魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語 作:ソーナ
〜零夜side〜
「あははは。いやー、まさか今これが来るなんて思わなかったよー」
「・・・・・・そろそろだと思ってましたけど、まさかこのタイミングでとは・・・・・・」
「すっかり懸念してましたわ・・・・・・」
あははは、と苦笑する僕に頭に手を置いて痛恨のミスとでも言うような表情を出す凛華と星夜。
何故ならこんな会話をしているのかと言うと―――
「れ、れ、れれれれ―――」
「零夜くんが女の子になってるぅぅぅ!?!?」
「あ、あれ?零夜さんは男の子ですわよね真希さん」
「あ、ああ。い、いや、男の娘だったか?あ、あれ?」
「此花さん獅童さん落ち着いてください。彼は確かに男の娘です」
「おい、男の子が男の娘になってないか?いや、あながち間違いではないんだが・・・・・・」
というわけである。
現に刀使勢は困惑している。現在進行形で。しかも滅茶苦茶動揺してまでもいる。
「レイくん。
夜月がそう聞いてくる。
確かに仮装行列なら何とかなるかもだけど。
「あー。ゴメン、今魔力が足りなすぎて仮装行列使えない」
「まあ、仮装行列って魔力喰うからね」
そう。仮装行列は一応それなりの魔力を喰うのだが、何時もなら大した問題ではない。のだが、今は体力や魔力不足など色んな問題があって使用不可である。というか、この状態だとどうも上手く魔力が練れない。まあ、女の子の身体っていうのが未だに慣れないからだと思うけど。いや、慣れたら慣れたらでそれはなんというかかなり・・・・・・・いや、結構、複雑な気持ちだけどね?
未だに両手に黒と白の双剣。『黒聖』と『白庭』を携えているのを、軽く左右に振って背中の鞘に戻す。パちんっ!と納刀された音が小さく鳴る。
「うーん、何時までもバリアジャケットって訳には行かないかな?」
右手の指をパちんっ!と鳴らして魔力で編んだ服を展開する。
「ふむ。お姉ちゃんたちの服をモデルにしてみたけど・・・・・・なんか落ち着かないね。まあ、動きやすいからいいかな」
構築した服は白と銀をまじ合わせた華美な装飾もないシンプルな落ち着いた服だ。
「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
「―――もう何でもアリだな・・・・・・」
「だな」
そんな会話が耳に入る。そこに。
『もしもし零夜くん?今いいですか?』
「あれ、鞠亜?どうしたの?」
突然空間ウインドウが開きそこから上空で滞空している《フラクシナス》の管理制御AIの一人、鞠亜が写った。
『はい。実は、三十分ほど前に管理局へ通じる次元路に発生していた次元渦が終息しました。何時でも本局へ帰還できます』
「予想よりも速いね?予測だと明日に収まる感じだったけど」
『ええ。ですので予定はどうしますか?』
「んーーー。ちょっと待ってて」
鞠亜にそう言うと、僕はなのはたちに何時でも帰還出来るということを話した。
「―――予想より早いわね?あたしも零夜と同予測だったのに」
「でも、私たちの夏休みも後二週間程しかないし、あまり長居は・・・・・・」
「それにお母さんたちも心配してるよね」
「そうやなぁ。クライドさんがいるとは言っても、ここに居るんは子供と言われてもしゃあない歳やからなあ」
「いや、僕らは子供でしょ・・・・・・」
「・・・・・・普通の子供は一部隊を率いたりはしないよ」
「でもいきなりってのは・・・・・・」
「うん。刀使のみなさんにちゃんとお別れとかしないと」
いきなりの事に少し困惑するなのはたち。
「・・・・・・鞠亜、出立までどのくらい時間掛かりそう?」
