IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

実は買ってた『新装版 SDガンダム外伝』も残すこと後二巻。全九巻という触れ込みで今七冊目だから多分あと二冊でしょう。

……このペースだと『機甲神伝説』で終了かな? ゼロガンダムとかそれ以降の物語も収録して欲しかった……。

なにげにこの作品を書く参考になってたんだけどなー。

ということで、今回騎士ガンダム用語いっぱいだからごめんなさい。


武の神

生徒指導室。

 

そこで、織斑一夏は憔悴していた。

 

風紀委員による尋問と拷問を受け、それに耐え続けた。気が付けばどのくらいの時が過ぎたんだろう? そう考えるほどの余裕が出来る位時間が過ぎた。

 

簡素なパイプ椅子に座らされ、しかし体は荒縄で縛られて拘束されている。正面には折りたたむことのできる長机。反対側には尋問官の為のパイプ椅子が。

 

本音を言えば、もっときつく縛ってくれたほうが気持ちいいのだがそうしてくれない。自分を責める手管も、痛みが快感に変わる前に終わって物足りない。

 

今は一人だ。監視は居ない。いや、ひょっとしたら隠れて何か失言をしないか聞き耳を立てている可能性もある。迂闊なことは喋れない。

 

「クソっ! 真季奈の責め苦に比べたら温すぎるぜ……」

 

早く真季奈に帰ってきて欲しい。

 

織斑一夏は憔悴しているのだ。ソッチの意味で。

 

しかしそんなことばかり言ってられない。どうにかして自分にかけられた疑いをとき無実を証明しなくては……。

 

 

そう、織斑一夏は志波真季奈の下着を盗んでいないのである。

 

 

「面会だ。入るぞ一夏」

 

「千冬姉ぇッ!!」

 

ドアが開き、元凶がやってきた。そのまま長机の反対側に置かれたパイプ椅子に座る。

 

姉の織斑千冬であり、一夏の持っていたパンツの持ち主だ。

 

「………………………………………ぷっ」

 

「何笑ってんだコラァッ!! アンタが原因だろうがッ!!」

 

「す、すまんっ! しかし、お前が勝手にやったことだし……」

 

「やんなきゃ困ってたのは千冬姉ぇの方だろッ!?」

 

「いや……? 別に……」

 

「そんなんだから駄目なんだよ!!」

 

バンッ! と机に手を叩き叫ぶ。というか一夏よ? いつの間に縄を解いた? あ、いや。どうやら引きちぎったようである。

 

 

「ちゃんと部屋の掃除をしろやぁああああああああああああああああッ!!!!!」

 

 

皆さん、覚えておいででしょうか?

 

志波真季奈が宿直室に住むと言い出したそもそもの原因。それは先に生活していた織斑千冬のズボラな性格のせいだと。

 

織斑一夏が真季奈不在の話を聞いたあと、ある噂が飛んできた。

 

 

最近、宿直室から異臭がする、と。

 

 

一夏はそれを聞いた瞬間、背筋に悪寒が走った。

 

いや、まさか? まだ真季奈が居なくなって一日か二日だろ? そんな訳……。

 

それでも彼は現地に向かった。そしてそこは。宿直室は。

 

腐海と化していた!!!

 

「アンタ真季奈が居なくなったからってだらけすぎだろッ!?」

 

「そ、そうか?」

 

「そうだよ!!!」

 

床には脱ぎ散らかした衣服。食べ終わった菓子や酒のツマミのゴミが大量に放置され、酒のビンや缶が所狭しと積み上がっていた。ゴミ袋は口が空いた状態でいくつも散乱し、買い物袋と混ざって部屋を狭くしていた。

 

まさに、汚部屋の復活である。

 

一夏は直ぐ様掃除を開始した。これを放置すれば学園での姉の地位は崩壊する。というか、『(ブリ)(ュン)(ヒル)()』という名声が次の日から『()()()()()()』となりそうである。

 

それはなんというか嫌だ。身内として。何よりも、真季奈にバレたらマズイ。確実に怒る。

 

ゴミを捨てて、衣類は洗濯し、散らかした物品は棚などに戻す。そうして掃除をしていると、驚くものが現れる。

 

姉の、中学の時のオパンティ~である。

 

え? まさか履いたの? 洗濯しなさすぎて着るものが無くなったから? 歳を考えろ歳を。そもそもサイズが合わないから無理があるだろうがッ!!!

