そしてぷらもんの誕生日でもあります。
この日にこの話を投稿するのは実は偶然ですが、ある意味必然……?
それでは今回も酷いですので、皆様お覚悟を。
どうぞ。
デウスは追われていた。
正確には、デウスを抱えている人物が追われていた。
IS、『ゴールデン・ドーン』を身に纏ったスコール・ミューゼルである。
「貴様ーッ! 学園内でISの無断展開は校則違反だぞ!!」
「あら? それは専用機を持っていない僻みかしら? 織斑千冬?」
「そうね。そこが私達とデウスさん、そしてブリュンヒルデとの格の違いってやつよ!」
全身装甲である『銀の福音』を身に纏ったナターシャ・ファイルスがスコールを追いながら便乗して織斑千冬を煽る。
そして、ISを纏って高速移動を続ける二人に普通に走って追いついている織斑千冬は既に色々とおかしい。
「黙れ! この金さん銀さんがッ!!」
「「その言い方やめなさい!!」」
装甲が金ぴかのスコールと、全身が銀ぴかのナターシャに千冬が叫ぶ。なんだか長生きしそうな呼び方である。
『というか何故俺を連れて走っているんだ!? 降ろせ!』
スコールに抱えられている柴犬姿(全身包帯まきまき)のデウスが叫ぶ。体がボロボロの状態なので、逃げたくても思うように抜け出せないのだ。
彼、彼女達はこの追いかけっこをIS学園全域を使って行なっていた。理由? 女の意地と男をめぐってである。
『くそぅ……身体が万全ならこんなことには………ん? あれは何をやっているんだ?』
そこで、デウスが気づいた。
第1アリーナで開催されている珍事に。
三人と一匹が足を止めてアリーナの方を見る。何やら大勢の集まりが騒いでいるようだった。
「? あんな所でイベントの申請なんてあったかしら?」
学園の警備員を務めているナターシャが疑問に思う。もしもアリーナを貸し切ってのイベントがあれば、その保全の為の審査を警備員である彼女は聞かされている筈なのだ。
しかし彼女は何も知らない。
保健医であるスコールは。
「そういえば、生徒たちが下着泥棒が出たとか噂してたような……」
保健室を出入りする女生徒たちからの噂話を思い出す。それを聞いたデウスは、
『え? 俺、そんな噂聞いてないぞ?』
更識楯無の特訓でブッド・キャリアーに篭っていたので当然知らなかった。
「確か、女子の部屋から男子がパンツを盗んだとか」
「………………男子?」
『………………えっと』
スコールが聞いた噂を思い出しながら言う。この学園に男子など一人しかいない。
『なぁ千冬。一夏は今………』
「…………………………知らないもん」
織斑千冬はそっぽを向いていらっしゃる。
その時点でもう『私は隠し事してます』と言っているようなものだ。
『黙秘権はありません。吐かんかコラ』
「や」
顔を背けて頬を膨らませる二十六歳独身教師。
「………………」
「………………」
『………………』
いい年して可愛い子ぶるなよ。と言いたい面々だったが、自分へのブーメランになるから言わないのが大人。
なんだか悲しくなってきた。デウスは顔を残った前足で覆うと、
『…………確保。で、強制連行』
「「……了解」」
「き、貴様ら止めろ! 嫌だ! 私は知らない! 知らないもん!!!」
二人と一匹で捕縛にかかる。
織斑千冬。法廷での重要参考人として連行決定。
「被告人の罪状を述べよ!」
「ハッ! 被告、織斑一夏は志波真季奈の生活する宿直室に侵入し、その場で彼女のものと思われる女性用下着を無許可で持ち出すという行為を犯しました。つまり、住居不法侵入並び窃盗罪が適用されると思います!」
「冤罪じゃボケェエエエエエエエエエエエエ!!!」
第1アリーナで裁判が行われている。観客席は満員。ほぼ全校生徒が集まっている。お前ら暇なのか。というか、授業はどうした?
裁判官は風紀委員の二人。篠ノ之箒と織斑マドカだ。
被告人は織斑一夏。
罪状は下着泥棒による、住居不法侵入と窃盗である。
本人は冤罪と言い張っている。
だって盗んだのは真季奈おパンツではなく姉のパンツだもの。
………あれ? 結局盗みは働いてるよね?
肉親とはいえ姉も一人の女性。
その部屋に忍び込んで衣類を無断で持ち出すなど、バレれば家族会議待ったなしである。
それがこうして、家族会議どころか学園裁判となっているのだ。
慈悲は、ない?
