今頃皆さん、受験を控えた方も多いのでは? もしくはもう終わったという方いるかもしれません。それが中学、高校、大学、企業のどれかは分かりませんが、これだけはいえます。
自分の進路、選ぶときは慎重にね?
え? ぼくですか? ぷらもんは失敗の連続でした。
高校、就職先と、志望理由は受かりやすいからの一点のみ。自分の能力にあっていたかと聞かれれば答えはNO! 進学と勤務内容に苦労の連続でした。
何年か前に一度だけ、企業説明会で学生相手に自社の会社説明をさせていただいたことがあります。が、やっぱり自分には向いていませんでした。適正って本当に大事これ重要。唯一の救いは、聞いてくれた方々が興味をもって熱心に質問をしてくれたことです。
今回はそんなお話。
「こ、ここがIS学園ッ!」
「大きい……」
「うわぁ……」
「でも、」
「「「どこも工事中???」」」
「みんな静かに!」
「「「す、すいません会長!!!」」」
どうも。私、五反田蘭といいます。
今日は私を含めた聖マリアンヌ女学院の生徒五名でここ、IS学園へとやってきています。あ、ちなみに私、生徒会長やってます。
全員が学校の制服を着用していることから分かるように、これは私用ではなく学校行事です。いえ、ある意味私用なのですけど……なにせ、私達の進路がかかっていますので。
そう、私達は。
IS学園への進路希望者を対象とした……高校説明会に来ているのです!!
「それで会長。これからどこに迎えば?」
「えぇっと……まずは体育館に集合……だって。他の学校の見学者とかも纏めて一旦そこで集合……みたい」
「体育館………どこでしょう? 広すぎて……」
うん。ホントそうね!
見渡す限り、いや。見渡せない程の建物の数だった。IS競技専用? のアリーナ一つで視界が埋まり、そんなものがいくつもある。何故か工事中のものも多々あるけど。そして本校舎が遠い。本当に、どうしようもなく遠い。校門に立っているのに校舎が見えないってどういうこと!?
IS学園は本土より出島のような形で作られた人工島に建設されている。しかし、その構造はまさに『島』と呼ぶべき巨大さだった。言うなれば山のようであり、どこから持ってきたと追求したくもなる。
パンフレットを見てみよう。そんな人工島に、巨大なISアリーナが六つ。学園の生徒全てが生活できる学生寮が数棟。学園の校舎に部活棟。体育館も一般の高校よりも一回りも大きく。それ以外にも沢山のビルがにょきにょきといたるところに生えていて、その隙間を埋め尽くすように木々が生い茂っている。
それではもう一度。
広すぎる!!!
「ど、どうしましょう会長? これ、もしも迷ったら集合時間に間に合いませんよ?」
「だ、大丈夫よ! 確か、学園の人が案内をしてくれる筈だから!!」
そうなのだ。
こんな引率の教師ですら道に迷いそうな学園に招待客である受験生(予定)を案内しないわけもなく。
「なのでこうして来たわけですが」
「!? うわぁっ!!?」
蘭の背後から突然の声。驚く彼女が振り向くと、そこに居たのは。
「すいません、お待たせしました。案内役の志波真季奈です」
「申し訳ない。同じく、織斑マドカだ」
蘭もよく知る姐さん、志波真季奈ともう一人。
「オリムラ? ……千冬さん?」
織斑千冬によく似た、彼女を一回り小さくしたような少女がいた。自分が恋する織斑一夏と年が近く、しかもその家族に外見が似ている少女。しかし、織斑家に『三人目』など居ないことは幼い頃から家族ぐるみで付き合いのある蘭には分かっていた。
その疑問が口に出る前に、
「気にしないでください」
「え? でも……」
「気にしないでください」
「あ、はい」
真季奈に押し切られた。敬愛する最凶の姐さんに逆らう? 無理ですごめんなさい。
下手に藪をつついて蛇どころか、ヤマタノオロチを怒らせるような度胸などないのである。
「聖マリアンヌ女学院の皆様、五名……皆さん揃ってますね?」
「「「はい!!」」」
「あらためまして。日本代表候補生の志波真季奈です」
