アルティの工房主催のライブは、ローレライやフォルテの尽力、そしてルリ・ファミリーと、成り行きではあるがスポンサーとしてのギルド評議会の縁の下の力持ちとでも言うべき活躍で盛況の内に幕を閉じることとなる。
その結果再びの宣伝として目覚ましい効果があり、またどこからか、かの『ヒスイ商会』が工房のバックに付いたという噂が実しやかに流れると、その存在を知っていた一部の富裕層からも一目置かれる立場になったこともあり、工房の業績は更に拡大、結果としてルリ・ファミリーから人員を補充したにもかかわらず以前と忙しさが変わらない、という喜ぶべきか嘆くべきかわからない事態へと陥っていた。
しかし以前と違う部分も確かに存在し、ヒスイからの人員の斡旋、並びに今までトンカ外で活動していたルリ・ファミリーの面々も少しづつではあるが工房へと合流し始めているため、そう遠くない内に人的余裕が出るだろうという予測が立っていた。
そしてその予測は正しかったようで、ライブから一月、二月と時間が立つ毎に、宣伝効果が薄れてきた、新たに入ってきた人材が業務に慣れてきたなどの理由もあるが、工房としての業務に余裕が出来始めていた。
そうこうしている内に、ライブから数ヶ月の月日が流れ、かつて冒険者として活動していたメンバーである、ルリ、セレス、フェネアン、シュレムの四人はとある理由により工房を離れて活動をしていた。
「それにしてもここは相変わらず暑いわねぇ……」
滴る汗を拭いながらルリがうんざりしたように告げると、セレスはどこか困ったように笑いかけながら、彼女に優しくたしなめる。
「まぁまぁルリさん落ち着いて。アイアンサウスは元々南方で暑い気候ですし、更に鉄火山の熱気に、鍛冶場の熱まであるんですからある程度は仕方ありませんよ」
とは言うものの、彼女自身もこの熱と汗には辟易しているようで、声にはそこまで元気がなかった。
だが彼女が言うこともあながち間違いではない。
ここアイアンサウスは元々軍事都市として、そして世界の武器庫としての意味合いが強く、この都市の各地に鍛冶場や工房が点在し、常にどこからか、トンテンカン、と鎚を振るう音や、都市内に存在するサウスダンジョンから鉱物を運ぶ蒸気機関車の汽笛、高炉や竈などの熱気が漂ってきている。
また国家としてのアイアンサウスはかつて連合国家の盟主として、工房都市のトンカシティ、そしてアクロニア大陸の南西に位置する良質な練炭であり、都市の名を関したモーグ炭の供給地である、炭鉱都市であるモーグシティを傘下に従えていた、と言うよりも二カ国を実質的な属国としていたが、近年その二カ国が連合国からの脱退という名の独立をしたことにより、三カ国の外交関係に少しばかりの緊張状態になっていた事もあり、殊更に自衛のための武具を製造しているといった有様であった。
フェネアンもまた二人に同調するように愚痴をこぼす。
「それにサウスダンジョンからも熱気が漂ってくるし、本当この暑さには嫌になっちゃうわよね」
そう言いながらフェネアンはふとシュレムの方を向くと、ニヤリといたずらっ子の笑みを浮かべる。
「そう言えば、シュレム? 水も滴る麗しい女の子三人に囲まれてるハーレム状態だけど、なにか感想はないの~?」
フェネアンはからかうようにシュレムへと問いかける。
確かにシュレムは今ベクトルの違う三人の見た目麗しい少女に囲まれていて、見知らぬ人間からしたら、羨むか妬むかという状況であろう。
なおかつその少女達は、現在滴る汗のせいで、体のラインが分かりやすくなっている状態でもあるので衆目を集める結果となっていた。
なお、そのことを突きつけられた本人はどこか呆れた顔でフェネアンを見ているが、ほんのりとではあるが、顔を赤らめていることから、多少の効果はあったのかも知れない。
最もそれ以上に効果があったのは近くで聞いていたセレスであり、彼女は恥ずかしさからか、顔を真赤にして躰を隠すような仕草をする。
だがそれは彼女の豊満な肉体を却って主張させることになって、恥じらう美少女を見ようとする衆目を集め、それをさらに彼女が恥ずかしがり、そしてさらに衆目を集めるという悪循環に陥っていた。
流石にこんな状況になるとは思ってなかったようで、発言をしたフェネアンは少し後悔しているのか顔を引き攣らせ、シュレムは心底面倒くさいという感じに頭をガリガリと掻いた後に、周りに聞こえるような声量で話し出す。
