IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。いやほんと。

最近仕事でブルーになってました。


注意

・壁から離れてお読みください。

・床には拳の届く範囲にクッションを置いてください。

・叫びたくなっても耐えましょう。


それではどうぞ。


大いなる力

拝啓、皆様方。

 

私、織斑一夏は死んでしまうかもしれません。

 

思えば、IS学園に入学してからというもの私はろくな目に合ってきませんでした。

 

ですが今!

 

その全てを帳消しにしてもいいんじゃないかと思えるほど私は幸せの絶頂におるのです!!

 

「……さっきからなに一人で叫んでいるんですか?」

 

「なんでもありません好きです抱きしめていいですか?」

 

「ん、わたしの邪魔しない程度でなら」

 

「あざっす!!」

 

真季奈の許可がでたので彼女を後ろから抱きすくめる。うん、後ろから。

 

ここは真季奈の私室。宿直室だ。そこで俺はベッドの側で床に胡座をかいて座っている。

 

その俺の膝の上で、俺の胸板を背もたれにして真季奈が座っている。

 

 

なんだこれ?

 

 

「ちょうどいいから織斑一夏の腕にパソコン置いちゃいますね?」

 

「お、おおう」

 

そう言って、真季奈はさっきからカタカタと休むことなく打ち続けているノートパソコンを俺の腕に乗せて来た。重くは、ない。だけど身動きが取れなくなった。

 

訳が分からないって? 俺だってそうだ。

 

順を追って話そう。

 

俺は今日の授業が終わった後。ISの訓練も終えて自分の部屋に戻ろうとして真季奈に呼び止められた。その時点で即、彼女に全面降伏で跪いたのだが。彼女はこう言った。

 

「これからわたしの部屋で一緒にご飯食べません?」

 

断る理由なんてないだろ?

 

で、誘われるまま真季奈の部屋に入って、真季奈の手作り料理をご馳走になって、一日の疲れとか食後のまったりとした雰囲気とかでのんびりとくつろいでいたら、

 

「失礼しますね」

 

「うん?」

 

ノートパソコンと携帯電話を持った真季奈が俺の膝の上に座ってきたのだ。

 

もう一度言おう。

 

なんだこれ!?

 

「あ、すいません。そこの資料取ってくれます?」

 

「え? あ、これ?」

 

「あぁそれです。どうも」

 

電話を肩で抑えながら通話しパソコンに向かう真季奈が俺に『資料』を取ってくれと指示を出す。辺りを見回すと、確かにクリップでまとめられた紙の束がいくつも転がっていた。そのうちの一つを真季奈に渡すと素直にお礼を言われた。珍しい。

 

というか、何をしてるんだろう?

 

パソコンのディスプレイを覗き見る。知らない国の字。沢山の棒グラフに線グラフとそこに並ぶ数字の数々。さっぱりわからん。電話の相手も日本人じゃないのか、会話が外国語だ。通話中じゃ話しかけない方がいいよな?

 

つまり今の俺の状況はこうだ。

 

何かしらの作業中の真季奈が腕の何かにいるのに身動きが取れない。

 

あ、生き地獄かちくしょう!

 

電話中の真季奈の会話を邪魔するわけにもいかないので声も出せない。当の真季奈は話が盛り上がっているのかテンションが高い。笑い、驚き、たまに怒鳴る。

 

その度に、動く! 真季奈の体が!!

 

笑えば彼女は身体を上下に揺らして俺を苦しめ!(どこを?)

 

驚けば俺の胸に頭を預けて仰け反り!

 

怒鳴ればちょっとゾクゾクする。 

 

身振り手振りを大きくし、大仰なリアクションが続くこの事態! 神よ! 一体俺の何を試そうと言うんですか!?

 

『性欲じゃね?』

 

お前じゃねぇよ!!

 

一瞬、脳裏に黒い柴犬の姿をしたあんちくしょうが浮かんだがお呼びじゃない。でも実際そのとおりなんだよなぁ……正直、ムラムラします。

 

だってあったかくて柔らかくていい匂いがする大好きな女の子が腕の中にいるんだぜ!? なんで我慢してるの俺!? 

