IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

祝! スバロボBXにSDガンダム外伝が参戦! ナイトガンダムが喋って動くぞー。

もちろん買います。ゲームする時間なんてないけどね!(血涙)

ナイトガンダムのブームよ来い! 


あ、今回は真季奈の過去編です。


金髪少女 (前編)

風紀委員。

 

それは学園の風紀、及び治安を守る委員会のことである。

 

その活動は校内において服装のチェック、持ち物検査、遅刻者のチェックなどがある。ようは、生徒が勉学に不要な要素を持ち込んでいないかを確認し、排除するのが主な活動である。

 

そう、活動範囲は学園内なのである。つまり、

 

「か~~え~~せ~~よ~~!! 俺んだぞ~~~!!」

 

「やかましい!! 駄々をこねるな!! こんな不埒なもの没収だ!!!」

 

学生寮での持ち物検査は越権行為というものだろう。

 

時刻は放課後。ただいま風紀委員による学生寮内での抜き打ち持ち物検査を強制執行中なのである。ちなみに、生徒会と生徒指導の担当教諭からの許可はとってある。なので、

 

 

風紀委員、織斑マドカは大変張り切って風紀活動を行なっていた。

 

 

「大体なんだ織斑一夏!? このエ、エロ本という奴の数は!? け、汚らわしい!!」

 

「だったら無理しなくていいんだよ!? 今すぐ返そうカムバックミー!!」

 

「無様ですわ」

 

「だな」

 

自分の私物。大量のエロ本を抱える織斑マドカの足にすがりついて返却を懇願する織斑一夏の姿、まさしく哀れである。その姿を遠巻きに眺めるのはご存じ、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、凰鈴音であった。ほか数名の女子もいるが、それは織斑一夏の隣室とその周りの部屋の者たちである。

 

マドカが検閲を行なっているのは織斑一夏の部屋。女子寮において唯一の男子生徒の部屋ということもあり、マドカは頑張った。風紀委員としての感情以上に、織斑一夏への個人的恨みも込めて。そうしたら出るわ出るわ。大量の如何わしいブツが。

 

「女性の淫らな姿が写った本が三十冊程ですか……」

 

「セシリア……素直にエロ本っていってもいいのよ?」

 

「これって多いの? 少ないの?」

 

セシリアが言葉をはぐらかして言うが、それをバッサリと「エロ本」と称したのは鈴だ。そしてシャルロットはその量にこれが一般的な男子高校生が所有するブツの量として適正なのか疑問に思う。

 

「ふむ、マドカよ。手伝おう」

 

「裏切ったな箒!?」

 

「黙れこの軟弱者! 情けなさすぎて涙も引っ込むわ! いい機会だから貴様の部屋の中の不埒なものは全て処分してやる!」

 

「横暴だ!! 真季奈だってここまでしないぞ!」

 

幼馴染のまさかの裏切り。しかし忘れないでいただきたい。武に準ずるこのサムライガールこそ、こういった粛清行為に案外ノリノリだったりするのだ。

 

「では篠ノ之。ちょっとこれを預かってくれ。私はまだ隠してないか部屋の中を改め直す!」

 

「おうともさ」

 

「ヤバい奴らが手を組んだ!?」

 

「ある意味最強タッグですわ」

 

学園で一、二を争う堅物同士が手を組んだ瞬間であった。

 

しかし、

 

「…………金髪の女がいっぱいだな」

 

「…………お胸の大きい女性ばかりですわ」

 

「…………よし殺そう」

 

「ラウラみたいな小柄な女の子もいるよ?」

 

「なんだ一夏よ。言ってくれれば私はいつでも大歓迎だぞ?」

 

「やめて見ないでいっそ殺せぇ! あ、ていうか待ってマドカ! そこはらめぇ!!」

 

容赦なく行われるマドカの持ち物チェック。それは男子高校生にとって悪夢そのもの。何故に大勢のクラスの女子の前で公開処刑を受けねばならないのかと。

 

あれ?