「イギリス所属の専用機持ちでIS学園の風紀委員、織斑マドカだ。今日は君たちの案内を私達で行う。よろしく」
「「「よろしくお願いします!!!」」」
彼女たち聖マリアンヌ女学院の生徒たちはまだ知らない。
この日が、彼女たちの進路を決定付けることになることを。
時は一週間前に遡る。
「緊急事態よ!!」
「何時ものことじゃないですか」
「元凶は黙ってて!!!!」
生徒会室に生徒会長・更識楯無の悲痛な声が響く。しかし、今日に限って言えば真季奈には身に覚えの無いことだった。
「いきなり呼び出されてなんという暴言。こうなったら真季奈ちゃん印のスーパーウィルスで、学園のセキュリティシステムを二十四時間丸裸にして全世界に晒してやりましょう!」
「オイ待てゴメンナサイ失言でしたぁあああああああああああああ!!!!」
「わかればよろしい」
「「「うわぁ」」」
即座に土下座し渾身の謝罪に映る生徒会長。その姿をケータイのカメラでパシャパシャと撮りながら真季奈は尋ねた。
「で? 何があったんです?」
「あったっていうか、これから起きるんだよ」
それに応えたのは更識簪だ。
彼女は言う。もうすぐIS学園にて、中学生の高校受験生を対象とした学校見学会が行われることを。
「それが何か?」
「あのね? よく聞いてね真季奈……。今年の受験希望者の数が……去年の三分の一しか集まってないの」
「なんと。一大事じゃないですか」
「だから緊急事態なんだよ」
正に、一大事である。
毎年、世界一の倍率を誇るIS学園の受験戦争。世界各国から集った優秀な女の子達が入学をかけて競い合うソレは、今年においては参戦者が激減していた。
何故か?
「まぁ。今年だけでテロ事件だらけでしたしねぇ」
「ほんとそれなのよォオオおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「お姉ちゃん。五月蝿い」
そう、原因は今年の一年生が入学してから立て続けに起こったIS学園での事件である。
無人機の乱入。試合中のISアリーナの倒壊。アメリカから飛来した暴走機。文化祭での事件………数え出せばきりがない。というか数え上げたくもない事件の多さである。
どれも死者が出ても不思議でないものばかり。勿論、IS学園からも最大限の情報規制を行なった。それでも今の時代、隠しきれないものもある。直接事件を見知った一般人。特に、IS学園が建つ、その付近に営む商店街の住人たち、街の人々の目である。発達した情報社会においても人の口には戸は建てられないのだ。
当然、IS学園に入学を希望していた受験生たちは危機感を感じとった。当たりまえだ。誰だって死にたくない。世界最先端の技術の宝庫。ISという、世界で最も注目され発展していくだろうと思われる分野を学べる最高の環境。そこを卒業すれば、将来を確約されるだろうエリート校。そんなIS学園だからこそ、毎年集まる受験生は世界の垣根を越えた膨大なものであった。
栄光か死か。極端だが有り得ないと考えた子供たちと、何よりもその保護者達が待ったをかけた。誰だって、自分達の我が身と子供が大事なのである。子供の一生に関わるからこそ慎重になる。高校受験とはまさにそういったものだが、この学園の生徒にとってはまさにその命懸けなのである。
しかし、それでも子供達はタフだった。むしろ、三分の一とはいえよくもまぁ集まったものである。
「この学園の生徒が妙に『濃い』理由が分かった気がします」
「そりゃぁまともな神経してたらこんな学園を受験しないよ」
「ですねー」
「「「HAHAHAHAHAHAHAHA!!!」」」
「うん、まさに君らがその理屈を体現してるよね!!」
「おやまぁ織斑一夏。貴方も呼ばれてきたのですか」
生徒会室に新たなる影がひとつ。この学園唯一の男子、織斑一夏である。彼もまた、今年の受験に大きく関わる人物であった。なので彼も呼ばれたわけなのだが。
「成程。織斑一夏が呼ばれた理由がなんとなくわかりました」
「え?」
さっそく察した真季奈である。その理由とは?
