IS  復讐のデウス・マキナ   作:ぷらもん

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お久しぶりです。

今回はギャグオンリーです。

しかも漫画『うる星やつら』のパロディ回となっております。元ネタのタイトルは……えーっと、すいませんタイトルを忘れました。読んでみて分かった方はむしろ教えてください。

それではどうぞ。


ランチタイム・エスケープ・ラン

IS学園に危機が迫る!!

 

人心は荒廃し、生徒たちは略奪の限りを尽くした!

 

死屍累々の屍を乗り越え、少女たちは立ち上がる!!

 

 

 

そう! お昼ご飯を求めて!!!

 

 

 

……なんのこっちゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お腹が好きました」

 

「三食のメニューがご飯と具なし味噌汁にたくわんだけだものね」

 

一年一組の教室で真季奈が机に突っ伏して力なく言う。空腹なのだ。それに応えるのは彼女の隣の席、織斑一夏だ。

 

そう、空腹なのである。

 

今、IS学園では深刻な食糧不足なのだ!!

 

「うぅ……お腹空いたよー」

 

「お菓子……甘いものぉぉ」

 

「ふふふ……これも強制ダイエットと思えば……」

 

「あ、見て……窓の外にソフトクリームが……」

 

「馬鹿ね……アレは雲よ」

 

ご覧の有様だった。どこのクラスもすべての生徒たちは目が虚ろになり机に突っ伏している。幻覚まで見え初めている者もおり大変危険である。

 

「そもそも、業者が発注数を間違えるのが悪いんです!」

 

「しかも手続きとかの関係で追加注文が来週からって……」

 

つまりはそういうこと。

 

学園の食堂や売店に食料を卸す業者がその発注数を間違えたのだ。それによってIS学園は現在、深刻な食糧難であった。

 

IS学園の補給線は三つある。

 

一つは陸路。人工島に建つIS学園と本土を結ぶ唯一の地続きの道路。主に国家の来賓や様々な業者の大型トラックが走っている。

 

一つは海路。港口を使った輸送船による補給路。海外からのIS用部品や食料の輸入なども行なっている。

 

一つは空路。こちらは流石に滑走路がないのでヘリポートがあるだけ。国内のお偉いさんや緊急時にIS学園関係者が出張などに使っている。

 

ちなみに、海上をモノレールが走っているがこちらは一般用の交通網なので除外する。

 

今回、不運は重なるもので。なんと海路も使用不能となっていた。

 

原因は先日の文化祭の折、デウスが港口で暴れたせいである。これによって現在、輸送船の来航は滞っている。つまり、食料の補給が困難になっていたのだ。

 

ならどうするか?

 

単純な話。海路が使えなければ陸路である。しかし、普段使っているルートとは違うため手続きも多く掛かり、その作業のどこかで今回の手配ミスが起こったのだ。

 

つまり、

 

 

「「「全部デウスが悪い!!!」」」

 

 

という意見が学園内で多く占めていた。よって、デウスはただいま逃亡中である。

 

そして今日は金曜日。食糧不足が発覚したのは週初めの月曜日であり五日目である。色々とやりくりはしてきたが、とうとう食料も底をつき始めていた。

 

しかしアレである。

 

IS学園とて馬鹿ではない。こういう事態も考慮して非常食だって完備している。それも量にして、全校生徒が向こう三ヶ月は食いつなげるほどは。なのに、それがあっという間に消費してしまったのだ。

 

何故か?

 

「(カイザーワイバーンが全部食べちゃったなんて絶対に言えない!!!)」

 

腹を鳴らしながら真季奈が口にチャックをして必死に隠す事実があった。おいこら。

 

カイザーワイバーンとは、真季奈とデウスが作り上げた超大型ISの双頭竜である。主食はISコアと鋼材。しかし、デウスが有機物を食すようになってからというもの、何故かこやつまでもが食らうようになっていた。

 

 

全長が六十メートルほどある大型双頭竜が、である。

 

 

その食事料は尋常でなく、一度食べ始めれば際限がなかった。しょうがなく学園で備蓄していた非常食を食べさせていたらこの騒ぎだ。

 

さすがにバレると非っ常~にまずいので、カイザーワイバーンには食事を控えさせ、学園の電力を充電する形で腹を満たしているところだ。……後の電気代の請求額だとんでもない額になるような気もするのだが、深く考えないようにしよう。

 

ということは。この食糧不足の責任は、デウスとカイザーワイバーンの開発者である志波真季奈が取るべきなのではないだろうか?

