──サウスダンジョンB1F
アイアンサウスシティが地表にある住宅街の上層、そして渓谷の下に作られた工房街である下層に分けられ、ダンジョン入り口がその工房街の奥にある事から入り口と鉱石の採掘場兼トンカシティへの飛行庭発着場である【マルクトの船着場】がある此処を地下一階として、地下三階まで掘削されている坑道と、もともと存在していた地底洞窟、そこにモンスターが住み着いた広大なダンジョンである。
そして足を踏み入れたルリと玉藻の視界に現在広がる光景は、前方には整備された、マルクトから鉱石やトンカの交易品を運ぶために敷設された線路とそこを行き交う蒸気機関車。
そして少し視線を外すと、薄暗い、ランプの灯火が仄かに煌めく坑道、そしてそこに対モンスター迎撃のために警備を行っているアイアンサウス兵の姿があった。
「それで玉藻」
「な~に~、ルリちゃん?」
楽しそうに自身の背中を押す玉藻に話しかけるルリ。
「いい加減、押すのやめてもらえるかしら!」
「えぇ~……」
ルリの抗議に渋々といった感じに押すのをやめる玉藻。
背中を押されるのが終わったことで一息ついたのか、ルリは玉藻に質問を投げかける。
「そう言えばわたし達、そのタタラベが居る場所のことを聞いていないのだけど、玉藻はどこにいるのか知っているのかしら?」
ルリの質問に玉藻は当然とばかりに答える。
「うん、知ってるよ。サウスダンジョンのタタラベと言ったら、大抵B3Fで作業してる汗だくのタタラベさんの事だからね」
「そうなのね、なら行きましょうか」
ちょうどそのタイミングで遅れて入ってきた面々も二人に合流する。
「ルリ様お待たせしました!」
「玉藻さん、勝手に先に行かないでください。私もヒスイさんからお願いされてるんですからね」
アリアが玉藻に苦言を呈すると、彼女は申し訳無さそうに獣耳と尻尾をシュンとさせて謝罪する。
「あう、ごめんね」
「玉藻さんなら問題ないとは思いますが、単独行動時に不測の事態が起きた場合、万が一という可能性もありますから、最低でもツーマンセル、現状では別行動する場合でもスリーマンセルが理想です。良いですね?」
「ごめんね、お姉ちゃん舞い上がってたみたい。ありがとうね、アリアちゃん」
玉藻に対して懇懇と忠告するアリアと、その忠告を受けて素直に謝罪と感謝をする玉藻。
そもそも彼女、アリアが何故こうも単独行動に危険性や複数行動の必要性を力説するかというと、自身の出自に関係する。
彼女はもともと資源戦争後期、DEMが三種族、三世界に侵略戦争を仕掛けた時にドミニオン軍の兵士として三種族連合軍に参加しており、当時の、絶望的とも言えるエミル世界アイアンサウス戦線に置いて御魂化する、すなわち戦死するまで戦い抜いた経緯を持つ。
御魂化した後は、永い間、資源戦争とエミル界に置けるDEM戦役、その2つが伝説として語られるようになるほどの時間を休眠状態で過ごした後に覚醒し、その後紆余曲折あって彼女の親友にして戦友である女性、彼女が戦争後に開業した工房で、代々の当主がその親友の名であるクリエを世襲するようになり、その子孫である今代のクリエと共に暮らしている。
なお補足としてアリア曰く、今代のクリエは自身の親友である初代クリエと瓜二つの容姿をしているらしい。
アリアは徐に顔をフェネアンとシュレムのもとへ向けると二人に話しかける。
「フェネアンさん、シュレムさん、お二人の冒険者としての職業をお伺いしても?」
アリアからの唐突な質問に、二人は一瞬ぽかんとするが、ルリが近くで咳払いをすると慌てたように答える。
「あ、えっと、私はコマンドよ」
「俺はガンナーだ」
その二人の答えに満足したのか、アリアは感謝の言葉を述べるとしばし思案し、自身の中で纏まった考えを全員に告げる。
