魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語 作:ソーナ
〜零夜side〜
「っ!」
「アミタさん!」
目の前で腹部を撃ち抜かれたアミタさんを見て僕は目を大きく見開いた。
今のは明らかに致命傷だ!
「アミタさん!」
「なのは、シールドを張れ!」
地上に落ちようとするアミタさんを抱き抱えたなのはに強い口調で言った。それと同時に、宇宙からアミタさんを撃ち抜いたのと同種の砲撃が僕らを襲った。
「くっ!
魔法じゃないため、ハマノツルギは使えない。だから、現状最硬の障壁を多重展開してなのはとアミタさんの前に出て防ぐ。
「ぐっ・・・!?な、なんて威力の砲撃!」
一撃、一撃の砲撃の威力がバカ高い。
しかも、高々度上空の宇宙からの狙撃なのに、狙いが的確だ。さらに、僕の多重展開した障壁も幾つか破壊されてる。あいにく貫通はされてないが、破壊されたことに内心驚いていた。
「厄介だね。───
時空の揺籃・霧散で迫ってきたビーム砲撃を霧散させる。
ビーム砲撃が障壁に当たった瞬間、それを無しにさせる。つまり、あらゆる攻撃の無効化。それがこの時空間魔法に部類する、時空の揺籃・霧散だ。
時空間魔法は時間と空間に干渉して発動する魔法だ。時空の揺籃は防御系だ。攻撃系は・・・・・・また今度披露した時に話そう。まあ、時空の揺籃にも色々あるけど。
「なのは、アミタさんを見せて」
「うん」
なのはからアミタさんを見せてもらうと、アミタさんの腹部から血が流れ出ていた。重症だ。
すぐに回復魔法を施し。
「凛華、予定変更。アミタさんを地上の医療班。出来ればシャマルか夜月の所に連れて行って」
片手剣形態の凛華にそう言う。
予定では凛華を連れてなのは、アミタさんとともに宇宙の衛星砲をどうにかする予定だったのだが、アミタさんがここまで重症となると大きく予定を変更せざるを得ない。
「零夜くん一人で大丈夫なんですか!?」
人型になった凛華が慌てて聞いてくる。
「なのはがいるから大丈夫だよ」
「・・・・・・わかりました。それではアミタさんは私が責任をもって地上まで送ります」
「うん、お願いね」
アミタさんを零華にお願いし。
「なのは、いくよ」
「え、あ、うん!」
僕はなのはとともに宇宙に上がった。
「こんなに高い空を飛ぶのはなのはは初めてかな」
宇宙から次々とエネルギー砲撃が来る中、上に上がりながら僕はなのはにそう尋ねた。
「うん。初めてだよ」
「そっか。レイジングハート、なのはに生命維持フィールドを展開して」
〈
「さすがだね」
〈
「こんな状況じゃなかったら快適な空の旅なんだけどねー」
「あははは」
僕の軽口になのはは笑みを漏らす。
「零夜くん。零夜くんは凛華さんがいなくても大丈夫なの?」
「ん?まあ、大丈夫だよ。一応僕の身体を生命維持フィールドに似た術式で展開した膜で包んであるし」
「すごいねほんと」
「いやいや。なのはの方が凄いから」
ほんと、なのはは凄いよ。
僕は明莉お姉ちゃんから貰った能力を使っているだけなんだから。
そう、自虐気味に心に漏らす。
「なのは」
「なあに?」
「今度さ、一緒に空の旅に行かない?」
「え・・・・・・。それって、私と零夜くんの二人だけで?」
「うん。イヤかな?」
「う、ううん!そんな事ないよ!大歓迎だよ!」
「よかった。じゃあ、今度二人だけで空の旅をしようか」
「うん!でもそのためには」
「そうだね。そのためには───彼女を止めないとね」
僕となのはの視線の先には一人の少女。いや、量産型イリスが砲を持って佇み、その後ろには小型の衛星砲があった。
「なのは、彼女は破壊しないでくれる?出来れば彼女は捕らえたい」
衛星砲を守るように砲口を向ける彼女の目を見て、僕はなのはにそう言った。