「ならば聞こう!」
「な、何を?」
裁判官、箒が声を張り上げて一夏に言う。
「真季奈のパンツとお前の友人、五反田弾のパンツ! 落ちていたらどっちを拾う!?」
一瞬、全裸の弾がパンティを履いている姿を想像して……吐き気がした。
「そんなもん真季奈のに決まってるだろう! ……ハッ!?」
「有罪!!」
「おのれ誘導尋問とは卑怯なッ!!」
いや、お前バカだろ。
「織斑一夏に裁きを!」
「「「ギルティ! ギルティ! ギルティ!」」」
アリーナが沸き立ち、裁きの声を上げる。
一人の変態の為に、学園の女子たちが!! …………そりゃそうだ。
「よしっ! ではマドカ! 今すぐこの変態を拷問室に……」
『その判決、ちょっと待ったァッ!』
「何奴!?」
裁定を下し一夏を連行させようとする箒に待ったをかける声がした。
そいつらは空から降ってきた。
『デウス! 装備を整え、リペアで復活!!』
現れたのは青い鎧に身を包んだ片目で隻腕の騎士。無い左腕を黒いマントで隠し、無い腕では持つことのできない盾は右手にくくりつけてその手に炎の剣を持った『デウス EXリペア』である。
その後ろにはISを纏ったスコールとナターシャが控えている。あと、織斑千冬もいた。何故かIS用の拘束ワイヤーで簀巻きにされていたが。
「デウスか!? その姿は一体……?」
一夏が驚くのも無理はない。デウスのその姿。真季奈も知らないその姿。それを見た者は誰もいないのだ。
デウスの纏っているのは勇者の鎧。青き鎧『霞の鎧』。緑色の盾『力の盾』。赤き剣『炎の剣』。三種の神器と呼ばれる伝説の装備だった。
『ご覧のとおり体がボロボロなんでな。黄金の鎧は復活エネルギーの為に温存しているのだ』
「な、成程……確かにボロボロ、って何があったんだお前?」
聞かないであげて。
デウスが普段身に纏う黄金神の『黄金の鎧』。これには黄金神の象徴たる太陽のエネルギーが込められており何度も『復活』することができる。……そのエネルギーが尽きない限りは。
『子供の裁判ごっこは終わりだ! ここからは俺達大人が取り仕切らせてもらう!!』
「どういうことだデウス!?」
箒やマドカを指さしてデウスが高らかに叫ぶ。
『一夏の容疑を晴らしに来た! 重要参考人の提出を要求する!』
「なんだと!?」
異議あり!! という字幕が出てきそうな勢いだ。
『さぁ千冬! さっさと前に出てきてぶぐあぁはぁっ!?』
そこへ。
「デウス!?」
お空から何かが。
「これは、パラシュートか!?」
降ってきてデウスの顔面に直撃した。
「飛んで火にいる真季奈ちゃん!」
「「「真季奈!!??」」」
空に開け放たれたアリーナへ落ちてきたパラシュート。それを使って降下してきたのは志波真季奈だった。そして上空には滞空する未確認飛行物体が。
「お前フランスにいたんじゃ!?」
「飛んできた!」
文字通りである。
箒の疑問は真季奈が答えたとおり、空に浮かぶ飛行型社長室ピースミリオンによって答えられる。
音速を超えるそれの速度によってまっすぐこのIS学園にまで移動してみせたそのフットワークの軽さ。
代償として、
「はい! はい! 本当に申し訳ございません!!」
「その件は既に許可をいただいております! ですからッ……えぇい! 責任者を呼んで来い!!」
ピースミリオン内部でデュノア兄妹による関係部門への大謝罪大会が繰り広げられていた。
それはさておき。
「さぁ! わたしに無断で織斑一夏を虐めてたのは誰ですか!? その手段と関係者のリストと織斑一夏が受けた仕打ちに対してどんな反応を示したのか! 四百字詰めの原稿用紙十枚でまとめて提出しなさい!!」
「地味にめんどくさい!!」
「お前いつもそんなこと考えてるのか?!」
「逆に尊敬するわ!!」
織斑一夏の観察は真季奈の生活の八割を占めています。
「これは……裁判ですか? どうせ織斑一夏がわたしのパンツを盗んだとかそんな罪状なんでしょう!」
「お前知ってるじゃないか!?」
「ハッ! このわたしに調べられないことがあるとでも!?」
「怖いよ! どうやって調べた! ホント自重してくれないかな!?」
大体の事情はこちらに向かう道すがら、学園中と織斑一夏に仕掛けた盗聴器と風紀委員の活動記録をハッキングして調査済みであった。つまり、真季奈は既にこの件についておおよその流れというものを掴んでいるのだ。
