IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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大晦日ですね。そして新年です。

あけましておめでとうございます!

注:バケツ用意!


大晦日物語

12月31日、大晦日。

 

時刻は23時と、今年が終わるまであと一時間といったところ。

 

そんな年の暮れの織斑家。

 

そこでは。

 

「織斑一夏ー、そろそろコタツの上かたしちゃってくださーい」

 

「あぁ、うん。ほらマドカも何時までもみかん食べてないで手伝えって!」

 

「うるさい! もうちょっとで白いところをはがし終わるんだ!」

 

「いるよねー。みかんの白い筋を全部はがしてから食べる人……」

 

台所で年越しそばの準備をする志波真季奈。その手伝いをする織斑一夏。こたつでみかんの皮を延々とはがし続ける織斑マドカ。そして、安定期を迎えた大きなお腹の妊婦、篠ノ之束。

 

もうすぐ新年という織斑家に集いしこの四人。仲良く年をこそうとしております。

 

「真季奈ちゃーん。何か手伝おうかー?」

 

「いいから黙って座ってなさい!」

 

居間にてコタツの中から束が声を上げるが、それを一刀両断、断固たる言葉で断る真季奈。

 

「妊婦は大人しく座ってなさい! はい、手打ちの年越しそばですよ! ボケっとしないで手伝いなさい!!」

 

「「はい!!」」

 

お盆にそばの入った器を載せて真季奈が台所から出てくる。真季奈に一括されて慌てて動き始めるマドカとコタツの上を片付けていた一夏。一つ、二つとそばが並べられ、

 

「はい、マドカちゃんと束義母さん。それと」

 

真季奈はマドカ、束、自分の分とそばを置いていくと最後に一夏の前にそばを置いた。

 

「はい、ちゃんと三分待つんですよ?」

 

「わーい、真季奈がお湯入れてくれたそばだー………ってなんで俺だけカップ麺!?」

 

一夏の目の前に置かれたそば。それはお湯を入れて三分でできるインスタントそばだった。ひでぇ。

 

「実は材料が偶然一人分足りなくて」

 

「手打ち麺だから作為的なものにしか感じない!」

 

「かき揚げもちゃんと入っていますよ?」

 

「天ぷらを人数分買ってない時点でわざとだよね!?」

 

「早くお湯入れないと年越しちゃいますよ?」

 

「入れてすらなかったの!?」

 

「それじゃ、いただきましょう」

 

「「いただきまーす」」

 

「お願い待って!! 俺を置いて年を越さないでぇぇっ!!」

 

 

 

 

ところ変わって篠ノ之神社。

 

「おーっす。寒いのにお疲れ、箒」

 

「む、デウスか。と、織斑先生もこんばんはです」

 

「あぁ、こんばんは、篠ノ之」

 

売店で御神酒を配っていた巫女服姿の篠ノ之箒のところへ、コートを着たデウスと織斑千冬が連れ立ってやってきた。冷やかしである。

 

「……二人だけですか?」

 

「一夏ならこんぞ?」

 

「真季奈がこの寒空の下、新年のカウントダウンに合わせて初詣になど来るはずがないだろう?」

 

「クソぅ、あの出不精めぇ……」

 

この二人だけが初詣に来た理由。それは単に他の者が来たくないといったから。

 

曰く、

 

『初詣ぇ!? この寒い中行くわけないでしょう!! 大晦日はコタツに入ってガキ使見るんですよ!』

 

『真季奈が行かないなら俺も行かなくていいや』

 

『紅白見たい……あぁッ! チャンネル変えないでー!』

 

『束さんはもちろん行かないよ! もう私一人の体じゃないからね!』

 

とのこと。

 

「姉さんをそちらにお願いしたのは私たちですが……迷惑をおかけしていませんか?」

 

年末年始は神社の書き入れ時。神主さんも引っ張りだこ、巫女さんはバイトを雇って人員増加。そんな大忙しの日に妊婦の篠ノ之束に構っている暇なし。ということで、昔から懇意である織斑家で預かってもらっている次第である。

 

まぁ、そもそも。

 

志波真季奈は篠ノ之束と義理の親子である。今から家族仲を深めさせようという親戚からの思惑もあったりするのである。

 

「ところで箒。この遠くから聞こえてくる鐘の音は……盛大寺の除夜の鐘か?」

 

デウスが言う鐘の音。それはこの篠ノ之神社ではない遠くの地から聞こえてきていた。ゴォーン、ゴォーン、と鳴り響くその音はすでに五十数回を越え、時期に百八になるだろう。