「あ~、皆さん? 彼女は、此処に住んでる心優しいお姉さんの知り合いだから、あんまり不躾な視線向けてるとあの人から嫌われるかも知れないぜ?」
そのシュレムの声を聞いた周りの人たちは、シュレムが言う心優しいお姉さんと言われた人物に心当たりがあるのか、ギョッとした顔をする。
そして嫌われたくはないのか、ある者はコソコソと、またある者はセレスに頭を下げて簡単な謝罪をしてから足早に去っていく。
そうして暫くすると元の静寂な、と言うと語弊がありそうだが槌の音などが響く平常な状態に戻ってきた。
そのことに全員、特にセレスは安堵して胸を撫で下ろしている。
その中で頭の痛みを堪えるかのように額に指を当てていたシュレムはフェネアンへ軽い調子ではあるが注意する。
「全く、フェネアン、遊びすぎだ」
「アハハ、ごっめ~ん。まさか此処まで大事になるとは思ってなかったよ」
流石に悪いと思っているのか、彼女は軽い調子に見えるが謝罪の言葉を口にすると、今度はセレスの方を向き深々と頭を下げる。
「セレス、本当にごめんなさい!」
「あ、いいえ、フェネアンさん。顔を上げてください」
セレスはフェネアンのその行動に、慌てたようにオロオロしながらも頭を上げるように促す。
その言葉を聞いたフェネアンは言われたとおりに頭を上げて、苦笑いをしながら両手を合わせて軽い謝罪をすると、セレスも笑いながらその謝罪を受取る。
一連の行動を見ていたルリは騒動が一段落したのを見計らって三人に出発しようと促す。
「それじゃ全員、先に進むわよ。ダンジョン前にヒスイが手配したお手伝いさんがいるって話なんだから」
それだけを告げると、ルリはさっさと先に進み始める。
それを見た三人は、ルリに続くように歩みを進めるのであった。
先を急いだ四人は程なくして街の奥にある坑道、サウスダンジョン前にたどり着く。
そしてその入口に二人の少女の姿があった。
一人は銀髪のセミロングに黒のリボン型のカチューシャを付けて、ぴょこんと一房だけ立ち上がっているアホ毛に、白を基調として各所にフリルをあしらった可愛らしいデザインのノースリーブタイプのドレスを身にまとっているが、その片手には可愛らしい見た目には似つかわしくない無骨な大砲を持っている小柄なドミニオンの少女、名を御魂・アリア。
もう一人は白髪のロングヘアーで頭頂部から狐の耳が生えており、その豊満な肉体にまとうのは、どこか貴人を思わせる豪華ながらも可愛らしく改造された丈が短く全体的に肌の露出が多い和装の服だが、それ以上に目を引きつけるのは彼女の背に見える【九本】からなる狐の尻尾。
彼女こそが、先程シュレムがセレスを見ていた人々に告げた心優しいお姉さんその人であり、その正体は傾国の妖女である九尾の狐、その物語から生み出された存在である玉藻・ロア。
なぜ大妖怪である九尾の狐の化身とも言える彼女を、シュレムが優しいお姉さんと言ったり、アイアンサウスの人々が慕っているのかというと勿論これには理由がある。
その理由というのは彼女自身が語られた物語、そしてアイアンサウスのお国柄が関係してくる。
まずは彼女の物語についてだが、本来の物語としての彼女は最初は人畜無害な存在として人々の手助けをして、少しづつ確実に人々を自身に依存させて、完全に彼女がいないと何も出来ないように堕落させた後に、邪悪な本性を表し、自身を殺生石に变化させてその身から流れ出る瘴気によって国を滅ぼすという存在として描かれていた。
彼女を始めとするロアたちは基本的に、自身が描かれた物語から逸脱することは出来ず、事実彼女自身もまた途中まではこの物語通りに行動していた。
しかし此処でアイアンサウスのお国柄、もしくは国民の気質とでも言うべきか、が関わってくる。
彼らは基本的に職人気質であり、そして生真面目な人間ばかりなために、彼女が物事を手伝っても感謝することはあれど、依存や堕落からは縁遠い存在であった。
故に彼女の性格が、慈悲深く世話好きな性格から、物語で描かれていた邪悪な性格に変わることはなく、そのままアイアンサウスの人々と平和に暮らすことが出来ていた。
無論そのまま平穏に終わることはなく、あるとき彼女は自身が物語に語られた存在であることに気付き、そしてこのままでは殺生石に变化して国を滅ぼしてしまうということを理解してしまった事で、この国の人々のために人知れず辺境へと旅立とうとするが、既に時期を逸しておりアイアンサウスで殺生石になってしまう。
