あの5つ子スゲー可愛いんですよ!
この作品でもそんな5つ子の可愛らしさが出てくれたら良いなって思います!
では、序章をどうぞ!
「ここは?」
そう呟きながら少年は目を覚ました。見覚えのない屋上、覚えているのは目の前にいた全身黒一色の群れに捕まったことと、その前に綺麗な髪の長い少女と出会ったことぐらいで……
「ゔぅっ……」
思い出している中、彼は激しい頭痛に襲われるとその反動からか、上体を起こすとそこは、見たことの無い和室の部屋だ。一体、ここはどこなのだろう……。少年はまるで、未知の所へ連れてこられたペットのように辺りを見回し始めた。
「ここは……」
ぼそっと少年は口に出して、思い出してみるもここがどこなのかハッキリ思い出せなかった。以前の記憶がないのだ。嫌、あるにはある……正確に言うと、ここを知らないだけで、名前もその前の記憶も覚えている。少年は、ゆっくり立ち上がると、一つ一つ自分のことを思い出していく。
『──
さっきの頭痛以降、さっぱり過去のことが抜け落ちてしまった翔一は、目の前の鏡に立つと、そこに映る見たことない男の容姿に驚いてしまう。
「──うわぁ!!」
慌てて鏡から仰け反ると、それが自分だと思うまで何分も時間がかかった。頭が固いせいか、理解出来た今ですら、翔一は自分に何があったのか、健闘もつかない。後ろ髪が首を隠すまで伸びている所や、前髪が眉毛にかかるくらいの髪型以外は、別人だ。翔一は、不思議と自分の頬に手を当てて本当か確かめる為に、何度も触れるがこれは間違いなく自分の頬だ。でも、かつての自分はこんな顔をしていたのだろうか……。翔一は、自分に疑問を抱くようになる。しかし、証拠がなければ何も判断すことが出来ない。
「あ、翔一!起きたか?」
「あ、うん……」
何故か、知らない金髪の男性が翔一に声をかけてきた。唐突のことで正直驚いているが、何か、こちらの事情を知っていそうにも見えた。
「どうした、また……記憶をなくしたか?」
「──また?」
男の言葉に引っかかった翔一は、眉間に皺を寄せながら彼の言葉から特に響いた言葉を繰り返すように言うと、男は、何も言わずに彼から離れた所にある窓のカーテンに手をかけるとそのまま、暗闇に光を入れるようにカーテンを開けると登りたての太陽の光が翔一の目に入る。
「そう……、お前はある日を境に記憶を失いやすくなっているんだよ。それが、いつかは知らねぇが、真夏の暑さが残る頃、海辺で倒れていたお前を娘のらいはと見つけたんだ。俺の名は、
「そうだったのか……」
「まぁ、そう言ってもなくしちまった物は、仕方ねぇよ。また、一つ一つ積み上げていけば良いじゃねぇか!」
「そう言われても……」
そう反論しようとした時、男の手によってそれを阻まれた。一見、チャラいボンクラな男かと思われたが、彼の目付きに怯んでしまったのか、何も動けずにいた。そして、一枚の紙を渡された。
「これは?」
「それは、家の馬鹿息子に行ってもらう、家庭教師の雇い手であるマルオの家だ。そこに今日からお前も雇いたいっていう話らしいから、16時くらいになったらお前も向かってくれ。」
「あ、あぁ……わかった」
翔一は、何も反論をせずに二つ返事で了承すると、そのまま重たい腰を持ち上げて、布団から起き上がると近くにあった私服に身を通して家をあとにした。夏ということもあってか、半袖の真っ白なシャツにジーンズジャンバーを羽織り、七分丈のズボンといったラフな格好のまま、外に出るとまだ登りかけた太陽が眩しく肌を照らしてくる。
「眩しいな……」
そう呟きながら青空を見つめる翔一は、行き交う人々の流れるまま知らない街を放浪とする。時間に追われるサラリーウーマンも授業合間に会話している女子大生も遥か彼方へ視線を向けながら放浪している彼に目線を奪われていた。それは、遠く覚えている過去のひと時と重なる。何を隠そう彼は、ブサイクで尚且つデブと言われ扱われてきたのだ。当然、周囲の目線というのは好きではなく痛い物だ。
『家庭教師までまだ時間があるし……帰るか……』
そんな事を考えながら帰路へ向かおうとしたその時……、微かに聞こえてきたのだ。誰かの助けを求める悲鳴が……。
「だ、誰か!!助けてーー!!」
その悲鳴が聞こえた時、翔一は気がつくと勝手に体が動いていた。悲鳴の方へと足が勝手に進み、駆け足で向かっていた。場所は、街の路地裏で人気もなく静かで陽もあまり入ってこない所だった。翔一が駆けつけると、そこには黒一色の明らかに怪しい人達に囲まれている女子高生が一人いた。薄いピンク色の髪色のアシンメトリー風に切ってあるショートヘアーが特長的な女性が恐怖のあまりその場に座り込んでいた。
「だ、大丈夫?」
「え、貴方は?」
「今はその話はなし、ここから逃げないと!」