『そうですね・・・・・・。今からですと、
「また次元渦が出る可能性は?」
『現在の確率は10%以下です。ですが、次元渦は突発的なものが多いので・・・・・・』
「ふむ・・・・・・。なら、帰還は明日の朝ぐらいにしようか」
『分かりました。では、そのように手配しますね』
「お願いね。あ、クライドさんに、この後はフリーで大丈夫って伝えといて」
『了解です!こっちも私と鞠奈だけでも大丈夫なので言っておきますね』
空間ウインドウを消しなのはたちにこの後について説明する。
「レイくん、私は別にいいけどレイくん大丈夫なの?」
「なにが?」
「いや、だってそろそろ本線じゃないのアレの?」
「あー。まあ、なんとかなるでしょ」
「そう言えば零夜、あの大会に管理局の代表としていつの間にか登録されてたんだっけ?」
「そういやそうやったなぁ。でもまあ、零夜くんなら大丈夫やないか?」
「とういうより相手の方が可哀想に思えてくるよ?」
「まあ、幾らか制限受けてるし大丈夫でしょ。それに、ミゼットさんからは同年代の魔法技術を観てきても欲しいって言われてるしね」
「それ単純に仕事じゃない」
クスッと笑いあいながら紫たちへと向かい明日帰還することを伝える。
「―――そうか・・・・・・」
「はい」
「具体的には明日の何時ほどなのでしょう?」
「明日の午前10時に出立する予定です。できれば人目の避けたところで」
フラクシナスへの内部にはいるためにはフラクシナスから直接による転移や自身が転移魔法を発動させるしかない。一応転移ではない直接入ることも可能だが、それは本局の次元航行艦着艦所出なければならない。故に基本的にフラクシナスへの出入りは転移によるものなのだ。
そして、フラクシナスへの転移は何処かに止まっていなければ出来ない。いや、正確には移動してる相手に直接転移も出来るのだけど、リスクが大きい。現に架空幻想シュミレーションシステムを使ってやってみた所、まあ・・・・・・なんだ、あれだね。さすがに危険ということで余程のことが無い限りは禁止、となった。
ま、まあ、僕や夜月は普通にそんなことも出来ちゃうんだけどね。
とまあ、そんなこんなでこの後はレッツ・フリーターイム☆
みんなそれぞれ各地に。この世界の鎌倉周辺へと出掛けて行った。
そして僕はと言うと。
「―――ふうん。明日帰るの」
「ああ」
「そう。私はこの世界から出れないからね。この間言ったように任せるわ」
「分かってるよ、トヨタマヒメ」
トヨタマヒメの居城である空間にいた。
あの後僕は本局のミゼットさんに帰還する旨を報告。事後処理などを済ませ、地上に降りトヨタマヒメの空間へと入った場所に来た。
来るなり空間が開き、そこに入ると前回とは違って草木の広がる草原に豪邸。とは言えないが立派な家が存在した。そして草原のある一角でその場所の主である彼女が優雅にお茶を飲んで座っていた。その光景に唖然としながらも苦笑しトヨタマヒメの向かいに座り、予め用意されていたお茶を飲み会話しだしたのだ。
「ところでこの場所は?」
正直いってここまでの穏やかな楽園など、現実にはないだろう。いや、探せばあるかもしれないけどそんなの両の指で数えるくらいだろう。
「ああ。此処は私が基本暮らしてる空間よ。現世と幽世の狭間の空間かしらね」
「ここに居るのってトヨタマヒメだけ?」
「ええ。基本は私だけね。まあ羽切と天雲も一緒に過ごしていたけどね」
「なるほどね。そう言えば、あの二人とは何処で出会ったの?」
「そうねぇー。今から何百年前になるのかしら・・・・・・・もう1000年くらい前かしらね」
「1000年!?」
まさかの年数に僕はギョっとした。