このままでは自身の手でアイアンサウスを滅ぼしてしまう、と悲観していたその時、当時各地で起こっているロアが原因の事件を調べていた冒険者、後に御魂たちの件にも関わった人の良い冒険者の力を切っ掛けとして、アイアンサウスの大人たちの玉藻・ロアに対しての感謝の想いが、そして子供たちのお姉ちゃんともっと一緒に暮らしたい、遊びたいという願いが奇跡を生み、彼女の物語を邪悪なる妖怪が国を滅ぼす存在とは別人であると、彼女本来の物語を否定して、彼女の優しさこそが真実であると物語の筋書きを変えることにより、本来の物語の呪縛から開放することに成功した。
その後彼女自身は、今後いつまた殺生石に变化するかわからないから、と国から離れることを望むが、多くの人々からの反対や説得があり、また冒険者からももしかしたらなんとかできる可能性があるかもしれない、という説得を受けて冒険者とともに行くことを決意する。
その結果が如何だったかというと、彼女が現在此処で元気に暮らしている、それが全てと言えるだろう。
ルリたちを待っていたと思われる二人は、彼女たちが来たのを見てくると大きく手を振って出迎える。
二人のその姿を見たルリたちもまた小走りで二人の元へと向かう。
そして二人の元へたどり着くと、ルリは軽く息を整えつつ玉藻へと話しかける。
「ごめんなさい玉藻、待たせてしまったかしら?」
ルリのその言葉に玉藻はフルフルと首を軽く左右に振った後に否定する。
「ううん、そんなに待ってないよ」
「そうですね、玉藻さんはついさっきまでいろいろな人のお手伝いをしてましたからね」
横からアリアが玉藻の言葉を肯定すると、彼女はどこかバツが悪そうに苦笑しながら後頭部を掻く。
それを見たルリは納得したような表情をしつつも呆れたような声を出す。
「貴女も本当に相変わらずねぇ」
「なんてったってすーぱーお手伝いさんですから」
玉藻がその事を誇るよう自信満々に胸をそらすと、彼女の姿を見ていた全員がどこか呆れながらも、彼女らしいと笑い出す。
その姿を見た玉藻が急に笑い出した面々を見て、よくわからないといった表情を浮かべるが、それを見たセレスが彼女に軽い調子で告げる。
「気にしないでください、玉藻さんらしいなって思ってただけですから」
「え、そ、そう?」
セレスの言葉に彼女は釈然としない様子ながらも取り敢えずは納得したようであった。
玉藻は気を取り直すように軽く咳払いをして、居住まいを正しながらルリへと話しかける。
「んん。それで私達はルリちゃん達のお手伝いをヒスイさんにお願いされてるわけなんだけど、詳しいことを聞いてもいいかな?」
「あら、彼から内容について聞いていないの?」
「ちゃんと聞いてはいるけど、内容に語弊があったら行けないから確認のために、ね?」
賜物言葉に納得がいったのか、ルリはなるほどと頷きながらヒスイとのやり取りを思い出していた。
話はルリたちがアイアンサウスに到着する数日前に遡る。
その日、偶然同じ時間に暇な時間が出来たアルティとルリは飛行庭の外で軽いお茶会を行い、キリエが用意した軽食に舌鼓を打っていた。
「うん、やっぱりキリエさんが作る料理って美味しいよねぇ」
「本当ね、飽きが来ないんだもの」
「あら、ありがとうございます」
二人が緩みきった至福の表情で話していると、いつの間にか近くに来ていたキリエが感謝の言葉を述べる。
その彼女の手には一通の手紙が握られていた。
手に持った手紙をアルティに差し出しつつ彼女に話しかける。
「アルティさん、ライ君からお手紙ですよ」
「ライ君から? 珍しいけど何かあったのかな?」
アルティはキリエから告げられた差出人の名に、不思議に思いながらも手紙を開封して読み進める。
彼女たちがライ君と呼ぶ人物。
かつて此処、アルティの工房で暮らしていた仲間であり、そして彼女たちと同じ御魂で現在は炭鉱都市であるモーグに住み、彼の地でとある仕事の手伝いをしている小柄なドミニオンの少年、名を御魂・ライ。
彼の人柄を一言で述べるのならば、責任感の強いやんちゃ坊主だろうか。
もともと彼は当時、現在も続いているがDEMとの種族間戦争が起きていたドミニオン界、そこで暮らしていた民間人であり、ある時彼が住んでいた集落にDEMが襲撃をかけ、彼自身も家族を守るために奮戦するも集落は壊滅、彼自身も死亡するが、その時彼が使用していた鉤爪が御魂武器でありそのまま御魂化。