 

などと心の中でツッコミを入れつつも掃除を終え、残った例のブツは情けなさすぎるので内密に処分しようとポケットに入れて部屋を出たところで。

 

運悪く、風紀委員の二人に見つかったのである。

 

これが事の真相であった。ちなみに、これは事情聴取という名の尋問の時に喋っているのだが………全く信じてもらえなかった。

 

主に、織斑千冬のずぼらすぎる生活スタイルの部分を。

 

風紀委員の二人は姉に対する理想フィルターが強すぎるのだ。

 

「でもよかったぁ。千冬姉ぇがここに来たってことは、俺の無実を証言してくれるんだろ?」

 

一夏が持ってたのは真季奈の物ではなく、自分のオパンティ~だと千冬が風紀委員に証明すればこの件は解決する。

 

「…………………………………………」

 

「え? 千冬姉ぇ?」

 

しかし、返答は沈黙だった。

 

「……おい、まさか」

 

「い、いや……なんだか、話を聞いてみると、私の下着だってバレない方がいいような気がしてきた。うん」

 

「待てやおいぃいいいいいいいいいい!! そこはっきりしないと俺このまま極刑なんだけどッ!?」

 

「で、でもお前が私と真季奈の部屋に無断で入って下着持ち出したのは事実だし……」

 

「そこで上手いこと庇ってくんないのかなァっ!? 弟と自分の世評とどっちが大切だコラァ!!!」

 

「だ、だってバレたらますます嫁の貰い手がいなくなるじゃないかぁあああああああ!!!」

 

「それが本音かこの行き遅れがぁあああああああああああああああああ!!!!」

 

まさかの自己保身! この姉、弟よりも自分の婚活をとりおった!!

 

「うわぁああああああああああああん!!! 行き遅れちゃうもおおおおおおおおおん!!!」

 

「逃げんなぁあああああ!!! 誤解といてけぇええええええええええ!!!!」

 

泣きながら生徒指導室をで飛び出していく織斑千冬。それ見た弟は絶望を知る。

 

やばい、味方がいねぇ!!!

 

「帰って来て真季奈ーーーーッ!! ヘルプ、ミィーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。

 

ブッド・キャリアーでの特訓は既に四時間が過ぎていた。つまり、内部では四日が過ぎているということだった。

 

(サン)(ダー)(ダスト)!!!」

 

『よぉし! いいぞ! その調子だ!!』

 

ISを纏った更識楯無と、その身を黄金に染めた『デウス EX ソーラレイカー』は戦い続けていた。

 

『ミステリアス・レイディ』が新たに獲得した『(サン)(ダー)(シス)(テム)』、雷の技を教え込む為に。

 

彼女が今放った技は雷を広範囲に拡散させて大勢の敵に通電させる技だ。

 

「(……凄い。新しい技が次々と!)」

 

力の使い方をデウスから習い、その技を余すことなく吸収していく更識楯無は自分が強くなっていくことを実感していた。

 

しかし、

 

『(……チッ、こんなもんじゃないだろう)』

 

デウスにとっては不満でしかなかった。

 

指導には褒めて伸ばすことも重要。デウスは口では称賛を浴びせるが、内心では舌打ちしていた。

 

まだまだ上があるだろう? と。

 

『(『雷龍大系』は、竜の一族の力はこんなもんじゃない!!)』

 

デウスの、いや、黄金神スペリオルドラゴンと起源を同じくする力。更識楯無が使っているのはそれだ。

 

 

かつて、黄金神が創造する以前の世界があった。

 

そこには最古の創造神が造った生命が溢れており、竜の一族もその一つだった。スペリオルドラゴン、マスターもその一族の出だ。

 

そしてもう一つ。龍使いの一族という者達が存在した。彼らは後に『雷龍大系』と呼ばれる雷を操る技を体得し、黄金神と覇界神の戦いの助力した。

 

デウスが更識楯無に渡した『雷龍剣』。それは『雷龍大系』の正統継承者の証。

 

彼は、この特訓で『ミステリアス・レイディ』が『龍の一族』の力を受け継ぐのを狙っているのだ。

 

 

『(なのに、全ッ然その兆候すら見せねぇ!!!)』

 

もう四日である。

 

技は教えた。力の使い方も。なのに、ISの形状など目立った範囲での変化はない。

 

デウス達MS族の感覚では、パワーアップ=鎧の形状変化である。ISだって『形態移行』するのだ。変化があれば見てわかるはずだ。

 

なのに、何も変わっていない。

 

まさか、変化を拒んでいる? 操縦者である楯無自身が?

