IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

今回のお話は、29話と30話の間の物語です。

真季奈達が臨海学校にて過ごした楽しかった初日の一晩の光景をどうぞ。




臨海学校の愉快な夜

さて、海で起こったオパーイ信仰の騒ぎの後。

 

志波真季奈以下、IS学園の生徒達は『花月荘』にて臨海学校初日の疲れを癒している最中だった。

 

そういうわけで、大広間三つを繋げた大宴会場でIS学園の生徒一同は夕食をとっていた。

 

「刺身にスキヤキ、美味しいですがカロリーが気になるところですねぇ……」

 

「「「台無しだよ!!!」」」

 

生徒一同のツッコミである。まぁねぇ。

 

美味しいご飯に水を差す志波真季奈の姿があったとさ。

 

「志波さん? ご飯美味しくない、の?」

 

彼女の隣に座る織斑一夏の問いかけ。しかし真季奈は。

 

「いえ? とても美味しいですよ? 唯の感想です」

 

「……そうですかい」

 

「はは、は」

 

織斑一夏を挟んだ反対側、そこに座るは同じく一年一組のクラスメイト。シャルロット・デュノア。彼女も苦笑いである。

 

彼女を含め、生徒は全員が旅館の浴衣を着ていた。なんでも、食事中は「着用義務」らしい。なんじゃそら?

 

しかし、IS学園と言えば世界各国あらゆる国籍の少女が集う場所。なのに彼女達は日本の浴衣を見事に着こなしていた。

 

つまりは、ノリノリである。

 

さすがのIS学園クオリティであった。

 

『真季奈、俺の分は?』

 

……デウス、貴方は充電と乾電池が主食でしょうが。部屋に戻るまで待ってなさい。

 

待機状態の相棒の相手をしつつも真季奈の食事は黙々と続いている。

 

しかし彼女は忘れていない。

 

織斑一夏をどうコケにしてやろうかと。

 

それだけを考えての食事だった。

 

隣を横目でうかがう。

 

憎き織斑一夏は料理の内容に一喜一憂して忙しいようだ。というかそんなに高級魚の刺身が嬉しいか? 全く、浅まし過ぎて貧乏くさいにも程がある。

 

あ、ペラペラとうんちく垂れてたらシャルロットさんが本わさの塊を食べちゃった。丸ごと、ぱっくりと。

 

うわ……、涙目で美味しいと言ってますよ彼女。なんて健気な……。

 

いや、不憫ですね。そんなシャルロットさんに対しても好感度というか、何にも感じていないようですよ? この男、やはりホモか?

 

ちょっと嫌がらせをしてやりましょう。うん。

 

みんなー? 本わさいらない子はちょうだーい? え? いーよー。

 

おぉー、皆さんありがとうございます。ちょっと声をかけたらそこからどんどん隣へ隣へと伝言ゲームのように「本わさ頂戴」というお願いが伝わっていき、それが端まで伝われば今度は物が山のようになんて集まってきました。

 

と、いうわけで。

 

集まりましたよ。山のようにこんもり盛りだくさんの本わさ。

 

さて、一度ここで皆さんに説明しておきましょう。

 

「本わさ」。日本特産のアブラナ科の多年草で、山葵(わさび)のことです。主におろして料理の付け合わせにすることで辛味と風味を愉しむ調味料です。

 

織斑一夏がやたらめったら感動しているのは、料理にこの「本わさ」が使われているから。市販のチューブに入ったわさびは実は言うとワサビダイコンという食品を加工し辛味と風味を再現した代用食品で、「本わさ」を食べられる機会など一介の高校生には到底無理だとの賜っております。

 

まぁ、わたしは食べ慣れておりますが。

 

すいませんねぇ、これでも財力のある日本代表候補生ですので。接待なんて受け慣れておるんですのよオホホのホ。

 

と、まぁ話がそれました。

 

それでは始めましょうか!

 

「織斑一夏」

 

「ん? なんだい志波さん?」

 

ちょいちょい、と織斑一夏の肩をつついて呼びます。それに即座に反応するその姿勢、マジきもい。

 

「はい、あーん♥」

 

「       」

 

「「「!!!?!?!??!?!?!?!!?」」」

 

ピシィッ!!

 

場の空気が凍りました。

 

 

 

 

 

 

 

俺は何を見ているんだろう?

