魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語 作:ソーナ
~零夜side~
水族館エリアで負傷したクロノたちを他の局員たちに引き渡した僕らは、広範囲の索敵を掛けてイリスを探し。
「っ!見つけた!」
索敵に反応があった場所にものすごい速度で飛んで行った。その途中。
「零夜!」
「ん?アインス?」
アインスと遭遇した。
「零夜、ユーリは?!」
アインスの問いに、僕は首を振って。
「───いなかった。たぶん、イリスが連れていったんだと思う」
そう言う。そして、そこにユーリの能力があったということを伝える。
「くっ!」
それを聞いたアインスは表情を歪ませて。
「アインス!?待って!」
僕の行き先の方に光の速さのような速度で飛んで行った。僕も慌ててアインスを追い掛ける。
「待ってアインス!」
「急がないと不味い!ユーリの総魔力は聖良と同じくらいだ!」
「なっ・・・・・・!?」
「もしユーリが悪用でもされたら・・・・・・!」
アインスの言うとおり、ユーリの総魔力が聖良と同等なら不味い。並大抵の魔導師では恐らく、相手にならないはずだ。僕とアインスはさらに速度を上げて目的地に向かう。
目的地着いてそこを見ると、そこには四人の少女と一つのなにか大きな機械のような物を囲んでいる、はやてとすずか、アリサたちがいた。
「あれは・・・・・・!」
赤い髪をした少女の後ろにある機械を見たアインスが目を見開く。
「見つけたぞ!」
そう言うとアインスははやてたちのところに向かって行った。僕は少女の前に降り立ち少女を見る。
「君は・・・・・・」
「ちっ。まさかここであんたが入ってくるなんてね。それより───」
近くで見て、僕はその少女が誰かわかった。イリスだと。イリスはそう言って左腕を上げ、そこにヴィータが警告する。
「おい、動くな」
しかし、ヴィータの警告を無視し。
「いつまで寝てるの。起きなっ、さいっ!!」
イリスは思いっきり、左手の握り拳でそれを叩きつけた。
そして。
「!?」
《これ・・・・・・!》
僕たちになにかの反動が来た。僕と聖良はそれを感じ取ると同時に、はやてたち周囲の武装隊を何か朧気な黒い光が包み込んだ。
「な、なんだ!?」
「!?」
「な、なに!?」
辺りからも動揺の声が上がる。そして、イリスが叩き付けた機械のような物が開いた。開くと同時に。
『ぐあああっ!!』
『あああっ!!』
『がああぁっ!!』
辺りから、クロノたちが貫かれていたのと同じ結命樹が武装隊を内部から貫いた。その一撃で、僕とアインスを除くその場にいた全員が行動不能になった。
「我が主!」
「くっ!」
それを無効化していると、完全にそれが開き中から一人の金髪の幼女と言っても過言でない少女が現れた。そしてその後ろに羽のように機械のようなものが追随した。
「やっと会えたわねユーリ」
「・・・・・・っ!イリス!」
「目が覚めた?」
イリスの冷たい瞳を見て僕はゾッとした。なにせ、昔の僕のような瞳をしていたのだから。今は明莉お姉ちゃんたちや、なのは達がいるから大丈夫だが、昔の・・・・・・それこそ、この世界に来る前の僕はすべてを憎んでいた。お姉ちゃんや幼馴染を亡くしたから。絶望と言っても過言ではない。そう思いながら二人を様子見る。
「イリス、あなたは・・・・・・!」
イリスに近づこうとしたしたユーリが突然何かに動きをとめられたかのように止まった。そして、イリスの赤い瞳にはなにかの数式のようなものが高速で、プログラムコードのような羅列が浮かんでいた。
「あんた専用のウイルスコードを打ち込んである。すべては私の思いどおりのまま」
そう言って怪しく光る瞳のままイリスはユーリを殴った。
「うっ!」
ユーリを殴ったイリスは、そのままユーリの長い金髪を掴み、無造作に引き上げる。
「抵抗は不可能」
「イリス・・・・・・わたしは・・・・・・」
「これは復讐よ。私はあんたから全てを奪う。あんたが私にそうしたように。まずは邪魔者の片付け・・・・・・手伝ってもらうわよ!」
「うぐっ・・・・・・!ぐうううっ!ああああああああぁぁぁっ!!」
ユーリの悲鳴とともに更なる魔力振動が僕らを襲った。そこに。
「止めるぞ!」
「はい!」
「うん!」
助っ人に来たらしいシグナム、フェイト、アリシアがイリスに迫った。
「ユーリ・・・・・・」
「っ!まずい!」
イリスの声を聞き、無表情のユーリを見て僕は焦った。完全にユーリがイリスの支配下に置かれているからだ。
ユーリは突っ込んできたフェイトを掴み、後ろにいたアリシアとシグナムにぶつける。
「シグナム!フェイト!アリシア!今すぐそこから離れろ!」
僕はそういうのと同時にユーリの前に空間転移し障壁を張る。シグナムたちが気付いたのとユーリが砲撃を撃つのは同時だった。ユーリの放った砲撃を受けて僕はシグナムたちとともに海に撃ち落とされた。
すぐに海から上がり空に上がるが、シグナムたちは余波でかなりダメージを受けたらしく上がってこなかった。そこに。
「っ!シグナム!フェイト!アリシア!」
海上に浮かんだ三人の内部から突き破るようにして周囲の武装隊たちと同じ結命樹がフェイトたちを貫いた。
「生命力を結晶にして奪いさるのがこの子の
「イリス・・・・・・わたしは・・・・・・」
「意思も力も自由にはさせない。大切な命も無関係な命も全てを殺して・・・・・・誰もいなくなった世界で泣き叫びなさい」
「イリス!」