「貴方みたいな性犯罪者がいる学園なんて怖くて受験したがらないでしょうね」
「なんてひどい風評被害!?」
「その通りよ!!」
「えぇッ!?」
真季奈のあんまりな言葉に否と一夏は叫ぶが、まさかの声が。楯無さん、マジですか?
「あのね織斑くん? 性犯罪者はマッキーの言い過ぎだけど、実際に男子が学園にいるって理由で受験を取りやめにした子達もいるみたいだよ?」
「……えぇ~~?」
「だから言ってるじゃないですか。こんな学園を受験するのは頭のネジのイカれた人間だけだって」
IS学園は女性の、女性のための、女性にだけに受験を許されたエリート校である。故に、受験希望者は女尊男卑の思想に染まりきった女子たちばかり。そんな彼女達に、男子の存在を許せるわけもなく……。
「まぁ当然、抗議も多かったんだよね」
「酷いのとか、『私が受験するんだから男子は出て行け!』って言う子もいたわよ」
「……あの、リアルにへこむんだけど……泣いていい?」
ダメ。
ちなみに。受験を取りやめた理由に一番多かったのが『危険である』。時点で『男子がいるから』であり、最後は『あまりに大騒ぎがすぎる』である。
「なんですかねこの三つ目の理由?」
「「「さぁ?」」」
「自覚ないんかいアンタら!!!」
女性陣の真面目な思案顔にもの申さずに居られない織斑一夏であった。この学園の悪評をばら撒いているのは、確実にこの場の面々である。
「とにかく! なんとしても見学に来た受験生を逃しちゃいけないの!!」
「さらに言うと、地元の有名私立である聖マリアンヌ女学院の生徒とか尚更」
「高等部へのエスカレータを蹴ってまで受験してくるってのも話題になりますしね」
「あの、その中には俺の幼馴染も居るんですけど」
女三人集まれば姦しいと言うが、このメンツに限って言えば恐ろしいとしか表現できず。呼ばれたというのに蚊帳の外に置かれた自分はどうすれば? と頭を悩ます織斑一夏であった。
「よし! それじゃぁ行くわよ! 作戦名『臭いものには蓋をしろ見学会!!』」
「まずは地雷撤去から始めましょう!」
「学園全体の大掃除! 特に学生寮なんかは入念に!!」
「不安しかねぇ!?」
叩けばホコリの多い学園である。
そして見学会に戻る。
この日のために学園内は大規模な大掃除が執り行われ、道には地雷のひとつも落ちて無かった(おかしい)。部活動と称して学園中をパパラッチして回る新聞部も寮部屋に監禁したし、ISの装備をちょろまかして遊んでいる可笑しな部活も真季奈が調教しておいた。他にも怪しげな活動を行うπ教団も抑え、暴走しがちな用務員のおじさんにも休みをあげた。
体育館で集まった全国からの中学校の見学者に教員からの説明会を終え、各校の生徒たちはそれぞれ案内役の生徒達の先導の下、比較的マシになったIS学園へとバラバラに散っていった。
聖マリアンヌ女学院の生徒たちの担当は、志波真季奈と織斑マドカである。他も主に代表候補生が担当して案内している。それは、ISの専用機持ち、もしくは国家代表とその候補生は知名度、人気の両方が高く、憧れの的だからだ。つまり、客寄せパンダの扱いである。
「(ふっふっふ、完璧です! これで何も起きなければ、いえ、起きる要素などありえません!!)」
「~~で、あっちがISの研究棟や警備員の宿舎があるエリアだ。基本的に生徒は立ち寄らない場所だから今回は説明しないし足を運ぶ必要はない。何か質問は?」
「あ、それじゃぁ先輩!」
「~~のことなんですけど!!」
真季奈が悪い顔で何やら企む横で、聖マリアンヌ女学院の生徒たちと案内人のマドカの説明は盛り上がっていた。意外と、彼女は面倒見が良かったようだ。
「あの人、やっぱり千冬さんに似てますね」
「まぁ織斑先生から人外強さと常識はずれな行動と年増なところを抜いた感じですからね、マドカさんは」
「あぁ、それは素晴らしい常識人なんですね」