「【私】という存在には初めから、他の荒魂とは違って【悪意】という存在がなかった」
「【悪意】がなかった?」
「そう。
「益子家・・・・・・・」
「ええ。あの子はヒトが長い時間を掛けて浄化した。けど、私の場合はその必要すらなかった。私が産まれたのは今からもう1000年以上前かしらね」
思い懐かしむようにトヨタマヒメは語り始める。
それは彼女の歴史。ヒトでもなく、荒魂でもない、トヨタマヒメという存在の存在した証。
「私が生まれた時代。現代で言うところの古墳時代の少し後辺りかしらね。その時代には荒魂は全く現世に現れなかったわ。現れるようになったのは・・・・・・・・・確か平安時代の辺り、だったかしらね。
平安時代、荒魂はほんのごく稀に発生していた。当時の人々は荒魂のことを怨霊や悪霊、悪鬼って呼んでたわ。ごく稀に出現したとしても、当時の人にとっては脅威でしかない。それも当然ね。攻撃が効かないのだから。投げ石や槍、剣。当時も今もね。でも、それでも戦う人はいた。それが、今《刀使》と呼ばれている【祓い清め】戦い人々を守る巫女。戦巫女たち。そして・・・・・・陰陽術師」
「陰陽術師?」
「そう。今の時代では廃れてしまった、過去の遺物にして遺産。そしてひとの手による奇跡・・・・・・。けど、その血筋は今でも受け継がれている。折神や益子、柊、安桜といった戦巫女の家系や、奇跡を引き出した陰陽術師の血筋を引く者が・・・・・・」
トヨタマヒメは過去を振り返るように語る。
「彼女たちを観た時は驚いたね。あの当時の巫女に似ていたから」
クスッと笑みを浮かべる。
確かに世界には同じ顔の人が三人はいるって言うし、過去に紫たちと同じ人が居てもおかしくないよね。
「荒魂が何時の時代からいるのかは分からない。けど、少なくともその当時の荒魂はヒトが間接的に関わっている」
「?どういうこと?」
「荒魂は刀使が使う御刀から切り離されて出来たと言われてるわ。なら、【私達】はなに?・・・・・・この世界にはヒトの住む《現世》と、その裏側の私たちの住む《幽世》。そしてその間にある現世と幽世を繋ぐ空間、《次元の狭間》。この空間は丁度その次元の狭間にあるわ。故にいかなる干渉も受けない。私が認めた者以外は、ね」
確かにこの空間に入る際、別空間に入る時と同じような揺らぎを体感した。それは慣れ親しんだ次元転移だ。
「話を戻すわね。けどその少しした後、とある人間が古びた剣を見つけた。その人間は剣を再生させようと、あらゆる事をした。普通の刀と同じようにしてみたがそれでも再生せず。打っても全く変化がなく、ね。しかし、その人間は研ぎ師の性なのかしらね。数年後、古びた剣は神聖を帯びた神刀へと変わった」
「まさか、それが御刀?」
「そう。それ以降、日本のあちこちでそれと同等の古びた剣。いえ、刀が幾つか見つかった。それと同時期に荒魂の出現数が飛躍的に上がった。けど、まぁ・・・・・・・馬鹿な国はどこにも居るわね。現に米国のせいで20年前はタギツヒメが臨界したんだから」
ホント余計なことをしてくれたものよ、とトヨタマヒメは若干怒りを含ませて言った。
それには僕も同意するけど。米国政府が余計なことしなければあんな悲劇は起こらなかったし、年の瀬の災厄に至るまでの
「そして今に至るわ。タギツヒメに関しては彼女たちに感謝してるわ。もっとも、最悪の場合は私自らがあの子を封滅するつもりだったのだけどね」
「ははは・・・・・・・」
「ところで気になってたんだけど・・・・・・」
「ん?」
「―――なんで女の子なの?キミ女の子だったけ?」
「今ごろぉ!!?」
唐突の質問に僕は立ち上がってツッコミを入れた。
いや、それ最初に聞く質問だよね!?