 

このまま力いっぱい抱きしめて首元に顔をうずめたい!! よーっしやったら…、

 

「なにか今、邪な気配が」

 

真季奈が首だけで振り向いて目が合う。

 

「せーーっふ! いぇいっしゃぁ!!」

 

「突然の奇声!? なんですかもう……」

 

必死に誤魔化しましたがなにか? どうせ俺はチキン野郎だよ。

 

訳が分からないという顔で作業に戻る真季奈。俺だってそうだよ。

 

ちくしょう……ちくしょおぉぉ。これならまだ殴られてたほうが気持ちいいぜえ……。

 

「退屈なら雑談でも交えましょうか?」

 

「ある意味かなり充実してますけどお願いします!!」

 

退屈どころの話じゃない。このままだと理性が崩壊する。頭の中は煩悩でいっぱいさ。

 

「最近、どうです?」

 

「ほんとに雑! 会話に中身がねぇ!!」

 

「つまり貴方からは中身満載で抱腹絶倒なトークショーは紡ぎ出されると!? わー愉しみ!」

 

「ハードルが積み重なってくぅぅぅぅぅう!!? 無茶振りが過ぎませんかねぇ」

 

「酷い! わたしとは遊びだったのね!? いいわよさよなら!!」

 

「その『振る』じゃねぇよ! むしろ付き合ってくれよ!!」

 

「その件ですと担当は別の部署となりますのでそちらに回ってください」

 

「たらい回し!? よそに振るなよ! というかワザとだろアンタ!!」

 

「当たり前でしょう!!」

 

「開き直るな!!」

 

なにこれ酷い。

 

でも、ホッとする。

 

こういうバカを言い合う関係で落ち着いていて、でもそれ以上の関係になりたいと思う俺はワガママだろうか? でもしょうがない。

 

恋、してるんだから。

 

「お茶ー」

 

「はいはい」

 

これ見よがしに、手の届く位置にストローの刺さったコップが置かれている。中身は真季奈の言うとおりお茶だ。それを取って真季奈の口元に持っていく。彼女はパソコンに向いながらそれを口にして飲む。怠惰極まりない。

 

こうまでするとなんとなくわかってきた。

 

要するに俺は、真季奈の作業を円滑に進めるための補助のようだ。真季奈が疲れたらそれを解消するために動く肉のリクライニングシート。しかも要求する物資を差し出す機能までついている。しかも動力は真季奈への下心だ。なんてエコロジー。

 

「エロジジイ?」

 

「エコロジー! 心読んでボケないでくれませんかねぇ?」

 

「織斑一夏の考えることなんて読むまでもありません」

 

「わー嬉しい!」

 

気持ちが通じているとか意思疎通できているとかっていうレベルじゃねぇ。俺もう真季奈に隠しごとできねぇんじゃね?

 

「ところでさ? 真季奈がなにしてるか教えてくれない? いいかげんさ」

 

「んー? 株の売買ですよ?」

 

「サラっと怖いこと言うね」

 

何が怖いって。真季奈に目を付けられた企業の株を何に使われるのか想像もできん。普通なら儲かっている株を元手に、ちょっと懐が潤えばいいなぁと。そういうのが個人の株運用だ。

 

でも、真季奈がそれで満足するだろうか? いいやしない。

 

「なぁ真季奈。それってどこの企業の」

 

「ところで、最近デウスが何をしているのか聞いてます?」

 

「露骨に話そらしたね? でも聞いてない。何してんの?」

 

俺の膝の上で、真季奈が体育座りをしたり足を伸ばしたりして体を動かしている。座りっぱなしで足が疲れたのだろうか? 俺にとっては真季奈のお尻が柔らかいので大変素晴らしい気分だけど。

 

「なんでも世界中をまわって『何か』を探しているそうですよ?」

 

「何かってナニ?」

 

「なんでしょう?」

 

 

 

 

 

 

その頃のデウス。

 

「いやーーーーーオバケーーーッ!!!」

 

『走れオータム!! 捕まったら……』

 

「捕まったら!?」

 

『あの世に引きずり込まれるぞ!!!』

 

「マジっすかボス!?」

 

イギリスで。デウスと元『亡国機業』のスパイであり、現デウスの部下であるオータムは。

 

 

墓地にて死霊の軍勢に追いかけられていた。

 

 

「なんで幽霊とかゾンビがこんな大量にいるんすか!?」

 

『ハロウィンは来月なんだけどな!!』

 

二人の後を追う集団。半透明のゴーストに墓から出てきた死体。空には鎌を持ったカボチャ頭もいる。

 

犬の姿で走るデウスと、タンクトップにカーゴパンツ、手には数珠と水晶を持ったオータムが夜の墓地で『あるもの』を探していた。

 

『アレが原因なのは間違いない! 回収すればこの気の早いハロウィンも収まる! ……と思う!』

 

「どこにあるんすかぁ!? ていうか、カン?!」

 

そこへ、大鎌を振りかぶたカボチャ頭が襲い来る!

