魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語   作:ソーナ

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会話とわずかな勇気

 

~零夜side~

 

 

 

時空管理局本局

 

 

 

イリスがユーリを連れて逃亡した後、それぞれ傷の手当やらをし、なのはは本局の医務室で治療中。イリスとの戦闘で怪我をしたアミタさんも同じく、キリエは治療室で眠っている。夜月も少し傷を負っていたが、自身の能力で回復し今ははやてとすずか、アリシアたちと一緒に地球の東京湾で航海中の船で待機し、フェイトとアリサは負傷したなのはの付き添い(僕によるお説教済み)。そして僕はというと。

 

『───なるほど。事件の容疑者は未だ逃亡中、と』

 

「はい」

 

特務0課の部屋でレティ本部長らと通信会議を行っていた。何故僕がここで会議に参加してるのかと言うと、単純に特務0課室長にして当事者だからだ。そして、その画面には包帯を巻いているクロノとそれに付き添うエイミィさんが映っていた。

 

『関係者五名は確保しています』

 

『エルトリアから来た、アミティエとキリエのフローリアン姉妹。正体不明の三名も、事情聴取と情報共有には協力してくれるそうです』

 

『現場の拠点は?』

 

『東京湾に指揮戦を配置しました。主要メンバーはもうそちらに』

 

『そう。零夜君、研究会については』

 

「はい。今回の事件に、研究会の序列二位智天使(ケルビム)のガハト・レグリスタらが関与してきています。狙いは恐らくユーリ、かと」

 

僕の言葉に、画面に映る局員の表情に焦りと戸惑い、動揺が広がる。

 

「さらにガハト・レグリスタはロストロギア《破血の鋭業剣(ダインスレイヴ)》を所持していることが確認できました」

 

『なっ!?』

 

僕のさらなる言葉に驚愕の雰囲気が出た。

 

『よりにもよってあの《破血の鋭業剣(ダインスレイヴ)》とは』

 

画面の局員の全員が驚愕しているのも当然である。《破血の鋭業剣》はロストロギアの中でもかなり厄介な部類だ。魔剣の部類に入るだろう。特に、対人戦闘では絶大な効果を発揮する。

 

『零夜君、すみませんが戦闘区域に研究会が入ってきた時は』

 

「分かってます。研究会が入ってきた時は僕と夜月で対処します」

 

『お願いします』

 

レティ本部長がそう言った途端。

 

『割り込み失礼しますね』

 

『!ミゼット統幕議長!』

 

ミゼットさんが通信会議に入ってきた。ミゼットさんが出た瞬間、レティ本部長含む全員、僕以外の全員が直立不動を取った。

 

『統幕議長、なにか御用でしょうか?』

 

『天ノ宮特務官に少し』

 

「僕に?」

 

『はい。天ノ宮特務官』

 

「はい」

 

『統幕議長として命じます。天ノ宮特務官及び桜坂さんは今回の事件で、再びロストロギア《破血の鋭業剣》を所持しているガハト・レグリスタなる者が現れた際、真っ先にこれを対処してください。可能なら《破血の鋭業剣》の回収を。ガハト・レグリスタの拘束は無理に行わくても構いません』

 

「ハッ!了解しました!」

 

ミゼットさんの命令に、僕は敬礼して返す。ミゼットさんの命令により、僕と夜月の第一任務は研研究会による干渉の対処。その次がイリスたちの捕縛と事件解決だ。ロストロギア《破血の鋭業剣》の回収とガハト・レグリスタの捕縛はおまけのような物だ。

 

『以上となります。レティ本部長、構いませんね』

 

『はい。クロノ執務官もいいですよね』

 

『はい』

 

『では、お願いします』

 

そう言うとミゼットさんは通信を切った。

そのあとはイリスや研究会の対処などの話し合いをして通信を終えた。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

通信会議を終えた僕は椅子の背もたれに背中を預け息を吐く。

デスクの上にはアーティファクト、『いどのえにっき(ディアーリウム・エーユス)』のページが広げられていた。開かれているページにはイリスの深層心理が書き綴られていた。そして、その一文には「復讐」という文字が書かれていた。

 

「四十年前か・・・・・・」

 