そう思いつつトヨタマヒメに事情を説明する。説明するとトヨタマヒメは苦笑しながら納得してくれた。
「厄介な体質(?)ね」
「あははは。ま、まあ、慣れればいいんだけどね。いや、慣れちゃダメなんだけど・・・・・・」
苦笑を浮かべながら横目で言いつつ紅茶を飲んだ。
その頃現世では―――
「「・・・・・・・・・・」」
「二人とも何時までむくれてるんですの?」
「「だってぇー・・・・・・」」
「あははは。聖良ちゃんと澪奈ちゃんは本当に零夜くんが好きなんだね」
「「当然!!」」
「はぁー・・・・・・ブラコンここに極まりやね」
「ま、いつもの事だからたいして気にしないけど」
「アリサちゃんそんな言い方はダメだよぉ・・・・・・」
「にゃははは」
「あーあ。もっと戦いたかったなぁ」
「私も!私ももっと剣を合わせたかったな」
「こっちはこっちで剣術バカが・・・・・・」
零夜を除いたみんなが話していた。
そんなか、零夜大好き妹二人の聖良と澪奈はむすーっと可愛らしく頬を膨らませていた。
何故なら、二人とも兄である零夜と一緒に居たかったからである。家族にして最愛の兄との触れ合いが減っているからかなのか絶賛不機嫌なのだ。
「なら、この後満足するまでレイくんとやるって言うのはどうかな二人とも?」
剣術バカと言われた可奈美と結芽に夜月が人差し指を立てて言う。
「聖良ちゃんと澪奈ちゃんはレイくんが戻ってきたら・・・・・・ね」
さらに聖良と澪奈にもイタズラな笑みを浮べて告げる。
それを見た聖良と澪奈はパァ、と嬉しそうに笑みを浮かべ可奈美と結芽は今すぐにでも戦いそうな顔をした。
「零夜が今女の子の姿なのだけど、忘れてないかしら・・・・・・」
アリサのその呟きは周りの耳には入らず消えた。
女の子の姿の零夜は戦闘能力がガクンと下がるのだ。だが、それでもアリサたちを相手取っても全く問題ないくらいの戦闘能力は備えているのである。
次元の狭間の住処
現世でそんな会話がされてるなど露知らず、僕はトヨタマヒメと軽く剣の打ち合わせをしていた。
「はアッ!」
「ふっ!」
キンッ!キンッ!と金属音が響き、それに伴うように僕とトヨタマヒメの覇気が小さく伝わる。
「せやアッ!!」
アインクラッド流細剣ソードスキル《スター・スプラッシュ》八連から《カドラプル・ペイン》四連。《オーバーラジェーション》十連。片手剣ソードスキル《サベージ・フルクラム》四連、《ノヴァ・アセンション》十連。と細剣と片手剣のソードスキルを組み合わせて連携を紡ぐ。
「隙だらけよ!」
「―――っ!」
下からの貫手に剣が手から離れる。けど。
「僕の武器は剣だけじゃないよ!―――
両手から魔力で構築展開し具現化させた【
「それは知ってる―――よっ!」
対するトヨタマヒメも自身の周囲に幾重にも刀を現出しその内の二振りの柄を握る。
「そっちがそれならこっちも!」
トヨタマヒメの真似をして僕も周囲に剣を魔力で構築して編み出し周囲に突き立てる。
「「いくよ!!」」
同時に地を蹴り接近する。
近接戦闘音がなり、時折パキンっ!と剣が砕かれる音が響くが僕らはすぐに近くにある剣を手に取り、絶え間ない剣と剣のぶつかり合いをする。
「はアッ!」
「せやアッ!!」
魔法に拳に剣。ありとあらゆる物で互いを口撃する。
(ちなみにこれは模擬戦である)
そんなこんなで模擬戦とも言えぬ模擬戦が終了し―――
「―――調整はどう?」
「うん。ありがとう助かったよ。なんとかこのカラダでも戦闘出来るように慣れたよ」
元の私服(女子Ver)を着て同じく私服を着てるトヨタマヒメに感謝する。