「私の考えですが万が一PTを分ける必要性が出てきた場合、私、玉藻さん、フェネアンさんと、ルリさん、セレスさん、シュレムさんの二班に分けると良いと思うのですが、皆さんなにか意見はありますか?」
アリアの発言にセレスは挙手しながら彼女に質問する。
「確認なんですがその組分けの意義は何でしょうか?」
「まずは三人に分ける場合、現在前衛4、後衛2の状態ですので、それぞれ前衛2、後衛1の状態に、次に戦闘能力で言えば只人のお二人よりも、御魂とロアである私達のほうが上ですので、二人を援護するために各PTに分散し、なおかつそれぞれ組み慣れているメンバーで固めた感じにしています」
アリアの言葉に納得がいったのか、セレスは頷きながら分かりましたと告げる。
彼女は只人といっているが、これはフェネアンとシュレムが戦力不足という意味ではなく、もともとの地力の違いが如実に現れている結果とも言える。
二人が言っていたコマンドとガンナー、この職業は冒険者の中でいわゆる二次職と呼ばれ、一般的な冒険者にとっては一つの到達点といっても差し支えない。
そもそも一般的に冒険者と呼ばれる者達の区分として、駆け出しで職に付いていないノービス、職に付く場合初めの区分となる一次職【ベースジョブ】、冒険者としての力量が認められて、なおかつそれぞれの職業ギルドに認められることで初めて転職が許される二次職【エキスパートジョブ/テクニカルジョブ】、そして世間一般的に都市伝説として語られる一握りの人としての能力の限界まで鍛え上げた者が、自身の人としての理を超越させるための禁術を持って到達することができる三次職【クロニクルジョブ】が主な区分となる。
そしてフェネアンが語ったコマンド、この職業はアサシン系統のテクニカルジョブで、短銃と体術に重きを置き近距離から中距離までを網羅する戦闘職であり、その身のこなしの素早さから、ヒットアンドアウェイ並びに罠を用いてのゲリラ戦を得意とする職業。
シュレムが語ったガンナーは、アーチャー系統のテクニカルジョブであり、こちらは銃火器を使った遠距離戦を主に、相手の急所を突く行動を取ることも出来、一応最低限の近接戦闘もこなせる職である。
これだけを見ると、二人が力不足とはとても信じられないが、御魂とロアはこの二人を凌駕している。
と、言うのも彼女たちは冒険者の力量で言えば、三次職と同等の存在であり、人としてまだ逸脱していない二人は明らかに分が悪いと言う他ない。
「とは言いましたが、これは万が一を想定しての提案なので、そこまで気にせずに頭の片隅に置いてもらえればいいと思います」
「そうね、保険は重要だものね。わたしはそれでいいと思うわ」
アリアが付け加えた言葉を聞いてルリも意見に賛成する。
ルリが賛成したことで、親衛隊である二人も賛成に回り、全員がもしものときはそのように行動する事を確認する。
「では確認も終わりましたし、奥に進みましょう」
アリアが全員に告げると、皆それぞれに頷き入り口から右手に見える坑道に移動する。
そしてその場に近づくと、一同の接近に気づいた兵士の一人が話しかけてくる。
「うん? たまちゃんじゃないか、今日はどうしたんだい?」
兵士にたまちゃんと呼ばれた玉藻はにこやかに返答する。
「今日は皆のお手伝いでこれからB3Fにお届け物をするんだ」
「そうか、大丈夫とは思うが気をつけてな。大怪我なんてしたら皆悲しむからな」
「うん、皆もいるから大丈夫だよ。兵士さんも頑張ってね」
兵士たちの玉藻に対する親しげな様子からもわかるように、彼女はこの国の人達にたまちゃんと呼ばれ親しまれている。
そうして玉藻は彼にそう告げると、手を振りながらその場を後にする。
