魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語 作:ソーナ
〜アインスside〜
「ユーリ・・・・・っ!」
主はやてと別行動を取ってる私は、ユーリの魔力反応を追い掛けて飛んでいた。途中多少の障害があったが、元夜天の書管制融合機であった私の前には意味をなさない。現在は主とのユニゾンする機会は無くなり、主とのユニゾンは妹のリインが担っている。
本来ならば、私はここにいないはずだが、それを闇の書であった夜天の書の防衛プログラムのナハトヴァールの意識体───聖良がプログラムを書き換え、自身を闇の書の情報管制端末にしたため私や守護騎士たちは消滅することなく今もこうして主と共にいる。そして、私たちを救ってくれたのは他の誰でもない、主の想い人である零夜だ。零夜は主や私たちだけでなく、聖良をも救った。そして、時間を逆行するという神にも等しい魔法を使って、夜天の書を闇の書としてなる前に戻し、それだけでなく防衛プログラムの存在自体も破壊した。
聞くところによれば、フェイト・テスタロッサの実姉であるアリシア・テスタロッサを生き返らせたのも、ガンにより余命僅かのプレシア・テスタロッサを救ったのも零夜だという。
プレシア・テスタロッサのガンだけならば夜天の書でも何とかなると思う。だが、既に死んでいたアリシア・テスタロッサを生き返らせたのはさすがの夜天の書でも不可能だ。夜天の書は大抵のことは出来るが、それでも【時間に干渉すること】と【生命操作】、【死者の蘇生】は不可能なのだ。アルハザードの技術ならば可能かもしれないが詳細は不明だ。なにせアルハザードとは『失われた都』なのだから。
ハッキリ言ってしまえば、零夜という存在は規格外と言えるだろう。彼の所持する
さらに彼の使う魔法。あれはミッド式やベルカ式とはまったく違う未知の魔法だ。術式もそうだが、威力や速度、性能など全くもって遥か上を行ってる。それをあの零夜が使うのだ、能力は半端ない程だ。
もっとも、彼の力の源や、彼が何者なのかはあの時、零夜の保護者である女神に教えて貰ったのだが。
だが私は、それだけではあそこまで強くはなれないだろうと感じていた。闇の書の管制融合機として幾数百年の時を過ごし、様々な魔女や魔導師を見てきたが、大抵の人間は強大な力を保持すると、それに溺れてしまい努力を劣らせてしまう。中にはそれでも努力を惜しまず続けて行った者もいるが、そんな者十人にも満たない。零夜はあの神物から力を授かったが、零夜はその努力を怠らなかった。そして、零夜は今に至る。
時空管理局の最年少の左官になり、伝説の三提督───統幕議長直属の部隊を率いて多大な成果を上げ、特務三佐の地位を得た。もっとも、ここまでなるとは零夜も予想外だったようだが。そして星戦級魔法魔導師としての称号。
もしかしたらはじめて出会った。あの微睡みの時の中での会合の時から、私は零夜がどういう人間なのか分かっていたのかもしれない。まあ、零夜からしたらあの時がはじめてなのだが、私は魔導書の中からずっと見てきていたからな。主はやてと零夜の馴れ初めからあの時まで、ずっと。主はやてと親交のあった人間はそう多くない。すでに他界されてしまった主はやてのご両親。現在も親交を持つ主治医の石田女史。それと主の叔父ギル・グレアムとリーゼロッテ姉妹。そして零夜。この中でご両親以外に主はやてとの時間が多いのは断トツで零夜だ。その次に石田女史、ギル・グレアムらと来る。
同年代という事もあったのだろう。主と零夜はすぐに打ち解け、よく一緒に過ごす事が多くなった。買い物から生活まで、泊まることもあった。私が零夜にまずはじめに送りたいのは、ありがとう、の言葉だけだ。零夜のお陰で、主は一人ぼっちでは無かった。魔導書から見ていても、主の気持ちは何となく感じ取れた。ま、まあ、主の他にも高町なのはやフェイト・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサ、アリサ・バニングス、月村すずかなどが零夜に好意を抱いているようだが・・・・・・その肝心の零夜はまったく気付いてないというのだ。無自覚にも程があるとしか言えないのがここ最近の悩みの種だ。というか、彼女達の親は誰が零夜とくっつくか楽しみだと、以前話で話題に上がった程だ。まったく。罪な男だな。