やはり男子の時と女子の時とでは体感や魔力操作、筋肉の付き方など・・・・・・・違いがありその感覚のズレを慣れるためにトヨタマヒメと模擬戦をしていたのだ。(攻防魔法有り、身体強化魔法有り、剣技有りの模擬戦とも言えぬ模擬戦ではあるが)
「そう?よかったわ。幾らこの空間が時間の進みを遅くできるとは言っても現実世界ではもう二時間近く経ってるからね」
「あー、もうそんなに経ってたんだ」
自分の体感時間ではまだ1時間弱しか経っていないと思っていたのだけどかなり時間が経っていたらしい。
そろそろ戻らないと妹たちが嫉妬しそうだ。(澪奈と聖良)
各方面にも協力のお礼や挨拶もしないといけないから急がないといけない。
「あ、そうだトヨタマヒメ」
「ん?」
「はい」
「―――?これは?」
「僕と連絡出来る通信機。一応周囲のエレメントがバッテリーだから故障したりはしないと思う」
「へぇ。―――ありがとう、何かあったら連絡させてもらうわ」
「うん」
簡単な説明書も付属してあるから大丈夫だろう。
「さてと、それじゃあ―――」
トヨタマヒメが右手を上げ突き出すとその場に緋色の鳥居が顕現した。
「この
「分かった。色々ありがとう、トヨタマヒメ」
「ええ。零夜・・・・・・・・・・あの子たちをお願いね」
「ああ。任せて!」
ハイタッチをし、パァン!といい音が鳴り僕はトヨタマヒメが顕現した緋色の鳥居を潜った。数秒後僕はトヨタマヒメの居城空間から現実空間へと戻ってきていた。
「さてと―――それじゃあ・・・・・・行くか」
私服の白銀のロングカーディガンをたなびかせながら僕はその場から立ち去った。その光景をそよ風に吹かれて草木だけが観ていた。
それと同時刻別の異世界で――――――
『―――対象を発見し次第撃て、対象の生死は問わん!』
『―――こちら・・・・・・対象を発見。森林地帯を北北西に移動』
『―――了解。必ず始末しろ!』
『『『―――YES』』』
「―――はぁ・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・!こんな所で殺られる訳には・・・・・・!誰かに・・・伝えないと・・・・・・!このままじゃ・・・・・・!」
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・に、兄様・・・・・・」
「大丈夫か■■■」
「は、はい・・・・・・」
「・・・・・・っ!(なんとかして■■■だけでも何処か別の世界に・・・・・・!」
「兄様、あの人は大丈夫でしょうか・・・・・・」
「・・・・・・分からない。上手く逃げてくれてるといいんだけど・・・・・・」
「・・・・・・・・・・!兄様、あれ!」
「?あ、あれは!?まさか・・・・・・!」
「引きずり込まれる!兄様!」
「■■■絶対に手を離すなよ!―――お願いっ!□□□□□□□!!」
「兄様!!きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「うわぁぁぁぁぁあ!!!」
悲鳴をあげ、二人はこの世界から消えていった。
その場から跡形も残らずに。
翌日
「―――数日の間、お世話になりました」
「いえ、こちらこそ色々助けていただきありがとうございました」
鎌府女学院の駐車場で僕たちはこの世界で関わった人たちに最後の挨拶をしていた。(一応来れることは来れるけど、また来れるかは分からないからね。まあ、僕は多次元転移術式が使えるけど)
僕が朱音さんと話す中、なのはたちは可奈美たちと話していた。
「零夜、ノロのことは―――」
「ええ。分かってます。必ず、僕らが・・・殲滅、抹消、消滅させます」
「頼む」
紫の懇願に僕も力強く返す。
この世界のモノが他世界で振るわれるのは良くない。下手をすれば最悪その世界の破滅へと繋がる。