 

それは困る。非常に困る。何せ時間がないのだ。これ以上彼女一人に時間を割くわけにはいかないのだ。

 

な の で。

 

大変心苦しいことではあるが、デウスは強硬手段に出ることにした。

 

『おいこら変態生徒会長。さっさと特訓を完成させんかマゾ』

 

「え、なにッ!? いきなり喧嘩売られてるの私!?」

 

安い挑発です。

 

ブッド・キャリアーの内部は異空間となっている。まるで重力のない宇宙空間のように互いの立ち位置が狂っている。

 

二人の距離は五十メートル程。高低差でデウスが上、更識が下である。

 

デウスが上から見下ろす形になり、右手二本でチョイチョイっと手招きしている。

 

オラ、かかってこいや、と。

 

「……いいわよぉ。こっちだって今とこに閉じ込められてイライラしてるんだからぁっ!!!」

 

デウスに向かって更識が飛ぶ。その手にランスを携えて。

 

『(ハルバートではない、かっ!)』

 

デウスも手にした剣で迎え撃つ。両手に持つのはバーストスライサーだ。同じ形の二本の剣に炎を纏わせる。

 

『オーラ斬りぃいいいいいい!!!』

 

(サンダ)(ーバリ)(アント)!!」

 

ランスに纏わせた雷が斬撃となってデウスを襲う。それに向い打つのは炎の斬撃。

 

雷と炎が踊る。剣とランスがぶつかり合い、エネルギーが暴れて辺りを照らす。

 

『そこっ!』

 

ランスは右で受け、残った左で更式を突く。炎の剣は伸び、更識を貫通した。が、楯無の体は大きな水の塊となって崩れ落ちる。

 

「それは水で作った虚像よ!」

 

『知ってるよ』

 

デウスの背後から楯無が蛇腹剣『ラスティー・ネイル』で切りかかる。デウスはそれを新たな剣で防ぐ。

 

「三本目!?」

 

『シャインランサー』

 

黄金の盾を基部に両側から剣が伸びたランス。それの片側の剣に蛇腹剣を巻きつけて動きを止めた。

 

「ッ! クリア・パッション!!」

 

『……………………………………』

 

楯無が蛇腹剣を離して距離をとる。そして、デウスの周囲が爆発した。

 

先ほど水の塊となった縦なしの虚像が内部のナノマシンの放熱で一瞬で気化し、水蒸気爆発をおこす。デウスはそれに巻き込まれたが……?

 

「嘘、無傷!?」

 

『この程度で俺に傷一つつけられるものかよ』

 

そこには先ほどと何ら変わらぬ姿で立つデウスの姿があった。デウスの全身を黄金の光の膜が球体となって包んでいた。

 

ゴッド・シールド。デウスやエクスワイバリオンと合体した一夏が使う絶対防御を超えた神の守り。これを破ることができるのは、同じく神の領域の力のみ。

 

「それ、反則だと思うんだけど?」

 

『お前が俺に渡した力を使いこなせれば問題なくなるさ』

 

デウスの言うことは本当である。

 

もしも楯無がデウスの言うとおり、その力を使いこなすことができるようになればデウスすら倒せるようになる、筈なのだ。

 

『なのにこの程度とはな。ガッカリだよ。なにが学園最強の生徒会長だ』

 

「あら? だったらこれはどうかしら!?」

 

ランスにアクア・クリスタルからの水流が集まる。それは螺旋状に絡まり、ナノマシンによって超高周波振動を巻き起こす。

 

その技の名は『蒼流旋』。蒼き水流を纏ったランスが、デウスのゴッド・シールドに突き刺さる。

 

