魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語   作:ソーナ

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天ノ宮零夜と折神紫

〜零夜side〜

 

 

予約(アポイント)も無しに済まないな」

 

「いえ、構いません」

 

「本来なら私がそちらに出向くのが筋なのだろうが・・・・・・」

 

「あまり無茶をしないでください。身体があまり優れないのですよね?」

 

「すまない」

 

こちらの世界に来て三日目の昼下がり。

一日目は到着したも、夜分遅くのためフラクシナスで待機し翌日の二日目から捜索したが、そこで現地の刀使と遭遇。一悶着あったが、刀使の局長代理や本部長といった偉い人と面会をし、刀使でも最強と言われてる燕結芽と衛藤可奈美と模擬戦をし、荒魂の討伐の補助及び、ロストロギア『赤羽刀』の捜索をして二日目を終え、今日三日目、なのはたちはそれぞれ刀使の人と組んだりして赤羽刀の捜索及び荒魂の討伐をして行っている。現在フラクシナスには、クライドさんと星夜、紅葉が残り解析と地上の刀使の本部と通信を行ってる。そして僕はというと。

 

「それで、今日はどのような要件でしょう。折神紫さん?」

 

この世界にある機関、警察庁刀剣類管理局局長である折神紫さんと話をしていた。

事の発端は数時間前、折神紫さんの実妹である朱音さんに紫さんが話したいことがあると言われて来たのだ。しかも、二人きりで。

そして今───。

 

「僕になにか話でも?」

 

「そう礼節を弁えんでも構わん。普段通りに話してくれ」

 

「ではそのように───んっん。それで、要件は?貴女はまだ療養が必要なんでは?」

 

「ほう。さすが、その事は知っていたか」

 

「ええ。肉体は回復してるようですが生命力があまりにも低いので」

 

そう、この人からは覇気を全く感じなかった。

昨日見た時から感じていたが、今の紫さんからは何も感じられなかった。昨日調べると、折神紫というのは今から約二十年前に起きた相模湾岸大災厄の英雄らしい。

各学院の学長は全員、当時17歳の折神紫が率いていた特務隊のメンバーでそれぞれ───。

可奈美らの通う美濃関学院の学長、羽島江麻。

六角清香らの通う平城学館の学長、五条いろは。

糸見沙耶香らの通う鎌府女学院の学長、高津雪那。

まだ在学生徒に会っていないが綾小路武芸学舎の学長、相楽結月。

そして、古波蔵エレンや益子薫らの通う長船女学園の学長にして、現特別祭祀機動隊の本部長、真庭紗南。

以上六名が記録に残されてる。

───が、調べたところ二名ほど記録から除名されてるのがわかった。

僕の特殊固有武装(アーティファクト)がひとつ、『世界図絵』によって調べた結果、この六人に加えあと二人。藤原美奈都と柊篝という人物を加えた以上八名が当時の特務隊のメンバーだとわかった。それと同時に、その大災厄がアメリカによって起こされた人災だということも判明した。

このアメリカの起こした人災についてはかなりイラッて来たけど、もう二十年前のことであり、僕たちに全く関係無いことのためどうこうするつもりは無い。

 

「話というのは天ノ宮、おまえについてだ」

 

「僕?」

 

「ああ。天ノ宮零夜、おまえは本当に人間か?」

 

「っ!?」

 

紫さんの質問に僕は息を飲んだ。

まさか、初対面の人にこう問われるとは思いもせなかったのだ。

 

「すまない。だが、おまえから感じる気配は人だけではない」

 

「・・・・・・」

 

紫さんの言葉に僕は何も声が出なかった。

 

「(バレた?いや、そんなはずはない。たった二回しか会っていないのに僕が人ではないと分かるはずが・・・・・・!)」

 

僕と夜月、お姉ちゃんと華蓮の四人は半分神半分人と、半人半神だ。原因は、明莉お姉ちゃんたちの眷属化だが、大抵の人は分からない。というより、この事は僕ら以外誰も知らないのだ。

分かるとすれば、それは神の領域に触れた者だけだと明莉お姉ちゃんたちが言っていた。つまり、紫さんは───。それに微妙に感じるこの感じ───。

 

「紫さん。貴女、荒魂───それも上位・・・・・・大荒魂に憑かれてましたね」

 

「───っ!」

 

紫さんの何故それを!?とでも言いそうな表情に僕はビンゴと頭中でいう。

 

「どうりで貴女から荒魂に近い空気を微妙に感じるはずだ。そして、その感じから憑かれていたのは一年前まで。さらにその肉体年齢は17歳程・・・・・・。17歳といえば、貴女が救国の英雄と呼ばれる由縁となった大災厄が起きた年ですよね?つまり、貴女はその当時、何かしらの事情があって大荒魂が憑依しており、今から一年前ほどに何かがあってその憑依が解かれた・・・・・・。貴女の生命力が低いのはこれも関係があるんでしょうね。憑依されていた代償・・・・・・。ああ、なるほど。納得だ」

 