 

織斑一夏、とてつもない選択肢に迫られてます!!

 

(志波さんのあーん、だとっ!?)

 

正直、今すぐ彼女の差し出すお箸にかぶりつきたいところであります!!!

 

しかし!

 

(何故に山盛り本わさぁああああああ!??)

 

彼女が突き出すは、本わさの塊。それがご飯のお椀に山のように盛られていた。

 

鼻先に突き出されるお箸。その先からツン、と漂ってくるわさびの風味。

 

それを食えと? 何故に?

 

ちなみに。

 

「あーん♥」

 

(もの凄い笑顔なんですけどおおおおおおおおおおおおおお!!!)

 

可愛いです! すっごく可愛いです!! だっていつも殺意の波動を放ってる志波さんが女神のような微笑みなんですもの!!

 

なにこれ抱きしめたい! でも目の前には本わさ!? 食わなきゃどうしようもないのこれ!?

 

(………うわぁ、皆見てるよー)

 

隣のシャルは顔真っ赤にしてるし、鈴はツインテールを大回転させてるし、セシリアは一昔前の少女漫画みたいな顔になってるし、ラウラは無線機を取り出してどこかに連絡してるし、箒は……あ、真剣抜いてますね。やばい。

 

千冬姉ぇ? はは、さっきドラム缶とか灯油とかブツブツ言って出ていったよ……。

 

そして目の前には笑顔で「本わさ」をあーん♥してくる志波さん。

 

………逝くか。

 

「い、いただきまーす」

 

ぱくっ、………うーん、この鼻を突き通るほのかな辛味ッ!? フォワっ!? ~~~~~~~~~~ッ!!!!!!

 

「ふふっ、美味しいですかー?」

 

「お、おいしいでひゅー」

 

涙が出るほど美味しいです!! ちくしょう!! 

 

「よかったですねぇ。まだまだ一杯ありますよぉ?」

 

うん、あるね! 文字通り、一杯に山盛りだよ!!

 

「はい、あーん♥」

 

そう言って、次を差し出してくる。

 

「わーい、う、嬉しいなー。本わさサイコー……」

 

その後、真季奈の持ったお椀の中の「本わさ」が空になるまでの間。織斑一夏の奇怪なダンスが見ることができたそうな。

 

 

ふくしゅうばんがいへん♥ : 織斑一夏にわさびをあーん♥

 

けっか♥         : とても愉快な身悶えっぷりでした♥

 

びこう♥         : とってもキモイです♥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、愉しい食事も終わりました。

 

ある者は部屋でくつろぎ、ある者は花月荘自慢のお風呂に、そう!

 

「お風呂☆タイムですよ!!」

 

「「「そのカメラはなんだ~~~~~~~~~~!!!!!????」」」

 

女子一同はお風呂、いや、温泉に入っていた。

 

何故か一名、防水仕様の一眼レフカメラを持って。おいこら。

 

「はっ! 何を言っているんです!? 女子高生の入浴シーンですよ!? 裸体ですよ!? いくらになると思っているんですか!!!」

 

「こいつをつまみ出せ!!」

 

「カメラを取り上げるんだ!」

 

「まさか外部に売りつける気じゃありませんわよね!?」

 

一組の女子一同、裸体にバスタオルを巻いて猛抗議をしつつ各々臨戦態勢を取る。

 

ある者は真季奈を取り押さえようと、ある者はカメラを奪おうと、ある者はこっそり浴場から抜け出そうと………。

 

「させませんよ!?」

 

「「「チクショウ!!」」」

 

脱衣場への扉の前に立ちふさがる真季奈。

 

決して獲物は逃がさない姿勢。

 

それは!

 

「すでに箒ちゃんとラウラちゃんには予約が入っているんですからね!!」

 

「「ちょっと待て!」」

 

なんで!? 誰に!? 

 

真季奈の意外な言葉につい待ったをかける当の二人。まぁ自分のいやんな写真にすでに買い手がついていると聞かされれば無理もないだろう。

 

「いやぁ、ラウラちゃんはいわゆる『萌え』キャラとして人気が高いんですよ」

 

「も、モエ?」

 

「ロリ体型に眼帯、軍属とあらゆる属性を持ちながらときに幼子のような純真無垢な面を見せるラウラちゃんに、IS学園のお姉さま達はもう母性本能を刺激されまくってきゅんきゅんハァハァ大興奮でちょろい金づるなんですよ!!」

 

「知るか!!」

 

とんでもなかった。いやマジで。

 

「そして箒ちゃん!!」

 

「ひぃ!? な、なんだ?」

 

こっちにも矛先が来た。勘弁して欲しいと彼女も思う。しかし箒に逃げ場なし!