『どうした? 一ミリも刺さってないぞ?』

 

「ホント、軽くショックよね!」

 

アクア・ヴェールで造った翼で加速し突き立てたランスがまるで通じない。ランスに内蔵された四門のガトリングガンも効果はない。

 

なんて巫山戯た防御。冗談でなく、まさしく神の領域だ。

 

「だったら、これでどう!?」

 

防御に回している装甲を形作っているアクア・ナノマシンすら全てランスに集中させる。全出力の一点集中攻撃。防御を捨てた楯無の最大攻撃。

 

『ミストルテインの槍』。防御を捨てているため、使えば自身すら大怪我を負いかねない大技。しかし、この一撃しかこの防御を破れそうな威力は出せそうにない。

 

「はぁああああああああああああああ!!!!」

 

瞬間、大爆発が巻き起こる。

 

その爆発に、放った本人すら吹き飛ばされた。

 

「うぅっ……ど、どう?」

 

どうなった? それを確かめるため、打ち付けられた身体を起こしてデウスを見る。

 

「………嘘、でしょう?」

 

そこには、先ほどと全く同じく佇む、無傷の黄金神が立っていた。

 

『……………はぁ』

 

溜息をつき、デウスは頭を抱える。

 

なんとなく、理解したのだ。

 

更識楯無の欠点に。

 

『………お前、満足しているな?』

 

「ッ!?」

 

無機質な機械の相貌が楯無を射抜く。彼女を指差し、言葉で突きつける。

 

『更識家の当主で。ロシアの国家代表で。IS学園最強の生徒会長で。簪の目標となる姉で。だからこれ以上強くなる必要はない、もう十分だ。そう考えているな?』

 

「そ、そんなことッ!」

 

『ついでに言えば……これ以上強くなったら妹からもっと距離を置かれるのが恐い。だが、国防の為に強さは必要だという矛盾に行き詰まり上を目指すのを躊躇っている、か?』

 

「そんな訳ないでしょう!?」

 

声を荒らげてランスを振るう。デウスは避けようともしない。しかし、いくら振り下ろしてもそれが届くことはない。ゴッド・シールドが壁となって阻むからだ。

 

『ま、お前からしちゃぁ楽なもんだよなぁ? 適当に手ぇ抜いて、出がらしの妹のご機嫌とってりゃ周りへの面目は立つからなぁ』

 

「黙りなさい!」

 

ランスに雷光と怒りを纏わせて突きつける。それを払い、デウスは跳び眼前に迫る。

 

『簪を引き合いに出されると途端に平静でなくなる。いや、平静であろうと努めてポカをするのか……未熟だな。それも妹のせいにするのか? 『全部、簪ちゃんを傷つけないためにやってるのよ?』と言って』

 

「ち、違う……そんな事、思うわけないじゃない!!」

 

楯無の動揺を緑に光るデウスのツインアイが射抜く。機械ゆえに無機質なその双眸には冷たさしかなかった。

 

『だったら、見せてみろッ!!』

 

「きゃぁ!?」

 

楯無を掴んで投げる。そこへ、シャインランサーを分解した槍。二振りの『エクスランサー』を投擲する。

 

「のっ、何本持ってるのよ!」

 

楯無は自分に向かってくる二本の銀槍を蛇腹剣をふるって弾き飛ばす。そこへ間髪いれずにデウスが迫る。

 

『来い! エクスワイバリオン!!』

 

「それは!?」

 

現れたのは黄金の翼竜。赤き翼、黄金のボディ。それが分解し、一つの巨大な竜槍剣『エクスレイカー』になる。

 

エクスワイバリオンはデウスが織斑一夏に与えた大幻獣。しかし、あくまでもそれは貸し与えただけ。真の主はデウスだ。呼べは現れるのが道理だった。

 

そして。織斑一夏とは違う、その圧倒的な威圧感!!