他にも色々あるのだろうが、恐らくは憑依されていたのが原因だろう。

 

「おまえは一体・・・・・・」

 

「ふふ。ちょっと他の人より凄い、ただの転生者(魔法使い)ですよ」

 

おちゃらけたように、かた目をつぶって言う。

もしここに他の魔導師組がいたらこう突っ込むだろう。

 

『そんなわけあるか!!』

 

と。

そして、そんな心情を知らぬ零夜であった。

僕は周囲に目配せをして、結界魔法を構築して張る。

 

「ふう。これで外部にこの部屋での声は聞こえないし、盗聴や盗撮など機械類も無効化。今ここにいるのは僕と貴女だけです」

 

「・・・・・・」

 

「気楽にいきましょう。紅茶でも飲みますか?」

 

そう言うと、自身の異空間から簡易的なティーポット類を取り出す。カップは予め蒸らしており、熱が逃げないようにしてある。それはティーポットも同様で───

 

「砂糖とミルクはここに。お好きに使ってください」

 

手早く終わらせ、カップに僕と紫さんの分の紅茶を注ぐ。

 

「いただこう」

 

紫さんもカップの取手に手を掛け紅茶を飲む。

 

「・・・・・・うまい」

 

「ふふ。ありがとうございます」

 

僕も続けて紅茶を一口飲み。

 

「貴女は・・・・・・一度死んだ事がありますか?」

 

僕は紫さんにそう問いた。

 

「なに?」

 

紫さんはなにを言っているのかわからない感じを出す。

まあ、当然と言えば当然だ。

普通、死んだことがある人間なんていない。・・・・・・例外を除き。

僕と夜月は、明莉お姉ちゃんたちによって転生。二度目の生を受けた。お姉ちゃんと華蓮は僕のお願いによって生き返った。他に生き返ったのは、僕の特殊固有武装がひとつ『天生牙』によってアリシアを蘇生した事のみだ。

生命の死というのは誰しも背負う運命だ。それは逃れられない宿命であり、そのヒト個人の終わりとも言える。

だが、僕たちは明莉お姉ちゃんたちに導かれてこの世界で2度目の生を受けた。本来の常識の概念をぶち壊す定義だ。

だから僕はほんの少しだけ話す。

 

「僕は元々この世界にいない。所謂、異世界から来た存在です」

 

と。

転生者のことはなのはたちにも厳命している。

第三者に漏らした場合、その時は明莉お姉ちゃんたちによって直接罰が執行される。もっとも、みんなを信頼してるからあの時話した。明莉お姉ちゃんが直々にね。

 

「つまり、おまえはこの世界・・・・・・いや、おまえたちの世界にすら居ない、別の場所から来た存在・・・・・・そういう事だな?」

 

「ええ。この世界で言うと、この世とあの世。現世と隠世ですね」

 

紫さんの言葉に僕は例えを入れて応える。

 

「僕は気が付いたら今の世界にいた。それも、歳が十歳近く若返って。それに対してなにか抱かないのかと言われたら、なにも抱かない」

 

「なぜだ?元いた世界にも親友や家族がいるだろ」

 

「・・・・・・いませんよ家族。全員、僕を残して亡くなったから」

 

「な・・・・・・」

 

「それに親友なんか、いなかった」

 

顔に曇りを入れて言う。

実際、今でこそなのはたちというかけがえのない友達が沢山いるが、前の世界では友達なんか居なかった。いや、作らなかったの方が正解か。

正直、あの時僕は僕の家族と華蓮の家族がいれば特に問題なかった。もちろん、クラスメイトと喋ったりはする。が、気心の知れた友人と呼べる人間は居なかった。

まあ、もう過去のことだ。未だに母さんや父さんたちのことは悲しいが、今はなのはたちもいるし、お姉ちゃんと華蓮がいる。だから、もう大丈夫。

 

「すまない。軽薄だったな」

 

「気にしないでください。気にしてませんし」

 

そう応える。

 

「・・・・・・おまえの質問。私は死んだことは無いが、死にたいと・・・・・・悔やんだことが何度もある」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「おまえには話しておこう。二十年前の相模湾岸大災厄での出来事と、それからのことを」

 

そう言って紫さんは話し始めた。

 

「あの頃・・・・・・学生時代の私は周囲からの重圧に疲れていた。折神の当主として・・・・・・。だが、それでも平気だったのは私の大切な学友のおかげだ。とっくに調べているのだろうが、藤原美奈都と柊篝。そして各五箇伝の学長たち。特務隊のメンバーは誰一人、私の大切な仲間だった」

 

「だった?」

 

「ああ。相模湾岸大災厄で私は、折神家の当主として、後輩であり柊家の任を背負った篝に大荒魂を封じることを命じた」

 

「命じた・・・・・・ハッ!!まさかそれって・・・・・・!」

 

紫さんの言葉に僕はしばらく分からなかったが理解出来た。

紫さんが、柊篝さんに大荒魂を封じることを命じた。つまり───

 

「そうだ」

 

「人柱・・・・・・」

 

