魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語   作:ソーナ

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真の黒幕

 

〜零夜side〜

 

 

「───ん?シュテルの魔力が急激に下がってる・・・・・・?」

 

ディアーチェたちがユーリと戦っている場所から程遠くないところで、僕は急激にシュテルの魔力が下がってるのに気づいた。そして、さらに。

 

「今度はレヴィまで?」

 

シュテルだけでなく、レヴィの魔力も減っているのに気づいた。

 

「イヤな予感がする・・・・・・。聖良!」

 

《うん!座標は把握してあるから何時でも行けるよ!》

 

「オッケー!」

 

すぐにその場から転移し、ディアーチェたちの近くに転移する。

転移すると、今まさにディアーチェに何者かの刃が振られるところだった。

 

「っ!ディアーチェ!」

 

とっさにディアーチェとその者の間に割り込み、精霊の剣(スピリットソード)で振られた刃を受け止める。

 

「なにっ?!」

 

「貴様・・・・・・っ!」

 

予想外だと言うような表情のその人物と、何故ここにいるのか分からないと言うような表情のディアーチェ。

それを見ながら、辺りを見る。

 

「っ!シュテル!レヴィ!ユーリ!」

 

シュテルは左手を失って、お腹から血を流して倒れ、レヴィも腹部から血を流して倒れ伏していた。そして、ユーリも蹴らるたような痕を残して倒れていた。

 

「貴様・・・・・・っ!!よくもユーリたちを!」

 

ユーリたちの惨状を見て、僕は激昴していた。

 

「くっ!」

 

「逃がすか!」

 

離れた人物を追撃し、精霊の剣の二刀を振るう。

そんな中。

 

「───やはりイリスでは君を抑えることは出来なかったか」

 

「なに?」

 

目の前の人物がそう言ったのが聞こえた。

 

「ユーリと猫と魔術師と魔女たち・・・・・・。そのすべてを彼女一人で抑えるのには限界があったみたいだ」

 

「一体何を言っている・・・・・・」

 

「まあ、それでも良しとしよう。こうして私の元に、この子が戻ってきたからね」

 

「っ!ユーリ!」

 

気絶しているユーリを抱き抱えた人物。

僕はその人物の顔を見て、どこかで見た気がした。

 

「その顔・・・・・・どこかで・・・・・・っ!まさか、おまえは!」

 

人物の顔を見て、何で見たのか思い出した。

それは数時間前に見たばかりだ。───ユーリが残した、夜天の書のページの切れ端を復元した映像で。ユーリとイリスの、四十年前のエルトリアでの日々を・・・・・・。そして、今回の事件のその発端を。

目の前の人物は、その映像で何度も出てきた人物だ。その名は───。

 

「───エルトリア惑星再生委員会所長、フィル・マクスウェル!」

 

ユーリが殺害したエルトリア惑星再生委員会所長、フィル・マクスウェルだ。そして、何故ユーリがフィル・マクスウェルを殺害したのかも僕らは知っている。ユーリがエルトリアとの通信手段を残してくれたから、エルトリアにいるアミタさんとキリエのお母さんから送られた情報で知った。

 

「予定外ばかりではあったが、なに・・・・・・最後に笑えばいいのさ・・・・・」

 

「っ!ユーリをどこに連れていく気だフィル・マクスウェル!」

 

フィル・マクスウェルは空気に溶けるように、ユーリを連れて消えていった。瞬時に、サーチを掛けるが。

 

《お兄ちゃん、サーチに反応がないよ!》

 

「くっ!逃げられた!」

 

サーチに引っかからないほどの隠蔽をしてるのか、それとも何らかのフォーミュラシステムを使ったのか分からないが、フィル・マクスウェルはこの場から消え去っていった。

 

「はっ!ディアーチェ!」

 

僕はすぐにディアーチェたちのことを思い出し。

 

「ディアーチェ!」

 

ディアーチェたちのところに戻る。

 

「シュテル!レヴィ!しっかりしろ!」

 

ディアーチェはシュテルとレヴィに治癒を施していた。

 

「聖良、ユニゾン解除!すぐにシャマルと医療班を呼んで!」

 

僕は聖良とのユニゾンを解除し、

 

「うん、お兄ちゃん!───シャマルさん!聞こえるシャマルさん!」

 

聖良はすぐにシャマルへと通信を開いた。

 

「くっ!傷が深い・・・・・・」

 

シュテルとレヴィの傷を見て、僕はそう悪態吐く。

レヴィはまだ良いが、シュテルの方は重症だった。左手は無く、お腹を貫かれているのだ。下手したら命を落としていたかもしれないほどだった。

 

「(アーティファクトで片方は回復出来ても、もう片方は・・・・・・!それに手まで治るか・・・・・・。夜月が居てくれたら刻々帝(ザフキエル)の《四の弾(ダレット)》でなんとか出来るのに!)」

 

今夜月が居るのは、ここからかなり離れた場所だ。転移で来てもらうこともできるが・・・・・・。

 

「とにかく、処置を施さないと。ディアーチェはレヴィをお願い!僕はシュテルをやる!」

 