 

『ハァッ!』

 

エクスレイカーを振るう。黄金の刀身に輝くオーラを纏わせて放った一撃は、閃光となって楯無を襲う。

 

「キャァアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

閃光剣。自身のエネルギーを黄金のオーラにして刀身とする一撃。本来の主が放ったそれは。、織斑一夏が放ったモノを遥かに凌駕する。

 

立ち上る巨大な光の柱。それを正面から受けた楯無の機体は、アクア・ヴェールを剥ぎ取られ、剥き出しの装甲を晒す。

 

『貴様は所詮、自分の弱さを隠す臆病者だ! 更識の使命! 学園の守護! 妹を守る姉! 全部背負い込もうとしていくつもこぼしていく! そんな無様な女に、何が守れるものかぁあああああああッ!!!』

 

デウスの拳に光が集う。それは球状に収束し、倒れ伏す楯無へと放たれた。

 

装甲は既に機能を果たしておらず、彼女の身体も既にボロボロ。その攻撃を受ければ無事ではすまないだろう。

 

それでも、デウスは容赦などしなかった。

 

そして、それは正しかった。

 

着弾した光球が弾かれた。更識楯無が持つ、

 

 

巨大な三叉槍に形状変化したランスによって!

 

 

「………………………なによ」

 

『白金のハルバートではない………だと!?』

 

その形状に、デウスは目を疑った。

 

彼が更識楯無に渡したのは『雷龍剣』。雷の一族が代々受け継いできた『雷龍大系』の結晶、その集大成。ならば、彼女のISが辿り着く姿は『龍機』。聖なるドラグーンが所持した『白金のハルバート』の筈だった。

 

しかしそれは三叉槍。ハルバートではない。

 

だが待て。

 

雷の一族。白金のハルバート。その起源は?

 

『…………まさか』

 

デウスは知っている。あの三叉槍を見たことがある。

 

正確には、その内に眠る古代の記憶が。

 

「なによ、なによ! なによ! なによッ!!!! 分かった風に言うんじゃないわよッ!!」

 

彼女が立ち上がる。

 

三叉槍から溢れる金色の雷光を纏い、それを剥き出しの装甲へ定着させて。装甲は形状を変え金色に染まる。胸と右肩の装甲が龍の頭部のような形状となり腰部に蛇腹剣が接続される。背部には追加ユニット『麗しきクリースナヤ』を装備し二枚の翼が左右に大きく広がる。

 

そして、再充填されたエネルギーがアクア・ヴェールを展開させ、『麗しきクリースナヤ』による超高出力モードによって水色だった機体を赤く染め上げる。

 

赤と金の鎧に龍の装飾。手に持つ巨大な三叉槍。

 

それを、その姿を。

 

黄金神はこう呼ぶことを、知っていた。

 

『武闘神、デュエルカイザーだとぉッ!!?』

 

それは最古の創造神。

 

かつて、黄金神が世界を創出する以前の世界の創造神。

 

雷の一族の先祖である『龍使いの一族』や、スペリオルドラゴンという光の竜の出身である『竜の一族』を生み出した神の名、姿であった。

 

『(………ハッ! 先祖返りしやがったのか!?)』

 

『武闘神』に生み出された、『龍使いの一族』。彼らの子孫にドラグナージーグという男がいる。彼こそが『雷龍大系』の開祖であり、『龍機ドラグーン』は彼と『武闘神デュエルカイザー』をもして造られた。

 

そして龍機の専用武器である『白金のハルバート』は『武闘神』によって授けられたもの。

 

『雷龍剣』に込められた『雷龍大系』の力を更識楯無が引き出した結果、その起源を古代までさかのぼったとしたら?

 

「いいじゃない! 疲れたとき、苦しい時に甘えたって! 私だっていっぱいいっぱいなのよ! 子供の頃から家を継ぐための修行って人生ハードモードなんてものじゃないわよ!! だったらちょっとくらい休んだっていいじゃない! 何が悪いの!?」

 

三叉槍の外側二つから雷の刃を発生させて更識楯無がデウスに肉薄する。出力の跳ね上がった加速性能が距離を瞬く間に無くしその一撃を届けさせる。

 

それを、デウスは初めて防御した。

 

突破されると感じたのだ。ゴッド・シールドを。

 

『それを理由に足を止めるな! 弱さから逃げるんじゃない! 家の重圧も、妹との関係も! 苦しさから目を背けずに向き合ってみせろ! それができずに何が『最強』か!?』

 

