魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語 作:ソーナ
~零夜side~
「待ってよ、―――お姉ちゃん、―――」
「ほら―――くん、早く来ないと置いていっちゃうよ♪」
「―――、早く行こうよ♪」
「うん!」
「―――くんはお姉ちゃんと―――ちゃんのこと好き?」
「もちろんだよ!僕、―――お姉ちゃんと―――のこと大好きだよ!」
「私もだよ―――くん♪」
「私もだからね―――♪」
「うん!大好きだよ、―――お姉ちゃん!―――!ずっと一緒にいようね!」
「ええ!」
「うん!」
「ん・・・・・・」
眠りから起きた僕は上体を起こして周囲を見渡す。
そして自室の部屋だと確認すると、眼から何かが頬を伝ってくるのが感じた。
そっと頬を触ると、眼から出た涙が手に付いた。
「―――お姉ちゃん、―――」
僕は今しがた夢で見た前世での、楽しかった、幸せだったときの時間を脳裏に思い出した。
多分、昨日のアルフがフェイトに言った言葉が原因だと思う。
「グスッ・・・・・・会いたいよ・・・―――お姉ちゃん、―――」
僕は泣き止まない瞳を擦りながらただ一人の家の自室でそう言った。
僕の声はカーテンから漏れでる朝日の光が入る自室に静かに虚空へと消えていった。
《マスター、目標を見付けたみたいです》
一階に降りて朝食を取っていたところにリンカがそう言った。
僕は昨夜から
あそこまで必死になるフェイトとあの言葉が気になったからだ。
「場所は?」
《遠見市、住宅街のマンションの1つです》
「そう・・・」
《マスター?》
《零夜くん?》
《どうか致しましたかマスター?》
「ううん。それよりリンカ、レイ、ステラ、いける?」
《はい!》
《もちろんだよ!》
《何時でも行けますわ!》
「じゃあ行こうか。フェイトがなんでジュエルシードを集めているのか」
僕は学校に体調不良で欠席する旨を伝え自宅を後にして隣市の遠見市へ向かった。
30分後
「さてと。ここか・・・・・・」
遠見市に来た僕は渡鴉の人見から伝えられたデータを元にフェイトとアルフのいる場所の近くに来ていた。
「それじゃあ今度はこれだね」
僕は懐から一枚の特殊固有武装カードを取り出して呼び出す。
「
僕が取り出したアーティファクトは
孤独な黒子は大きな物音や攻撃さえしなければ相手に見つからないという隠密系、最高クラスのアーティファクトだ。
僕は出てきたの棒付きの片眼仮面を右目に持ってきて覆う。
そしてそのまま中に入り屋上を目指す。
屋上に辿り着くと、ケーキの箱をフェイトから受け取ったアルフと眼を瞑っているフェイトの姿があった。
どうやら何か詠唱しているみたいだ。
静かに近くによるとフェイトの言っている内容が聞こえた。
「次元転移、次元座標。"876C 4419 3312 D699 3583 A1460 779 F3125"」
するとフェイトの足元に転移座標への黄色い転移魔法陣が現れた。
「開け、誘いの扉。時の庭園。テスタロッサの主の元へ!」
その魔法陣はフェイトとアルフはもちろんのこと、僕も範囲に入れて半球体みたいになると僕らを何処かへ転移と転移させた。
時の庭園
「ここは・・・・・・」
次に眼を開けるとそこは幻想的な雰囲気はあるがどこか不気味さも醸し出している屋敷の中だった。
そんな中、フェイトとアルフは奥へと進んでいっていた。だが、何故かアルフの表情は不安げだった。
「フェイト・・・取り敢えずここを調べないと」
僕は奥へと進み、二人の後ろ姿が見えなくなるのを確認して周囲を探索し始め―――
『あなたはだれ?』
ようとした。
「ッ!?」
僕はいきなり話し掛けられ警戒を高め周囲を見渡す。
『フフフ。ここだよ』
僕は声のした方を振り向くとそこには一人の女の子がいた。フェイトによく似た、それこそ双子と言えるくらいに。年齢は5、6歳程だと思う。けど、その女の子の身体は実体を持っていなかった、幽霊と言うべきなのだろうか?
