魔法少女リリカルなのは 魔法と未来を繋げる者たちの物語   作:ソーナ

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戦乙女達の休息

 

~夜月side~

 

「お兄ちゃん、帰ってきたと思ったらどっか行っちゃったよ」

 

「うん。どこ行ったんだろう零夜君」

 

今私たちがいるのはこの世界で滞在中によくお世話になる鎌府女学院の食堂だ。この場にはレイくんを除いたほぼ全ての人がいる。

さっき話していたのはレイくんの事が大好きな二人、聖良ちゃんと澪奈ちゃんの妹コンビだ。

二人とも心配そうな表情を浮かべている。

 

「桜坂は彼がどこに行くとか聞いてないのか?」

 

隣に座ってお茶を飲んでる獅童さんが問うてくる。

 

「うーん。聞いてないよ。あ、でも、ちょっと所用が出来た、って言ってたね」

 

「そうか。帰ってきたら結芽が彼に斬りかかりそうだ」

 

溜め息を吐いて燕さんを見る獅童さん。

燕さんは楽しみそうに足をばたつかせていた。

 

「早く来ないかなぁー」

 

そんな声も聞こえてくる。それに私は思わずひきつり笑いを浮かべる。

そんな所に。

 

「零夜なら、屋敷の山頂に向かったぞ」

 

後ろから威厳のある声が響いた。

振り向くと、そこにはスーツを着て凛々しく、勇ましい姿の折神紫さんの姿があった。

 

「ゆ、紫様!」

 

獅童さんや此花さんたち特務隊人はすぐに直立不動の姿勢をとる。

 

「楽にしろ真希、寿々花、夜見。私は彼女たちに、このデータを渡しに来ただけだ」

 

そう言うと折神さんは私に二つのUSBメモリをクリアな箱に入れた物を渡してきた。

 

「一応その中にはノロやノロの投入によって起こったことなどあらゆるデータが入っている。さすがにS装備らの情報は渡せないが」

 

「ありがとうございます。奪われたノロは私たちが必ず、責任をもって消滅させます」

 

礼を言いながら私は折神さんからUSBメモリの入った箱を受け取る。

 

「頼む。あれが悪用されることはもう決してあってはならない」

 

「ええ。分かっています」

 

私はレイくんから自身の失態だと昨日の襲撃後の会議で聞かされた。そして、レイくんは折神さんたちに土下座でもするような勢いで謝罪をしていた。

折神さんたちは険しい表情をしていたが、相手が相手。荒魂ではなく私たちと同じ魔導士ということで、奪われたノロについては私たち特務0課が全面的な対処をすることになった。そして今渡されたデータはノロについての大まかなものだ。

これはかなり有難い。私たちでは知らないことが知れるから。よって対策も取れる。

私は受け取ったメモリを自身の異空間に厳重に保管しフラクシナスに戻り次第開封することにした。

 

「あの、宜しければ折神紫さんもご一緒に食べませんか?家のケーキなんですけど」

 

なのはが翠屋のお持ち帰り用の箱を持って訪ねる。

なのはの問いに折神さんは非常に残念そうな顔をして。

 

「すまない。この後会議があるんだ」

 

と言った。

刀剣類管理局局長という立場を退いても折神さんは予定が沢山あるらしい。

 

「そうですか。でしたら、こちらだけでもどうぞ」

 

「すまないな」

 

一言お礼を言い、なのはから持ち帰り用の箱を受け取り、折神さんは立ち去った。

 

「零夜くん、どこいったんやろなぁ」

 

「ホント零夜って最近勝手にどっか行っちゃうわよね」

 

折神さんが立ち去ってからはやてちゃんとアリサちゃんがそう口走る。

 

「みんな零夜くんと一緒じゃなくて寂しい?」

 

「す、すずかちゃん!?」

 

「な、何言ってんのよすずか!わ、わたしは別に零夜と一緒じゃなくてなんて・・・・・・!」

 

「そ、そうだよすずか!?」

 

「う、うんうん!」

 

「何言ってんのすずかちゃん?!」

 

すずかちゃんの言葉に、なのはちゃん、アリサちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、はやてちゃんの順に赤面して返す。

というか寂しいってことバレバレだよみんな?