その後彼を取り込んだ御魂武器は各地を転々とし、最終的にモーグにある倉庫に流れ着いて、そこで御魂として覚醒。
覚醒した後は身元不明の少年として、モーグの住人たちに手厚く保護され、後にアルティたちと出会いとある理由で彼女たちの手助けをするために彼女たちと行動をともにする。
そしてアルティを中心とする一連の騒動が終わった後に、モーグの人々に対する恩義を返すために彼の地へと戻り現在へと至る。
その彼からの手紙を読み進めるうちに、少しづつアルティの表情が険しくなっていく。
そのことに心配してルリが声をかけようとするが、その時外出から帰ってきたミコトがアルティに声をかける。
「アルティどうしたのよ、そんな険しい顔をして?」
「あ、ミコトちゃんお帰りなさい。えぇっとね……」
「あ、ちょっと待ってアルティ。ヒスイが来てるのよ。なんでもアルティにお願いしたいことがあるとかで」
その言葉を聞いたアルティは、ライからの手紙をテーブルに置きつつミコトへと告げる。
「え、あ、そうなの? それじゃ、此処につれてきてもらっていい?」
「それには及びませんよ」
その場にいた一同は声の聞こえた場所に顔を向けると、そこには件のヒスイと、その斜め後ろにキリエの姿があった。
どうやらヒスイが来ていることに気付いたキリエがこの場に招いたようであった。
「お久しぶりですねアルティさん」
「お久しぶりです、今日はどうしたんですかヒスイさん?」
「いや、何、以前言っていたアルティさんに頼む仕事の準備ができたので、こうやって依頼をしに来たんですよ」
ヒスイの言葉にその時のことを思い出したのか、アルティは納得がいったように手をぽんと叩く。
そしてヒスイに対して、依頼内容についての確認をする。
「それで、ヒスイさん。依頼というのは?」
「ええ、依頼といっても難しいものではありません。サウスダンジョンの奥で発掘作業をしているタタラベの青年に届け物をしてほしいのです」
ヒスイから依頼内容を聞いたアルティは、確かに簡単だけど、と呟きつつ思案顔になる。
その姿を見たヒスイは、なぜなぜ簡単な依頼のはずなのに悩むのかが理解できずに、アルティに対して質問する。
「アルティさん、なにか依頼内容について問題がありましたか?」
「いえ、依頼については問題ないんですけど、実は……」
そう言いつつ、彼女は先ほどテーブルの上においたライからの手紙を持つとミコトに渡し、ミコトがそのままヒスイへと渡す。
「これは?」
「ライ君からの手紙なんです。読んでみてください」
アルティに促され、手紙を読み始めるヒスイ。
途中まで彼らしい言葉で今までの事と、現在も元気にやっていることが書かれていて顔を綻ばしていたが、手紙の最後あたりを見て一気に表情が険しくなる。
そこには衝撃的な文面が綴られていた。
──
その後は、その御魂と出会った経緯と人柄、そして共に行動していた守護魔と呼ばれる存在について綴られていた。
──守護魔とはこの世界においてありとあらゆるものに宿り、そのものを守護する存在、概念としては八百万の神々に近い存在とされている。
だが本来守護魔はそこまで格が高い存在ではなく、それ故に人々に認識される存在ではないが、とある力の影響で一つの生命体として顕現できている。
その力はロアのときにも軽くではあるが語った、この世界群特有の力である【想いの力】
そもそもこの想いの力と呼ばれるエネルギーは、この世界群の外から来た高位の精神生命体曰く、マナとも呼ばれる物質であり、その力は名前にもつけられている想いを具現化する一種の願望器とも言える能力を秘めている。
だがこの想いの力、願望器と言えば聞こえが良いが、実際には人々の夢や希望などの正の感情以外にも、不安や恐怖などの負の感情も具現化し世界を混乱させたこともある。
尤もその時は世界に思いの力が溢れかえり、力の暴走が起きていた事、そして人々の感情が負の感情に誘導されていたことも原因ではあったが。
「……まさか、まだ活動をしていなかった御魂がいたとは思いませんでしたね」
「うん、あたしもまさか他に御魂がいるとは思ってなかったから、出来れば今からでも確認しに行きたいんだ」
「それは、確かに貴女の立場ならそうでしょうね」
アルティの言葉に納得したヒスイは依頼を取り下げようとするが、その時。