 

「あなたときたらもう、抱かれたい男前女子部門、食べちゃいたい後輩部門、《ピーーーー》したい部門でNo.1と三冠王なんですよ!?」

 

「知りたくなかったわーー!!!!」

 

明日からどうやって過ごしたらいいのかわからない!!

 

「という訳で撮らせろ! 裸体を!! わたしの小遣いになれーーーー!!!!」

 

「「イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」」

 

混迷の女子風呂待ったなし!!!

 

どうなったかなんて見せられないよ!!

 

 

 

 

 

 

 

『で? 一夏お前、ホモなのか?』

 

「違うよ!? 何言ってんの?!」

 

ところ変わって男湯。こちらでは唯一の男子、織斑一夏と雄の黒柴犬、の形をしたISの待機状態デウスが入浴中だった。

 

犬が鏡の張った洗い場の前で椅子に座り、湯口を回してシャワーを浴びながら頭をシャンプーで洗ってても突っ込んではいけない。いけないよ?

 

その隣で同じようにして体を洗いながら織斑一夏はデウスにもの申していた。正直まだ若干口の中がわさびの辛味でピリピリするような気がしないでもないが、そこは必死に我慢していた。

 

夜寝られるかなぁ?

 

そして一夏はデウスの背を洗ってやる。その次はデウスと交代だ。

 

お前ら仲いいな。

 

『いや、だってなぁ? 向こうの仕切りを隔てた女湯からの赤裸々トークを聞いて愚息が反応しないどころか赤面すらせんとは……』

 

「失敬な!? これでもドキドキしてますよ!!?」

 

デウスは疑っていた。この男がホモなのかどうかを。

 

だって、

 

①箒のシャワーをラッキースケベで覗く。

 

②鈴にベタベタくっつかれるという過度なスキンシップをスルー。

 

③セシリアにオイルを塗る。

 

④シャルと混浴。

 

⑤ラウラとベッドでくんずほぐれつプロレスごっこ(意味深)。

 

これほどのことをしでかしておきながら今だ童貞とは………。

 

『お前、まさか………不能か?』

 

「俺泣いていいよね!? 違うから!! ちゃんと機能してるから!!」

 

『うわぁ……だとしたら余計に情けねぇ』

 

「俺がどれだけ自制心と忍耐力を振り絞ってると思ってんだよ! これでもギリギリなんですよって!!」

 

『………………』

 

「止めて! そんな目で見ないで!! どうせ情けない男ですよ!!」

 

つまりこの男、ヘタレであった。

 

『いい機会だ。正直に吐いてみろよ? どこまでギリギリだったんだモテモテ君?』

 

「モテモテ?」

 

『……噛むぞ?』

 

「えっ!? なんで!?」

 

……こいつは脳味噌が機能不全を起こしているんじゃないのか? 

 

自身の『感情』を構成するAI、0と1で埋めつくされたそれですら理解できる人間の恋愛感情を何故この人間の男はそのひと欠けらすらも察することができないのか……。

 

織斑一夏とデウス。『恋愛感情』という問題について、もはやどちらが人間で機械なのか理解に困る状況であった。

 

「……というか、ぶっちゃけた話、千冬姉ぇで見慣れちまった……」

 

『お前それ男としてどうなんだオイ?』

 

水桶に入ったお湯を頭からかぶりつつデウスが尋ねる。

 

弟よ。姉とはいえ女ぞ? と。

 

「だって千冬姉ぇ……家では半裸で練り歩くし、下着は脱ぎ散らかして洗濯は全部俺にやらせるし、トイレで紙がきれたからって普通に俺に取ってこさせるし、泥酔して帰ってくると絡み酒になるわ泣上戸になるわでめんどくさいし……」

 

『………うん、なんかごめん』

 

女捨ててるにも程があるぞ織斑千冬!? それと酒癖悪いなおい! 絶対一緒に飲みたくねぇわ!!

 

織斑千冬と酒を酌み交わすことなどありませんように、とデウスはこの時思った。

 

しかし、この願いが天に届くことはなかったという……。

 

 

こいつを縛り上げろーーーーーーーー!!!

