魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語 作:ソーナ
〜零夜side〜
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
『―――只今より、
大会アナウンスが響く中、僕は目の前にいる親友に声をかける。
「来たね―――クロノ!」
「まさかこんな大きな大会で君と戦えるなんてな。零夜」
目の前にいるのは年上の親友クロノだ。
クロノの装備は、まさにフル装備と言わんばかりだ。
そしてそれは僕もで。
「それは僕もだよクロノ」
バリアジャケットは何時もの黒のロングコート。背中には双剣。コートの中のホルダーには二丁拳銃デバイス。まさにフル装備だ。まあ、凛華たちは使えないけど。
「―――思い返せばクロノと
「そうか?二年前のあの時は割とマジだっただろ?」
「ああ。あの時はね。―――けど、一対一での戦いはない。そうだろ?」
「そうだな」
二年前の闇の書事件の時、確かに僕とクロノは戦ったけどあれは本気じゃなかったしね。
「僕も全力で逝く。だからクロノ。キミも、キミの持てる力すべてを出して僕に掛かって来い!!」
「ふっ。ああ!そのつもりだ零夜!!」
互いに拳を前に突き出して言う。
クロノが相手だ。手加減なんか出来ない。いや、寧ろ全力でやる。
『今回決勝に進んだのはこの二人!!!片や、ミッドチルダ出身の時空管理局の若き執務官。現在は支局長を務めるクロノ・ハラオウン選手!!ハラオウン選手はこれまでの試合を危なげなく制しています!さすが現役の執務官といえます!そして、そのハラオウン選手の相手はもちろんこの人!!第一回戦のルオン選手との試合をたったの数秒で終わらせた、同じく時空管理局の魔導師!!《規格外》、《魔王》、《星皇》等など様々な異名が通ってる、管理外世界地球出身の魔導師!!天ノ宮零夜選手!!天ノ宮選手これまでの全試合もルオン選手同様、最短最速で制してます!さぁらぁにっ!!彼の背中の双剣を両方とも抜かした選手は未だにっ!!今大会の現時点ではいないっ!!ハラオウン選手とどう戦うのか期待が高まります!!なお、二人とも年は離れてはいますが親友同士らしく、この決勝は親友決戦ともいえます!!』
「親友決戦か」
「言い得て妙だネ」
「だな」
クスッと互いに苦笑し。
『両者スタンバイを!!』
アナウンスを聞き僕とクロノは構える。
『それでは、IMCS都市本戦決勝!―――開始!!』
開始の合図とともに。
「リク・ラク・ヴィシュタル・ヴォシュタル・スキル・マギステル!」
「リ・アルヴァ・エルアスト・リヴィライズ!」
同時に起動
「来たれ雷精!集いきたりて、敵を貫け!」
「来たれ氷精!集いきたりて、敵を穿て!」
「
「
同時に紡がれた詠唱により、同時に魔法が発動。
二種の魔法の槍が僕らの中間でぶつかっていく。
その間にも僕とクロノは絶え間なく詠唱をする。
「来たれ水精、爆ぜよ風精!」
「来たれ氷精、爆ぜよ風精!」
「
「
互いの領域に水と氷による爆散が起こり、僕とクロノをそれぞれ襲う。余波だけでも凄まじく、観客席にまで旋風が届いている。
だが僕らはそれらを視界にすら収めず、ただひたすら相手を視る。
「行くよクロノ!」
「ああ!零夜!」
互いの獲物を手に加速する。
僕は片手剣、クロノは槍を。
今の段階での全開。僕もクロノも全くもって全力じゃない。
だが、それでもこの戦いはほとんどの人から目を見張るものだろう。もっとも、武に優れてる人は違うだろうけど。
切り裂き、突き、体術。自分の持ちゆる全ての技能を使う。
「っ!バーチカル・スクエア!!」
縦切り四連のソードスキルを発動する。
高速で振られた四撃をクロノは受け流して躱してカウンターを繰り出す。