 

「ん? あぁ。そうだ。毎年大晦日の夜は盛大寺の住職さん手ずからの鐘の音で年の瀬を締める、というのがこの街の通例だな」

 

「そうか。………通りで」

 

「どうしたんだ?」

 

箒の確認を取ったデウスは苦虫を潰したかのように顔をしかめていた。それを不思議に思う千冬や箒。訳を聞くと、

 

「あそこの住職さんの法力は本物だ。さっきから鐘をひと突きするたびに鐘の音が届く範囲の邪気が浄化されてやがる」

 

「「はい?」」

 

……オォォォォォ……モエガーロリショタブルマニエイコウアレー……イモウトバンザーイ………。

 

「「……………………………………」」

 

「変なことにならなければいいんだがな……」

 

 

 

 

ゴォーン、ゴォーン。

 

「もうすぐ今年も終わりかー。色々あったなーホント」

 

「ありすぎだと思うけどねー。いっくんはむしろ良く無事に年を越せたとものだと思うよ?」

 

あんたが言うな。

 

年越しそばをすすりながら、俺こと織斑一夏は束さんとテレビを見ながらたわいもない話をしていた。信じられるか? この人、今年中に世界を終わらせかけたんだぜ?

 

「なぁ一夏よ。元旦になったらお正月遊びをやってみたいんだが」

 

「ん? 羽根付きとか凧揚げとか? おぉいいぜ」

 

マドカも我が家の一員としてずいぶん馴染んだものである。戸籍上俺の妹なのだがまさにそのものである。

 

「そうだ。真季奈は正月になったらなにする?」

 

「そうですね。お餅搗きをしてお雑煮でも作りますか」

 

「うわ、本格的」

 

さすがである。実質、織斑家の主権を完全に掌握しつつある彼女なら餅をつくための臼や木槌を既に手配していそうだ。というか、多分している。

 

「おせちも作ってありますから、今晩はもうこれ以上食べちゃダメですよ?」

 

はーい、と俺たちが返事をする。うむ、実にまったりとしたいい年の終わりかたである。

 

このまま寝てしまうべきか、初日の出まで起きているべきか、実に悩みどころだ。

 

「あ、束義母さんは早めに寝てくださいね? 徹夜で寝不足とか、お腹の子供にも悪いですし」

 

「ガーン! まぁしょうがないよねー。大人しく早めに寝るさー………て、あれ? 真季奈ちゃん、頭から黒い蒸気が出てない?」

 

「はい?」

 

え? 束さん何言ってるの? 真季奈の頭からそんなもの出ているはずが…。

 

「……って!? 嘘だろッ!? 本当に煙でてる!!」

 

「ままま真季奈!? それは新手の発明か!?」

 

ゴォーン、ゴォーン!!!!

 

「どうかしましたか?」(パアァァァァ!!!)

 

うわっ! まぶし!!

 

なんということでしょう。まるで真季奈の中の邪気や煩悩が浄化されていくかのように、真季奈から汚れが消え、後光がさし始める。その光、まさしく菩薩級。

 

「い、一体何が!?」

 

プルプル! プルプルプルー! 驚きの最中、突如俺の携帯電話が鳴り響く。デウスからだった。

 

『もしもし一夏か? そっちは何か変わりないか?』

 

「大変だデウス! 真季奈が、真季奈が綺麗な真季奈にっ!!」

 

『あー、やっぱりそうきたか……気にするな、どうせ一晩で元に戻る。今のうちに甘えておけ』

 

ブッ! と、それだけ言ってデウスは電話を切った。なんだったんだ?

 

とにかく、どうしたらいいんだこの状況?

 

「あ、ねぇ一夏。もうすぐカウントダウンですよ?」

 

「え、う、うんそうだね。もうすぐ今年も終わるね」

 

「来年はどんな年になるんでしょうねぇ」

 

「少なくとも、俺は相も変わらずハラハラドキドキな一年になると思うよ」

 

「ふふっ、変な一夏」

 

四角い正方形なコタツ。その四辺に座っている四人。一人は神々しいまでの笑顔を振りまき、残り三人はそれに戦慄した。

 

「「「(な、ナチュラルに一夏と呼んでいる!?)」」」

 

何が怖いって。つい先ほどまでフルネームに侮蔑を込めた呼び方だった『織斑一夏』が、柔らかく『一夏』と呼んでいる。

 