エクスレイカーで三叉槍の一撃を受ける。デウスの灼熱の翼の加速と、楯無の赤き翼の突貫力はどちらも引けを取らず、打ちあった武器は軋みをあげる。

 

「それができたら苦労しないわよ! 家のことも頑張って簪ちゃんと仲良く遊んで! それだけ叶えばそれでいいのよ! これ以上私に何をしろっていうのよぉッ!!!」

 

更識の右肩の龍が顎を開く。そこから覗くのは砲身。

 

『!? チィッ!』

 

ゼロ距離からの砲撃がデウスを襲う。咄嗟に武器を手放し後ろに距離をとって躱すが、無事とはいかなかった。三叉槍での突撃で右目のカメラが潰れた。龍砲は極太のビームを吐きだし、咄嗟に出した赤き竜頭のシールド、ソーラーマスクで受けた。ゴッド・シールドの守護と盾での守り。

 

それでも、龍砲の勢いは止まらない。

 

『ッ、ホーリーシールド!!』

 

赤いソーラーマスクに取り付けられた星十字の付いた黄金の盾。それはシャインランサーの基部であり、ゴッドシールドに次ぐデウスの最強の守り。盾から黄金の光の膜が発生し、龍砲を防ぎ爆炎を巻き起こす。

 

『お前の大事なものを、お前の弱さの言い訳にするな! それは強さの糧にするものであって逃げ口に使うものじゃない!!』

 

「強くって……これ以上どうしたらいいっていうのよ!」

 

『世界最強』には織斑千冬がいる。その後釜に最も近いのは姉妹弟子の志波真季奈だろう。なら、IS学園生徒会長の証である『学園最強』は? これはいずれ妹に譲るつもりだ。未練は、ない。最愛の妹が、自分を追い越すことを目指す更識簪にならその座を明け渡すことなど、むしろ本望で……。

 

『強さを求めることに終わりなどない! 最強を名乗るなら、『()()最強』ぐらい名乗ってみせろッ!!』

 

爆炎が晴れる。

 

そこには、右手に黄金のソードを掲げる、黄金神の姿があった。

 

『スペリオルソード!!!』

 

それは細身のバーストスライサーとは違い、肉厚のある太身のソード。右腕に一体化しているのでないかという程巨大で、刀身は黄金に輝いていた。

 

「勝手なことばかり言わないで! 私の道は、私が決める!!」

 

アクア・クリスタルから大量の水が放出される。それは楯無を包む巨大な水龍となり、内部のナノマシンが放電しプラズマを纏わせる。

 

 

「プラズマドラグーン!!」

 

 

雷の龍が三叉槍を構え、正面から突撃する。

 

それを迎え撃つは光の竜。

 

『覚悟ありか! ならばこちらも、それに応えよう!!』

 

ソードを正面に突きの姿勢で構え、翼を広げる。

 

剣先と、広げた翼の後方二つ。三箇所に円形の魔方陣が出現する。

 

『スペリオルの名を継ぐ騎士が放つ最大法術! その名は!』

 

三つの魔方陣からそれぞれ巨大な光の竜が首を出す。三匹はその顎を大きく開く。

 

 

『ファイナル・ドラゴン!!』

 

 

竜の口から三つの閃光が放射される。一つ一つが太陽の熱量に匹敵するそれは一つに収束し、突撃するプラズマドラグーンを迎撃した。

 

だが。

 

「はぁああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

突き出された三叉槍へ着弾したビームを切り裂き、『武闘神』は突き進む。

 

『(!? ………化けたか!)』

 

それはデウスにとって嬉しい誤算。

 

『黄金神』に並ぶ者、『武闘神』。

 

竜と龍。同じ力を持つ同胞の出現。

 

故に。

 

『フフフッ、フハハハハッ、ハーーーーーーハッハーーーーーっ!!! 最大出力!!!』

 

光の竜の吐き出す砲撃が威力を増す。一回りも、二回りも太くなった光の束が雷の龍とぶつかり合い、大爆発を巻き起こす。

 

その爆発はこの場に広がる異空間の許容量を越えブッド・キャリアーですら耐えきることができなかった。

 

第4アリーナに置かれた三機の花弁の内一つが大爆発を起こす。溢れ出すエネルギーは天を昇り、光の柱を立ち上げる。その中心で、

 