「はあっ!!」
連続突きをギリギリのところで捌き後方に下がる。
「ブースト!アクセル!」
自己強化・加速術式を発動させ着地と同時に地を蹴り加速する。
「っぐ!!」
槍の柄で突きを受け止めその勢いを利用して距離をとるクロノ。
『す、凄まじい戦いだ!!両者一歩も譲らない!!』
解説のそんな声が耳に入る。
だが、そんなの雑音だ。
次々と次の一手を考える。
「はアッ!」
鋭く突進してきたクロノの突きを障壁で防ぐが、真後ろの観客席の前に貼られる障壁にまで飛ばされる。
だが、障壁に脚をつけて逆にその勢いを利用してクロノに接近する。
「ちっ!」
「ぜりゃあっ!!」
神速もかと言うほどの速度で接近しクロノと鍔迫り合う。
そこから高速の接近戦。
片手剣と
制限付きとはいえ、こうしてクロノと真っ向から戦えるのは心湧き踊る。
「ははっ!」
「ふふっ!」
僕とクロノは自然と笑みが漏れでる。
強烈な一撃を互いに浴び、僕とクロノはそれぞれ反対側へ滑った。
「は、ははは。あっははははははっ!!!」
「ふ、ふふふ。ははははははっ!!!」
互いに手を止め高々と笑う。
『ど、どうしたのでしょうか。天ノ宮選手とハラオウン選手。急に笑い始めました』
解説者の困惑した声と動揺が感じられる。
それは観客もで、一部を除き解説者と同じだった。
「いやぁ・・・・・・。楽しいねクロノ」
「そうだな」
「そろそろ全力でやろうか?」
「奇遇だな。僕もそう言おうとしていたところだ」
互いに肩を竦めて言い。
「零夜」
「ん?」
「本気でコイ」
「ああ・・・・・・そのつもりだよ」
僕は左手を背中のもう片方の剣に持っていき。
「キミ相手に手加減なんか出来ないからね!!!」
勢いよく抜刀し、いつもの
『つ、ついに天ノ宮選手が二本目の剣を抜いたぁぁぁっ!!』
解説者の興奮した声と観客の歓声が響く。
「いくよ、クロノ!」
「来い!零夜!!」
「・・・・・・っ!」
瞬動で一瞬で距離を詰め。
「はあっ!」
クロノへ二刀流を振るう。
「っぎ!」
右突きからのコンマ一秒後に回転して右上からの左薙ぎ。
「っち!ダブル・サーキュラーか!」
「正解っ!続けていくよ!」
挨拶がわりのダブル・サーキュラーから流れるように様々なソードスキルを繋げていく。
『シャイン・サーキュラー』から『インフェルノ・レイド』、『カウントレス・スパイク』、『バーチカル・スクエア』、『サベージ・フルクラム』、『カドラプル・ペイン』、『オーバーラジェーション』、『ヴァルキュリー・ナイツ』、『デットリー・シンズ』、『ナイトメア・レイン』と。絶え間なく様々な分野のソードスキルが縦横無尽にクロノへ襲いかかる。
「
「そっ!結構疲れるけどね!」
基本僕が使うソードスキルは二刀流、片手剣、細剣の三種だ。
もちろん、両手剣や短剣、槍といったのも使うがやはり多く使うのは上の三種になる。
「さぁ~らぁ~にぃ~!!」
クロノの槍の一突きを上に避け。
「降り注げ、冰蒼の煉槍!幾千の滴となりて穿け!―――風雪の千槍!」
「なっ!?」
幾千の氷の槍が上空に現れる。
「
そう言うと同時に雨のようにクロノへと幾千の氷の槍雨が降り注いだ。
「まだまだ行くよクロノ!!」
そのまま上空から千変万化の魔法を発動させる。
「め、滅茶苦茶だなおいっ!?」
「クロノ相手に手加減なんか出来ないからね〜!」
「こっのっ!たたき落とす!」
「物騒だネ!?」
障壁で防ぎ、タイミングを見極めて避けるクロノ。
さすが、伊達に僕のライバルの一人じゃない。
「お返しだ零夜!」
今度はクロノが僕を囲むように周囲に蒼白い刃を現出させた。
「うおっ!」
「スティンガーブレイド!!エクスキューションシフト!!
刃の弾丸が僕へと襲い掛かる。
「っく!