「キミは・・・・・・」
僕はその女の子に聞く。
『わたしはアリシア。アリシア・テスタロッサだよ』
「アリシア・テスタロッサ・・・。僕は天ノ宮零夜。ところでテスタロッサ、ってことは君とフェイトは・・・」
『うん。フェイトはわたしの妹』
「妹?でも、アリシアさんって・・・・・・」
『アリシアでいいよ。まあ、わたしにも色々事情があってね、実はわたし死んでるんだよ』
「ど、どういうこと?」
僕はアリシアに言われたことが理解できず尋ねた。
『う~ん、見てもらった方がいいかな?付いてきてくれる零夜?』
「え?う、うん」
僕はアリシアに連れられてフェイトとアルフが向かった先とは別の道を通りある一つの部屋にたどり着いた。
「ここ?」
『うん』
僕はアリシアに確認して周囲を警戒しながら中に入る。
中に入るとすぐ目につくものがあった。中央に大きなガラス管があった。そしてその中には。
「アリシア・・・?」
女の子の亡骸が培養液に浸かって保存されていた。その亡骸は隣で浮いているアリシアと瓜二つだった。いや、恐らくこの女の子の亡骸がアリシアの実体なのだろう。
「アリシア、これは・・・・・・」
『これでわかった?わたしは死んでいるの。今のわたしは思念体、かな?』
「どういうことなの」
『・・・・・・零夜、あなたにお願いがあるの』
「お願い?」
『ええ。お願い、お母さんと妹のフェイト、そしてアルフを助けて』
「助けて?」
『フェイトはわたしの・・・アリシア・テスタロッサのクローンなの。アリシア・テスタロッサの記憶を引き継いで産まれたのが妹のフェイト』
「なっ!?」
『そしてお母さんは・・・・・・』
アリシアが言おうとしたところに。
バシン!
「うっ・・・・・・」
バシン!
「あっ・・・・・・」
何かを叩く音とフェイトの苦しそうな声が聴こえてきた。
「この声は・・・フェイト?」
『お母さん、また・・・・・・』
「またってどう言うこと!?」
『詳しくは行きながら話すわ。今はとにかくお母さんを止めてフェイトを助けて!』
「わ、わかった!」
僕はアリシアのあとを追いかけるように部屋から出ていく。
『この音はお母さんがフェイトを鞭で叩いている音なの』
「鞭で?なんで?」
『・・・・・・お母さんだってほんとはやりたくないはずなの。けど、お母さんはフェイトがわたしの、アリシアの変わりだと言うことを認めたいけど認めたくないの。そして今回のジュエルシードもお母さんがフェイトに命じたこと』
「なるほどね・・・・・・」
そのまま音のする方に行くと、奥に大きな扉がありその側でアルフが耳を塞いで苦しそうにしていた。
「アルフ」
「!?」
僕はアルフに近づき、左手でアルフの手を握った。
「なっ!?あ、あんた!」
「しっ!静かにして。今騒ぐとフェイトを助けられないから」
僕はアルフに注意して言う。
アルフの反応を見る限りどうやらアリシアの姿は見えてないみたいだ。もし見えていたら驚いているはずだ。
「あんた、どうやってここに」
「フェイトとアルフと一緒に来たんだよ?」
「ハァ!?」
「静かにして!あまり騒ぐとこれ解けちゃうから」
僕は再度アルフに言う。
「ところでなんでフェイトが鞭で叩かれているの?」
「フェイトの母親の何時ものだよ。昔からあの母親はフェイトを虐めてるんだ。今日だって、ちゃんとジュエルシードを持って帰ったのに!」
「アルフはフェイトの事が大事なんだね」
「当然だよ・・・・・・」
「・・・・・・アルフ、僕が部屋の中に入ってフェイトを助けるから、フェイトを連れてこの場所に転移して」
僕は懐から一枚の紙を取り出してアルフに渡す。
それは僕の住所が書かれた紙だった。
「ここは僕の家だから、フェイトを連れても大丈夫」
「け、けど・・・・・・。大体なんであんたはあたしやフェイトを助けてくれるんだい。私たちは敵同士だろ」