マドカちゃんはIS学園の良心です。織斑千冬? 素手でIS戦をするような体罰教師が常識的なわけないじゃないですか。
マドカを中心に盛り上がる聖マリアンヌ女学院の生徒たち。その輪から離れたところで、志波真季奈と五反田蘭は二人で話しながら歩いていた。
「本気で受験するつもりなんですか? IS学園」
「……はい。差し支えなければ何か合格へのアドバイスとかあります? 勉強するポイントとか」
「うーん、わたしそもそも裏口入学ですし」
「……うわーお」
世界中の受験生を敵に回す発言だった。何せこの志波真季奈。政府の要請で入りたくもないIS学園に入学したのである。入試をボイコットするような彼女に受験勉強の文字はない。
「ま、IS学園は工業系の専門学校ですから。数学さえできてれば後は問題ないですよ」
「いや……最低でも全教科九割は取れないと無理って噂なんですけど……」
「え? テストって満点以外の点数ありえるんです?」
「もうやだこの天才児」
生まれてこの方、テストで満点以外を取ったことのない少女の発言であった。ちなみに勉強時間は授業中のみ。予習復習なにそれ必要なの?といった具合である。
「ちなみにIS適性率とかは受験を受ける最低条件ですので、自分がA判定だからってあぐらをかいちゃダメですよ?」
「うっ……はい」
IS学園は受験者のIS適性率すら受験資格に盛り込まれている。ISを動かせない者に学園で勉学を学ぶ資格はないというわけだ。
なので、ペーパーテストで点数を取るのと同時に、受験者IS適性でも順位が決まり、その両方の総合順位で合格者は決まるのだ。
「ま、A判定なら余裕ですから大丈夫ですよ。専用機持ちでもなかなかいませんし」
「そ、そうですよね!」
「もしも受かったら、合格祝にまた後ろに乗せてあげますよ」
「ホントですか!?」
『後ろ』とは、真季奈の愛車、『風雲再起』の後部座席のことである。実は蘭。彼女は真季奈とのツーリングが密かな楽しみだったりする。真季奈が街をバイクで徘徊(逃亡)中に偶然見つけた彼女を面白半分で乗せたのが始まり。
そうしたら………何故かはまったのだ。
五反田蘭のIS学園への受験理由は織斑一夏への恋慕であるが、恐らくそれがなくとも今の彼女ならIS学園を受験するだろう。
彼女は既に立派な、スピード狂であった。
「ビルを壁走りしてそのまま屋上を飛び渡るのってどうやるんです?!」
「それは蘭ちゃんが免許を取ったら教えてあげますよ」
警察の白バイ部隊に追われることになるので止めてください。ちなみに、白バイ部隊は習得済みなのでどこまでも追いかけてきます。
「志波真季奈! 次は部活動の見学でいいんだったな!?」
「えぇそうですよー。じゃぁ蘭ちゃん、行きましょうか」
「はい!」
そして部活見学。そこで彼女たちが見たものとは。
「オラぁッ! 波動●!!」
「ボールは友達ぃ!!」
「カバディ! カバディ! カバディ!」
「いっけー! 私のサイ●ロンマ●ナム!!」
「私の先行、ドロー!」
自由すぎる部活動をする生徒たちだった。
「「「……………………………………」」」
「……貴様ら」
「おいこらテメェら全員正座」
「「「ひぃッ! 姐さん!?」」」
笑みは崩さず怒気を発して真季奈は言う。指向性の怒りの波動は幼き受験生には届かずにお馬鹿なIS学園生のみに包まれる。
台無しである。イカれた団体のみに対策をしていたのが裏目に出た。
「まさか、一般の部活までこの有様だったとは」
「一般か? なにか変な部活がなかったかおい?」
頭が痛いことにこの学園。普通の部活動にすらまともな奴らがいなかったとは……真季奈たちの失態である。とりあえず全員に説教をして真面目に部活をするように言い含めおわた所なのだが……聖マリアンヌ女学院の彼女たちを見るのが怖い。
やはり、失望されただろうか?