 

失った非常食の買い直しと、崩壊した港口の建て直し費用。そしてその他でかかったであろう様々な経費など。その合計額は恐らくとんでもないものとなっていて………。

 

「そんなもん払えるかーーーーーーー!!!」 

 

「ま、真季奈!?」

 

脳内で試算してみた真季奈は叫びながら立ち上がる。なんだか億にも届きそうな額だった。いや、確実に届く、というか超える。誰が払ってたまるかこんにゃろう!

 

そんな真季奈の様子に驚くクラス一同。しかし、真季奈は決断した!

 

「皆さん! もう我慢なんてしてられません! 今こそ立ち上がるべきです!!」

 

「「「何が!?」」」

 

本当に、何がだろう?

 

「我々はいま三食のおいしい食事を失った! これは我々の空腹を意味するのか!? 否! これは断食なのだ! 本土に比べ我がIS学園の食料自給力は無きに等しい。にもかかわらず、今日まで食べ抜いてこられたのはなぜか? それは潤沢な補給があったからである! 私の息子、そして諸君らが愛してくれたデウスは学園を追い出された!! なぜだ!?」

 

「「「ご飯を奪ったからだ!!!」」」

 

「わがIS学園の生徒達よ! いまこそ空腹を乗り越え、そして! 怒りの炎を胸に込めて立ち上がるのだ! 我らIS学園生徒こそ選ばれた民であることを忘れないで欲しいのだ! 女性の優良児たる我らこそが人類の正しき未来を救うことができるのである! つまりッ!!!!」

 

「「「つまり???」」」

 

「ご飯がなければ! 食べに行けばいいじゃない!!」

 

「「「!?!?」」」

 

 

「授業をエスケープして! 商店街に殴り込みじゃーーーーッ!!!」

 

「「「おおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」」」

 

 

とりあえず暴徒が出る前に腹にモノを詰めさせよう! 責任とか絶対にとってたまるかぁあああああああああああああああッ!!!

 

え? すでに生徒を煽動して暴徒と化してる? はて、なんのことでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういうわけで。

 

IS学園の正門は、腹を空かせた生徒たちを阻む最終防衛ラインとなった!!

 

「む、来たぞーーーーッ!!」

 

「敵襲ーーッ!!」

 

「一人たりとも通すな!!」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!!!!!

 

グーギュルルル!! グオングオン!!! ゴゴゴゴゴ!!! グーッグーッグーッ!!

 

 

「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」

 

 

百二十名の一年生達が大地を轟かし腹を鳴らしながら正門へと押し寄せる。それを迎えうつ教師陣。中には勿論、織斑千冬や山田真耶の姿もあった。

 

「貴様らいい度胸だな!? そんなに補修室送りになりたいか!!」

 

暴走する生徒達の前に立ちふさがる一年一組の担任教師、織斑千冬。

 

が、

 

「うっさい行き遅れ!!」

 

「ギブミーランチ!!」

 

「すっこめ暴力教師!」

 

「同情するならご飯をくれ!!」

 

学園一の鬼教師が現れようと止まりはしない。それほどの空腹が彼女たちを狂わせている。そんな彼女たちの理性を欠いた言葉に千冬も冷静に対処を、

 

「停学が望みのようだな小娘共ーーーーッ!!!!」

 

あ、無理。

 

顔に血管をバキバキと浮かび上がらせて鬼が叫ぶ。

 

今ここに、拳と腹の音を唸らせた戦いが切って落とされる。

 

「「「そこをどけーッ!!!」」」

 

我を失った生徒達が鬼を除けようと襲いかかる。

 

「ホゥワタァッ!!」

 

「あべしッ!」

 