「・・・・・・敵も見方も関係ないよ。僕は、フェイトを助けたい、ただそれだけだよ」
僕はそう言うとアルフから離れ、大扉の前に立つ。
「ねえ、アリシア」
『なに、零夜?』
「アリシアの姿って他の人に見えてないの?」
『うん・・・・・・』
「そうなんだ・・・・・・」
僕はアリシアと小声で話、大扉に手を付け大扉を押した。
「―――来たれ」
新たにアーティファクトを呼び出し手にもつ。
ガタン、と音を立てながら扉が開き中に入った。
中に入ると、中には両手を左右に吊し上げられているフェイトとその奥に4、50歳くらいの女の人がいた。
「誰だい?」
女の人の手には鞭が握られていた。
そしてその前には鞭で叩かれた痕が多数あるフェイトが。
「―――
僕は孤独な黒子を解除してフェイトに近づいた。
「れい・・・や・・・?」
フェイトの眼は焦点が合ってなく、朧気に見えているみたいだ。
「フッ!」
僕はフェイトを吊し上げている鎖を
「フェイト!」
自由になったフェイトをすぐさまアルフが駆け寄り、フェイトを抱き締める。
「アルフ・・・・・・」
フェイトはアルフを見て小さく言う。
「アルフ、フェイト連れて行って」
「ああ」
アルフは足元に転移魔方陣を輝かせ、フェイトを連れてその場から転移した。
これでこの場には僕と、フェイトとアリシアの母親、そして幽霊状態のアリシアが残った。
「あなたはだれなのかしら?」
「初めまして、ですね、フェイトのお母さん」
僕はフェイトのお母さんに挨拶をする。もちろん警戒は怠らずに。
「僕の名前は天ノ宮零夜。フェイトの知り合いです」
「ふぅ~ん。それで、あなたはどうやってここに来たのかしら?」
「それは教えられないですね」
「・・・・・・まぁ、いいわ。あなたをここに閉じ込めておけば問題ないのだし」
そう言うとフェイトのお母さんは雷球を幾つか飛ばしてきた。
「―――
それを僕は魔法の射手で相殺する。
放たれた雷球の威力は高かった。恐らく、高レベルの魔導士なのだろう。
「今のを防ぐとはね」
「僕はあなたと戦闘しに来た訳じゃないよ。あなたに聴きたいことがあるんだよ」
「私に聴きたいこと?」
「ええ。あなたはなんの目的でジュエルシードを集めているんです?」
「あなたに言う必要はあるのかしら?」
「・・・いえ。ですが、僕が本当に聴きたいことはこれです」
僕は言葉を一旦区切り、小声でアリシアに聞く。
「お母さんの名前って」
『お母さんの名前はプレシア・テスタロッサだよ』
「ありがとう」
アリシアから名前を聞いた僕は、右手に持つアーティファクト、
「プレシア・テスタロッサさん!あなたはフェイトの事をどんな風に思っているんですか!」
「なっ!?」
いきなり名前を呼ばれて驚いたのか顔を驚いた表情をするプレシアさんはなにも言わない。
けど、僕の手に持ついどのえにっきにはちゃんとプレシアさんの本当の気持ちが書かれていた。
それも両面びっしりと。
「いったい何が目的なのかしら」
「僕の目的はあなたの本当の気持ちを知ることですよ。プレシアさん、もう少しフェイトに素直になったらどうです。僕からはこれだけです」
「くっ!」
さらに迫りくる雷球を無詠唱の魔法の射手で相殺して言い続ける。
「それでは僕はこれで失礼します」
「逃がすと思うの!」
さらに撃ってくる雷球や雷を障壁や魔法の射手で防ぎ、転移陣が起動させる。
「じゃあまたね、アリシア」
『うん、フェイトとアルフをお願いね』
アリシアと軽く小声で会話し僕は時の庭園から転移した。
~零夜side out~
~なのはside~
「零夜くん、大丈夫かな?」
「珍しいね、零夜くんがお休みなんて」
「うん」
何時もは一番後ろの席に座っているはずの零夜くんがいなくクラスがまた違って見えた。
朝のホームルームの時に聞いたとき、私やすずかちゃん、アリサちゃんは零夜くんがお休みだということに驚いた。零夜くんは滅多なことでは休まないからだ。
