魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語 作:ソーナ
~零夜side~
管理局の仕事を兼任しながら学生生活を送っている僕、天ノ宮零夜は新学期の始まる今日、いつもとは違う気分でクラスの一番後ろの椅子に座っていた。そこに。
「なんか楽しそうね零夜」
「そう?」
「うん。アリサちゃんが言う通りだよ」
「なにか良いことでもあったの?」
「う~ん、ちょっとね」
なのはたちが声をかけてきた。
「そう言えば私とすずかとアリシアも管理局に入ったけど、まだどこに配属されるか聞いてないんだけど」
「そう言えばそうだったね」
アリサが僕らに聞こえる声で言った通り、アリサとすずか、アリシアは僕やなのはたちに少しだけ遅れて管理局に入局した。遅れた理由は魔法の扱いを習っていたからだ。レベルで言うならば二人とアリシアはなのはたちに近いレベルだ。正直、局の新人相手なら楽に勝てると思う。
「たぶんそろそろ教えられると思うよ?まあ、恐らくだけどなのはたちと同じかな?」
僕の特務0課はある意味例外中の例外だ。
幸いにも僕の秘密を知っているのはあの時あの場にいた人物だけなため、局の高官らに知られることはない。そもそも現時点での特務0課はレジアス中将ら一部の高官のみ知っていることだ。そして、僕たちについては最重要機密扱いになっている。凛華たちがデバイスだと言うことは周囲にはあまり知られてないに加え、聖良が闇の書のナハトヴァールだった言うこともあの場にいた人物と3提督しか知り得ないことだ。なにせ凛華たちは単独での行動が可能であり、その能力ランクはオーバーSランクなのだ。聖良に加えてはSSランク近くになってる。まあ、ベースが僕だから仕方無いのだが。そんなわけで、シグナムたちヴォルケンリッターよりもランクが違うためはやてたちよりも特級の機密となっていたりする。もし知られたらこれを悪用する人物がいる可能性があるからだ。この事は3提督自らが承認した。もちろん僕もこの事には同意した。家族が不当な扱いを受けるのは堪ったものじゃないからだ。
そう思いながらなのはたちと話していると。
「みんな~席についてね~」
先生がやって来た。
なのはたちが自席に戻り、周囲も静かになってしばらくして先生が点呼を取った。
「え~と、新学期早々このクラスに新しく二人のクラスメイトが入りまーす」
先生の言葉にクラスメイトの声が湧きだった。
「それじゃ入ってきてくださ~い」
先生が廊下の方に声をかけると扉がスライドし二人の女の子が入ってきた。
「八神はやてです。よろしくお願いします」
一人は両足が完治して、ついに学校に来れるようになったはやてだ。
そしてもう一人は。
「あ、天ノ宮聖良です。よ、よろしくお願いします!」
そう聖良だ。
事の顛末は1週間前に遡る。
1週間前 天ノ宮家
「え!?せ、聖良もう一度言ってくれる・・・・・・?」
「う、うん。お兄ちゃん、私もお兄ちゃんと一緒に学校行きたいんだけど・・・・・・・・・いいかな?」
ある日の昼下がり、唐突に言った聖良の言葉に部屋にいた全員、天ノ宮家家族全員が動きを止めた。ちなみに明莉お姉ちゃんたちも居たりする。
「え、えっと聖良、僕と同じ学校に行きたいの?」
「うん」
「ちなみに理由は・・・・・・?」
「お兄ちゃんが学校でどんな風に過ごしてるのか知りたいってのもあるんだけど・・・・・・」
「あるんだけど?」
「今はお兄ちゃんたちがいるから一人じゃないけど、前までは一人だったから・・・・・・。外の風景を。私が知らない事を・・・・・・今まで知り得なかったことを自分の目で視たいと思ったの!」