そんな訳で、私は主はやての許可・・・・・・というより、零夜の指示でユーリを止める役を務めていた。基本的には主であるはやての指示が第一なのだが、私の中では零夜の指示も主はやてと同等の権限を持つのだ。守護騎士たちも零夜の指示には積極的だしな。まあ、零夜はあまり指示とか出さないんだが・・・・・・(非常時や任務などの時を除いて)
「見つけたぞ・・・・・・!」
索敵で探っていた所に、テスタロッサ姉妹を追い掛けてるユーリの魔力反応を探知した。
「絶対に助ける・・・・・・!闇の書との因縁はこれで終わらせてやる!」
私たちと闇の書の因縁をこれで終わらせる為、私は零夜から渡されたある黒銀のカードを取り出す。
「
黒銀のカードが光り、そこから一冊の本が現れる。さらに、私の背中から黒銀の三対六翼の翼が顕現した。
正直に言うと、この武装はかなり凄い。
開発者が零夜と桜坂夜月という最強タッグだからか、これは現存するどのデバイスより、何世代も上に位置すると言ってもいいほどだ。しかも使い勝手がいい。馴染むという言葉だけでは、とても言い表せない。
「ふむ・・・・・・。こうか・・・・・・・」
魔導書から一振りの流麗な黒銀の剣を取り出しそれを右手に握る。
予めこれがどういう武装なのか説明は受けていたが、実際にこうして行使して驚嘆する。
「よし・・・・・・・」
剣のグリップを握り、私はさらに速度を上げる。
速度を上げたものの数分で、私はテスタロッサ姉妹とユーリ、そしてディアーチェと遭遇した。
「ユーリを助けるのは貴様一人だけではないぞディアーチェ」
遭遇した私は、テスタロッサ姉妹に向かって「ユーリの相手は我に任せよ」と言ったディアーチェにそう告げる。
「貴様は・・・・・・」
「「アインス!」」
「テスタロッサ姉妹は零夜と我が主はやての救援に向かってくれ。ここは、私とディアーチェが引き受ける」
「で、でも・・・・・・」
「二人でなんて無理だよ!」
そう言う二人に、ディアーチェは。
「我は一人ではない。シュテルとレヴィもいる。それに───」
「安心しろ。これは私の役目でもある」
視線をこっちに向けてきたディアーチェに、剣のグリップをさらに強く握りしめて言う。
そう、これは私の役目でもあるのだ。初代夜天の書の管制者として。そして、ユーリの友として。
「それにな。今の私は、ユーリを一人で相手にしても負ける気なぞ、微塵もないぞ!」
そう言って、私は《月夜の黒銀翼書》を開き、パラパラと頁を捲り。
「───来たれ氷精。爆ぜよ風精!
M・M式の風氷複合魔法、《氷瀑》をユーリに向かって放った。
「───っ!」
ユーリは咄嗟に後退して退避したが僅かに氷瀑の影響を受け、展開していた装甲腕部に氷が張り付いた。
「今のは───!」
「氷瀑!?」
テスタロッサ姉妹が驚いた顔で見てくる。
「二人とも、私が元はなんだったのか忘れたか?」
「「っ!!」」
私は元は夜天の書の管制融合機だ。そして聖良は元ナハトヴァールの意識体。聖良の使える魔法が、私に使えないはずない。と言っても、新たな魔法は使えないが。しかし、すでに記録されてる魔法は行使できる。まあ、M・M式に関しては《月夜の黒銀翼書》の助けもあるが。
「というか助けが必要なのは、なのはや子ガラスたちの方だろう」
私の《氷瀑》に「ほう・・・」と言ったディアーチェの言葉にテスタロッサ姉妹は思案な顔を浮かべる。
「行ってやれ。ここは我らが受け持つ」
「主たちを頼む」
ディアーチェと私がテスタロッサ姉妹にそう言うと。
「うん。わかった」
「気をつけてね。ディアーチェ、アインス」
そう返してきた。
「ああ」
「無論だ」
二人の心配して掛けてきた言葉に私とディアーチェは同時に言う。
私とディアーチェの言葉を聞いたテスタロッサ姉妹は、姉のアリシアは主はやてたちの方に。妹のフェイトは零夜と高町たちの方に向かって飛んで行った。
「さて───聞け、ユーリ!」
テスタロッサ姉妹が行ったのを見たディアーチェが凛々しく声を出す。
「シュテルとレヴィから受け取った力でお前を助ける!もう少し辛抱しておれ!」