 

ケケケーーーッ!!

 

「キャーーーッ!」

 

『いや、待てよ? 鎌!? そうかお前か!!』

 

何かに気づいたデウスが瞬時にその姿を変える。

 

『デウス EX ソーラレイカー』へと。

 

『ふくろうの杖、必ずいただく!!』

 

 

 

 

 

 

 

「そういや、箒の『紅椿』の改修もするの?」

 

「しますよ? デウスにも依頼されてましたしね」

 

再び場面は戻って日本。

 

真季奈はなおも一夏の膝の上でパソコンに向かっていた。

 

一夏が訪ねたのは先日の件。

 

篠ノ之箒の専用機、『紅椿』の改修依頼だ。高速機動の授業での雑談が、まさかの正式な依頼となっていたのだった。

 

「なんでデウス?」

 

「ISコアをすり替えて欲しいんですって」

 

「ファッ!?」

 

「まぁ……驚きますよね」

 

数に限りのあるコアのすり替え。バレれば重罪。即、腕が後ろに回るだろう。

 

「それでも、やらないといけない理由があるそうです」

 

「………まぁ、束さんが用意した機体だしな」

 

結局はそこに帰結する。

 

あの海での一件以来、一夏の束への信用は無いに等しかった。デウスがやれというのなら、そちらを優先するのだ。

 

「コアは学園の練習機から抜き取るとして、機体は箒ちゃんに合わせて仕様と武装を変更します」

 

「どんな?」

 

一夏がそう聞くので、真季奈はパソコンの画面を切り替え、その開発画面を見せた。

 

「ビットは使用不可にしスラスターとして固定。射撃武装は封印。その代わりに格闘重視にバランスを調整して機体の運動性を向上させます」

 

「一気に距離を詰めて斬り込むみたいな?」

 

「織斑一夏の『白式』とコンセプトは同じですね。ただ、武装は二つに絞ります」

 

ディスプレイには二つの武装が映し出される。一つはビームソード。エネルギーチューブで機体と直結し、大出力のソードを任意の大きさに調整可能。もう一つはヒートロッド。左腕に盾と一緒に固定武装として装着された蛇腹状のそれは巻き付けれらた相手を赤熱化した鞭で焼き切る、中距離用武装だ。

 

「また極端な……」

 

「箒ちゃんにはこれくらいの方がちょうどいいんですよ」

 

まぁ確かに。

 

短気で直ぐに手が出る箒ならちょうどいいのかもしれない。なにせ、近づいて斬る。この方法だけ考えればいいのだから。

 

「なら、このヒートロッド?はなんで付けたんだ?」

 

「機体がパワーダウンしたらビームソードが使えなくなるじゃないですか」

 

しかもこれ。蛇腹状に連結された刃物を赤熱化させて振るという武装だから近接にも使える地味にえぐい武装だ。ますます手が早い箒なら重宝しそう。というか、まさか日常で俺に向かって使わないよね? ね?

 

「計画名は…『エピオン』、とでもしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃のデウスは。

 

『ぬおぉぉぉぉぉっ!! 食われるーーー!!』

 

「ボスーーーっ!!」

 

中国の秘境で、巨大な龍に食われかけていた。

 

『は、早く竜の盾を探せーーー!!』

 

犬の姿で、蛇のように体の長い東洋の龍の口の中で。必死に上顎と下顎が閉じないように四肢を踏ん張るデウス。

 

そしてオータムはそんな上司の命令通り、『竜の盾』と呼ばれるモノを探していた。

 

どうしてこうなった?

 

「あっ! ボス!! 龍の鱗に混ざって盾みたいなものが!」

 

『そ、それだーーッ!! 早くと…あっ!?』

 

ツルッ! 

 

「あっ」

 

ぱっくんちょ!