瞬時に周囲を囲むように時空魔法の障壁で防ぐ。
しかしその障壁のスキをついて飛んでくる蒼刃があった。
「なっ!?」
「零夜、そのカウンター魔法は一見最強クラスに見えるが弱点がある!」
「!」
「まず、一度カウンターした場所は次にカウンターするまでラグがあるということ。次に、全方位からの多段攻撃に弱いこと。そして、一点集中した箇所は脆いということだ!!」
「ぐっ!」
瞬時に術式の維持を破棄し空間転移でその場から離脱する。
「無駄だよ!その魔法はキミの魔力を追い掛ける!」
転移して瞬間に蒼刃による雨が僕を襲う。
確かにこれでは幾ら躱しても無駄だ。
なら。
「なら、すべて破壊しちゃえばいいよね?」
「なにっ?」
「―――
一つの魔法がたった一言で放たれる。
鐘楼の鐘の音が響き、それだけで襲い掛かってきた蒼刃が崩れ消える。
「っ!?」
「
立て続けに三連。
音撃の三撃を放ち、周囲に浮かぶ蒼刃を消滅させる。
「振動反響魔法《音撃》。音とは、空気や物体の振動によって伝わり感じとれるものだ。僕らは常に音のある中で暮らしてる。 『聞こえる音』の普通の音から、『人間には聞こえない音』の高周波の音。僕らの生きている周りには必ず音が存在する。ヒトが不快に感じ取る音を『騒音』と言うけど、その感じ方の度合いはヒトそれぞれ違う。そしてこの音撃は音の塊をただぶつける単純な魔法だ」
「・・・・・・・・・・」
僕の話にクロノも、解説者も、観客も静かになる。
「けど、音ゆえに射程距離というものは無く、不可視の為避けるのは先ず不可能。まあ、これの対処は幾つかあるけどね」
対処の仕方は僕の視界に入らないこと。視界に捕えられなければどんな魔法も相手にぶつけることは困難だ。もっともこれは簡単だろう。
次は『揺らぎを感じる』こと。風で炎が靡くのと同じ感じだ。どんな魔法でも、発動前には揺らぎがある。
次に感覚。魔法は魔力を使う。故に、魔力の流れを感知し対策を練る。けど、これは普通は難しい。なにせ、音撃は単純な魔法物理なのだから。
そして、第六感。
僕の話にしんと静かになる。
けど、その空気を破ったのがいた。
「は、ははっ。あはははははははははっ!!!!」
クロノだ。
大きな声で笑い僕を見る。
「いいね零夜!!確かにその魔法も一種の最強クラスだ!どんだけ僕を驚かせてくれるんだいキミは!!」
いつもの冷静沈着のクロノにしては珍しいくらい笑う。
「なら、僕もキミ相手に僕の全力を見せよう!!」
そう言うと、デバイスの槍をもうひとつ取り出した。
「っ!?」
「デュランダル、起動」
久しぶりにみたクロノのもう一振の槍【デュランダル】。
デュランダルは氷属性の魔法が組み込まれている。超注意が必要だ。
「デュランダルか。もしかして、エタコフィでも使う気?」
「エタコフィって・・・・・・エターナル・コフィンを変な風に略すな!てかんなの使わんわ!」
「おお、クロノのナイスツッコミ!」
「バカにしてるのかい!?」
「いや全然全く。微塵も」
「イラッ」
頬を引き攣らせて苛立ちを隠せずにいるクロノ。
うん、懐かしい。この感じは。
「ったく。キミと言うやつは・・・・・・」
「あははは。それが僕だからね」
「やれやれ」
「それで?デュランダルを出したわけは?」
「簡単さ。キミに見せてあげる。僕が君を倒すために編み出した魔法を!」
そう言うとクロノは右手のS2Uと左手のデュランダルを交差させ。
「我、今ここに門を開く者」
なにかの詠唱を始めた。
「幻想は永遠に。全てを凍てつかせる絶対零度。氷期は彼方に。来よ、氷結の王。光なき闇の彼方へ。大気に満ちし極寒の息吹、我に祝福を!悠久なる凍土、凍てつく世界の内にて、終わりなき氷国へ疾く誘おう!!」
「っ!!」
クロノから発せられる巨大な魔力に後ろず去る。
そして、クロノから最後の一文が発せられた。
「
最後の言葉が発せられるとクロノを中心に魔法陣が形成され会場全体を覆い眩い光が発した。
思わず目を覆い、次に目を開けるとそこは白銀に輝く氷雪の世界だった。