「全く、詰めが甘いですね風紀委員! 貴方たちは一つ大きな見落としがあることに気づいていません!!」
「なんだと!?」
真季奈が自信満々に箒へと宣言する。お前達は間違っていると。
それは、
「織斑一夏がわたしのパンツを盗む? 笑止! そのネタは既に使用済みです!!(十六話参照)」
「いやなんの話!?」
織斑一夏をパンツネタで弄るなど、真季奈にとっては既に使い古したネタなのだ。
「そもそもこの男は尻よりも胸派! パンツを盗むのならブラを持っていなければおかしいのです!!」
「「「ハッ!?」」」
「お前ら何「あ、そうか!」みたいな顔してんの!?」
真季奈の言葉にアリーナ中の女子たちが目から鱗が落ちような気分になった。そうだ、この男の変態っぷりはパンツどころでは収まらないのだった。
「さらに言えば! 織斑一夏はわたしの使用済みストッキング(未洗濯)を所持して『使って』いる! 今更わたしのパンツを盗む必要などないのです!!」
「「「うわぁ(ドン引き)」」」
「アンタとんでもないこと暴露すんなぁああああああ!! え!? なんで!? なんでそんなこと言ったの!? ねぇ!!」
真季奈が暴露した織斑一夏の情事。それに女子たちは素で引いた。気持ち悪いと。そして、一夏はそのことを把握している真季奈にただ恐怖するしかなかった。というか、明日から学校に通うのが怖かった。女子の目が痛い。
「だが現にパンツはここにある! これはどう説明する!?」
箒が証拠として例のパンツを真季奈に見せる。しかし、そのパンツが彼女のものでないことは真季奈自身が熟知している。
「ハッ! そもそもそれが間違いなのです! それはわたしの物ではありません!」
「なんだと!?」
今更な事実ではあるが、これが真季奈の物だと決めつけていた風紀委員たちにとっては寝耳に水な話だった。
「そのパンツは確かにサイズだけならわたしの物と同じ! ですが、そのゴムが伸びきってゆるゆるな時点でわたしが履いたものではない!!」
「で、ではこのパンツは一体……?」
同室の真季奈は知っている。それが師のものであることを。織斑千冬の履き古したビンテージもののパンツだということを!
そのことを高らかに宣言しようとして、
「そう、そのパンツは………あ(察し)」
「………………………………(ふるふる)」
涙目で首を振る、織斑千冬と目があった。
あ、はい。ひょっとして、バラしたら悲しいことになっちゃいます? と真季奈は千冬の目を見て悟った。
「(というか、何故簀巻き?)……あー、その。そのパンツはですね……」
「なんだ? このパンツは誰のものだと言うんだ!? それともやはり口から出まかせか!?」
急に歯切れの悪くなった真季奈に好機とばかりに箒が畳み掛ける。
さて、どうしたものか?
あのパンツが真季奈のものでなく織斑千冬のものと言うのはたやすい。しかし、それをすれば彼女の権威は失墜する……かもしれない。今と大して変わらない気もするのだが。
そしてふと目についたのが足元のデウスだ。
『おい、真季奈……さっさと足をどけろ』
「あ、そういえば踏んでましたね」
デウスは真季奈の知らない姿をしていた。設計者の知らない姿を、だ。それが意味すること。それは、彼がすでに真季奈の理解できない存在になってしまったということ。
進化しているとも言えた。
真季奈が足をどけると、デウスは立ち上がる。青い鎧姿が日に当たって眩しかった。
「………(そうだ!)。そのパンツが誰のものか、教えてあげましょう!」
「なんだと!?」
「真季奈ぁ!?」
笑みを浮かべて真季奈が高らかに叫ぶ。
箒は驚き顔を浮かべ、千冬が絶望を感じた。
そして、真季奈は。
「それは、デウスのパンツです!!」
『はぁ!?』
「お?」
「「「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!??」」」
その女物のパンツの持ち主はデウス。その言葉に皆が驚愕した。そりゃそうだ。
「その伸びきったゴムがその証拠! そしてデウスが織斑一夏と同じ部屋で過ごしていることが、ポケットに入っていた理由です!!」
「……うげぇ」
成人男性の姿でパンティのゴムを伸ばしながら履いているデウスを想像して箒が顔をしかめた。マドカもだ。というか、アリーナ全体がそういう雰囲気だった。
『おいこら真季奈ァッ!? お前なんて事言うんだ!!』
そんなことを言われたらデウスとしてはたまったものではない。抗議するが、