 

「わ、私はお兄ちゃんがいなくて寂しいよ?」

 

「うん、私も」

 

レイくんの妹二人は相変わらずの天然発言。

うん、二人がレイくん好き好きなのはみんな知ってるから。

 

「へぇー。じゃあ零夜くんが戻ってきたら私、零夜くんと一緒にお風呂でも入ろうかなぁ~」

 

「はい?」

 

すずかちゃんの言葉に私は思考がフリーズした。

え、お風呂?お風呂って入浴とかのやつだよね。決して新種の武器やゲームやモンスターとかじゃないよね?え、OHURO?

 

「え、えっと、すずかさん?もう一度言ってくれます?」

 

「?零夜くんと一緒にお風呂入る?」

 

あ、聞き間違いじゃなかったわ。

すずかちゃんの言葉を理解して十秒後。

 

『『『ええええええええええええっ!!!!?』』』

 

その場に私たちの。ていうか、獅童さんや衛藤さんたちの声も入った絶叫が響き渡った。(聖良ちゃんと澪奈ちゃんの二人は除いて)

 

「す、すすすす、すずかちゃん!?な、なななな、何を言ってるのかな!?」

 

「お、落ち着いてなのは!そうよ、聞き間違いよ!そ、そうに違いないわ!」

 

「あ、あああ、アリサも落ち着いて。顔が凄いことになってるから」

 

「フェ、フェイトもだよそれ」

 

「み、みんな落ち着くんや。そうや、きっと幻聴や。うん」

 

いやいや、みんなが落ち着こうよ。

五人の慌てふためく姿に私は苦笑しながら声に出さずに言う。

で、刀使の方たちはというと。

 

「い、今どきの小学生ってそこまで進んでるんですのね」

 

「いやいや、多分それは彼女たちの星でだけだと思うぞ」

 

「はい。この星では多分ないと思い・・・・・・ます。はい」

 

「ねぇ姫和ちゃん、零夜くんって男の子だよね?」

 

「あ、ああ。男・・・・・・のはずだ?」

 

「・・・・・・うん。零夜は女の子に似てる」

 

「ま、まあ私たちも最初は彼が男の子だって分からなかったしね」

 

「ていうか、女装させたら分からないんじゃねえか?」

 

「それはナイスアイディアです薫!戻ってきたらやってもらいましょウ!」

 

「それはそれでおかしいような・・・・・・。それと、零夜くんを女装させていいのは私たちだけです!」

 

「えっと、凛華?そういう問題ではない気がしますわよ?」

 

最後の方は凛華ちゃんと星夜ちゃんが言ってるけど。

というか女装なんて聞いたらレイくん逃げるんじゃないかな?まあ、でも、私も見たいからレイくんには言わないでおくけどね♪

 

「はぁ。マスターもマスターだな」

 

「あ、あははは・・・・・・」

 

ソラとイリアが何か言ってるけど聞こえないふりをする。

とまあ、閑話休題。

 

「レイくんには悪いけど、さきに食べちゃいましょうか」

 

「うん」

 

なのはちゃんは空中に手をやり、そこから自分の固有空間を広げて目当ての物を取り出す。

 

「異空間収納。使いこなせてきたみたいね」

 

「うん。二人のおかげだよ」

 

異空間収納は私たち全員できる芸当だ。

最も、大型なものや多数は入れられないけど。(レイくんは別である)

その後、一悶着があったが無事解決しなのはちゃんの御両親が経営している喫茶店『翠屋』のスイーツを食べ疲れをとっていた。

そんな中。

 

「ちょっと聞きたいんだけどよ、天ノ宮ったか?なんで彼はあんなに強ぇんだ?」

 

ショートケーキを食べている稲河さんが唐突に聞いてきた。

 

「うーん、一応あれでもレイくん自分にリミッター掛けてるけどね。レイくんの強さの根源は『自分の大切なものを護りたい』って事だからかな?」

 

私も紅茶を飲みながら応える。私の応えにみんな静かに聞く耳を立てて聞いていた。

 

「私たちは全員魔法の原動力となる根源を持ってる。それは『大切な人を護りたい』や『もう二度と失わないように』や『恩返しのために』など沢山。もちろん、私にもその根源がある」

 

そう。魔法を使うにはリンカーコアというのが必要だって言われているけど、正直そんなのはお飾りに過ぎない。というのが私とレイくんで話し合った結果だ。一番重要なのは、何を思っているのか。自分を奮い立たせる原動力となる根源が最も重要なものなのだ。

 

「俺も聞きたいんだけどよ、そっちの世界には天ノ宮みたいな人間が沢山いるのか?」

 

今度は益子さんが訪ねる。

 

「あー、いやー・・・・・・」

 

「零夜レベルなのは夜月だけね」

 

「うん。夜月ちゃんも零夜くんと同じくらい凄いんだ」

 

「ていうか、二人みたいなレベルの魔導師が沢山いたら世界崩壊してるよー」

 

「うん。二人とも、星戦級魔導師だから」

 

目線を外らす私を他所にアリサちゃんたちが次々に言う。

お願いだから言わないで!星戦級魔導師なんて称号私には似合わないの!!