敢えて言おう。

 

恐ーい。

 

「わ、わたしそろそろ寝るね! おやすみ!!」

 

「私も初日の出を見るために早起きをしなくてはならないんだ! だから先に寝させてもらう!!」

 

逃げた。触らぬ真季奈に祟りなし。篠ノ之束と織斑マドカは睡眠という逃避を選んだ。

 

残されたのは織斑一夏と志波真季奈のみ。

 

「……………………………」

 

「……………………………」

 

すくっ、と真季奈が立ち上がる。そのまま彼女は台所に消えていき、また居間に戻ってきた時にはその手に重箱を持っていた。

 

「えと、真季奈それって」

 

「おせちです。そういえば味見をまだしてもらっていなかったので」

 

そう言って重箱の蓋を外す。中には出汁巻き卵に栗きんとん、田作りに黒豆、その他もろもろと敷き詰められていた。

 

一夏の前に置かれた重箱の一段目。真季奈は彼の隣に座る、いや、コタツの同じ面に足を入れて入ると箸を持った。

 

「(ち、近い!)で、でもいいの? もう食べちゃって」

 

「はい。だって……」

 

5、4、3、2、1、ハッピーニューイヤー!!!!

 

「もうお正月です」

 

点けていたテレビの番組が新年の訪れを告げていた。

 

「はい、あーん」

 

「あ、あーん」

 

真季奈が出汁巻き卵を箸で掴んで一夏の口に持っていく。それに素直に従って頬張る一夏。味の方はというと、

 

「美味しいですか?」

 

「……とても美味しゅうございます」

 

「よかったぁ。でしたら、はい田作り」

 

「ごまめが全然苦くない……はらわたもきれいに取り除かれていて……おいちいです」

 

そう、美味いのだ。ポイズンクッキングや毎日酢豚。そんな偏った味付けでなく基本に忠実、かつ味わい深い一品。これが、おふくろの味!?

 

「あれ? おかしいな、涙がでてきた」

 

さっきまで一人カプ麺だったのにね。

 

それからも、二段目、三段目と一口づつ味見していく。どれも美味しく真季奈に食べさせてもらった。

 

「ごちそうさま」

 

「はい、お粗末様でした。それじゃ、これはまた明日の為に片付けちゃいますね」

 

重箱を積み重ね、蓋をしてまた台所へともっていく真季奈。それを一夏は見送ると、

 

「(や、やっべーーーーーーーーーーーーーッ!! なにこれ!? 新年早々、俺の幸運使いすぎじゃね!?)」

 

顔を真っ赤にさせ、コタツのテーブルに顔をうずめると先程までの『あーん』が途端に恥ずかしくなった。

 

「こ、これ以上のご褒美はないよな? な?」

 

先程の電話。デウスの言葉が思い返される。

 

『今のうちに甘えておけ』

 

「い、いやこれ以上甘えろって……いいのか!? 怒られないか俺!?」

 

誰に? 

 

「? どうかしたんです?」

 

「!? な、なんでもないです!」

 

真季奈は台所から帰ってくると再びコタツに入って……。

 

「あ、あのー、真季奈さんや?」

 

「はい?」

 

その前に。

 

「お願いします。膝枕をご所望します」

 

コタツから身をスピニングジャンプ脱出土下座を成功させて、一夏は真季奈に最上級のご褒美をねだった。

 

「いいですよ」

 

「やっぱりダメ……えっ! いいの!?」

 

まさかのご褒美、延長だった。

 

コタツに、一夏の隣に再び入った真季奈は正座をしその膝をポンポンと叩く。

 

おいでおいでと。

 

「し、失礼しまーす」

 

ゴソゴソとコタツの布団の中で動いて真季奈の膝の上に頭を置く。その時、重要なのは顔の向きだ。うつ伏せか仰向けか。顔を真季奈の太ももに埋めるか、突き出した胸を仰ぎ見るか、実に悩むところだ。

 

しかし忘れてはならない。これは、膝『枕』だということを!!