発端は、アミタさんとキリエ、そしてイリスの故郷である惑星エルトリアで、四十年前に起こった惑星再生委員会壊滅のことらしい。

そう思っているところに。

 

「失礼します」

 

「ん?」

 

一人の女性局員が入室してきた。

 

「天ノ宮特務三佐、レジアス中将より書簡が届いてます」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

女性局員から渡された書類を受け取り、中身を確認する。書類には、星霊武装(アストラルウェポン)がひとつ、【星罪の剱槍(アスティカル・ジ・グライムスピア)】と【星蘭の聖奏者(スターズ・レイ・シンフォギア)】の成果が記されていた。

 

「(さすがゼストさんとメガーヌさんだ。二人とも僕の予想を大きく超えているよ)」

 

文面を見ながらそう思考する。

やがて。

 

「はい、確認できました」

 

僕は女性局員にそう言う。

そして。

 

「それで、それだけじゃないですよね、ドゥーエさん?」

 

僕は立ちすくむ女性局員───ドゥーエさんに笑みを浮かべて訪ねる。

 

「ええ」

 

そう言うとドゥーエさんは姿を変え、元の姿に戻った。

 

「相変わらずドゥーエさんのIS『偽りの仮面(ライアーズ・マスク)』は凄いですねー」

 

「私やドクターに言わせてもらうと、零夜君、あなたの方がすごいわよ」

 

ドゥーエさんと話す僕の表情はふっ、と柔らかくなる。

 

「ジェイルさんは元気?」

 

「ええ。ドクターはルフィアちゃんばかり構っているから最近、ウーノ姉さんが窶れてる姿が多いそうよ」

 

「ええー・・・・・・。ウーノさん大丈夫なの・・・・・・?」

 

ドゥーエさんの言葉に僕は思わずひきつり笑いを浮かべる。

 

「ふふ。ドクターもシスコンになっちゃってるみたい」

 

「あはは」

 

どうやらジェイルさんはかなりの妹好きみたいだ。まあ、それには同感するけど。

僕とドゥーエさんの出会いは、ジェイルさんたちとの会合から数日後の事だ。コンタクトして来たのは僕ではなく、ドゥーエさん・・・・・・二乃さんからだ。二乃と言うのは局員として潜入しているドゥーエさんの名前だ。

 

「にしても、今のドゥーエさんを見たら、初めてあった時のことが思い返されるよ」

 

「その節は迷惑をかけたわ」

 

「ふふ。だって、いきなり攻撃してきたもんね」

 

「言わないでほしいわねそれは・・・・・・///」

 

頬を紅潮するドゥーエさんはどうやら黒歴史になっているらしい。

 

「あの時はドクターの言葉が信じられなかったから、確かめるためにやったけど」

 

「見事に負けたもんね」

 

「ええ。返り討ちにされたわ」

 

そう、あの時僕がひとりでいた所をドゥーエさんがIS『偽りの仮面(ライアーズ・マスク)』と自身の固有武装『ピアッシングネイル』で襲いかかって来たのだ。襲いかかって来る瞬間、予め気配で察知していたこともあり多重障壁で防ぎ、カウンターの徒手空拳でドゥーエさんを吹き飛ばし、多重拘束魔法で縛り上げて聞いたのだ。

 

「今にしても女性に対して手加減無さすぎよ?」

 

「ははは。いやー、敵対者にはどうも手加減が・・・・・・」

 

ドゥーエさんの呆れた声に僕は苦笑しつつ返す。手加減しない理由は、油断して負けたら全くもって意味が無いからだ。

 

「さて、世間話はここまでにして」

 

「そうね」

 

僕とドゥーエさんは雰囲気を正して話す。

 

「報告としては、今のところ聖王教会と管理局には研究会の仲間(シンパ)はいないようね」

 

「そう」

 

「ええ。それと、あの老害たち───最高評議会の連中がどこにいるのか分かったわ」

 

「それはそれは」

 

最高評議会については夜月から話を聞いてるだけでどこに居るのかは不明だった。もちろん、僕もアーティファクト『世界図絵』で調べてるが。

 

「場所は、管理局地上本部の地下にある最深部」

 

「最深部?地上本部に地下エリアなんかあったかな・・・・・・」

 

「最重要機密らしく、知ってる者はあまり居ないみたいよ」

 

「ふーん」

 