が、
「「「凄い!!!」」」
「うそん」
意外と好感触である。そんな馬鹿な。
「ねぇマドカちゃん……なんだか、嫌な予感がします」
「奇遇だな。私もだ」
「あ~~、その、すいません」
真季奈とマドカに嫌な感触が残った。もしや、いやまさか? そんな二人を察してか、蘭が先に謝罪する。
それはつまり……?
そしてISアリーナへ。
「ここではISを使った模擬戦や訓練を行う。他にも観客を招いての公式戦も行なったりする場所だ」
「うわぁ」
「広い……」
その観客席からフィールドを見る彼女たちの視線の先にISを纏った生徒達が見えてくる。
「あ、一夏さんだ」
「えぇ。………ちなみに仕込みです」
「あ、はは、は」
『白式』を纏って現れた一夏の姿に心が弾む蘭の耳元に、小さく真季奈が囁く。それを聞いて苦笑いを浮かべる彼女だが嬉しさのほうが大きい。なにせ、入学するまで見られないと思っていた想い人のISを纏った姿だ。
「カッコイイ……」
「(え? どこが?)」
「(わからん……あんなののどこがいいんだ?)」
一夏の姿に心を奪われ、惚ける蘭を理解できない真季奈とマドカ。彼女達はまだ、恋というものを知らなかった。
「……本当に男性がISを操縦しています」
「凄いなぁ、いいなぁ」
「あたしも乗りたーい」
「絶対合格する!!」
聖マリアンヌ女学院の生徒たちはエリート校なこともあり生徒の教養レベルも高い。女尊男卑の社会においても男性を下に見る者は少なく。むしろ、女子しかいない環境故に男子と出会いに憧れる傾向が強い。例外も当然あるが、この場にいる受験生達は織斑一夏を見ても嫌悪を抱くものはいなかった。
だからこそ、この場に織斑一夏を呼び、IS操縦のデモンストレーションを行わせたのだ。もしも女尊男卑思考の者がいれば、この時点で受験を諦めるだろう。それはそれで問題だが、入学してから問題を起こされても学園のイメージに関わるので仕方ない。災厄の芽はあらかじめ抜いておくに限るのである。
「じゃぁ皆さん。次はISの整備を見学して、実際にISにも乗ってみましょうか」
「えぇ!? いいんですか!!」
「やった! 感激!!」
「来てよかったーー!」
真季奈の言葉に色めき立つ彼女たち。しかし、
「コラ、志波真季奈! まだ学園の生徒でない彼女たちをISに乗せることなど許されんぞ!」
「「「……えー」」」
マドカの言葉で一気にその勢いをなくす。学園の秩序の代表である風紀委員の彼女の前で違反行為など出来るはずないのだ。
「……だがまぁ、せっかくだ。飛びさえしなければ、触るくらいなら問題ないだろう」
「「「ありがとうございます!!!」」」
と思ったら、まさかの寛大な処置である。
「見事な飴と鞭ですね」
「元からそれくらいならOKでしたので。後で飛んでみたいとか言われないようにする交渉術の一つです」
「成程。勉強になります」
見学者にISを直に触ってもらう。これは最初から予定していたことだ。しかし、学園の生徒でない者は規則上、ISを纏って行動をしてはならない。なので、行動に線を引いたのだ。そのことに気づき、改めて説明されれば蘭も納得する。彼女は聖マリアンヌ女学院の生徒会長。こういった処世術は少しばかりかじっているのだ。
「……蘭ちゃん、IS学園の生徒会に入りません?」
「この学園だと遣り甲斐が有りすぎそうですね」
『やる』とも『やらない』ともハッキリ返さない辺り、彼女はしっかりしていた。
「じゃぁ、わたしのところに来ます?」
「それなら是非!」
実に将来有望である。
その後、IS整備場でISの体験会を味わった彼女たちは場所をIS学園の校舎内を見て回った。そこでも最新の設備に驚きつつも感動するばかりだった。
「教室のドアが自動ドア……」
「黒板が空中ディスプレイなんて……」
「教科にISの授業……本当にISの専門学校なんだ」
「うわ! この机、ディスプレイ内蔵のタッチパネル式!? なんに使うの!?」
伊達に無駄に金を掛けまくっている設備である。驚いてもらわねば困るぐらいだ。
「ちなみに蘭ちゃん」
「なんです姐さん?」
驚いている彼女たちとは別に、
「こんだけ凄い設備でも、結局はノートと鉛筆で授業受けているんですよ? 笑えません?」
「私は何も聞きませんでした」
しっかりと現実を突きつけられ、受け止めている蘭ちゃんでした。あれ? 本当に受け止めてる?