「こ、これは・・・・・・!?まさか!?」
会場からの転移ではない。ステージはちゃんとある。
ただ、
「零夜、これが僕の最強にして最大の魔法」
目の前にクロノが現れる。
両手にデバイスの槍の二槍を携えて。
「氷層世界構築、『
「この会場という世界を、自分の世界に置き換えたのか・・・・・・!!」
冷や汗を流してクロノと話す。
小規模で限定的だが、これは一種の世界構築型結界魔法だ。
僕の
僕も使えるは使えるが・・・・・・。
「驚いた・・・・・・まさかここまでとは」
この会場の世界ではクロノにアドバンテージがある。
周囲を見渡し呟く。
まるで幻想世界のように雪結晶が降り、キラキラと水晶宮のように照らす。
『な、なんだこの魔法は!?フィールドが別の空間になった!?』
解説者も観客も動揺の困惑した、驚愕の声を漏らす。
「いくよ零夜」
「っ!」
クロノが一言言うと同時に、僕の足元から氷の剣山が生えた。
「ぐっ!」
慌てて飛び上がると真横から多重魔法攻撃が襲ってきた。
しかも認識できない速度で。
「(詠唱や魔法陣の構築がなかった!?まさか、略式詠唱!?)」
瞬時に体制を整え反撃に転じる。
だが。
「っ!?(魔力が上手く練れない!?まさか魔力操作妨害!?なんだよこの魔法・・・・・・!!面白い・・・・・・!!)」
すぐさま魔法を構築しクロノに接近する。
「この空間でそんなに動けるのか・・・・・・!」
クロノも二槍でなとかガードし至近距離から
相性のいい炎系統の魔法で相殺し距離を取る。
「ふ。ミリア」
《やっと私の出番?》
身体の中にいる精霊のミリアに声をかける。
使うことは無いと思っていたけど、まさか使うことになるなんてね。
「ああ。全力だ!」
《オッケー零夜!》
途端、僕から凄まじい魔力暴風が吹き荒れ迫り来る攻撃魔法を吹き飛ばす。
「っ!来たか」
「《『
目を閉じバリアジャケットの上から白銀に光り輝く外套を羽織る。白銀に光り輝く外套は明るいも、キラキラしていてハデというわけでなく、落ち着いていて黒衣のバリアジャケットにマッチしている。
「穿て・貫け・吹き抜けよ!」
三節による風属性の連続行使。
術式破棄による根源魔法。
「
今度は詠唱破棄による風と雷、光の複合魔法。
「ブレイズカノン!!」
クロノは青い魔砲で迎え撃つ。
「スティンガースナイプ!」
「魔法の射手・連弾・精霊の568矢!」
クロノの誘導制御型射撃魔法をこちらも反撃して撃ち落とす。
「スティンガーレイ!」
「ちっ!音撃!」
直射型射撃魔法を振動反響魔法でぶつけ距離を詰める。
「アクセル!ブースト!」
瞬間的に強化魔法を発動してさらにギアを上げる。
「クロノ!」
「零夜!」
高速の近接戦闘に交え魔法を並行して放つ。
「白雷!」
上空から雷を落としクロノの動きを阻害。
だが同時に僕の動きも阻害された。
「(っ!?設置型拘束魔法か!)」
予め配置していた場所だろう。
すぐに拘束魔法を解く。
しかしその間にクロノも体勢を整え逆に向かってきた。
「っ!」
槍の一突きをしゃがんで避け。
「ぜあっ!」
下から掌底でクロノのS2Uを跳ね上げ飛ばす。
「な、にっ・・・・・・!?」
大きく目を見開くクロノ。
懐に潜り込んだ僕はそのまま。
「星破・一閃!」
右脚に魔力を込め、横蹴りでクロノを吹き飛ばす。
「ぐふっ!」
肺の中の空気が一気に出され壁際へ吹き飛ばされるクロノ。
だが、すぐさま飛ばされながら体勢を直し。
「リ・アルヴァ・エルアスト・リヴィライズ!」
「っ!」
「来たれ氷精!集い来りて敵を穿て!魔法の射手・拡散連弾・氷の471矢!!」
「なにっ!?」
広範囲拡散魔法に虚を突かれる。
「アクセルシューター&フォトンランサー!ファランクスシフト・ダンシングエッジ!!」
なのはとフェイトの魔法を改良アレンジで応戦。
「その魔法は!」
「彼女たちの魔法を僕が行使出来ないわけないでしょ!」
サラッととんでもないことを言う僕。