「さらに最高評議会の連中は全員、もう生身の人間では無いようね」

 

「つまり」

 

「ええ、あるのは脳だけよ」

 

ドゥーエさんの報告に僕は予想通りとうなずく。

 

「それと、最高評議会は聖王教会の一部上層部と結託してなにか新しいプロジェクトを計画してるみたい」

 

「なに?」

 

ドゥーエさんの言葉に僕は眉が上がった。

 

「【アンリミテッド・デザイア―無限の欲望】と【エターナル・ルーラー―永遠の支配者】だけでなくまだなにかしようとしてるのか最高評議会は?」

 

「ええ。でも、どうも難航してるみたいね」

 

「どういうこと?」

 

「遺伝子が見つからないみたいよ。最適な遺伝子が」

 

「遺伝子か・・・・・・」

 

「ええ。あと分かってるのはそのプロジェクトの名前が、【コズモ・エンテレケイア─完全なる世界】だということよ」

 

「【コズモ・エンテレケイア─完全なる世界】!?」

 

ドゥーエさんの言った、プロジェクトの名前に僕は驚愕する。なぜなら、『コズモ・エンテレケイア』という単語は前世でネギま!?に出てくる悪役の組織名にして計画の名前だからだ。

 

「(なんでここで完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)が・・・・・・。まさか計画の裏に誰かいる・・・・・・?いや、しかし、ネギま!?については前世の漫画だ。この世界には無かったはず・・・・・・考えられるとしたら裏に転生者がいるという事だけど・・・・・・)」

 

考えを巡らせていると。

 

「いまのところ分かってるのはこのくらいかしらね」

 

ドゥーエさんがそう言った。

 

「あ。ありがとうドゥーエさん。この事ミゼットさんには?」

 

「これから報告するつもりよ」

 

ジェイルさんのスパイとして潜入していたドゥーエさんは、僕たちとの同盟を組んでから非公式の特務0課の諜報員として地上本部と本局を行ったり来たりしてもらってる。このことは既にミゼットさんたち三提督の耳に入っており、地上本部だとレジアス中将とオーリス三佐、ゼストさんのみが知っている。

 

「ところでそっちの事件はどうなの?」

 

「ああー、かなり厄介かも」

 

僕のデスクの上には未だにアーティファクト『世界図絵』が広がっている。そのページに視線をスっと落して言う。

ドゥーエさんも視線を『世界図絵』に移し、文章を見る。

 

「・・・・・・なるほどね。確かに、これはかなり厄介かもしれないわね」

 

「うん。それに・・・・・・」

 

「?」

 

「いや、なんでもないよ。そろそろ僕も戻らないと」

 

「そうね。じゃあ、私はこれをミゼット議長に届けてから地上本部に戻るわね」

 

「お願いね」

 

「ええ」

 

再びIS『偽りの仮面(ライアーズ・マスク)』を起動させたドゥーエさんは変装した姿で特務0課の室内から退出して行った。

 

「さてと、僕もそろそろ戻らないとかな」

 

そう言って特務0課の室内から出て言った。

しばらく歩くと。

 

「あ!零夜くん!」

 

後ろから僕を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「ん?」

 

声のした、後ろを振り向くとそこには私服姿のフェイトとアリサ、アミタさん、そして松葉杖を付いているなのはがいた。

 

「なに?」

 

「キリエさんが目を覚ましたそうなの。だから一緒にお見舞いに行かない?」

 

「ん、わかった」

 

僕はなのはたちとともにキリエ・フローリアンがいる治療室に向かって行った。

少しして、

 

「「お邪魔しまーす」」

 

「失礼するよー」

 

「お加減いかがですか」

 

部屋に入ったなのはたちのあとに続いて僕もキリエのいる部屋に入る。部屋に入ってベットの上で上体を起こしているキリエの表情がくらいのに気づいた。

 

「ごめんなさい、全部私のせい・・・・・・。この星のみんなにひどい迷惑をかけて・・・・・・どんな風に償ったらいいか・・・・・・?お姉ちゃんの言うことちゃんと聞いてればよかった」

 

キリエの言葉になのはたちはなんの反応はしないけど、僕は少しだけピクっと眉根を動かした。

 

「わたしも、ちゃんと伝えるべきでした。私の責任でもありますよ」

 