 

「そういえば真季奈は?」

 

「居ないわね? いつもなら嬉々として参加しそうなものなのに」

 

誰が最初に気づいたのか。この場にいない、いるのが当然に思える人物の不在に皆が気づき始める。そこへ、

 

「や~め~て~よ~。かえしてく~だ~さ~い!!」

 

「今日という今日は見逃さん! 大体なんだこのガラクタの山は!?」

 

「あ、いた」

 

大量のなんだかよく分からない物品を抱えた織斑千冬が、その足に絡みつく志波真季奈を引きずりながら廊下を歩いてくる。お前もかおい。

 

「あ、ねえさん。やはり出ましたか」

 

「あぁ。この馬鹿、私に隠れて用途不明の物を大量に隠しこんでいたぞ」

 

「………あの、これ本当になんなんですか?」

 

「レーザーサイト? しかしこれは……?」

 

「こっちはシャーペン? あ、変なボタンがある」

 

千冬が持つ真季奈からの押収物。その珍しさに周りの女生徒も興味津々で群がって手に取り始める。しかし、やはりそれらの用途がわからない。

 

「あ、触らないで! 危ないですから!!」

 

「「「本当になんなのこれ!?」」」

 

「それは……その、てへ☆」

 

「「「織斑先生! 早く処分してーーーー!!」」」

 

「やって正解でしたわ……抜き打ち検査」

 

「私達の犠牲を押してあまりある成果だな」

 

この抜き打ち検査。その横暴に反感を持つ生徒は少なくなかったが、やって正解だったと皆は思った。真季奈よ、何を持ち込んだ!?

 

「……くぅ、1/1スケールの自爆装置(使用可)を造ったのに使う前に没収されるなんてぇ……ってあれ? 織斑一夏、貴方もですか?」

 

「あ、真季奈もか? やんなるなよなー。抜き打ち検査なんてさ」

 

そこで気づき合う二人の愚か者。互いに私物を取り上げられるのを嫌よ嫌よと足掻くのはなんと無様か。

 

「また金髪ロリ巨乳ものですか。もう小学校に近づかないでくださいね?」

 

「この歳になってから近づいたことねぇよ!?」

 

真季奈が一夏の没収物、エロ本を見て嫌そうな顔をする。彼の趣味は把握しているが正直いい気分ではなかった。

 

「一夏さんの好みが分かったのはいいですけど~」

 

「金髪で大きい胸か~」

 

「ぐぬぬぬ、小柄なのもよ!」

 

「うむ、一夏は欲張りだな」

 

金髪巨乳持ちのセシリアとシャルロットがニヤニヤとしながら言い、鈴がないモノに歯ぎしりを立ててあるモノを挙げる。ラウラはよくわかっていないようだ。

 

「というかこれ、真季奈に似てないか?」

 

「あ」

 

箒が持つエロ本。そこに写る女性達の姿はやはりというか、真季奈に似ていた。

 

「普通に気持ち悪いのですが………」

 

「こればっかりはねぇ」

 

「一夏も男の子だね」

 

「ゴメンナサイ勘弁して」

 

侮蔑のこもった真季奈の視線。絶対零度のそれは織斑一夏を凍りつかせるのに十分すぎるものだった。

 

「………あの、いえ……そういうのは個人の趣味ですから、ね」

 

「え”? 真季奈さん? いつもみたいに罵らないの? その気遣いがむしろ辛い!!!」

 

「『金髪少女とヌメヌメS○X』、『月間ぷるるんおっぱい』、『優しくしてお兄ちゃぁん』………いい趣味ですね……」

 

「「「……うわぁ」」」

 

「……………すいませんでした。お願いですからもう勘弁してください」

 

渾身の土下座である。別に真季奈は織斑一夏を糾弾しているわけではない。ただ彼の性癖を見て鳥肌がが立つような不快感を吐露しているだけだ。しかしそれが一番織斑一夏には堪えた。

 

はぁ、と真季奈は息をつく。

 

「(この男、いつからこんな性癖になったのやら………)」

 

そう考え、過去へと思いを馳せる。

 

織斑一夏との出会いを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パパとママが死んだ。殺された。誰かをかばって身代わりとなって殺された。

 

…………誰を?

