魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語   作:ソーナ

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夢と想い出

 

~零夜side~

 

 

僕の名前は天ノ宮零夜。ここ、天ノ宮家でお父さんとお母さん、愛奈美お姉ちゃんと四人で生活している。そしてお隣は緋愛神(ひめがみ)家。幼馴染みの華蓮とそのお父さんとお母さん三人家族の家だ。

僕の家の天ノ宮家と緋愛神家はそれぞれの親が親友ということもあり、昔から家族ぐるみの付き合いだ。

そしてみんな、僕を残して今はいない人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ・・・・・・愛奈美お姉ちゃんと・・・華蓮・・・・・・?」

 

僕は目蓋を擦りながらまだ夢を見ているのと思いながら目の前の二人を見る。

 

「そうだよ、零夜くん♪」

 

「どうしたの零夜、まるで幽霊でも見つけたような顔して。夏はもう過ぎたのよ?」

 

「う、ううん。なんでもないよ華蓮」

 

「さっ、早く起きて♪お母さんもお父さんも伯母さんと伯父さんも下にいるんだから」

 

「うん、わかったよ愛奈美お姉ちゃん。すぐ着替えるね」

 

僕はそう言うと伸びをしてベットから降り、服の裾に手を掛けた。

 

「で、あの、二人とも?」

 

「なあに?」

 

「どうしたの?」

 

「えっと、着替えたいから部屋から出てほしいんだけどな~」

 

「私は別に気にしないよ?」

 

「私も」

 

「いやいや!僕が気にするから!すぐに着替え終わるから部屋の外で待ってて!」

 

僕はお姉ちゃんと華蓮を強引に外に出してすぐに着替えた。

 

「(この姿・・・・・・僕が死ぬ前の姿・・・・・・だよね。それに愛奈美お姉ちゃんと華蓮も)」

 

着替えながら高校生の姿の二人を思い出してそう想う。

着替え終わり、部屋の外に出るとお姉ちゃんと華蓮と一緒に一階のリビングへと向かった。

リビングに入ると、そこには。

 

「お、零夜。やっと起きたのか」

 

「おはよう零夜君」

 

「零夜君、おはよう~」

 

「愛奈美ちゃん、華蓮ちゃん、零夜君をどうやって起こしたのかな~」

 

僕の両親と華蓮の両親がいた。

お母さんたちは台所で朝食を、お父さんたちはソファでチェスをしていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

「零夜くん、大丈夫?」

 

「え?」

 

「だって、零夜くん、泣いてるよ?」

 

お姉ちゃんに言われて僕は目元を拭った。手の甲には僕の涙が付着していた。

 

「ううん、なんでもないよお姉ちゃん」

 

そう、これが僕の一番ほしかった日常。愛奈美お姉ちゃんがいて、華蓮がいる。そして、お父さんとお母さん、伯父さんも伯母さんもあるこの暖かい、当たり前のような一面が。

僕は心配そうに見てくるお姉ちゃんと華蓮に微笑んでそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば三人はこのあと出掛けるんだよな?」

 

朝食を食べ終えたところにお父さんがコーヒーを飲みながらそういってきた。

 

「うん。今日をずっと待っていたからね」

 

「ええ。今日は私と零夜、愛奈美お姉ちゃんとのデートの日だもん」

 

「ははは!元気があっていいな」

 

「ほんとね~」

 

「三人とも気を付けていってらっしゃいね」

 

「わかってるよお母さん」

 

リビングに朗らかな笑いが包まれた。

そして時は進み。

 

 

「うわっ、外寒いね」

 

「そりゃもう十二月だからでしょ?」

 

「そうね~」

 

「でも中は温かいね」

 

僕たちは大型のデパートに来ていた。

外を歩いてきた僕らは外の寒さにそう言い、デパートの中に入った途端に感じた暖かい空気にそう言った。

 

「それで、最初はどこに行くの?」

 

僕は両隣の二人に聞く。

 

「う~ん、手始めにアクセサリーでも見ようよ」

 

「いいと思うよ華蓮ちゃん。零夜くんもそれでいいかな?」

 

「僕はそれでいいよ」

 

「じゃあ、いこう」

 

僕とお姉ちゃんは華蓮に連れられてデパート内の三階にあるアクセサリーショップに来た。

 

「これなんかどうかな?」

 

来るなり、僕は華蓮とお姉ちゃんにアクセサリーの感想を言っていた。

 

「う~ん、華蓮の朱色の髪に合わせるなら、こっちの白がいいんじゃないかな?」

 

「そう?」

 