 

ちぃっ!? まだだ! まだ終わらんよ!!

 

タオルで巻き上げるんだ!! 放りだせ!!

 

 

せーーーーーっ、のっ!!!

 

 

にゃぁああああああああああああああああああああ!!!

 

 

 

「………こんな状況でどう意識しろと?」

 

『ウチの相棒がすんません』

 

女湯から聞こえてくる惨事の情景。

 

色気も何もありはしなかった。

 

あーあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「卓球でもしましょうか」

 

「え、なんで?」

 

お風呂上がりの真季奈ちゃん。遊び相手を探してウロウロしていたら織斑一夏と遭遇しました。

 

ちなみにデウスはおりません。箒、セシリア、鈴、ラウラ、シャルロットも纏めて千冬先生のお部屋でOHANASIの最中です。

 

「旅館、温泉とくれば卓球でしょう」

 

「なんという様式美。でもいいな、じゃぁ娯楽室行こっか」

 

娯楽室。旅館によってはあったりなかったりするこの遊び場には様々な遊具が設置されている。

 

例えばゲーム。一昔前までゲームセンターに置いてあったような筐体が何台かあり、これが意外と面白かったりする。ちなみに有料。一回100円である。他にもスロットやクレーンゲームなどもあったりするのだが。

 

やっぱりあるのがこの卓球だ。どんな旅館にもなぜかある卓球台。温泉卓球という名前すら生まれるほど温泉と卓球はもはや切り離せないものなのだろうか?

 

「まぁそこのところはいいですけど、先客がちらほらと居ますね」

 

「あー、うん。入れてもらおっか」

 

卓球台まで来た真季奈と一夏。しかし既に何人かの生徒が卓球で遊んでいた。これはまぁしょうがない。早い者勝ちである。

 

「あれ? 織斑くんだ!」

 

「織斑くんも卓球するー?」

 

「「「ッ!? お疲れ様です志波さん!!!」」」

 

「うむ、くるしゅうない」

 

「なんなの君ら!?」

 

織斑一夏を見かけた卓球少女たちの反応は獲物を見つけた肉食動物のそれだったが、真季奈を見たとたん一気に捕食され側の草食動物にまで成り下がった。怖いね。

 

「わたし達も卓球をやりたいのですが」

 

「どうぞ!」

 

「……あの、そこまで畏まらなくても」

 

頭を下げて最敬礼の姿勢で卓球のラケットを差し出してくる名もなき卓球少女。さすがの真季奈もびっくりだ。

 

「「「いえ、姐さんにそんな!!」」」

 

「……全部あなたのせいです!!!」

 

パァン!! ラケットによる顔面への殴打!!

 

「ありがとうございます!!!」

 

織斑一夏は痛みを和らげる特殊な性癖をしています。結構痛いので真似してはいけません。良い子の皆はやっちゃダメだよ?

 

と、まぁ。

 

織斑一夏と志波真季奈による卓球での試合となりました。

 

「勝った方にはジュースを奢るということで」

 

「異議なし!」

 

真季奈にしては随分と安い条件だ。つまり、

 

(クケケケ、目的は結果じゃなくて過程ですよ織斑一夏ぁ!!)

 

真季奈からのサーブ。彼女はピンポン玉を放り投げ、ラケットを構える。それを迎え撃つ為に織斑一夏もまたラケットを構えた。

 

が、

 

「波動球!!!」

 

「ぐぼぉおおおおおおおおお!!!?」

 

ドゴォオオオオオン!!!

 

「「「ピンポン玉からしちゃいけない音がしたぁああああああああ!!!!」」」

 

真季奈の繰り出したサーブ。その一球目から既にクライマックスだった。

 

哀れ、織斑一夏。顔面に喰らって壁にまで吹き飛んでいった。

 

「し、志波さん……今のは……?」

 

あ、しぶとい。

 

「ふっふっふ、わたしの波動球は百九式までありますよ?」

 

「本家より多いだと!?」

 

「まだわたしのサーブ権ですよ!?」

 

「え、いやちょ」

 

またも構える真季奈。さっきのピンポン玉はご臨終されました。

 

「えい」

 

「あ、あれ?」

 

コーン、と軽くラケットがピンポン玉を叩く音がする。実際、先程の威力はなんだったのかと疑うレベルの緩いサーブだった。

 

