IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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七体目の機甲神

デュノア社。

 

フランス、パリに本社を構えるこの会社に今、設立以来最大級の問題が起こっていた。

 

そう。デュノア社の株の過半数をたった一人の日本人、それも年端のいかない少女に買い取られたのだ。

 

つまり、まさかの社長交代である。

 

「それでは皆さん。初めての方は初めまして。そうでない方はお久しぶりです。新しい社長の志波真季奈です」

 

「ふざけるなッ!!」

 

高層ビルが立ち並ぶパリの街並みで、ひときわ大きくそびえ立つビルの、上役達のみが入ることが許されるこの会議室で、社長椅子に座る少女に。

 

それに対し声高に叫ぶのは()社長であるシャルロット・デュノアの父親だった。

 

「(ふん? ()()がシャルロットさんの父親ですか)」

 

真季奈がこの男に直接会うのはこれが初めてだ。しかし、真季奈は知っている。よく知っている。この男のことは調べ尽くしていた。

 

デュノア社を『買う』際、彼女が最初にしたことは情報の収集からだった。それも株主達の人間性を。

 

デュノア社の株を買って奪う為にその持ち主の性格を、資金力を、弱みを、交友関係を。余すことなく調べ上げた。真季奈にとっては何のことはない、まさしく造作もないことだった。

 

 

ちょっと思考を走らせるだけ。それだけで出来た。

 

 

真季奈は体内のナノマシンを媒介にし、世界中の電子機器を通して情報を集めることのできるウィルスを拡散させている。それを用いて日本政府も既に傀儡としている。同じことをデュノア社の関係者に行なったのだ。それも、徹底的に。

 

そうしたら後は簡単だった。

 

誰を、どのようにすれば、株を差し出すのか? その答えは至極簡単だった。

 

利益を出せることを示すだけでよかったのだ。この、目の前で憤るだけの()社長よりも。それだけで、他の株主たちはこちらについた。

 

「貴様ら! こんな小娘に寝返ったのか!?」

 

「「「…………………」」」

 

この会議室には当然、他の上役たちもいる。皆、真季奈に自分の持株を売り飛ばした者たちだった。彼からすれば裏切り者以外の何者でもないだろう。

 

「……はぁ。正直、貴方が一番面倒だったんですよねぇ?」

 

「なんだと?」

 

「貴方が持っていた過半数の株を切り崩すのに使った資金。それだけでも想定以上の出費になりましたし、無駄に新株を発行してみっともなくあがいたり……無様ですね」

 

「なっ………こっ、のッ…………っ!!」

 

「やめろよ親父。もう観念したらどうなんだ」

 

「黙れ! お前も裏切者だろう!!」

 

怒り狂う元社長を止める声。それは営業部長、いや。彼の実子でありシャルロットの腹違いの兄だった。

 

その息子も、今では真季奈側の人間だ。

 

「親父。アンタなら今のこの会社を立て直せるのか?」

 

「当たり前だ!」

 

「なら、その方法は?」

 

「……それはっ!」

 

デュノア社創設の一族、その親子の会話を席に座る上役達も静かに耳を傾ける。

 

真季奈も。

 

そして、その傍らに立つシャルロット・デュノアも。

 

その娘の姿を見る。

 

「ISの第三世代を独力で開発するのか? それともまたシャルロットにスパイをさせてくるのか? IS委員会から失った信用を取り戻す策があるのかッ!!」

 

「そ、それは」

 

今のデュノア社の現状は厳しい。量産機ISシェア第三位の実績を誇る企業ではあるが、技術力・情報力不足が原因で開発できる機体は第二世代止まり。何時までも第三世代のISを開発できないことにしびれを切らした国際IS委員会からも援助の打ち切りとISコアの貸し出しも打ち切られる寸前。そこへシャルロット関連の不祥事だ。会社の株価は下がる一方で他社からの信用も失った。

 