しばらく仄暗い坑道を進むと、先頭を歩いていた玉藻が手を軽く動かし、後続に合図を出して行動を静止する。
彼女の視線の先にはモンスターの集団の姿があった。
全身が焦げ茶色の人と同じ大きさのブリキ人形【ブリキングRX3】、全身が深緑色のブリキングRX3と似た見た目であるが、下半身がキャタピラ、腕部がドリルに換装されている【ブリキングカスタム】、そして奥には黒色のローブで全身を隠している浮遊した人型のモンスター【スペルキャスター】が二体。
そのうちの一体、ブリキングRX3が彼女たちに気付いたようで突撃し、連鎖的に他のモンスターたちも戦闘態勢に入る。
それを見た玉藻たちも、各々の武器を手に取り戦闘が開始される。
ブリキングRX3が一番近くにいた玉藻に放電している腕部を振り下ろそうとするが、その前に彼女は手に持つ鞭を器用に振るい、腕部の放電していない部分に巻きつけると、それを軽く引っ張ることでブリキングRX3のバランスを崩す。
それでもブリキングRX3は攻撃動作を中止し体制を立て直すことに注力したことでかろうじて転倒しなかったが、そこにいつの間にかフェネアンがスライディングをしながらすぐ側まで接近して、そのままブリキングRX3に左手の軸としてスライディングの体勢から足払いを仕掛け転倒させると、軸としていた左手をバネとしてバク転、そしてその最中、右手に握る短銃で狙いを定めると発砲。
二箇所から発射された弾丸、一つはフェネアンだがもう一方はシュレムが構えているライフルから発射されたものであり、そして二人は別の系統の職業ではあるが、二人の職業にだけほぼ同じスキルが存在し、今回それを使用していた。
──バラージショット。
このスキルは銃を発砲する時に、複数の弾丸を一斉に発射するというスキルであり、これを二方向からクロスファイアされたブリキングRX3は蜂の巣にされてしまったという訳だ。
ルリとセレスの二人はブリキングカスタムの下へ翔けると、まずはルリが手に持つ薙刀を構え突撃。
ブリキングカスタムはこれを迎撃しようとするが、その時、突撃していたルリがさらに加速し、まるで流星の如く駆け抜けると薙刀を一閃。
迎撃のタイミングを狂わされたブリキングカスタムはこれを防ぐことが出来ず、痛打を受ける。
そしてルリはそのまま背後まで翔け抜けると、そこで旋回し遠心力を乗せた一撃をさらにお見舞する。
彼女は、その小さい体躯からは想像できないほどの膂力を持って薙刀を振り抜き、ブリキングカスタムをセレスの下へと吹き飛ばす。
セレスは落ち着き払った様子で吹き飛んでくるブリキングカスタムを見据えると、タイミングを見計らって手に持つ大鎌を一、二、三と振り回す。
彼女が大鎌を振り回す度に衝撃波が発生し、それを幾度となく浴びたブリキングカスタムは全身をズタズタに引き裂かれて、彼女の下へと到達する頃には細かいパーツに分断されて落下していく。
スペルキャスター達はブリキングカスタムを撃破し、現在自分たちから背を向けているルリに向かって魔法を放とうとする。
ナッシングネスと呼ばれるその魔法は、ターゲットを中心に闇の力場を発生させて対象周辺にダメージを与えるというものであるが、二体が魔法を今まさに放とうとした瞬間。
片方のスペルキャスターがいつの間にかアリアの大砲から放たれた光の奔流に飲み込まれ、その後直撃を受けたスペルキャスターを中心に大爆発が起き、もう一体のスペルキャスターはその爆発の熱量に巻き込まれ、この世から焼却される。
その後アリアは油断せずに索敵を行うが、程なく敵性存在の消滅を確認。
全員警戒しながら先に進むが、モンスターとは出会わずにB2Fへと到達する。
──サウスダンジョンB2F