だからこそ他世界のモノを他世界へと流出させるのは重罪なのだ。
拳を固く握り紫に誓うと。
「ねーねー。最後私ともう一回戦ってくれなぁい?」
「結芽・・・・・・」
結芽が御刀を握り締めながら言ってきた。
昨日五十戦くらいしたつもりなんだけどね。(ちなみに可奈美たちともやって合計百戦近くやっていたりする)
「結芽、まだ言うのかい?」
「だって真希おねーさんたちとは何時でも戦えるけど、零夜くんとはこれで最後になるのかもしれないんだよ・・・?それに零夜くんに私という存在を刻み付けておきたいの・・・・・・。そうじゃないと私が居なくなったら・・・・・・・」
「結芽・・・・・・」
結芽の言葉に僕は言葉を亡くす。以前、獅童さんから聞いたことがあった。結芽がなんであんなに勝負するのに固執するのか。僕も結芽との勝負は楽しいし嬉しいからよかったけど。
獅童さんから聞いたのは結芽の過去。それを聞いた時、なんて過酷な。なんて残酷な運命を与えたんだろうって神を。結芽にそんな呪いのような運命を与えたモノに殺意を抱いた。
「結芽大丈夫。もう僕の中に結芽はしっかり、刻み込まれてるから」
「え・・・・・・?」
「忘れない・・・・・・。忘れるはずがないよ。結芽を」
今の僕の歳は11。結芽は13。2歳差だ。
けど、それがどうした?前世も含めると僕の年齢は20歳を越してる。だが、そんなのはどうでもいい。僕は目の前にいる儚い少女を決して忘れることは無い。いくら時が経ってもそれは変わらない。そしてそれはこの場にいる全員に当てはまる。
僕の魔法は『僕に関わりのある人たちとの繋がりと思い出』が根源だ。
名は―――『
繋がりを思えば思うほど強くなる。これは誰にも言ってない僕の秘密だ。だって恥ずかしいしね。
だから忘れない。忘れることは無いのだ。
「約束しよう」
「約束?」
「うん。また、思う存分戦うことを」
「そんな日が来るの?」
「来るよ。絶対ね。今僕たちは『生きている』だから未来がある。ね」
「・・・・・・分かった。じゃあ―――」
右手の小指と小指を合わせ
「指切りげんまん、嘘ついたら滅多斬りにすーるよ!!」
「怖っ!?」
結芽の言葉にビクッと震え上がった。だって眼が本気なんだもん。
「ふ、ふふふっ。あはははははっ!!これじゃあ、あはは・・・、破れないね」
目尻に浮かんだ笑い涙を拭いつつ笑顔で言う。
「ああ。約束だよ」
「うん」
「「また、何時か、必ず!」」
パァン!とハイタッチする大きな音が響き僕らは約束した。
その後それに便乗して可奈美も約束してきたから三人の約束になった。この光景をみんなは微笑ましそうに見ていたことを忘れない。
そして―――
「それじゃあ皆さん!」
「「「「「ありがとうございました!!」」」」」
お礼を言うと同時に僕たち魔導師組を中心に大きな魔法陣が描かれ、頭上に滞空していたフラクシナスへと繋がりその場から転移しフラクシナス内部へと帰還した。
帰還して艦長席に着くなり、
「鞠亜、鞠奈。帰還するよ!」
『了解しました』
『了解〜』
管理AIである二人に指示をする。
『本局帰還予定時刻は現時刻から約五時間半後です』
「了解。みんな、いい?」
僕の問いにみんなは頷き返し、凛華たちはそれぞれの席に。クライドさんは僕の隣に立つ。
「それじゃあ―――特務0課フラクシナス、時空管理局へと帰還する!!」
その言葉と同時に僕たちはこの世界の地球から去った。
〜零夜side out〜
〜結芽side〜
「―――行ったな・・・・・・」
零夜くんたちが目の前から転移の魔法とかで居なくなってから暫くして紫さまが一言言った。
頭上を見上げても何も無いが、さっきまでは、そこに、確かに何かがあった。多分周囲の風景に同化させて視覚出来ないようにしていたんだと思う。