それはあまりにも愚かな行為だった。

 

「あたたたたたたたたたっ、トリャぁっ!!」

 

「ひでぶっ!」

 

「はびでっ!」

 

「ぶーーっ!」

 

千冬の拳のラッシュが彼女たちを襲い、吹き飛ばす。その苛烈な鉄拳制裁は留まることなく繰り出され、百名を超える軍勢を一瞬で半壊させた。

 

宙に舞う木っ端のような生徒たち。だが、その中で鬼の裏をかく者たちがいた。

 

「「「いただき!」」」

 

「ちぃっ!?」

 

真季奈を筆頭とした専用機持ち達である。

 

真季奈、一夏、セシリア、シャルロット、ラウラ、鈴。

 

六人が千冬の脇を抜ける。先に吹き飛ばされた生徒たちは囮。その凄惨な光景を尻目に。先人たちの亡骸を踏み越えて彼女達は行く。

 

お昼ご飯のために!!

 

「私も!」

 

「ひゃっほー!」

 

「ご飯ー!」

 

「貴様ら! その集中力をなんで普段の授業に活かせんのだーーッ!!」

 

千冬を後方に置いていき走り出す専用機持ちに続く他の生徒たち。半数を犠牲にして空腹の生徒たちは学園をエスケープすることに成功した。

 

 

 

 

正門を抜けた真季奈達が次に目指すのは本土へと続くモノレール。その乗り場の駅だ。

 

「時刻表だと次の車両が来るのは十分後! 今ならギリギリ間に合います!」

 

「でもこれを逃したら三十分後よね!?」

 

「そんなに待っていたらお腹と背中がくっついてしまいますわ!」

 

「何がなんでも滑り込んでみせる!」

 

「!? 不味いよ! 追ってきた!!」

 

「誰が!? あ、あれはッ!?」

 

真季奈が、鈴が、セシリアが、ラウラが、シャルが、一夏が。走りながら振り返る。

 

「そこまでよ貴方たち!」

 

「……生徒会長か!」

 

ラウラが睨む。そこに居たのは彼女が言うように、IS学園の生徒会長である更識楯無だった。

 

「生徒達を巻き込んで一体何をやっているの!」

 

もっともである。

 

「大体なんでそんなに空腹なの!? ちゃんとご飯も出してるでしょう!?」

 

「「「足りるか!!」」」

 

「そうよね!」

 

くどいようだが、三食ご飯と味噌汁に沢庵である。この講義の反論には楯無も思わず頷いてしまう。暗部の人間だって腹は減るのだ。

 

「でも、確か中には自炊してお弁当を作っている子もいたはずじゃないの?!」

 

「そんなもんお昼までに食べ尽くしたわ!」

 

「早弁!? 織斑先生のクラスで!?」

 

「どこの世界にお昼までお弁当を残している高校生がいると言うんですか!」

 

「しかも常習犯!? 今年の一年生マジぱねぇ!!」

 

言葉を崩すほど戦慄する生徒会長。織斑千冬の授業で早弁。その度胸は計り知れないものがあった。

 

「そもそも貴方たち生徒会が、放課後の買い食いを禁止しなければこんなことにはならなかったのですよ!!!」

 

「しょうがないじゃない! 寮の門限があるんだから!」

 

そもそもそれが一番の原因。

 

彼女たちとて馬鹿ではない。腹が減れば食べればいい。食べるものが無ければ買いに行けばいい。

 

どこへ? 無論、本土の飲食店でだ。

 

そこで障害となったのが門限である。

 

IS学園は全寮制。すべての生徒が学園の寮で暮らしている。そして、授業が終われば部活がある。委員会も。その後にモノレールに乗って本土の商店で買い物? 確実に門限をオーバーだ。

 

ならば部活をサボろうか? それも無理だ。IS学園はエリート校。そんな不逞の輩はまずいない。

 

故に、生徒たちは腹を空かせながら待ったのだ。休日を。そうすれば堂々と買い物に行けるから。

 

「なのになんで皆を焚きつけたの!?」

 

「さぁこの人を突破していざ商店街へ!」

 