買収されるか吸収合併か? というところで現れたのが志波真季奈だった。

 

「ありますよ。今すぐお聞かせしましょうか?」

 

「な、なんだと!?」

 

机に頬杖をついて喋る真季奈。親子の社運をかけた口論など心底どうでもいいという態度だが、誰も文句は言わない。

 

驚愕するのは元社長のみ。他の上役達は動揺すら見せない。息子もだ。

 

彼らは知っているのだ。真季奈に事前に説明されて。だからこそ、彼女の側についたのだ。

 

「まず、第三世代ISの、その装備を二つ、いえ三つ造っていただきます」

 

「はぁッ!?」

 

「あ、もちろん設計図は用意してありますし、製造のための必要な資材をその費用の計算も終わってます。試作機が組み上がるのが三日後で、テストを含めれば一週間位で完成しますね」

 

「み、三日? 一週間? それも三つ? な、何を言ってるんだ?」

 

元社長は理解が追いついていない。いや、追いつけという方が無茶だ。

 

デュノア社が総力を挙げて開発に挑んだ第三世代IS。しかし力及ばす未だに目処も立ってない。

 

それを三つも? 一週間で? 

 

それができるのなら自分達はなんだったのか。デュノア社の総力が、このたった一人の少女にも劣ると?

 

「まずは一つ目。わたしの専用機の装備である『光り輝ける運び手』の利権を日本政府から強奪しましたのでこれをフランスのものとして造ってもらいます」

 

「……は?」

 

『光り輝ける運び手』。これは基礎設計を行なったのは篠ノ之束だが実用化に漕ぎ着けたのは真季奈自身だ。故に、技術の所有権は彼女が握っている。それにこの装備は日本政府がまだ極秘扱いとして世界に発表していない技術だ。本来、IS委員会の決まりによりIS関連の先進技術は開示しなければならないちうものがあるが、それを防ぐためにIS学園へと送り込まれていた。それを逆手にとり、世界も知らない技術を自分たちが開発したと声高に叫んでしまうのだ。誰よりも早く。

 

しかしそれではシャルロットにスパイをさせたデュノア社と同じではないか? 技術を盗むのだ。やっていることは同じ。しかも、自国の技術を売り飛ばす裏切り行為だ。

 

「大丈夫ですよ。このことに関して、誰もわたしに文句なんて言えませんから。そういう風に、『お話』はすんでますので」

 

「き、貴様……」

 

不敵な笑を浮かべて喋る真季奈に、初めてこの男は恐怖し、理解した。ただの小娘じゃない。それどころか、こいつは化物だ。

 

「さて、この装備に関する仕様は後で資料を見ていただくとして、まずは商品名をフランス語読みで登録することとします。これからは『(ヴォ)(ワチ)(ュー)(ル・)(リュ)(ミエ)(ール)手』と呼んでくださいね」

 

「真季奈、皆フランス語で喋ってるからもう呼んでるよ」

 

「おや、失敬」

 

シャルロットに言われて真季奈が下を出す。日本語ならば『光り輝ける運び手』だが、フランス語で会話すれば『ヴォワチュール・リュミエール』となる。しかし、正式に改名をしなければそれはそれで面倒だ。フランス製とする装備を『ヒカリカガヤケェルハコビテェ』等と片言で発表されてもしまらない。というか、日本から盗んだことが筒抜けだ。

 

「で、あくまでもこれは流用した基本技術です。ここからが貴方たちに自社生産してもらう新技術となります」

 

真季奈がそう言うとシャルロットが会議室のスクリーンを操作してあるものを映写して見せる。

 

それはビーム兵器だった。しかし銃でも大砲でもない。

 

展開したビームを傘の様に拡げ、維持する技術の設計図だった。

 

「『ヴォワチュール・リュミエール』が光の翼なら、こちらは光の楯。光波防御帯シールドである『(アルミ)(ューレ)(・リュ)(ミエ)(ール)』です」

 