本来なら他人が自身の魔法を使うことは基本的には出来ない。人はそれぞれ固有
だが、僕の場合は別だ。
以前、闇の書こと夜天の書になのはとフェイトはリンカーコアを蒐集されたから聖良経由で元々使える。だが、それでは不完全だと感じ僕は考え構築した。
その末、なのはやフェイト。はやて、アリシア、アリサ、すずかなどの魔法を原点そのまま行使できるようになった。
それが、僕の固有魔法源のひとつ。
―――
僕と、【絆のある人達の魔法を行使することが可能】なのだ。
ただし、術式の構成や特性などをすべて把握しなければならないが。
「ディバイィィン・・・・・・バスターーー!!!」
なのはの直射砲撃を続けて目の前に一門展開して放つ。
「なのはのか!?」
すぐに躱すクロノ。
そこに。
「彼方より来たれ、宿り木の枝。銀月の槍となりて撃ち貫け!」
ベルカ式の魔法陣を四門展開して白銀の魔力球にクロノに向けて振り下ろす。
「石化の槍!―――ミストルティン!」
「はやての石化魔法?!・・・・・・っ!滅茶苦茶だなホント!!」
「今更だよね!!」
クロノの悪態のツッコミに笑いながら返し続けて魔法を放つ。
「ただでさえこの魔法の中で魔力が練りにくいんだから!」
そう。
普段ならもう少し速いし威力もあるのだが、クロノが発動させたこの魔法空間の中では威力も速度も僕の遅いし、魔力が練りにくいのだ。そしてそれをカバーしてるのが、僕の発動した『魔法と精霊を統一しせし王の外套』だ。
精霊のミリアと同一化したしたことでなんとか補強してる。
そもそも、この大会は僕に不利なのが多数ある。
今だって制限を受けてるし、当然ながら魔法も最上位は繰り出せない。
だが、その今の僕でもクロノは全力で来てる。
だから、僕はその応えに返すしかない。
―――全力で!
「(クロノのヤツ、だんだん僕に追いついてきてる!不味いな・・・・・・このまま長引くと)」
無詠唱で放ってくる氷系統の魔法を避け、捌き、弾く。
《術式の解析は出来たよ》
「(オッケー。
《・・・・・・今の零夜じゃ無理ね。ていうかこの魔法、一種の世界構築クラスだからね。これを上書きすれば何とかなるだろうけど》
「(ふむ・・・・・・)」
クロノの攻撃捌きながら思考する。
これの対処を。
「(ミリア、例のアレ。いけるよね?)」
《アレのこと?まぁ、いけると思うけど、出来るのは一度のみよ?それ以上はカラダの方が持たないから》
「(了解!)」
すぐにやることを決め。
「
「っ!?」
クロノを拘束魔法で縛り上げる。
そしてすぐに発動準備に取り掛かる。
「(まずは一箇所目!)」
自分の立っていた場所の足元に魔法陣を隠して展開。
それが終わるとすぐに別の場所に移動する。
「(二箇所目!・・・・・・っ!)」
「氷槍!」
拘束から抜け出したクロノが氷の槍をこっちに向けて飛ばしてきた。
左手の剣を鞘に戻し、懐から銃型デバイスを取り出し。
「
飛んできた氷の槍は目前で霧となって消える。
「っ!?―――来たれ氷精、大気に満ちよ。白夜の国の凍土と氷河を!!」
「―――来たれ炎精、大気に果てよ。極夜の国の焦土と熔岩を!!」
「―――
「―――
クロノの【こおる大地】と同時に発動した魔法は僕とクロノとの中間でぶつかりせめぎ合う。
「まだだ!」
「こっちも!」
「来たれ氷精、闇の精。闇を従え吹雪け常夜の氷雪!」
「来たれ雷精、風の精。雷を纏いて吹きすさべ南洋の風!」
フィールド内を移動しながら並行詠唱し、それそれの獲物をぶつけ合う。
「―――
「―――
12門の魔法陣から同時に吹雪と暴風が放たれる。
「リク・ラク・ヴィシュタル・ヴォシュタル・スキル・マギステル!」
この大会は競技試合だ。
そのため僕にもクロノにも、それぞれ
両者ともにここまでの激しい戦闘の末、そうLPから半分以下にまで減っている。すでにレッドゾーンギリギリの領域だ。
「来よ星の精。
背後に幾重の魔方陣を現出させ。
「
トリガーを引きクロノへと攻撃する。
「スティンガーブレイド!エクスキューションシフト!!」