僕は近くにあった白い髪留めを華蓮の髪に付けた。

 

「うん、よく似合ってるよ」

 

「ありがとう零夜♪」

 

「零夜くん、私はどうかな?」

 

呼ばれて振り向くと、そこには長い蒼い髪を一つ結びにしてサイドテールにしたお姉ちゃんがいた。

 

「うん、よく似合ってるよ愛奈美お姉ちゃん!」

 

「ほんと♪」

 

「うん!お姉ちゃんの蒼い髪に銀色のシュシュがよく似合ってる!」

 

「やった!」

 

「愛奈美お姉ちゃんは学校で結構人気だもんね」

 

苦笑いをしながら華蓮がお姉ちゃんにそう言った。

 

「そうなのよね。お陰でよく告白させられてるから困っちゃうよ」

 

「へぇ。お姉ちゃんに手を出すなんて。・・・・・社会的に抹殺しようかな・・・・・」

 

お姉ちゃんの言葉を聞いた僕は後半部分の声を冷たくして呟くように言った。

 

「ちょっ、零夜くん!?」

 

「あ、なら私も手伝うよ零夜」

 

「華蓮ちゃんまで!?」

 

「ほんと?」

 

「うん」

 

「二人とも、それはさすがにダメだよ~!」

 

僕と華蓮の声に慌てたように言うお姉ちゃんを一緒に見て、クスッと笑ってしまった。

 

「な、なんで笑うのよ二人とも~!」

 

「ご、ごめんお姉ちゃん。でも、お姉ちゃんの反応が面白くて・・・・・・」

 

「うん。思わず笑っちゃったの。さすがブラコンとシスコンの姉弟だね♪」

 

「~~~!///ふ、二人の意地悪~!!」

 

お姉ちゃんの子供のような仕草に僕と華蓮は楽しそうに笑った。

 

「もう!・・・・・・あ、零夜くん、これどう?」

 

「ん?」

 

僕はお姉ちゃんに呼ばれて近くによった。

お姉ちゃんが手に持っていたのは白銀に煌めく宝石のペンダントだった。

そのペンダントを見た瞬間、不意に脳裏に声が響いた。

その声は優しく、暖かみのある、どこか愛奈美お姉ちゃんに似た声だった。

 

「っ!」

 

「だ、大丈夫零夜くん?!」

 

声を聞いた途端に頭痛がし、顔をしかめるとお姉ちゃんが心配した様子で聞いてきた。

 

「あ、うん。大丈夫だよ、お姉ちゃん」

 

「そう?ならいいけど。それで・・・・・・どう、かな?」

 

ペンダントを首に掛けて首をかしげて聞いてくるお姉ちゃんの姿に思わず僕は見惚れてしまった。

 

「零夜くん?」

 

「う、うん、可愛いよお姉ちゃん」

 

「ありがとう零夜くん♪」

 

お姉ちゃんは嬉しそうに声を弾ませるとそれを持って何処かへ行ってしまった。

するとそこへ。

 

「ねえ、零夜。これどうかしら?」

 

華蓮が傍にあった蒼白色宝石の入ったブレスレットを腕につけて聞いてきた。

 

「っ!」

 

華蓮の付けているブレスレットを見た瞬間、さっきと同じ頭痛が襲ってきた。

そしてまたしても声が聞こえた。その声は可憐で、どこか華蓮に似た声で健気な感じだった。

 

「だ、大丈夫零夜?!」

 

「う、うん、大丈夫。すごく似合ってるよ華蓮」

 

ブレスレットを付けて聞いてくる華蓮が可愛くて見惚れてしまったのを隠しながら言う。

 

「そ、そう。ありがとう零夜」

 

そう言うと華蓮もどこかへと行ってしまった。

お姉ちゃんと華蓮の後ろ姿を見ながら僕はさっきの声を思い出していた。

 

『行きましょう零夜くん』

 

『待っていますわマスター零夜』

 

その声を思い出していると。

 

『零夜くん』

 

「っ!?」

 

またしても何処からか頭に声が響いてきた。

とっさに周囲を見渡すが、あるのは小物類やアクセサリー、その中でも一際目立っているのが、黒と白の色の宝石のネックレスだった。

 

「気のせい・・・・・・かな?」

 

そう静かに呟くと、僕はお姉ちゃんと華蓮の方に歩いていった。もうその頃には頭の中に違和感は霧のようになくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零夜が夢の中にいるころ・・・・・・・・・・

 

 

 

なのはとフェイトは闇の書の意志と相対していた。

 

 