「結芽・・・・・・」
「真希おねーさん・・・・・・」
「行ってしまいましたわね」
「ええ」
「寿々花おねーさん・・・・・・夜見おねーさん・・・・・・」
私のおねーさんの三人。紫さまはおねーさんというよりお母さんにちかいかも。それは、相楽学長もかな。
私を捨てたあの人たちのことはもうどうでもいいと思う。今の私の居場所は、この紫さまやおねーさん達がいるところだから。
「大丈夫だよ結芽ちゃん。約束したんだから、必ずまた会えるよ」
「可奈美そんな安易に会えるもんでは無いだろう彼らには」
「そうだな。アイツらはオレたちとは違う世界で生きてるからな。この世界に来たのも例のロストロギアってヤツの回収任務だろう?」
「そうですネ。私たちの間に噂されてたドッペルゲンガー騒動も、そもそもそのロストロギアが原因だったようですし」
「・・・・・・けど、なんでそんなのが出たのかな」
「さあな。けど、これで取り敢えずはドッペル問題は解決した」
「ドッペル問題って・・・・・・」
なんとも言えない空気が辺りを覆った。
そこに。
「ん?わたしだ。―――ああ、分かった」
真庭本部長に連絡が来た。
「お前たち。悪いが、早速任務だ」
荒魂発生報告らしい。
「首都近郊の山岳地帯に荒魂が大量発生したらしい。アイツらが居なくなって戦力不足だとは思うが、一部を除いて全員出動してくれ」
「「「「「了解!!」」」」」
「特務隊も全員出動だ。現地指揮は獅童、お前に頼む。補佐は柳瀬だ」
「分かりました」
「はい!」
おねーさんたちが張り切る中、私は一人ぼおっとしていた。
戦えるのは嬉しいし楽しい。みんなに私の強さを見せつけられるから。けど、何故か分からないけど、今の私にはぽっかりと穴が空いた感じになっていた。多分、零夜くんという私より強い剣士と会えないからだと思う。
私のそんな心情を察したのかもう一つの自分でもある御刀の鍔に付けたストラップ。イチゴ大福ネコがもう一つの小さなイチゴ大福ネコとともにチリンと鈴の音が鳴る。
「結芽ちゃーん!行くよー!!」
「あ、うん!」
千鳥のおねーさんに返事をしてみんなの後をついて行く。
愛刀である『にっかり青江』と二つのイチゴ大福ネコともに。そして、ポケットに最後に撮ったみんなの集合写真を入れて。
また、あの強い剣士に会える事を思って、私は駆けて行った。
〜結芽side out〜
数日後
『これより、インターミドル・チャンピオンシップ都市本戦第一試合を始めます!組み合わせはこの二人!!片や、ミッドチルダ出身の
そして、そのルオン選手の相手はこの人!!若干10歳で時空管理局特務三佐の地位を得、史上初めての戦星級魔導師の称号を持ち、現時空管理局最強の魔導師として活躍中の魔導師!!《規格外》、《魔王》、《星皇》等など様々な二つ名が通ってる、管理外世界地球出身の魔導師!!天ノ宮零夜選手!!天ノ宮選手は初参加ながら全試合もルオン選手同様一ラウンド最短で制してます!さらに!彼の背中の双剣を両方とも抜かした選手は未だにいません!』
「・・・・・・始めよう」
『それでは両者位置について。―――READY・・・・・・FIGHT!!!』
「―――
「ナニッ!?」
『・・・・・・・・・・・え、え??ハッ!―――し、試合終了!?しょ、勝者、天ノ宮零夜!!試合時間僅か、じゅっ、18秒!?』
「よし」
『強いっ!速いっ!しかも魔法融合という一部の者しか扱えない超高等技法による一撃で相手をダウンッ!!?こ、これが現時空管理局最強と言われる魔導師の実力の一端なのかぁぁぁぁっ!!!??』
「あははは・・・・・・・。―――やりすぎよーレイくん・・・・・・」