なので織斑一夏も簡単に打ち返せた。

 

だけど、

 

「消える魔球!!」

 

「ピンポン玉が消えた!?」

 

とか。

 

「分身魔球!」

 

「どれが本物!?」

 

とか。

 

「ハエも止まる、ゆ~~~~~くりな魔球」

 

「お、おぉーーーっと!?」

 

などと次々と繰り出される魔球に翻弄される織斑一夏であった。

 

「というか志波さん!? どこで覚えてきたのそんな技!!?」

 

「織斑先生と遊んでたら自然と」

 

「もうやだあの人外!」

 

「あなたの姉ですよ?」

 

「コンチクショウ!」

 

そんなこんなで織斑一夏の得点はゼロのまま、真季奈の勝利まであと一点というところまで来ていた。

 

「くそぅ、このまま何もできないまま終わるのか……っ!」

 

……一夏、一夏よ。

 

その時、織斑一夏の脳裏に直接彼を呼ぶ声がした。

 

「この声は……デウス? デウスなのか!?」

 

「……とうとう脳が……やりすぎましたか?」

 

それを残念な人を見る目で真季奈が見ていた。

 

……一夏よ、相手の球をコートの両端、左右に大きく振って打つんだ。

 

「そ、そうすれば勝てるのか?」

 

……いや、そうじゃない。よく見ろ。真季奈が来ている服を。そして、膨らませろ! 己の欲望を!!

 

「志波さんの服……浴衣……はっ!?」

 

そのとき、織斑一夏に電流が走った!!

 

「いや、なんなんですか一体?」

 

珍しく志波真季奈、おいてきぼりである。

 

まぁ一夏の奇行、これはタイミングよく状況を把握したデウスがISのプライベート・チャンネルで通話しただけなのだが、IS(天蓋王orデウス)を所持していない真季奈には分からず、織斑一夏に至っては真季奈との死闘(卓球なのに)の中、おかしな脳内物質が溢れてテンションがおかしいせいでもあるが、深くは考えないようおこう。

 

「うおぉぉぉ!! いくぞ志波さぁああん!!!」

 

一夏のサーブ。小手先も何もない唯の一球だが勢いだけはあった。それを真季奈は無難に打ち返す。

 

「きゅ、急にやる気を出してきましたね?」

 

「そぉい!!」

 

パァン!!

 

返ってきた球を織斑一夏は真季奈のいる位置の真逆、コートの反対端へと撃ち込む。

 

「よっと! っちぃ!?」

 

軽い半歩分の横跳びで移動し、真季奈はまたも打ち返した。これも小手先なしの返球。しかしやや姿勢が悪かった。ピンポン玉は織斑一夏の打ちやすいフォアサイドへと入った。

 

「そぉい!!」

 

絶好の位置に来た球、それをまたも真季奈のいる位置の反対側へと打ち返す。しかし解せないことが。今のはスマッシュを打ち込める一球だった。しかし織斑一夏が打ったのはコートの外側ギリギリを狙っただけの送球だった。

 

当然、真季奈なら間に合う。

 

しかしギリギリだ。小柄な真季奈だからこそ全身を大きく伸ばし、腕を振りかぶって打ち返した。

 

「てぇい!」

 

カンッ!

 

それもなんとか、といった様子で織斑一夏のコートへと返球された。それをまた真季奈のいる位置の反対側へと……そんな打ち合いのラリーを何度も繰り返していく。

 

すると、

 

ススッ!

 

「!? あっ!」

 

「! うおりゃぁ!!」

 

「おっと!」

 

もう少しというところで真季奈に気づかれそうになる。慌てて一夏は打ち返す。真季奈にラリーの手を止めさせるわけにはいかないのだ。

 

そう、

 

「(もうすぐ、もうすぐ志波さんの胸チラぁああああああああああああああああ!!!!)」

 

真季奈の浴衣が着崩れてきているのだった!!

 

何度も卓球台のコートを左右へと反復横飛びを繰り返し、腕を大きく振り続けるうちに真季奈の着ている浴衣は肩口から徐々にずり下がり脱げ始めていたのだ!