「我に指図するな!分かっておるわ!」

 

文句を言いながらも、ディアーチェはレヴィに治癒を施す。僕も、急いでシュテルに治癒を掛ける。

例え傷は塞がれても、流れ出た血は元に戻らない。シュテルとレヴィのこれ以上の戦闘は不可能だ。

 

「っ・・・・・・!夜月!」

 

シュテルの様子から、僕はすぐに夜月に通信をする。

 

『どうしたのレイくん?』

 

「夜月、今すぐこっちに来られる?!」

 

『もしかしてなにかあったの?!』

 

「シュテルとレヴィが重症!シュテルは左手を切られてる!」

 

『っ!わかった!すぐ行くよ!座標を教えて!』

 

「お願い!座標は───」

 

すぐに夜月に伝え、僕は座標を教える。

 

『うん、五秒後に行くから!』

 

そう言って夜月は通信を切った。

そして、その五秒後。

 

「お待たせ!すぐに治療するから!」

 

刻々帝を出した夜月が転移してきた。

 

「お兄ちゃん!シャマルさんたち着いたよ!」

 

「わかった!夜月、シュテルに《四の弾》を!」

 

「うん!───刻々帝、《四の弾》!」

 

夜月の持つ古式の長銃から黒い弾丸がシュテルに命中する。

予め、切られた左手の互いの切断面を合わせてある。これで、時間が巻き戻り、シュテルの左腕が切られたということは時間が巻き戻って、切られたという事が無くなった。

さらに夜月は。

 

破軍歌姫(ガブリエル)鎮魂歌(レクイエム)!」

 

もうひとつの天使、破軍歌姫を顕現させた。

破軍歌姫の能力は、音を媒介に発動するものだ。そして、鎮魂歌は鎮痛作用のある。

 

「Laaa〜〜〜・・・・・・♪」

 

優しい声で、歌うように紡ぐ夜月。

夜月のおかげで、シュテルとレヴィは落ち着いて来たようだ。

 

「よし、あとは───!」

 

シャマルたちに任せる前に、シュテルとレヴィの自然治癒力を高め、魔力をある程度流し渡す。

 

「シャマル!」

 

シュテルとレヴィを抱き抱えて、岸にいるシャマルと医療班に引き渡す。

 

「あとは任せて零夜君。夜月ちゃんも」

 

「はい。お願いしますシャマルさん」

 

「あなたもよ」

 

「だ、だが我は行かねばならぬのだ!」

 

シャマルの言葉に、ディアーチェは反論する。

ディアーチェの想いは最もだ。けど。

 

「ディアーチェ、今のディアーチェではユーリには勝てないよ」

 

「なんだと?」

 

「魔力が圧倒的に足りてない。それに怪我をしてる。その状態で行っても、無駄な足掻きになるだけだよ」

 

「ふざけるな!この程度の傷、我にとってはどうってことなど・・・・・・!」

 

言葉を言いつつも、ディアーチェは痛みに顔を顰めた。ディアーチェの体力と魔力はすでに限界に近いのだ。

 

「はぁ。シャマル、ディアーチェたちのことお願い」

 

「ええ、まかせて」

 

「聖良、夜月」

 

「うん」

 

「ええ」

 

聖良と夜月とともに行こうとし、

 

「───ディアーチェ。もし君に、覚悟があるのなら戦場に出てきて」

 

「なに・・・・・・?」

 

ディアーチェに背を向けたままそう言い放つ。

 

「ユーリを助けたければ、これを使うといい」

 

僕は懐から一枚のカードを取り出してディアーチェに投げ渡す。

 

「これは・・・・・・」

 

投げ渡されたカードを手にしたディアーチェは、困惑の表情を浮かべる。

 

「そのカードは・・・・・・零夜君、このカードもしかして・・・・・・」

 

カードを見たシャマルはなにか分かった見たいだけど、僕が目線で言わないように伝えると、シャマルはそれ以上なにも言わなかった。

 

「それは君の願いを叶えるだろうモノだよ。使いこなせるかは、ディアーチェ、君次第だ」

 

「我次第・・・・・・」

 

「行こう、二人とも」

 

今度こそそこから飛び立ち、別の場所に移動する。

移動している最中夜月から質問が来た。

 

「レイくん、あれ渡してよかったの?」

 

「夜月も気づいてたんじゃないの」

 

「・・・・・・まあ、ね」

 

「お兄ちゃん、ディアーチェちゃんに渡したカードって確か・・・・・・」

 

「うん。星霊武装(アストラルウェポン)のひとつだよ」

 

僕がディアーチェに渡したカードは、星霊武装がひとつ、『三星の煌奏翼(トリニティ・ハーモニクスステラ)』。

 

「でも、確かあれってひとりでじゃあまり意味ないんじゃなかったっけ?」

 

思い出したかのように言う夜月。

 

「うん。でも───」

 

夜月の言葉に、期待を込めて僕はさっきまでの場所に目をやる。

 

「ディアーチェなら使いこなせるはずだよ」

 