『装甲した光』。フランス語読みで『アルミューレ・リミュエール』。文字通り、光であるビームを装甲とし盾とする技術だ。

 

「光波を使う技術の大元は同じなので開発はすぐに出来ますよ?」

 

「いや、真季奈? 真季奈のモノサシと感覚は普通の人よりぶっ飛んでるから注意しようね?」

 

真季奈の『すぐにできる』は常人にとっては『頭を抱える』レベルである。

 

「そして、『アルミューレ・リミュエール』の光圧エネルギー収集機能を応用し、わたしが保有している人工衛星から集め、収束して発射する………」

 

スクリーンの画像が切り替わる。そこに映し出されたのは巨大な大砲の設計図。

 

その名は。

 

「『サテライトキャノン』です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃のデウス。

 

『平和だなー』

 

「そうですねー。死屍累々ですけどねー」

 

IS学園、ISアリーナにて。

 

デウスに負けてボロ雑巾のように積み重なった更識楯無を含む一年生の専用機持ち達。その上に腰掛ける『デウス EX ソーラレイカー』。

 

「な、なんでこんな……」」

 

「ボロ負け……」

 

「…全然強くなってない」

 

鈴も、セシリアも、ラウラも、そして簪も。皆揃ってズタボロだった。

 

『真耶。コイツらのISはどんな感じだ?』

 

管制室かにいる山田真耶にデウスは聞く。

 

「そうですね。更識楯無さんが一番変化の兆しがありましたね」

 

『ん、そうか』

 

デウスと彼女たちの模擬戦。これで与えた『お土産』による変化を見極めようとしたのだが、どうやら思わしい結果にはならなかったようだ。

 

『じゃぁ、ほかの奴らには宿題でも出して明日は楯無をボコるか』

 

「せめて特訓って言いましょう」

 

『龍』が出るか、それとも?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、サテライトキャノンだとぉッ!? なんだこれは!? 破壊力だけなら核に匹敵するじゃないか!!」

 

提示された資料を見てシャルロットの父親は叫ぶ。こんなものを造れば会社を立て直すどころではない。下手をすれば世界を敵にする。

 

「そうですか? 放射能も出ない。エネルギーは無限で威力か核以上! 最高の破壊兵器じゃないですか! どの国の軍隊も欲しがりますよ?」

 

「それがどういうことが分かっているのか!?」

 

「勿論。世界がわたしに頭を垂れることになります」

 

「まさか……技術を独占して世界を脅迫するつもりか!?」

 

にたにたと笑う真季奈に恐怖すら感じる。何を考えているのかまるで見当がつかない。

 

「ま、そんなことはしませんが。めんどいし」

 

「………め、面倒?」

 

「(確かに、真季奈ならしないなー。世界征服とか)」

 

シャルロットには分かる。『だってめんどくさいんだもの』。そう彼女の背中が語っているのを。

 

「そんなつまらない事は脇に置いといて」

 

「「「……………………………………」」」

 

常人とは考え方がまるで違う。そう思いながらも彼女が発言を固唾を呑んで待つ。

 

もはやデュノア社という組織の運命は、志波真季奈という少女のさじ加減でどうとでもなるということだった。

 

「これからのデュノア社の経営方針は宇宙開発を推し進めていくものとします」

 

「う、宇宙……」

 

「そして、先程の三つの技術を搭載したIS。その開発コードは」

 

 

 

「月の女神、『アルテイヤー』です」

 

 

それはシャルロットの『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』の改修計画だった。

 

「さて、お金儲けのお話をしましょうか」

 

 

 

 




まずはシャルロットから。

機甲神アルテイヤー。

光の翼とサテライトキャノンを装備した古代月文明の遺産である機兵です。

待機状態はエルがイヤーの角飾りとなります。

デュノア社会議は次回にも続きます。

IS学園の専用機持ち達はデウスにフルボッコ(特訓)中です。

それでは次回で。
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