 

ちなみに織斑一夏の浴衣はもう上半身が完全に脱げていた。腰に巻いた浴衣の帯でかろうじて全裸をまぬがれている状態である。うわぁ変態だ。

 

「まさか、これは!?」

 

「もうちょっとぉ!!」

 

しかし、そんな変態を目の当たりにしていれば当然真季奈も気づく。目の前の変態の思惑に。

 

「こ、この変態が!!」

 

「何が? 俺はただ真面目に卓球をしているだけだぜ!?」

 

カァン!! 

 

なおもラリーは続く。真季奈の浴衣は徐々にはだけていき、今や肩口にかろうじて掛かっている状態だ。

 

そしてとうとう……。

 

「あっ!」

 

「おぉぉ!!?」

 

真季奈の伸ばした手が、ラケットをピンポン玉に届かせようとする腕が、その動きが、とうとう真季奈の肌を晒す。

 

それを織斑一夏は卓球台を挟んだ反対側から見る。背中から白い肌がのぞき、そこから首元のうなじ、肩甲骨から伸びる腕と脇が見え、そこから脳内に永久保存物の視覚情報が飛び込んでくる!!

 

「!? 横ち」

 

「死ねやぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

「ぎゃぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

メキャァッ!!!

 

ブンッ、と残像すら残せそうな速度で真季奈が腕を振り、投げられるは手に持つラケット。それが織斑一夏の顔面へとめり込むほどの勢いで投げつけられる。

 

視界が潰され、顔面への痛みと衝撃で後ろへと倒れる織斑一夏。しばらく床で痛みに悶えた後に流れるは顔面からの鼻血。

 

その血はなんの血? ラケットの一撃による流血? 

 

それとも………?

 

「最っっっ低っっ!!!!」

 

はだけた浴衣を着直し、しっかりと帯びを締める。倒れる織斑一夏を見るは、まるで生ゴミを見るような不快な視線。

 

「死ね! カス! 変態!! 盛りの付いた駄犬が!! 去勢してやるこのゴミクズ!!!」

 

「ありがとうございます! ありがとうございます!! もっと言ってください!!!」

 

ガスガスと何度も蹴り飛ばすは織斑一夏の顏や腹。蹴って、踏みつけてグリグリと体重を載せて痛めつける。

 

しかし気持ち悪いかな。この男、恍惚の笑みを浮かべて悦んでいるしだいである。

 

まさしく変態の姿であった。

 

「うわぁ」

 

「織斑くんマジドM」

 

「これってある意味プレイだよね……?」

 

明日以降の織斑一夏の学園生活が不安だった! でも大丈夫、評判はもうとっくにやばいよ!?

 

「待って! ちょ、待って志波さん!!」

 

「なんですかこの変態!!」

 

蹴られながら織斑一夏が待ったをかける。

 

「蹴るならスリッパを脱いでくれません!?」

 

真季奈や一夏らは皆、旅館のスリッパを履いている。埃や汚れが気になったのか? いや、

 

「裸足で顔を踏むことを希望します!!」

 

「この汚らわしい変態がぁああああああああああああ!!!」

 

「ぎゃふぅぁっ!!!?」

 

望み通り裸足で蹴ってやった。

 

股間を。

 

織斑一夏の二つのピンポン玉が砕け散ったという………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景を、柱の影から「家政婦は見た!」のような体制で覗いていた機械犬、デウスがいた。

 

『い、一夏……、認めよう。お前はホモじゃない……まごうことなき、ドMの変態野郎だ!!』

 

カッ! と漫画の集中線がデウスの顏の周りに集まってきたような気がしたが、目の錯覚だろう。

 

この後、織斑一夏は用意されていた寝袋で簀巻きにされ、当初の予定通り廊下で一晩を過ごした。

 

真季奈葉というと、怒りのあまり同室の者たちを戦々恐々させていたがセシリアの空気緩和のための苦し紛れの話題、「篠ノ之束との接触」を聞いて別の意味で臨戦態勢になっという。

 

しかしそれは、また別のお話で。




はい、今回も酷かったですね(笑)

とにかく一夏の変態性を強く書いてみました。

真季奈はこれが通常運転です。(酷い)

ちなみに没になったネタに、ISを使って空中から女湯を覗こうとした織斑一夏を、ロケットランチャーを構えた真季奈が笑顔で撃墜する、というものがありました。

書きたかったですが、番外編で本編に影響のありそうな事態はやめとこうかな、と。

でも気づいたんです。

あ、ギャグキャラ補正で全部元通りにすればよかったなぁ、と。


それではまた次回で。

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