「───!ディアーチェ・・・・・・ッ!」
「それに癪だが・・・・・・彼奴から渡されたこれもお前を助けるために使おう!」
ディアーチェが取り出したのは一枚のカードだ。
そのカードは、紫天の色をしていた。そのカードは零夜が持っていた
「我が願いに応え、来たれ!」
そう叫び、カードを頭上に突き上げるとカードが光り輝き、ディアーチェの背に元からあった小さな翼に加え、紫天に輝く翼が現れた。
「───
ディアーチェが終の言葉を口走ると、ディアーチェの魔力が高まったのを感じた。
「ディアーチェ、私も居ることを忘れるな」
「わかっておる。行くぞアインス。ユーリを助けに!」
「ああ。行くぞディアーチェ!」
私とディアーチェは同時にユーリに接近し、ユーリの動きを止める。
「はあああーっ!」
「せあああーっ!」
「───ッ!」
私とディアーチェの同時攻撃を、ユーリは展開している腕部で受け止め、跳ね返した。
「───っ!」
「おのれっ!───高まれ、我らの魔力!」
ディアーチェがそう高々に叫ぶと、ディアーチェの背中の紫天の翼に眩い輝きが走り。
「っ!?これは───!魔力が・・・・・・!」
ディアーチェの魔力がさらに高まったのを感じた。
どうやら、周囲に拡散されてる魔力残滓を紫天の翼から吸収しているようだ。
さらに包み込むように、紫天のオーラがディアーチェを覆った。
「なら私も───!」
ディアーチェを見た私は、私も負けじと。
「《月夜の黒銀翼書》よ。私の願いを叶えて欲しい。友を救うために・・・・・・!」
そう言うと、私の願いを聞き届けたのか《月夜の黒銀翼書》から猛々しい魔力が溢れ出た。
私もディアーチェと同じく、黒銀のオーラが体を覆った。
「ディアーチェ・・・・・・!黒羽・・・・・・!」
それを見てユーリは、絞り出すような声で言う。
「二人とも、やめて下さい!これは私がなんとかします!だから───!」
「バカものが!今の貴様の状態で何ができようか!」
「私は!もう誰にも!黒羽に!ディアーチェ、シュテル、レヴィにも!苦しんでほしくないんです!!」
「ユーリ!私はもう大丈夫だ!私は君にたくさん助けられた!だから、今度は私がユーリ。君を助ける番だ!」
「ッ!あああぁぁぁあああああああっ!!」
「ディアーチェ!」
「ああ!力を借りるぞ、シュテル、レヴィ!」
絶叫を上げながら振りかぶって来たユーリの腕部を、ディアーチェは左手に出したシュテルのブラストクロウで受け止め、ゼロ距離砲撃を放ち、ユーリの右腕部を破壊する。
「させるか!」
ユーリから放たれた魔法を、私は次々に相殺する。
「うぐっ!───っ!」
「はあああああああっ!」
再び繰り出した左腕部を、ディアーチェは今度は右手に握ったレヴィのバルフィニカスのスラッシャーの一撃で破壊する。
「っぐ!」
「はあああああああ!───闇の雷!」
《月夜の黒銀翼書》の頁をユーリの周囲にばら撒き、ユーリの動きを阻害して、頭上から漆黒の雷がユーリに降り注いだ。
「ああああぁぁぁぁぁあああああああーーっ!!」
私の闇の雷に続いて、ディアーチェが漆黒の槍を連続で放つ。
悲鳴を上げるユーリに心苦しくなりながら、私はディアーチェと同時にユーリをバインドする。
「───ッッ!!?」
「これで終わらせるぞディアーチェ!」
「ああ!」
私とディアーチェは足下にベルカ式の魔法陣を展開させ、同時に魔力を上げていく。
ディアーチェの前には黒、朱、蒼の三つの魔力球が。
そして私の前には、白桃色の魔力球が。
「咎人たちに滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ」
周囲に拡散してる魔力を掻き集め、収束する。
ディアーチェも全魔力をそれぞれの魔力球に集めていた。
「聞けユーリ!シュテルとレヴィから預かった力・・・・・・そして、我が魔力のすべてをこの一撃に込める、必ず貴様を救ってみせる。あともう少しだけ辛抱しておれ!」
「───っ!ディアーチェ、ダメです!そんなことしたら・・・・・・!黒羽もやめて下さい!」
「悪いがそれはできない!」
