今回は短めです。
「では引き続き、織斑とオルコットによる高速機動の実演を行なってもらう」
「「異議あり!!」」
織斑千冬の命令に口答えする馬鹿が二人いた。
「やかましい!!」
「「ぎゃんッ!!」」
異議を申し立てた二人。それは指名された織斑一夏とセシリア・オルコットだった。当然、そんなことをすれば出席簿による頭部強打の刑に処されることは必然だった。
「大体なんでまたやるんだよ? さっき真季奈がやったじゃないか」
「ほう? つまり貴様は真季奈の動きから高速機動のなんたるかを完全に理解し習得したと?」
「調子こいてすいませんでした」
つまりはそういうこと。
志波真季奈が見せた『光り輝ける運び手』による高速機動。これを見たクラスの面々は、
………速すぎて何がなんだか分かりませんでしたー。
あ、はいそうですか。
「全く失礼しちゃいます。あとで織斑一夏にはしっかりと償いをしていただかなくては」
「俺が何をしたと!?」
どうやら無駄働きをさせられたマ真季奈への謝罪はクラス一同を代表して一夏が行うようである。
「でも織斑一夏ってまともな高速機動ってできましたっけ?」
「? エクスワイバリオンと合体すれば……」
「いやダメだぞ?」
「え”?」
『きちんとした』高速機動の経験のない織斑一夏に真季奈は尋ねるが案の定、彼はあのサポートメカ竜、『エクスワイバリオン』との合体状態で飛行するつもりだったようだ。それを織斑千冬が止める。
「なんでさ千冬姉ぇ?」
「馬鹿かお前は? あんな正体不明なメカ、公式戦で使えるわけないだろう?」
「ですよねー」
ちなみに、エクスワイバリオンは解析不明、材質不明、構造不明、なんじゃこれ? と、誰が調べても何一つその正体が分からない代物だった。
デウスに聞いたら、
『幻獣』
の一言しか返ってこなかったという。だからなにそれ!?
「ところで。やはり性能差と経験から、やっぱり織斑一夏がオルコットさんに追従しながらアドバイスを聞いて飛行する形になるんですよね?」
「え? あ、うん」
「まぁ……そうなりますわね」
真季奈の言葉に一夏とセシリアはそう答えた。
ストライクガンナーを装備したブルー・ティアーズの加速性は白式のソレを圧倒している。エクスワイバリオンと合体しバーサルとなればその差は覆るが、今回それは出来ない。
つまり、加速で追いつけない彼女相手に一夏は食らいつかなければならないのだ。
「つまりオルコットさんのお尻を後ろから舐めまわすように視姦するというわけですね!?」
「とんでもねぇこと言い出すなアンタッ!?」
真季奈が『!?』な疑問符を頭上に上げて叫ぶ。当然、一夏も言いたいことがあるが、
「そうか、そういう算段かこの変態がッ!!」
「セシリアのお尻がそんなにいいの!?」
「胸の次は尻か!? この節操無しが!!」
「い、一夏さん……その、困りますわ……♥」
それを聞いた女子一同はあっさりと一夏の敵に回った。いや、一人味方もいるようだ。というか、セシリア本人だった。
「はっ!? ま……まさか、事故を装ってオシリアさんをとハッスルドッキングをするつもりなんじゃ!!」
「もうどっからツッコメばいいのかなぁ!?」
「「「アイツ殺そうぜ?」」」
「四面楚歌!?」
織斑一夏に味方なし!!
「そもそも俺! 尻よりも胸派だ!!」
「こいつとうとうゲロったぞ!?」
「んぎぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!」
「鈴!?」
「で、ではまさか!?
「ダメですわ一夏さん……皆さんの前でぇ……」
「「「お前はいい加減帰ってこい!!」」」
とうとう性癖をカミングアウトした一夏に狂い出す鈴。真季奈は戦慄しセシリアはブルーかと思えばピンクだった。
収拾がつかなくなったその場にひとりの少女が立ち上がる。
「……ちょっと生徒指導室までご同行願おうか?」
「
一夏の肩を後ろからポンと叩いて最後通告をするのは学園の風紀委員、織斑マドカだった。
こうして、織斑一夏は入学以降何度目かの御用となったという。
「おとっつあん!! わたし、ずっと待ってるからね!!」
「やかましいわこの元凶!!!」
両手を拘束されて連行される一夏を涙混じり(目薬注入済み)に見送る真季奈だったという。
「ひどい、事件でしたね」
「ほんとにな」
一夏がマドカに連行されたあと、残された生徒たちはISの高速機動への機体調整方法の実習授業を行なっていた。セシリアの実演? 一人で無事に終わらせました。
「箒ちゃん。『紅椿』の乗り心地はどうですか?」
「ん。なんとも言えんな。機体性能にリミッターをかけられているのを差し引いても、な」
「まさかの第二世代に毛が生えた程度の性能ですからねー」
機体の調整を行う箒の元へ訪れた真季奈。彼女が訪ねた『紅椿』の性能。驚くことに第四世代のそれは今、第二世代であるシャルロットの『ラファール・リヴァイヴ・カスタム』と大した性能差がないという。
なぜか?