またしても翔一は、流れるままに囲まれていた女子高生と会話を始める。何が起きているのかよく分からないまま、会話に応じる女子高生を後回しにして黒一色の怪しげな集団は、今度は翔一を囲んだ。ざっと、十人程度の部隊だが、その光景に女子高生は、自ら殺していた声を再び張り上げる。
「そいつらは、危険よ!事務所の人も倒しちゃったし……、私のことは良いから、早く逃げて!」
さっきの悲鳴が知らぬ人を巻き込んでしまったと後悔している女子高生に翔一は、我慢できずに座り込んで諦めている彼女に声をかける。
「ここで俺が逃げたら君はどうなる?助かるのか?」
「え?でも……」
「でもじゃない!確かに、この人数の差は結構ピンチかもしれないけど、こんな野蛮人に君の笑顔を奪われて欲しくない!」
反論しようとした、女子高生の言葉を遮るかのように叫ぶ翔一は、気がつくと、腰に見知らぬベルトが巻かれていた。
「これは……」
ベルトは、待機音を発しているのを目にした。これが何者なのかは、分からないが、一つだけ分かることがあると翔一は悟った。この力を行使して、敵を倒すことだ。そして、左腰付近で両腕をクロスさせるとそのまま右腕を右側へ持っていき、力強く構えると、ベルトの中心部が眩しく発光し始めた。
「眩しい……」
彼から放たれる強い光に怪しげな黒一色の部隊と女子高生の目が眩むと翔一は、そのまま左右にあるスイッチを同時に押した。すると、彼の身体は、敵を倒す為の戦士の肉体と変わった。その姿を見て二者は、驚くあまりに言葉を失っていた。
「金色の戦士?」
光が消え、その戦士が姿を現した時、ようやく彼女の口が動いた。仮面をつけた金色の戦士は、構え出すと彼を囲んでいた黒一色の部隊は、一斉にナイフを取り出し構える。
「や、殺れ!!」
「イーッ!!」
リーダーの指示に従い、構えたナイフの刃先で金色の戦士を切りつけようとするも彼は、角を展開し、その場から大きく跳躍して攻撃を躱すと、女子高生の前に着地してゆっくりと振り返る。凛々しい、その立ち姿に彼女は、頬を赤くしていた。
「き、貴様は何者だ!?」
「──」
彼の突然の身体能力の変動に戸惑いを隠せない怪しい人達は、彼の正体を聞こうとするも戦士と化した彼の前には、敵の言葉など聞こえてこないのだ。そのまま、地面から浮き上がってきた6本の角の紋章が動き、次第に両足へと溜まっていくと、仮面の戦士は、その場からジャンプしてそのまま飛び蹴りを決めると、彼らのうち一人がそれを受けて数十メートル先まで飛ばされた。突然に路地裏から出てきた怪しい人に周囲の人々は警戒する。彼は、戦士の力強い飛び蹴りに耐えられるずにその場で爆発した。
「ぐっ……、なんて言う威力だ……」
「まるで、仮面ライダーだ……」
「て、撤退!!ここから逃げろ!!」
飛び蹴りによる威力を知ってしまった黒一色の怪しげな格好をした彼らは、戸惑いながらもその場から逃げることを選択して、慌てて去って行った。しかし、大通りでの爆発に野次馬が放って置く訳もなく次々とスマホを片手にカメラのレンズを仮面の戦士に向けてくる。
『──不味い』
翔一の意識が完全に戻ったのは、この頃である。自分の見知らぬ姿に驚くも目の前で腰を抜かして、動けなくなっている彼女の方が問題だと思っていた。
「あはは……、凄い人だね……」
少女は、そう言うと仮面の戦士は、少し体を左へ動かし後ろの様子が目でわかる様に首を動かす。すると、近くに居た人々が一斉にシャッターを押す。彼らからしたらドラマの撮影かの様に見たことないものをその画面に収めようとする。翔一は、何も言わずに座り込んでいる少女の膝と背中にてを入れてそのまま持ち上げた。
「え……!?」
女子高生は、赤面になりながらも何も言わずに歩き始める戦士に身を任せる事にした。その歩み方は、男らしいと言えば、それまでだが……懐の暖かさは、どこか懐かしさを感じていた。
「お、おい!あれって一花ちゃんじゃないのか?」
「一花ちゃんって、今有名になり始めた女優の?」
「あの映画にも出てたよね?これもドラマの撮影?」
どうやら、少女の名は一花と言うらしい。職業は、女優であるが成り立ての新人だろうか、それにしても女優の着こなす制服は、とても美しいと翔一はその仮面越しから彼女の見るも驚かれないようにゆっくりと野次馬の間を抜けて行き、その場を後にした。
その後、人々は助けを求める少女の元へ颯爽とかけつけ、悪を葬り去った金色の戦士をこう呼んだ……。
正義の味方ではなく、人類の自由のために戦う、
『仮面ライダー』と。
《予告》
「も、もう一人の家庭教師!?」
そう言って驚きを隠せない五つ子の前に沖田翔一がやってくる。
果たして、彼が五つ子に与える影響とは……。
そして、アギトの誕生と共に再び表世界へと姿を現した悪の組織ショッカーによる世界侵略の野望が再び人間の自由と平和が脅かされる時、
仮面ライダーが現れる!!
第1話「変身、仮面ライダーアギト!!」