「もとより拾った命と仮初の力。お前の涙を止められるのなら投げ捨てたとて、悔いは無い!貴様がくれた、心と命は。貴様とともに過ごせた日々は・・・・・・誠に。幸福であった!」
「───!」
「故に今度は、我らが貴様の明日を切り開く!」
「私たちがユーリ。君の未来を切り開いてみせる!」
「っ───ディアーチェ!黒羽!」
「我らが渾身の恩返し!受けとれぇぇぇぇえーー!!!」
「闇を打ち砕け、星々の輝き!スターライト・・・・・・ブレイカァァァァーー!!」
私の渾身の集束魔力砲、高町なのはの代名詞であるスターライトブレイカーとディアーチェの強大な砲撃はユーリに向かう間にも、辺りの建造物やらを破壊していき、ユーリを呑み込んだ。
やがて、私とディアーチェの砲撃により、私たちをも包み込むような爆発が起きた。
「っぐ!」
全魔力を集束砲に回した私にその爆発の余波を防ぐことは出来ず、私とディアーチェは爆発の余波に巻き込まれて行った。
私とディアーチェがユーリに全力の魔法を放ってからそう時間が経たず、やがて───
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・」
息を整えながら目を開けると、私を黒銀の薄い膜が覆っていた。
「これは・・・・・・」
黒銀の膜が私を守ったのか、私自身には大してダメージは無かった。しばらくして私を包んでいた黒銀の膜は消え去り。
「ユーリとディアーチェは・・・・・・」
爆煙による煙が少し晴れた、辺りが更地となってる周囲を見渡す。
我ながら凄まじいといえる。先程のディアーチェの砲撃は、闇の書事件の終わりの際に放った零夜、主はやて、高町なのは、フェイト・テスタロッサの四人のフォースブレイカーに匹敵する程だ。もっとも、今の零夜なら単独でこのくらい放てると思うが。
「ディアーチェ!黒羽!」
全魔力を使い切り動けずにいるところに、ユーリの悲鳴じみた声が聞こえてきた。
どうやら洗脳は解けたようだ。
「元に戻ったかユーリ」
「黒羽・・・・・・!」
「黒羽か・・・・・・。懐かしいなその呼び名は。今はリインフォース・アインスという名を主より賜ってな、出来ればアインスと呼んでくれ」
「アインス・・・・・・。そうなんですね、あなたが無事でなによりです・・・・・・!」
涙を浮かべてユーリは言う。
ユーリは私の記憶の中にあるのと同じで、優しくて、少し涙脆くて、健気。そしてなにより、人の生命の重たさを尊んでいる。
「ユーリ・・・・・・」
涙を浮かべるユーリを優しく撫でる。
ようやく煙が全て晴れると、すぐ傍にディアーチェが私の時と同じく、紫天の膜に覆われたディアーチェが横たわっていた。幸いにも、ディアーチェからは微量な程の魔力を感じた。どうやら、ディアーチェの背の紫天の翼が周囲の空間の魔力リソースを吸収したから見たいだ。
「ディアーチェ!」
ディアーチェを見たユーリは急いでディアーチェに駆け寄った。
「ディアーチェ・・・・・・!こんな・・・・・・!」
ユーリが近づくと、ディアーチェを護っていた紫天の膜は消え、ディアーチェがその場に横たわる。その傍に一枚のカードがポトっ、と落ちた。
「恩返しなんて・・・・・・!私の方が、たくさんの幸せを貰ったのに・・・・・・!」
涙ながらに紡ぐユーリ。
私は、ユーリとディアーチェに回復魔法を施しながら傍に座る。
すると。
「ディアーチェ・・・・・・!」
「泣くでない・・・・・・ユーリ・・・・・・」
ディアーチェが朧気に目を開け、右手をユーリの頬に添えた。
「単に我の魔力が尽きただけの事・・・・・・元よりこの体は仮初。気にすることは無い」
「ディアーチェ・・・・・・」
「ふっ・・・・・・。あとは任せても構わないな、アインス」
「ああ。ゆっくりと休めディアーチェ」
そう言うとディアーチェは再び瞼を閉じ、眠りについた。どうやら休眠状態になったようだ。
「ありがとう、ディアーチェ・・・・・・!シュテルとレヴィも・・・・・・!」
涙を流しながら言うユーリを見ながら、私は救援の部隊に連絡して、この戦いが終わるのを待った。
「(申し訳ありません我が主。どうやら私はそちらに行けそうにありません)」
魔力が尽きかけている私では何も役に立たない為、私は主はやてに謝りながら空を見上げた。