それは『紅椿』にかけられたリミッターが原因であった。
「私の成長に合わせてリミッターが外れていく。というのは正直どうなんだ?」
「そもそも何を持って箒ちゃんが成長したかを判断しているんでしょうね?」
それこそが篠ノ之束が仕掛けたリミッターの正体。操縦者である箒の技能に合わせて機体とともに成長していくというその仕様は。ハッキリ言って本人からすれば迷惑そのものだった。
「素人にいきなり『第四世代』は荷が重いと考えたのですかね?」
「それなら第三世代を渡してくれたほうがまだマシだった」
なんという言い草。
『第四世代』。それは世界にただ一つしかない最強の称号。
真季奈や一夏の機体のように、一部にのみ使われているのではなく。機体全てが『展開装甲』という技術で造られている『紅椿』はまさしく最も優れたISだろう。
しかしそれも使いこなせなくては宝の持ち腐れ。現に今、操縦者である箒はこの機体を用いた模擬戦で黒星記録を更新中であった。
「真季奈に勝てないのはまだいいとして……とうとう一夏にまで勝てなくなったのは流石に……な」
「……あぁ、うん。あれは屈辱ですね」
一年生たちの専用機持ちで行なっている訓練。その中でのリーグ戦形式での模擬戦で、箒はとうとう最下位となった。
最強の『第四世代』を用いて、だ。
「勝負は機体性能のみで決まるわけではありませんしね」
「お前にだけは言われたくない」
いくら高性能な機体とはいえ使いこなせなくては意味がない。そう言う真季奈であるが、箒は『暮桜 天マキナ』という変態性能の機体を使っている彼女にだけは言われたくなかった。
「というか、『紅椿』って箒ちゃんに向いてない気がするんですけど」
「そうか?」
真季奈は機体と操縦者の相性を気にしていた。
IS操縦者には二種類のタイプがいる。
データ取りのためのモルモットと試合に勝つための兵士の二タイプだ。
前者はセシリアやシャルロットといった新兵器開発を主とした専用機乗り。この場合だと操縦者は新装備の適正で選ばれる他、勝負の結果よりも稼働データの収集が重視される。
後者は真季奈やラウラといった国家とそれに属する軍に所属する専用機乗り。こちらは操縦者の適正に合わせて機体の方を調整する。勝つために。
しかし箒と『紅椿』はこれらのどちらにも属さない。
既に完成された機体を未熟な操縦者渡す。しかも操縦者の癖や適正を考慮せずに。
妹である箒の癖を把握し、機体を調整して造る。開発者の篠ノ之束博士ならばそんな無茶も行えるだろう。だがそれも所詮はただの予測。完全ではない。
「実際負けてますしね」
「ねぇさぁん」
現実は非情である。
最強の機体で最弱。原因は操縦者の技量不足。
「そもそもなんですが。箒ちゃんって武装とか使いこなしてないですよね?」
「う。し、仕方ないだろう! ギューンってやるよりもズバッっとやるほうがやりやすいんだ私は!!」
「擬音星人乙! でもせっかくのビットや飛ぶ斬撃を活用しないのもどうかと………」
「ふん! 遠くの敵に攻撃を飛ばすよりも近づいて斬ったほうが速い!!」
「それは同感です。でも使わないなら意味ないですよ、ビット……」
とんでもない話だが。箒はビットをあまり使わない。精々近づいてくる相手に対して牽制のためにぶつけようとするくらいだ。これにはセシリアやマドカも眉をしかめた。「なんともったいない」と。
「わたし達みたいな高速機動を行う機体って、射撃武装の弾丸よりも速く飛んじゃうから近づいて斬ったほうが速いんですよね」
「だろう!?」
「でもだからって。状況を無視してがむしゃらに突っ込むのもどうかと」
「しょうに合わん!」
「この猪武者!!」
箒に説教をする形になったが、真季奈の言うことももっともで。
この頑固サムライ。遠距離・中距離・近距離と三拍子揃った『紅椿』で近距離戦法ばかりで戦いたがるのだ。ビット?なにそれ役に立つの? という有様だった。
「もういっそ、武装から全部作り直したほうがいいのでは?」
「それだ!」
「え? 本気ですか?」
おかしなフラグが立ったようである。
真季奈がボケる。
一夏が変態する。
マドカが逮捕する。
これが今の彼らの日常。
そんな日常を守る為に頑張るデウスは泣いてもいいと思う今日このごろ。
原作見てて思ったのが、箒のチートぶりです。
剣道で全国優勝。
だけど練習機の『打鉄』だと専用機持ちに負ける。
『紅椿』貰う。
二刀流に転向し、ビットを使いこなして遠距離攻撃も出来ちゃう。え? 順応早くない? BT特性あるの? セシリアの立場は? と。
IS世界のビットってなんなんでしょうね?
ビームを撃つタイプのビットを扱うのにBT適正が必要なのか、遠隔操作を行うのにBT適正が必要なのか? この作品では後者にしてます。