そうして、教室、理科学室、音楽室、実験室、多目的ホール、家庭科室、図工室などを見て回り、その行く先々で驚きと感動を味わった後。彼女達は学生寮へと来ていた。
「はい、ここが皆さんが合格したら入る予定の学生寮です。今は三年生が生活をしていますが、彼女たちが卒業すれば一年生のものとなります」
「君達に見てもらうのは誰も使っていないモデル用の空き部屋だが、基本全て同じ作りなので安心してくれ」
真季奈達の案内で、彼女達は三年生が暮らす学生寮へと訪れていた。外見は四階建てのホテルのようで、内装もまさにそれだった。
「凄ッ! ひろーい!!」
「これで二人部屋!? ウチの家の居間よりも広くない!?」
「バス・トイレ完備でキッチンもある! なのに勉強机と大きなベッド!」
「ヒャッホー! このお布団やわらかーい!!」
「大きなクローゼットにパソコンが一人につき二台!?」
冗談のような本当の話。聖マリアンヌ女学院の五名は驚きが爆発した。無理もない。なにせ、この部屋。高級にも程があるだろうというものだ。
「蘭ちゃんまで……まぁ実際、限度がありますよね」
「この学園の生徒が遊び呆ける原因でもあるしな」
「………ダメですね」
「………ダメだよな?」
この学園で最も遊び呆けている真季奈と、全く遊ばないマドカが見せた意外な意見の一致であった。
実際問題、広い部屋でダラダラし、パソコンでネットサーフィンに興じ、あまつさえ、中華鍋を振るう生徒までいる始末。真面目に設備の改善を生徒会に相談するべきか? いいや、自分の首を絞めることになる。やっぱ止めよう。と、自分自身の利益を考えた結果、真季奈は即座に却下する。
「さて、それじゃぁ最後に食堂でご飯を食べてお開きとします。最後に体験レポートを書いていただきますので用紙を渡しますね」
「食事をしながらで書いてくれて構わん。とりあえず食堂へと案内しよう。ちなみに、私達の奢りだ」
「「「はーい!! ありがとうございます!!」」」
案内を終え、最後にIS学園が誇る豪勢(すぎる)な食堂メニューに舌鼓をうてる。そんな素敵な計らいに彼女達は感激し、食堂へと足を向けたその時!
『あ、しまった!』
「「げッ!?」」
「「「えぇ!? 犬!!!?」」」
二足歩行でポテチを食べながら廊下を歩く、黒い柴犬の姿を見てしまった!