「そうですよねデウス?」
『阿呆か!? 違うに』
「デウス?」
『だから』
「 デ ウ ス 」
『……………はい、その通りでございます』
「「「(押し切ったーーーーッ!!)」」」
真季奈の笑顔の圧力に押し負けた。
そして、真季奈の圧力に屈したデウスは変身する。
男の娘、柴女黒ノ子ことメッちゃんの姿に。
片目隻腕なため、本日は眼帯ゴスロリ仕様での登場です。
「も~! いっきゅんたらメッちゃんのおパンツ持っていくなんて、ダメなんだぞ~! …………いっそ殺せェェェ」
きゃる~んと登場して吐く言葉は媚びたものだが、後半は呪詛に近かった。なるほど、これが『くっ殺』と言う奴か(ちがいます)。
「デ、デウス………その、このパンツは本当にお前の……?」
「そうだぞ☆ マドカちゃん」
「あ、はい。そうですか」
思わず敬語である。敬いの意思はない。あるのは心の壁である。
アリーナにいる女子たちはというと。
「女装ショタのパンツを盗むとか、織斑くん変態すぎ……」
「デウスちゃん意外と可愛いわね(じゅるり)」
「攻めのデウス! 受けのメッちゃん! これは薄い本も厚く、いや熱くなる!!」
「デウイチが王道と見せてまさかのイチメッ!? しかもおパンティを取り上げての鬼畜プレイ!? 腐ぉぉおおお男男男男男男!!!!!」
「今年の新刊は決まったぁああああああああああああ!!!」
「もちろんあのパンツは織斑くんがめメッちゃんに履かせるんだよね! ね!?」
なにこれ酷い。
IS学園の女子は、なんというか、その。色々と手遅れの様子である。
こうして裁判も終わりを迎え。
デウスには女性用下着を身につける真性の女装男というレッテルがつき、一夏は女装男子のパンツを盗む変態にグレードアップした。
「これで疑いも晴れましたよ! 良かったですね二人とも!!」
「『良くねぇよボケェェッ!!!』」
さて、それでは解散! という塩梅になったところで。
「フハハハハハハ! 君の紳士パゥワーはその程度かね? 織斑一夏君!!」
「な、誰ですか!?」
天より聞こえる声があった。
日差しを背にし、逆光に立つのは一人の男。
上半身の逞しい筋肉をさらし、下はストッキングを履いたガーターベルトとハイヒール。顔は女性用のパンティを仮面にし隠す。
その男、
「「「へ、変態だ―ーーーーーーッ!!!!!」」」
まごうことなき変態だった。
「あ、貴方は!?」
その姿に、織斑一夏は衝撃を受けた!
「君には見どころがある! さぁ私と共に行こうではないか! この紳士道を!!」
「させるか死ねぇ!!!」
「シャル!?」
さらにIS、『ラファール・リヴァイブ・アルテイヤー』を身に纏ったシャルロット・デュノアが現れる。その手には巨大な砲塔、サテライトキャノンを構えて。
そんな騒ぎが巻き起こる第1アリーナを余所に、更識楯無は半壊した第4アリーナに来ていた。
「簪ちゃん……」
ブッド・キャリアーの内部で特訓を続ける最愛の妹を待つために。
既に彼女たちが内部で特訓を初めて十時間近く経っている。つまり、一週間以上の時間が中で過ぎているということだった。
そして、
「!? 開く!」
二つの花弁が同時に光を放つ。花が開き咲き乱れる。
中からは。
「「「キシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」」
凶暴化した四闘神が飛び出してきた!!
この日起きた騒動はまだまだ治まらないようだ。
変態が出ました。皆様、落ち着いて・火器を構えて・射殺する。お・か・しを心がけてください。
織斑一夏が変態なのは学園では周知の事実ですが、デウスが女装ショタになるのはまだ一部だけの認識でした。今回で全校生徒に知れ渡りました。
あと、真季奈は一夏の『全部』を知っています。朝起きてから寝るまでナニをしているのか、ずっと見てますので。
そして現れた謎の変態紳士……一体どこのデュノアなんだ?
デウスが今回新たな姿を見せました。これは古代の勇者ガンダムの姿です。この時の装備が後の三種の神器であり、騎士ガンダムが手に入れたりバーサルの鎧に加工されたり、神聖騎士ウイングの鎧になったりする、かなりリサイクル可能な鎧となっております。
次回、変態と闘神たちの乱舞 でこの騒動も占めますのでもう少しお付き合いを。
それではまた。感想待ってます。
悲報:新装版SDガンダム外伝に機甲神伝説は未収録の模様!