柊篝さんの命と引き換えに大荒魂を封じる。いや、封じる代償が命。───生け贄(サクリファイス)

その時の紫さんの気持ちが僕にはすぐに理解出来た。

 

「人柱的な役目を命じなければならなかった私はその事で精神を削られた。大切な友の命を代償に封じなければならなかったから。さらに何も知らされていなかった、柊家でも折神家でもない、親友の美奈都が篝を助けるため反射的に篝を追いかけていってしまったことで、私は絶望の底に叩き落とされた。しかし、大切な友人を同時に失い失意の私に声をかけてきたものがいた。それが大荒魂───タギツヒメだ」

 

「タギツヒメ・・・・・・」

 

「私の絶望した心の隙につけ込んだ大荒魂(タギツヒメ)の甘言に私は耳を貸し、そのまま同化する道を選んだ。その後は、タギツヒメから与えられた十数年の猶予を経て私自身の意識の自由を奪われ、さらに数年の間に徐々にタギツヒメによる侵食を受け、私の意識はその殆どが封じ込められてしまった。あとは調べた通りだ。一年前に二人の娘の衛藤可奈美と十条姫和たちによって私とタギツヒメは分離された」

 

そう言うと紫さんは紅茶を飲み、息を吐いた。

 

「同化した理由は・・・・・・」

 

「・・・・・・タギツヒメから、美奈都と篝を返すと言われたんだ」

 

「なるほど・・・・・・」

 

紫さんの言葉に僕は納得する。そう言われたら僕でも同化する道を選ぶだろう。例えそれが、間違った道だとしても・・・・・・。

そこから紫さんはその後のことを話してくれた。

鎌倉特別危険廃棄物漏出問題のあと、年の瀬の災厄までのこと。一連の事件のことを。

 

「───これがすべてだ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

想像以上にも絶したことに僕は声も出なかった。

 

「やはり、あなたは僕と少し似ている気がする」

 

紅茶を飲みながら僕はそう呟く。

すべてを自分一人で抱える事。大切なものを失ったこと。

僕ははやてを助けるためになのはたちの敵になった。いや、次元世界全ての敵になった。たった一人、大切な友達を助けるために。そして前世で家族を失った。

紫さんを助けたのは可奈美と十条姫和。僕を助けたのはなのはとフェイト。どちらも誰かの助けがなければならなかった。紫さんは親友の娘が。僕は幼馴染と友達が。

 

「何故僕にそのことを?」

 

「・・・・・・何故だろうな。たぶん、昨日会った時、雰囲気が私と似ていただからだろうな」

 

「それは・・・・・・嬉しいですね」

 

クスッと微笑みが自然に出て言う。

それから僕は紫さんと世間話や様々なことを話した。

 

「───ふ。零夜、おまえも大変なんだな」

 

「ええ、まあ。慣れたら楽だけどね」

 

「慣れとかの問題では無いだろ・・・・・・」

 

呆れたように言う紫さん。もとい紫。

僕と紫はそれぞれを名前で言い合うようになった。

ちなみにだが、紫の好きな食べ物はカップ焼きそばらしい。それを聞いた僕は少し驚いた。カップ焼きそばとは意外だったのだ。

そんなこんなで話していると、突然携帯端末が震えた。

 

「ん?なんだろ」

 

首を傾げて端末を開くと。

 

『天ノ宮特務三佐、至急戻ってきてください!』

 

クライドさんが焦った声が響いてきた。

 

「何事ですか!?」

 

『現在、フラクシナスは敵艦による攻撃を受けています!さらに地上にて研究会の下位交戦員と交戦中です!』

 

「なっ!」

 

クライドさんの言葉に僕は言葉を失う。

こんな所で研究会と会うなんて思わなかったのだ。

 

「急いで戻ります!現在下で指揮を執っているのは?!」

 

『魔導師組は桜坂さんが。刀使組は獅童さんが執っています!』

 

「了解!クライドさん、フラクシナスの基礎魔力輪環装置(ベーシック・マギリックシステム)をNo.1からNo.7まで臨界駆動!不可視迷彩(インビジブル)を解除。その分の生成魔力を世界樹の葉(ユグド・フォリウム)に!世界樹の葉(ユグド・フォリウム)の半分を地上への防御結界に!残り半分は牽制として射出!星夜、聞こえる?!」

 

『はい!聞こえますわ!』

 

「星夜、残り半分の世界樹の葉(ユグド・フォリウム)の操作を任せる!」

 

『わかりました!』

 

「クライドさん、すぐに向かいます!」

 

『はい!』

 

端末を慌ただしく終い、紫へと向き直る。

 

「紫、すまないが」

 

「構わん。急いで行け」

 

「わかった。あとでまた話そう。カップ焼きそばも加えて」

 

「!・・・・・・はは。そうだな」

 

驚いたような表情を浮かべながらも楽しそうに返す紫。

 

「頼んだぞ零夜」

 

「ああ。任せといて」

 

そう言って僕は急いで部屋を出て、外へと駆け出した。

 

 

 

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