履き、床に寝転がって今か今かと待ちわびるHENTAIを踏みしだいてやるしかない。

 

軽く絶望した。しかもこの男。踏み付ける度に恍惚の笑みを浮かべるのだ。普通に気持ち悪い。

 

というか、

 

『一夏、お前そのストッキングはどうしたんだ? まさか買ったのか? なぁ?』

 

デウス(犬)が冷や汗を流しながら聞く。自分の弟子というか後継者の姿に正直泣きたくなる。なんでこんな奴を選んじゃったんだろう?

 

「あ~~~やばい、これいい! 真季奈の柔らかい足の感触と体温が伝わってきて凄いいい気分!! この御御足に抱きついてスリスリしていいですかぁっ!?」

 

「ひぃっ!?」

 

『総員、この馬鹿をたたきつぶせーーーー!!』

 

「「「了解!!!!」」」

 

とうとう真季奈の足に抱きついて頬ずりを始めたHENTAIにデウスの中の『お父さん』が黙っていなかった。真季奈の貞操のためにその場の全員の号令をかける。もちろん、全員すぐさま従った。

 

「ギャッ! お前ら、俺の幸せを邪魔すんな! あ、痛い、痛い痛い痛い!! 止めて、あ、でもちょっと気持ちいい!!」

 

「黙れこの糞野郎!!」

 

「見下げ果てた変態だな!!!」

 

「姐さんにこれ以上触るなグズ!!」

 

「真季奈から離れろ変態!!!」

 

「一夏さんの色情狂!!!」

 

鈴、箒、ラウラ、シャル、セシリアが床に転がる一夏を足蹴にしながら罵倒する。しかし忘れてはいけない。

 

それすらもこの男にはご褒美だということを!!!

 

「デウス、私の弟はあの試合で死んだほうが良かったんじゃないかなぁ?」

 

『泣くなよ。俺だって泣きたいわ』

 

その惨状を見て姉である織斑千冬ですら涙を流す。どこで教育を間違えたのだろう、と。

 

 

こうして、織斑一夏と志波真季奈の戦いは終わった。

 

どちらが勝ったか、と聞けば恐らくそれは…………ね?

 

 

明日は真季奈と誕生日プレゼントショッピングである。

 




はい、つまりはドローです。ある意味で一夏にとっては大金星ですね。

というか、うちの主人公さいきん負けたり引き分けだったりいいとこないなぁ。


今回で明らかにしたのですが。

真季奈は武者系。一夏が騎士系です。

真季奈の機体の説明を。

元ネタ:ガンダム アストレイ + 魔星大将軍

アストレイは金をベースに赤、青、紫、緑、武者○伝3の破牙丸(アストレイの武者版)という詰め込みっぷりです。

金:エネルギードレイン。武装名など。

赤:タクティカルアームズ2、光雷球。

青:タクティカルアームズ。ソードビット。足の仕込みナイフ。    

紫:ビーストモード。

緑:戦闘支援AI(ALCEと兼用)

破牙丸:ビーストモード(獣王武神モード)

という、僕が知るアストレイ要素を盛り込んでいます。

アストレイは『王道ではない』という意味。真季奈は『外道』主人公ですので『王道』主人公ではないなぁ。ということ決めました。

魔星はもちょっと隠しておきます。


一夏の魔改造。

白騎士を見た瞬間からバーサルナイトとしか読めませんでした。ガンダム脳ですいません。

一夏をバーサルにする際、悩んだのがその方法です。ただの進化では無理ですし、任命させるなら王様か騎士団長、黄金神によって、というのを譲りたくなかったので、デウスが黄金神に覚醒するまでおあずけとなりました。

そして、進化方法も合体にしました。バーサルロードスペリオルガンダムです。あのなんで選ばれちゃったかなー? という微妙さが一夏になんとなくあいました。


それではまた次回でお会いしましょう。
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