彼女の瞳はなんていうか。暗く。光を受けつけない、感情のない感じだった。モデルがイリスだからか、彼女も可愛らしいのだが、今の彼女からは生気を全く感じない。
はっきり言って、その瞳は嫌いだ。例え、人間じゃなかろうと、彼女は生きているのだ。だから、彼女は一人の人。女の子だ。
「分かったの」
僕の言葉になのはは頷いて返してくれた。
「さて」
「はじめまして。武器を下ろして、少しお話出来ないかな?」
なのはの問いに対する答えは、無言の沈黙と右手の砲口を向けエネルギーをチャージした事だった。
どうやら、話す気がない・・・・・・というより、恐らく彼女には話すというアルゴリズムが組み込まれてないのだろう。彼女を作ったのはフィル・マクスウェルだ。彼にしてみれば彼女はただの道具としか思ってないのだろう。
彼女の動作に僕はなのはに。
「なのは」
「うん」
一言言った。なのはは返事をしつつレイジングハートの砲先を向ける。
やがて二人は同時にトリガーを引き、砲撃がぶつかった。
それと同時に僕も動き出し術式を構築する。
「(聖良も凛華もいないけど、やらなくちゃ)」
飛びながら緑のエネルギー砲撃を躱す。
右手に断罪の剣を現出させて接近する。
「っ!」
「せあっ!」
なのはと同時に砲撃を放ち、彼女の砲撃を相殺。
すると、頭の中なのはの声が響いた。
「(いろんな場所で、いろんな人が考えて。時々こんな風に、分かり合えずに・・・・・・。折り合えずにぶつかる事があって。戦って意志を通すなんて本当は良くない。だけど、戦わなきゃ護れないものもある!護りたいもの。守れなかったもの。私の背中にある大切なものを守るため・・・・・・)」
それはなのはの魔法の原動力とも言える思い。
「はあああああ!」
「───」
彼女の砲はなのはによって破壊された。
そこにすかさず。
「なのは、スイッチ!」
「うん!」
「───!?」
僕はなのはと場所を入れ替え、術式を起動する。
「封絶結界───《
彼女を囲むように障壁を展開した周囲から隔絶した結界を構築。それを五重に張って、術者である僕以外に解けないようにする。内部からの干渉はもちろんのこと、外部干渉も出来ない。これで、彼女は一時的にフィル・マクスウェルからの支配から解放された。
そして、彼女に睡眠魔法を施し眠らせる。
「なのは終わらせるよ!」
「うん!零夜くん!」
封絶結界に閉じ込めた彼女を通り越して、僕は右手を。なのはは左手の掌を前に突き出す。
「───私たちの魔法は」
「───僕たちの魔法は」
「・・・・・・そのためにあるんだ!」
「・・・・・・誰かを守るためにあるんだ!」
「はあああああああああ!!」
「やあああああああああ!!」
無詠唱のルミナスバスターとディバインバスターを同時に放つ。
放たれた二つのバスターは螺旋状に合わさって、1つの巨大な砲撃となり、衛星砲を飲み込んで宇宙の彼方へと突き進んで行った。
バスターが消えると同時に、衛星砲を中心に爆発が起き僕となのはを襲った。
「きゃあっ!」
「なのは!」
咄嗟になのはを庇い、シールドを張る。
シールドを張るが、熱までは消す余裕がなく、身体の至る所に微々だが熱傷の痕をおった。
もし自分のHPが見えていたら徐々に減っていってるだろう。至近距離から爆発を受けたんだ。当然ともいえる。
しばらくして・・・・・・
「う、うう・・・・・・」
目を開けると、視界に衛星砲の残骸らしきものが周囲を漂っていた。少し離れたところには衛星砲の護衛役だった量産イリスを閉じ込めてある結界があった。どうやら、問題なく眠っているようだ。
「(魔力残りわずか・・・・・・。維持フィールドと結界で今も減ってるけど・・・・・・あと少しは大丈夫かな)」
僕の膨大な魔力はこれまでの戦闘によって消費し、今では残りわずかとまで減っていた。
『
「なのは、大丈夫?」