 

「わたしは遺族ですよ? なぜ詳細な情報を開示しないのです!?」

 

「……真季奈……それは、極秘事項なんだ。分かってくれ……」

 

「もういいです!!」

 

わたしが中学二年(暫定)になってすぐの頃、両親が殺された。久しぶりに再会したその日に。事件が起きたとき、わたしはその場にいなかった。当然だ。場所は第二回モンド・グロッソの試合会場。わたしは師と仰ぐ日本代表である織斑千冬の関係者として選手控え室にいて、事件は観客席で起きたのだから。

 

事件が発覚したとき、織斑先生はまっ先に飛び出した。そして帰ってきた頃には全て終わっていた。事件も、わたしと両親の幸せな未来も。

 

あの日、何が起きたのか誰も教えてくれない。箝口令が敷かれたのだ。情報開示には『上』の権限が必要で、それは遺族であるわたしにも例外ではなかった。

 

ふざけている。これは不当な行為だ。

 

だからわたしは、行動した。

 

ハッキングは得意分野だ。情報開示の制限? 知ったことか。殺されたのはわたしの両親だ。わたしは全てを知る権利がある。

 

………………。

 

……………………………………。

 

………………………………………………?

 

……………………………………………………!!?

 

は? なん、ですこれ、は?

 

 

:織斑一夏誘拐事件の事の顛末の報告書。

 

①第二回モンド・グロッソの会場にて、我が国の代表選手、織斑千冬の『弟』、織斑一夏氏が誘拐される。実行犯及び目的不明。

 

②その際、監視対象である志波蒔春、志波秋名の両名が死亡。織斑一夏の救助を実行しようとした感あり。

 

③救助には開催国のドイツの協力と織斑千冬の独断先行により成功。遺憾なことながら、決勝戦は棄権となった。

 

④この件は口外厳禁とし、関係者には箝口令をしくものとする。

 

⑤特に、志波真季奈への情報開示をは許可しないこととする。対象の国家への不信や背信、逃亡を未然に防ぐ為にはいかなる手段も容認するものとする。

 

 

「………あは、あはっは、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははッッ! ふざけるなっ!!!!!!!!!」

 

気が付けば、わたしは怒りのままにパソコンのキーボードを叩き割っていた。お気に入りだったのに残念だ。

 

要するにこれは、日本政府の怠慢が引き起こした不祥事だ。それを隠そうとしている。己の利益のためだけに。

 

勝負の世界に綺麗事は存在しない。それが国家間の、ISを使った代理戦争ならば当然だ。どこの思惑であれ勝つためなら、勝たせないためならば何でもするだろう。それが人質、誘拐、薬物、恐喝、賄賂に八百長。不正などあって当たり前。だからこそ、それを監視し未然に防ぐための組織がいるのだ。いたはずなのだ。

 

なのに犠牲者は出た。大会出場選手の身内を狙った事件を防ぐこともできずに。仕事を果たせなかった愚か者たちのせいで。

 

……それで何故わたしの家族なの? 

 

試合に出るのはわたしじゃない。先生だ。パパとママは関係ない。殺すのなら違う、違う、死ぬ必要なんて何もない。わたしを一人にしないでよ。やだよ、なんで、どうして、誰のせい? 誰? 誰だった?

 

 

織斑一夏。

 

 

織斑先生の弟。人質としての価値を持っていた唯一の人物。事件の被害者。わたしの両親が死んだ元凶ッ!!

 

「………許せない」

 

なんでこいつの為にパパとママが死ななければいけないの? なんでわたしは一人ぼっちになったの? どうして? 誰か教えてよ! わからないよ!!

 

分からない。それは生まれてはじめての感情だった。知りたいことは全部パソコンがあれば調べられた。やりたいと思ったことは技術さえ習得すれば自然とできた。そのわたしがわからないこと。両親の死んだ意味、その必要性。

 

織斑一夏にそんな価値があるのか?