 

二人の竜/龍神がぶつかり合う。

 

 

 

『閃光斬!』

 

「雷鳴斬!」

 

 

光の剣と雷の槍が交差する。光の柱が消失したとき、立っていたのは光の竜だった。

 

「………くっ!」

 

『フ、フッ』

 

三叉槍を杖に、片膝を付く雷の龍。が、

 

『…………見事!』

 

デウスの身体はボロボロだった。装甲は所々砕け、左腕は肩からもがれている。楯無の突撃、その三叉槍が持っていったのだ。

 

そこで黄金の巨体が崩れ、地に伏した。

 

「おねーさんにおいたした罰よ………」

 

そう言って、更識楯無は一人、勝鬨の拳を挙げた。

 

 

 

更識楯無…………特訓、四日(四時間)で無事完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、フランスでは。

 

「む?」

 

「どうしたの真季奈?」

 

時刻は朝五時半頃。

 

デュノア社であてがわれた休憩室兼、真季奈の私室で目覚めた彼女は、

 

「? 今、織斑一夏に呼ばれたような?」

 

遠く、日本からの電波を受信していた。

 

俗に言う、『織斑一夏センサー』で。

 

一緒に起きたシャルロットはそれを聞くと、

 

「(…………真季奈、もしかして疲れてる!?)」

 

本日の真季奈の勤怠スケジュールを見直すことを決意した。

 

特に、彼女の兄との会食時間を。

 

「さぁ今日もバリバリ働きましょうー」

 

「うん。じゃぁ今日はね………」

 

さっ、と起き上がって支度を始める。今日も仕事は山積みだ。

 

しかし、

 

「(もしもの場合はアレを使う準備をしておきますか……)」

 

遠く、IS学園のある方を向きながら。志波真季奈はまたもよからぬことを考え始めていた。

 

「(お爺ちゃん達の働き次第、ですが……)」

 

「真季奈ー? 頼むから変なこと考えないでねー?」

 

あ、バレた。

 

シャルロットはさり気なーく、真季奈の悪巧みに感づきやすくなっているようである。

 

 

 




そういうことで。

『学園最強』の更識楯無さんには、カードダスで単体主人公最強のゼロガンダムこと、『雷龍大系』の継承者関係でパワーアップです。

あと、楯無さんの心情もチラッと。溜めてた不満は発散させてあげないと胃にきちゃうから……。デウスの暴言は。彼、ワザと煽ってます。


補足として。

・武闘神デュエルカイザー(元モチーフ:V2アサルトバスターガンダム)
最古の創造神。龍関係の一族の大体の大元。知らない人はカードダスを見てください。

・龍使いの一族
龍と共に生きる一族。雷の技を使える。族長はガンダム00のアリオス。超兵器ドラグーンパレスを建造し、龍の力と雷の技で乗り込み操る(まさに電池)

・ドラグナージーク
噂じゃ、龍使いの一族の子孫とも、別宇宙からの放浪者とも言われている。ややこしい。便利な言葉「時間の流れが違うから」。『雷龍大系』の開祖。武闘神から白金のハルバートを貰ったり、龍機ドラグーンを建造?

・雷の一族
ドラグナージークや龍使いの一族の子孫。代々『雷龍剣』と共に『雷龍大系』を受け継いでいる。最強のゼロさん。後の、黄金神の使いっぱ。悲しいね。

ついでに。

・嵐の一族。
覇界神を裏切った近衛騎士団・乙女座の女性騎士と、龍使いの一族の男性の間に生まれた子孫の一族。子孫であるアサルトバスターが武闘神と同じV2ガンダムがモチーフなのもこのため(という後付)

・プラズマドラグーン
雷龍剣の中にいる雷の龍。

・ファイナル・ドラゴン
ゲーム『SDガンダム英雄伝』初出。

主人公マインが乗る機兵『スペリオル騎士ガンダム』の必殺技


騎士ガンダム用語はここまで。


まさか続いた織斑一夏の誤認逮捕物語。予定になかった長編ということです、はい。

シャルロットの変態オヤジはどこかでまた出したいなー。


それでは次回でまたお会いしましょう!


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