そんな心の懇願を無視するように言うみんな。

 

「ん?星戦級魔導師とはなんだ?普通の魔導師とは違うのか?」

 

十条さんが聞いてくる。

その応えはをなのはちゃんたちは私には視線を寄越して来た。

私はその視線から逃れるようにする。そんな私たちのやり取りを見て苦笑しながら星夜ちゃんが。

 

「星戦級魔導師というのは、たった一人で広範囲や都市国家を掌握及び制圧。もしくは壊滅破壊出来る魔導師の事ですわ」

 

と簡単にホロウインドウを出して説明した。

私たちの魔法には星戦級(プラネット)の他に戦闘級(アサルト)戦術級(タクティクス)戦略級(ストラテジー)と言う具合にカテゴリーがある。それぞれ───

 

戦闘級は対人又は対小規模団体を戦闘不能にする威力を持つ魔法。(魔法例─アクセルシューター、フォトンランサー、魔法の射手300矢以下、氷瀑、鋼の軛、など)

 

戦術級は一個中隊を無力化及び無効化、又は輸送機や魔導機動歩兵部隊などの機動魔導機器を破壊することが可能な威力を持つ魔法。(魔法例─ディバインバスター、クラウ・ソラス、スパークエンド、雷の暴風、闇の吹雪、マテリアルブラスター、ギガントシュラーク、シュトュルムファルケン、白き雷、奈落の業火、など)

 

戦略級は一個大隊あるいは基地を制圧、又は破壊することが可能な威力を持つ魔法。(魔法例─スターライト・ブレイカー、ラグナロク、プラズマザンバー、エターナル・コフィン、インフィニット・ブレイカー、魔法の射手1,001矢以上、上位魔法、加減した最上位魔法千の雷や千年氷華、など)

 

そして星戦級はたった一人の一撃で一都市や国家。次元航行艦の艦隊を殲滅。最悪、小さな惑星なら掌握及び制圧可能な威力を持つ魔法だ。(魔法例─ディメンション・イクリプス・ゼロエミッション、千の雷、千年氷華、燃える天空、引き裂く大地、輝煌天槍、など)

 

 

「現状、この星戦級魔法を行使できる魔導師は管理局で零夜くんと夜月ちゃんのみです。まあ、これに類する魔法を扱う人はかなり居ますけど」

 

「ええ。例えばなのはちゃんのスターライト・ブレイカーがこれに値します。他にははやてちゃんのラグナロクやフェイトちゃんのプラズマザンバー。クロノ君のデュランダルによるエターナル・コフィン。なのはちゃんとフェイトちゃんの合体魔法、中距離殲滅魔法ブラストカラミティも同じですね」

 

紅葉ちゃんの言葉になのはちゃんたちはええっ!?と声を上げる。

 

「わ、私たちの魔法って星戦級魔法に匹敵するものだったの!?」

 

「正確には準戦略級魔法ですわね。特に、限界突破して放つなのはちゃんのスターライト・ブレイカーは零夜くんの戦略級魔法レベルの集束魔力砲インフイニット・ブレイカーに匹敵しますわ」

 

「まあ、なのはのアレは何となく予想していたわ」

 

「だよね。なのはちゃんのアレはぶっ壊れ性能だもんね」

 

ガーン!って感じが今まさに見えるなのはちゃん。スターライト・ブレイカーは正直言って化け物クラスの魔法だ。もし私やレイくんがいなかったらこの魔法が史上最強の個人で放てる魔法だったかもしれない。いや、まあ、十歳足らずであんな馬鹿魔力砲撃を放てるなのはちゃんの方がよっぽどおかしいんだけどね?!