 

分からない。知りたいと思っても考えることを頭が拒否する。こんなことは本当に初めてだった。

 

だから、

 

「弟さんに会わせてください」

 

直談判した。でも、

 

「駄目だ」

 

一蹴された。当然だ。上からの箝口令がある。特に、わたしに対しては厳重な。

 

しかし、わたしは見逃さなかった。織斑先生がダメという瞬間、その瞳に宿った動揺の色を。

 

この人は国の命令だからわたしに話さなかったんじゃない。弟を庇いたくて話さなかったのだ。わたしが全てを知ればその恨みの矛先が織斑一夏に向くことを恐れて。だから隠した。

 

そのことがわたしの心を抉る行為だとしても、だ。そう、わたしはその瞬間、織斑先生に絶望した。彼女は、わたしよりも弟をとったのだ。それはそうだろう。誰だって、赤の他人よりも肉親、それも唯一の弟を選ぶだろう。

 

しかしそれは、わたしを傷つけるのに十分だった。既に心はズタズタだ。大好きだった両親はもういない。原因となった姉弟はわたしの縋る手を払った。もうグチャグチャだ。

 

だから、わたしは………()()た。

 

 

 

 

 

「あぁっ!? 訓練だぁ? 知るかこのクソババァ!!」

 

「待て真季奈! どこに行くつもりだ!!」

 

「決まってんだろ! フけんだよ!!」

 

長い金髪を腰にまで伸ばし、大型二輪のバイクを無免許で乗り回した。訓練施設を抜け出して市街を爆走し、警察やそこの暴走族と何度も衝突した。何時の間にやら『(スト)(ーム)(キン)()』などと呼ばれるようになっていたが興味もなかった。ただ、何もかも忘れて暴れたかったというのが本音だった。

 

そんなわたしの暴走を、国の上層部は黙認した。これ以上わたしの機嫌を損ねて反感を買うことを恐れたのだ。ある程度、一定ラインの行為には目を瞑ると、暗黙の了解が出来上がっていた。

 

そんな日々がしばらく続いた頃、その日は来た。

 

織斑先生がドイツに派遣教官として出向することになったのだ。原因は、やはりあの事件だった。ドイツの協力を受けた、その見返りらしい。ザマみろ。

 

そうすると、あることが発生することにわたしは気づいた。

 

織斑先生がドイツにいる間、織斑一夏は一人で生活することになるのだ。

 

これはチャンスだと思った。

 

目に上のたんこぶだった織斑先生はいない。わたしの行動を上の偉い人たちは黙認する。このクソッタレた訓練施設も抜け出すのは簡単だ。

 

織斑一夏に会いに行こう。

 

直接会ってもいい。できなければ遠目で見るだけでもいい。

 

その男に、わたしの両親の命を対価にして生きる価値があるのかどうか。それを見極めたかった。

 

もしも、その価値がないと判断すれば……その場で殺してやろう。そうも思っていた。

 

しかし、そんな考えも。予想外の事態によって裏切られることになる。

 

わたしはそんなこと露程にも思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セーラー服に袖を通し髪は適当にゴムでくくる。顔は大きな厚底のメガネで隠すことで野暮ったい地味な少女に見えることだろう。

 

織斑一夏の通う中学校に潜入したわたしはまず外部の人間とバレるのを遅らせるためにこの学校の制服を入手することにした。通販って便利だと思う。不思議なのは、なぜ中学校の女子用制服、セーラー服がオークションで売り出されていたのかが謎だった。まぁ買ったから今着ているんですけど。

 

さて、織斑一夏の教室を探しますか。確か二年生のクラスは三階でしたね。

 

織斑一夏の通う中学校は四階建ての校舎で、一年生が四階、二年生が三階、三年生が二階で、一階は理科室等の専用教室がある。らしい。

 

………そういえば、中学校に来るのはまだ二回目、なんですよねぇ………。

 

入学式の後に行われたIS適性検査が最初で最後の学校行事だった真季奈にとっては、ある意味これが初めての『登校』だったのかもしれない。もちろん、ここは真季奈の入学する予定だった中学校ではないが。

 

まぁそれはさて置き。

 

「二階のどこの教室でしょうか? こんなことなら()()()生に聞いておけばよかった……」

 

志波真季奈。反抗期の真っ最中である。しかし反抗する相手がいなければけっこう素というなんちゃって不良だった。

 