 

「ボスゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!」

 

哀れデウス。足を龍の唾液で滑らせて………食べられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「目が疲れた~! 織斑一夏、指圧~~ッ」

 

「はいはい」

 

真季奈が俺の膝の上でパソコンに向かって早五時間。時刻はもう日付が変わろうかという頃合で。

 

真季奈はとうとう音を上げた。

 

「もうやだメンドクサイ終わらないやってられない~~ッ!!」

 

パソコンを投げ出し、振り返って俺の胸板に顔を埋めてパタパタと手と足を振って駄々をこねる。うん、かわいい。

 

「でも、真季奈がやりたいことなんだろ?」

 

「……はい。う~~~」

 

グリグリと押し付けてくる真季奈の頭を両手で掴んで俺は言う。勿論、彼女の要望通り閉じた目蓋を軽く親指で押しながら。

 

「真季奈にしかできないことで、真季奈ならできるさ。だったら頑張ろう?」

 

「………織斑一夏のくせに生意気だぞぅ」

 

「ハハッ、助けてデウえもーん」

 

真季奈がガキ大将なら、俺は弱虫でいい。それでも真季奈の背中ぐらい押せるから。それで俺の手に余るようならお助けロボットに任せればいい。

 

「じゃぁ……再開します。もうちょっとで終わるんです」

 

「ん、なんか食べる?」

 

「飴ください。頭痛がしてきました。糖分が不足してます」

 

「はいよ………はい、あーん」

 

「あむ」

 

手に届く位置に準備しておいた食料の中から飴を取り、包み紙をはがして真季奈の口に入れる。ビンタもなければ拳も飛んでこない。彼女は大人しく飴を頬張った。

 

「………………………」

 

「………………………」

 

しばらく沈黙が続いた。真季奈の手は止まることなく動いている。時折電話を取ってもいる。

 

そして、ディスプレイに『enter』の表示がされる。

 

「これを押せば……」

 

「真季奈?」

 

真季奈の手が止まった。作業が終わったのだろうか?

 

「織斑一夏」

 

「なに真季奈?」

 

視線はまっすぐ動かさず。こちらを見ることなく真季奈が俺に話しかけてくる。

 

「わたしはこれから、とても悪いことをします」

 

「なん……だとッ?!」

 

あの、真季奈が、『悪いことします』宣言だとぉっ!?

 

 

俺をイジメて高笑い。

 

IS学園を私物化して高笑い。

 

様々な施設を破壊して高笑い。

 

 

な、真季奈が……『悪いこと』だと自覚している!? 一体どんな悪事をやろうと言うんだ!?

 

「これを押せば、何千万人の人々が苦しむかもしれません」

 

「桁がとんでもねぇ!!」

 

「知らない人も、身近な人たちにも迷惑がかかります」

 

「確定なの!?」

 

「それでもわたしは、()()を押したいです」

 

「…………そっか」

 

そう言う真季奈の体は、わずかに震えていた。

 

怖いのかもしれない。葛藤しているのだろう。なら、俺のすべきことはなんだ?

 

俺は背中を押すと決めた。でも、真季奈が悪事を行おうというのなら止めないといけないんだろうと思う。

 

それでも、俺は真季奈の味方なのだ。

 

「………なんのつもりですか?」

 

「ちょっと勇気のおすそわけを」

 

真季奈を抱きしめる力を強くする。左腕で腰を抱き、右腕は真季奈のマウスを持つ手の上に重ねて置く。

 

「……ばーか」

 

真季奈の震えは止まっていた。

 

そして、彼女はそれを押した。 

 

 

 

 

 

 

翌日。志波真季奈のデュノア社乗っ取りが世界中に知れ渡ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後。

 

『サ、(サン)(ダー)(ソード)、ゲットだ……ぜ』

 

「ボスッ!? ボスゥウゥゥゥゥゥ!!!」

 

もう休んでいいのよ?

 

 

 

 




おつかれさまでした。

とりあえず、一夏もげろ。

真季奈がデレデレです。デウスがいない分、寄りかかる相手が欲しくて一夏に甘えてました。本人も不安だったんでしょう。


デウスはオータムとアイテム集めです。

べ、別に『誰』に『ナニ』を与えるかで悩んでいたわけじゃないんだからね!

他にもアイテムはでます。

次回を待て!
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