 

「えっと、零夜くんの本気ってどれくらいなの?」

 

今度は衛藤さんが聞いてくる。

衛藤さんの質問に刀使勢は聞き耳を立てる。

衛藤さんの質問になのはちゃんたちは難しい顔を浮かべる。なにせ。

 

「うーん。零夜くんって今まで数える程しか本気出てないよね?」

 

「せやなぁ。私が覚えてる中だと、闇の書の最後の戦闘の時とこの間の件ぐらい?」

 

「私の時も多分現状での本気だったと思う」

 

「確かにそうね。模擬戦でも基本、身体能力強化とかしか付与してないし、最上級魔法も使わないわね?」

 

「うん。使うとしても雷天大壮だけ?」

 

「あれでも結構手加減してるよね」

 

そう。レイくんは基本、本気も本気を出さないのだ。

最後はつい先日の研究会との戦闘かな?うーん、私自身レイくんと全力戦闘なんて数回しかないからなぁ。

 

「そう言えば夜月、前に零夜と全力の模擬戦してたわよね?」

 

「ギクッ」

 

突然のアリサちゃんの言葉に私は肩がすくみ上がった。

 

「そう言えばそうだね。確か模擬戦のフィールドの九割を破壊したんだっけ?戦闘の余波で」

 

「ああ。そんなこともあったね」

 

私は今すぐにでもここから逃げ出したい気分だった。だってみんなこっち見てるんだもん。

そこに天の助けとも言える声が響いた。

 

「零夜くんが本気で殺った事ならついこの間もありましたよ」

 

ん?今なにかやったの字が殺ったに聞こえたような・・・・・・。

凛華ちゃんの言葉にみんな凛華ちゃんを見る。

 

「ああ、ありましたわね。思わず相手を殺しそうなことが」

 

んんっ!?

勢いよく普通に話す二人。凛華ちゃんと星夜ちゃんを見る。

聖良ちゃんと澪菜ちゃんはいつの間にか寝ていて、その二人を紅葉ちゃんが見守っていた。で、そのすぐ側では読書をしているレイくんの新しい家族ミリアちゃんがいる。

 

「え、えっと、二人とも?今のってどういう・・・・・・」

 

「言葉とおりの意味ですわよ?」

 

「あの時は零夜くんを宥めるのが大変だったよね」

 

「ですわねー。というかほぼ半殺し状態でしたし相手を」

 

クスクスと笑っている二人。

い、一体何があったの?!

 

「そのですね。以前ミッドチルダ中央第七区画で銀行強盗事件があったの覚えてます?」

 

紅葉ちゃんが苦笑しながら説明する。

 

「えっと、確か犯人が質量兵器を多数保持していて人質を取って立て篭もっていたんだっけ?」

 

「ええ、それです」

 

私は記憶を頼りに言う。その事件は私たちが地球に居てなのはちゃんたちといた時のことだ。あれ、確かその時ってレイくんミッドチルダに行っていたような・・・・・・。

 

「あれ、でもそれってすぐに犯人が捕まったんじゃなかった?」

 

フェイトちゃんが首をかしげて言う。

が、私は何となく分かってしまった。多分それを解決したのって・・・・・・。

 

「ええ。捕まりましたよ。───マスター零夜が一人で全員捕縛して」

 

『『『『え?』』』』

 

やっぱり!!

紅葉ちゃんの言葉に私以外みんな唖然としてるけど、私は分かってしまった。

 

「あの時、中に私と澪菜ちゃんと聖良ちゃんが居たんです」

 

星夜ちゃんが思い返すように話す。

 

「零夜くんは後から合流の予定だったんですけど、合流する前に銀行強盗が起きて」

 

その時一緒にいたらしい凛華ちゃんは苦笑をしつつ言う。

 

「聖良ちゃんたちが事件に巻き込まれた、って知った時零夜くんすごい形相で事件現場の前に行ってその場の局員に聞いたんです。そらで事件の内容を知って・・・・・・」

 

「しかも聖良ちゃんと澪菜ちゃんが傷つけられて」

 

それを聞いた私たちは眠っている二人を見て思う。

ああ、これはレイくん怒って当然だな、と。

当の妹二人ともレイくんの事大大大好きだからね。

 

「零夜くんが本気で闘うのは、それが零夜くん自身の根源だからですわ」

 

「ええ。零夜くんの原動力となる根源は『自分の大切なものを二度と失わない』『この手が届く距離はすべて護る』『平穏な日々ご過ごせるように』ってことです」

 

「・・・・・・それが零夜の根源、なのか?」

 

言い終えた凛華ちゃんの言葉に獅童さんが小さな声で言う。そんな獅童さんの言葉に凛華ちゃん、星夜ちゃん、紅葉ちゃんは頷いた。

 

「ま、まあ、アレはちょっとやり過ぎだった気もしますけどね」

 

え?