二階にあがる階段を登ると見えてくるのは真っ直ぐな廊下。休み時間なのか、そこには真季奈と同い年の少年少女がひしめいていた。

 

じぃっ。

 

人、人、人である。その全員が見慣れない金髪の少女に目を向ける。

 

「……う」

 

容赦の無い視線の暴力。他人に見られるという行為に慣れていない真季奈にとっては恐怖そのものだった。政府の豚共なら耐えられる。餌をねだる肥えた家畜などむしろ鳴かしてやる。

 

だけど、これは駄目だ。

 

どいつもこいつも、人のことをと好奇の目で見てきやがる。いいや、ひょっとしたら、これは奇異の目か? わたしという異物が自分たちの生活圏に紛れ込んだのがそんなに不快か? あぁそうだろうよ。どうせわたしみたいな根暗な引きこもりなんてお前らリア充から見たら汚物のごとく見るに耐えない代物だろうよ。だから見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな。

 

「うぷっ」

 

やばい、気分が悪くなってきた。ていうか、吐きそう……。

 

大量の視線をに晒されたプレッシャーか、神経性の胃痛がおこり吐き気が込上がる。

 

あ、やばい。

 

口を抑えて廊下に座り込んでしまいました。もうやだ。このまま消えてしまいたい。

 

「ちょ、ちょっとアンタ! 大丈夫!?」

 

「……ト、トイレ……おえっ」

 

「連れてってあげるから頑張んなさい!!」

 

そう言ってわたしの手を取って先導する方が。え? 誰です? 考えてる余裕ない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

保健室。

 

あの後トイレで胃の中のものを盛大にぶちまけたわたしは、その間付きっきりで介抱してくれた少女に連れられてここに来ていた。

 

「あたし鈴、二年よ。アンタ誰? 見ない顔だけど一年?」

 

「………()()() (はな)。あんがとうよ」

 

用意していた偽名をスラスラと答える。織斑一夏と接触したとして、わたしの名前を知られるわけにはいかないのだ。目の前の彼女から伝わるのも嫌だ。だから、この学校で居る間は真喜志花というのがわたしの名だ。

 

「ハナね。アンタ身体弱いの?」

 

「るせぇよ……苦手なんだよ、人の目って奴……」

 

「? ………あー、ひょっとして、学校にあんま来てないとか?」

 

「今日が初めての登校」

 

鈴と名乗った少女(同い年ですね)は意外と察しがよいのか会話がスムーズに進みます。初対面のわたしを甲斐甲斐しく介抱してくれた手際といい、意外と面倒見のいい方なのかもしれません。

 

「…………イジメ?」

 

一年生(と思っている)のわたしが二年生の廊下にいたことから自分のクラスで孤立しているのでは? と思ったのでしょう。でも違うんです。孤立しているどころか、自分のクラスなんてありませんよわたし。あれ? なんか言ってて悲しくなってきました。

 

「どっちかっつーと監禁?」

 

「はぁっ!? ちょっ、大丈夫なのそれ!?」

 

「あぁうん、もう解決したから」

 

ええほんと。これまでわたしを閉じ込めていた豚共の弱みも資金もすでに掌握している。最近はこれらを少しづつチラつかせて望み通りの要求を引き出している。おかげで外に出るのも自由にできるし、問題を起こしてももみ消すことなんて簡単だ。いいですねぇ権力って。無能な豚共が無様に縋り付いているのが嫌というほど理解できる。そのうち奪ってやろう。その時どんな顔をするのか、今から愉しみだ。

 

「まぁそんなわけで。初めての学校でガラになく舞い上がっちまったんよ。で、自分でもまさかここまで他人の目に怯えるとは思ってなかったてか」

 

「それはまぁ慣れてくしかないわよ。なんなら手伝ってあげるわよ! 友達づくり!」

 

「あ、結構です」

 

「えぇぇぇッ!? なんでよ!」

 

え? だって織斑一夏のいる学校で友達なんてつくったら色々と面倒じゃないですか。あ、別に友達がつくれないということじゃないですよ? その気になればと、友達なんてよゆーですよよゆー。……なんですか! どうせリアルで友達だなんてつくった事ないですよ! ちくしょう!!