「零夜くんをどこにやったの!」

 

「わが主も彼も覚めることない眠りのうちに終わりなき夢を見る。生と死の狭間の夢、それは永遠だ 」

 

「永遠なんて・・・・・・ないよ」

 

「なのはの言うとおり、永遠なんてない」

 

なのはとフェイトがそれぞれデバイスを構えるなか、闇の書の意志は目尻に涙を一滴浮かばせた。

 

「おまえたちにわが主と彼の悲しみが分かるとでも言うのか?」

 

「はやてちゃんと・・・・・・」

 

「零夜の、悲しみ・・・・・・?」

 

なのはとフェイトは闇の書の意志の言葉が理解できずにいた。

 

「彼は主以上の心の闇がある。彼は二度と目覚めないであろう」

 

零夜を闇の書に吸収した闇の書の意志は零夜の抱えている闇の少しが感じ取れたのだ。

 

「そんなことない!零夜くんならきっと・・・・・・!」

 

「それはおまえの願望だ」

 

そう言うと、闇の書の意志はなのはとフェイトに向かって話はこれで終わりだとでも言うように黒い魔力砲撃を放った。

 

「くっ・・・・・・!」

 

魔力砲撃をプロテクションでフェイトごと防いだなのははレイジングハートを構え直してキャノン形態に。

 

「私たちは絶対に諦めない!」

 

「はやてと零夜はかならず助ける!」

 

フェイトもバルディシュをクレッセント形態にした。

そして、なのはとフェイト、闇の書の意志はぶつかり、そのまま戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクセサリーショップを出たあと、僕らはブティックショップや化粧品や本屋でライトノベルのソードアート・オンラインや漫画本のネギま!?など本などを見て回り、お昼を食べ、そのあとはボウリングやらゲームセンターで遊んだりして、今はクレープ屋さんのクレープを食べながら次の相談をしていた。

 

「次はどこに行こっか?」

 

「う~ん、この時間帯だと・・・・・・」

 

空には星が見え、時刻は黄昏時だった。

 

「あ、あそこに行かない?」

 

「あそこって・・・・・・あそこのこと?」

 

「うん」

 

「いいと想うよ、この時間帯からならよく見えると思うし」

 

「じゃあ、遅くならないように早く行こっ!」

 

「うん!」

 

僕らはクレープを食べ終えると、目的地に向けて歩いていった。

目的地はデパートから少し離れた、徒歩三十分の距離にある山の頂上だった。

 

「うわ~・・・・・・きれい・・・・・・」

 

「ほんとだね・・・・・・」

 

「空気が冷たくて清んでいるからより綺麗に見えるのかも」

 

「確かに♪」

 

山頂に来た僕らは近くにあるベンチに腰かけた。

この山はさほど高いわけではなく、さらに設備も整ってるうえ、舗装や安全対策もされているため天体観測にもってこいの場所なのだ。といっても、環境に問題がでないように大それたことはしてないが

 

「三人で見る星って、どんな事よりもきれいだよね」

 

「うん」

 

「そうね」

 

「あ、零夜くん」

 

「なに?」

 

「はい、これ」

 

僕はお姉ちゃんと華蓮に渡されたものを受け取った。

 

「これは・・・・・・」

 

「開けてみて」

 

お姉ちゃんと華蓮に即されて渡された袋を開けた。

 

「これ・・・・・・」

 

中には一つのネックレスが入っていた。そのネックレスは白と黒の色の宝石が付いた、アクセサリーショップにあったネックレスだった。

 

「私と華蓮ちゃんからプレゼント♪」

 

「私と愛奈美お姉ちゃんだけじゃなくて零夜とも一緒に付けたかったから、愛奈美お姉ちゃんと一緒に選んで買ったんだよ」

 

お姉ちゃんと華蓮の声を聞きながらそのネックレスを眺める。

すると、頭に声が響いてきた。

その声は優しく可憐で、どこか懐かしくもあり、元気が出るような声だった。そして、それと同時に、色々な映像が流れ込んできた。

 

「!」

 

映像が流れ込んでくるのを見ながらネックレスを見た僕は、空を見上げた。

空はもう暗く、空一面に満面の星々が散らばっていた。

それを見た僕は、すべてを思い出した。

 

「(やっと・・・・・・ようやく思い出したよ、みんな)」

 

僕はお姉ちゃんと華蓮に聞こえないように声に出さずに言い、両隣のお姉ちゃんと華蓮に声をかける。

 

「ねえ、お姉ちゃん、華蓮」

 

「ん、なあに零夜くん?」

 