アリサちゃんの方を見ると、やっぱり昨日の事があったからかすぐに眼を背けられてしまった。
「なのはちゃん、零夜くん何あったのかな?」
「どうしてすずかちゃん?」
「あのね、ここ最近零夜くん様子がおかしいと思ったの」
「そう言えば零夜くん、ここ最近意識此処に有らずって感じだったような気がする」
私はすずかちゃんと話ながら零夜くんの事を思った。
「(大丈夫だよね、零夜くん)」
教室の窓の外から降り注ぐ夕日の光に照らされながら私は窓の外を見上げながらそう思った。
~なのはside out~
~零夜side~
時の庭園から転移した僕は幾つかの転移を経由して自宅へと転移した。
「ただいま」
リビングにはソファーで寝ているフェイトと、それを心配して見るアルフの姿があった。
「アルフ、フェイトは大丈夫?」
「あんた・・・・・・ああ、大丈夫だよ」
「そう。よかった」
僕はフェイトに近づき昨日と同じように治癒魔法をかけて治療する。
「あんたは・・・無事なのかい・・・・・・?」
「僕は大丈夫だよ。何回か戦ってるなら知ってるでしょ?」
「それはそうだけど・・・・・・」
アルフと会話していると、寝ていたフェイトが軽く身動きをして起き上がった。
「アルフ・・・」
「フェイト・・・よかった・・・」
「ここは・・・・・・」
「起きた?フェイト?」
「零・・・夜・・・・・・?」
「ここは僕の家だよ。セキュリティーも万全だから安心して」
「どうして零夜が・・・」
「フェイトを助けてくれたんだよ」
「私を・・・?」
「気にしないでいいよ。それよりフェイト、アルフから聞いてないの?」
「なにを?」
「僕はフェイトに無理しないように、一日安静にしているようにって伝えてって言ったはずなんだけど?アルフ?」
「あ、アタシは言ったよ。けど・・・・・・」
「大丈夫、問題ない」
「ハァー・・・・・・。フェイト、今日このあとは家で休んで」
「なんで?」
「フェイト、このままの状態で魔法を行使したらいつか大変なことになるよ?」
「そうだよフェイト。少し休まないと」
「けど、母さんが待ってるから・・・」
「仕方ないかな」
僕はフェイトに近付き手をフェイトに向け、
「大気よ水よ。白霧となれ、この者に、一時の安息を。
フェイトを眠らせた。
「これでゆっくり休んでくれるといいんだけど」
「今のはなんだい?」
「あれは相手を眠らせる魔法だよ」
「そうかい。それじゃあアタシらはこれで失礼するよ」
「うん。フェイトに無理しないでって伝えて」
「ああ。それと、昨日に続いて今日も助けてくれてありがとう」
「気にしないで」
アルフは深い眠りについたフェイトを抱き抱えると転移魔法で転移して去った。
一人残った僕はいどのえにっきを見る。
いどのえにっきにはプレシアさんのフェイトに対する本当の気持ちが書かれていた。
「やっぱりプレシアさんもキツいんだね」
僕はいどのえにっきに記載されたプレシアさんのフェイトに対する本当の気持ちを全て見てそう呟いた。
認めたいけど認めたくない。認めてしまうと、忘れてしまうから。
プレシアさんの心情が書かれたいどのえにっきを僕は静かにしまった。
「―――去れ」
いどのえにっきをカードの状態に戻した僕はソファーに寄り掛かって息を吐いた。
《マスター》
《零夜くん》
《マスター、どうしました》
「プレシアさんのあの行動、自分のためでもあるんだなって思ってね。・・・・・・悲しいよね、フェイトもアリシアもアルフもプレシアさんも。僕がなんとかしないといけないかな」
僕はソファーに寝っ転がりながら眼を手の甲で覆って言った。
「(プレシアさんの気持ち分かる気がする。大切な人をなくしたら僕も多分プレシアさんと同じ行動を取るかもしれないから)」
そう思いながら僕は瞼を閉じて眠りに落ちた。