抱きしめたままのなのはに聞く。
なのはは左手にレイジングハートの発動体である赤い宝石を握りしめたままいた。
「う・・・・・・零夜くん・・・・・・」
「待ってて、すぐに回復魔法を・・・うっ・・・・・・」
幾ら自身の周りに対物、対魔、対干渉障壁を張っていたとしても、熱波による熱傷は防げなかった。熱傷により、痛みが走るが苦痛に耐えて、なのはに回復魔法を掛ける。それと同時に、自分にも少しずつ回復魔法を施す。
「っ!零夜くん、その傷・・・・・・!」
「大丈夫。なのはが負うよりは僕が負った方がいいでしょ?なのはは女の子なんだから」
昔、僕と愛奈実のお父さんと華蓮の叔父さんに言われたことがある。「何があっても大切な女の子を守れ」と。「女の子一人守れずに、なにが漢か」とも。
なのははこの世界で初めて出来た友達。幼馴染みだ。とっても大切な女の子だ。
それは、なのはだけじゃなく、はやてやアリサ。すずかにフェイト、アリシアもだ。他にも、凛華たちやアルフやクロノやユーノたち。いろんな守りたいと思う人が異性問わず出来た。
高町家のみんなや、学校でのクラスメイトたち。プレシアさんたち。
そして、僕の家族になってくれた明莉お姉ちゃんたち。
いろんな人の助けや支えがあって、今の僕はここにいる。
「なのは。なのはは今幸せ?」
「え」
僕の唐突の質問になのはは驚いたような声を出す。
「なのは、君は自分が好きじゃないでしょ?」
「そ、そんなこと・・・・・・」
僕は宇宙で横になるように身体を横たわらせ、その上にいるなのはの顔を見る。
「誰かを助けてあげられる自分じゃないと満足出来ないし、好きになれない。・・・・・・違う?」
「・・・・・・そうなのかも」
「辛い?」
「少しだけ・・・・・・」
「なのは、僕は本来はこの世界にいるはずのない人間だって、前に言ったよね」
「うん」
「なのはは僕と出逢って良かったって思う?」
少し前から周囲に薄い遮音結界を張り巡らせているため、この会話は誰にも聞かれることは無い。僕となのは二人だけの会話だ。
「僕はね、なのは。君に出逢えて良かったって思うよ」
「え」
「少し昔話をしようか。僕はね、この世界に来る前。前世では、僕の家族と華蓮。華蓮の家族他一部以外興味が無かったんだ。無関心とも言える程ね」
そう言うとなのはは信じられないとでも言うように目を見開いた。
「理由はなんでかな。どれも同じに見えたからかもね。いや、愛奈実お姉ちゃんと華蓮たちしか目に入らなかったからかもしれないや」
思い返すように苦笑して言う。
「けど、この世界に明莉お姉ちゃんが転生させてくれたお陰で、なのは。君に出会った」
思い返すのは約五年前のこと。
日暮れの公園で、偶然出会った
『どうしたのキミ?』
『にゃ!?わ、私のこと?』
『うん』
それから、僕となのはは友達になり、幼馴染みになった。そして、僕となのはは同じ小学校に入学してアリサとすずかと出逢った。はやてとは、入学してからしばらく経ってから出逢った。
それから数年が経ち、フェイトやアリシアをはじめ、アルフ、ユーノ、クロノ。シグナムやヴィータ、シャマル、ザフィーラ、アインスたち色々な人と出逢った。いろんな経験があった。
「その全ての関わりがあって、今の僕がいるんだと思う。まあ、お姉ちゃんたちを失って初めて気付いたってのにはちょっとだけど」
最後の方を苦笑しつつ言う。
正直、自分でも情けないとしかいえない。こんなことに後から気付かされるなんて。
「ふふ。ちょっと難しかったかな?まあ、ようするに、僕はなのは。君が大切だということだよ」
「ふぇ!?」
「幼馴染み。友達としてね」
「あ、うん。そういう」
あれ、なんか一瞬なのはの顔に影が入ったような。
そんなことを思いながらなのはを見る。