この場に降り立った一行が最初に感じたものは、異様とも言える熱気だった。
とは言えその熱気の正体を知っている全員は特に疑問に思うことはなく、だが内心辟易としながら歩みを進める。
しばらく坑道を進んでいくと金網で出来た橋と熱気の正体が姿を表す。
その正体とは一面に広がったマグマであった。
地下2階以降は坑道だけではなく自然の洞窟も含まれてくるために、通路がつながっていない部分も見え始め、また無計画に掘った場合マグマの洗礼や、洞窟の崩落の危険性も出てくるために、一部の場所では金網の橋を架けたり、洞窟の補強のための柱を立てている。
その金網の橋を渡り、一部足場が崩落したエリアを暫く進むと、今度は整備された巨大な空間が見えてくる。
そこには先程言った洞窟補強用の大小様々な鉄柱や、物資を入れるためのコンテナやドラム缶。
そしてその中央には巨大な空洞の姿があった。
巨大な空洞を横目に一行は先に進むが、後もう少しでB3Fというところでモンスターの群れに遭遇する。
金茶色の先程出会ったブリキングRX3と似た見た目であるが、こちらは頭頂部に大砲を付けた、名前もそのまま【ブリキングキャノン】と、どこかゆるい見た目の鳥ではあるが尻尾として蛇が付いている【キメラ】、そして白色のリビングアーマーと言えるアンデッドモンスターである【ノーブルアーマー】の計三体が彼女たちに襲いかかってくる。
彼我の距離が近いために乱戦の様相を呈しているが、ノーブルアーマーは自身にとって最も近くにいたフェネアンに手に持つロングソードを大上段から振り下ろす。
彼女はそれをバックステップでヒラリと躱すと、狙いをつけて発砲するがノーブルアーマーはその攻撃を自身が持つ盾を使い防ぐ。
その直後盾を前面に出してフェネアンに向けて突進するが、そこでフェネアンと近くまで駆けつけたシュレムの二人が弾幕を張りその場に足止めする。
そしてその更に後方からアリアの砲撃も加わり少しづつ確実に削られていく。
その光景を目の当たりにしたブリキングキャノンは、アリアが特に脅威度が高いと判断したのか、彼女に向けて頭頂部のキャノン砲を発射しようとするが、その時。
ブリキングキャノンは背後から軽い衝撃を受け、振り返るとそこには手に御札を持っている玉藻の姿があった。
先程の衝撃は彼女から御札を投げつけられた際の衝撃だったのだろう。
脅威度は低いと判断しそのままアリアの方向に体を向けるが、それがブリキングキャノンのできた最後の行動であった。
玉藻に投げつけられ、背中に張り付いた御札、それが輝くと半透明の美しい石塊に変わる。
そして次に石塊がまるで生きているかのように脈動すると、その場を中心に煙のようなものが発生する。
この石塊、実はかつて玉藻が封印された殺生石を小型化したものであり、そしてこの煙のようなものはすなわち瘴気そのものであった。
国を滅ぼしうる瘴気を全身に浴びたブリキングキャノンは、買うパーツが腐食し始め最終的に機能不全に陥り、そのまま完全に沈黙する。
キメラはルリに向かってバードゲージと呼ばれる対象の周囲に炎の壁を生み出して隔離する魔法を何度も放つが、そのすべてを彼女は自身の機動力を以て躱し、逆にその速度を使いキメラを翻弄する。
そしてたまに止まると挑発するかのような仕草をしてキメラのヘイトを稼ぐとまた移動を開始する。
その行動に苛ついたのかキメラは更にルリを追うことに躍起になるが、その背後にはフリーとなっているセレスの姿があり、次の瞬間。
彼女が大鎌を振るうとキメラの頭部と蛇の頭が宙に飛び、一拍の時をおいて切断面から血飛沫が撒き散らすと倒れ伏す。
二人がキメラを倒すと同時に、アリアたちもノーブルアーマーを倒せたようで、鎧が地面に投げ出される音が響く。