「誤魔化す気!?」

 

都合の悪いことは全力スルーで。

 

「でも真季奈! もう時間が!!」

 

モノレールが来るまで後八分。

 

「くぅっ、地味に手こずる相手なのがめんどくさい!!」

 

まがりなりにも学園最強の生徒会長。真季奈も彼女が相手ではあと数分で倒すなど不可能だった。

 

「ふっふっふ。私は貴方たちを足止めすればいいだけ! 誰も行かせないから!」

 

「そうはさせない!」

 

「貴方は!?」

 

モノレールの駅の前で仁王立ちする更識楯無。その前で足を止める真季奈たちの背後からかかる声。

 

更識簪。更識楯無の妹にして、虎視眈々と次期生徒会長の座を狙う一年四組の生徒だった。

 

「皆行って! お姉ちゃんは私が食い止める!!」

 

「ありがとう簪ちゃん!」

 

走り出す真季奈たち。それに続く他の生徒たちの姿もあった。

 

「させない!」

 

「ううん! それはこっちのセリフ!」

 

止めようと動くが、それを阻む姉妹の姿があった。

 

「どうして!? 簪ちゃん!!」

 

「ここで皆の為に立ち上がる! その行為が私の支持率になる!」

 

「ほんと強かになったわねぇっ!?」

 

「IS学園の新しい長になるためにも! ここで引き下がるわけにはいかない!!」

 

決意を瞳に込めて立つ妹の姿に姉である彼女は目をそらすことができなかった。これではもう真季奈たちを追いかけることなどできない。

 

彼女の、更識簪の姉として。学園最強の生徒として!!

 

「ならば超えてみなさい! このお姉ちゃんを!」

 

「行くよ! お姉ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総員突撃ーーーっ!!」

 

「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」

 

モノレールから空腹の徒が解き放たれる。

 

それらは街を蹂躙し、商店街の食物を喰い漁った!

 

「おばちゃん! コロッケ一つ!」

 

「たこ焼き! たこ焼きぃぃぃ!!」

 

「肉まん大至急!」

 

「クレーーーーーーーーップ!!」

 

店頭販売の店や屋台に殺到し、長蛇の列をつくる。そこで飛び交う注文の怒号。

 

しかし確実に、腹は満たされていく。

 

だが、

 

「「「足りねぇ!!!」」」

 

騒ぎは収まることを知らなかった。

 

そんな中、彼女はそこへ向かった。

 

「ラーメンお願い!」

 

「おう、鈴じゃねぇか。学校はどうした?」

 

ここは五反田食堂。入ってすぐにラーメンを注文したIS学園の生徒。それは鈴だった。

 

厨房から店主である老人、五反田厳だ。高校生の孫がいるとは思えない筋骨隆々とした体格で中華鍋を豪快に振るうその姿はまさに圧巻。そんな彼と幼い頃からの知己である鈴は気さくに話しかける。

 

「いやぁ学園が食糧難でさー。もうお腹ペコペコで授業とか受けてらんないっつーの」

 

「この不良娘が。ちょっと見ない間に図太くなってんじゃねーか」

 

「はははッ、らーめん、らーめん!」

 

「……おい、大丈夫かお前?」

 

カウンターに座り、割り箸で子供のように遊びながららーめんを連呼する鈴の姿に戸惑う厳。それでもらーめんを作る手は止まらない。すぐさま鈴の目の前に一杯のらーめんが置かれる。

 

置かれたのは醤油ラーメン。茶色い鶏ガラのスープに沈む黄金色の麺。分厚いチャーシューが三枚も添えられ、黒い海苔と白とピンクに輝くナルトが美しい。

 

思わずゴクリと喉を鳴らす。もはやためらうものなど何もない。鈴は、

 

「いただきまーっす!!」

 

待ちわびたランチを食すため、らーめんの器に手を取った。

 

 

「ほう? 旨そうだな?」

 

 

ぴしぃ!