「「「…………………………!??!?」」」
「あ、いえ! これは、、そのぉ」
「お前達、アレはアレでアレだから!」
「二人とも落ち着いてください! 今なら唯の器用なワンちゃんで誤魔化せます!!!」
変な物体に硬直し混乱する純真な少女達と、見られたら不味いもが見つかったというバツの悪さから慌てる案内者たち。そしてそれを収めようとする事情を知る適合者。その場は混乱を極め、
『にゃ、にゃ~ん!』
「「「猫!?」」」
「お前犬だろうが!!」
『あ、違った! ツ、ツクツクホーシ! ツクツクホーーシ!!』
「蝉でもない! というかどうしてそのチョイスなんだ!!!」
『キャーー見ないでのび太さんのエッチーーー!!!』
「「「もう黙れよお前!!!」」」
そうして走り出した柴犬。勿論、二足歩行で。その姿を言葉なく見送った彼女達は……というか、案内役の二人は、
「「(………終わった)」」
と、絶望したという。
その後。
「なんであんなところで出てきたんですかーーー!!!」
『だって外出たらダメって言うから避難してたんだよーーー!!』
「一年の学生寮にいろって言ったでしょーーーー!!!」
ビシッ! バシンッ!! と鞭打つ音が生徒会室に響く。天井から縄でグルグルと簀巻きにされて吊るされ、デウスが真季奈に摂関を受けていた。
そんな光景を余所に生徒会室では聖マリアンヌ女学院の生徒たちが書いて提出したレポートを眺める役員たちがいた。
「そんなに悪いこともなかったんじゃない?」
「え?」
楯無がニコニコと笑みを浮かべて言う。手には読み終わったレポート用紙が握られていた。
「マッキーも読んでみて」
「あ、はい」
簪が真季奈に五人分の体験レポートを渡す。そこに書かれた内容を見てみると。
「漫画みたいなかっこいい部活動が素敵でした!」
「今度はISで空を飛んでみたいです! いいえ、飛んでみせます!!」
「皆さん遊んでいるみたいでしたけど真剣で格好よかったです!」
「最後のワンちゃん! アレってまた会えますか!?」
「一……最新設備と恵まれた環境、何よりも活力あふれる校風に(中略)絶対受かります」
「ね? お疲れ様」
「これ、最後の蘭ちゃんですね。『一夏さん~』って一回書いて消したあとがあります」
「………こいつら、入学したらまた学園が騒がしくなりそうだな」
結構、いやかなり不味い光景を見せたと思っていたが。これなら彼女たちも来年にはこの学園の後輩になってくれるかもしれない。
そう思い、皆が笑みを浮かべたところで。
「じゃ、来週はアメリカとイギリス、その次の週は中国とロシアからの見学者が来るから。よろしくね二人とも」
「「え?」」
簪からの慈悲なき言葉が送られる。
まだ終わりじゃないの?
蘭ちゃんがヤバイ。
この作品は、妹キャラがどんどん可笑しくなっていくような気がします。その内真季奈との交流を書いていく予定です。
IS学園の広さついて。
色々と書きました。一応アニメの映像とかを参考にしましたが、……広すぎで豪華すぎますね。まぁ世界最先端技術の宝庫というだけはあると思います。そんな学園に受験する生徒はそりゃぁ大変ですよ。
篠ノ之束はホント謝ったほうがいい。誰にって、受験生に。テロ起こしすぎ。多分、受験止めた子とか居るんじゃないかなぁ?
一夏と箒は強制入学。(多分試験受けてない。というか、受けたら落ちる)
鈴は受験終了後に無理言って入学。(一回断ったのにどうやった!?)
ラウラ、シャルロットは編入。 (試験受けたとしても本国のコネの疑惑あり)
セシリアは学年主席。 (代表候補生で専用機持ちだから落ちる要素なし!)
簪は入学前から日本代表候補生だけど機体は未完成。(試験受けただろうけど、多分優先枠)
なんということでしょう。こいつら、まともに試験受けたやついねぇ(笑)。いえ、ちゃんと試験受けたと思いますが。普通に試験会場に足を運んだりはしていないと思います。いいのかおい。(作者の勝手な妄想です)
それでは皆さん、受験頑張ってください。
また次回でお会いしましょう。
感想待ってます。