突然の凛華ちゃんの言葉。私は思考が止まる。

 

「えっと、確か・・・・・・氷と地の魔法で頭以外を拘束して、顔の周囲に光と闇と雷、炎の魔法の剣を出して目前で滞空させ、睡眠魔法で強制的に眠らせてから闇属性の睡眠干渉魔法の悪夢を見させたんだっけ?」

 

「ええ。正直言ってあれはやり過ぎですわよね?」

 

「でも、二人を傷つけた人よりかは幾分かマシでは?」

 

「あー。そうですわねぇー」

 

「まあ、確かにね。実際、半殺しになってたし」

 

なんとも恐ろしい会話をする二人。

そしてそれを実行するレイくん。伊達に管理局内で『魔王』や『星王皇』と呼ばれてない。曰く、『天ノ宮特務官を怒らせたら終わりだとか』と局内で噂されてる。

そんなわけで基本怒らないレイくんを怒らせたら私たちでも震えが止まらないのだ。

実際クロノ君は一度それをされたらしく、思い返すだけでブルブル震えるらしい。(エイミィさん談)

そんな様々な話をして数十分がたった頃。

 

『『『『『『!!!?』』』』』』

 

突如とてつもない魔力を感じた。

その魔力の反応を感じた私たちは全員その場を立ち上がった。

 

「な、何今の!?」

 

「この魔力反応、まさかレイくん?!」

 

「っ!?お兄ちゃんが誰かと戦ってる・・・・・・?!」

 

レイくんと直接パスを繋いでいる聖良ちゃんが視線を上にやって、何かを感じたのか言う。

 

「この魔力・・・・・・零夜くんが本気で闘ってますわ!」

 

「それに加えてもう一つ、なにか反応があるわね」

 

確かになにかもう一つ感じる。

けど、それはヒトじゃない気だ。

 

「───夜月ちゃん!」

 

「っ!ええ!任せて!」

 

聖良ちゃんの声に私はすぐに気配の位置を探知し、

 

「───封解主(ミカエル)!」

 

封解主(ミカエル)の能力を使い空間を繋げた。

繋げやいなやすぐさまそこに飛び入る。私の後に続くように他のみんなも入り。

 

「っ!?!?」

 

出た瞬間に訪れた暴風に私は髪を押さえる。

視線を先に見やるとそこにはレイくんが本気の全力で戦闘している姿があった。

私は姿を見てすぐにこの周囲一体に封絶型の領域結界を展開して構築し張り巡らせる。

張り巡らせると周囲の空間が変わり、私たちを包み込む。

それをし終えレイくんの姿を見た私は───

 

「うそ・・・・・・レイくんのあの速度に着いて行ってるなんて・・・・・・っ!!」

 

その光景に私は目を見開く。

今のレイくんは闇の魔法(マギア・エレベア)、『雷天大壮』の上位形態『雷天双壮』を使ってる。『雷天双壮』は常時雷化に思考加速、身体能力強化とチートもチート級の戦闘技法だ。それを使っているということは、本気も本気の全力でやらなければならない相手だということで・・・・・・。

レイくんの雷速瞬動は瞬間的に秒速約150kmを出す。その速度に追いついているということは少なくても、相手は迅移の第四段階以上を使っていると思う。第四段階の迅移は39.06倍速だと先日データで見た。第四段階の迅移はライフル弾の弾速を超えると言われる。ライフル弾の弾速は秒速1000メートルだ。ちなみに拳銃弾の弾速はライフル弾の三分の一、秒速350メートルである。

その戦闘に私たちは声も出せずにただ眺めているだけだった。

そんな私たちの耳には剣のぶつかり合う金属音と、キュイーンっと甲高い音が絶え間なく流れ、風が暴風のように私たちを襲う。

それがしばらく続き。

 

「はあぁぁぁぁっ!!───天陽流剣技!星覇連流双嵐撃(スターエンド・イクリプス)!!」

 

「せああぁぁぁぁっ!!」

 

レイくんは現状二刀流で最速にして最強クラスの天陽流剣技を放つ。

確かアレはアインクラッド流二刀流ソードスキルの『スターバースト・ストリーム』と『ジ・イクリプス』の速度と威力を掛け合わせた剣技だと前にレイくん自身が言っていた。現状最速にして最強クラスの天陽流二刀流剣技。

まったく、いつの間にあんなのを?、と聞いた当初は思ったけど。

 