「あら、ならアルティの変わりにわたしがその依頼を受けるわよ?」
ルリが発したその言葉に思わず二人が振返る。
その二人の動きを見たルリは、嘆息しながらも告げる。
「二人ともわたしが冒険者として活動してたってこと忘れてない?」
『……あ』
二人の忘れていたとばかりの光景に、ルリは今度こそ肩を大きく落として脱力する。
「本当に二人ともしっかりしなさいよ……」
そのルリの様子に流石に悪いと思ったのか、アルティは謝りつつもルリに質問する。
「……あはは、ごめんなさい。でもルリちゃん、大丈夫なの? たしかに今は暇だけど、すぐに忙しくなるんじゃ?」
「それなら大丈夫よ。今の案件は後二日もあれば解決するだろうし、その後は比較的暇になるはずよ」
ルリのその返答にアルティは安心しつつ、申し訳無さそうに彼女へと告げる。
「そうなんだ。ごめんね、じゃあルリちゃんお願いしてもいい?」
「ええ、問題ないわ。その代わりと言ってはなんだけど、シュレム、フェネアン、セレスの三人はこっちに付いてきてもらうけど良いかしら?」
「うん、それは大丈夫。こっちがお願いする立場だし、それに三人はルリちゃんと
アルティはルリの提案に何も問題はないことを告げると、ヒスイもまた二人にとある提案をする。
「なら、わたしの方でも助っ人の手配をしておきましょう」
その言葉に最初は首をかしげる二人だったが、助っ人になる人物について思いついたのか頷きつつ答える。
「なるほど、アイアンサウスということは」
「アリアちゃんに手伝ってもらおうってことだね!」
得意満面に言う二人の姿が可笑しかったのか、ヒスイは薄く笑いながら訂正する。
「ええ、ですが彼女だけではなく、玉藻さんの力も借りるつもりですよ」
その言葉に二人はびっくりしたようで、アルティは確認するように問いかける。
「え、玉藻ちゃんこの頃姿を見ないと思ってたけど、アイアンサウスに帰ってたんだ?」
「ええ、そのようですね。なのでこの際だから彼女の助力も借りようかと。仮に話を通さなかったとしても、勝手についてきそうですし」
ヒスイのその軽口に、アルティは思わずといった感じで笑いだす。
「あははっ、確かに玉藻ちゃんだったら、お手伝いします、って言って付いてきそうだね」
「ええ、私もそう思うからこそ、彼女にも話を通しておこうかと。ついでに運ぶ荷物に関しても彼女に預けておきます」
「え? でも、それって良いのかなぁ?」
彼女が迷うように指を唇に当てつつ首を傾げると、ヒスイは大丈夫だろうと答える。
「依頼内容については私から話しておきますし、アルティさん、今回は名代のルリさんですが、ともかくそちらに来てもらわないと先に進まないのでその点は大丈夫かと」
「あ~、いえ、そうじゃなくて、クエスト品を本来関係ない玉藻ちゃんに預けて迷惑にならないかなって」
「あぁ、そういうことですか。それなら当日までマーチャントギルドに預けておくことも出来ますし、問題ないかと」
その言葉に納得がいったのかアルティは頷きつつヒスイへと依頼の受託を告げる。
「なら、大丈夫そうですね。ではヒスイさん、以来に関してはこちらで請け負わせていただきますね」
「ええ、ではお願いいたします」
ヒスイはそれだけ告げると飛行庭から去っていった。
「それじゃルリちゃん改めてお願いね」
「任せておきなさい」
その後二人もそれぞれの仕事を始め、仕事が一足早く終わったルリは件の三人を引き連れてアイアンサウスへと向かったのだった。
思い出していた内容を玉藻に改めて告げると、玉藻もまたその内容に語弊がなかったようで頷きつつもルリに向かってヒスイからの預かりものである麻袋を渡す。
「うん、大丈夫そうだね。はい、これ」
「これがヒスイの言っていたお届け物なのね。意外と重いわね、これ。玉藻は何が入ってるのか聞いているのかしら?」
ルリが玉藻に問いかけると、彼女は含み笑いを浮かべながら質問に答える。
「うん、そうだね~。アルティちゃんに対してのプレゼント、かな?」
「?? タタラベに持っていく配達物なのよね?」
「うん、正確にはそのプレゼントのために必要になるものだよ。それよりも早く行きましょう」
玉藻は楽しげに、ごーごー! と、言いながらルリの背中を押しつつサウスダンジョンへと突撃していく。
他の面々もまた玉藻のテンションに圧倒されつつも、追いかけるようにダンジョンへと足を踏み入れるのだった。