 

 

空気が凍った。

 

その声を鈴は知っている。よく知っている。というか、毎日聞いている。

 

「あ、あ、ああああああ!?」

 

「どうした? 食えばいいだろう? え? 凰?」

 

織斑千冬が、奥の席に座っていた。

 

「あ、あ、いやぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「おい、鈴? リーーーーーン!!!」

 

「逃がすかぁっ!!!!」

 

らーめんの器と箸を持ったまま、鈴は五反田食堂を飛び出して逃げ出した。それを追いかける鬼教師。

 

商店街を襲う学園の生徒たち。そこへ参戦するは追跡の教師陣。

 

こうして、鬼ごっこは再び始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、商店街では。

 

「おばあちゃん! たい焼き一つ!」

 

「はいよ。五十円ね」

 

たい焼き屋さんの前で長蛇の列がでいていた。

 

たい焼きの『たいやきやさん』。七十歳を超えるおばあちゃんが営む店で、店頭でたい焼きを調理してつくりそのまま客に売るお店だ。しかも安い。注文すればすぐに食べられることで人気の店だ。なにより美味しい。

 

「みなさ~ん! お願いですから学園に戻ってくださ~い!!」

 

そのたい焼きを求める生徒の列に教師の姿があった。

 

山田真耶である。メガネをかけた童顔に低身長。制服を着れば高校生にも見える幼さを残す学園教師。彼女なりに生徒たちを学園に帰そうと頑張っている、のだが。

 

「まややん割り込み禁止ーッ!」

 

「まーやん教師でしょー!」

 

「やまぴー順番はちゃんと守らないとー!」

 

「え? え? えぇっ!? ご、ごめんなさい!!」

 

たい焼きを買う列に割り込むようにして生徒に呼びかけていた山田真耶は『順番抜かし』の汚名を着せられ逆に注意される。

 

よって、気の弱い彼女は素直にたい焼きを買う列に並んでいた。最後尾に。

 

 

三十分後。

 

 

「はいよ。五十円」

 

「あ、わーい。美味しそう」

 

生徒達が全てたい焼きを買って去った『たいやきやさん』で。

 

そこにはたい焼きを受け取る山田真耶の姿があった。

 

「あ、美味しい」

 

仕事しろよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

お好み焼き屋『ぶた腹』。

 

この店は注文したお好み焼きのタネを客側が自分で鉄板で焼いて食べる、よくあるお好み焼き屋さんだ。

 

そう、作る側がまともならばの話だが。

 

「今日はわたくしが! 最高のお好み焼きを焼いて差し上げますわ!!」

 

「「「誰かこいつからヘラを取り上げろ!!!」」」

 

セシリア・オルコットとクラスメイト数人が食べに来ていた。……今にも取っ組み合いが始まりそうであるが。

 

「大丈夫ですわ! いくらわたくしでも、焼いてひっくり返すだけの工程で何を間違えるというのですの!?」

 

「た、確かに!?」

 

「それなら、大丈夫かも?」

 

確かに。いくら調理が必要とはいえ既に用意されたモノをかき混ぜて鉄板で焼くだけ。両面を焼くためにひっくり返す工程があるが、それも失敗したとしても食べられなくなるわけではない。

 

ならば問題ない、か?

 

「それでは、このチーズミックス焼きを!」

 

セシリアが頼んだのは豚肉、牛肉、イカのミックス焼きにチーズが入ったチーズミックス焼き。それのタネが入ったボールを手に取り、

 

「まずは油を投入します!」

 

「ちょっと待って!? 今何した!?」

 

油を鉄板に塗るのではなく、タネの入ったボールに流し込み。

 

「ソースをかけて!」

 

「焼きあがってからだよ!?」

 

ソースもボールに投入。タネの色が黄色から茶色くなっていく。

 

「鰹節と青のり、紅しょうがも入れますわ!」

 

「それは、あぁもう否定しにくい!!」

 

薬味の使い方はお好みです。

 

「しっかりかき混ぜたら鉄板に流し込みます……ってきゃーー! 跳ねて、油が跳ねてますわーーー!!」

 

「余計なものを混ぜ込み過ぎーーーッ!!」

 

「ていうか油が入ってなんかタネがシャバシャバに……これもんじゃ!?」

 