そして全員が全員無事なことを確認すると、そのまま目的のタタラベが居るB3Fへと下っていく。
──サウスダンジョンB3F
入り口から中央奥まで整備された巨大な空間が続き電灯による明かりが爛々と照らされているが、玉藻が先導するのはすぐ横にある薄暗い坑道で、その先に件のタタラベが居るとのことだった。
その坑道も各所に設置してあるランタンによって最低限の光源は確保されているが、それでも薄暗く感じるのはこの地がすでにかなり地下深いところにあるのが関係してくるのかもしれない。
坑道の奥に進んでいくと巨大な横穴、その先の最奥の岩盤のところに一人の上半身裸の男性が両手持ちのハンマーで、ひたすら岩盤を叩き続けている光景があった。
彼の姿を確認した玉藻は掛け声をかける。
「おーい、タタラベさーん!」
彼女の声が聞こえたらしいタタラベは後ろを振り向いて不思議そうに玉藻に話しかける。
「ん? おう、たまちゃんじゃないか。こんなところまでどうしたんだ?」
「ヒスイさんからのお届け物を持ってきたよ」
その言葉を聞いたタタラベは、待ってましたとばかりに笑みを浮かべる。
「ヒスイの旦那からか! ありがたい、それを待ってたんだ!」
「はい、これよ」
ルリは玉藻から預かっていた麻袋を手渡す。
タタラベが受け取った麻袋の口を広げると、そこに入っているものの正体は大量の黒色火薬であった。
「ああ、これだけあれば此処の岩盤を破砕して地下にあるものを掘り出せるな」
「地下にあるものですか?」
セレスが疑問に思ったようでタタラベに質問すると、彼も彼女たちのことを疑問に思っていたのか話しかける。
「そういや、あんたらは何モンなんだ?」
「わたし達はヒスイからの依頼でそれを届けに来た者よ。正確にはその名代だけど」
その言葉に納得がいったのか、タタラベは頷きつつセレスの疑問に答える。
「なるほど、あんたらが旦那が言ってた人達か。で、此処の地下に何が埋まってるかだったな。此処に船の帆先が見えるだろう? 以前も似たことがあってその時に掘り出したら飛行城が発掘されたから、おそらく今回も同じ型のが発掘できると思うぜ」
「…………飛行城ですか?!」
彼の言葉にセレス達全員が驚愕する。
【飛行城】とは。
正式名称は【次元航行移民船】と呼ばれ、俗称としてその名が付けられたようにまさしく城と見間違えるようなほどの巨大な、飛行庭と同じように空を航行できる建造物である。
名前に移民船とついているのにも当然理由がある。
そもそもに置いて、このアクロニア世界群は本来4つの世界で構成されており、4つ目の世界、便宜上DEM界と呼称するが、エミル、タイタニア、ドミニオンの三種族は本来この世界の住人であった。
大昔、三種族はこの世界で高度な機械文明を発達させ平等で平和に暮らしていたが、ある時世界を、空間を捕食する次元クジラ【クトゥルフ】が来襲。
三種族と、彼らに作られた存在であるDEM種族はこれに対抗するものの撃退する事ができず、当時まだ試験段階だった次元航行船で脱出し、それぞれの世界に漂着、そこで永い年月、それこそ他種族について忘れるほどの年月を過ごし、その後に暴走したDEM達が、彼らが持つ機動装甲要塞【マイマイ】を以ってエミル界に侵略戦争を仕掛けてくるがこれを辛くも撃退。
そして、遥かな年月が過ぎた時エミル界において地下資源の枯渇という問題が起きると予想され、その問題解消のために軌道エレベーター【天まで続く塔】を建造するが、とある人物の思惑の下、偶然か必然か、この天まで続く塔を起点として三界が接続。
三世界が繋がったことにより、個の力を信仰するドミニオンがエミル世界に侵攻、それを撃退し、あわよくば逆侵攻をかけようとした通称【資源戦争】が勃発する。