「どうしたの零夜?」

 

「聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「いいよ?」

 

「うん?」

 

「ここは現実じゃないよね。僕の・・・・・・僕が望んだ夢の世界」

 

僕の言葉にお姉ちゃんと華蓮は静かに僕を見る。

 

「愛奈美お姉ちゃんがいて華蓮がいる。お父さんとお母さんと伯母さんと伯父さんもいる。とっても楽しい、日常の夢」

 

僕がそう言うと、風が少し吹き、お姉ちゃんの長い蒼い髪と華蓮の長い朱色の髪がフワリと舞った。

 

「何時までもここにいたい。お姉ちゃんと華蓮と一緒に過ごして年を取って、いろんな場所に行きたいしいろんな事がしたい。けど・・・・・・それじゃいけないんだよね」

 

僕は哀しい眼をして空を見る。

 

「時は未来に進んでも、過去には戻らない。時間は停まっても何時か必ず動く」

 

僕の声に無言で聞いていたお姉ちゃんと華蓮は僕を見ながら言った。

 

「いいじゃんない、夢の中でも。外に・・・・・・現実に行ったら、また零夜くんに残酷な現実が待ってるかもしれない。また何かを・・・・・・大切なものを失ってしまうかもしれないんだよ?ここにいたら・・・・・・零夜くんは幸せで楽しくいられるよ。何も失わずに済めるし、華蓮ちゃんだって、お母さんとお父さんも伯母さんも伯父さんとも一緒にいられるんだよ?」

 

「そうだよ零夜。この夢の中でなら零夜は何も失わせずに済むし、夢も叶うんだよ?私と愛奈美お姉ちゃん、零夜で一緒に過ごして、結婚して子供をつくって、そして一緒に年を取って、子供たちが大きくなっていくのを見守る。いろんな場所に行けるし、いろんなことも出来るんだよ」

 

お姉ちゃんと華蓮は僕を見ながらそう言う。

 

「確かにお姉ちゃんと華蓮の言うとおりなのかも・・・・・・。ここで過ごして、お姉ちゃんと華蓮と結婚して子供をつくっていって仲良く過ごす・・・・・・。僕が望んでいて、叶わなかったこと・・・・・・」

 

「「なら・・・・・・!」」

 

「でも、ダメなんだ。何時までも停まっていちゃ。進まないと行けないんだ。乗り越えないと行けないんだ」

 

「零夜くん・・・・・・」

 

「零夜・・・・・・」

 

「それに、今の世界も嫌いじゃないんだ。ずっと欲しかった友達が出来て、そこからいろんな人たちと触れ合えて・・・・・・。義理だけど、家族も出来た。僕はいろんな人に恵まれて、励まされて、手伝ってもらった。それに僕を待っている人もいるし、助けたい人もいるんだ。だから、ここには・・・・・・・・・・愛奈美お姉ちゃんと華蓮と一緒にはいられない」

 

僕の声に愛奈美お姉ちゃんと華蓮は一瞬悲しい表情をして涙を流した。

 

「わかってたよ零夜くん。零夜くんがそう決めるって」

 

「うん。零夜は昔から決めたらやりとげる、って言っていたからね」

 

「愛奈美お姉ちゃん・・・・・・華蓮・・・・・・」

 

「だてに十年以上零夜くんのお姉ちゃんじゃないってことだよ♪」

 

「ずっと一緒にいた幼馴染みだから零夜のことは分かってる♪」

 

そう言うと愛奈美お姉ちゃんは首に下げていたペンダントを、華蓮は右手首に付けていたブレスレットを外して僕に渡してきた。

それはどっちも昼間のアクセサリーショップで買ったものだった。

 

「返さないといけないね。零夜くんの大切な物を」

 

そう言うと愛奈美お姉ちゃんはペンダントを首に、華蓮は僕の右手を取ってブレスレットを嵌めてきた。

 

「お姉ちゃん・・・・・・華蓮・・・・・・」

 

「例え私たちが離ればなれでも、私たちは零夜くんとずっと一緒だよ」

 

「うん。私たちはずっと一緒」

 

「お姉ちゃん・・・・・・華蓮・・・・・・!」

 

僕はお姉ちゃんと華蓮を抱き締めると涙を流す。

 

「うん・・・・・・うん!僕らはずっと一緒だ!どんなときだって!思い出はいつもここにあるから」

 

「そうだよ零夜くん」

 

「そうだよ零夜」

 

「ありがとう、愛奈美お姉ちゃん、華蓮。大好き、愛してる。今も、これからもずっと、ずーっと!」

 