ユーリにそう言うイリスに、デバイスで片手剣形態の凛華の切っ先を突き付ける。
「・・・・・・なぜあんたにはユーリの能力が効いてないのかしら?」
「さあね。イリス、君に教える義理はない」
僕にユーリの能力が効いてない理由は、僕の周囲に消滅による無効化という障壁を張っているからだ。さらに加えて言うならば、ユーリの能力を防ぐように魔力障壁を薄く。しかし、硬く張っているからでもある。
「それもそうね。───あら?」
以外というふうに声を上げたイリスの後ろには救護班で治療を受けてるはずのキリエの姿があった。さらに、キリエはユーリの能力を受け付けてないようだった。
「驚いたぁ。そっか、フォーミュラスーツのお陰でユーリの能力を受けにくいのね」
「イリス・・・・・・私は・・・・・・」
銃を構えるキリエに、イリスは恐るわけでもなくただ担と話す。
「どうする?撃ってみる?今なら見逃してあげるわ。だけど、もし撃ったら死ぬより酷い目にあわせてあげる」
「っ!」
「あんたのパパとママやお姉ちゃんにも同じことをする。それでもいい?」
「イリス・・・・・・!」
イリスの言葉に、僕は凛華の切っ先をイリスの首筋に当てる。
その行動にイリスは僕の方を見て。
「なに?私を斬るつもり?」
「それそっくり返すよ。斬られたい?」
「ふふ、まさか」
そう笑ってイリスは再びキリエの方をむく。
「キリエ、あんたは結局なにも変わってない。私がいなきゃなんにも出来ない。自分じゃなんにも決断できない。弱くて、泣き虫で、冴えない子」
「違う・・・・・・!違う・・・・・・!私は・・・・・・!」
「現実は絵本とは違うの。一人じゃなんにもできない女の子は大人になってもそのままだし。どんな夢も叶う指輪なんて絵空事。願いは叶わないまま、哀しい物語は哀しいまま終わる。だからあなたには引けないわ、そのトリガーを」
「うぅぅ・・・・・・」
イリスの言葉にキリエは涙を流して銃口を下げる。
しかし、それとは別にして今のイリスの言葉は、どこか自分が体験したような物言いだった。そう感じていると。
「っ!?」
イリスに弾丸が放たれた。
僕は撃った本人を見ているからあまり驚かないけど、イリスとキリエは驚いていた。弾丸が掠り、イリスの左頬には一筋の切れ筋が流れた。撃ったのは、キリエの姉、アミティエさんだった。まあ、キリエさんがここにいるし、アミティエさんもかな~って思っていたから対して驚かんが。
「っうぅ・・・・・・!」
「あなたは、そうやって色んなことを諦めてきたんですね。可哀想です、あなたはとても・・・・・」
「アミティエ・・・・・・!」
「っ!」
イリスの声と同時に、ユーリが動いたのを見て、凛華の切っ先を下ろしてユーリに向かおうと動こうとする。そこに。
〈レイくん!そこを動かないでね!〉
念話で夜月の声が響いた。
〈え!?〉
あまりのことに驚いていると同時に。
《Fire!》
「
二つの声が耳に入った。
そして、二つの砲撃と斬撃が一直線にユーリの進行直線上に向かい、ユーリとぶつかった。
衝撃による光が晴れ、放たれた場所を見るとそこには一振の巨大な大剣を握っている夜月と、バリアジャケットが少し変わって、パイルスマッシャーのようなデバイスを構えているなのはの姿があった。そして、二人も僕らと同じくユーリの能力を受け付けてないようだった。
「なのは!?夜月!?」
驚いているそこに。
《System drive,formula mode.》
「フォーミュラカノン、フルバースト!」
レイジングハートの音声が聞こえ、なのはから直射砲撃が放たれた。放たれた砲撃はユーリに衝突し、僕らを包み込むほどの大きなピンクの光となった。なのはの砲撃の光を受けると、フェイトたちを穿いていた結命樹の晶木が消えていった。まるで分解されていくように。
「っ!あの力!あの武装!まさか、アミティエのフォーミュラを?!」
イリスの言葉に、僕はなのはを見る。なのはの姿はアミティエさんのフォーミュラスーツと酷似していた。僕は直ぐに夜月に念話を送る。
〈夜月!なのはのあれどういうこと!?〉
〈あー、ごめんねレイくん。止められなかった〉
〈いや、それはいいんだけど・・・・・・。あれ、フォーミュラシステム組み込んでない?!〉
〈実は、なのはちゃんがシャーリーちゃんとアミティエさんに頼んだみたい〉
〈はあっ!?〉
夜月の言葉に驚きながらなのはを見る。
なのはを見る限り、魔力はある程度回復しているらしかった。恐らく夜月が刻々帝の能力を使ったのだろう。まあ、それは置いといて、今のなのはにアミティエさんの使うフォーミュラと魔導を合わせた物が使えるとは半々だった。遠目から観るなのはの瞳は、必ず助けるという、固い決意が現れていた。現に。
「待っていてください。今度は、必ず助けます!」
と、言っていた。
その身に決意を実らせて。
その頃、天ノ宮家では。
「───二人とも、大丈夫かしら?」
「ええ」
「大丈夫ですよ」
「そう、それは良かった」
「そうね。───それで、行くの?」
「もちろんです。零夜くんが待っていますから」
「当然!零夜を助けたいから」
「ふふ。私たちの弟は本当、昔から愛されていたのね。ね、明莉?」
「そうですね。・・・・・・───さん───さん、二人に話しておくことがあります」
「???」
「なんでしょう?」
「あの子・・・・・・零夜くんの能力のことです」
「「え?」」
「それは、零夜くんの能力の一つである『消滅』についてです」
二人の少女が女神である明莉から話を聞いていた。