「私は、零夜くんとあの時出会って良かったって思う。何時も一人だった私に零夜くんが声を掛けてくれたから、あの時お母さん達とも話し合えたし、それから一人じゃなくなった」
「そっか」
身体中が痛む中、それを顔に出さないようにして言う。
視界には宇宙だからこその、景色が広がっていた。
満点の星々に、何も無い暗闇の空間。幻想的にも見える景色。
「それに、魔法に出会ったからユーノ君とも友達になれた。リンディさんやプレシアさん。クロノ君やエイミィさん、リニスさんたちは今もいろんなことを教えてくれる。楽しそうにしてるはやてちゃんたち八神家のみんなを見ていると、切なくなるぐらい幸せな気持ちになる。アリサちゃんとすずかちゃんがいつも話を聞いてくれて、心配してくれて。アリシアちゃんとも友達になれた。夜月ちゃんや聖良ちゃん。凛華さんや明莉さんたちが・・・・・・・。零夜くんが居てくれたから、私はここまで来れた。フェイトちゃんと友達になれた時・・・・・・。みんなが、私の名前を呼んでくれるのが本当に嬉しくて・・・・・・」
「自分を好きになれなくてもいい。だけどなのは。君のことが好きで、大切に思っている人は沢山いるって事を忘れないで。大切な人を泣かせるのはイヤでしょ?」
「うん・・・・・・」
僕の言葉に、なのはは少しだけ嗚咽の声を洩らして頷く。
「自分をきっと好きになれる日が、いつかきっと来るよ。大丈夫。なのはならきっと・・・・・・いや、絶対くる。僕たちの人生はまだまだこれからなんだから」
「零夜くん・・・・・・」
「そろそろ地上に・・・・・・みんなの所に帰ろうか。それに、迎えも来てくれたみたいだし」
「え」
視線を地球の方に向けると、地球から複数の光が登ってくるのが見えた。それぞれ、金色、白、紅、青紫、水色、白銀、朱、蒼の光だ。やがてそれらは僕らの所に来て───。
「待たせてごめんなあ二人とも。迎えに来たよ」
「いや、助かったよはやて」
少し笑みを浮かべてはやてに言う。
「零夜、変わるわ」
「お願いアリサ」
「ええ」
なのはをアリサに任せ、封絶結界に閉じ込めてある量産型イリスを引き寄せる。
「すずか、アリシア、悪いんだけど彼女のことお願いできるかな」
「うん。まかせて」
「ええ」
封絶結界の強度はそのままにして、
それを知った僕は心で舌打ちし、自壊ユニットそのものを凍結消滅させた。これは、嘗て闇の書を夜天の書に戻した際に使った術式であるコキュートスの応用だ。もっとも、繊細な魔力操作を必要とするが。
それが終わると。
「お兄ちゃん!」
背中から白銀の翼を広げた聖良が抱き着いてきた。
「聖良」
「お兄ちゃんお兄ちゃん。お兄ちゃん!」」
「ごめん。心配かけたね」
泣きながら抱き着く聖良に謝る。
「もう。妹を泣かせるなんてお兄ちゃん失格だよれーくん」
「ははは。いつの間にか、見ないうちにシスコンブラコン家族が増えてるわね」
「お姉ちゃん・・・・・・華蓮・・・・・・」
軽く怒ってますよ、的な感じのお姉ちゃんとやれやれと呆れている華蓮。二人も来てくれたみたいだ。
「やれやれ。ここまでするなんてね。なにか大切かモノでも見つけたの?」
「華蓮・・・・・・まあね」
華蓮の問いに、視線をフェイトに治療してもらってるなのはたちに向けた。
「そ。ま、よかったわ」
「れーくん。あまり無茶しちゃダメですよ」
「れーくんは止めてよお姉ちゃん」
「ふふふ」
お姉ちゃんに少しだけ窘められながら、聖良の掛けてくれる回復魔法を受ける。
「それじゃあ、地上に帰ろうか。みんなで」
「うん」
僕の言葉になのはが答え、僕となのははみんなに連れられて地上へと帰って行った。
地上に戻ると、丁度朝日が上り。新しい一日の始まりを告げる朝の日差しが僕たちを迎えた。
そのまま、朝の日差しを浴びながら僕たちは東京湾に配置された管理局の指揮船の甲板に降り立った。