「私も、大好きだよ。愛してる!」

 

「私も零夜のこと大好き。ずっと愛してる!」

 

涙を長し、涙声で言い抱擁を続ける。

しばらくして僕は二人から一歩離れた。

 

「お別れだね」

 

「うん」

 

「そうだね」

 

「零夜くん」

 

「?」

 

お姉ちゃんに呼ばれて、お姉ちゃんを見た僕は突然視界が真っ暗になった。真っ暗になった理由はお姉ちゃんが顔を近付かせてきたからだ。

 

「ん・・・・・・」

 

真っ暗になった途端に唇にお姉ちゃんの唇があたった。

 

「お姉ちゃん・・・・・・」

 

「私だけじゃなくて華蓮ちゃんも、だよ」

 

「華蓮・・・・・・・」

 

「零夜・・・・・・ん・・・・・・」

 

再び唇に華蓮の唇があたった。

お姉ちゃんと華蓮からキスされたのを分かると少し顔が赤くなった。

 

「私と華蓮ちゃんから零夜くんへの餞別」

 

「それとお守りと応援だよ零夜」

 

「はは。ありがとう、愛奈美お姉ちゃん、華蓮」

 

僕は二人から少し距離を取ってバリアジャケットを展開する。それと同時に、僕の身体は元の身体に戻っていた。

 

「カッコいいよ零夜くん」

 

「うん、カッコいいよ零夜」

 

「ありがとう、愛奈美お姉ちゃん、華蓮」

 

僕のバリアジャケットは今までのとは違い、愛奈美お姉ちゃんと華蓮の髪の色の蒼と朱を織り混ぜた、ロングコートを羽織っていた。

 

「それじゃ、行ってくるね。愛奈美お姉ちゃん、華蓮」

 

「行ってらっしゃい零夜くん。頑張ってね」

 

「行ってらっしゃい、零夜。頑張りなさいよ」

 

「うん!ありがとう愛奈美お姉ちゃん!華蓮!行ってきます!」

 

僕は二人から離れて空を上がっていった。

ある程度上がり、街が見下ろせる位置まで来た僕はデバイスたちに声をかける。

 

「凛華、澪菜、星夜、お待たせ」

 

《大丈夫ですよ零夜くん♪》

 

《うん!零夜のこと信じていたもん!》

 

《迷いは飛んだみたいですわね、零夜くん》

 

「うん。僕はもう大丈夫。愛奈美お姉ちゃんも華蓮がずっとここにいるから」

 

僕はそう言うと心臓の部分に手をあて目を閉じる。

 

「お父さんもお母さんも伯父さんも伯母さんもずっといる。僕は一人ぼっちじゃない!」

 

目を見開き凛華たちを展開する。

凛華は右手に、澪菜は左手に、星夜は背中にそれぞれ展開していた。

 

「僕にこれからも力を貸してくれる、みんな?」

 

《もちろんです!》

 

《もちろんだよ!》

 

《もちろんですわ!》

 

「ありがとう、みんな・・・・・・」

 

僕はキリッと視線を治して言う。

 

「それじゃここを出ようか・・・・・・。凛華、澪菜、絶対切断(ワールド・エンド)、発動!」

 

そう言うと、凛華は剣形態になり、澪菜と同時に剣の長さが伸び、それぞれには蒼と朱色のライトエフェクトが煌めいていた。

 

「ありがとう、お父さん、お母さん、伯父さん、伯母さん。僕はみんなのお陰で、最高に幸せ者だよ。愛奈美お姉ちゃん、華蓮、大好き、愛してる」

 

僕はそう言うと双剣を左右に広げ、

 

「そして・・・・・・これからも僕を見守っていてね」

 

確固たる決意の声とともにそう言い放つ。

すると。

 

「「「「行ってらっしゃい、零夜(くん)頑張って(りなさい)」」」」

 

「「行ってらっしゃい零夜(くん)」」

 

頭の中に愛奈美お姉ちゃんと華蓮たちの優しい、励ましの声が聞こえ、みんなの声に背中を押されるともに、

 

「うん・・・・・・・行ってきます!」

 

涙を一滴流して。

 

「幻夢・・・・・・二閃!」

 

僕は凛華と澪菜を振るってこの夢の世界から出た。

その瞳にはもう迷わない、意志の秘めた強い輝きが出ていた。

僕は進んで行った。今度こそ大切なものを失わないように。無くさないように。愛奈美お姉ちゃんと華蓮の思い出とともに、すべてを守るために。

 

 

 

 

 

 


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