聖良の言葉に僕は胸が締め付けられる感じがした。聖良は聖良と僕から名前が与えられるまではあの暗くてないもない孤独の中にいた。ずっと、望んでないことをやらされ続け、終わりのない絶望の日々を見続け、僕と出会わなければ聖良の心は摩耗し消滅していただろう日々を。確かに聖良と比べるとリインフォースはまだ少しよかったと思う。もちろんどちらも酷いことには変わりなかったが。でも、リインフォースは認識できるに対して、聖良は認識されず僕があそこで出会わなければナハトヴァールのコアと一緒にこの世にいなかった。そして、聖良の視ていたのは自分が破壊をし続けることだけ。望まない、やりたくない日々の連鎖のみ。
僕は聖良の言葉にそう悲痛の思いで思い出した。
「―――うん。聖良の気持ちは良く分かったよ」
聖良を抱き締めて優しくそう言った。
「お兄ちゃん」
「僕は聖良がそう望んだなら否定しないし、もちろん手伝うよ」
「お兄ちゃん・・・・・・!」
「僕らはもう家族なんだから思いっきり甘えていいんだよ。聖良の望みはなに?」
「私は・・・・・・私はお兄ちゃんと同じ学校に行って、お兄ちゃんの視ている光景や、なのはちゃんたちと同じように過ごしたい!」
「うん。聖良の望み、僕が叶えてあげるよ」
「お兄ちゃん・・・・・・」
「明莉お姉ちゃんたちも良いかな」
「ええ。零夜くんがそう決めたのなら、私はなにも言いません。と言うか逆に零夜くんたちのことを応援します♪」
「はい。私たちは零夜くんが望むことならなんでもしますから」
明莉お姉ちゃんと凛華の言葉にみんなうなずいて返してくれた。
「ありがとう、みんな」
明莉お姉ちゃんたちに笑顔を浮かべてお礼を言い。
「それじゃ、聖良が学校に通えるようにしよっか♪」
「うん♪」
そう言ったあと、僕は学校に電話して聖良の転入手続きをして必要な物を買い揃え、一応上司であるミゼットさんに連絡した。ちなみにミゼットさんからは気にしないで年頃の子供のように学校生活を楽しんで下さい、と言われた。その時のミゼットさんの口調がどこかお祖母ちゃんを思い起こさせたのはきっと気のせいじゃないと思う。
そんなことがあって今。
視線先、壇上でははやてと聖良が並んで自己紹介をしていた。
はやてと聖良の自己紹介にクラスメイトはフェイトとアリシアが転入してきたときと同じように盛り上がった。
「はい、ありがとうございます。八神さんは天ノ宮君の前の、天ノ宮さんの席は天ノ宮君の横になります」
「はい!」
「わ、わかりました!」
先生の言葉にはやてと聖良は前から移動してきて、はやては僕の前の席に、聖良は横に座った。
「それではこれから全校集会がありますのでみなさん移動してください」
それから全校集会があり、新学期初日のため今日は諸々の連絡事項を伝えたら下校となって放課後。まあ、まだお昼前なんだけど。
「お、お兄ちゃん・・・・・・」
今僕は聖良に抱き付かれて身動きがとれない状態です。
理由は・・・・・・・・・。
「はいはい、あんたたち、聖良が怖がってるでしょ。そんなに一辺に質問したらダメでしょうが」
そう、転入生が来たとき、恒例の質問攻めに合っているからだった。ちなみにはやての方にもいるのだが、はやてはまあなんとか答えたりしていた。
「アリサごめん、助かったよ」
「いいわよ。それに聖良の怯えを見たらね」
さすが一部でクラスの裏鬼委員長と呼ばれることもあって、アリサの指示で統一が成された。
「質問するときは一人ずつね!」
「はい。質問良いかな?」
「はい、どうぞ」
アリサの慣れた動作に苦笑しながら、クラスメイトの女の子の質問を聞いた。
「天ノ宮さんと天ノ宮君って名字が同じだけど、もしかして兄妹なの?」
「うん。聖良はこの間までちょっと事情があってね。学校に通えなかったんだよ」
女の子の質問に少し嘘を混ぜて聖良の代わりに答える。
「そうなんだ~」
「はい!次良い?」
「どうぞ」
「天ノ宮さんは好きな人っているの?」