対するクロノもお得意の魔法で迎撃する。
「(これで三箇所目!あと3つ!)」
移動速度をさらに加速させる。
「何をするつもりだ!?」
「さぁ、ね!」
突撃してきたクロノをカウンターで蹴り飛ばす。
「(四箇所目!)―――っぐ!」
お返しのつもりか、クロノも僕の脇腹に回し蹴りを叩き込んできた。
痛みに顔を顰め、勢いよく飛ばされながら術式を構築する。
「来たれ風の精。颶風を纏いて疾く吹き荒べ!」
観客席に張り巡らさている障壁に足を着け。
「―――
「ぢっぃ!」
障壁で受け、LPがレッドゾーンに突入したクロノ。
動きを止めてる間に。
「(五箇所目!あと一箇所!)」
次の一手を考え。
「水雷!」
雷と水系統の複合魔法を短文で放つ。
だがそれをクロノは手を翳し、目の前に氷の壁を創り防いだ。
それを見てすぐさま別の術式を練る。
緋と白の魔法陣を構築展開し。
「―――
発動術式を綴る。
無詠唱による
「っ!あの魔法は!」
クロノがヤバいと言った感じで攻撃してくる。
僕はそれを右手の剣と、左手の銃で防ぎ並行詠唱を唄う。
「―――
高熱によって白き炎となった炎雷による攻撃。
中級クラス上位に入る炎系統と雷系統の複合魔法。
【
属性は炎と雷、そして光。
第一回戦でルオンを倒した魔法だ。
白華の名の通り、相手を中心に純白の焔の花園が次々に咲き誇り、雷電との連鎖反応により花火が発生する。
だが。
「凍てつく氷壁よ、大気に満ちて、絶対零度の息吹を吹き荒れさせよ!―――グレイシアボレアス!!」
極寒の息吹のような氷風が炎雷の花園を防ぐ。
けどこれで!
「(六箇所目!これで魔法陣は設置できた!)」
六箇所すべてに魔法陣を設置し終え、残りのLPを確認する。
「(僕もレッドゾーンに入ってる。強力な魔法を四発も喰らえば終わり・・・・・・)!」
冷汗を脱ぐりながらクロノを凝視する。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
「ふぅ・・・・・・ふぅ・・・・・・」
互いに息を整え。
「リク・ラク・ヴィシュタル・ヴォシュタル・スキル・マギステル!!」
「リ・アルヴァ・エルアスト・リヴィライズ!!」
同時に起動キーを唱える。
「契約に従い我に従え、氷の女王!来たれとこしえの闇、永遠の氷河!我が眼前の敵に絶対なる氷焉を!」
クロノは最上級クラスの魔法を詠唱している。
制限があるとはいえ、恐らく上級クラスにまで落とされても最上位に近い威力はあるはずだ。
「契約に従い、疾く来たれ!すべてを燃えさす火の精霊の女王イグニース。原初の開祖なる水の精霊の女王アクエリア。生命の母たる地の精霊の女王テーラ。一にして全たる風の精霊の女王ウェニトゥス。根源たる陽の光の精霊の女王ルークス。暗黒たる陰の闇の精霊の女王デネブラエ」
僕は今まで一度も見せたことの無い、みんなの前で唱えたことの無い魔法を詠唱している。
「六元素の女王よ。我が契約を結びし原初たる始原の女王の代行者として今チカラを。疾く焚けれ、水天しせし地の息吹。星の光りを宿し、黒白の閃を駆けよ。素は讃歌の饗宴。祝福を与えし我に来たれ」
詠唱に従い、それぞれ設置した6つの魔法陣からそれぞれの属性の色が輝く。
クロノの詠唱はもう終わってる。
何時でも発動可能だ。
「―――今星は森羅万象。無限の生命に運命。無限に広がる果てしない夢幻の宇宙。それは幾千億全ての可能性の扉を開く。そこに有るのは光にして闇、それは混沌。太陽と月。陰と陽。聖と邪。善と悪。すべては表裏一体。時は停滞せず、幾度も止まることは無い。祖はゼロ。一にして全」
詠い紡ぐように奏でる高速の超長文の詠唱。
だが、それもあと少しで。
「これで終わらせるぞ零夜!―――絶対零度の氷雪よ、いまここに!!―――
クロノから放たれる極大魔法。
それはこの一撃に全てをかけると決めた魔法だ。
「星は瞬き、幾千も耀く。神天より降り注ぐ終末の柱!」
だから僕もこの一撃に全てをかける!