「あれを受け止めてる・・・・・・?それどころか捌いてすらいる・・・・・・!?」

 

それを防ぐ相手も相手だ。

けど、さすがに全部は不可能なのな、少しずつ抜けて相手にダメージを与える。が、それと同じく、レイくんにも相手からの攻撃によるダメージが蓄積されていた。

やがて互いの最後の刺突攻撃がそれぞれの衣服の脇を掠り、一気に視界が晴れる。

ドバッ!ととてつもない風が周囲に流れ、目を瞑る。

次に目を開けると。

 

「っ!!?!れ、レイくん!!」

 

「お、お兄ちゃんっ!!」

 

レイくんと戦っていた相手が静かに、それぞれ地面に倒れる所だった。そしてその両脇にレイくんの愛剣の『黒聖』と『白庭』と相手の双剣が並んで倒れた。

二人が倒れるのを見た聖良ちゃんたちは慌ててレイくんの方に駆け寄る。その間に私はこの結界空間の惨状を見る。

 

「あの短時間でここまでの惨状を・・・・・・?!ていうかなんで急に・・・・・・?もしかしてここに出たのは何らかのアクシデント?本当はもっと別な場所で戦闘していた?」

 

そう推理し結界空間を解除し元の空間へと帰還する。

帰還するやいなや、衛藤さんたちがレイくんの相手をしていた人物を見て警戒心を高くしていた。

 

「こ、この人大荒魂!?」

 

「おいおい・・・・・・天ノ宮はコイツを一人で相手していたのか・・・・・?!」

 

「コイツは少なくともタギツヒメより上の力だぞ」

 

「・・・・・・零夜くんって一体どこまで強いの・・・・・・?」

 

「えっと・・・・・・イリア!」

 

「は、はい!」

 

「そっちの人にも回復魔法掛けといて」

 

「わかりました!」

 

「イリアちゃん、私も手伝います!」

 

「ありがとうございます凛華さん!」

 

イリアと凛華ちゃんが相手の人を回復させ、聖良ちゃん、星夜ちゃんはレイくんに回復魔法を施す。

レイくんの様子を私は魔力の流れを視る。

 

「(かなり魔力が減ってる・・・・・・ていうか枯渇寸前じゃない。身体に結構無茶なことをしたみたいね。それに雷天双壮を使ったようね)」

 

レイくん自身は気づいてないかもしれないけど、レイくんは尋常ではない速度で様々な技法を会得しているため、身体が追いついてないのだ。今の私たちの肉体年齢は11歳。とてもじゃないが、会得速度と身体の成長速度が反比例している。このままでは最悪魔法が使えない、なんてことにもなりかねない。だから、基本的にはレイくんには戦闘してほしくないんだけど。

幸いにも質量消滅魔法は使ってないらしいから安心した。

 

「(それにアレ(・・)も使ってないわね)」

 

レイくんの。いや、この世界で最強で最凶かもしれない魔法。質量消滅など生温いと感じる超長文詠唱魔法。

思い返しながらレイくんを見ていると。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「目が覚めたレイくん?」

 

レイくんが目を開けた。満身創痍だけど、気がついたみたいだ。

 

「・・・・・・夜月・・・・・・?」

 

「ええ。夜月です」

 

「なんでここに・・・・・・」

 

「それはこっちのセリフよ?なんであの人と戦闘してたの?」

 

「それは・・・・・・」

 

言葉に覇気がなく、疲労困憊なのは一目で分かる。

そこに。

 

「───ふふふっ。君もさすがに疲労困憊のようね?まあ、それは私もなのだけど」

 

大荒魂と呼ばれた相手が倒れた状態から起き上がり、クスッと笑ってレイくんを見ながら言っていた。

その光景に私たち全員唖然と、言葉を失っていた。

ただ一人を除いて───

 

「お互い様だよ。君もそうじゃない?」

 

ただ一人。レイくんは苦笑しながら会話する。

 

「そうね。ここまでやったのは何時以来かしら?」

 

「同じく。お姉ちゃん太刀を除けばここまでやったのは久しぶりだ」

 

レイくんもゆっくりと起き上がり自身の身体を確認し立ち上がった。それに並んで相手も立ち上がり。

 

「───来て、『白庭』、『黒聖』」

 

「おいで、『天叢雲剣』、『天羽々斬』」

 

レイくんは自身の双剣を。相手も自身の剣を呼び寄せた。

手も使わず、ただ言葉(・・)だけで。

 

 

 

 

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