「熱い、熱いよー!!」

 

なんという地獄絵図。彼女たちの腹にお好み焼きが収まるのはいつになるのだろうか。

 

そんな彼女たちを見つめる存在が、後ろの席にいたりする。

 

『ふっふっふ。食べたら即、御用にゃ!』

 

銀色のアメリカンショートヘアの子猫。『銀の福音』の待機状態であるベルである。今日はナターシャと一緒にエスケープした生徒たちを追って商店街に来ており、この店で張り込み中であった。

 

「これがジャパニーズ・ピザ……う~ん美味しい~~!!」

 

『って、ナターシャ!? なんでガッツリ食べてるにゃ!? しっかりあいつらを見張るにゃ!』

 

「なに言ってるのベル! 私だってお腹空いてるの! 今食べなきゃ仕事なんてできないわ!」

 

『何堂々と職務放棄してるにゃ!? お願いだから働いてにゃ~~~!!』

 

ベルの言葉も聞かず。目の前のお好み焼きをガツガツと食べるアメリカからやってきたIS学園の警備員。ナターシャ・ファイルス。彼女もこの食糧難で割を食った側だった。彼女は遠いアメリカから派遣されてきた警備員。当然住まいは学園内の社宅寮である。つまり、食事は学食頼りである。

 

ナターシャも空腹のピークだったのだ。

 

「止めないで! それにベルは充電と工具室の資材を食べてお腹いっぱいでしょ!?」

 

『そうだけど、けど、ちゃんと仕事はしないとだめにゃ~~』

 

一心不乱でお好み焼きを食べ続けるナターシャの隣で彼女の服を引っ張りながら涙目で訴えるベルという子猫型ロボット。

 

その姿はまるで、アル中オヤジに働いてくれと縋り付く薄幸娘のようだった。

 

「ちょっとお客さん! ウチはペットの持ち込み禁止だよ!」

 

「あっ! ごめんなさい! ほらベル! 早く待機状態を猫から女の子になって!」

 

『もう食べることしか頭にないにゃね!? って熱ぅっ?!? なんにゃ?! 後ろから油が飛んできたにゃぁっ!?』

 

「ベル!? 尻尾が焦げてる!」

 

『え? にゃぁあああああああああ!!』

 

セシリアの飛ばした油である。

 

「お客さん!!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさーい!!」

 

 

 

 

 

 

 

公園にて。

 

クレープ屋さんの小さなお店が建っているこの場所で。

 

ある戦いがあった。

 

「シャルロット! ここは任せろ!」

 

「いやラウラ? これなに!?」

 

何が起こっているのか。それは彼女たちに立ちふさがる彼らの存在が原因だった。

 

「おい姉ちゃんたちよぉ! 俺達、『()()()()()()()()()』を差し置いて姐さんの舎弟を名乗るたァいい度胸だなぁ!!」

 

「ここのクレープは俺たちが姐さんに献上するんだ! 先に買わせてもらうぜ!」

 

「だから順番を先に譲りな! おっと? 小さいお子さんとお年寄りはお先にどうぞだぜ?」

 

革ジャンに『真季奈ちゃんLOVE♥』と刺繍を入れた屈強な男たち。彼らこそ、IS委員会公認の、志波真季奈のファン倶楽部であった。

 

まぁ、元は真季奈に『嵐の王者』時代の真季奈にボコボコにされて壊滅した暴走族チームの成れの果てなのだが。

 

「悪いが、姐さんの一番の舎弟の座は譲れん!」

 

「成程、いい度胸だな眼帯の嬢ちゃん。ならば、アレを持てぇいッ!!」

 

「「へい!!」」

 

リーダー格の男(モヒカン装備)に真っ向から立ち向かうラウラ。彼女にも維持がある。真季奈の舎弟を名乗る維持が。あと、クレープを早く食べたい。

 

ファン倶楽部の男たちが持ってきたのは大きなビニール袋と鉄製の大きなトング。

 

最もポピュラーな、ゴミ拾いの道具だった。

 

「これより、『町内清掃()(ラン)(ティ)()』で勝負を始める!!」

 