 

一夏は自分の後頭部を真季奈の膝の上に置く体は肩までコタツに入り、顔は真季奈の胸と顔を仰ぎ見る。

 

ここが桃源郷か。

 

「えへへー、一夏の頭つーかまーえた」

 

「わー捕まったー」

 

膝の上の一夏の頭を両手で弄る真季奈。頬をつついて伸ばしてこねくり回す。

 

「ぷにぷにー」

 

「やったなー。だったらこっちもくすぐってやるー」

 

「あははっ、やめてくださいよー」

 

一夏もコタツから腕を出して真季奈の腹や脇をくすぐる。二人して笑い合うその姿。IS学園の専用機持ちの女生徒たちが見れば殺意が湧くことこのうえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「だがデウスよ。何故一晩で元に戻ると思ったんだ?」

 

「ん? そりゃ人の煩悩36種、一晩で祓っても祓いきれるものか」

 

篠ノ之神社で初詣を済ませ、初日の出を見るために海岸へと目指してデウスの運転する車で移動中の千冬とデウス。その車内にて先程の会話の続きをしていた二人だった。

 

「36種? 108種ではないのか?」

 

「108っていうのは36種の煩悩を前世(過去)、今世(今)、来世(未来)で合わせて108種という意味で、実質自分の人生で募る煩悩は36種なのさ」

 

「ほう、だがそれがどういう……?」

 

「今世の汚れを祓ったところで、すぐに来世の汚れが貯まるのが人間だろ?」

 

そこで車を停めた。海についたのだ。

 

「そろそろだな」

 

「あぁ」

 

水平線の下から太陽が昇る。新しい年を迎える初めての朝日だ。

 

「明けましておめでとう。これからもよろしくな」

 

「明けましておめでとう。こちらこそよろしく頼む」

 

 

 

 

織斑家の庭にて。

 

「そーれっ、行きますよマドカちゃん」

 

「よーしこーい!」

 

カーン、コーン! と羽子板で羽根を突く音が響く。志波真季奈と織斑マドカが遊んでいるのだ。

 

「スキあり!」

 

「あっ!」

 

ポトッ! と羽根が落ちる。落としたのはマドカだ。敗者には顔に墨を塗られるのがルールなのだが、

 

「むぅ、もう塗るところがないぞ」

 

「だったら服を剥いじゃってしまえばいいんじゃないですか?」

 

「良くないっす!!」

 

織斑毛の庭に面した縁側で、顔面が墨で真っ黒に塗られた織斑一夏の姿があった。

 

織斑家の独自ルール。『敗者の罰は全て織斑一夏が受けるべし』である。

 

「黙れこの変態やろう!!」

 

「寝起きを襲って来るとはいい度胸だなこの強姦魔!!」

 

羽子板を縦に振り横に振り、一夏の顔面を殴打していく二人。そこには紛れも無く殺気がこもっていた。え? なんで一夏は逃げないのかって? 気持ちいいからですが何か?

 

「起きたらコタツに潜り込んで抱きついているとはなんという変態!! お前のゴールデンボールで羽根付きしたろかこの変態があぁぁっ!!!」

 

「ひでぶ! ばびで! ぶーーー!! 誤解なんですう! 真季奈も合意なんですうーーー!!」

 

「笑顔で気持ち悪いこと言うなーーーっ! そんなわけあるかボケーーーっ!!!」

 

ドガ! バキ! ボゴ! 何度も重い木の塊である羽子板で一夏の頭部を殴打する。その度に一夏が浮かべるのは恍惚の笑顔。ダメだこいつ。

 

「真季奈ちゃーん。もち米炊けたよー?」

 

「よっしゃ! マドカちゃん! さっそくお餅をつきますよ! ついでに織斑一夏のどたまもカチ割ってやりますよ!!」

 

「イエス・マム!!」

 

「ちょっ!? 餅が紅く染まっちゃうかららめーーー!!」

 

新年早々、命の危機にさらされる織斑一夏。生きて真季奈に想いを遂げられるまで生き抜くことができるのだろうか?

 

 

それではみなさん。明けましておめでとうございます!!

 

 

「今年もよろしくーーっ!!」

 

「そして死ねぇッッ!!!!」

 

「ぎゃぁあああああああああああああああああ!!!!」

 

 

落とし(たま)も貰おうね!




はい、お疲れ様です。

実家で家族の目を盗みながらの急ごしらえですが、なんとか間に合いました。

ところで。

あっまぁああああああああああああい!!!

おえぇぇ、砂糖吐きそう……。

除夜の鐘で煩悩が振り祓えるって本当でしょうかね? 真季奈が綺麗に清められたら恋愛脳になってたんですが……ある意味別の煩悩が発生していないこれ?

この話はクリスマス回のパラレルではなく、本編と繋がった作中のお正月です。それ以上はまだ秘密です。

それでは。

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。賀正。
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