次に質問してきたクラスメイトの男の子の質問には聖良が。
「え、えっと、好きな人はお兄ちゃん・・・・・・かな」
抱き付いたまま少し顔を赤らめて言った。
「いきなりなんつう質問してるのよ!?」
聖良が答えるとアリサが呆れたようにそのクラスメイトの男の子に言った。
それからクラスメイトの質問に僕が答えたりとして時間は過ぎて、僕らは学校をあとにして喫茶・翠屋にいた。
「それにしても聖良も転入してくるなんてね~」
「ホンマビックリしたで。今朝職員室に行ったら聖良ちゃんが居てはるんやもん」
「ふふふ。ビックリしたでしょ」
「うん。それはもう」
「あ。もしかして零夜が楽しそうだった理由って」
「正解だよフェイト」
隣に座って、支給された教科書を楽しそうに読む聖良の頭を撫でフェイトに言う。
「零夜くんもすっかりお兄ちゃんやね」
「シスコンじゃないかしら?」
「あはは・・・・・・」
「もしこれで聖良ちゃんに好きな人とか、聖良ちゃんに告白してきたら人がいたらどないすんやろ」
「え?」
はやての言った言葉が僕の頭の中を反響した。
「(聖良に好きな人・・・・・・?聖良に告白・・・・・・?)」
「れ、零夜くん?」
なのはがおどおどと聞いてくるが耳に入らない。
何故なら聖良に好きな人が出来たときの事や、聖良に告白してきた時のことを考えているからだ。その処理速度は並のスーパーコンピューターを超えたと自負している。
やがて出た処理結果は。
「聖良は絶対に渡さない!」
だった。
『『『『ズコーーー!!』』』』
「え?えっ!?」
僕の答えに、今入ってきた明莉お姉ちゃんや凛華たちに加え、カウンターにいた桃子さんや少しは慣れた場所にいるリンディさんやクロノたち、さらになのはたちまでもがその場にずっこけた。そしてその当事者の聖良は困惑状態だった。
「いやいや零夜、君はどうやったらそんな答えが出てくるんだい!?」
最初に立ち上がったのはクロノだった。
「え?だって当然でしょ?」
何を当たり前のことを、という風に返した。
「と言うか聖良に告白してきた人がいたら、即刻抹殺するよ。もちろん社会的にもだけど」
『『『『抹殺!?しかも社会的にも!?』』』』
「お、おおおお兄ちゃん!?」
「て言うか僕の大切な家族で妹の聖良を僕から奪いたいなら、少なくとも僕に勝てる人じゃないと。最低基準で財力があって聖良が苦労しなくて、家庭的で、優しい人で、とか、僕の繰り出す条件を全部クリアしてないと渡さないから!」
『『『『えぇぇ・・・・・・』』』』
「もっとも、聖良をお嫁に出す気は更々ないけどね!」
胸を張ってクロノに返すと、何故か全員から引かれた眼差しで見られた。なんでだろ?
「れ、零夜くん。さすがにそれは私も引きますよ」
「え?そうなの明莉お姉ちゃん?」
「はい」
「あはは。まあ、零夜くんの言いたいこともわかりますけどね~」
「翼の言う通りなのだがもう少し押さえてほしいわ。現に聖良ちゃんは戸惑っているわよ零夜くん」
「え!?」
知智お姉ちゃんの声に隣に座る聖良を見ると、聖良は顔を真っ赤にしてまるで湯気でも出ているのではないかと言うほど暑かった。
「あわあわあわ・・・・・・!」
聖良が真っ赤になっているのを見てあわふためいているそんなところに。
「う~ん、零夜くんが前とは違って喜怒哀楽ハッキリしてるね」
「ホンマやね。私の時もそうやったけど、零夜くんどこか押さえ隠している気がしたんよ」
「もしかしてそれって・・・・・・」
「ええ。聖良たちのお陰なのかもしれないわね」
「ふふふ。やっぱり、零夜くんは零夜くんなんだね」
「かもね~」
なのはたちが楽しそうに微笑みながら話していた。そしてその光景を明莉お姉ちゃんたちは微笑ましそうに眺め、桃子さんたちは見守るように優しく見ていた。
これは僕らの新しい日常への、始まりの順丈。そして第一歩だ。