「町内清掃歩乱茶亜だと!?」

 

「………つまりお掃除だよね?」

 

大仰に開幕を告げるファンクラブの男に驚愕の表情を浮かべるラウラ。ついていけないシャルロット。ガンバレ、君が最後の(ツッ)(コミ)だ。

 

「クククっ、リーダーのトング使いの腕前に感動することになるぜぇ?」

 

「トングだけじゃねぇ……地面にへばりついたガムだって剥がさねぇとなぁ」

 

「綺麗になった町の光景を想像すると……おっといけねぇ! 顔がにやけちまうぜ!」

 

大丈夫かコイツら?

 

「ちなみに、清掃が終わったら町内会がおにぎりと豚汁の炊き出しをして待っている!!」

 

「「!?」」

 

二人は参加を決意した。

 

 

 

 

 

 

 

そして真季奈は。

 

「唐揚げ! たこ焼き! コロッケ! 肉まん! なんでもこいやぁ!!!」

 

「食いすぎだ真季奈! あ、おばちゃん! こっちは小籠包ちょうだい!」

 

「はいよ!」

 

商店街の食べ物を蹂躙していた。

 

飛び交う料理をキャッチしながら食べ歩く真季奈。代金の硬貨も飛ぶ。その後に続く織斑一夏も同じように食べ歩く。というか、代金が投げられたお返しとばかりに料理を投げ返す店員というのもどうかと思う。

 

「大体お腹も膨らんできましたねぇ」

 

「こんだけ食えばなぁ」

 

走りながら喰う。真季奈と一夏は商店街を端から端まで食べ尽くしていた。

 

「「そこまでだ!!」」

 

「「んん!?」」

 

そんな二人に待ったをかける者たちがいた。

 

「風紀委員か!?」

 

「待って、もう一人!!」

 

一人はIS学園の風紀委員、織斑マドカ。その隣に立つ者がいた。

 

それは、

 

「私だ!」

 

「「箒(ちゃん)!?」」

 

篠ノ之箒だった。

 

そしてその腕には、『風紀委員』と書かれた腕章が付いていた。

 

「風紀委員に与するとは……寝返りましたか箒ちゃん!!!」

 

「黙れッ!」

 

「「!?」」

 

「そして聞けッ!!」

 

「!!」

 

「IS学園に蔓延る秩序の乱れ! これを打倒せんは風紀の乱れ!! 今こそ我が力を見せるときッ!!」

 

箒はどこからともなく刃を抜く。それは頭上に輝く陽の光を浴びて(正午だしね)白く輝く!

 

その刃の名は!

 

「我が(ツッコミ)を継げ『紅椿』!! 否!」

 

「……え?」

 

「それって……ハリセンじゃぁ?」

 

『紅椿』の待機状態。それは真季奈の改修を受けたことで白きハリセンへと変わっていた。

 

(ボケ)()しの風! 『(プリ)(ベン)(ター)員』ウインド!!」

 

構えたハリセンがパースを描き、その叫びは街へと響く!

 

「箒が壊れたぞ!?」

 

「いえ、これはボケながらツッコム高等テク!? 箒ちゃん恐ろしい子!」

 

「もはや問答無用! 成敗!!」

 

「行くぞ友よ! 今こそ駆け抜けるとき!!」

 

「「お前もかマドカ(ちゃん)!!」」

 

いきなりの変貌を遂げた二人。お前らどこの親分とトロンベだと言いたいが、それは別の話。

 

ボケに溢れたIS学園を憂い、風紀委員に名乗りを上げた箒。そして仲間が増えたことで純粋に喜び上機嫌のマドカ。

 

ここに風紀委員の結束が生まれたのだった。

 

「真季奈ぁッ! お前はいつもいつもいい加減にしろォッ!!」

 

「ちょぉっ!? ハリセンのフルスイングはもう凶器ってブフォッ!?」

 

「真季奈!?」

 

「お前の相手は私だ!!」

 

箒のハリセンで横っ面を叩かれる真季奈を見て驚愕する一夏。その彼に迫る影が一つ。マドカだ。

 