しかし、ドミニオン界の戦闘能力が凄まじく、エミル界単独での撃退は困難と判断し、当時少なからず交流のあったもう一つの世界であるタイタニア界と同盟を締結。
エミル・タイタニア連合対ドミニオンという戦争の構図に持っていく。
その後タイタニア人が主に交流、共同で研究を行っていたエミル界アクロニア大陸北に位置する魔導大国である【ノーザン王国】の王族と婚姻を結び、エミルとタイタニアのハーフである王女が生まれ、後に女王に就任や、彼女と同時期にノーザンで生まれ現在にその名を残す才媛であり、ロアたちの物語、その生みの親の【イリス博士】とともに想いの力の研究などの事が起きるが、そこは割愛する。
そして資源戦争の末期、三種族が膠着状態に陥った時、エミル世界では再び、他世界では初めてとなる暴走したDEMの電撃的侵攻が開始される。
その事により三種族はDEMを撃退するために停戦協定を結び、三種族対DEMの戦争に移行していき、エミル世界は再びの撃退に成功するものの文明が崩壊、それを見たタイタニア界の住人は同盟を破棄し、自世界に結界を張って他種族との交流を途絶えさせ、ドミニオン界はDEMの侵略により次々に領土を失陥。
そして時代は現代へと移り変わっていく。
現在の飛行城は主に冒険者達による寄り合い所帯である通称【リング】の拠点や、とある人物の出資で運営されている人材派遣会社、実質的には
ロストテクノロジーの塊である飛行城の稼働数はそれほど多くなく、今でもどこかしらに眠っている物もあるようで、今回発掘しようとしている飛行城もその一つと言えるだろう。
「そんなものが此処に埋まってるなんてねぇ」
ルリが感慨深く告げると、他の面々も同意するように頷く。
「ヒスイの旦那は文献で此処に飛行城が複数埋まってることに気付いたらしくてな、それで俺が此処を掘ってたんだよ」
「……複数ですって?」
ルリの疑問にタタラベは頷きつつ答える。
「ああ、此処に来る途中に大穴があっただろう? あそこにも飛行城があったのさ」
「へぇ、そうだったのね」
そう雑談をしながらも、タタラベは黒色火薬を使い岩盤を発破する準備を進めていく。
そして準備が終わると、皆に離れて衝撃に備えるように指示して、自身もまた離れて爆破させる。
閃光、そして一拍置いて轟音と衝撃が響き渡り、粉塵により視界が塞がれる。
「うぐ!」
「きゃあ!」
各々が強烈な衝撃に耐えていると、次第に衝撃が収まっていき、そして粉塵が収まるとそこには、巨大な建造物、目的である飛行城が姿を表した。
「すげぇ、これが飛行城」
シュレムが感嘆の声を上げる。
そのことに他の面々が同意しつつも、ルリはこれからのことについて相談する。
「それで、これはどうすれば良いのかしら?」
「それなら大丈夫だ、大工場の社長さんに話は付いてるからな。ここからの引き揚げから修繕を一手に引き受けてくれるはずだ。だからお前さん達は、社長さんの方に報告に行ってくれ」
「なるほど、了解したわ。それじゃ皆行きましょう」
タタラべの言葉にルリは同意すると皆に移動しようと告げる。
そしてアイアンサウスシティに戻った一行はその足で大工場に赴き社長に事の次第を報告。
社長は快く引き受けて会社一丸となって作業を開始する。
引き揚げられた飛行城の稼働まで一時の時間を要するが、後にこの飛行城はアルティの工房、そしてU&Hかんぱにーの本社として機能することになる。
飛行城の事をお願いした面々は、ヒスイの手伝いとして合流していた二人、玉藻とアリアも含めて一路アクロポリスへと向かうのであった。
フェネアン、シュレムの冒険者としての職業、並びに冒険者の区分、御魂やロアの強さなどは本作独自の設定となっておりますので、ご了承のほど宜しくおねがいします。