 

「というわけで、世話んになったな。じゃ、さいなら~」

 

これ以上の会話は危険です。不用意な情報の流出は防がなくてはいけません。わたしはお世話になったお礼を言い頭を下げて保健室から出ようとして、

 

「ちょっと待って。折角だから学校の中案内してあげる」

 

手を掴まれてしまいました。お願いだから開放してよもー。

 

 

 

 

 

どうしてこうなった。わたしはただ、織斑一夏という男の姿を一目見ようと思っただけだというのに。

 

「やっぱクラスの人間と交流するのが一番手っ取り早いと思うのよ」

 

「止めろ馬鹿殺す気か!!」

 

なんて恐ろしいことを企んでやがる。人見知りレベルMAXのわたしをリア充の巣窟に放り込むだと? 気絶するわ。

 

「いいからほっとけよ腐れツインテール!! 余計なお世話なんだよ!!」

 

「とりあえずその人に喧嘩売るところから治そうねー」

 

「聞けよ!!」

 

あぁくそめんどくせぇ。なんでこうお節介なんだ。初対面のゲロ吐き女なんか放置しろよかまうなよそっとしといてくれよ。なんなの? なにが楽しいの? なんかお前に得でもあんの? それとも世間のチュウガクセーは皆こうなの? うわーすげー。

 

というか、真剣にマズイ。

 

このままだとこのツインテールのせいでわたしのことが周りに知られる。そうしたらここの生徒じゃないこともバレるし、あの男にだって……。

 

「大丈夫ダイジョウブ。流石にいきなりアンタのクラスに乗り込むなんてしないから。まずはアタシのクラスで慣れてこー」

 

「それが一番ヤメロッ!!!!」

 

あ、駄目だ。なんだか一番不味い気がする。嫌なフラグが乱立しまくっているというか地雷原に向かってトリプルアクセル決めようとしてるというか……とにかく、このままこの女について行くのだけはやばいとわたしの直感が告げている。

 

などと、そう感じた頃にはもう遅かった。

 

「とーちゃっく!」

 

「ひぃっ!?」

 

着いた。着いてしまった。この女のツレだ。つまりは同類? リア充どもの巣窟か。

 

「って、なによ? アンタ達だけ?」

 

「なんだよ鈴。お前が来るのを待ってたんだろーが」

 

「帰りにゲーセン行こって約束だろ?」

 

「あー、ごめんごめん」

 

二年生のクラスに連れられて、入ってみればそこに居た生徒の数は二名のみ。他は下校したか部活なのだろうか?

 

「アンタら注目!」

 

「「?」」

 

「やっ、離して」

 

安堵したのもつかの間。ツインテールがその二人の視線を集める発言をする。その矛先は見知らぬわたしへと向けられ……、

 

「ハナよ! 今日はこの子も一緒に連れてくから!」

 

「やめろやめろやめろやめろ!!!!」

 

ツインテールの小さな背中に隠れるわたしのを引っ張り出してソイツ等に紹介する。

 

「……えっと、初めましてハナ、さん? 五反田弾って言います。おい鈴! こんな大人しそうな子どっから拐ってきやがった!?」

 

赤い髪をチャラチャラのばしたバンダナ男。名前は五反田弾というらしい。なかなか鋭い。この女はまさしく誘拐犯だ。

 

そして問題はもう一人だ。

 

「詳しい話は後から鈴に聞くとして。俺は織斑一夏だ。よろしく、ハナさん」

 

そう言って手を差し出す少年。

 

顔に作り笑いが張り付いた、憎しクソ野郎。

 

 

織斑一夏がそこにいた。

 

 

 

 




後編に続きます。

この頃の真季奈(14歳)。

金髪は腰まで伸ばし、顔は前髪で目元まで隠れていて常に俺様口調(ただし偶に素が出る)。

性格は人見知りが対人症レベルの引きこもりで内弁慶。売られた喧嘩は買うが、売ってこない人間には及び腰。むしろ攻撃的になって自己防衛する。囲まれたら涙目。

この後、徐々に現在の真季奈に変化していきます。月日って残酷。



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