「お姉ちゃん」

 

「だけどねキリエ。父さんのことも、母さんのことも、故郷のことだって、わたしはまだ何も諦めてなんかいないんですよ。父さんと母さんがもう一度元気になること・・・・・・。家族みんなでエルトリアをもう一度甦させること。いつか、父さんと母さんが眠る日には・・・・・・あの家の、温かいベットで幸せな気持ちで眠ってもらう。子供の頃の夢のように、わたし達が育てた花をたくさん添えて。失敗は取り戻せばいい。自分を責めすぎても出来ることが減っていくだけです。わたし達に出来ることはまだあります。この星に起こる被害をくい止めて、ユーリを止めて、イリスに話をちゃんと聞く。空を見上げれば背筋が伸びます。ほら、ちゃんとして!」

 

アミタさんの言葉に持ち直したのかキリエの表情は少しだけ明るくなった。なのはたちもキリエが明るくなったに気づき顔を見合わせた。

そこに。

 

「True magic results from courage of the heart.Boys and girls be ambitious,One step can change the world」

 

小さな声で、しかしなのはたちに聞こえるようにハッキリと言う。

 

「零夜くん?」

 

突然の英語に不思議に思ったのか、なのはが首をかしげている。フェイトやアリサ、アミタさんもキリエも同じ表情をしていた。

僕は表情を和らげ、

 

「『わずかな勇気が本当の魔法。少年少女よ大志を抱け。その一歩が世界を変える』・・・・・・ある人が言った言葉だよ」

 

と五人に言う。

 

「キリエ・フローリアン、君はさっきどうやって償ったらいいか、と言ったよね」

 

「うん・・・・・・」

 

「アミタさんの言葉で立ち直ったみたいだけど、アミタさんが言わなかったら君はずっとそこでメソメソしていたのかな?」

 

「それは・・・・・・」

 

「ちょっと零夜!」

 

「零夜くん?!」

 

僕の声に、アリサとなのはが止めにかかるが。

 

「アリサ、なのは、少し黙って」

 

「「っ!?」」

 

僕は二人に、静かにそう言う。まあ、威圧感は出してるけど。

僕の質問に答えられないキリエに。

 

「───『わずかな勇気(アウダーキア・パウア)』」

 

僕は一言そう言う。

 

「『わずかな勇気』・・・・・・?」

 

「そう、勇気とは人は誰もが持ってるもの。その『わずかな勇気』で人はなんにでもなれるし、どんなことにも挑戦できる。君はどうなのかなキリエ・フローリアン」

 

「私は・・・・・・」

 

「なのは、アリサ、フェイト、アミタさん、君たちは?『勇気』がある?」

 

僕の問いになのはたちはしばし考え込む。

やがて。

 

「あるよ、零夜くん。勇気・・・・・・私のなかに!」

 

「うん。ここに、ちゃんとある」

 

「ええ。あたしたちの勇気はいつもここにあるわ」

 

なのは、フェイト、アリサの三人は左胸に・・・・・・心臓に手を当てて答えた。

 

「ふふ。三人ならそう言うと思ってたよ。アミタさんとキリエ、君たちは?」

 

「・・・・・・あります。わたしにも、なにものにも負けない、諦めない勇気がここに」

 

「うん」

 

「私も・・・・・・あるわ、わずかな勇気、それがここに」

 

二人の言葉に僕は笑みを浮かべる。

 

「おめでとう。キリエ・フローリアン、君は今『わずかな勇気』を手にした。その勇気は何人にも壊されることはない。その勇気は力になる、今の君にならイリスも話を聞くんじゃないかな」

 

威圧感を消して笑顔で祝福する。

 

「覚えといて。たとえ魔法が使えなくても、『わずかな勇気が本当の魔法』だということを」

 

僕はアミタさんとキリエに伝える。魔法が使えなくても、ほんの少しの勇気でもそれは魔法に成りうるということを。

そこに。

 

「ん?(明莉お姉ちゃんから?)」

 

地球にいる明莉お姉ちゃんからメールが来た。

内容を見た僕は、表情には出さずに驚きと嬉しさを出した。

メールにはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『二人とも目を覚ましたよ。二人とも、今起きてる事件を手伝うみたいです』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

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