ディアーチェにカードを渡したのは僕だが、それを決めたのは『三星の煌奏翼』自身だ。

 

「これで、残ってる星霊武装はあと四つ・・・・・・」

 

月雫武装もそうだが、星霊武装も所有者はその武装が選ぶ。もちろん、僕と夜月は全ての武装が使える。が、しかしそれは100%の能力ではない。せいぜい99%までだ。100%と99%の1%は数字面では近いが、実際は物凄く遠い。ほんの1%の差が性能の違いを分けるのだ。

 

「───残りの所有者の候補は決まってるの?」

 

「うーん・・・・・・二つほどいるにはいるんだけど・・・・・・」

 

「どうかしたの?」

 

「いや、それが、その、二つの候補の二人は管理局員じゃないんだよね」

 

「え?」

 

「どういうことお兄ちゃん?」

 

二人の疑念に満ちた目に僕は言いにくそうにして告げる。

 

「・・・・・・ルナちゃんとユミナちゃんだよ」

 

「えっ!?あの二人!?」

 

「誰?」

 

「あ、夜月ちゃんは知らないんだっけ。以前、私達が訪れた世界の女の子だよ」

 

「へぇー」

 

ルナちゃんとユミナちゃんと初めてであったのは、約一年半前の研究会と出会った時だ。それから、たまに二人と連絡したりして交友関係が続いてる。僕としても、聖良たちに友達が出来るのは嬉しいことだ。

二人は今、僕達のところ・・・・・・管理局特務0課に来ようと。つまり、魔導師になろうとしてる。そのため、たまにそこに行って魔法の指導をしたりしている。まあ、その事についてはまた後日話すとして・・・・・・。

 

「二人の適性が異様に高かったんだよね」

 

「そうなの?」

 

「うん。というか、あの二人をこのカード(この子)たちが選んだ、って感じかな」

 

収納していた亜空間から二枚のカードを取り出して言う。

二人にはまだこれは渡してない。せめて、あともう二、三年ぐらいしたら渡せるかもしれない。ディアーチェに渡したのは、なんとなくだ。なんとなく、彼女なら使いこなせる。そんな気がしたのだ。

 

「(まあ、僕としては味方になってくれる人が大勢居てくれた方が助かるんだけどね)」

 

僕の知り合いの中で、現時点で魔導師最強と思うのはゼストさんだ。僕や夜月たちを除いてだが。そしてクロノ、騎士シャッハ、シグナムたちだ。なのは達は位で表すなら中の半ばほどかな?理由は単純に、戦闘経験が足りないからだ。まあ、なのは達だけなら、一位ははやてだろう。次に、アリサ、すずかときてフェイト、アリシア、最後になのはだ。はやては小さい頃からシグナム達と会うまで僕か石田先生と限られた人としか接してないため、かなり精神力が高い。正直、僕ははやてに無理して欲しくない。今のはやては、どこか生き急いでいる感じがして不安でまばならない。そして、次にアリサとすずか。二人は小さい頃から社交界とかに参加してるためか、かなりキモが据わってる。それに加え、人の動きなど細かいところも観察しているため状況判断力が高い。そして、フェイトとアリシア。フェイトは言わずもがな、リニスさんという専属教師がいた為戦闘スキルが高く、アリシアもここ最近徐々に頭角を顕にしている。まあ、フェイトはものすごく天然で偶に、え!?と思うことがあるけど。最後に、なのは。今となってもユーノととも後悔していることがある。それは、なのはを魔導師にしてしまったということだ。それはなのはに関わらず、はやてやアリサ、すずかにもなのだけど、僕らの始まりはなのはが魔法を発現させたことから始まった。有り体に言えば、なのはに魔導の道を進ませた僕の責任だ。別に、なのはの魔法に関する全ての記憶を封印、もしくは削除することは容易い。そうすれば、なのははあの時より前と同じ、普通の一般人。唯の女の子になる。もちろん、なのはに手を出そうとするヤツらは僕が一人残らず消し去るけど(魔導師か犯罪者に限る)。

けど、なのはは恐らく拒むだろう。なのはの力の根源は、まるで呪いのようなものだ。認めてもらいたい。見てもらいたい。誰かを助けたい。この手の届くものは全て守りたい。・・・・・・七つの大罪で表すなら、なのはのそれは『傲慢(スペルビア)』もしくは『強欲(アワリティア)』だ。僕ですら、今のなのはには微々たる恐怖を体感する。執念のような力の欲しさに。

僕がそう思っていると。

 

「───レイくん」

 

夜月がウインドウを表示して見せてきた。

 

「───なるほど。そこか───」

 

ウインドウに表示されたものを見て、僕と聖良は納得し。

 

「聖良、ユニゾンいくよ」

 

「うん。お兄ちゃん、ユーリを絶対助けよう!」

 

「もちろん!」

 

「「ユニゾン、イン!」」

 

僕と聖良は再びユニゾンした。

 

「・・・・・・いこう、夜月。この事件を終わらせに」

 

「ええ」

 

僕と夜月は結界の張られた首都の空を高速で駆け、目的地へと飛んで行った。

 

 

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