「いくよクロノ!!―――終焉の時は今此処に来たれり!!」
魔法陣の中央点に立ち、双剣を突き立てる。
それと同時に外縁の6つの魔法陣からそれぞれの属性の色の光の柱が立ち上り、巨大な複雑怪奇な立体魔法陣が構築される。
迫り来るクロノの魔法。
終の言葉を発する。
「―――
6つの属性が合わさり一つとなる。
合わさった6つの属性魔力は僕の頭上で星円形の魔法陣を創り、黒と白の魔法が放たれた。
クロノの氷結魔法と僕の神星魔法がぶつかりとてつもないエネルギー波を発する。
余波だけでLPが吹き飛ばされそうだ。
「はあああああああああああああぁぁぁっ!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!!!」
互いの覇気がフィールドに響く。
視界が眩い閃光で被われるもクロノと切迫する。
やがて視界が開き―――
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
クロノの世界構築魔法も解け、元に戻っているステージで僕とクロノは互いに向き合っていた。
しばしの沈黙の後、僕は身体が崩れ落ちるのをなんとか踏み止まり、クロノは後ろにバタンと倒れた。
『け、決着ゥーーっ!!長時間に及ぶ試合の末、勝利したのは天ノ宮零夜選手だァァァァァっ!!!!』
解説者の声を機に観客席から破れんばかりの歓声があちこちから上がる。
「か、勝った・・・・・・?」
制限が有りとはいえ、限界も限界の強敵であるクロノとの戦いに僕は実感が持てなかった。
もし制限無しの戦闘なら圧勝はせずとも勝てただろう。だが、制限有りのこんな戦いではギリのギリだった。
逆に言えば、それほどまでにクロノが強かったと言うだけだ。
両手に握る双剣を軽く払いいつも通り鞘に納める。
それが終わると、僕もクロノと同じようにその場に背中から倒れた。
どうやら緊張と集中の糸が切れたようだ。
正直、今すぐ眠りたい気分。
そう思ってると頭上に影が差し。
「まったく・・・・・・キミがここまでやるなんてね」
「夜月・・・・・・」
セコンドの夜月が呆れ半分お疲れ様半分の顔で言ってきた。
「しかも最後の魔法。手加減してたけど切り札の一つだよね?使ってもよかったの?」
しゃがみこみ、耳許で小声で問う夜月。
さすがに夜月にはバレてたか。
「大丈夫。あの魔法はまだ未完成だから。正直、アレが出来るかどうか賭けだったよ」
「か、賭け!?は!?賭けでアレ使ったの!?レイくん最近脳筋になってきてない!?」
「そんなことないでしょ!?」
夜月の失礼な言葉に反論する。
僕は別に脳筋じゃないよ!?
「やれやれ。・・・・・・はい」
呆れたように肩を竦める夜月の手を握り起き上がる。
「ありがとう夜月・・・・・・っと」
バランスを崩し、夜月に倒れ掛かる。
「ちょっ!」
夜月がなんとか支えてくれ倒れる事はなかったが。
「・・・・・・レイくん、手」
「ぇ?」
他の人からは見えないが、夜月にはバッチリ見られていた。
手元を見ると、左手が夜月の胸辺りにあった。
てか、うん。バッチリ触ってる。
いや、その・・・・・・11歳だけど以外にあるんだ。
「あ!いや!その!」
慌てて手を離し弁解する。
「まあ、いいけど。レイくんなら別に構わないし」
「はい?」
「なんでもないわ。さ、行きましよ」
「あ、うん!」
夜月に手を引かれてクロノと、クロノに肩を貸してるエイミィさんのところへ向かった。
その後、拍手喝采の中行われた表彰式で僕は【ミッドチルダ中央部優勝】を勝ち取った。
次は都市ではなく、世界だ。
そこで優勝すれば次元世界最強の称号を手にすることが出来る。
この大会へは局からお願いされてエントリーしたけど、今はエントリーして様々な同世代の人と拳や剣、魔法をぶつけ合えられたことに感謝して良かったと思う。
だって、この世界は未だ見ぬ可能性で満ち溢れているのだから。