「織斑一夏! お前だけは私が、この手で引導を渡してやる!!」

 

「引導だって!?」

 

「具体的には、生徒指導室で私自ら指導という名の拷問を味あわせてやる!!」

 

「クソっ! ちょっとドキドキするじゃないか!?」

 

「この変態め! 念入りな指導が必要なようだな!!」

 

「マドカちゃん、その変態は悦ぶだけですよ?」

 

「五月蝿い!!!」

 

などという漫才を繰り広げる中、真季奈、一夏、箒、マドカたち四人の対決は続く。

 

真季奈は箒のハリセンをよけながらも肉まんを食べ、お茶を飲む。

 

一夏はマドカの徒手空拳を受けて笑を浮かべ変態起動で逃げ惑う。

 

それに翻弄されつつある箒とマドカ。箒はハリセンを振る速度をどんどん上げていくが、それに比例して真季奈も食べるモノをなるべく飛び散らないものに変えてゆき、マドカは一夏の変態ぶりに涙目になりながらも頑張って取り押さえようとしていた。

 

そこへ。

 

「きゃぁああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ………」

 

「「「なんだ!?」」」

 

空を飛んでいく女性との姿があった。生身でッ!

 

「アレは、鈴!?」

 

「なんで空を、ISも無しで!」

 

「あの方角はIS学園のある方向!」

 

「まさか!?」

 

「「「きゃぁあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」」」

 

「「「!!!??」」」

 

空をゆく鈴の姿に驚くのもつかの間。次々と彼女の後を追い飛んでいく女性との姿があった。全て、IS学園へと。

 

 

「くっくっく、見ぃ、つぅ、けぇ、たぁ、ぞぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

「「「お、鬼いいいぃぃ!??」」」

 

怒りの形相で、阿修羅のように変貌した鬼教師。織斑千冬が現れた。

 

それでは皆さん。

 

逃げましょう。

 

「逃がすかぁ!!」

 

「「「ひぃやぁああああああああああああああ!!!!」」」

 

真季奈と一夏のみならず、箒とマドカまでもが逃げ出さざるを得ない恐ろしさ。

 

四人は揃って走り出す。向かう先は、IS学園だ。

 

「帰ってしまえば学園まで投げられる心配はありません!!」

 

「というか、投げたのか!? 本当に投げたのかうちの姉が!? 生徒を学園まで!!?」

 

「千冬さんならやりかねん!」

 

「さすがねぇさん!!」

 

「真季奈ぁっ! 一夏ぁ!! 貴様らただじゃ済まさんぞぉッ!!!」

 

!!??

 

「しゃ、喋ってる暇があったら走りましょう!」

 

「「「異議なし!!」」」

 

本日、最後の鬼ごっこが始まった。そして終わる。

 

今日も今日とてこの街の、IS学園が巻き起こす騒動は実にはた迷惑なものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけのデウスさん。

 

『えーっと、壊した港口の修理費用の振込はこれでよし、と。後はカイザーワイバーンが食い散らかした非常食の補充の手配を……って、あれ? まさか俺の出番これだけ?』

 

銀行で必要経費を入金していたデウス(柴犬)の姿があったとさ。

 

 

 

 




わたくし、ギャグ漫画で一番好きなのが『うる星やつら』なんです。特に高校を舞台とした回はギャグのテンポが素晴らしくて何度腹がよじれたことか。

さて、鈴は星になりました。セシリアはお好み焼き屋でもんじゃを作り、シャルロットとラウラはお腹を鳴らしながら街のゴミ拾いを。更識姉妹は駅で今だにステゴロの真っ最中です。真季奈と一夏、箒とマドカは、どうなったでしょうね?


今回ネタを多々いれましたが、いくつかは本編に関わってきます。多分。

IS学園って補給が途絶えたらどうなんの? と思いついて造った今回のお話。まぁ実際、そんなことになったら外部のお弁当屋さんから購入したり、即座に食料の手配をするんでしょうけどね(笑)。完全にギャグですはい。

それではまた次回でお会いしましょう。

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